(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】流路切替弁
(51)【国際特許分類】
F16K 11/076 20060101AFI20240214BHJP
F16K 27/00 20060101ALI20240214BHJP
F16K 3/22 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
F16K11/076 Z
F16K27/00 D
F16K3/22 Z
(21)【出願番号】P 2020094886
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2019106927
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】前田 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 吉毅
(72)【発明者】
【氏名】牧原 正径
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-030545(JP,A)
【文献】特開昭52-100626(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0354716(US,A1)
【文献】国際公開第2019/114613(WO,A1)
【文献】特表2018-536128(JP,A)
【文献】特表2015-501911(JP,A)
【文献】特開2013-238310(JP,A)
【文献】特開2004-027394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/076
F16K 11/052
F16K 27/00
F16K 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する2つ以上の複数の流入部(44a,44b,46)と、流体が流出する3つ以上の複数の流出部(45a,45b,45c,46)とを有し、全ての前記流入部及び前記流出部に連通される内室(410)が内部に形成される本体部(41)と、
前記本体部に対して相対変位可能に前記内室に配置され、前記内室を複数の区画室(411,412)に仕切る仕切部(426)と、を備え、
前記仕切部が前記本体部に対して相対変位することにより、複数の前記区画室のそれぞれを介して連通される前記流入部及び前記流出部の対応関係が変更され
、
前記仕切部と一体となって変位し、複数の前記流入部及び複数の前記流出部のうちの少なくとも1つを閉塞する閉塞部(420,421,422,423,424,425)を更に備え、
前記流出部は、前記流入部の数よりも1つだけ多く設けられ、
複数の前記流出部のうちの少なくとも1つの流出部が前記閉塞部により閉塞されることで、前記内室に連通される前記流入部の数と前記流出部の数とが同数になるとともに、複数の前記区画室のそれぞれを通じて複数の前記流入部と複数の前記流出部とが一対一の関係で連通され、
前記流入部、及び前記流出部のうち、外部流路(W23,W24)を通じて直列に接続される流入部及び流出部を直列流入部(44b)及び直列流出部(45b)とするとき、
前記閉塞部(420)が前記直列流出部を閉塞する位置に配置されていない場合には、前記直列流出部から流出した流体は、前記外部流路を通じて前記直列流入部に流入するとともに、前記直列流入部に流入した流体は、前記区画室(412)を通じて、前記直列流出部とは別の流出部(45c)から流出し、
前記閉塞部は、前記直列流出部を閉塞する位置に配置されている場合には、前記直列流入部から前記区画室を介した前記別の流出部への流体の流れを遮断する
流路切替弁。
【請求項2】
複数の前記流入部のうちの互いに異なる2つの流入部を第1流入部(44a)及び第2流入部(44b)とし、
複数の前記流出部のうちの1つの流出部を共通流出部(45a)とするとき、
前記共通流出部は、前記第1流入部と前記第2流入部との間に設けられ、
複数の前記区画室には、前記第1流入部を通じて流体が流入する第1区画室(411)と、前記第2流入部を通じて流体が流入する第2区画室(412)とが含まれ、
前記仕切部は、前記本体部に対して相対変位することにより、前記第1流入部を通じて前記第1区画室に流入した流体を前記共通流出部から流出させる状態と、前記第2流入部を通じて前記第2区画室に流入した流体を前記共通流出部から流出させる状態とを切り替える
請求項
1に記載の流路切替弁。
【請求項3】
前記本体部は、所定の軸線を中心に円筒状に形成され、
複数の前記流入部、及び複数の流出部は、前記本体部の外周面に設けられ、
複数の前記流入部のうちの1つの流入部を所定の流入部(44a)とし、
複数の前記流出部のうち、前記所定の軸線を中心とする周方向において前記所定の流入部の両隣に設けられる2つの流出部を第1流出部(45a)及び第2流出部(45b)とし、
前記所定の軸線を中心とする周方向において、前記所定の流入部が設けられている位置と、前記第1流出部が設けられている位置とがなす角度を第1角度とし、
前記所定の軸線を中心とする周方向において、前記所定の流入部が設けられている位置と、前記第2流出部が設けられている位置とがなす角度を第2角度とするとき、
前記第1角度と前記第2角度とが同一の角度に設定されている
請求項1
又は2に記載の流路切替弁。
【請求項4】
前記本体部には、前記流入部及び前記流出部として機能する流出入部(46)が設けられている
請求項1~
3のいずれか一項に記載の流路切替弁。
【請求項5】
前記本体部は、前記流出入部を閉塞する閉塞部(424)を更に備えている
請求項
4に記載の流路切替弁。
【請求項6】
前記区画室として、一つの前記流入部(44a)と複数の前記流出部(45a,45b)とを連通させる区画室(411)を備えている
請求項1~
5のいずれか一項に記載の流路切替弁。
【請求項7】
流体が流入する2つ以上の複数の流入部(44a,44b,46)と、流体が流出する3つ以上の複数の流出部(45a,45b,45c,46)とを有し、全ての前記流入部及び前記流出部に連通される内室(410)が内部に形成される本体部(41)と、
前記本体部に対して相対変位可能に前記内室に配置され、前記内室を複数の区画室(411,412)に仕切る仕切部(426)と、を備え、
前記仕切部が前記本体部に対して相対変位することにより、複数の前記区画室のそれぞれを介して連通される前記流入部及び前記流出部の対応関係が変更され、
前記本体部には、前記流入部及び前記流出部として機能する流出入部(46)が設けられている
流路切替弁。
【請求項8】
前記本体部は、前記流出入部を閉塞する閉塞部(424)を更に備えている
請求項7に記載の流路切替弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流路切替弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の車両の冷却システムがある。特許文献1に記載の冷却システムは、熱媒体流路と、バッテリ流路と、車載機器流路と、車載機器バイパス流路とを備えている。熱媒体流路は、環状の流路であり、冷却水が循環している。熱媒体流路には、第1ポンプ、チラー、ラジエータ、及び第1流路切替弁が、冷却水の流れ方向に対して、この並び順で配置されている。バッテリ流路は、第1流路切替弁と、熱媒体流路におけるチラーの下流側の部分とを接続するように設けられている。チラーは、熱媒体流路を流れる冷却水と、車両に搭載される冷凍サイクルを流れる熱媒体との間で熱交換を行う部分である。バッテリ流路には、車両に搭載されるバッテリが配置されている。車載機器流路は、熱媒体流路におけるラジエータの上流側の部分とその下流側の部分とを接続するように設けられている。車載機器流路には、第2ポンプ、インバータ、チャージャ、及びモータジェネレータが、この並び順で配置されている。以下では、便宜上、インバータ、チャージャ、及びモータジェネレータをPCU(Power Control Unit)系と称する。車載機器バイパス流路は、車載機器流路における第2ポンプの上流側の部分とモータジェネレータの下流側の部分とを接続するように設けられている。車載機器流路と車載機器バイパス流路の下流側の部分との接続部分には第2流路切替弁が設けられている。
【0003】
第1流路切替弁は三方弁であり、熱媒体流路を流れる冷却水を、バッテリ流路に流す状態と、バッテリ流路に流さない状態とに切り替える。第2流路切替弁も同じく三方弁であり、車載機器流路を流れる冷却水を、車載機器バイパス流路に流す状態と、車載機器バイパス流路に流さない状態とに切り替える。
【0004】
特許文献1に記載の冷却システムでは、冷却水によりPCU系やバッテリが冷却される。また、特許文献1に記載の冷却システムでは、第1流路切替弁及び第2流路切替弁の切り替え動作を通じて、PCU系やバッテリの廃熱を冷却水に吸収した上で、その冷却水の熱を、チラーを介して冷凍サイクルの熱媒体に伝達する流路が形成される。このような流路が形成されることで、PCU系やバッテリの廃熱を、熱媒体の加熱源として用いることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載される冷却システムのように、複数の流路の切り替えを通じて冷却水の各種流れを実現しようとする場合には、三方弁等の流路を切り替えるための切替弁が複数必要となる場合がある。しかしながら、このような切替弁の個数が増加すると、冷却システムとしての構造の複雑化が回避できないものとなる。
【0007】
なお、このような課題は、特許文献1に記載されるような冷却システムに限らず、複数の流路の切り替えを行う必要のある各種冷却システムに共通する課題である。
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構造により複数の流路の切り替えを行うことが可能な流路切替弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する流路切替弁は、本体部(41)と、仕切部(426)と、を備える。本体部は、流体が流入する2つ以上の複数の流入部(44a,44b,46)と、流体が流出する3つ以上の複数の流出部(45a,45b,45c,46)とを有し、全ての流入部及び流出部に連通される内室(410)が内部に形成される。仕切部は、本体部に対して相対変位可能に内室に配置され、内室を複数の区画室(411,412)に仕切る。仕切部が本体部に対して相対変位することにより、複数の区画室のそれぞれを介して連通される流入部及び流出部の対応関係が変更される。流路切替弁は、仕切部と一体となって変位し、複数の流入部及び複数の流出部のうちの少なくとも1つを閉塞する閉塞部(420,421,422,423,424,425)を更に備える。流出部は、流入部の数よりも1つだけ多く設けられる。複数の流出部のうちの少なくとも1つの流出部が閉塞部により閉塞されることで、内室に連通される流入部の数と流出部の数とが同数になるとともに、複数の区画室のそれぞれを通じて複数の流入部と複数の流出部とが一対一の関係で連通される。流入部、及び流出部のうち、外部流路(W23,W24)を通じて直列に接続される流入部及び流出部を直列流入部(44b)及び直列流出部(45b)とするとき、閉塞部(420)が直列流出部を閉塞する位置に配置されていない場合には、直列流出部から流出した流体は、外部流路を通じて直列流入部に流入するとともに、直列流入部に流入した流体は、区画室(412)を通じて、直列流出部とは別の流出部(45c)から流出し、閉塞部は、直列流出部を閉塞する位置に配置されている場合には、直列流入部から区画室を介した別の流出部への流体の流れを遮断する。
上記課題を解決する他の流路切替弁は、本体部(41)と、仕切部(426)と、を備える。本体部は、流体が流入する2つ以上の複数の流入部(44a,44b,46)と、流体が流出する3つ以上の複数の流出部(45a,45b,45c,46)とを有し、全ての流入部及び流出部に連通される内室(410)が内部に形成される。仕切部は、本体部に対して相対変位可能に内室に配置され、内室を複数の区画室(411,412)に仕切る。仕切部が本体部に対して相対変位することにより、複数の区画室のそれぞれを介して連通される流入部及び流出部の対応関係が変更される。本体部には、流入部及び流出部として機能する流出入部(46)が設けられている。
【0009】
この構成によれば、仕切部が本体部に対して相対変位することにより、区画室を介して互いに連通される流入部及び流出部の対応関係を変更することができる。また、複数の区画室のそれぞれで流入部及び流出部の対応関係を変更することが可能である。したがって、上記の流路切替弁は、流路を変更することが可能な構成を区画室の数だけ有することになる。結果的に、上記の流路切替弁では、複数の三方弁に相当する流路の切り替えが可能となる。よって、複数の三方弁に代えて、上記の構成を有する流路切替弁を用いることにより、構造を簡素化することができる。
【0010】
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、簡素な構造により複数の流路の切り替えを行うことが可能な流路切替弁を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1実施形態の冷却システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の流路切替弁の斜視構造を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の流路切替弁の分解斜視構造を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2のIV-IV線に沿った断面構造を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の流路切替弁の動作例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の流路切替弁の動作例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の冷却システムの電気的な構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の冷却システムの動作例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の冷却システムの動作例を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の冷却システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の流路切替弁の斜視構造を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態の流路切替弁の分解斜視構造を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態の流路切替弁の動作例を示す断面図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態の流路切替弁の動作例を示す断面図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態の流路切替弁の動作例を示す断面図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態の冷却システムの動作例を示すブロック図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態の冷却システムの動作例を示すブロック図である。
【
図19】
図19は、第2実施形態の冷却システムの動作例を示すブロック図である。
【
図20】
図20は、他の実施形態の流路切替弁の断面構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、流路切替弁の実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
はじめに、
図1に示される第1実施形態の流路切替弁40について説明する。
図1に示されるように、本実施形態の流路切替弁40は、車両に搭載される冷却システム10に用いられている。冷却システム10は、車両のPCU系20や電池21を冷却水により冷却するシステムである。PCU系とは、車両に搭載されるトランスアクスルやモータジェネレータ、インバータ回路等の電気機器を示す。本実施形態では、冷却水が流体に相当する。冷却システム10は、流路切替弁40に加え、第1ポンプ11と、チラー12と、ラジエータ13と、リザーブタンク14と、流調弁15と、第2ポンプ16と、開閉弁17とを備えている。第1ポンプ11、チラー12、流路切替弁40、ラジエータ13、及びリザーブタンク14は、この並び順で、環状に形成された流路W10に設けられている。
【0014】
第1ポンプ11は、環状流路W10を流れる冷却水を吸入してチラー12に吐出することにより、冷却水を環状流路W10内で循環させる。環状流路W10では、図中に矢印で示される方向に、すなわち第1ポンプ11、チラー12、流路切替弁40、電池21、流路切替弁40、ラジエータ13、リザーブタンク14の順で冷却水が循環している。第1ポンプ11は、電池21から供給される電力に基づいて駆動する電動ポンプである。
【0015】
チラー12は、車両に搭載されるヒートポンプサイクル18を循環する熱媒体と、環状流路W10を流れる冷却水との間で熱交換を行う部分である。ヒートポンプサイクル18は、車両の空調装置の構成要素の一つであって、空調装置の空調ダクト内を流れる空調空気と熱媒体との間で熱交換を行うことにより、空調空気を冷却又は加熱するシステムである。空調装置は、ヒートポンプサイクル18を通じて冷却又は加熱された空調空気を、空調ダクトを通じて車室内に送風することにより、車室内の冷房又は暖房を行う。
【0016】
流路切替弁40には流路W21~W25が接続されている。流路切替弁40は流路W21~W25の接続状態を切り替えるために設けられている。
図2及び
図3に示されるように、流路切替弁40は、本体部41と、本体部41の内部に収容される回転バルブ42と、本体部41の上面に接地されるアクチュエータ装置43とを備えている。
【0017】
図3に示されるように、本体部41は、軸線mを中心に円筒状に形成されている。本体部41の内部には、内室410が形成されている。
図4に示されるように、本体部41の外周面には、冷却水が流入する流入部44a,44bと、冷却水が流出する流出部45a~45cとが形成されている。流入部44a,44b及び流出部45a~45cは、軸線mを中心とする周方向において、略等角度間隔となるように配置されている。流入部44a,44b及び流出部45a~45cは内室410に連通されている。内室410には、流入部44a,44bを通じて冷却水が流入する。内室410に流入した冷却水は流出部45a~45cから本体部41の外部に排出される。
【0018】
図3に示されるように、回転バルブ42は、軸線mを中心に円筒状に形成されている。回転バルブ42は、その外周面が本体部41の内周面に対して摺動可能に接触するように配置されている。したがって、回転バルブ42は、本体部41に対して相対変位可能、より詳細には本体部41に対して軸線mを中心とする回転方向に相対変位可能である。回転バルブ42の内部には、その中心軸mを通るように板状の仕切部426が形成されている。
図4に示されるように、仕切部426は、回転バルブ42の内部空間を第1区画室411及び第2区画室412に仕切っている。回転バルブ42の外周壁には、本体部41の内室410を第1区画室411に連通させるための切り欠き427aと、本体部41の内室410を第2区画室412に連通させるための切り欠き427bとが形成されている。このような構造により、本体部41の内室410は、第1区画室411と第2区画室412とに区画されて構成されている。
【0019】
回転バルブ42の外周壁において切り欠き427bの周方向の両端に当たる部分には、回転バルブ42の外周壁の一部が切り欠かれずに残されることにより閉塞部420,421がそれぞれ形成されている。閉塞部420,421は、仕切部426の両端から本体部41の内壁面に沿って延びるように配置されている。回転バルブ42が軸線mを中心に回転することにより、仕切部426と一体となって閉塞部420,421の回転位置が変化する。
【0020】
図2及び
図3に示されるアクチュエータ装置43は、モータ等により構成されている。アクチュエータ装置43は、
図3に示されるように回転バルブ42の上面に設けられる入力軸428に軸線mを中心とする回転方向のトルクを付与することにより、回転バルブ42を回転させる。この回転バルブ42の回転に伴って閉塞部420,421の回転位置が変化することにより、流出部45a~45cが開閉されて、流入部44a,44bと流出部45a~45cとの接続状態が変化する。
【0021】
具体的には、回転バルブ42が
図4に示される位置に配置されている場合、流出部45cは閉塞部420により閉塞されているが、流入部44a,44b及び流出部45a,45bは閉塞されていない。この場合、流入部44aは第1区画室411を介して流出部45bに接続されている。したがって、流入部44aから流入した冷却水は流出部45bから排出される。また、流入部44bは第2区画室412を介して流出部45aに接続されている。したがって、流入部44bから流入した冷却水は流出部45bから排出される。
【0022】
また、回転バルブ42が、
図5に示される位置に配置されている場合、流出部45aは閉塞部421により閉塞されているが、流入部44a,44b及び流出部45b,45cは閉塞されていない。この場合、流入部44aは第1区画室411を介して流出部45bに接続されている。したがって、流入部44aから流入した冷却水は流出部45bから排出される。また、流入部44bは第2区画室412を介して流出部45cに接続されている。したがって、流入部44bから流入した冷却水は流出部45cから排出される。
【0023】
さらに、回転バルブ42が、
図6に示される位置に配置されている場合、流出部45bは閉塞部420により閉塞されているが、流入部44a,44b及び流出部45a,45cは閉塞されていない。この場合、流入部44aは第1区画室411を介して流出部45aに接続されている。したがって、流入部44aから流入した冷却水は流出部45aから排出される。また、流入部44bは第2区画室412を介して流出部45cに接続されている。したがって、流入部44bから流入した冷却水は流出部45cから排出される。
【0024】
このように、本実施形態の流路切替弁40では、回転バルブ42が
図4~
図6に示されるように回転変位することで、流入部44a,44bと流出部45a~45cとの接続状態を変化させることが可能となっている。
図1に示されるように、流路切替弁40の流入部44a,44bは、冷却システム10の流路W21,W24にそれぞれ接続されている。また、流路切替弁40の流出部45a~45cは、冷却システム10の流路W22,W23,W25にそれぞれ接続されている。
【0025】
流路W21は環状流路W10の一部であって、チラー12と流路切替弁40とを接続する流路である。流路W22も環状流路W10の一部であって、流路切替弁40とラジエータ13とを接続する流路である。流路W23,W24は流路切替弁40と電池21とを接続する流路である。流路W23は、流路切替弁40から電池21に冷却水を供給する流路として用いられる。流路W24は、電池21を通過した冷却水を流路切替弁40に戻す流路として用いられる。流路W23を通じて供給される冷却水と電池21との間で熱交換が行われることにより電池21の熱が冷却水に吸収されて、電池21の冷却が行われる。流路W25は、環状流路W10における第1ポンプ11の上流側の部分と流路切替弁40とを接続する流路である。流路切替弁40は、
図4~
図6に示されるように流入部44a,44bと流出部45a~45cとの接続状態を変化させることで、冷却システム10の流路W21~W25の接続状態を切り替えるものである。
【0026】
ラジエータ13は、その内部を流れる冷却水と外気との間で熱交換を行う部分である。ラジエータ13から吐出される冷却水はリザーブタンク14に流入する。リザーブタンク14は、ラジエータ13から吐出される冷却水を一時的に蓄える。リザーブタンク14に蓄えられている冷却水は第1ポンプ11に吸入される。
【0027】
環状流路W10におけるラジエータ13の上流側の部分は、分岐流路W30を通じて、リザーブタンク14の下流側の部分に接続されている。分岐流路W30には、流調弁15、第2ポンプ16、及びPCU系20が配置されている。
流調弁15は、環状流路W10におけるリザーブタンク14の下流側の部分から分岐流路W30に流入する冷却水の流量を調整する。
【0028】
第2ポンプ16は、分岐流路W30を流れる冷却水を吸入してPCU系20に吐出することにより、分岐流路W30に冷却水を循環させる。分岐流路W30では、環状流路W10におけるリザーブタンク14の下流側の部分から流調弁15、第2ポンプ16、PCU系20の順で冷却水が循環する。第2ポンプ16は、電池21から供給される電力に基づいて駆動する電動ポンプである。
【0029】
PCU系20を通過した冷却水は、分岐流路W30を通じて、環状流路W10におけるラジエータ13の上流側の部分に戻される。冷却水がPCU系20を通過する際に、冷却水とPCU系20との間で熱交換が行われることによりPCU系20の熱が冷却水に吸収されて、PCU系20の冷却が行われる。
【0030】
分岐流路W30には、その流調弁15の下流側の部分と、そのPCU系20の下流側の部分とを接続するようにバイパス流路W31が設けられている。バイパス流路W31には、当該流路W31を開閉するための開閉弁17が設けられている。
図7に示されるように、冷却システム10は、その動作を制御するためのECU(Electronic Control Unit)30を更に備えている。ECU30は、CPUや記憶装置等を有するマイクロコンピュータを中心に構成されており、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、冷却システム10の各種制御を実行する。
【0031】
ECU30には、冷却システム10の制御に用いられる車両の各種状態量を検出するためのセンサ群31が接続されている。センサ群31には、電池21やPCU系20の温度を検出する温度センサ等が含まれている。ECU30は、センサ群31により検出される各種状態量に基づいて第1ポンプ11、流路切替弁40、流調弁15、第2ポンプ16、及び開閉弁17のそれぞれの動作を制御することにより、冷却システム10を複数の運転モードで動作させる。
【0032】
次に、冷却システム10の動作例について説明する。
ECU30は、PCU系20に関する制御と、チラー12及び電池21に関する制御とをそれぞれ独立して行う。はじめに、前者のPCU系20に関する制御について説明する。
【0033】
ECU30は、センサ群31を通じて検出されるPCU系20の温度に基づいて、流調弁15及び開閉弁17のそれぞれの開閉状態を変化させることにより、PCU系20の冷却及び暖機を行う。
具体的には、ECU30は、PCU系20の温度が所定の温度閾値以上である場合には、開閉弁17を閉状態に設定するとともに、流調弁15の開度を所定の開度に設定する。これにより、環状流路W10におけるリザーブタンク14の下流側の部分から分岐流路W30に流入した冷却水は、流調弁15及び第2ポンプ16を通じてPCU系20に供給される。よって、PCU系20は冷却水により冷却される。
【0034】
一方、ECU30は、PCU系20の温度が所定の温度閾値未満である場合には、開閉弁17を開状態に設定するとともに、流調弁15を閉状態に設定する。これにより、第2ポンプ16から吐出される冷却水が分岐流路W30及びバイパス流路W31を環状に循環するようになる。したがって、PCU系20を通過した冷却水は、分岐流路W30及びバイパス流路W31を通じてPCU系20に再び戻されて、PCU系20の熱を吸収する。そのため、分岐流路W30及びバイパス流路W31を循環する冷却水が徐々に加熱される。よって、PCU系20が暖機される。
【0035】
このように、ECU30は、流調弁15及び開閉弁17のそれぞれの開閉制御を通じてPCU系20の冷却及び暖機を行うことで、PCU系20の温度を温度閾値近傍に調整する。
次に、ECU30により実行されるチラー12及び電池21に関する制御について説明する。ECU30は、チラー12及び電池21に関する制御として、冷却システム10の運転モードを、第1電池冷却モード、第2電池冷却モード、及び外気吸熱モードのいずれかに切り替える。各モードの詳細は以下の通りである。
【0036】
(a1)第1電池冷却モード
第1電池冷却モードは、外気により冷却された冷却水を利用して電池21を冷却するモードである。
具体的には、ECU30は、第1電池冷却モードの際には、流路切替弁40のアクチュエータ装置43を制御することにより、流路切替弁40の回転バルブ42の位置を、
図4に示される位置に設定する。これにより、
図1に示されるように、チラー12を通過した冷却水は、流路W21を通じて流路切替弁40の流入部44aに流入した後、流路切替弁40の流出部45bから排出されて、流路W23を通じて電池21に供給される。また、電池21を通過した冷却水は、流路W24を通じて流路切替弁40の流入部44bに流入した後、流路切替弁40の流出部45aから排出されて、流路W22を通じてラジエータ13に供給される。なお、流路切替弁40の流出部45cは閉塞されているため、流路W25には冷却水が流れない。
【0037】
このような流路が流路切替弁40により形成されることで、冷却システム10では、
図1に矢印で示されるような冷却水の流れが形成される。すなわち、冷却水は、「第1ポンプ11→チラー12→流路切替弁40→電池21→流路切替弁40→ラジエータ13→リザーブタンク14→第1ポンプ11→・・・」の順で流れる。よって、ラジエータ13において冷却された冷却水が電池21に供給されることにより、電池21が冷却される。
【0038】
なお、
図1に示される第1電池冷却モードでは、ヒートポンプサイクル18において、チラー12を循環するような熱媒体の流れが形成されていない。よって、ラジエータ13において冷却された冷却水は、チラー12を通過する際にヒートポンプサイクル18の熱媒体と熱交換を行うことなく、電池21に供給される。
【0039】
このように、第1電池冷却モードでは、ラジエータ13において冷却された冷却水を利用して、換言すれば外気により冷却された冷却水を利用して電池21の冷却が行われる。
(a2)第2電池冷却モード
第2電池冷却モードは、ヒートポンプサイクル18の熱媒体により冷却された冷却水を利用して電池21を冷却するモードである。
【0040】
具体的には、ECU30は、第2電池冷却モードの際には、流路切替弁40のアクチュエータ装置43を制御することにより、流路切替弁40の回転バルブ42の位置を、
図5に示される位置に設定する。これにより、
図8に示されるように、チラー12を通過した冷却水は、流路W21を通じて流路切替弁40の流入部44aに流入した後、流路切替弁40の流出部45bから排出されて、流路W23を通じて電池21に供給される。また、電池21を通過した冷却水は、流路W24を通じて流路切替弁40の流入部44bに流入した後、流路切替弁40の流出部45cから排出されて、流路W25及び環状流路W10を通じて第1ポンプ11に吸入される。なお、流路切替弁40の流出部45aは閉塞されているため、流路W22には冷却水が流れない。
【0041】
このような流路が流路切替弁40により形成されることで、冷却システム10では、
図8に矢印で示されるような流路が形成される。すなわち、冷却水は、「第1ポンプ11→チラー12→流路切替弁40→電池21→流路切替弁40→第1ポンプ11→・・・」の順で流れる。この際、チラー12では、ヒートポンプサイクル18を流れる熱媒体と、環状流路W10を流れる冷却水との間で熱交換が行われることにより、冷却水が冷却される。このチラー12において冷却された冷却水が電池21に供給されることにより、電池21が冷却される。
【0042】
このように、第2電池冷却モードでは、チラー12において冷却された冷却水を利用して、換言すればヒートポンプサイクル18を循環する熱媒体により冷却された冷却水を利用して電池21の冷却が行われる。
(a3)外気吸熱モード
外気吸熱モードは、外気から冷却水が吸収した熱を利用してヒートポンプサイクル18の熱媒体を加熱するモードである。
【0043】
具体的には、ECU30は、外気吸熱モードの際には、流路切替弁40のアクチュエータ装置43を制御することにより、流路切替弁40の回転バルブ42の位置を、
図6に示される位置に設定する。これにより、
図9に示されるように、チラー12を通過した冷却水は、流路W21を通じて流路切替弁40の流入部44aに流入した後、流路切替弁40の流出部45aから排出されて、流路W22を通じてラジエータ13に供給される。なお、流路切替弁40では、流出部45bが閉塞されているため、流路W23~W25には冷却水が流れない。
【0044】
このような流路が流路切替弁40により形成されることで、冷却システム10では、
図9に示されるような流路が形成される。すなわち、冷却水は、「第1ポンプ11→チラー12→流路切替弁40→ラジエータ13→リザーブタンク14→第1ポンプ11→・・・」の順で流れる。これにより、ラジエータ13において外気の熱を吸収した冷却水がチラー12に供給される。チラー12では、環状流路W10を通じて供給される冷却水と、ヒートポンプサイクル18を循環する熱媒体との間で熱交換が行われることにより、冷却水の熱により熱媒体が加熱される。ヒートポンプサイクル18は、加熱されることにより温度が上昇した熱媒体と、空調ダクトを流れる空調空気との間で熱交換を行うことにより、空調空気を加熱する。
【0045】
このように、外気吸熱モードでは、ラジエータ13により加熱された冷却水を利用して、換言すれば外気により加熱された冷却水を利用してヒートポンプサイクル18の熱媒体の加熱が行われる。
以上説明した本実施形態の流路切替弁40によれば、以下の(1)~(6)に示される作用及び効果を得ることができる。
【0046】
(1)仕切部426が本体部41に対して相対変位することにより、区画室411,412を介して互いに連通される流入部44a,44b及び流出部45a~45cの対応関係を変更することができる。また、区画室411,412のそれぞれで流入部44a,44b及び流出部45a~45cの対応関係を変更することが可能である。したがって、流路切替弁40は、流路を変更することが可能な構成を区画室411,412の数だけ有している。結果的に、流路切替弁40は、2つの三方弁に相当する流路の切り替えが可能である。よって、2つの三方弁に代えて、本実施形態の流路切替弁40を用いることにより、構造を簡素化することができる。また、2つの三方弁を用いる場合と比較すると、ECU30の制御対象が一つの流路切替弁40となるため、ECU30の処理負担を軽減することができる。
【0047】
(2)流路切替弁40は、仕切部426と一体となって変位し、3つの流出部45a~45cのうちの一つの流出部を閉塞する閉塞部420,421を更に備える。このような構成によれば、流路切替弁40に接続される複数の流路W22,W23,W25のうちの一つの流路を閉塞することが可能となるため、冷却システム10において、より複雑な流路を実現することができる。
【0048】
(3)流出部45a~45cは、流入部44a,44bよりも一つだけ多く設けられている。冷却システム10では、複数の流出部45a~45cのうちの一つが閉塞部420,421により閉塞されることで、本体部41の内室410に連通される流入部の数と流出部の数とが同数になるとともに、区画室411,412のそれぞれを通じて複数の流入部44a,44bと複数の流出部45a~45cとが一対一の関係で連通される。これにより、複数の流出部45a~45cが設けられる構成でありながら、冷却水が分岐して流れない流路を実現することが可能となる。
【0049】
(4)流入部44b及び流出部45bは、外部流路W23,W24を通じて直列に接続されている。したがって、本実施形態の流路切替弁40では、流入部44bが直列流入部に相当し、流出部45bが直列流出部に相当する。
図6に示されるように、流入部44bは、区画室412を通じて、流出部45bとは別の流出部45cに連通されている。閉塞部420は、流出部45bを閉塞することにより、流入部44bから区画室412を介した流出部45cへの冷却水の流れを遮断する。このような構成によれば、閉塞部420には、内室410から流出部45bに向かう方向に冷却水の圧力が加わるため、より確実に閉塞部420が流出部45bを閉塞することが可能となる。
【0050】
(5)流出部45aは、流入部44aと流入部44bとの間に設けられている。仕切部426は、本体部41に対して相対変位することにより、
図6に示されるように流入部44aを通じて第1区画室411に流入した冷却水を流出部45aから流出させる状態と、
図4に示されるように流入部44bを通じて第2区画室412に流入した冷却水を流出部45aから流出させる状態とを切り替える。このように、流出部45aが、流入部44a及び流入部44bに対する共通流出部として用いられることにより、流出部の数を減らすことが可能となる。この場合、流入部44aが第1流入部に相当し、流入部44bが第2流入部に相当する。
【0051】
(6)
図4に示されるように、流入部44aの両隣には流出部45a,45bが設けられている。この場合、流入部44aが所定の流入部に相当し、流出部45aが第1流出部に相当し、流出部45bが第2流出部に相当する。軸線mを中心とする周方向において、流入部44aの位置と流出部45aの位置とがなす第1角度を「θ11」とし、流入部44aの位置と流出部45bの位置とがなす第2角度を「θ12」とするとき、第1角度θ11と第2角度θ12とが同一の角度に設定されている。このような構成によれば、流入部44aを基準に流出部45a,45bが対称に配置されている。そのため、
図5に示されるように閉塞部421により流出部45aが閉塞されている状態を第1状態とし、
図6に示されるように閉塞部420により流出部45bが閉塞されている状態を第2状態とするとき、第1状態から第2状態に遷移する際の仕切部426の回転変位量と、第2状態から第1状態に遷移する際の仕切部426の回転変位量とが略同一の回転変位量となる。よって、流入部44aと流出部45a,45bとの接続状態を容易に切り替えることが可能である。流入部44b及び流出部45a,45cに関しても同様である。
【0052】
<第2実施形態>
次に、冷却システム10の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態の冷却システム10との相違点を中心に説明する。
図10に示されるように、本実施形態の冷却システム10は、第1ラジエータ13aと、第2ラジエータ13bとを備えている。第1ラジエータ13a、第1ポンプ11、チラー12、電池21、及び流路切替弁40は、この並び順で、環状に形成された流路W40に設けられている。第2ラジエータ13b、第2ポンプ16、PCU系20、及び流路切替弁40は、この並び順で、環状に形成された流路W50に設けられている。
【0053】
流路切替弁40には流路W61~W66が接続されている。流路切替弁40は流路W61~W66の接続状態を切り替えるために設けられている。
なお、
図10では、ヒートポンプサイクル18の図示が省略されている。
【0054】
図11~
図13に示されるように、本体部41の外周面には、流入部44a,44b及び流出部45a~45cに加え、冷却水が流入又は流出する流出入部46が形成されている。
図12及び
図13に示されるように、回転バルブ42の外周壁には、本体部41の内室410を第1区画室411に連通させるための切り欠き427c,427dと、本体部41の内室410を第2区画室412に連通させるための切り欠き427e~427hとが形成されている。回転バルブ42の外周壁において各切り欠き427c,427dの間に設けられている部分は閉塞部420~425を構成している。軸線mを中心として回転バルブ42が回転すると、閉塞部420~425が仕切部426と一体となって回転する。この閉塞部420~425の回転変位に伴って、流入部44b、流出部45a~45c、及び流出入部46が開閉される。
【0055】
具体的には、回転バルブ42が
図13に示される位置に配置されている場合、流出部45bが閉塞部422により閉塞されるとともに、流出部45cが閉塞部424により閉塞されているが、流入部44a,44b、流出部45a、及び流出入部46は閉塞されていない。この場合、流入部44aは第1区画室411を介して流出部45aに接続されている。したがって、流入部44aから流入した冷却水は流出部45aから排出される。また、流入部44bは第2区画室412を介して流出入部46に接続されている。したがって、流入部44bから流入した冷却水は流出入部46から排出される。
【0056】
また、回転バルブ42が
図14に示される位置に配置されている場合、流出部45aが閉塞部422により閉塞されるとともに、流出入部46が閉塞部424により閉塞されているが、流入部44a,44b、流出部45b,45cは閉塞されていない。この場合、流入部44aは第1区画室411を介して流出部45bに接続されている。したがって、流入部44aから流入した冷却水は流出部45bから排出される。また、流入部44bは第2区画室412を介して流出部45cに接続されている。したがって、流入部44bから流入した冷却水は流出部45cから排出される。
【0057】
さらに、回転バルブ42が
図15に示される位置に配置されている場合、流出部45aが閉塞部422により閉塞されるとともに、流出部45cが閉塞部425により閉塞されているが、流入部44a,44b、流出部45b、及び流出入部46は閉塞されていない。この場合、流入部44aは第1区画室411を介して流出部45bに接続されている。したがって、流入部44aから流入した冷却水は流出部45bから排出される。また、流入部44bは第2区画室412を介して流出入部46に接続されている。したがって、流入部44bから流入した冷却水は流出入部46から排出される。
【0058】
また、回転バルブ42が
図16に示される位置に配置されている場合、流入部44bは閉塞部423により閉塞されているが、流入部44a、流出部45a~45c、及び流出入部46は閉塞されていない。この場合、流入部44aは第1区画室411を介して流出部45a,45bに接続されている。したがって、流入部44aから流入した冷却水は流出部45a,45bから排出される。また、流出入部46は第2区画室412を介して流出部45cに接続されている。したがって、流出入部46から流入した冷却水は流出部45cから排出される。
【0059】
このように、本実施形態の流路切替弁40では、回転バルブ42が
図13~
図16に示されるように回転変位することにより、流入部44a,44b、流出部45a~45c、及び流出入部46の接続状態を変化させることが可能となっている。
図10に示されるように、流路切替弁40の流入部44a,44bは、冷却システム10の流路W61,W64にそれぞれ接続されている。また、流路切替弁40の流出部45a~45cは、冷却システム10の流路W62,W66,W65にそれぞれ接続されている。さらに、流路切替弁40の流出入部46は、冷却システム10の流路W63に接続されている。
【0060】
流路W61は環状流路W40の一部であって、電池21と流路切替弁40とを接続する流路である。流路W62も環状流路W40の一部であって、流路切替弁40と第1ラジエータ13aとを接続する流路である。流路W63は環状流路W50の一部であって、流路切替弁40と第2ラジエータ13bとを接続する流路である。流路W64も環状流路W50の一部であって、PCU系20と流路切替弁40とを接続する流路である。流路W65は、環状流路W40における第1ポンプ11の上流側の部分と流路切替弁40とを接続する流路である。流路W66は、環状流路W50における第2ポンプ16の上流側の部分と流路切替弁40とを接続する流路である。流路W65及び流路W66はバイパス流路W67を介して互いに接続されている。
【0061】
次に、冷却システム10の動作例について説明する。
本実施形態のECU30は、冷却システム10を、第1冷却モード、第2冷却モード、第3冷却モード、及び暖機モードのいずれかの運転モードで動作させる。各モードの詳細は以下の通りである。
【0062】
(b1)第1冷却モード
第1冷却モードは、外気により冷却された冷却水を利用してPCU系20及び電池21を冷却するモードである。
具体的には、ECU30は、第1冷却モードの際には、流路切替弁40のアクチュエータ装置43を制御することにより、流路切替弁40の回転バルブ42の位置を、
図13に示される位置に設定する。これにより、
図10に示されるように、電池21を通過した冷却水は、流路W61を通じて流路切替弁40の流入部44aに流入した後、流路切替弁40の流出部45aから排出されて、流路W62を通じて第1ラジエータ13aに供給される。また、PCU系20を通過した冷却水は、流路W64を通じて流路切替弁40の流入部44bに流入した後、流路切替弁40の流出入部46から排出されて、流路W63を通じて第2ラジエータ13bに供給される。なお、流路切替弁40の流出部45b,45cは閉塞されているため、流路W65,W66には冷却水が流れない。
【0063】
このような流路が流路切替弁40により形成されることで、冷却システム10では、
図10に矢印で示されるような冷却水の流れが形成される。すなわち、「第1ポンプ11→チラー12→電池21→流路切替弁40→第1ラジエータ13a→第1ポンプ11→・・・」の順で流れる冷却水の流れが形成される。また、「第2ポンプ16→PCU系20→流路切替弁40→第2ラジエータ13b→第2ポンプ16→・・・」の順で流れる冷却水の流れが形成される。よって、第1ラジエータ13aにおいて冷却された冷却水が電池21に供給されることにより電池21が冷却されるとともに、第2ラジエータ13bにおいて冷却された冷却水がPCU系20に供給されることによりPCU系20が冷却される。
【0064】
なお、
図10に示される第1冷却モードでは、ヒートポンプサイクルにおいて、チラー12を循環するような熱媒体の流れが形成されていない。よって、ラジエータ13において冷却された冷却水は、チラー12を通過する際にヒートポンプサイクルの熱媒体と熱交換を行うことなく、電池21に供給される。
【0065】
このように、第1冷却モードでは、第1ラジエータ13a及び第2ラジエータ13bにおいて冷却された冷却水を利用して、換言すれば外気により冷却された冷却水を利用してPCU系20及び電池21の冷却が行われる。
(b2)暖機モード
暖機モードは、PCU系20の廃熱を利用して電池21の暖機を行うモードである。
【0066】
具体的には、ECU30は、暖機モードの際には、流路切替弁40のアクチュエータ装置43を制御することにより、流路切替弁40の回転バルブ42の位置を、
図14に示される位置に設定する。これにより、
図17に示されるように、電池21を通過した冷却水は、流路W61を通じて流路切替弁40の流入部44aに流入した後、流路切替弁40の流出部45bから排出されて、流路W66を通じて第2ポンプ16に吸入される。また、PCU系20を通過した冷却水は、流路W64を通じて流路切替弁40の流入部44bから流入した後、流路切替弁40の流出部45cから排出されて、流路W65を通じて第1ポンプ11に吸入される。なお、流路切替弁40の流出部45a及び流出入部46は閉塞されているため、流路W62及び流路W63には冷却水が流れない。また、流路W65を流れる冷却水の流量と流路W66を流れる冷却水の流量とが略同一の流量に調整されているため、バイパス流路W67を介して流路W65と流路W66との間を流れるような冷却水の流れは形成されないか、あるいはそのような冷却水の流れが形成され難くなっている。
【0067】
このような流路が流路切替弁40により形成されることで、冷却システム10では、
図17に矢印で示されるような冷却水の流れが形成される。すなわち、「第1ポンプ11→チラー12→電池21→流路切替弁40→第2ポンプ16→PCU系20→流路切替弁40→第1ポンプ11→・・・」の順で流れる冷却水の流れが形成される。よって、PCU系20の熱を吸収することにより加熱された冷却水が電池21に供給されることで、冷却水の熱により電池21を暖機することが可能である。
【0068】
なお、
図17に示される暖機モードでは、ヒートポンプサイクルにおいて、チラー12を循環するような熱媒体の流れが形成されていない。よって、PCU系20において加熱された冷却水は、チラー12を通過する際にヒートポンプサイクルの熱媒体と熱交換を行うことなく、電池21に供給される。
【0069】
このように、暖機モードでは、PCU系20において加熱された冷却水を利用して、換言すればPCU系20の廃熱を利用して電池21の暖機が行われる。
(b3)第2冷却モード
第2冷却モードは、ヒートポンプサイクルの熱媒体により冷却された冷却水を利用して電池21を冷却するとともに、外気を利用してPCU系20を冷却するモードである。
【0070】
具体的には、ECU30は、第2冷却モードの際には、流路切替弁40のアクチュエータ装置43を制御することにより、流路切替弁40の回転バルブ42の位置を、
図15に示される位置に設定する。これにより、
図18に示されるように、電池21を通過した冷却水は、流路W61を通じて流路切替弁40の流入部44aに流入した後、流路切替弁40の流出部45bから排出されて、流路W66、バイパス流路W67、及び流路W65の下流部分を通じて第1ポンプ11に供給される。また、PCU系20を通過した冷却水は、流路W64を通じて流路切替弁40の流入部44bに流入した後、流出入部46から排出されて、流路W63を通じて第2ラジエータ13bに供給される。なお、流路切替弁40の流出部45a,45cは閉塞されているため、流路W62及び流路W65の上流部分には冷却水が流れない。
【0071】
このような流路が流路切替弁40により形成されることで、冷却システム10では、
図18に矢印で示されるような冷却水の流れが形成される。すなわち、「第1ポンプ11→チラー12→電池21→流路切替弁40→第1ポンプ11→・・・」の順で流れる冷却水の流れが形成される。また、「第2ポンプ16→PCU系20→流路切替弁40→第2ラジエータ13b→第2ポンプ16→・・・」の順で流れる冷却水の流れが形成される。この際、チラー12では、ヒートポンプサイクルを流れる熱媒体と、第1ポンプ11から供給される冷却水との間で熱交換が行われることにより、冷却水が冷却される。このチラー12において冷却された冷却水が電池21に供給されることにより、電池21が冷却される。また、第2ラジエータ13bにおいて冷却された冷却水がPCU系20に供給されることによりPCU系20が冷却される。
【0072】
このように、第2冷却モードでは、チラー12において冷却された冷却水を利用して、換言すればヒートポンプサイクルを流れる冷媒を利用して電池21の冷却が行われる。また、第2ラジエータ13bにおいて冷却された冷却水を利用して、換言すれば外気を利用してPCU系20の冷却が行われる。
【0073】
(b4)第3冷却モード
第3冷却モードは、第1ラジエータ13a及び第2ラジエータ13bを利用して電池21を冷却するモードである。
具体的には、ECU30は、第3冷却モードの際には、流路切替弁40のアクチュエータ装置43を制御することにより、流路切替弁40の回転バルブ42の位置を、
図16に示される位置に設定する。これにより、
図19に示されるように、電池21を通過した冷却水は、流路W61を通じて流路切替弁40の流入部44aに流入した後、流路切替弁40の流出部45a及び流出部45bから排出される。流出部45aから排出された冷却水は第1ラジエータ13aに供給される。流出部45bから排出された冷却水は第2ラジエータ13bに供給される。また、第2ラジエータ13bを通過した冷却水は、流路W63を通じて流路切替弁40の流出入部46に流入した後、流路切替弁40の流出部45cから排出されて、流路W65を通じて第1ポンプ11に供給される。なお、流路W65を流れる冷却水の流量と流路W66を流れる冷却水の流量とは略同一の流量であるため、バイパス流路W67を介して流路W65と流路W66との間を流れるような冷却水の流れは形成されないか、あるいはそのような冷却水の流れが形成され難くなっている。
【0074】
このような流路が流路切替弁40により形成されることで、冷却システム10では、
図19に矢印で示されるような冷却水の流れが形成される。すなわち、「第1ポンプ11→チラー12→電池21→流路切替弁40→第1ラジエータ13a→第1ポンプ11→・・・」の順で流れる冷却水の流れが形成される。また、「第1ポンプ11→チラー12→電池21→流路切替弁40→第2ラジエータ13b→流路切替弁40→第1ポンプ11→・・・」の順で流れる冷却水の流れも形成される。よって、第1ラジエータ13a及び第2ラジエータ13bにおいて冷却された冷却水が電池21に供給されることにより、電池21を冷却水が冷却される。
【0075】
このように、第3冷却モードでは、2つのラジエータ13a,13bを利用して電池21の冷却が行われる。
以上説明した本実施形態の冷却システム10によれば、以下の(7)~(10)に示される作用及び効果を得ることができる。
【0076】
(7)仕切部426が本体部41に対して相対変位することにより、区画室411,412を介して互いに連通される流入部44a,44b、流出部45a~45c、及び流出入部46の対応関係を変更することができる。また、区画室411,412のそれぞれで流入部44a,44b、流出部45a~45c、及び流出入部46の対応関係を変更することが可能である。したがって、流路切替弁40は、流路を変更することが可能な構成を区画室411,412の数だけ有している。結果的に、流路切替弁40は、2つの三方弁に相当する流路の切り替えが可能である。よって、2つの三方弁に代えて、本実施形態の流路切替弁40を用いることにより、構造を簡素化することが可能である。また、2つの三方弁を用いる場合と比較すると、ECU30の制御対象が一つの流路切替弁40となるため、ECU30の処理負担を軽減することができる。
【0077】
(8)流路切替弁40は、仕切部426と一体となって変位し、流入部44b、流出部45a~45c、及び流出入部46のうちのいずれかを閉塞する閉塞部420~425を更に備えている。このような構成によれば、流路切替弁40に接続されている複数の流路W62~W66のうちの単数又は複数の流路を閉塞することが可能となるため、冷却システム10において、より複雑な流路を実現することが可能となる。
【0078】
(9)本体部41には、流入部及び流出部として機能する流出入部46が設けられている。このような構成によれば、冷却システム10において、より複雑な流路を実現することが可能である。
(10)
図16に示されるように、流路切替弁40は、一つの流入部44aと複数の流出部45a,45bとを連通させる第1区画室411を備えている。このような構成によれば、
図19に示されるように、流入部44aから流入した冷却水を、流出部45aに接続される流路W62と、流出部45bに接続される流路W66とに分岐させるような流れを実現することが可能となる。
【0079】
<他の実施形態>
なお、各実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・第1実施形態の流路切替弁40では、流入部44a,44b及び流出部45a~45cの位置を適宜変更してもよい。例えば、
図4の紙面に垂直な方向から流路切替弁40を見たときに流入部44a,44bの位置が同一であれば、流入部44a,44bの位置は軸線mに平行な方向にずれていてもよい。第2実施形態の流路切替弁40についても同様である。
【0080】
・各実施形態の回転バルブ42の形状は、同一の機能を有するものであれば、適宜変更可能である。例えば
図20に示されるように、回転バルブ42の仕切部426は、板状に限らず、所定の厚みを有する角柱状に形成されていてもよい。あるいは、回転バルブ42は、本体部41の内壁面に対して摺動可能に接する円柱部材により構成されていてもよい。回転バルブ42が円柱部材により構成されている場合には、流入部44a,44b、流出部45a~45c、及び流出入部46を接続可能な複数の流路を回転バルブ42に形成すれば、各実施形態の回転バルブ42と同一又は類似の作用及び効果を奏することが可能である。
【0081】
・第1実施形態の流路切替弁40では、回転バルブ42に閉塞部420,421が設けられていなくてもよい。また、第2実施形態の流路切替弁40では、回転バルブ42に閉塞部420~425が設けられていなくてもよい。
・流路切替弁40は、3つ以上の流入部、及び4つ以上の流出部を有するものであってもよい。また、回転バルブ42の仕切部426は、本体部41の内室410を3つ以上の区画室に仕切るものであってもよい。
【0082】
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0083】
W23,W24:流路(外部流路)
40:流路切替弁
41:本体部
44a:流入部(第1流入部)
44b:流入部(直列流入部,第2流入部)
45a:流出部(共通流出部,第1流出部)
45b:流出部(直列流出部,第2流出部)
45c:流出部
46:流出入部(流入部、流出部)
410:内室
411,412:区画室
420~425:閉塞部
426:仕切部