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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】遮音構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/86 20060101AFI20240214BHJP
   E04B 1/98 20060101ALI20240214BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20240214BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
E04B1/86 G
E04B1/86 C
E04B1/98 K
E04B9/00 A
F16F15/02 C
F16F15/02 Q
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020096305
(22)【出願日】2020-06-02
(65)【公開番号】P2021188415
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】永松 英夫
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-125790(JP,A)
【文献】特開2018-123669(JP,A)
【文献】特開2018-204627(JP,A)
【文献】特開2018-028177(JP,A)
【文献】米国特許第06267361(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04B 9/00
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の振動を吸収するための遮音構造であって、
面材と、
前記面材を支持する支持機構と、
前記支持機構に取り付けられ当該支持機構の振動を吸収する第1ダイナミックダンパーと、
前記面材に取り付けられ当該面材の振動を吸収する第2ダイナミックダンパーと、を備え、
前記第1ダイナミックダンパーは、ゴムを含みかつ前記支持機構にこれと接触した状態で配置された第1弾性部材と、当該第1弾性部材に固定された第1の錘と、を備え、
前記第2ダイナミックダンパーは、グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含みかつ前記面材の表面にこれと接触した状態で配置された第2弾性部材と、当該第2弾性部材に固定された第2の錘と、を備え、所定の周波数帯域内の振動を吸収するようにチューニングされた固有振動数を有し、
前記第1ダイナミックダンパーは、前記第2ダイナミックダンパーにより吸収された振動の床衝撃音レベルのうち、前記所定の周波数帯域内において所定の床衝撃音レベルを超えるものとして予め設定された周波数帯域内における振動を吸収するようにチューニングされた固有振動数を有する、遮音構造。
【請求項2】
請求項1に記載の遮音構造において、
前記第1ダイナミックダンパーの固有振動数は、前記所定の周波数帯域の中心周波数よりも低い、遮音構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の遮音構造において、
前記面材は、前記建物内の天井を構成し、
前記支持機構は、第1の方向に沿って延びかつ当該第1の方向と直交する第2の方向に沿って互いに離間して配置された状態で前記面材の上面に固定された複数の野縁と、前記野縁の上方に配設され前記野縁を支持する野縁受とを備え、
前記第2ダイナミックダンパーは、前記面材の上面における隣接する前記野縁の間に配置され、
前記第1ダイナミックダンパーは、前記野縁受に取り付けられている、遮音構造。
【請求項4】
前記第2ダイナミックダンパーは、野縁受における野縁との交差部に設けられている、請求項3に記載の遮音構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の重量床衝撃による振動を吸収する遮音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内の空間を仕切る天井ボードの重量床衝撃による振動を吸収するために、例えば引用文献1に記載の建物の天井構造や、引用文献2に記載のような振動吸収部材が知られている。
【0003】
引用文献1に記載の建物の天井構造では、上層階の床梁に取り付けられた天井下地材に、錘(質量体)と弾性部材(弾性体)とを組み合わせてなるダイナミックダンパーが装着されている。このダイナミックダンパーは、その弾性部材によって錘を弾性支持するようになっている。このような弾性部材としては、例えば、ゴムを含むものが用いられる。そして、上層階の床において発生した衝撃に伴って、錘が振動することにより下層階へ伝搬する重量床衝撃音を低減することができる。
【0004】
一方、引用文献2に記載の振動吸収部材は、グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含むシート状の弾性部材と、この弾性部材に固定された錘とを有しており、天井ボードの上面に配置されている。錘と、弾性部材のうち錘を支持する部分とが、それぞれダイナミックダンパーとして機能し、錘が天井ボードの振動に伴って振動することにより天井ボードの振動を吸収する。
【0005】
また、このような振動吸収部材を用いた床構造における衝撃音の性能基準として、遮音等級を表すL値(JIS A 1418)が一般に用いられる。L値は、床衝撃音の周波数が大きくなるにつれてその床衝撃音レベルが小さくなるように設定されている。重量床衝撃音に関して遮音等級を決定する周波数帯域は、ほとんどが63Hzオクターブバンド中心周波数帯域となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-342580号公報
【文献】特開2018-123669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の建物の天井構造や引用文献2に記載の振動吸収部材を用いた場合、振動吸収の対象となる周波数帯域における振動を十分に吸収することができず、当該振動による床衝撃音レベルが目標とするL値を超えることがある。その理由は以下のように考えられる。
【0008】
すなわち、特許文献1に記載の建物の天井構造のダイナミックダンパーでは、弾性部材の素材としてゴムが用いられる。そして、例えば、弾性部材としてグラスウールやロックウールを用いた場合に比べて、振動を有効に吸収することができる周波数幅である有効周波数幅が狭く、その極大値が大きい、という特性を有する。言い換えると、このダイナミックダンパーは、急峻な共振特性を有する。このような特性により、特定の狭い範囲内における振動を吸収することができるものの、吸収すべき周波数帯域全体における振動を十分に抑えきれないことがあった(図3図2参照)。
【0009】
一方、特許文献2に記載の振動吸収部材では、弾性部材の素材としてグラスウール又はロックウールを含む材質が用いられる。そして、例えば弾性部材としてゴムを用いた場合に比べて、有効周波数幅が広く、その極大値が小さい、という特性を有する。言い換えると、この振動吸収部材は、なだらかで裾野が広い共振特性を有する。このような特性により、吸収すべき周波数帯域内で床衝撃音レベルが極大値を迎える場合においては、当該周波数における振動を十分に抑えきれないことがあった(図3図2参照)。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、面材の振動をより一層効果的に吸収することができる遮音構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係る遮音構造は、建物内の振動を吸収するための遮音構造であって、面材と、前記面材を支持する支持機構と、前記支持機構に取り付けられ当該支持機構の振動を吸収する第1ダイナミックダンパーと、前記面材に取り付けられ当該面材の振動を吸収する第2ダイナミックダンパーと、を備え、前記第1ダイナミックダンパーは、ゴムを含みかつ前記支持機構にこれと接触した状態で配置された第1弾性部材と、当該第1弾性部材に固定された第1の錘と、を備え、前記第2ダイナミックダンパーは、グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含みかつ前記面材の表面にこれと接触した状態で配置された第2弾性部材と、当該第2弾性部材に固定された第2の錘と、を備え、所定の周波数帯域内の振動を吸収するようにチューニングされた固有振動数を有し、前記第1ダイナミックダンパーは、前記第2ダイナミックダンパーにより吸収された振動の床衝撃音レベルのうち、前記所定の周波数帯域内において所定の床衝撃音レベルを超えるものとして予め設定された周波数帯域内における振動を吸収するようにチューニングされた固有振動数を有する。
【0012】
前記遮音構造では、前記第1ダイナミックダンパーが、前記支持機構にこれと接触した状態で配置された第1弾性部材と、当該第1弾性部材に固定された第1の錘と、を備えるので、支持機構に伝わった振動が第1弾性部材を介して第1の錘に伝えられ、この第1の錘が振動する。このため、第1の錘から面材に反力が伝わり、この反力により支持機構に伝わった振動を減衰することができ、その結果遮音構造の遮音性を高めることができる。
【0013】
また、前記遮音構造では、第1ダイナミックダンパーに加えて第2ダイナミックダンパーを備えている。第2ダイナミックダンパーは、グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含みかつ前記面材の表面にこれと接触した状態で配置された第2弾性部材と、当該第2弾性部材に固定された第2の錘と、を備える。このため、面材に伝わった振動を減衰し、遮音構造の遮音性を高めることができる。ここで、第2ダイナミックダンパーの第2弾性部材は、グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含んでいるため、振動を有効に吸収することができる周波数幅である有効周波数幅が比較的大きく、その極大値が比較的小さい、という特性を有する。この特性が原因であると考えられるが、第2ダイナミックダンパーのみを用いた場合、吸収すべき周波数帯域における振動を十分に抑えきれない場合がある。
【0014】
ここで、第1ダイナミックダンパーは、前記第2ダイナミックダンパーにより吸収された振動の床衝撃音レベルのうち、前記所定の周波数帯域内において所定の床衝撃音レベルを超えるものとして予め設定された周波数帯域内の振動を吸収するようにチューニングされた固有振動数を有する。そのため、第2ダイナミックダンパーにより吸収されてもなお所定の床衝撃音レベルを超える振動を、第1ダイナミックダンパーによりさらに吸収することができる。このため、建物内の振動をより効果的に吸収することができる。
【0015】
さらに、第2弾性部材は、グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含んでいるので、比較的安価に第2弾性部材を構成することができるとともに、この第2弾性部材によって面材の断熱性能を向上させることができる。また、素材としてゴムを用いた場合に比べて、安価でより広い周波数帯域の振動を吸収することができる。
【0016】
ここで、建物内の面材に伝わる振動の床衝撃音レベルは、比較的小さい周波数帯域において大きくなる傾向がある。一方、第1ダイナミックダンパーの有効周波数幅は、幅広く振動吸収特性を持たせることが難しい。そこで、前記第1ダイナミックダンパーの固有振動数を、前記所定の周波数帯域の中心周波数よりも小さくすることにより、前記比較的小さい周波数帯域における振動を効果的に吸収することができる。
【0017】
前記遮音構造において、前記面材は、前記建物内の天井を構成し、前記支持機構は、第1の方向に沿って延びかつ当該第1の方向と直交する第2の方向に沿って互いに離間して配置された状態で前記面材の上面に固定された複数の野縁と、前記野縁の上方に配設され前記野縁を支持する野縁受とを備え、前記第2ダイナミックダンパーは、前記面材の上面における隣接する前記野縁の間に配置され、前記第1ダイナミックダンパーは、前記野縁受に取り付けられているのが好ましい。
【0018】
この構成によれば、前記第2ダイナミックダンパーが、隣接する前記野縁の間に配置されているので、第2ダイナミックダンパーの野縁の上方への張り出しを抑えることにより、当該野縁の上方に位置する野縁受に対する第1ダイナミックダンパーの設置領域を確保することができる。そのため、全体としてコンパクトな遮音構造を実現することができる。
【0019】
前記遮音構造において、前記第2ダイナミックダンパーは、野縁受における野縁との交差部に設けられているのが好ましい。
【0020】
この構成によれば、野縁間の領域に第2ダイナミックダンパーが設けられ、野縁上に第1ダイナミックダンパーが設けられることにより、面材上に満遍なく両ダンパーを配置することができる。さらに、支持機構における剛性の高い箇所に第1ダイナミックダンパーを配置した状態となり、第1ダイナミックダンパーによる振動の吸収性能を効果的に発揮させることができる。これらの理由により、面材の振動を効率的に吸収することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の遮音構造によれば、面材の振動をより一層効果的に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】天井ボードに伝わる重量床衝撃音が第1及び第2ダイナミックダンパーにより吸収された状態における当該重量床衝撃音の床衝撃音レベルの狭帯域表示とL値の等級曲線との関係を表すグラフである。
図2】本発明の遮音構造を構成する第1ダイナミックダンパーの共振分布(周波数に対する共振倍率の分布)を表すグラフである。
図3】前記遮音構造を構成する第2ダイナミックダンパーの共振分布を表すグラフである。
図4】前記遮音構造の全体構造を表す斜視図である。
図5図4の拡大図である。
図6】前記遮音構造の縦断面図である。
図7図6のVII-VII断面図である。
図8】前記遮音構造に取り付けられた防振吊り具を表す側面図である。
図9図8のIX-IX断面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る遮音構造の図6相当図である。
図11図10のXI-XI断面図である。
図12】本発明の第3実施形態に係る遮音構造の図6相当図である。
図13図12のXIII-XIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る遮音構造1が適用された遮音床構造100について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
この遮音床構造100は、例えば一般鉄骨造の事務所やホテルなどに使用される。
【0025】
具体的に、この遮音床構造100は、図6及び図7に示すように、上階層の床部分を構成する床材と、一方向に延びてこの床材を支持する複数の梁部材7と、一方向に直交する方向に延び、隣り合う梁部材7の間に固定された天井支持梁6と、天井支持梁6に吊り下げられ、下層階の天井を構成するとともに当該天井の振動を吸収するための機構を含む遮音構造1と、を備えている。以下では、一方向を前後方向と呼び、一方向に直交する方向を左右方向と呼ぶ。
【0026】
床材は、梁部材7上に設けられた鋼板105と、鋼板105上に折り上げられて固定されたデッキプレート部103と、デッキプレート部103を上方から覆う床下地材101と、鋼板105及びデッキプレート部103と床下地材101との間に充填されたコンクリート材107と、を有している。以下、鋼板105と、デッキプレート部103と、を総称してデッキプレートと呼ぶ。
【0027】
デッキプレートは、図7に示すように断面視で波状を呈した薄鋼板からなり、コンクリート打設時に床下地材101に生じた荷重を負担するものである。デッキプレートとしては、公知のデッキプレートを用いるのでここでは詳細な説明を省略する。
【0028】
コンクリート材107は、現場打設によるコンクリートである。また、コンクリート材107には、強度向上のために鉄筋が埋め込まれている。
【0029】
梁部材7は、本実施形態では、ウェブと、ウェブの上下両端に設けられた上下一対のフランジ7a,7aと、を有する鋼材である。梁部材7の上側のフランジ7a上には、デッキプレートの鋼板105が、溶接(例えばスポット溶接)等により固定されている。
【0030】
天井支持梁6は、図7に示すようにウェブ6cと、ウェブ6cの上下両端に設けられた上下一対のフランジ6a,6aと、それぞれのフランジ6a,6aの前後方向一方側(本実施形態では前側)の端部から互いに近づく方向に延びる一対のリップ6b,6bと、を有する。天井支持梁6は、梁部材7よりも高さ寸法が小さく設定されており、梁部材7の一対のフランジ7a,7a同士の間で梁部材7に固定されている。
【0031】
天井支持梁6の長手方向(左右方向)両端は、隣り合う梁部材7,7のそれぞれに固定されている。具体的には、天井支持梁6の長手方向端部が梁部材7の上下のフランジ7a,7aの間に配置された状態で、天井支持梁6の下側のフランジ6aと梁部材7の下側のフランジ7aとがボルト等を介して連結されている。なお、天井支持梁6と梁部材7とを連結する方法はボルト等を用いた方法に限られず、溶着等であってもよい。
【0032】
遮音構造1は、図4及び図5に示すように、石膏ボード等からなる天井ボード8(本発明の「面材」に対応)と、天井支持梁6に固定され、天井ボード8を支持するための支持機構3と、支持機構3に取り付けられた第1ダイナミックダンパー30と、天井ボード8に取り付けられた第2ダイナミックダンパー20と、を備える。
【0033】
天井ボード8は、水平方向に延びる板状部材であり、支持機構3により天井支持梁6から吊り下げられている。また、天井ボード8として用いることができるボードは石膏ボードに限られず、例えば木質の板であってもよい。
【0034】
支持機構3は、図4及び図5に示すように、互いに平行に配置され天井ボード8の上面に固定された複数の野縁5と、野縁5の上方で野縁5に対して直交するように配置されるとともに野縁5を支持する複数の野縁受4と、野縁受4を建物等の梁部材7に吊り下げるとともに所定の防振性能を有する防振吊り具2と、を備えている。
【0035】
野縁5は、本実施形態では、前後方向(本発明の「第1の方向」に対応)に沿って延びる角棒状(断面視略四角形状の筒状)の部材である。複数の野縁5は、左右方向(本発明の「第2の方向」に対応)に互いに離間して配置された状態で天井ボード8の上面に固定されている。野縁5は、図8に示すように野縁支持具50を介して野縁受4に取り付けられている。なお、野縁5は左右方向に沿って延びるように配置されていてもよい。この場合、後述する野縁受4は、前後方向に延びるように配置される。
【0036】
野縁5には、図8及び図9に示すように、その左右方向両側の側面に、野縁支持具50を係止するための係止溝5a,5aが長手方向(前後方向)に沿って伸びて形成されている。なお、図9は、図8のIX-A及びIX-Bにおける断面図を表す。
【0037】
野縁支持具50は、上面部と、上面部の左右方向両端に延出して形成され野縁5の係止溝5aと係合可能な一対の係止部50a,50aと、上面部から立ち上がり野縁受4に係止する爪部と、を有する。
【0038】
係止部50a,50aと、係止溝5a,5aとが係合することにより野縁5に野縁支持具50が係止される。
【0039】
爪部は、板部材の上方に立ち上がって前方向に曲折して形成されている。野縁受4の後述する上側フランジを、この爪部と板部材の間に挟み込むことにより野縁支持具50を野縁受4に係止することができる。
【0040】
野縁受4は、本実施形態では、図5及び図7に示すように、後方向に開口して左右方向に延びる溝形鋼であり、前後方向に互いに離間して配置された状態で梁部材7に吊り下げられている。具体的に、野縁受4は、左右方向に延びるウェブ41と、ウェブ41の上端縁及び下端縁から後方向に延びる上下一対のフランジ40と、を有する。なお、野縁受4が開口する方向は後方向である必要はなく、前方向であってもよい。
【0041】
野縁受4は、また、第1ダイナミックダンパー30が取り付けられる野縁受4Aと、防振吊り具2が取り付けられる野縁受4Bと、に分けられる。以下では、両者を区別する必要がある場合には、それぞれ野縁受4A、野縁受4Bと呼称し、両者を区別する必要がない場合には、単に野縁受4と総称する。
【0042】
野縁受4Aのウェブ41には、ボルト34が挿通可能な挿通孔(図略)が左右方向に所定間隔空けて形成されている。そして、これらボルト34及び挿通孔を介して、ウェブ41に第1ダイナミックダンパー30が取り付けられるようになっている。
【0043】
野縁受4Bの上側のフランジ40には、吊りボルト12が挿通可能な挿通孔(図略)が形成されている。この挿通孔に吊りボルト12が挿通された状態で上下一対のナット19,19によりフランジ40が挟み込まれることにより、野縁受4Bが防振吊り具2に吊り下げられている。
【0044】
防振吊り具2は、図5及び図7に示すように、梁部材7に装着される梁装着部材10と、この梁装着部材10に取り付けられた防振ゴム11と、この防振ゴム11に支持された吊りボルト12とを備えている。
【0045】
梁装着部材10は、防振ゴム11が配置される配置面15と、配置面15が梁部材7から前方に突出するように配置面15を梁部材7に取り付けるための一対の取付部16,16と、を有する。取付部16は、配置面15の左右方向の両端から立設され天井支持梁6に係合可能である。
【0046】
配置面15は平板形状の板材であり、この配置面15には、吊りボルト12が挿通可能な挿通孔(図略)が上下方向に貫通して形成されている。図5及び図8に示すように吊りボルト12は、配置面15上に配置された防振ゴム11及び配置面15の挿通孔を上下方向に貫通した状態で防振ゴム11上に設けられたナット18に螺合している。したがって、吊りボルト12に生じる荷重は、配置面15との間で防振ゴム11を圧縮する方向に働く。
【0047】
第1ダイナミックダンパー30は、支持機構3の高さ寸法(上下方向の寸法)に収まるように、前方向に突出した状態で野縁受4に固定されている。
【0048】
具体的に、第1ダイナミックダンパー30は、野縁受4のウェブ41に装着された装着板33と、装着板33から前方に延びる第1弾性部材32と、第1弾性部材32の先端部に取り付けられた第1の錘31と、を有する。
【0049】
このようにすることで、遮音床構造100における配管や断熱材、吸音材等の施工に際して、第1ダイナミックダンパー30が邪魔になるのを抑制することができる。
【0050】
また、第1ダイナミックダンパー30は、野縁受4Aにおける野縁受4Aと野縁5との各交差部に配置されている。このようにすれば、野縁5間に第2ダイナミックダンパー20が設けられ、野縁5上に第1ダイナミックダンパー30が設けられることにより、面材上に満遍なく両ダンパー20,30を配置することができる。さらに、支持機構3における剛性の高い箇所に第1ダイナミックダンパー30を配置した状態となり、第1ダイナミックダンパー30による振動の吸収性能を効果的に発揮させることができる。
【0051】
第1ダイナミックダンパー30の共振分布(周波数に対する共振倍率の分布)は、図2に示すような特性を有する。具体的に、第1ダイナミックダンパー30の有効周波数幅d1は、第2ダイナミックダンパー20の有効周波数幅d2よりも小さく、第1ダイナミックダンパー30の共振倍率の極大値f1は、第2ダイナミックダンパー20の極大値f2よりも小さい。また、第1ダイナミックダンパー30の固有振動数t1は、周波数帯域Tの中心周波数(63Hz)よりも小さく、周波数帯域Tの最低周波数(45Hz)よりも大きくなるように設定される。また、第1ダイナミックダンパー30の振動吸収の対象となる振動の周波数帯域Sの範囲は、第2ダイナミックダンパー20の振動吸収の対象となる振動の周波数帯域Tの範囲よりも狭い。さらに、第1ダイナミックダンパー30に設定された周波数帯域Sの中心周波数は、第2ダイナミックダンパー20に設定された周波数帯域Tの中心周波数よりも低い。つまり、第1ダイナミックダンパー30は、周波数帯域Tの比較的低周波数側の振動を効果的に吸収するように構成されている。このように構成すれば、床衝撃音レベルが相対的に大きい衝撃音の低周波数側において、第2ダイナミックダンパー20で十分に吸収できない比較的低周波数側の振動を、第1ダイナミックダンパー30により効果的に吸収することができる。
【0052】
第1の錘31は、振動を効果的に吸収するために野縁受4よりも比重の高い素材により構成されている。具体的に、第1の錘31は、鋼製あるいは鉄製とされている。
【0053】
第1弾性部材32として、第1ダイナミックダンパー30の共振分布の極大値f1(図2参照)が、比較的大きくなるように(極大値f1が第2ダイナミックダンパー20の共振分布の極大値f2よりも大きくなるように)、合成ゴム等により成形されたものが用いられる。
【0054】
装着板33にはボルト34が挿通可能な一対の挿通孔(図略)が形成されている。この挿通孔と野縁受4のウェブ41に形成された挿通孔とが重なった状態で、これら挿通孔にボルト34が挿通されることにより、装着板33が野縁受4に固定されるようになっている。
【0055】
第2ダイナミックダンパー20は、図5図7に示すように弾性力を有するシート状の第2弾性部材22と、この第2弾性部材22に固定された複数(本実施形態では4個)の第2の錘24と、第1係止用シート26と、第2係止用シート27と、を有し、建物内で発生する予め設定された周波数帯域T(図1及び図3参照)内での振動を吸収するようにチューニングされた固有振動数を有する。
【0056】
本実施形態の第2ダイナミックダンパー20の固有振動数t2(図3参照)は、重量床衝撃音を低減するために63Hzを中心とする所定の周波数帯域T内での振動を吸収するようにチューニングされている。つまり、第2ダイナミックダンパー20は、63Hzを中心とする所定の周波数帯域Tの振動に同調して振動するようになっている。具体的に、各第2弾性部材22について、第2弾性部材22の密度は60kg/m3以上(例えば、85kg/m3)、厚み寸法(上下方向の寸法)が12mm程度に設定されている。このような第2弾性部材22に対して、重さ250gの錘本体24aが前後左右方向に並んで4つ固定されている。錘本体24aが、鋼製あるいは鉄製とされて、その前後方向の寸法及び左右方向の寸法が50mm程度、高さ寸法が12mm程度の直方体形状とされている。本実施形態の第2ダイナミックダンパー20において、隣り合う錘24同士の距離、又は錘24から第2弾性部材22の端面までの距離として、第2弾性部材22を介して周波数帯域T内での振動を第2の錘24に適切に伝播できる距離が30mmに設定されている。
【0057】
第2ダイナミックダンパー20の共振分布(周波数に対する共振倍率の分布)は、図3に示すように、固有振動数t2近傍に共振倍率の極大値f2を有し、衝撃音の周波数が固有振動数t2から離れるにつれて共振倍率が小さくなるような特性を示す。また、本実施形態では、第2ダイナミックダンパー20の共振分布は、63Hzを中心とする所定周波数帯域Tを含むようになっている。
【0058】
また、第2ダイナミックダンパー20は、図4図6に示すように、隣り合う野縁5の間に配置されている。
【0059】
第2弾性部材22は、第2の錘24が天井ボード8の振動に伴って振動可能となるように第2の錘24を支持する部材であり、天井ボード8と接触した状態でこの天井ボード8の上面に沿って延びるように載置されている。
【0060】
また、本実施形態では、第2弾性部材22として、グラスウールが圧縮されてシート状に成形されたものが用いられる。その結果、第2ダイナミックダンパー20は、その有効周波数幅d2(図3参照)が比較的大きくなる(有効周波数幅d2が第1ダイナミックダンパー30の有効周波数幅d1よりも大きくなる)という特性を有する。なお、本実施形態では第2弾性部材22をグラスウールにより構成したが、第2弾性部材22がグラスウールとロックウールの少なくとも一方を含んでいる場合、上記のような特性を有する。
【0061】
また、第2弾性部材22の左右方向の寸法は、図9に示すように、隣り合う野縁5同士の離間距離よりも小さい値に設定されており、第2弾性部材22の左右両縁と野縁5との間には、それぞれ隙間が形成されている。これは、第2弾性部材22と野縁5とが接触して第2弾性部材22の振動が阻害されるのを抑制するためである。
【0062】
第2の錘24は、第2弾性部材22よりも比重の高い錘本体24aと、錘本体24aと第2弾性部材22との間に介在してこれらを接着する接着層24bとを備える。接着層24bは、錘本体24aの第2弾性部材22側の表面全体に形成されている。この接着層24bは、例えば、錘本体24aの表面に接着剤が塗布された後、第2弾性部材22上に接着されることで形成される。
【0063】
また、各第2の錘24同士は、互いに干渉し合うのを抑制するために、第2弾性部材22の上面に互いに所定距離(本実施形態では、上記30mmの距離)以上離間した位置に固定されている。
【0064】
第1係止用シート26は、左右方向に延びるとともに第2弾性部材22の上面に接着される本体部26aと、第2弾性部材22の左右方向の両側端面から外側に延びる一対の延長部26b,26bとで構成されている。
【0065】
第2係止用シート27は、左右方向に延びるとともに第2弾性部材22の下面に接着される本体部27aと、第2弾性部材22の左右方向の両側端面から外側に延びる一対の延長部27bとで構成されている。
【0066】
第1係止用シート26及び第2係止用シート27としては、例えば基材の一方の表面に接着剤が塗布されて当該一方の表面が接着面とされたテープが用いられる。また、第1係止用シート26及び第2係止用シート27は、それぞれ第2弾性部材22の前後方向に沿って離間した状態でそれぞれ2本ずつ配置されている。
【0067】
第1係止用シート26(延長部26b)と第2係止用シート27(延長部27b)とが重なった部分にはそれぞれ、これら各部の表裏を貫通する貫通孔(図略)が形成されている。
【0068】
ここで、野縁5には、これら延長部26bと延長部27bの貫通孔に挿通して第1係止用シート26と第2係止用シート27を係止するための仮止部材28が設けられている。
【0069】
仮止部材28は、延長部26b,27bを係止して第2ダイナミックダンパー20を野縁5に仮止めするためのものである。図9に示すように、仮止部材28は、左右方向に延びる基板と、基材の両縁からそれぞれ下方に延びる一対の延出部と、各延出部の下縁からそれぞれ斜め上方に延びる係止突起28aとを有する。
【0070】
仮止部材28は、各延出部が野縁5の幅方向(左右方向)の両側に沿う状態で基板が野縁5の上面に載置された状態で、野縁5に取り付けられる。仮止部材28は、野縁5の長手方向(前後方向)に沿うように互いに離間した状態で複数設けられる。
【0071】
第1係止用シート26の延長部26bと、第2係止用シート27の延長部27bと、を重ね合わせた状態で挿通孔に仮止部材28の係止突起28aをこれら挿通孔に挿通することで、第1係止用シート26と、第2係止用シート27を野縁5に係止することができる。これにより、第2ダイナミックダンパー20を支持機構に仮止できる。
【0072】
この状態で、第2ダイナミックダンパー20を天井ボード8により下方から押し上げることで、第2ダイナミックダンパー20を天井ボード8の上面に配置することができる。
【0073】
(遮音構造の動作)
第2ダイナミックダンパー20の固有振動数t2は、所定の周波数帯域T内での振動を吸収するために当該周波数帯域Tの中心となる周波数と合うようにチューニングされている。そのため、第2ダイナミックダンパー20の共振分布は、固有振動数t2において共振倍率の極大値f2を有する。本実施形態では、第2ダイナミックダンパー20の共振分布は、63Hzにおいて共振倍率の極大値f2を有し、周波数帯域T内での振動、すなわち重量床衝撃音を吸収するものとなされている。
【0074】
しかし、第2ダイナミックダンパー20を用いて周波数帯域Tの重量床衝撃音を吸収しても、床衝撃音レベルが目標となるL値の性能基準を局所的に満たさない場合がある。以下では、図1に示すように、周波数帯域Tの最低周波数と中心周波数(63Hz)との間である周波数において目標となるL値を上回る床衝撃音レベルの極大値Pが存在している場合について説明する。なお、L値は、「建築物の現場における床衝撃音レベルの測定方法」(JIS A 1418)に基づいて測定される。
【0075】
このような極大値Pにおける床衝撃音レベルを吸収するために、第1ダイナミックダンパー30は、極大値Pにおける周波数と共振するような固有振動数を有するようにチューニングされている。具体的に、第1ダイナミックダンパー30の固有振動数t1は、極大値Pにおける振動数とほぼ等しくなっている。
【0076】
第1ダイナミックダンパー30及び第2ダイナミックダンパー20を上記のように構成することで、有効周波数幅d2が比較的大きい第2ダイナミックダンパー20により周波数帯域Tの振動を幅広く吸収し、さらに第2ダイナミックダンパー20では十分に吸収できなかった周波数(極大値P)における振動を、共振分布の共振倍率の極大値f1が比較的大きい第1弾性部材32により効果的に吸収することができる。
【0077】
その結果、図1の破線に示すように、目標となるL値における性能基準を満たすように極大値Pにおける床衝撃音レベルを低下させることができる。
【0078】
(作用効果)
本実施形態に係る遮音構造1によれば、第1ダイナミックダンパー30は、ゴムを含みかつ支持機構3にこれと接触した状態で配置された第1弾性部材32と、第1弾性部材32に固定された第1の錘31と、を備えるので、支持機構3に伝わった振動が第1弾性部材32を介して第1の錘31に伝えられ、この第1の錘31が振動する。このため、第1の錘31から天井ボード8に反力が伝わり、この反力により支持機構3に伝わった振動を減衰することができ、その結果遮音構造1の遮音性を高めることができる。
【0079】
また、遮音構造1では、第1ダイナミックダンパー30に加えて第2ダイナミックダンパー20を備えている。第2ダイナミックダンパー20は、グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含みかつ天井ボード8の表面にこれと接触した状態で配置された第2弾性部材22と、第2弾性部材22に固定された第2の錘24と、を備える。このため、天井ボード8に伝わった振動を減衰し、遮音構造1の遮音性を高めることができる。ここで、第2ダイナミックダンパー20の第2弾性部材22は、グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含んでいるため、振動を有効に吸収することができる周波数幅である有効周波数幅が比較的大きく、その極大値f2が比較的小さい、という特性を有する。この特性が原因であると考えられるが、第2ダイナミックダンパー20のみを用いた場合、吸収すべき周波数帯域Tにおける振動を十分に抑えきれない場合がある。
【0080】
ここで、第1ダイナミックダンパー30は、第2ダイナミックダンパー20により吸収された振動の床衝撃音レベルのうち、所定の周波数帯域T内において所定の床衝撃音レベルを超えるものとして予め設定された周波数帯域S内の振動を吸収するようにチューニングされた固有振動数を有する。そのため、第1ダイナミックダンパー30により吸収されてもなお所定の床衝撃音レベルを超える振動を、第2ダイナミックダンパー20によりさらに吸収することができる。このため、建物内の振動をより効果的に吸収することができる。
【0081】
さらに、第2弾性部材22は、グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含んでいるので、比較的安価に第2弾性部材22を構成することができるとともに、この第2弾性部材22によって天井ボード8の断熱性能を向上させることができる。また、素材としてゴムを用いた場合に比べて、安価でより広い周波数帯域の振動を吸収することができる。
【0082】
ここで、建物内の天井ボード8に伝わる振動の床衝撃音レベルは、比較的低い周波数帯域において大きくなる傾向がある。一方、第1ダイナミックダンパー30の有効周波数幅d1は上述した通り第2ダイナミックダンパー20の有効周波数幅d2と比較して小さく、幅広く振動吸収性能を持たせることが難しい。そこで本実施形態の遮音構造1のように、第1ダイナミックダンパー30の固有振動数を所定の周波数帯域Tの中心周波数(63Hz)よりも小さくすることにより、周波数帯域T内における比較的低い周波数帯域S内の振動を効果的に吸収することができる。
【0083】
また、第2ダイナミックダンパー20が、隣接する野縁5の間に配置されているので、第2ダイナミックダンパー20の野縁5の上方への張り出しを抑えることにより、野縁5の上方に位置する野縁受4に対する第1ダイナミックダンパー30の設置領域を確保することができる。そのため、全体としてコンパクトな遮音構造1を実現することができる。
【0084】
また、野縁5間の領域に第2ダイナミックダンパー20が設けられ、野縁5上に第1ダイナミックダンパー30が設けられることにより、天井ボード8上に満遍なく両ダンパー20,30を配置することができる。さらに、支持機構3における剛性の高い箇所に第1ダイナミックダンパー30を配置した状態となり、第1ダイナミックダンパー30による振動の吸収性能を効果的に発揮させることができる。このため、天井ボード8の振動を効率的に吸収することができる。
【0085】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0086】
第1実施形態の遮音床構造100では、デッキプレートを有する床材が用いられているが、床材の種類はこれに限定されない。例えば、第2実施形態の遮音床構造200では、図10及び図11に示すように、遮音性能の高い遮音床パネル203を有する床材が用いられている。
【0087】
この床材は、床下地材101と、床下地材101を支持する遮音床パネル203と、を含む。
【0088】
遮音床パネル203は、左右方向に貫通する中空部204aが形成された押出成形セメント板204と、この中空部204aに微動可能に充填された砂状無機材205と、を備えている。
【0089】
なお、第2実施形態では、梁部材7は、ボルト等を介して遮音床パネル203に固定されている。
【0090】
(作用効果)
この遮音床構造200によれば、高い剛性を有するとともに、床衝撃音の伝搬に伴う振動時に砂状無機材205が微動して振動を打ち消すことができる。このため、一般的なALCからなる床パネルと比べて、重量床衝撃音の遮断性能を向上することができる。
【0091】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態に係る遮音構造について、第1実施形態及び第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0092】
第1実施形態の遮音床構造100では、上述したようにデッキプレートを有する床材が用いられ、第2実施形態の遮音床構造200では、遮音床パネル203を有する床材が用いられている。また、第1及び第2実施形態では、床下地材101を支持するために鋼材により構成された梁部材7が用いられている。これに対し、第3実施形態の遮音床構造300では、床材としての床下地材101が木造の支持部材によって支持されている点で第1及び第2実施形態とは相違する。
【0093】
また、第1及び第2実施形態では、天井支持梁6を介して遮音構造1が吊り下げられている。これに対し、第3実施形態では、木造の支持部材に遮音構造1が直接吊り下げられている点で相違する。
【0094】
具体的に遮音床構造300の床材は、図12及び図13に示すように、床下地材101と、床下地材101を支持する支持部材と、を含む。
【0095】
支持部材は、左右方向に延びて床下地材101を支持する複数の木梁307と、隣り合う木梁307同士を接続し木梁307とともに床下地材101を支持する根太303と、木梁307に固定され遮音構造1を吊り下げる吊り下げ部材308と、を備える。
【0096】
木梁307は、例えば木製角材からなるものが用いられ、断面視矩形となるように形成される。木梁307は、前後方向に沿って互いに離間した状態で配置されている。隣り合う木梁307同士の対向側面上部には、根太303の前後方向端部を下方及び左右方向から受ける受け部材305が、互いに対向する方向に突出して形成されている。
【0097】
根太303は、木梁307に固定されている。具体的に、根太303の長手方向(前後方向)両端部が、各受け部材305にそれぞれ嵌め込まれている。根太303は、床下地材101の下面に接触した状態で、この床下地材101を支持している。
【0098】
吊り下げ部材308は、上下方向に延びる棒状部材である。吊り下げ部材308の上端部は、木梁307の左右方向側面に金具等を介して固定されている。また、吊り下げ部材308の下端部には遮音構造の野縁受4がボルト等を介して固定されている。このようにして、遮音構造1が、吊り下げ部材308を介して木梁307に吊下げられている。
【0099】
(作用効果)
このような第3実施形態に係る遮音床構造300によれば、木造住宅においても、木質感を確保しつつ重量床衝撃音の遮断性能を向上することができる。
【0100】
(変形例)
上記実施形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明が適用される範囲は上記実施形態に限定されない。
【0101】
例えば、上記実施形態に係る遮音構造1は、建物内の上下方向に隣り合う部屋間の振動を吸収するために、各部屋の遮音床構造に設けられるが、遮音構造1が設けられる場所は各部屋の遮音床構造に限られず、例えば水平方向に隣り合う部屋同士を隔てる壁であってもよい。
【0102】
上記実施形態では、第2ダイナミックダンパー20を、重量床衝撃音を低減するために63Hzの周波数を中心とする周波数帯域Tの振動を吸収するように構成したが、第2ダイナミックダンパー20が吸収可能な振動の周波数帯域はこれに限られず、他の周波数帯域の振動(例えば軽量床衝撃音)を吸収し得るように構成されていてもよい。
【0103】
上記実施形態では、第1ダイナミックダンパー30を、野縁受4Aのウェブ41に固定したが、第1ダイナミックダンパー30を固定することができる場所はウェブ41に限られず、フランジ40であってもよい。
【0104】
上記実施形態では、別個の野縁受4A,4Bに第1ダイナミックダンパー30及び防振吊り具2を設けたが、第1ダイナミックダンパー30及び防振吊り具2は、別個の野縁受4に設けられる必要はなく、同一の野縁受4に設けられても良い。
【0105】
上記実施形態では、1つの第2ダイナミックダンパー20に対して4つの第2の錘24を配置したが、1つの第2ダイナミックダンパー20に配置できる第2の錘24の個数は、4つに限られず、適宜設定することができる。
【0106】
上記実施形態では、第2ダイナミックダンパー20は、第2弾性部材22の上面に第2の錘24を有するものとして構成されていたが、各第2の錘24を第2弾性部材22の反対側から覆う蓋部材をさらに設けても良い。これにより、各第2の錘24と支持機構3との干渉を抑制することができる。
【0107】
上記第2実施形態では、第1実施形態と同様に天井支持梁6を介して第2ダイナミックダンパー20を吊り下げたが、第2ダイナミックダンパー20を吊り下げる方法はこれに限られない。例えば、第3実施形態のように、天井支持梁6を設けずに吊り下げ部材308を用いて第2ダイナミックダンパー20を梁部材7から直接吊り下げてもよい。この場合、梁部材7の下側フランジ7aに吊り下げ部材308の上端部を、上下方向に貫通させた状態で固定することができる。
【0108】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の設計変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0109】
1 遮音構造
3 支持機構
4 野縁受
5 野縁
8 天井ボード(面材)
20 第2ダイナミックダンパー
22 第2弾性部材
24 第2の錘
30 第1ダイナミックダンパー
32 第1弾性部材
34 第1の錘
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13