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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】光集積素子、及び光集積回路
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/50 20060101AFI20240214BHJP
   G02B 6/125 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01S5/50 610
G02B6/125
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020097163
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021190645
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高林 和雅
(72)【発明者】
【氏名】牧野 俊太郎
【審査官】八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-250081(JP,A)
【文献】特開2021-27314(JP,A)
【文献】特開2004-247510(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/191133(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00- 5/50
G02B 6/12- 6/14
G02F 1/00- 1/125
G02F 1/21- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の半導体光増幅器が集積された光集積素子において、
第1の接続導波路で接続された第1利得領域、及び第2利得領域を有する第1の半導体光増幅器と、
前記第1の半導体光増幅器と並列に配置され、第2の接続導波路で接続された第3利得領域、及び第4利得領域を有する第2の半導体光増幅器と、
を有し、
前記第1利得領域と前記第2利得領域は、前記第3利得領域と前記第4利得領域の外側に配置され、前記第1の接続導波路は、前記第2の接続導波路の外側で前記第1利得領域と前記第2利得領域を接続する、
光集積素子。
【請求項2】
前記第1の半導体光増幅器の第1入力端と第1出力端、及び前記第2の半導体光増幅器の第2入力端と第2出力端は、同じ側に配置されている、
請求項1に記載の光集積素子。
【請求項3】
前記第1の接続導波路は、前記第1入力端及び前記第1出力端と反対側で前記第1利得領域と前記第2利得領域を接続し、
前記第2の接続導波路は、前記第2入力端及び前記第2出力端と反対側で前記第3利得領域と前記第4利得領域を接続する、
請求項2に記載の光集積素子。
【請求項4】
前記第1の半導体光増幅器の駆動電流は、前記第2の半導体光増幅器の駆動電流よりも大きく設定されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の光集積素子。
【請求項5】
光入力ポート、及び光出力ポートが設けられた基板と、
前記基板に形成された光機能素子と、
前記基板に実装される請求項1~4のいずれか1項に記載の光集積素子と、
前記基板に形成され、前記光入力ポート、前記光出力ポート、前記光機能素子、及び前記光集積素子の間を交差なしに接続する光導波路と、
を有する光集積回路。
【請求項6】
前記光入力ポートは、前記光集積素子で外側に位置する前記第1の半導体光増幅器の第1入力端に接続され、前記第1の半導体光増幅器の第1出力端は前記光機能素子の入力に接続され、
前記光出力ポートは、前記光集積素子で内側に位置する前記第2の半導体光増幅器の第2出力端に接続され、前記第2の半導体光増幅器の第2入力端は前記光機能素子の出力に接続されている、
請求項5に記載の光集積回路。
【請求項7】
前記光入力ポートは、前記光集積素子で内側に位置する前記第2の半導体光増幅器の第2入力端に接続され、前記第2の半導体光増幅器の第2出力端は前記光機能素子の入力に接続され、
前記光出力ポートは、前記光集積素子で外側に位置する前記第1の半導体光増幅器の第1出力端に接続され、前記第1の半導体光増幅器の第1入力端は前記光機能素子の出力に接続されている、
請求項5記載の光集積回路。
【請求項8】
前記光入力ポートは、前記光機能素子の入力に接続されており、
前記光集積素子は、前記光機能素子の出力に接続されている、
請求項5に記載の光集積回路。
【請求項9】
前記第1の半導体光増幅器の第1出力に接続される第1出力ポートと、
前記第2の半導体光増幅器の第2出力に接続される第2出力ポートと、
を有する請求項8に記載の光集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光集積素子、及び光集積素子を組み込んだ光集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムでは、光送受信に光集積回路(IC:integrated circuit)モジュールが用いられている。光送信器等を含む光ICでは、挿入損失を補償するために高い光出力が求められ、一般的に光アンプが用いられている。他方で、光ICに対する小型化が強く求められている。光アンプを用いる場合、チップサイズが小さい半導体増幅器(SOA:semiconductor optical amplifier)を光ICに組み込む構成が有望である。
【0003】
一般的なSOAでは、SOAチップの一方の端面から光が入力され、反対側の端面から光が出力される。このようなSOAを光ICに形成された溝内に配置するときに、SOAチップ長のばらつきによって、光IC上に形成された光導波路とSOAの間の距離(ギャップ)が拡大し光結合損失が増大する。
【0004】
図1に示すU字型のSOAが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。このタイプのSOAは、隣接する2つのSOA領域がU字型のパッシブ光導波路で接続されることから、UターンSOAと呼ばれている。光の入力側と出力側が同一端面に配置されているので、光ICに形成された溝Tの中にSOAを配置するときに、SOAチップ長のばらつきを気にせずにSOAの入出力端面をできるだけ溝Tの側面に近づけることができる。SOAチップの端面と溝Tの側面の間のギャップが小さくなり、光結合損失が低減される。
【0005】
図2のように、複数のUターンSOAが並列に配置されたアレイ構成も提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第8837869号
【文献】特開2008-250019公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図2に示すUターンSOAのアレイを光ICに実装する場合、UターンSOAと光学的に接続される光IC上の光導波路の引き回しが複雑、または冗長になる。あるいは、光IC上で光導波路の交差を避けられない状態も生じ得る。光導波路の冗長化、交差などによって過剰の光損失や、望ましくない光クロストークが生じる。
【0008】
本発明は、単純かつ効率的な光導波路配置を可能にする光集積素子と、これを用いた光集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の一つの態様では、2以上の半導体光増幅器が集積された光集積素子は、
第1の接続導波路で接続された第1利得領域と第2利得領域を有する第1の半導体光増幅器と、
前記第1の半導体光増幅器と並列に配置され、第2の接続導波路で接続された第3利得領域と第4利得領域を有する第2の半導体光増幅器と、
を有し、前記第1利得領域と前記第2利得領域は、前記第3利得領域と前記第4利得領域の外側に配置され、前記第1の接続導波路は、前記第2の接続導波路の外側で前記第1利得領域と前記第2利得領域を接続する。
【発明の効果】
【0010】
光集積素子が実装される光集積回路上の光導波路の配置が単純化され、効率化される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一般的なUターンSOAの模式図である。
図2】複数のUターンSOAが並列に配置されたアレイの模式図である。
図3A】従来のUターンSOAアレイの技術課題を説明する図である。
図3B】従来のUターンSOAアレイの技術課題を説明する図である。
図4】実施形態の光集積素子の平面模式図である。
図5図4の光集積素子を用いた光ICの基本構成を示す図である。
図6】第1実施例の光ICの配置構成を示す図である。
図7】第2実施例の光ICの配置構成を示す図である。
図8】第3実施例の光ICの配置構成を示す図である。
図9A】第4実施例の光ICの配置構成を示す図である。
図9B図9Aの構成を従来の光集積素子で実現するときの問題点を示す図である。
図10】第5実施例の光ICの配置構成を示す図である。
図11】第6実施例の光ICの配置構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態の光集積素子と、光集積素子が実装される光ICの構成を説明する前に、従来のUターンSOAアレイを用いるときに生じる技術課題を、もう少し詳しく説明する。
【0013】
図3Aで、光機能素子が形成された光ICに、UターンSOAアレイチップが実装されている。この例では、光機能素子はマッハツェンダ(MZ:Mach-Zehnder)型の光変調器である。光変調器は、並列に配置された2つのMZ型のIQ変調器を有し、偏波多重直角位相シフトキーイング(DP-QPSK:Dual-Polarization Quadrature Phase Shift Keying)方式の光変調が行われる。
【0014】
UターンSOAアレイチップには、4つのUターンSOAが並列に配置されている。第1SOAで、利得導波路G1とG2を含む領域がU字型のパッシブ光導波路で接続されている。第2SOAで、利得導波路G3とG4を含む領域がU字型のパッシブ光導波路で接続されている。第3SOAで、利得導波路G5とG6を含む領域がU字型のパッシブ光導波路で接続されている。第4SOAで、利得導波路G7とG8を含む領域がU字型のパッシブ光導波路で接続されている。
【0015】
光ICチップへの入射光(IN)は二分岐され、それぞれ第1SOAと第2SOAで増幅されて光変調器に入力される。光変調器の出力光は第3SOAと第4SOAでそれぞれ増幅され、一方の増幅光の偏光面が偏波ローテータ(Polarization Rotator:PR)で90度回転され、偏波結合素子(Polarization Beam Combiner:PBC)で合波されて出力される。
【0016】
光入射側で、第1SOAの入力側の利得導波路G2に接続される光導波路と、第2SOAの出力側の利得導波路G3に接続される光導波路が交差する。光出射側で、第3SOAの入力側の利得導波路G6に接続される光導波路と、第4SOAの出力側の利得導波路G7に接続される光導波路が交差する。このような光導波路の交差は、光クロストークによるノイズの原因となる。
【0017】
図3Bは、光導波路の冗長化の問題を説明する図である。この例では、UターンSOAアレイチップに、2つのUターンSOAが並列に配置されている。光ICには、光機能素子としてMZ型の光変調器が形成されており、DP-QPSK方式の光変調が行われる。
【0018】
光導波路の交差を避けるため、光ICチップへの入射光(IN)は、第1SOAによって増幅され、UターンSOAアレイを大きく迂回して光変調器に入力される。光変調器の各IQ変調器の出力の一方の偏光面が偏波ローテータPRで90度回転され、合波器PBSにて他方の変調光と合波される。合波された変調光は、第2SOAで増幅されて光ICから出力される。図3Bでは、第1SOAの出力側の利得導波路G1と光変調器を接続する光導波路が大きく迂回して、導波路長が長くなる。光導波路の冗長化によって、過剰の光損失が発生する。
【0019】
光導波路の交差や迂回(冗長化)を避けるために、光増幅が必要な個所に個別のUターンSOAを配置することも考えられる。しかし、光ICに個々のUターンSOAを収容する溝を形成して、各UターンSOAの利得導波路と光IC上の光導波路を位置合わせする必要があり、光ICの基板サイズと位置合わせ工程数が増大する。個別のUターンSOAチップを複数作るよりも、複数のUターンSOAをアレイに集積する方が、製造コストが低く、かつ、全SOAのトータルサイズが小さくなる。光通信用モジュールの小型化への要請が厳しいなかで、SOAによる光ICの大型化は避けたい。
【0020】
実施形態では、集積されるUターンSOAのレイアウトを工夫することで、光ICの光導波路の交差や冗長・複雑化を防止する。これにより、サイズ増大を抑えつつ、光クロストークによるノイズや光損失を抑制する。
【0021】
<実施形態の構成>
図4は、実施形態の光集積素子100の平面模式図である。光集積素子100は、基板101上に集積されたN個(Nは2以上の整数)のUターンSOA10-1~Nを有する。この例では、N=4であり、UターンSOA10-1~4が集積されている。この明細書と特許請求の範囲で「UターンSOA」というときは、パッシブ光導波路で接続された一対の利得領域を有するSOAであって、光入射端と光出射端が同じ側にあるものをいう。
【0022】
パッシブ光導波路は、光を伝搬させるが、光増幅機能は有していない。この意味で、パッシブ光導波路を、単に「光導波路」または「接続導波路」と呼んでもよい。ここでは、光集積素子100が実装される光IC上の光導波路と区別するために、パッシブ光導波路を「接続導波路」と呼ぶ。
【0023】
基板101は、利得導波路G1~G8を含む利得領域111~118が形成される第1領域11と、接続導波路121~124が形成される第2領域12を有する。第1領域11は光増幅用に化合物半導体で形成されている。利得領域111~118には、電流注入用の電極が設けられていてもよい。第2領域12も、化合物半導体で形成されている。
【0024】
従来のUターンSOAアレイでは、隣接する利得領域同士が接続導波路で接続されて一つのUターンSOAが形成されている。
【0025】
これに対し、実施形態のUターンSOA10は、並列に配置される複数の利得領域111~118のうち、最も外側、または最も内側に配置される2つの利得領域から順に対が形成され、対を成す利得領域同士が接続導波路で接続されてUターンSOA10が形成される。
【0026】
最も外側に位置する利得領域111の利得導波路G1と、利得領域118の利得導波路G8は、接続導波路121で接続されて、UターンSOA10-1が形成される。外側から2番目に位置する利得領域112の利得導波路G2と、利得領域117の利得導波路Gは、接続導波路122で接続されてUターンSOA10-2が形成される。
【0027】
外側から3番目に位置する利得領域113の利得導波路G3と、利得領域116の利得導波路G6は、接続導波路123で接続されて、UターンSOA10-3が形成される。最も内側に位置する利得領域114の利得導波路G4と、利得領域115の利得導波路G5は、接続導波路124で接続されて、UターンSOA10-4が形成される。
【0028】
利得導波路G1~G8は、端面での反射を防止するために、基板101の入出力端面に対して所定の角度θtiltで傾いていてもよい。また、無反射コーティングが施されていてもよい。
【0029】
このようなUターンSOAの配置構成を採用することで、後述するように、光集積素子100が光ICに実装されたときに、光ICに形成された光導波路の交差や、冗長化を低減することができる。
【0030】
<光ICの基本構成>
図5は、実施形態の光IC20の基本構成を示す模式図である。光IC20は、光集積素子100と、光機能素子22を有する。光集積素子100と光機能素子22は、基板21上に形成された光導波路WG1~WG4で接続されている。光IC20は、光IC20に光を入力する光入力ポートPinと、光IC20から光を出力する光出力ポートPoutを有する。
【0031】
光集積素子100は、図4の光集積素子100であり、外側又は内側から順に2つの利得領域が接続導波路121~124で接続されて、UターンSOA10-1~10-4が形成されている。
【0032】
光入力ポートPinから光IC20に入力された光は二分岐されて、UターンSOA10-1の入力側の利得導波路G1と、UターンSOA10-2の入力側の利得導波路G2に入力される。分岐された入力光は、UターンSOA10-1と10-2でそれぞれ増幅され、利得導波路G8とG7から出力される。
【0033】
増幅された光は、光IC20に形成された光導波路WG1、及びWG2によって光機能素子22に入力される。光機能素子22の出力光は、光導波路WG3及びWG4によってUターンSOA10-3の入力側の利得導波路G6と、UターンSOA10-4の入力側の利得導波路G5に入射する。
【0034】
UターンSOA10-3とUターンSOA10-4によって増幅された光は、それぞれ利得導波路G3とG4から出力され、合波されて光出力ポートPoutから出力される。
【0035】
入力ポートPinと光集積素子100の間の光導波路、光集積素子100と出力ポートPoutの間の光導波路、及び光導波路WG1~WG4のいずれにおいても交差は発生せず、簡単な配線になっている。
【0036】
2つの分岐入力光は、光集積素子100で増幅されて光機能素子22に入力される。光機能素子22からの2つの出力光は、光集積素子100で増幅され、出力ポートPoutから外部に出力される。
【0037】
この例では、光機能素子22の入力側と出力側の両方で光増幅されているが、後述するように、光機能素子22の光機能素子22の入力側と出力側のいずれか一方でのみ増幅されてもよい。その場合は、光集積素子100に集積されるUターンSOA10の数は2つになり、光IC上の光導波路WGの配置はよりシンプルになる。
【0038】
<第1実施例>
図6は、第1実施例の光IC20Aの模式図である。第1実施例では、光機能素子22としてDP-QPSK方式の光変調器220を用い、光集積素子100の4つのUターンSOA10-1~10-4を用いて、光変調器220の入力側と出力側で光増幅する。光集積素子100は図5の光集積素子100と同じであり、同じ構成要素に同じ符号をつけて、重複する説明を省略する。
【0039】
光変調器220は、IQ変調器225とIQ変調器226が並列に配置されたDP-IQ変調器である。光IC20Aは、DP-IQ変調器モジュールとして用いられ得る。
【0040】
基板21は、たとえばSOI(Silicon on Insulator)基板である。基板21上の光導波路と光変調器220は、シリコンフォトニクス技術を用いて形成されていてもよい。光IC20Aのひとつの端面に、光入力ポートPinと、光出力ポートPoutが設けられている。
【0041】
光入力ポートPinから光IC20Aの入力導波路23に入力された光は、1×2光カプラ等によって二分岐される。一方の分岐光は、UターンSOA10-1の入力側の利得導波路G1に入力される。他方の分岐光は、UターンSOA10-2の入力側の利得導波路G2に入力される。それぞれの分岐光は、UターンSOA10-1と10-2で増幅され、利得導波路G8とG7から出力される。
【0042】
利得導波路G8から出力された光は、光導波路241によって、光変調器220のIQ変調器226に入力される。利得導波路G7から出力された光は、光導波路242によってIQ変調器225に入力される。
【0043】
IQ変調器225とIQ変調器226で変調される光は、同一の偏波であるが、合波前にいずれか一方の偏光方向が90度回転される。この意味で、IQ変調器225と226の一方をTE偏波用のIQ変調器、他方をTM偏波用のIQ変調器と呼んでもよい。
【0044】
IQ変調器225で変調された光は、光導波路244でUターンSOA10-3の利得導波路G6に入力され、増幅されて、利得導波路G3から出力される。IQ変調器226で変調された光は、光導波路243でUターンSOAQ10-4の利得導波路G5に入力され、増幅されて利得導波路G4から出力される。
【0045】
利得導波路G4からの出力された光は、PR26Aで偏光方向が90度回転される。その後、PBC27Aによって、利得導波路G3から出力された光と合波される。合波された光は、出力導波路24を通って、DP-QPSK変調信号として出力ポートPoutから出力される。
【0046】
光集積素子100を用いることで、光IC20Aでは光導波路の交差、冗長化等が発生せずに、入力光を処理し、出力することができる。
【0047】
光IC20Aでは、光変調器220の入力側と出力側で個別に光を増幅することができる。光IC20上の一か所で光を一度に増幅するよりも、複数の段階に分けて光を増幅して負荷を分散する方が有利な場合もある。光集積素子100上に配置されるUターンSOA10の数は増えるが、消費電力の低減とノイズの抑制の観点から、負荷分散型を採用してもよい。
【0048】
光変調器220の入力側と出力側のUターンSOAで、駆動電流を異ならせてもよい。光集積素子100では、並列に配置された複数のUターンSOA10に一度に電流を注入して駆動すると、発熱により、内側のUターンSOAほど高温になる傾向がある。外側に配置されるUターンSOA10―1、及び10-2の駆動電流を、内側のUターンSOA10-3、及び10-4の駆動電流よりも大きく設定してもよい。
【0049】
この場合、光IC20Aの入力側での光増幅が、出力側での光増幅よりも大きくなる。IQ変調器225及び222への入射光が十分なパワーをもつため、IQ変調器225及び222から出力される変調光も十分なパワーをもつ。UターンSOA10-3、及び10-4の駆動電流が小さく設定されていても問題はない。UターンSOA10-3、及び10-4に入力される変調光のパワーはノイズに比較して大きい。相対的にノイズが小さい変調光を光集積素子100の出力段で適度に増幅することで、低ノイズ特性が良好な光信号を出力できる。
【0050】
図6の構成は、低ノイズ特性が求められるときに適している。光IC20A上の光導波路に交差や冗長導波路は発生せず、簡単なレイアウトで高品質の光出力が得られる。
【0051】
<第2実施例>
図7は、第2実施例の光IC20Bの模式図である。第1実施例では、光集積素子100の外側のUターンSOA10-1、10-2が、光IC20Aに入力された光の増幅に用いられていた。第2実施例では、光出力ポートPoutを基板21の外側に配置して、光IC20Bの出力段での光増幅を大きくする。
【0052】
光集積素子100の構成自体は、図5及び図6と同じであり、同じ構成要素に同じ符号をつけて重複する説明を省略する。
【0053】
光入力ポートPinから光IC20Bの入力導波路23に入力された光は、1×2光カプラ等によって二分岐される。一方の分岐光は、UターンSOA10-3の入力側の利得導波路G3に入力される。他方の分岐光は、UターンSOA10-4の入力側の利得導波路G4に入力される。それぞれの分岐光は、内側に配置されたUターンSOA10-3と10-4で増幅され、利得導波路G6とG5から出力される。
【0054】
利得導波路G6から出力された光は、光導波路244によって、光変調器220のIQ変調器225に入力される。利得導波路G5から出力された光は、光導波路243によってIQ変調器226に入力される。
【0055】
IQ変調器225で変調された光は、光導波路242でUターンSOA10-2の利得導波路G7に入力され、増幅されて、利得導波路G2から出力される。IQ変調器226で変調された光は、光導波路241でUターンSOAQ10-1の利得導波路G8に入力され、増幅されて利得導波路G1から出力される。
【0056】
利得導波路G2からの出力された光は、PR26Bで偏光方向が90度回転される。その後、PBC27Bによって、利得導波路G1から出力された光と合波される。合波された光は、出力導波路24を通って、DP-QPSK変調信号として出力ポートPoutから出力される。
【0057】
光集積素子100を用いることで、光IC20Bでは光導波路の交差、冗長化等が発生せずに、入力光を処理し、出力することができる。
【0058】
光IC20Bでは、外側に配置されるUターンSOA10―1、及び10-2の駆動電流を、内側のUターンSOA10-3、及び10-4の駆動電流よりも大きく設定してもよい。この場合、光IC20Bの出力段での光増幅が、入力段での光増幅よりも大きくなる。
【0059】
図7の構成は、光IC20Bの出力段で高出力動作が要求される場合に適している。光IC20Bの出力側で高出力が得られるため、光IC20Bから高パワーの光信号が出力される。
【0060】
<第3実施例>
図8は、第3実施例の光IC20Cの模式図である。第3実施例では、2つのUターンSOA10-1、及び10-2の配列を有する光集積素子200を用いて、光機能素子である光変調器220への入力光と出力光を増幅する。
【0061】
外側のUターンSOA10-1は、利得導波路G1を含む利得領域211と、利得導波路G4を含む利得領域214と、利得導波路G1とG4を結合する接続導波路221で形成される。内側のUターンSOA10-2は、利得導波路G2を含む利得領域212と、利得導波路G3を含む利得領域213と、利得導波路G2とG3を結合する接続導波路222で形成される。
【0062】
光入力ポートPinを光集積素子200の外側のUターンSOA10-1に接続して、入力段での光増幅を大きくする。
【0063】
光入力ポートPinから光IC20Cの入力導波路23に入力された光は、UターンSOA10-1の入力側の利得導波路G1に入力され、UターンSOA10-1で増幅されて、利得導波路G4から出力される。
【0064】
利得導波路G4から出力された光は、光導波路28によって光変調器220に導かれ、1×2光カプラ等で二分岐される。二分岐された光の一方はIQ変調器225に入射し、他方はIQ変調器226に入射する。
【0065】
いずれか一方のIQ変調器、たとえばIQ変調器226の出力光の偏光方向はPR26Cによって90度回転され、PBC27Cによって、他方のIQ変調器、たとえばIQ変調器225の出力光と合波される。合波された変調光は、光導波路29によってUターンSOA10-2の利得導波路G3に入力され、増幅されて、利得導波路G2から出力される。UターンSOA10-2で増幅された変調光は、出力導波路24を通って、出力ポートPoutからDP-QPSK変調信号として出力される。
【0066】
光集積素子200では、配置するUターンSOAの数が少ないので、光集積素子200上の熱分布は光集積素子100と比較して均一になり、光集積素子200のチップサイズを半分にしつつ、光IC20C上の増幅負荷を分散することができる。
【0067】
光集積素子200においても、外側に配置されるUターンSOA10―1の駆動電流を内側のUターンSOA10-2よりも大きく設定してもよい。この場合、光IC20Bの入力段での光増幅が、出力段での光増幅よりも大きくなり、低ノイズ特性を実現することができる。
【0068】
光集積素子200を用いることで、光IC20Cでは光導波路の交差や不要な冗長導波路のないシンプルな配線構成となる。
【0069】
<第4実施例>
図9Aは、第4実施例の光IC20Dの模式図である。第4実施例では、UターンSOA10-1、及び10-2の配列を有する光集積素子200を用いて、光IC20Dの出力段でのみ光増幅を行う。光集積素子200の構成は図8と同様であり、同じ構成要素には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。
【0070】
光入力ポートPinから光IC20Dの入力導波路31に入力された光は、光変調器220に入射する。光変調器220に入射した光は1×2光カプラ等により二分岐され、IQ変調器225と、IQ変調器226でそれぞれ変調される。IQ変調器225で変調された光は、光導波路32によって利得導波路G4に入力され、UターンSOA10-1で増幅される。IQ変調器226で変調された光は、光導波路33によって利得導波路G3に入力され、UターンSOA10-2で増幅される。
【0071】
UターンSOA10-2の利得導波路G2から出力された増幅光は、PR26Dによって偏光方向が90度回転され、PBC27Dによって、利得導波路G1から出力された増幅光と合波される。合波された光は、DP-QPSK信号として、出力ポートPoutから出力される。
【0072】
光集積素子200では、配置するUターンSOAの数が少ないので、光集積素子200上の熱分布は光集積素子100と比較して均一になり、光集積素子200のチップサイズを半分にしつつ、光IC20C上の増幅負荷を分散することができる。
【0073】
光集積素子200を用いることで、光IC20Dでは光導波路の交差や不要な冗長導波路のないシンプルな配線構成となる。図9Aの構成は、光IC20Dの出力段で、変調光信号を十分に増幅することができるので、高出力特性が必要な場面に適している。
【0074】
図9Bは、比較として、従来構成のUターンSOAアレイを用いたときの回路配線を示す。図9Aと同様に、光変調器220の出力側でのみ光増幅を行う。
【0075】
図9Bでは、互いに隣り合う利得領域がU字型の接続配線で接続された第1SOAと第2SOAが配置されている。IQ変調器225で変調された光は光導波路WG1によって第1SOAの利得導波路G1に入力され、増幅される。IQ変調器226で変調された光は光導波路WG2によって第2SOAの利得導波路G4に入力され、増幅される。
【0076】
図9Bの従来構成では、光導波路WG1の引き回しがかなり長くなって、光損失が生じる。これに対し、図9Aの構成では、光変調器220と光集積素子200を接続する光導波路32と33は、互いに平行で、かつ長さの差が小さい。ノイズや光損失を抑制できるだけでなく、遅延の小さいシンプルな配線構成が実現される。
【0077】
<第5実施形態>
図10は、第5実施形態の光IC20Eの模式図である。光機能素子として、MZ干渉計型の光スイッチ230を用いる。光集積素子200は、図8及び図9Aと同じであり、同じ構成要素に同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0078】
光入力ポートPinから光IC20Eの入力導波路31に入力された光は、光スイッチ230に入射する。光スイッチ230に入射した光は1×2光カプラ等により、50%:50%の分岐比で分岐される。
【0079】
光スイッチ230のヒータ231がOFFのときは、2×2光カプラ(または多モード干渉計)によって2つの光が干渉し、強め合って100%の光が光導波路28に出力される。ヒータ231がONのときは、ヒータ231が設けられた導波路を通る光の速度が低下し、2×2光カプラで合波される光の位相がずれて、光導波路29に出力される。
【0080】
光導波路28に出力された光は、UターンSOA10-1で増幅されて、第1出力ポートPout1から出力される。光導波路29に出力された光は、UターンSOA10-2で増幅されて、第2出力ポートPout2から出力される。
【0081】
光スイッチ230では、ヒータ231への供給電力を制御するだけで、安定して光出力を切り替えることができる。ヒータ231のオン・オフと、光集積素子200のUターンSOA10-1と10-2への電流注入の切り替えを同期させてもよい。
【0082】
光集積素子200では、配置するUターンSOAの数が少ないので、光集積素子200上の熱分布は光集積素子100と比較して均一になり、光集積素子200のチップサイズを半分にしつつ、光IC20C上の増幅負荷を分散することができる。
【0083】
光集積素子200を用いることで、光導波路28と29はシンプルな配置で伝搬距離が短く、かつ光導波路間での遅延差がほとんどない。ノイズや光損失の少ない光路切り替えが実現される。この構成は、高出力が求められる光スイッチングに適している。
【0084】
<第6実施形態>
図11は、第6実施形態の光IC20Fの模式図である。光機能素子として、光ドロップフィルタ240を用いる。光集積素子200は、図8及び図9Aと同じであり、同じ構成要素に同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0085】
光入力ポートPinから光IC20Fの入力導波路31に入力された光は、光ドロップフィルタ240に入射する。入射光には、たとえば2つの異なる波長の光が含まれている。波長によって光路長が異なるため、光ドロップフィルタ240の出力端で異なる位置に集光される。光導波路28と光導波路29を、それぞれの波長の集光位置に接続することで異なる波長の光を分波することができる。
【0086】
第1波長の光は、光導波路29に入射するが、光導波路28への出力位置では反射される。第1波長の光は、光導波路29によってUターンSOA10-2に導かれ、増幅されて第2出力ポートPout2から出力される。第2波長の光は、光導波路28への出力位置に集光される。第2波長の光は、光導波路28によってUターンSOA10-1に導かれ、増幅されて、第1出力ポートPout1から出力される。
【0087】
第1出力ポートPout1をドロップポート、第2出力ポートPout2をスルーポートとして用いてもよい。光集積素子200を用いることで、光導波路28と29はシンプルな配置構成で伝搬距離が短く、かつ光導波路間での遅延差がほとんどない。ノイズや光損失の少ない光ドロップが実現される。
【0088】
以上、特定の実施例に基づいて説明してきたが、本発明は上述した特定の構成例に限定されない。接続導波路121~124、及び221、222は、対を成す2つの利得領域の間で折り返すことができれば、円弧型、半円型、馬蹄型など、適切な形状をもつことができる。第1実施形態~第6実施形態は相互に組み合わせが可能である。たとえば、図8の構成で、光出力ポートPoutを外側に配置して、内側の低電流のUターンSOA10-2で光変調器への入力光を増幅し、高出力対応の構成にしてもよい。
【0089】
光変調器は、DP-QPSK方式に限定されず、PAM(Pulse Amplitude Modulation)方式の変調器であってもよい。光機能素子は、単一の光スイッチや単一のドロップフィルタのみならず、複数の光スイッチや光フィルタが集積された光スイッチ集積素子、あるいは光フィルタ集積素子であってもよい。実施形態の光集積素子100、及び200は、シリコンフォトニクス技術により接続導波路が形成されたシリコン基板に複数のSOAがフリップチップ実装されたシリコンフォトニクス素子であってもよい。
【0090】
いずれの場合も、光集積素子100または200を用いることで、光導波路の交差や冗長化を防止して、クロストークに起因するノイズや、冗長導波路による光損失を抑制できる。光集積素子100でUターンSOAをアレイ化することで、光集積素子の作製コストや、光ICへの実装コストを低減し、かつ光集積素子と光ICのサイズを低減することができる。
【符号の説明】
【0091】
10、10-1、10-2、10-3、10-4 UターンSOA
20、20A~20F 光IC(光集積回路)
21 基板
22 光機能素子
23、31 入力導波路
24 出力導波路
28、29、32、33、241~244 光導波路
100、200 光集積素子
111~118、211、212、213、214 利得領域
121~124、221~224 接続導波路
220 光変調器
230 光スイッチ
240 光ドロップフィルタ
G1~G8 利得導波路
WG1~WG4 光導波路
Pin 入力ポート
Pout、Pout1、Pout2 出力ポート
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11