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特許7435275スピーカーグリル及びスピーカーグリルアッセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】スピーカーグリル及びスピーカーグリルアッセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/00 20060101AFI20240214BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H04R1/00 311
H04M1/02 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020097800
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021190960
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小貫 裕市
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-160816(JP,A)
【文献】特開2019-165378(JP,A)
【文献】特開2016-001789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-1/02
H04M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に形成されたスピーカーグリルであって、
互いに平行に形成された複数のスリットと、
各スリットの中央から所定の範囲に亘って、前記筐体の内面側の板厚が薄く形成された薄肉部と、
前記薄肉部における前記複数のスリットと交差し、前記薄肉部の板厚よりさらに薄く形成された排水溝と、
を備えるスピーカーグリル。
【請求項2】
請求項1に記載のスピーカーグリルと、
前記スピーカーグリルの位置における前記筐体の内面側に配置された防塵シートと、
前記防塵シートと前記スピーカーグリルの前記筐体の内面側の間に配置される接着層と、
を備え、
前記接着層は、前記複数のスリット、前記複数の薄肉部、および前記排水溝の各淵部に対して所定の距離離して形成されること、
を特徴とするスピーカーグリルアッセンブリ。
【請求項3】
前記薄肉部は、対応する各スリットに近づくにつれて前記防塵シートから離れるように傾斜する傾斜面を有すること、
を特徴とする請求項2に記載のスピーカーグリルアッセンブリ。
【請求項4】
前記排水溝の一端が前記防塵シートの外周縁の外側に位置していること、
を特徴とする請求項2又は3に記載のスピーカーグリルアッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカーグリル及びスピーカーグリルアッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特許第5158158号公報)は、スピーカーを所定の音量のBEEP音で振動させることで、スピーカーグリル内の侵入水を排水するように構成した携帯型無線通信機を開示している。特許文献1の構成は、所定の音量のBEEP音を放音させるため、特別な構成や操作を必要とする。しかしながら、所定の音量のBEEP音を放音させるといった特別な構成や操作を必要としないで、スピーカーグリルに水幕が形成されるのを抑制し、スピーカーグリル内の侵入水を排出できることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、スピーカーグリルに水膜が形成されるのを抑制すると共に効果的な排水を実現する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願発明の観点によれば、筐体に形成されたスピーカーグリルであって、互いに平行に形成された複数のスリットと、各スリットの中央から所定の範囲に亘って、前記筐体の内面側の板厚が薄く形成された薄肉部と、前記薄肉部における前記複数のスリットと交差し、前記薄肉部の板厚よりさらに薄く形成された排水溝と、を備えるスピーカーグリルが提供される。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、薄肉部の存在により、各スリットに形成された水膜が破れやすい。また、水膜が破れた後、各薄肉部に残った水は共通する排水溝を介して排水されるようになる。そのため、スピーカーグリルに水膜が形成されるのを抑制すると共に効果的な排水を実現する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】ハンディ型トランシーバの斜視図である。
図2】ハンディ型トランシーバの分解斜視図である。
図3】ハンディ型トランシーバの別の角度から見た分解斜視図である。
図4】スピーカーグリルアッセンブリの分解斜視図である。
図5】スピーカーグリルの背面図である。
図6】スピーカーグリルのグリル内面に接着層を配置した背面図である。
図7】スピーカーグリルのグリル内面に防塵シートを貼り付けた背面図である。
図8図7のB-B線断面図である。
図9図7のC-C線断面図である。
図10図7のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図1から図10を参照して、本発明の一実施形態であるスピーカーグリルを搭載したハンディ型トランシーバ1を一例として説明する。ハンディ型トランシーバ1は、双方向通話可能な無線通信機器の一具体例である。
【0008】
図1から図3に示すように、ハンディ型トランシーバ1は、フロントパネル2と、接着シート3(接着層)と、防塵シート4と、スピーカー5と、制御基盤6と、リアパネル7と、バッテリーカバー8と、を含む。フロントパネル2とリアパネル7とによりハンディ型トランシーバ1の筐体30が構成される。
【0009】
フロントパネル2及び接着シート3、防塵シート4は、スピーカーグリルアッセンブリ9を構成している。ハンディ型トランシーバ1は、少なくとも、スピーカー5とスピーカーグリルアッセンブリ9を含む。
【0010】
図1に示すように、ハンディ型トランシーバ1は、ほぼ直方体状の外観を有する。フロントパネル2には、スピーカーグリル10が形成されている。スピーカーグリル10は、図1において二点鎖線で特定されている。スピーカーグリル10は、スピーカー5の振動板に対して対向するように配置されている。スピーカーグリル10には、複数のスリット11が互いに平行に形成されている。そして、スピーカー5から出力された音声は、複数のスリット11を通って外部に伝播する。また、スピーカー5は、音声を入力するためのマイクとしても機能する。即ち、ハンディ型トランシーバ1のユーザが発した音声は、複数のスリット11を通ってスピーカー5の振動板に伝播する。従って、複数のスリット11は、スピーカー5にとっての音道である。
【0011】
図1には、ハンディ型トランシーバ1を図示しないテーブルに置いた状態を示している。フロントパネル2は、正面2a、背面2b、上面2c、下面2d、2つの側面2eを有する。正面2a及び背面2bは、互いに反対を向く面である。上面2c及び下面2dは、互いに反対を向く面である。2つの側面2eは互いに反対を向く面である。正面2aには、前述の複数のスリット11が形成されている。図1に示すように、下面2dがテーブルと対向するようにハンディ型トランシーバ1をテーブルに置いた状態をハンディ型トランシーバ1の基本姿勢と称する。
【0012】
以下、図1を参照して、「上下方向」「幅方向」「前後方向」を定義する。「上下方向」「幅方向」「前後方向」は互いに直交する方向である。
【0013】
「上下方向」は、第1方向の具体例であって、上面2cと下面2dに対して直交する方向である。上下方向は、上方と下方を含む。上面2cは上方を向く。下面2dは下方を向く。
【0014】
「幅方向」は、第2方向の具体例であって、2つの側面2eに対して直交する方向である。幅方向は、幅内方及び幅外方を含む。幅内方は、幅方向においてハンディ型トランシーバ1の中央に向かう方向である。幅外方は、幅方向においてハンディ型トランシーバ1の中央から遠ざかる方向である。
【0015】
「前後方向」は、正面2a及び背面2bに対して直交する方向である。前後方向は、前方及び後方を含む。正面2aは前方を向く。背面2bは後方を向く。
【0016】
図2及び図3に示すように、ハンディ型トランシーバ1は、フロントパネル2、接着シート3、防塵シート4、スピーカー5、制御基盤6、リアパネル7、バッテリーカバー8を前後方向でこの記載順に重ねることで構成される。
【0017】
フロントパネル2及びリアパネル7は、前後方向で互いに連結されることで、接着シート3、防塵シート4、スピーカー5、制御基盤6を収容する。スピーカー5は、制御基盤6に支持される。制御基盤6は、前後方向においてフロントパネル2とリアパネル7に挟まれることでフロントパネル2及びリアパネル7によって支持される。
【0018】
(フロントパネル2)
図2から図4に示すように、フロントパネル2のスピーカーグリル10は、フロントパネル2の一部である。即ち、スピーカーグリル10は、フロントパネル2とリアパネル7で構成されるハンディ型トランシーバ1の筐体30の一部である。フロントパネル2のスピーカーグリル10は、筐体30に形成された複数のスリット11を含む所定範囲を意味する。フロントパネル2のスピーカーグリル10は、スピーカー5に対向するグリル内面12と、グリル内面12と反対のグリル外面13を有する板体である。グリル内面12は後方を向く。グリル外面13は前方を向く。グリル内面12、グリル外面13は、それぞれ筐体30の内面、筐体30の外面の一部であると言える。筐体30の内面及び外面は、それぞれ、以下、単に筐体内面及び筐体外面とも称する。
【0019】
図4に示すように、防塵シート4は、複数のスリット11を後方から覆うようにスピーカーグリル10のグリル内面12に配置される。防塵シート4は、典型的には、ポリエチレンやポリプロピレン製のメッシュであって、複数のスリット11を通るような小さい異物がスピーカー5の振動板に堆積することを防止する。
【0020】
防塵シート4は、接着シート3によってスピーカーグリル10のグリル内面12に貼り付けられている。接着シート3は、防塵シート4をスピーカーグリル10のグリル内面12に取り付け、固定し、接着するための接着層の一具体例である。接着シート3を用いることに代えて、スピーカーグリル10のグリル内面12又は防塵シート4に液状の接着剤を塗布することで接着層を設け、防塵シート4をスピーカーグリル10のグリル内面12に貼り付けてもよい。
【0021】
次に、図5から図10を参照して、スピーカーグリル10を詳細に説明する。
【0022】
図5に示すように、複数のスリット11は、上下方向で互いに離れるように形成されている。各スリット11は、幅方向に延びるように形成されている。従って、各スリット11は、上下方向に対して直交するように延びている。複数のスリット11は、4つのスリット11を含む。即ち、複数のスリット11は、第1スリット11a、第2スリット11b、第3スリット11c、第4スリット11dを含む。第1スリット11a、第2スリット11b、第3スリット11c、第4スリット11dは、下方に向かってこの記載順に並んでいる。
【0023】
スピーカーグリル10には、スリット11毎に、薄肉部15と2つの厚肉部16が形成されている。スリット11毎に、薄肉部15及び2つの厚肉部16は、対応するスリット11に対して上下方向で隣接しており、対応するスリット11の下方に形成されている。スリット11毎に、薄肉部15は、幅方向において2つの厚肉部16の間に形成されている。つまり各スリット11の中央から所定の範囲に亘って、筐体30の板厚を薄く形成された薄肉部15が形成される。ここで、「各スリット11の中央」とは、各スリット11の長手方向における中央を意味する。薄肉部15は、2つの厚肉部16よりも薄肉である。即ち、薄肉部15の前後方向における板厚は、2つの厚肉部16の前後方向における板厚よりも小さい。
【0024】
引き続き図5を参照して、薄肉部15は、対応するスリット11を挟んで薄肉部15と反対側の領域31よりも薄く形成されている。即ち、薄肉部15は、領域31のうち排水溝20を除く部分よりも薄く形成されている。各厚肉部16の板厚は、対応するスリット11を挟んで各厚肉部16と反対側の各領域32の板厚と等しい。領域31のうち排水溝20を除く部分の板厚と各領域32の板厚は等しい。各厚肉部16の板厚、領域31のうち排水溝20を除く部分の板厚、各領域32の板厚は、スピーカーグリル10の板厚の最大値に等しい。
【0025】
(薄肉部15)
図8には、薄肉部15の断面形状を二点鎖線で特定している。図8において、接着シート3は描画を省略している。図8に示すように、薄肉部15は、幅方向で見ると、上方に向かうにつれて薄くなるように形成されている。薄肉部15は、幅方向で見ると、上方に向かって凸となるV字状に形成されている。従って、スリット11を閉塞するように形成された水膜の表面張力が薄肉部15によって弱められるので、水膜が破け易くなっている。スリット11を閉塞するように形成された水膜が破れれば、スリット11の音道としての機能が回復することになる。
【0026】
具体的には、薄肉部15は、グリル内面12からグリル外面13に向かうにつれてスリット11に近づく内方傾斜面15aと、グリル外面13からグリル内面12に向かうにつれてスリット11に近づくように傾斜する外方傾斜面15bと、内方傾斜面15aと外方傾斜面15bを連結する先端面15cと、を含む。内方傾斜面15aは、上方及び後方を向く。外方傾斜面15bは、上方及び前方を向く。先端面15cは、上方を向く。
【0027】
内方傾斜面15a及び外方傾斜面15bは、前後方向に対して概ね45度で傾斜している。従って、内方傾斜面15aと外方傾斜面15bは、互いに垂直な面である。先端面15cは、グリル内面12よりもグリル外面13寄りに形成されている。従って、薄肉部15の断面視において、内方傾斜面15aの前後方向における寸法は、外方傾斜面15bの前後方向における寸法よりも大きい。先端面15cの前後方向における寸法は、例えば、0.2mm以下とすることが好ましい。
【0028】
先端面15cには、フロントパネル2を射出成形することに起因するパーティングラインp1が位置している。パーティングラインp1は、内方傾斜面15a及び外方傾斜面15bから前後方向において離れて形成されている。スリット11の内周面のうち薄肉部15に対して上下方向で対向する薄肉対向面17にも同様に、フロントパネル2を射出成形することに起因するパーティングラインp2が位置している。パーティングラインp2は、グリル内面12及びグリル外面13から前後方向に離れて形成されている。パーティングラインp1及びパーティングラインp2は、何れも、幅方向に延びている。パーティングラインp1及びパーティングラインp2により、スリット11を閉塞するように形成された水膜の表面張力が弱められるので、水膜が破け易くなっている。換言すれば、各スリット11の内周面に環状のパーティングラインが位置しているので、スリット11を閉塞するように形成された水膜の表面張力が弱められるので、水膜が破け易くなっている。
【0029】
薄肉部15の幅方向における寸法は、例えば10mmから15mmとすることが好ましい。
【0030】
(厚肉部16)
図9には、厚肉部16の断面形状を二点鎖線で特定している。図9において、接着シート3は描画を省略している。図9に示すように、厚肉部16は、幅方向で見ると長方形状に形成されている。従って、厚肉部16は、上方を向く上面16aを有する。上面16aの前後方向における寸法は、図8に示す薄肉部15の先端面15cの前後方向における寸法よりも大きい。
【0031】
スリット11を閉塞するように形成された水膜は、厚肉部16の上面16aと接触するように形成される。また、水膜は、図8に示す薄肉部15の先端面15cと接触するように形成される。そして、水膜と厚肉部16の上面16aが接触する領域の前後方向における寸法は、水膜と薄肉部15の先端面15cが接触する領域の前後方向における寸法よりも大きくなる。従って、スリット11を閉塞するように水膜が形成されると、水膜は、表面張力により薄肉部15から厚肉部16に向かって、即ち幅外方に引っ張られ、幅外方に引き裂かれるような外力が発生する。これにより、スリット11を閉塞するように形成された水膜が破れ易くなっている。
【0032】
(排水溝20)
図5に示すように、グリル内面12には、更に、排水溝20が形成されている。排水溝20は、上下方向に沿って延びるように形成されている。排水溝20は、複数のスリット11と交差するように形成されている。排水溝20は、複数の薄肉部15と交差するように形成されている。そのため、図10に示すように、排水溝20が位置する箇所の板厚は、薄肉部15よりさらに薄く形成されている。排水溝20は、薄肉部15の内方傾斜面15aを前方に向かって掘り下げるように形成されている。従って、フロントパネル2のスピーカーグリル10のうち排水溝20が位置する箇所の板厚20dは、薄肉部15の最大板厚15dよりも小さい。なお、薄肉部15の最大板厚15dは、実質的には、フロントパネル2のスピーカーグリル10の板厚の最大値に等しいと言える。つまり、薄肉部15とは、スピーカーグリル10の背面視において内方傾斜面15aが形成された部分である。複数のスリット11の内部空間21は、排水溝20を介して互いに連通する。図10において、接着シート3は描画を省略している。また、薄肉部15の内方傾斜面15aと防塵シート4で前後方向に区画される水滴貯留空間22(隙間)は、排水溝20を介して互いに連通する。従って、ハンディ型トランシーバ1を基本姿勢とした場合、複数のスリット11に侵入した水滴は、一旦水滴貯留空間22に貯留され、その後、排水溝20を通って下方に排水される。
【0033】
(接着シート3)
図6では、接着シート3にハッチングを付すことで接着シート3を特定している。図6において接着シート3に付したハッチングは接着シート3の断面を示すものではないことに留意されたい。
【0034】
図6に示すように、接着シート3は、複数のスリット11を取り囲むように環状に形成されている。接着シート3は、複数のスリット11と前後方向で対向しないように形成されている。接着シート3は、排水溝20と前後方向で対向しないように形成されている。接着シート3は、複数の薄肉部15と前後方向で対向しないように形成されている。更に、接着シート3は、グリル内面12のうち第1スリット11aに対応する薄肉部15と第2スリット11bの間の部分23と前後方向で対向しないように形成されている。従って、防塵シート4は、排水溝20の近傍においてグリル内面12から離れるように撓むことが許容される。これにより、排水溝20の内部空間が実質的に拡張され、排水溝20による排水効果が向上する。
【0035】
更に、接着シート3は、下方に切れ目3aを有するC字状に形成されている。従って、接着シート3は、切れ目3aを有する環状であると言える。つまり、接着シート3は、各スリット11、複数の薄肉部15、および排水溝20の各淵部から所定の距離離れた範囲で防塵シート4を筐体内面のスピーカーグリルと接着する。
【0036】
図7には、防塵シート4を接着シート3を介してグリル内面12に貼り付けた様子を示している。図7に示すように、防塵シート4は、防塵機能を発揮するために複数のスリット11を覆うように形成されている。これに対し、排水溝20の下端部24は、防塵シート4によって覆われることなく露出している。即ち、排水溝20の下端部24は、防塵シート4の外周縁4aの更に外側に位置している。従って、図10に示すように、排水溝20を通って下方に流れた水滴は、排水溝20の下端部24に至ると、ハンディ型トランシーバ1の内部空間に排出されるようになっている。これにより、排水溝20を通る水滴が排水溝20内でそのまま留まることがない。ハンディ型トランシーバ1の内部空間に排出された水滴は、フロントパネル2の下面2dに形成された図示しない排水孔から外部に排出される。
【0037】
以上に、ハンディ型トランシーバ1の実施形態を説明した。上記実施形態は、以下の特徴を有する。
【0038】
図1から図4に示すように、スピーカーグリル10は、スピーカー5に対向するグリル内面12と、グリル内面12の反対のグリル外面13と、を有する板体に複数のスリット11を形成して成る。図5に示すように、複数のスリット11は、上下方向(グリル内面12に対して平行な第1方向)において互いに離れるように、幅方向(グリル内面に対して平行であって第1方向に対して交差する第2方向)に延びるように、形成されている。即ち、複数のスリット11は、ゼブラ状に形成されている。
【0039】
図5に示すように、スピーカーグリル10には、各スリット11と上下方向で隣接する薄肉部15と、各スリット11と上下方向で隣接すると共に薄肉部15に対して幅方向で隣接し、薄肉部15を幅方向で挟む2つの厚肉部16と、が形成されている。
【0040】
以上の構成によれば、各スリット11を塞ぐように形成された水膜は表面張力により2つの厚肉部16によって幅方向に引っ張られるので、各スリット11を塞ぐように形成された水膜が幅方向で引き裂かれ易い。従って、スピーカーグリル10に水膜が形成されるのを抑制することができる。
【0041】
図1から図4に示すように、スピーカーグリルアッセンブリ9は、スピーカーグリル10と、複数のスリット11を覆うようにスピーカーグリル10のグリル内面12に配置された防塵シート4と、防塵シート4をスピーカーグリル10のグリル内面12に接着するために防塵シート4とスピーカーグリル10のグリル内面12の間に配置される接着シート3(接着層)と、を備える。図8及び図10に示すように、各スリット11に対応する薄肉部15と防塵シート4の間には水滴貯留空間22(隙間)が形成されている。図5及び図10に示すように、スピーカーグリル10のグリル内面12には、各スリット11に対応する薄肉部15と交差するように上下方向に沿って延びる排水溝20が形成されている。以上の構成によれば、排水溝20の長手方向が鉛直となったとき、即ち、ハンディ型トランシーバ1が基本姿勢となったとき、水滴貯留空間22に溜まった水が排水溝20を介して下方に排水される。
【0042】
また、図10に示すように、薄肉部15は、対応する各スリット11に近づくにつれて防塵シート4から離れるように傾斜する内方傾斜面15a(傾斜面)を有する。以上の構成によれば、排水溝20の長手方向が鉛直となったとき、水滴貯留空間22に溜まった水が防塵シート4に近づくように寄せ集められるので、水滴貯留空間22に溜まった水が一層効果的に排水溝20を介して下方に排水される。
【0043】
また、図7に示すように、排水溝20の下端部24は、防塵シート4によって覆われていない。即ち、排水溝20の下端部24が防塵シート4の外周縁4aの外側に位置している。以上の構成によれば、排水溝20に集められた水が排水溝20から外部に排水される。
【0044】
また、図6に示すように、複数のスリット11は、第1スリット11a(第1のスリット)及び第2スリット11b(第2のスリット)を含む。第1スリット11aに隣接する薄肉部15は、第1スリット11aと第2スリット11bの間に形成されている。第1スリット11aに隣接する薄肉部15と、第2スリット11bの間の領域である部分23には、接着シート3が配置されず、防塵シート4はグリル内面12に接着されていない。以上の構成によれば、排水溝20の近傍で防塵シート4がグリル内面12から離れるように撓むことができるようになるので、排水溝20の内部空間が実質的に拡張され、もって、排水溝20による排水効果が向上する。
【0045】
また、排水溝20の内面の算術平均粗さは、グリル内面12の算術平均粗さよりも小さい。排水溝20の内面を成形する金型部分は、放電目のままとせず鏡面仕上げとすることが好ましい。以上の構成によれば、排水溝20による排水効果が更に向上する。
【0046】
ハンディ型トランシーバ1(通信機器)は、スピーカーグリルアッセンブリ9と、スピーカー5と、を含む。
【0047】
スピーカーグリル10は、筐体30に複数のスリット11を形成して成る。複数のスリット11は互いに平行に形成されている。筐体内面としてのグリル内面12に、各スリット11の中央から所定の範囲に亘って、筐体30の板厚が薄く形成された薄肉部15と、複数のスリット11の薄肉部15と交差し、薄肉部15における筐体30の板厚よりさらに薄く形成された排水溝20と、を備える。以上の構成によれば、薄肉部15の存在により、各スリット11に形成された水膜が破れやすい。また、水膜が破れた後、各薄肉部15に残った水は共通する排水溝20を介して排水されるようになる。
【0048】
スピーカーグリルアッセンブリ9は、グリル内面12のスピーカーグリル10の位置に配置された防塵シート4と、防塵シート4とスピーカーグリル10のグリル内面12の間に配置される接着層としての接着シート3と、を備える。接着シート3は、複数のスリット11、複数の薄肉部15、および排水溝20の各淵部に対して所定の距離離して形成される。
【0049】
筐体30に形成されたスピーカーグリル10は、互いに平行に形成された複数のスリット11と、各スリット11の中央から所定の範囲に亘って、筐体30の内面側の板厚が薄く形成された薄肉部15と、薄肉部15における複数のスリット11と交差し、薄肉部15の板厚よりさらに薄く形成された排水溝20と、を備える。
【0050】
スピーカーグリルアッセンブリ9は、スピーカーグリル10と、スピーカーグリル10の位置における筐体30の内面側に配置された防塵シート4と、防塵シート4とスピーカーグリル10の筐体30の内面側の間に配置される接着層としての接着シート3と、を備える。接着シート3は、複数のスリット11、複数の薄肉部15、および排水溝20の各淵部に対して所定の距離離して形成される。
【符号の説明】
【0051】
1 ハンディ型トランシーバ
2 フロントパネル
2a 正面
2b 背面
2c 上面
2d 下面
2e 側面
3 接着シート
3a 切れ目
4 防塵シート
4a 外周縁
5 スピーカー
6 制御基盤
7 リアパネル
8 バッテリーカバー
9 スピーカーグリルアッセンブリ
10 スピーカーグリル
11 スリット
11a 第1スリット
11b 第2スリット
11c 第3スリット
11d 第4スリット
12 グリル内面
13 グリル外面
15 薄肉部
15a 内方傾斜面
15b 外方傾斜面
15c 先端面
15d 最大板厚
16 厚肉部
16a 上面
17 薄肉対向面
20 排水溝
20d 板厚
21 内部空間
22 水滴貯留空間
23 部分
24 下端部
30 筐体
31 領域
32 領域
p1 パーティングライン
p2 パーティングライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10