(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ネットワーク機器の検出方法、通信制御方法、時刻同期方法
(51)【国際特許分類】
H04L 41/0853 20220101AFI20240214BHJP
H04L 43/0852 20220101ALI20240214BHJP
【FI】
H04L41/0853
H04L43/0852
(21)【出願番号】P 2020101945
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】立石 靖
【審査官】鈴木 香苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-017877(JP,A)
【文献】特開2015-052560(JP,A)
【文献】特開2018-155679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0006956(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 41/0853
H04L 43/0852
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TSN(Time Sensitive Networking)を使用したシステムにおけるネットワーク機器の検出方法であって、
前記TSN対応のネットワーク機器間でフレームサイズの異なる大小のUDPフレームを往復させたときのタイムスタンプからそれぞれの送受信時刻の情報を取得し、取得した情報に基づき前記各UDPフレームの伝送時間を算出するステップと、
前記両UDFフレームの伝送時間差を算出し、算出された前記伝送時間差をTSN未対応のネットワーク機器における前記両UDFフレームのサイズ差分の送受信時間とし、前記伝送時間差が前記両UDFフレームのサイズ差分のN倍であればN台の前記TSN未対応のネットワーク機器の存在を検出するステップと、
を有することを特徴とするネットワーク機器の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TSN(Time Sensitive Networking)を使用したシステムにおけるネットワーク機器の検出方法、通信制御方法、時刻同期方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のネットワークは、帯域制御に優先度の設定、送信フレーム間隔を広げるなどの調整方法が採用されていた。ところが、ネットワークの瞬間的な混雑を緩和してフレームの破棄を防止するためには伝送量を抑えるなどの制約事項があった。
【0003】
そこで、TSNの時分割によって大量の伝送を行いつつ、重要データが確実に届くように制御する方法が用いられている。このTSNは、ネットワーク帯域の制御技術であって、PTP(IEEE 1588 Precision Time Protocol)による時刻同期を行い、その高精度の時計によりネットワーク上で時分割された期間中に送信を実行する。
【0004】
TSNによれば、重要データとその他の通信データ(重要データ以外のデータ:以下、一般データと呼ぶ。)とは、異なる時間に送信されるので、重要データの送信は一般データの送信に影響を受けない。なお、TSN関連の技術として、例えば特許文献1が公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(1)従来のネットワーク(TSN未対応のネットワーク)では、大量のデータ通信を行うと、スイッチングハブ(以下、HUBと呼ぶ。)などのネットワーク機器のバッファが瞬間的に不足し、フレーム破棄が発生する場合がある。このとき重要データが破棄されると問題となる。プロトコルにより送達確認を行い再送する方法もあるが、タイムアウト処理などの時間がかかるため、応答性が必要なシステムには適用できない。
【0007】
そこで、前述のように特定のフレームを優先して送信する優先度の設定や、送信されるフレームの間隔を広げてゆっくり送信するなどの調整を行って、ネットワークに十分な余裕を持たせた設計としていた。そして、その設計によって大量データの通信はできなくなる。
【0008】
これに対してTSNネットワーク(TSN対応のネットワーク)は、PTP時刻同期された時計を使用して時分割された期間にデータを送信する。TSNにおいて決められた重要データの期間は、重要データだけが送受信されるため、一般データによる影響を受けにくい。ただし、一般データを送信する期間は各HUBが大量に送信するため、高負荷によるフレーム破棄を回避するためには送達確認などの機構が必要となる。
【0009】
(2)システム内のすべてのHUBがTSNに対応していれば、データの種類ごとに時分割された期間として分離できる。新規のシステムであればTSN対応のHUBだけで構築することができるが、実際には従来システムの一部をTSN対応のHUBに更新することが多い。
【0010】
伝送負荷を低く抑えるように動作する従来のネットワークと、時分割でデータ種類(重要データ/一般データ)ごとに分離されているTSNネットワークとが混在し、その境界で問題が発生する。
【0011】
従来のネットワークは伝送路に対して1%未満の僅かな伝送であり、稀にファイルなどの大量データを送信する場合でも帯域制御でゆっくり送信するなどの対策を行い、また複数のHUBが同時に大量のデータ送信をしないようにタイミング制御などが行われる。一方、TSNネットワークは、重要データを送受信する期間中は余裕のある伝送であり、一般データの期間中はベストエフォート型であり、大量の送信により伝送負荷が100%に近いことがある。
【0012】
この両者のネットワークの境界(境目)では、想定された伝送状態ではないためフレームの破棄が発生する。また、TSNは複数の送信期間を扱うため設定が複雑となるが、そこに従来のネットワークを考慮した設定を行うのは大変な作業となる。
【0013】
(3)本発明は、このような問題を解決するためになされ、従来のネットワークとTSNネットワークとが混在する場合に、TSN未対応のネットワーク機器を自動的に検出し、両者の境目に適切に対応することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明の一態様は、TSN(Time Sensitive Networking)を使用したシステムにおけるネットワーク機器の検出方法であって、
前記TSN対応のネットワーク機器間でフレームサイズの異なる大小のUDPフレームを往復させたときのタイムスタンプからそれぞれの送受信時刻の情報を取得し、取得した情報に基づき前記各UDPフレームの伝送時間を算出するステップと、
前記各UDPフレームの伝送時間差がフレームサイズ差分のN倍であれば、N台の前記TSN未対応のネットワーク機器の存在を検出するステップと、
を有することを特徴としている。
【0015】
(2)本発明の他の態様は、TSN(Time Sensitive Networking)を使用したシステム中、TSN対応ネットワークとTSN未対応ネットワークとの境界に位置するTSN対応のネットワーク機器の通信を制御する方法であって、
前記TSN対応ネットワーク側から送信されたフレーム群中、重要データ以外の一般データのフレームを破棄し、前記重要データのフレームのみを前記TSN未対応ネットワーク側に送信するステップと、
前記TSN未対応ネットワーク側から送信されたフレーム群を、前記TSN対応ネットワーク側に重要データの時分割された期間に送信するステップと、
を有することを特徴としている。
【0016】
(3)本発明のさらに他の態様は、TSN(Time Sensitive Networking)を使用したシステム中、TSN対応ネットワークとTSN未対応ネットワークとの境界に位置するTSN対応のネットワーク機器の通信を制御する方法であって、
前記TSN対応ネットワーク側から伝送されたフレーム群中、重要データ以外の一般データのフレームに帯域制限を加えて前記TSN未対応ネットワーク側に送信するステップと、
前記TSN未対応ネットワーク側から送信されたフレーム群を、前記TSN対応ネットワーク側に重要データの時分割された期間に送信するステップと、
を有することを特徴とする通信制御方法。
【0017】
(4)本発明のさらに他の態様は、TSN(Time Sensitive Networking)を使用したシステム中、前記TSN対応のネットとワーク機器間に前記TSN未対応にネットワーク機器が存在する場合の時刻同期方法であって、
前記TSN対応のネットワーク機器の送信したPTP(Precision Time Protocol)時刻同期フレームに応答があれば、前記TSN対応のネットワーク機器間でPTP時刻同期フレームを往復させて時刻同期を行うステップと、
前記応答がなければ、前記TSN対応のネットワーク機器間でUDPの時刻同期フレームを往復させて時刻同期を行うステップと、
を有することを特徴とする時刻同期方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来のネットワークとTSNネットワークとが混在する場合にTSN未対応のネットワーク機器を自動的に検出し、両者の境目に適切に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1中、TSN中継装置間に従来型の中継装置が存在しない場合の伝送時間を示す模式図。
【
図2】同 従来型の中継装置が存在する場合の伝送時間を示す模式図。
【
図3】TSNネットワークと従来のネットワークとが混在するシステムの概略図。
【
図4】従来のネットワークにおける伝送負荷を示すグラフ。
【
図5】TSNネットワークによる伝送負荷を示すグラフ。
【
図6】従来のネットワークとTSNネットワークとを混在させたときの伝送負荷を示すグラフ。
【
図9】実施例3において従来型の中継装置が時刻同期フレームを転送できる場合を示す模式図。
【
図10】同 時刻同期フレームを転送できない場合を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、TSNを使用したシステムに関する技術であって、TSN対応のネットワーク機器(TSN対応機器)がTSN未対応のネットワーク機器(TSN未対応機器)を検出する検出方法、TSN対応機器の通信制御方法および時刻同期方法に関する。以下、本発明の実施形態を実施例1~3に基づき説明する。
【実施例1】
【0021】
実施例1では、前記検出方法を説明する。ここではTSN対応機器は、TSNに対応した中継装置(HUB:以下、TSN中継装置と呼ぶ。)とする。
【0022】
TSN未対応機器は、TSNに対応していない中継装置(HUB)とする。PTP機能の有無により区別するため、PTP機能を持たない方を従来HUBと呼び、PTP機能を持つ方をPTPハブと呼ぶ。
【0023】
≪基本的な考え方≫
TSN中継装置間に従来HUB/PTPハブが存在する場合、その存在に応じた動作処理をするため、TSN中継装置において従来HUB/PTPハブの存在を検出する。TSN中継装置間では、PTP時刻同期の機能により、イベントタイプに応じたPTP時刻同期フレームが往復する。
【0024】
TSN中継装置間に従来HUBが存在する場合、従来HUBは時刻補正せずに前記フレームを転送する。時刻補正されていないので時刻同期は不安定となるが、従来HUBが存在すると判断することはできない。TSN中継装置間にPTPハブが存在する場合も、PTPハブにより時刻補正が行われて時刻同期は安定するため、PTPハブが存在すると判断できない。
【0025】
そこで、TSN中継装置を普通のUDPフレームによる時刻同期ができるようにする。フレームサイズの異なるUDPフレームを時刻同期フレームとしてタイムスタンプを付けて往復させる。
【0026】
この場合、TSN中継装置間に従来HUB/PTPハブが存在すれば、単なる転送として処理されるので、UDPフレームのサイズにより伝送時間差が生じる。この伝送時間差に基づき、従来HUB/PTPハブの存在を検出する。
【0027】
隣接するTSN中継装置が存在しない場合、普通のUDPフレームに対して応答はないが、従来HUB/PTPハブなどが接続されていると解釈する。
【0028】
≪前記検出方法の詳細≫
図1および
図2に基づき前記検出方法の詳細を説明する。
図1および
図2中の1a,1bは、TSN中継装置1を示している。また、同2は、TSN中継装置1a,1b間に存在する従来HUB/PTPハブを示している(以下、従来HUB等2と呼ぶ。)。
【0029】
(1)
図1は、TSN中継装置1a,1b間におけるPTP時刻同期フレームを往復させる状態を示している。具体的にはTSN中継装置1aは、TSN中継装置1bに「Pdelay_Req」メッセージを送信する。このメッセージを受信したTSN中継装置1bは、「Pdelay_Resp」メッセージを返信することで応答する。
【0030】
このようなPTP時刻同期フレームが往復したときのタイムスタンプに基づき往路・復路の送受信時刻「T1」~「T4」を取得し、TSN中継装置1a,1b間の伝送時間を計算する、なお、計算される伝送時間は、タイムスタンプの機構を使用しているため、フレームの先頭部分が送受信されたタイミングとなり、フレームサイズの影響を受けない。
【0031】
(2)
図2は、TSN中継装置1a,1b間にフレームサイズの異なるUDPフレームを時刻同期フレームとして往復させる状態を示している。ここでは従来HUB等2は、時刻補正することなく、各UDPフレームを転送する。ただし、各UDPフレームのサイズに応じて従来HUB等2の転送時間が相違する。
【0032】
例えば100バイトのUDPフレームと1000バイトのUDPフレームを往復させた場合、途中に従来HUB等2が存在すればストアンアドフォワード機構によりフレームサイズ分の送受信時間が加算され、それぞれの伝送時間に影響を与える。
【0033】
伝送時間の計算は、TSN中継装置1a側でPTP時刻同期フレームの場合と同様に計算される。すなわち、各UDPフレームを往復させたときのタイムスタンプに基づき往路・復路の送受信時刻「T1」~「T4」を取得し、各UDPフレームの伝送時間を計算式(1)により算出する。
【0034】
式1:伝送時間=「(T2-T1)+(T4-T3)」/2
T1=往路のUDPフレーム送信時刻
T2=往路のUDPフレーム受信時刻
T3=復路のUDPフレーム送信時刻
T4=復路のUDPフレーム受信時刻
TSN中継装置1aは、式1により計算された往路・復路の伝送時間差(遅延時間)に応じて従来HUB等2の台数を検出する。すなわち、「伝送時間差=フレームサイズ差分のN倍」であれば、TSN中継装置1bとの間にN台の従来HUB等2が存在するものと判定する。例えば前述のUDPフレーム同士(100バイト/1000バイト)の場合、フレームサイズ差分は「900バイト」となる。
【0035】
伝送時間差が「900バイト分」であればフレーム差分の1倍なため、1台の従来HUB等2が存在するものと判定される。また、伝送時間差が「1800バイト分」であればフレーム差分の2倍なため、2台の従来HUB等2が存在するものと判定される。
【0036】
このとき伝送時間差がフレーム差分の整数倍でなければ、端数処理法(四捨五入など)の手段を用いてもよい。また、「伝送時間差≒0」であれば、従来HUB等2は存在しないものと判定される。
【0037】
このように実施例1によれば、TSN装置1a,1b間に従来HUB等2が存在するか否かを判定することができる。すなわち、従来HUB等2の存在を検出できるため、ネットワーク構成を変更しても自動的に対応できる。この点で設定誤りを削減し、システムの安定度が向上する。なお、PTPハブをTSN未対応の装置として区別でき、またHUB以外のブリッジ動作する機器も検出することもできる。
【実施例2】
【0038】
図3~
図8に基づき実施例2を説明する。本実施例では、従来のネットワークとTSNネットワークとが混在する場合の通信制御方法を説明する。
【0039】
すなわち、実施例1の検出方法により複数台の従来HUB等2が検出できれば、
図3に示すように、従来のネットワーク20とTSNネットワーク10とが混在すると認識できる。
図3中の1はTSNネットワーク10を構成するTSN中継装置を示し、同2は従来のネットワーク20を構成する従来HUB等2を示している。
【0040】
図4は、従来のネットワークにおける伝送負荷を示している。ここでは必要最小限の伝送として、瞬間的な高負荷によりフレームの破棄が発生しないように調整されている。
【0041】
図5は、TSNネットワークの伝送負荷を示し、時分割による期間として重要データの期間J,一般データの期間Iが存在している。この一般データについては、TCPなどの送達確認などを前提としており、高負荷によるフレーム破棄を許容している。
【0042】
従来のネットワーク20とTSNネットワーク10とを接続した場合には、
図4の伝送負荷と
図5の伝送負荷とが加算されるため、伝送負荷は
図6の状態となり、従来のネットワーク20で送信された重要データの一部が破棄されるおそれがある。フレームが破棄される確率は、フレームに対して一定の確率となるが、重要データのフレーム数は少ないので相対的に影響が大きくなる。
【0043】
そこで、本実施例は、従来のネットワーク20とTSNネットワーク10とが混在する場合、以下の通信制御方法A,B施すことで両ネットワーク10,20の境目における送信タイミングおよび帯域調整を図っている。
【0044】
(1)通信制御方法A
まず、通信制御方法Aを説明する。両ネットワーク10,20の境界では、TSNネットワーク10側から送信された大量の一般データにより、従来のネットワーク20がパンクするおそがある。
【0045】
そこで、TSNネットワーク側から送信されたフレーム群中、一般データのフレームを前記境界において破棄し、従来のネットワーク20側に送信しないこととする。一方、従来のネットワーク20側から送信されたフレーム群は、TSNネットワーク側に重要データの期間に伝送する。従来のネットワーク20側から送信された一般データについてすべて破棄するか、あるいはTSNのネットワークにて専用の送信期間を用意してそこに集める方法がある。
【0046】
図7に基づき詳細を説明する。
図7中の1cは、両ネットワーク10,20の境界に位置するTSN中継装置1を示している。同1d,1eは、TCN中継装置1cにTSNネットワーク側にあるTSN中継装置1を示している。同2a,2bは、従来のネットワーク側にある従来HUB等2であり、TSN中継装置1cに隣接している。
【0047】
ここではTSNネットワーク10側でTSN中継装置「1e→1d→1c」の順に送受信された一般データのフレームは、TSN中継装置1cにより破棄され、従来のネットワーク20側の従来HUB等2aには転送されない。
【0048】
一方、従来のネットワーク20側で「従来HUB2b→2a」の順に送受信されたフレームは、従来HUB等2aからTSN中継装置1cに送信される。これを受信したTSN中継装置1cは、受信フレームを重要データとして蓄積し、TSNの重要データの期間にTSN中継装置1dへ送信する。
【0049】
このときTSN中継装置1cは、TSNの重要データの期間に安定して送信できるように送信帯域を低く設定するか、スケジュールを調整して均等に送信されるように調整する。
【0050】
なお、
図7において、従来のネットワーク20側から送信されたデータは少し遅れてTSNネットワーク10側に届くこととなり、またTSNの一般データによる高負荷伝送はTSNネットワーク10の区間のみに限定される。
【0051】
(2)通信制御方法B
図8に基づき通信制御方法Bを説明する。TSNネットワーク10側でTSN中継装置「1e→1d→1c」の順に送受信されるフレーム群中、一般データのフレームは、TSN中継装置1cにおいて帯域制限を加えて従来のネットワーク20側(従来HUB等2a,2b)へ送信される。
【0052】
すなわち、TSNネットワーク10内において一般データは大量通信が可能であるのに対して、従来のネットワーク20内において一般データは低い通信量に制限される。このとき境界(TSN中継装置1c)において通信路の太さが変化し、細い帯域となった通信はTCPによる帯域調整の影響を受けやすい。
【0053】
そこで、TSNの一般データを従来のネットワーク20に流してもフレーム破棄が発生しない程度にネットワーク10側および20側の一般データの帯域を調整する。これにより従来のネットワーク10への影響を低減し、かつシステム全体での通信が可能となる。なお、従来のネットワーク20側からのフレーム群は、通信制御方法Aと同様に処理される。
【0054】
このような実施例2によれば、従来のネットワーク20とTSNネットワーク10とが混在した環境下において、従来のネットワーク20による通信を維持した状態で、TSN中継装置1による通信を制限付きではあるが可能となる。
【0055】
なお、通信制御方法A,Bは、実施例1により従来HUB等2を検出すれば、その境界にて実行され、従来HUB等2がすべて撤去されれば通常のTSN動作に戻る。この通常のTSN動作であれば帯域の制限はなく使用できる。
【実施例3】
【0056】
図9および
図10に基づき実施例3を説明する。本実施例は、主に実施例1の検出方法によりTSN中継装置1a,1b間に従来HUB等2が検出された場合のPTP時刻同期方法に関する。
【0057】
TSN中継装置1a,1b間のPTP時刻同期は、
図9に示すように、「Pdelay_Req」メッセージと「Pdelay_Resp」メッセージの交換により実行される。ところが、PTP時刻同期の規格はL2(レイヤ2)によるマルチキャストであるものの、
図10に示すように、TSN中継装置1a,1b間の従来HUB等2が前記メッセージを転送しない装置の場合がある。
【0058】
そこで、TSN中継装置1aは、「Pdelay_Req」メッセージ(PTP時刻同期フレーム)に対して所定時間内に「Pdelay_Resp」メッセージの応答が無ければタイムアウトとする。
【0059】
また、TSN中継装置1aは、前記タイムアウトの場合には予め定められたUDPフレームに変更して、時刻同期の「Pdelay_Req」メッセージをTSN中継装置1bに送信するものとする。
【0060】
このときTSN中継装置1aは、TSN中継装置1bから「Pdelay_Resp」メッセージ(UDPフレーム)の応答があれば、UDPフレームによる時刻同期を行う。なお、「Pdelay_Resp」メッセージ(UDPフレーム)の応答も無ければ、隣接するTSN中継装置1bが存在しないものと判定し、時刻同期は行われない。
【0061】
具体的に以下の手順で実施例3を実行する。
(1)TSN中継装置1aは、普通のUDPによる時刻同期フレームを大小のフレームサイズでそれぞれ送信する。
(2)前記送信に応答が無ければ、TSN中継装置1aは送信先にTSN中継装置1は存在しないものと判定し、時刻同期は実施しない。
(3)TSN中継装置1bから応答があれば、実施例1の検出方法により中間に従来HUB等2が存在するか否かを判定する。
(4)前記判定の結果、従来HUB等2が存在しなければ、TSN中継装置1a,1b間で正規のPTP時刻同期フレームによる時刻同期を行う。
(5)前記判定の結果、従来HUB等2が存在すれば、TSN中継装置1aはTSN中継装置1bに正規のPTP時刻同期フレーム(「Pdelay_Req」メッセージ)を送信する。
【0062】
これにTSN中継装置1bからPTP時刻同期フレーム(「Pdelay_Resp」メッセージ)の応答があれば、正規のPTP時刻フレーム同士で時刻同期を行う。一方、前記PTP時刻同期フレームの応答が無ければ、普通のUDPによる時刻同期フレームによる時刻同期を行う。したがって、実施例3によれば、従来HUB等2がPTP時刻同期フレームを転送しない場合における時刻同期が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
特許文献1は、
図11および
図12の矢印Qに示すように、TSN未対応機器12をTSNに対応させる変換処理として、TSN中継装置1fがTSN未対応機器12の代理として時分割送信する。
【0064】
これに対して本発明によれば、両ネットワーク10,20の混在した環境下で、
図11の矢印Pの境界に位置するTSN中継装置1cが、従来HUB等2を検出し、さらにフレームの通信制御および時刻同期を可能としている。
【0065】
したがって、本発明は、TSNネットワーク10と従来のネットワーク20とが混在した環境下での適切な対応ができ、産業上有益である。
【符号の説明】
【0066】
1,1b,1c,1d,1e,1f…TSN中継装置
2,2a,2b,2c…従来HUB等
11…TSN対応機器
12…従来の機器
10…TSNネットワーク
20…従来のネットワーク