(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/70 20160101AFI20240214BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240214BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20240214BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20240214BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240214BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20240214BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20240214BHJP
B60L 53/122 20190101ALI20240214BHJP
【FI】
H02J50/70
H02J50/12
H02J50/40
H02J50/80
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H01F38/14
B60M7/00 X
B60L53/122
(21)【出願番号】P 2020108702
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 統公
(72)【発明者】
【氏名】大西 邦光
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106655530(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
B60M1/00-7/00
H01F38/14
H01F38/18
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場内に構築されたオートメーションシステムに適用される移動車(RT1~RTm)に非接触で給電する非接触給電装置であって、
電力を非接触で送電する送電装置(PTD)と、
前記送電装置から出力される電力を非接触で受電し、受電した電力を前記移動車の蓄電装置(BT)に供給する受電装置(PRD)と、を備え、
前記送電装置は、隣り合って配置される一対の送電コイル(20A、20B)を含
み、前記受電装置が水平方向において対向するように前記移動車が位置合わせされると、前記受電装置へと電力を供給するように構成されており、
一対の前記送電コイルそれぞれは、導体が捲回されたコイル部(21A、21B)と、前記コイル部の一部を覆うとともに前記コイル部からの磁束を誘導するコア部(22A、22B)とを有し、
前記コア部は、前記コイル部の軸心に沿うコイル軸方向において前記コイル部に対向する主面部(221)と、前記主面部に連なるとともに前記コイル軸方向と直交する方向において前記コイル部の最外周面と対向する側面部(222、223)とを有し、
一対の前記送電コイルは、各々の前記コイル部における磁束の発生する向きが逆方向になるように電流が供給されるとともに、各々の前記コイル部の間に前記側面部が介在しないように、各々の前記側面部が一列に並
び、且つ、前記主面部が前記水平方向に交差する姿勢で配置されている非接触給電装置。
【請求項2】
複数の前記送電装置が間隔をあけて配置され、
複数の前記送電装置の少なくとも一部は、前記コイル部の間に前記側面部が介在しないように、隣り合う前記送電装置の前記側面部が一列に並ぶように配置されている請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項3】
前記受電装置および前記送電装置は、電磁誘導により前記送電装置から前記受電装置に電力を供給するように構成され、
前記コア部は、一対の前記側面部が前記コイル部を介して互いに対向するように前記主面部に立設されるとともに、一対の前記側面部の間に前記コイル部の中央部分を保持するセンタポール(224)を有するE型コアである請求項1または2に記載の非接触給電装置。
【請求項4】
前記送電装置は、前記受電装置が前記水平方向において対向するように前記移動車が位置合わせされると、前記受電装置に対向する一対の前記送電コイルのみから前記受電装置へと電力を供給するように構成されている、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触給電装置として、通電時に生ずる磁界が逆位相となるようにコイル軸心に交差する方向に平行に配置された一対の送電コイルを含んでいるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の装置では、送電コイルから受電コイルへの送電効率を高めるべく、一対の送電コイル同士の間隔が送電コイルと受電コイルとの間隔よりも大きくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の如く、一対の送電コイル同士の間隔を大きくすると、漏洩電磁界の打ち消し効果が小さくなるとともに、送電装置の大型化が避けられない。これらは、本発明者らの鋭意検討の末に見出された。
【0005】
本開示は、大型化を避けつつ漏洩電磁界を抑制可能な非接触給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
工場内に構築されたオートメーションシステムに適用される移動車(RT1~RTm)に非接触で給電する非接触給電装置であって、
電力を非接触で送電する送電装置(PTD)と、
送電装置から出力される電力を非接触で受電し、受電した電力を移動車の蓄電装置(BT)に供給する受電装置(PRD)と、を備え、
送電装置は、隣り合って配置される一対の送電コイル(20A、20B)を含み、前記受電装置が水平方向において対向するように前記移動車が位置合わせされると、前記受電装置へと電力を供給するように構成されており、
一対の送電コイルそれぞれは、導体が捲回されたコイル部(21A、21B)と、コイル部の一部を覆うとともにコイル部からの磁束を誘導するコア部(22A、22B)とを有し、
コア部は、コイル部の軸心に沿うコイル軸方向においてコイル部に対向する主面部(221)と、主面部に連なるとともにコイル軸方向と直交する方向においてコイル部の最外周面と対向する側面部(222、223)とを有し、
一対の送電コイルは、各々のコイル部における磁束の発生する向きが逆方向になるように電流が供給されるとともに、各々のコイル部の間に側面部が介在しないように、各々の側面部が一列に並び、且つ、主面部が水平方向に交差する姿勢で配置されている。
【0007】
このように、一対の送電コイルのコイル部での磁束の発生する向きが逆方向になっていれば、一対の送電コイルに生ずる受電装置への送電に寄与しない漏れ磁束が互いに打ち消し合うように作用する。
【0008】
ここで、送電コイルは、コア部の主面部および側面部によって受電装置への送電に寄与する主磁束の磁路が形成される。そして、一対の送電コイルは、各々のコイル部の間に側面部が介在していると、一対の送電コイルの磁束同士の干渉が生じ易くなる。このことは、一対の送電コイルの間隔を小さくすることを妨げる要因になるだけでなく、遠方での漏洩電磁界の増大を招く要因となってしまう。
【0009】
このことを加味して、本開示の非接触給電装置では、一対の送電コイルは、一対の送電コイルのコイル部の間に側面部が介在しないように、各々の側面部が一列に並ぶように配置されている。これによると、一対の送電コイルの磁束同士の干渉が生じ難くなるので、一対の送電コイルの間隔を小さくするとともに、遠方での漏洩電磁界の発生を抑制することが可能となる。また、一対の送電コイルのコイル部の間に側面部が介在しない配置形態とすれば、一対の送電コイルのコイル部の間に側面部が介在する配置形態に比べて、コイル部同士の間隔を小さくすることができる。
【0010】
したがって、本開示によれば、大型化を避けつつ漏洩電磁界を抑制可能な非接触給電装置を実現することができる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る非接触給電装置が適用される部品組付システムの各種構成機器の工場内における配置例を示す模式的な上面図である。
【
図2】第1実施形態に係る非接触給電装置の送電側および受電側の各種構成機器を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態に係る非接触給電装置の模式的な全体構成図である。
【
図4】第1実施形態に係る非接触給電装置の送電パッドと受電パッドとが対向している状態を示す模式的な斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る非接触給電装置の送電パッドをコイル軸方向から見た図である。
【
図6】第1実施形態に係る非接触給電装置の受電パッドをコイル軸方向から見た図である。
【
図7】第1実施形態に係る非接触給電装置の隣り合う送電パッドの配置態様を示す模式的な斜視図である。
【
図8】第1実施形態の比較例となる送電コイルおよび受電コイルを示す模式的な斜視図である。
【
図9】比較例の送電コイルおよび受電コイルで電力を伝送する場合のX-Y平面での磁束分布を示すコンター図である。
【
図10】比較例の送電コイルおよび受電コイルで電力を伝送する場合のX-Y平面での磁束の向きを示すベクトル図である。
【
図11】比較例の送電コイルおよび受電コイルの周囲での磁束の向きを示すベクトル図である。
【
図12】比較例の送電コイルおよび受電コイルをY方向に並べた状態を示す模式的な斜視図である。
【
図13】比較例の送電コイルおよび受電コイルを20台並べた状態で電力を伝送する際のX-Y平面での磁束分布を示すコンター図である。
【
図14】第1実施形態の非接触給電装置における遠方での漏洩電磁界の打ち消し効果を説明するための説明図である。
【
図15】第1実施形態の送電パッドおよび受電パッドを20台並べた状態で電力を伝送する際のX-Y平面での磁束分布を示すコンター図である。
【
図16】第1実施形態の非接触給電装置の漏洩電磁界と比較例の非接触給電装置の漏洩電磁界との差を説明するため説明図である。
【
図17】第1実施形態の送電パッドおよび受電パッドを33台並べた状態で電力を伝送する際のX-Y平面での磁束分布を示すコンター図である。
【
図18】第1実施形態の非接触給電装置において送電装置の数を変えた際の漏洩電磁界を説明するため説明図である。
【
図19】第2実施形態に係る非接触給電装置の送電パッドと受電パッドとが対向している状態を示す模式的な斜視図である。
【
図20】第2実施形態に係る非接触給電装置の隣り合う送電装置の配置態様を示す模式的な斜視図である。
【
図21】第2実施形態の送電パッドおよび受電パッドを20台並べた状態で電力を伝送する際のX-Y平面での磁束分布を示すコンター図である。
【
図22】第2実施形態の非接触給電装置の漏洩電磁界と第1実施形態の非接触給電装置の漏洩電磁界との差を説明するため説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0014】
(第1実施形態)
本実施形態について、
図1~
図18を参照して説明する。本実施形態では、移動型ロボットRT1~RTmを用いた部品組付システムに本開示の非接触給電装置1を適用した例について説明する。各図面では、重力の方向である鉛直方向をZ方向とし、水平方向の一方向をX方向とし、Z方向およびX方向それぞれに直交する方向をY方向としている。
【0015】
部品組付システムは、工場内に構築されたオートメーションシステムである。
図1に示すように、部品組付システムは、工場内に設定された2列の組付ラインAL1、AL2を有する。部品組付システムは、2列の組付ラインAL1、AL2それぞれに配置されるm台の移動型ロボットRT1~RTmによって部品Pの組付作業を実施する。
【0016】
2列の組付ラインAL1、AL2は、基本的な構成要素が同様である。本実施形態では、2列の組付ラインAL1、AL2それぞれの構成要素に対して同一の参照符号を付して説明する。
【0017】
組付ラインAL1、AL2には、移動型ロボットRT1~RTmよりも多いn個の棚SFが、Y方向に沿って一列に並んで配置されている。
図1等では、一列に並ぶ棚SFを個別に特定できるように、棚SFの「SF」に対してY方向の一端側から数えた際の数字を付加している。例えば、Y方向の一方側の端にある棚SFを「SF1」とし、Y方向の他方側の端にある棚SFを「SFn」としている。
【0018】
複数の棚SFそれぞれには、複数の通い箱RBがX方向に沿って並んで配置されている。通い箱RBは、或る製品を構成する複数種の部品Pを収容するための箱である。同じ棚SFに配置される通い箱RB(すなわち、X方向に並ぶ通い箱RB)には、同種の部品Pが収容されている。また、異なる棚SFに収容される通い箱RB(すなわち、Y方向に並ぶ通い箱RB)には、異種の部品Pが収容されている。
【0019】
図2に示すように、複数の棚SFそれぞれには、通い箱RBをY方向にスライド移動させる搬送装置CDが設けられている。この搬送装置CDによって、複数の棚SFの間で通い箱RBを入れ替えることが可能になっている。
【0020】
複数の棚SFそれぞれには、X方向のうち移動型ロボットRT1~RTmの移動経路MR側に、非接触給電装置1の一部を構成する送電装置PTDが設けられている。具体的には、送電装置PTDは、各棚SFの移動経路MR側の側面に対して取り付けられている。本実施形態の組付ラインAL1、AL2には、各棚SFに対応してn個の送電装置PTDが設けられている。送電装置PTDは、Y方向に沿って所定の間隔(例えば、1m程度)をあけて配置されている。
【0021】
ここで、
図1等では、一列に並ぶ送電装置PTDを個別に特定できるように、送電装置PTDの「PTD」に対してY方向の一端側から数えた際の数字を付加している。例えば、Y方向の一方側の端にある送電装置PTDを「PTD1」とし、Y方向の他方側の端にある送電装置PTDを「PTDn」としている。
【0022】
送電装置PTDは、電力を非接触で送電するための装置である。送電装置PTDは、移動型ロボットRT1~RTmに搭載された受電装置PRDを介して移動型ロボットRT1~RTmの蓄電装置BTに電力を供給する。送電装置PTDの詳細は後述する。
【0023】
図2および
図3に示すように、送電装置PTDは、AC/DCコンバータADCの出力電極の間に並列接続されている。AD/DCコンバータADCは、系統電源SPの商用周波数の電圧を直流電圧に変換する電圧変換装置である。
【0024】
系統電源SPは、電力会社等によって提供され電力網である電力系統から電力を受ける交流電源である。系統電源SPは、例えば、出力電圧200V、周波数60Hzとなる三相の交流電圧を出力する。なお、系統電源SPは、出力電圧200V、周波数50Hzとなる単相の交流電圧を出力するようになっていてもよい。
【0025】
ここで、移動型ロボットRT1~RTmの移動経路MRは、複数の棚SFそれぞれの側方に設定され、Y方向に沿って延びている。移動経路MRにおいて送電装置PTDが配置されている位置が、移動型ロボットRT1~RTmの蓄電装置BTを充電するための充電スポットになっている。
【0026】
移動型ロボットRT1~RTmは、複数の棚SFの間を移動して必要な部品Pを通い箱RBからピックアップするとともに、複数の棚SFの間を移動する間にピックアップした部品同士の組付作業を実施する。移動型ロボットRT1~RTmは、運搬台車CV、マニピュレータMP、蓄電装置BT、機器制御回路CU、受電装置PRDを含んでいる。本実施形態では、移動型ロボットRT1~RTmが本開示の移動車に対応している。
【0027】
運搬台車CVは、マニピュレータMP等が設置される土台BS、図示しない電動モータによって回転駆動される車輪WLを有する。運搬台車CVは、機器制御回路CUからの指令に基づいて、車輪WLが回転駆動されることで任意の棚SFの前に移動可能になっている。
【0028】
マニピュレータMPは、双腕型のロボットアームAM1、AM2を備える。マニピュレータMPは、機器制御回路CUからの指令に基づいて、部品Pのピッキング作業や組付作業を実施可能になっている。マニピュレータMPは、例えば、一方のロボットアームAM1で通い箱RBからピックアップした部品Pを他方のロボットアームAM2と協働して他の部品Pに対して組み付ける。
【0029】
蓄電装置BTは、運搬台車CVの車輪WLおよびマニピュレータMP等の電気負荷ELの電力源である。蓄電装置BTは、リチウムバッテリLB、リチウムバッテリLBの蓄電残量(SOC:State Of Chargeの略称)を検出するSOC検出回路SCを備える。リチウムバッテリLB、充電および放電が可能な非水系の二次電池である。リチウムバッテリLBは、送電装置PTDから送電される電力を蓄えることが可能になっている。
【0030】
機器制御回路CUは、プロセッサおよびメモリを含むコンピュータ、当該コンピュータの周辺回路等によって構成されている。機器制御回路CUは、予めメモリに記憶されるコンピュータプログラムにしたがって各種の機器制御処理を実行する。この機器制御処理の実行によって運搬台車CVの車輪WLおよびマニピュレータMP等の電気負荷ELを制御する。
【0031】
受電装置PRDは、送電装置PTDから出力される電力を非接触で受電し、受電した電力を移動型ロボットRT1~RTmの蓄電装置BTに対して供給する装置である。受電装置PRDは、送電装置PTDとともに非接触給電装置1を構成している。
【0032】
ここで、
図1等では、移動型ロボットRT1~RTmの受電装置PRDを個別に特定できるように、「PRD」に対してY方向の一端側から数えた際の数字を付加したものを受電装置PRDの参照符号としている。例えば、Y方向の一方側の端にある移動型ロボットRT1の受電装置PRDを「PRD1」とし、Y方向の他方側の端にある移動型ロボットRTmの受電装置PRDを「PRDm」としている。
【0033】
以下、非接触給電装置1の全体構成について
図3を参照しつつ説明する。非接触給電装置1は、
図2および
図3に示すように、n台の送電装置PTDおよびm台の受電装置PRDを含んでいる。非接触給電装置1は、送電装置PTDおよび受電装置PRDがX方向に対向するように移動型ロボットRT1~RTmが位置合わせされると、送電装置PTDから受電装置PRDへと電力が供給されるように構成されている。
【0034】
送電装置PTDそれぞれは、一対の送電コイル20A、20B、インバータ回路21、受電装置PRD側と通信する通信回路22、制御回路23、受光素子24等を備える。
【0035】
インバータ回路21は、一対の送電コイル20A、20Bに対して交流電流を出力するものである。インバータ回路21は、第1スイッチング素子211、第2スイッチング素子212、第3スイッチング素子213、第4スイッチング素子214、平滑コンデンサ215を備える。インバータ回路21は制御回路23によって制御される。
【0036】
平滑コンデンサ215は、AC/DCコンバータADCの出力電圧を平滑化するためのものである。平滑コンデンサ215は、AC/DCコンバータADCの出力電極の間に接続されている。
【0037】
第1スイッチング素子211および第2スイッチング素子212は、AC/DCコンバータADCの出力電極の間に直列に接続されている。第3スイッチング素子213および第4スイッチング素子214は、AC/DCコンバータADCの出力電極の間に直列に接続されている。第1スイッチング素子211および第2スイッチング素子212の直列接続体と第3スイッチング素子213および第4スイッチング素子214の直列接続体とは、電気的に並列に接続されている。
【0038】
各スイッチング素子211、212、213、214は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ等の各種の半導体素子が用いられる。
【0039】
第1スイッチング素子211および第2スイッチング素子212の接続部T1、第3スイッチング素子213および第4スイッチング素子214の接続部T2は、インバータ回路21における交流電圧の出力電極を構成している。インバータ回路21は、各スイッチング素子211、212、213、214のスイッチングによって、AC/DCコンバータADCの出力電圧に基づいて接続部T1、T2から交流電圧を出力する。インバータ回路21の制御方式は、例えば、フェーズ・シフト型のPWM制御が用いられる。
【0040】
一対の送電コイル20A、20Bは、インバータ回路21を流れる交流電流に基づいて電磁誘導によって送電する。一対の送電コイル20A、20Bは、互いに直列に接続されている。一対の送電コイル20A、20Bは、インバータ回路21の接続部T1、T2の間に接続されている。一対の送電コイル20A、20Bの詳細は後述する。
【0041】
制御回路23は、プロセッサおよびメモリを含むコンピュータ、当該コンピュータの周辺回路等によって構成されている。制御回路23は、予めメモリに記憶されるコンピュータプログラムにしたがって各種の制御処理を実行する。この制御処理の実行によってインバータ回路21等を制御する。
【0042】
受光素子24は、受電装置PRDに設けられた発光素子37とともに、送電装置PTDと受電装置PRDとの距離を測る距離センサDSを構成している。受光素子24は、発光素子37が発する光(例えば、赤外線)の強度を示す検出信号を出力する。
【0043】
一方、受電装置PRDは、一対の受電コイル30A、30B、整流回路31、チョークコイル32、平滑コンデンサ33、電流センサ34、電圧センサ35、送電装置PTD側と通信する通信回路36、発光素子37、制御回路38等を備える。
【0044】
一対の受電コイル30A、30Bは、一対の送電コイル20A、20Bからの電磁誘導によって受電する。一対の受電コイル30A、30Bは、互いに直列に接続されている。一対の受電コイル30A、30Bは、一対の送電コイル20A、20Bと対向可能なように所定の間隔をあけて配置されている。一対の受電コイル30A、30Bの詳細は後述する。
【0045】
整流回路31は、一対の受電コイル30A、30Bから出力される交流電圧を整流し、整流した電圧を出力電極315、316から出力する。整流回路31は、第1ダイオード311、第2ダイオード312、第3ダイオード313、第4ダイオード314を有するブリッジ回路で構成されている。第1ダイオード311および第4ダイオード314は、一対の受電コイル30A、30Bの出力電極P1、P2の間に直列に接続されている。第2ダイオード312および第3ダイオード313は、一対の受電コイル30A、30Bの出力電極P1、P2の間に直列に接続されている。第1ダイオード311および第4ダイオード314の直列接続体と第2ダイオード312および第3ダイオード313の直列接続体とは、電気的に並列に接続されている。
【0046】
ここで、一対の受電コイル30A、30Bの出力電極P1は、第1ダイオード311のアノード電極と第2ダイオード312のカソード電極との接続部である。また、一対の受電コイル30A、30Bの出力電極P2は、第3ダイオード313のカソード電極と第4ダイオード314のアノード電極との接続部である。
【0047】
チョークコイル32および平滑コンデンサ33は、整流回路31の出力電力の脈動を抑えるフィルタ回路を構成する。チョークコイル32は、整流回路31の出力電極315と平滑コンデンサ33の正極電極との間に直列に接続されている。平滑コンデンサ33は、整流回路31の出力電極315、316の間に接続されている。
【0048】
整流回路31の出力電極315は、第1ダイオード311および第4ダイオード314のカソード電極同士の接続部である。また、整流回路31の出力電極316は、第2ダイオード312および第3ダイオード313のアノード電極同士の接続部である。
【0049】
電流センサ34および電圧センサ35は、蓄電装置BTと整流回路31との間に設けられている。電流センサ34は、蓄電装置BTの負極端子から整流回路31の出力電極316に流れる電流を検出する。電圧センサ35は、蓄電装置BTの両端子間の電圧を検出する。
【0050】
発光素子37は、受光素子24とともに距離センサDSを構成している。発光素子37は、光(例えば、赤外線)を発する発光ダイオードで構成される。発光素子37は、制御回路38によって作動が制御される。
【0051】
制御回路38は、プロセッサおよびメモリを含むコンピュータ、当該コンピュータの周辺回路等によって構成されている。制御回路38は、予めメモリに記憶されるコンピュータプログラムにしたがって各種の制御処理を実行する。
【0052】
制御回路38は、送電装置PTD側の制御回路23と協働して、蓄電装置BTへの充電を行う充電制御処理等を実行する。例えば、充電制御処理では、蓄電装置BTのSOCが所定値以下になると、制御回路38が通信回路36を介して蓄電装置BTへの給電を要求する給電信号を送電装置PTD側に送信する。そして、充電制御処理では、例えば、送電装置PTDが通信回路22で受信した給電信号、受光素子24で検出される光の強度等に基づいてインバータ回路21を制御する。
【0053】
次に、本実施形態の一対の送電コイル20A、20Bおよび一対の受電コイル30A、30Bの詳細について
図4~
図6を参照する。
【0054】
図4および
図5に示すように、一対の送電コイル20A、20Bは、送電パッドTPを構成するもので、磁束を遮蔽するカバーCで覆われている。このカバーCは、一対の送電コイル20A、20Bの双方を覆うことが可能な大きさを有する。カバーCは、アルミニウム等の金属材料で構成されている。
【0055】
一対の送電コイル20A、20Bは、互いのコイル軸心が水平となる一方向に平行に配置されている。本実施形態の一対の送電コイル20A、20Bは、互いのコイル軸心がX方向に沿って延びる姿勢で、Y方向に所定の間隔をあけて配置されている。なお、コイル軸心は、一対の送電コイル20A、20Bそれぞれの巻線の中心軸である。
【0056】
一対の送電コイル20A、20Bそれぞれは、導体が捲回されたコイル部21A、21Bおよび通電時にコイル部21A、21Bに生ずる磁束を誘導するコア部22A、22Bを有する。
【0057】
コイル部21A、21Bは、図示しないボビンに対して導体であるリッツ線が捲回された巻線である。本実施形態のコイル部21A、21Bは、10ターン程度の巻き数になっている。具体的には、コイル部21A、21Bは、1本のリッツ線が「8」の字状に捲回されることによって構成されている。
【0058】
各々のコイル部21A、21Bは、通電時に磁束の発生する向きが逆方向になるように構成されている。具体的には、各々のコイル部21A、21Bの一方はリッツ線が時計回りに捲回された巻線で構成され、他方はリッツ線が反時計回りに捲回された巻線で構成されている。すなわち、各々のコイル部21A、21Bは、互いに逆回りとなる方向へ捲回されている。これにより、リッツ線の一端から他端に向けて電流が流れる場合、各々のコイル部21A、21Bには、互いに逆回りとなる方向に電流が流れる。したがって、一対の送電コイル20A、20Bは、各々のコイル部21A、21Bにおける磁束の発生する向きが逆方向になるように電流が供給される。
【0059】
コア部22A、22Bそれぞれは、磁性材料であるフェライトで形成されるフェライトコアで構成されている。コア部22A、22Bは、コイル部21A、21Bの一部を覆う形状になっている。本実施形態のコア部22A、22Bは、断面形状が「E」の字となる形状を有する。
【0060】
具体的には、コア部22A、22Bは、コイル軸方向においてコイル部21A、21Bに対向する主面部221、主面部221に連なるとともにコイル軸方向の直交する方向にてコイル部21A、21Bの最外周面と対向する一対の側面部222、223を有する。具体的には、コア部22A、22Bは、コイル部21A、21Bを支持するセンタポール224を有するE型のコアで構成されている。
【0061】
主面部221は、X-Z平面に拡がる板状に形成されている。一対の側面部222、223は、コイル部21A、21Bを介して互いに対向するように主面部221に立設されている。具体的には、一対の側面部222、223は、主面部221におけるZ方向の両端部からX方向の一方に向けて突き出ている。センタポール224は、コイル部21A、21Bの中央部分(図示しないボビンの中央部分)を保持するものである。センタポール224は、一対の側面部222、223の間に配置され、主面部221におけるZ方向の中央部分からX方向の一方に向けて突き出ている。
【0062】
一対の送電コイル20A、20Bは、各々のコイル部21A、21Bの間に側面部222、223が介在しないように、各々の側面部222、223が一列に並ぶように配置されている。具体的には、一対の送電コイル20A、20Bは、各々の側面部222、223がY方向に沿って一列に並ぶように配置されている。
【0063】
図4および
図6に示すように、一対の受電コイル30A、30Bは、受電パッドRPを構成するもので、磁束を遮蔽するカバーCで覆われている。このカバーCは、一対の受電コイル30A、30Bの双方を覆うことが可能な大きさを有する。カバーCは、アルミニウム等の金属材料で構成されている。
【0064】
一対の受電コイル30A、30Bは、一対の送電コイル20A、20Bと基本的に共通の構造になっている。このため、一対の受電コイル30A、30Bにおける各構成要素に関する説明を簡略化する。
【0065】
一対の受電コイル30A、30Bは、互いのコイル軸心が水平となる一方向に平行に配置されている。一対の受電コイル30A、30Bそれぞれは、導体が捲回されたコイル部31A、31Bおよび通電時にコイル部31A、31Bに生ずる磁束を誘導するコア部32A、32Bを有する。
【0066】
一対の受電コイル30A、30Bのコイル部31A、31Bは、一対の送電コイル20A、20Bのコイル部21A、21Bよりも少ない巻き数(例えば、1ターン)になっている。これにより、受電装置PRDは大電流に対応可能になっている。
【0067】
一対の受電コイル30A、30Bのコア部32A、32Bは、一対の送電コイル20A、20Bのコア部22A、22Bと線対称となるように配置され、一対の送電コイル20A、20Bのコア部22A、22Bとともに磁気経路(すなわち、磁路)を形成する。具体的には、コア部32A、32Bは、コイル部31A、31Bに対向する主面部321、主面部321に連なる一対の側面部322、323、コイル部31A、31Bを支持するセンタポール324を有するE型のコアで構成されている。
【0068】
ここで、
図7に示すように、隣り合う送電装置PTDは、Y方向に所定の間隔(例えば、1m程度)をあけて配置されている。隣り合う送電装置PTDの間隔は、一対の送電コイル20A、20Bの間隔に比べて充分に大きい。隣り合う送電装置PTDは、各々のコイル部21A、21Bの間に各々の側面部222、223が介在しないように、各々の側面部222、223が一列に並ぶように配置されている。隣り合う送電装置PTDは、各々の側面部222、223がY方向に沿って一列に並ぶように配置されている。
【0069】
以上の非接触給電装置1は、送電装置PTDから受電装置PRDに電力を供給する際、一対の送電コイル20A、20Bと一対の受電コイル30A、30Bとが互いに対向する位置に位置決めされた状態で、一対の送電コイル20A、20Bに電流を供給する。具体的には、送電装置PTDから受電装置PRDに電力を供給する際には、一対の送電コイル20A、20Bおよび一対の受電コイル30A、30Bは、X方向に所定の隙間をあけて対向する位置に位置決めされる。これにより、一対の送電コイル20A、20Bおよび一対の受電コイル30A、30Bは、非接触状態でトランス結合され、電磁誘導が効率よく行われる。
【0070】
次に、部品組付システムの作動の概略を説明する。部品組付システムは、機器制御回路CUによって運搬台車CVの車輪WLが駆動されると、移動型ロボットRT1~RTmが移動経路ML上を移動する。
【0071】
移動型ロボットRT1~RTmは、所定の棚SFの通い箱RBの前で停止し、マニピュレータMPによって通い箱RBから所望の部品Pをピックアップする。マニピュレータMPで部品Pをピックアップすると、移動型ロボットRT1~RTmは、部品Pの組付作業を実施しながら次に組み付ける部品Pがバラ積みされた通い箱RBの前に移動する。そして、当該通い箱RBの前で停止して、次に組み付ける部品Pをピックアップする。
【0072】
このように、部品組付システムでは、部品Pのピッキングおよび組付作業が移動型ロボットRT1~RTmによって自動的に繰り返される。
【0073】
非接触給電装置1は、受光素子24で検出される受光強度に基づいて、移動型ロボットRT1~RTmが通い箱RBの前で停止しているか否かを判定する。そして、移動型ロボットRT1~RTmが通い箱RBの前で停止している場合に、各棚SFに設けた送電装置PTDから移動型ロボットRT1~RTmの受電装置PRDに向けて電力を供給する。すなわち、非接触給電装置1は、マニピュレータMPで部品Pをピックアップしている間に、送電装置PTDから受電装置PRDに向けて電力を供給する。受電装置PRDは、送電装置PTDからの受電電力を整流回路31で整流した後、蓄電装置BTに充電する。
【0074】
以上の如く、非接触給電装置1は、部品Pのピッキング時に移動型ロボットRT1~RTmの蓄電装置BTを充電する。非接触給電装置1によると、従来の如く、棚SFが配置されたエリアとは異なるエリアに移動型ロボットRT1~RTmの給電エリアを設定するものに比べて、給電に伴う稼働率低下を抑え、コストの高い移動型ロボットRT1~RTmの余剰を減らすことができる。すなわち、移動型ロボットRT1~RTmに対して非接触給電装置1を適用することで、余剰ロボットを減らして設備導入コストを削減できる。
【0075】
但し、例えば、単純に1m程度の間隔をあけて送電装置PTDを設置すると、複数台の移動型ロボットRT1~RTmを同時に充電する際に、送電パッドTPおよび受電パッドRPに生ずる漏洩電磁界が合成され、遠方に生ずる漏洩電磁界が規制値を超えてしまう。
【0076】
以下、非接触給電装置1における漏洩電磁界について
図8~
図18を参照して説明する。
図8に示す送電コイルTCおよび受電コイルRCは、一対の送電コイル20A、20Bおよび受電コイル30A、30Bの比較例となるものである。送電コイルTCは、一対の送電コイル20A、20Bのうち一方で構成される。受電コイルRCは、一対の受電コイル30A、30Bのうち一方で構成される。
【0077】
図9は、所定の配置状態で送電コイルTCおよび受電コイルRCで電力を伝送する場合のX-Y平面での磁束分布を示すコンター図である。
図10は、所定の配置状態で送電コイルTCおよび受電コイルRCで電力を伝送する場合のX-Z平面での磁束の向きを示すベクトル図である。
図11は、所定の配置状態で送電コイルTCおよび受電コイルRCの周囲での磁束の向きを示すベクトル図である。なお、所定の配置状態は、送電コイルTCおよび受電コイルRCの隙間が4mm、送電コイルTCおよび受電コイルRCが適正位置からY方向およびZ方向に10mmずれた状態(Gap=4mm、ΔY=10mm、ΔZ=10mm)である。
【0078】
図9に示すように、送電コイルTCおよび受電コイルRCで電力を伝送する場合、X方向に10m離れた遠方位置XPでの磁界強度は規制値を示すVaよりも低いが、各コイルTC、RCが配置された位置に向けて同心円状に磁界強度が高くなっている。また、
図10および
図11によれば、送電コイルTCおよび受電コイルRCで電力を伝送する場合には、Z方向への漏れ磁束が支配的となることが判る。
【0079】
ここで、
図13は、
図12に示す比較例の送電パッドTPおよび受電パッドRPを所定の間隔(例えば、1m)あけてY方向に20台配置した際のX-Y平面での磁束分布を示すコンター図である。なお、
図13は、送電パッドTPおよび受電パッドRPの隙間が10mm、送電パッドTPおよび受電パッドRPが適正位置からY方向およびZ方向に10mmずれた状態(Gap=10mm、ΔY=10mm、ΔZ=10mm)での磁束分布を示している。
【0080】
図12に示す送電コイルTCおよび受電コイルRCで電力を伝送する場合、各々の送電コイルTCおよび受電コイルRCで生ずる漏洩電磁界が合成される。これにより、遠方位置XPに生ずる漏洩電磁界が
図13に示すように規制値を示すVaを超えてしまう。
【0081】
これらを加味して、本実施形態の非接触給電装置1は、通電時に逆向きの磁束が生ずる一対の送電コイル20A、20Bおよび一対の受電コイル30A、30Bを採用している。
【0082】
ここで、
図14に示すように、一対の送電コイル20A、20Bおよび一対の受電コイル30A、30BをY方向に隣り合う微少な電流要素Idyと仮定する。このとき、送電コイル20AからR[m]離れた遠方位置XPでの漏洩電磁界ΔHは、ビオ・サバールの法則により
図14に示す数式F1で表される。なお、
図14に示すαは、Y方向における一対の送電コイル20A、20Bの間隔である。また、
図14に示すθは、Y方向に平行な第1仮想線IL1と、遠方位置XPおよび送電コイル20Bを結ぶ第2仮想線IL2とがなす角度である。
【0083】
図14に示す数式F1は、Y方向における一対の送電コイル20A、20Bの間隔αが、送電コイル20Aからの距離Rに比べて充分に小さい場合、
図14に示す数式F2に近似できる(ΔH≒0)。すなわち、通電時に逆向きの磁束が生ずる一対の送電コイル20A、20Bおよび一対の受電コイル30A、30Bを採用すれば、送電コイル20Aから10m離れた遠方位置XPでの漏洩電磁界ΔHを理論上略0にすることができる。
【0084】
また、
図15は、本実施形態の送電パッドTPおよび受電パッドRPを所定の間隔(例えば、1m)あけてY方向に20台配置した際のX-Y平面での磁束分布を示すコンター図である。なお、
図15は、送電パッドTPおよび受電パッドRPの隙間が10mm、送電パッドTPおよび受電パッドRPが適正位置からY方向およびZ方向に10mmずれた状態(Gap=10mm、ΔY=10mm、ΔZ=10mm)での磁束分布を示している。
【0085】
20台の送電パッドTPおよび受電パッドRPで電力を伝送する場合、各々の送電パッドTPおよび受電パッドRPで生ずる漏洩電磁界が遠方で互いに打ち消し合うように作用する。これにより、遠方位置XPに生ずる漏洩電磁界は、
図15に示すように、比較例の漏洩電磁界に比べて大幅に小さくなる。具体的には、遠方位置XPに生ずる漏洩電磁界の最大値は、
図16に示すように規制値を示すVaに比べて大幅に小さくなる。
【0086】
ここで、
図17は、本実施形態の送電パッドTPおよび受電パッドRPを所定の間隔(例えば、1m)あけてY方向に33台配置した際のX-Y平面での磁束分布を示すコンター図である。
【0087】
33台の送電パッドTPおよび受電パッドRPで電力を伝送する場合であっても、各々の送電パッドTPおよび受電パッドRPで生ずる漏洩電磁界が遠方で互いに打ち消し合うように作用する。このため、遠方位置XPに生ずる漏洩電磁界は、
図17に示すように、20台の送電パッドTPおよび受電パッドRPで電力を伝送する場合と同様に比較例の漏洩電磁界に比べて大幅に小さくなる。
【0088】
具体的には、遠方位置XPに生ずる漏洩電磁界の最大値は、
図18に示すように、20台の送電パッドTPおよび受電パッドRPで電力を伝送する場合と同様の値となっている。このため、本実施形態の非接触給電装置1では、送電パッドTPおよび受電パッドRPの台数が増加したとしても、漏洩電磁界の低減効果を充分に得ることができる。すなわち、本実施形態の非接触給電装置1によれば、工場に設置する充電設備の台数によらず、漏洩電磁界の低減効果を充分に得ることができるといった利点がある。
【0089】
以上説明した非接触給電装置1は、一対の送電コイル20A、20Bの各々のコイル部21A、21Bにおける磁束の発生する向きが逆方向になるように電流が供給されるとともに、各々の側面部222、223が一列に並ぶように配置されている。
【0090】
このように、一対の送電コイル20A、20Bのコイル部21A、21Bでの磁束の発生する向きが逆方向になっていれば、一対の送電コイル20A、20Bに生ずる受電装置PRDへの送電に寄与しない漏れ磁束が互いに打ち消し合うように作用する。
【0091】
ここで、送電コイル20A、20Bは、コア部22A、22Bの主面部221および側面部222、223によって受電装置PRDへの送電に寄与する主磁束の磁気経路が形成される。一対の送電コイル20A、20Bは、各々のコイル部21A、21Bの間に側面部222、223が介在していると、一対の送電コイル20A、20Bの磁束同士の干渉が生じ易くなる。このことは、一対の送電コイル20A、20Bの間隔を小さくすることを妨げる要因になるだけでなく、遠方での漏洩電磁界の増大を招く要因となってしまう。
【0092】
このことを加味して、本実施形態の非接触給電装置1では、一対の送電コイル20A、20Bは、コイル部21A、21Bの間に側面部222、223が介在しないように、各々の側面部222、223が一列に並ぶように配置されている。これによると、一対の送電コイル20A、20Bの磁束同士の干渉が生じ難くなるので、一対の送電コイル20A、20Bの間隔を小さくするとともに、遠方での漏洩電磁界の発生を抑制することが可能となる。また、コイル部21A、21Bの間に側面部222、223が介在しない配置形態とすれば、コイル部21A、21Bの間に側面部222、223が介在するものに比べて、コイル部21A、21B同士の間隔を小さくすることができる。
【0093】
以上の如く、本実施形態によれば、大型化を避けつつ漏洩電磁界を抑制可能な非接触給電装置1を実現することができる。この結果、移動型ロボットRT1~RTmの給電エリアの設置の自由度が高まり、給電エリアの増加をさせることができるので、給電に伴う稼働率低下を抑制することができる。すなわち、移動型ロボットRT1~RTmに対して非接触給電装置1を適用すれば、余剰ロボットを減らして設備導入コストを削減できる。
【0094】
加えて、複数の送電装置PTDは、コイル部21A、21Bの間に側面部222、223が介在しないように、隣り合う送電装置PTDの側面部222、223が一列に並ぶように配置されている。これによると、隣り合う送電装置PTDで磁束同士の干渉が生じ難くなるので、遠方での漏洩電磁界の発生を充分に抑制することが可能となる。
【0095】
また、一対の送電コイル20A、20Bのコア部22A、22Bは、主面部221、一対の側面部222、223、センタポール224を有するE型コアである。
【0096】
このように、コア部22A、22BをE型コアで構成すれば、コイル部21A、21Bを近づけたとしても、受電装置PRDへの送電時に寄与する主磁束の磁路を一対の送電コイル20A、20Bそれぞれで簡易に定めることができる。
【0097】
ここで、自動車向けの非接触給電装置1では、車両の最低地上高が約10cm以上あり、伝送距離が少なくとも10cm以上必要となるため、磁気共鳴による給電方式が採用されている。この磁気共鳴による給電方式は、電磁誘導による給電方式に比べて、電力の伝送距離を長くすることができるが、伝送距離が長くなると大型なコア部22A、22Bを採用する必要がある。大型なコア部22A、22Bは、成型制約によって、E型コアのような複雑な三次元形状を有するコアを製造することが困難である。
【0098】
一方、本システムの如く、移動型ロボットRT1~RTm向けの非接触給電装置1では、自動車のような最低地上高の制約がなく、電力の伝送距離を短くすることができるので、小型なコア部22A、22Bを採用することができる。すなわち、本案によればE型コアのような複雑な三次元形状を有するコアを採用することができる。
【0099】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図19~
図22を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0100】
図19に示すように、一対の送電コイル20A、20Bは、互いのコイル軸心がX方向に沿って延びる姿勢で、Z方向に所定の間隔をあけて配置されている。一対の送電コイル20A、20Bの各々のコイル部21A、21Bは、通電時に磁束の発生する向きが逆方向になるように構成されている。一対の送電コイル20A、20Bは、各々のコイル部21A、21Bの間に側面部222、223が介在しないように、各々の側面部222、223がZ方向に一列に並ぶように配置されている。
【0101】
また、一対の受電コイル30A、30Bは、互いのコイル軸心がX方向に沿って延びる姿勢で、Z方向に所定の間隔をあけて配置されている。一対の受電コイル30A、30Bの各々のコイル部31A、31Bは、通電時に磁束の発生する向きが逆方向になるように構成されている。一対の受電コイル30A、30Bは、各々のコイル部31A、31Bの間に側面部322、323が介在しないように、各々の側面部322、323がZ方向に一列に並ぶように配置されている。
【0102】
ここで、
図20に示すように、隣り合う送電装置PTDは、Y方向に所定の間隔(例えば、1m程度)をあけて配置されている。隣り合う送電装置PTDは、各々のコイル部21A、21Bの間に各々の側面部222、223が介在するように配置されている。すなわち、隣り合う送電装置PTDは、各々の側面部222、223がY方向に沿って一列に並んでいない。
【0103】
以上の非接触給電装置1は、送電装置PTDから受電装置PRDに電力を供給する際、一対の送電コイル20A、20Bと一対の受電コイル30A、30Bとが互いに対向する位置に位置決めされた状態で、一対の送電コイル20A、20Bに電流を供給する。
【0104】
ここで、
図21は、本実施形態の送電パッドTPおよび受電パッドRPを所定の間隔(例えば、1m)あけてY方向に20台配置した際のX-Y平面での磁束分布を示すコンター図である。なお、
図21は、送電パッドTPおよび受電パッドRPの隙間が10mm、送電パッドTPおよび受電パッドRPが適正位置からY方向およびZ方向に10mmずれた状態(Gap=10mm、ΔY=10mm、ΔZ=10mm)での磁束分布を示している。
【0105】
20台の送電パッドTPおよび受電パッドRPで電力を伝送する場合、各々の送電パッドTPおよび受電パッドRPで生ずる漏洩電磁界が遠方で互いに打ち消し合うように作用する。これにより、遠方位置XPに生ずる漏洩電磁界は、
図21に示すように、比較例の漏洩電磁界に比べて小さくなる。具体的には、遠方位置XPに生ずる漏洩電磁界の最大値は、
図22に示すように、第1実施形態に比べて若干大きくなるものの、規制値を示すVaに比べて大幅に小さくなる。
【0106】
その他の構成および動作は第1実施形態と同様である。本実施形態の非接触給電装置1によれば、第1実施形態と共通または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0107】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0108】
上述の実施形態では、2列の組付ラインAL1、AL2を有するシステムに本開示の非接触給電装置1を適用した例について説明したが、非接触給電装置1は、例えば、1列または3列以上の組付ラインを有するシステムにも適用可能である。
【0109】
上述の実施形態では、複数の送電装置PTDが所定の間隔をあけてY方向に沿って一列に並んでいるものを例示したが、非接触給電装置1は、これに限定されず、例えば、複数の送電装置PTDの一部が、Y方向に沿って一列に並んでいなくてもよい。また、非接触給電装置1は、例えば、単一の送電装置PTDを備える構成になっていてもよい。さらに、非接触給電装置1は、共振用のコンデンサがない電磁誘導型の給電方式を例示したが、これに限らず、コイルに共振用のコンデンサを接続した磁気共鳴型の給電方式になっていてもよい。
【0110】
上述の実施形態では、一対の送電コイル20A、20Bのコア部22A、22BがE型のコアで構成されているものを例示したが、コア部22A、22Bは、これに限らず、例えば、他の形状を有するコアで構成されていてもよい。
【0111】
上述の実施形態では、移動型ロボットRT1~RTmを用いた部品組付システムに本開示の非接触給電装置1を適用した例について説明したが、非接触給電装置1の適用対象は、これに限定されない。非接触給電装置1は、部品組付システム以外の移動車(例えば、無人搬送車AGV)を用いたシステムに対して適用可能である。また、非接触給電装置1は、工場以外の場所に設置されていてもよい。
【0112】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0113】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0114】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0115】
上述の実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記にした説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0116】
(まとめ)
上記の実施形態の一部または全部に記載された第1の観点によれば、非接触給電装置は、電力を非接触で送電する送電装置と、送電装置から出力される電力を非接触で受電し、受電した電力を前記移動車の蓄電装置に供給する受電装置と、を備える。
【0117】
送電装置は、隣り合って配置される一対の送電コイルを含んでいる。送電コイルは、導体が捲回されたコイル部と、コイル部の一部を覆うとともにコイル部からの磁束を誘導するコア部とを有する。コア部は、コイル部の軸心に沿うコイル軸方向においてコイルに対向する主面部と、主面部に連なるとともにコイル軸方向と直交する方向においてコイル部の最外周面と対向する側面部とを有する。一対の送電コイルは、各々のコイル部における磁束の発生する向きが逆方向になるように電流が供給されるとともに、各々のコイル部の間に側面部が介在しないように、各々の側面部が一列に並んで配置されている。
【0118】
第2の観点によれば、非接触給電装置は、複数の送電装置が間隔をあけて配置されている。複数の送電装置の少なくとも一部は、コイル部の間に側面部が介在しないように、隣り合う送電装置の側面部が一列に並ぶように配置されている。これによると、隣り合う送電装置で磁束同士の干渉が生じ難くなるので、遠方での漏洩電磁界の発生を充分に抑制することが可能となる。
【0119】
第3の観点によれば、受電装置および送電装置は、電磁誘導により送電装置から受電装置に電力を供給するように構成される。コア部は、一対の側面部がコイル部を介して互いに対向するように主面部に立設されるとともに、一対の側面部の間にコイル部の中央部分を保持するセンタポールを有するE型コアである。
【0120】
このように、コア部をE型コアで構成すれば、コイル部を近づけたとしても、受電装置への送電時に寄与する主磁束の磁路を一対の送電コイルそれぞれで簡易に定めることができる。
【0121】
ここで、例えば、自動車向けの非接触給電装置では、車両の最低地上高が約10cm以上あるため、伝送距離が少なくとも10cm以上必要となるため、磁気共鳴型の給電方式が採用されている。この磁気共鳴型の給電方式は、電磁誘導型の給電方式に比べて、電力の伝送距離を長くすることができるが、伝送距離が長くなると大型なコア部を採用する必要がある。大型なコア部は、成型制約によって、E型コアのような複雑な三次元形状を有するコアを製造することが困難である。
【0122】
一方、自動車のような最低地上高の制約がないシステムに適用される非接触給電装置では、自動車のような最低地上高の制約がなく、電力の伝送距離を短くできるので、小型なコア部を採用することができる。したがって、本開示の非接触給電装置は、自動車のような最低地上高の制約がないシステムに好適である。なお、コア部の大型化は、伝送距離が長くなることで生ずるのであって、磁気共鳴型の給電方式を採否によらない。したがって、本案の非接触給電装置は、電磁誘導型に限らず、磁気共鳴型の給電方式を採用可能である。
【符号の説明】
【0123】
1 非接触給電装置
20A、20B 一対の送電コイル
21A、21B コイル部
22A、22B コア部
221 主面部
222、223 側面部
RT 移動型ロボット(移動車)
PTD 送電装置