(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】キャビティを有する回路基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240214BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H01L23/12 F
H01L23/12 B
(21)【出願番号】P 2020109382
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】露谷 和俊
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 道隆
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-053459(JP,A)
【文献】特開2006-128229(JP,A)
【文献】特開2008-282971(JP,A)
【文献】特開平02-281740(JP,A)
【文献】特開2020-056711(JP,A)
【文献】特開2014-029974(JP,A)
【文献】特開平07-335912(JP,A)
【文献】国際公開第2012/124437(WO,A1)
【文献】特開2008-034589(JP,A)
【文献】特開2011-188330(JP,A)
【文献】特開2011-254192(JP,A)
【文献】特表2015-532548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H01L 23/12
H04R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の表面上に積層された単層の第2の絶縁層と、
前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層の界面に形成された導体層と、を備え、
前記第2の絶縁層は、前記第1の絶縁層の前記表面を露出させるキャビティを有し、
前記キャビティの内壁は、底部近傍においてオーバーハング形状を有して
おり、
前記オーバーハング形状によって形成される凹部の高さは、前記導体層の厚みと等しいことを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記第1の絶縁層は、前記キャビティと連通する貫通孔を有することを特徴とする請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記第2の絶縁層に埋め込まれた第1の電子部品をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記キャビティに収容され、前記第1の電子部品よりも厚い第2の電子部品をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の回路基板。
【請求項5】
前記第2の電子部品を前記キャビティ内に固定する接着剤をさらに備え、
前記接着剤の一部は、前記オーバーハング形状によって形成される凹部に充填されていることを特徴とする請求項4に記載の回路基板。
【請求項6】
前記第2の絶縁層の前記第1の絶縁層と接する表面とは反対側の表面上に積層された第3及び第4の絶縁層をさらに備え、
前記キャビティは、前記第2、第3及び第4の絶縁層を貫通して設けられ、
前記キャビティの内壁には、前記第3の絶縁層と前記第4の絶縁層の境界部分に別の凹部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の回路基板。
【請求項7】
前記接着剤の別の一部は、前記別の凹部に充填されていることを特徴とする請求項6に記載の回路基板。
【請求項8】
前記第1の絶縁層に埋め込まれた第1の電子部品をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の回路基板。
【請求項9】
前記第1の電子部品は、平面視で前記キャビティと重なりを有していることを特徴とする請求項8に記載の回路基板。
【請求項10】
前記キャビティに収容された第2の電子部品をさらに備え、
前記第2の電子部品は、平面視で前記第1の電子部品と重なりを有していることを特徴とする請求項9に記載の回路基板。
【請求項11】
第1の絶縁層の一方の表面に第2の絶縁層を積層する第1の工程と、
前記第1の絶縁層の前記一方の表面に設けられた第1の配線パターンをストッパーとして前記第2の絶縁層の一部を除去することにより、前記第1の配線パターンよりも平面サイズの小さいキャビティを前記第2の絶縁層に形成するとともに、前記第1の絶縁層の他方の表面に設けられた第2の配線パターンをマスクとして前記第1の絶縁層の一部を除去することにより、前記キャビティと連通する貫通孔を前記第1の絶縁層に形成する第2の工程と、
前記第1の配線パターンを除去することにより前記キャビティの内壁の底部近傍に凹部を形成し、これにより前記キャビティの内壁の底部近傍をオーバーハング形状とする第3の工程と、を備えることを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項12】
前記キャビティの内部に電子部品を収容するとともに、一部が前記凹部に充填された接着剤によって前記電子部品を前記キャビティ内に固定する第4の工程をさらに備えることを特徴とする請求項
11に記載の回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキャビティを有する回路基板及びその製造方法に関し、特に、キャビティ内にセンサーチップなどの電子部品を収容可能な回路基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロフォンなどのセンサーチップを備えるセンサーモジュールとしては、特許文献1に記載されたセンサーモジュールが知られている。特許文献1に記載されたセンサーモジュールは、貫通孔を有する基板と、貫通孔と重なるよう基板に搭載されたセンサーチップを有しており、貫通孔を介して進入する空気の振動(音)がセンサーチップによって検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたセンサーモジュールは、基板が箱形形状を有していることから、多層配線構造を実現することが困難であった。
【0005】
したがって、本発明は、センサーチップなどの電子部品を収容可能なキャビティを有し、且つ、多層配線構造を有する回路基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による回路基板は、第1の絶縁層と、第1の絶縁層の表面上に積層された第2の絶縁層とを備え、第2の絶縁層は第1の絶縁層の表面を露出させるキャビティを有し、キャビティの内壁は底部近傍においてオーバーハング形状を有していることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、複数の絶縁層が積層された構造を有していることから、基板を多層配線構造とすることが可能となる。しかも、キャビティの内壁の底部近傍がオーバーハング形状を有していることから、キャビティ内に収容したセンサーチップなどの電子部品を接着剤によって固定する場合に、接着強度を高めることが可能となる。
【0008】
本発明において、第1の絶縁層はキャビティと連通する貫通孔を有していても構わない。これによれば、キャビティの内部が貫通孔を介して雰囲気中に晒されることになる。
【0009】
本発明による回路基板は、第2の絶縁層に埋め込まれた第1の電子部品をさらに備えていても構わない。これによれば、回路基板を多機能化することが可能となる。この場合、回路基板は、キャビティに収容され第1の電子部品よりも厚い第2の電子部品をさらに備えても構わない。これによれば、第2の電子部品が厚い場合であっても、全体の厚みの増加を抑えることが可能となる。さらにこの場合、回路基板は、第2の電子部品をキャビティ内に固定する接着剤をさらに備え、接着剤の一部は、オーバーハング形状によって形成される凹部に充填されていても構わない。これによれば、第1及び第2の絶縁層に対する接着剤の接着強度を高めることが可能となる。
【0010】
本発明による回路基板は、第2の絶縁層の第1の絶縁層と接する表面とは反対側の表面上に積層された第3の絶縁層をさらに備え、キャビティは第2及び第3の絶縁層を貫通して設けられ、キャビティの内壁には、第2の絶縁層と第3の絶縁層の境界部分に別の凹部が設けられていても構わない。これによれば、接着剤の別の一部を別の凹部に充填させることにより、第2及び第3の絶縁層に対する接着剤の接着強度を高めることが可能となる。
【0011】
本発明による回路基板は、第1の絶縁層に埋め込まれた第1の電子部品をさらに備えていても構わない。これによれば、回路基板を多機能化することが可能となる。この場合、第1の電子部品は平面視で前記キャビティと重なりを有していても構わない。これによれば、回路基板の平面サイズを小型化することが可能となる。さらにこの場合、キャビティに収容された第2の電子部品をさらに備え、第2の電子部品は平面視で第1の電子部品と重なりを有していても構わない。これによれば、回路基板の平面サイズをより小型化することが可能となる。
【0012】
本発明による回路基板の製造方法は、第1の絶縁層の一方の表面に第2の絶縁層を積層する第1の工程と、第1の絶縁層の一方の表面に設けられた第1の配線パターンをストッパーとして第2の絶縁層の一部を除去することにより、第1の配線パターンよりも平面サイズの小さいキャビティを第2の絶縁層に形成するとともに、第1の絶縁層の他方の表面に設けられた第2の配線パターンをマスクとして第1の絶縁層の一部を除去することにより、キャビティと連通する貫通孔を第1の絶縁層に形成する第2の工程と、第1の配線パターンを除去することによりキャビティの内壁の底部近傍に凹部を形成し、これによりキャビティの内壁の底部近傍をオーバーハング形状とする第3の工程を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、第1の配線パターンのサイズ及び形状によって、キャビティの内壁に形成すべき凹部の形状を調整することが可能となる。
【0014】
本発明による回路基板の製造方法は、キャビティの内部に電子部品を収容するとともに、一部が凹部に充填された接着剤によって電子部品をキャビティ内に固定する第4の工程をさらに備えていても構わない。これによれば、第1及び第2の絶縁層に対する接着剤の接着強度を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明によれば、センサーチップなどの電子部品を収容可能なキャビティを有し、且つ、多層配線構造を有する回路基板及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による回路基板1の構造を説明するための模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、回路基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図3】
図3は、回路基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図4】
図4は、回路基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図5】
図5は、回路基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図6】
図6は、回路基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図7】
図7は、回路基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図8】
図8は、回路基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図9】
図9は、回路基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図10】
図10は、回路基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図11】
図11は、回路基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図12】
図12は、回路基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図13】
図13は、回路基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図14】
図14は、回路基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図15】
図15は、回路基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図16】
図16は、回路基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図17】
図17は、回路基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図18】
図18は、本発明の第2の実施形態による回路基板2の構造を説明するための模式的な断面図である。
【
図19】
図19は、本発明の第3の実施形態による回路基板6の構造を説明するための模式的な断面図である。
【
図20】
図20は、本発明の第4の実施形態による回路基板7の構造を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態による回路基板1の構造を説明するための模式的な断面図である。
【0019】
図1に示すように、第1の実施形態による回路基板1は、絶縁層3~5と、絶縁層3~5の各表面に位置する導体層L1~L4からなる多層配線構造を有している。特に限定されるものではないが、最下層に位置する絶縁層3及び最上層に位置する絶縁層5は、ガラスクロスなどの芯材にエポキシなどの樹脂材料を含浸させたコア層であっても構わない。これに対し、絶縁層4は、ガラスクロスなどの芯材を含まない無芯材樹脂層であっても構わない。絶縁層4は、絶縁層4a,4bからなる。特に、絶縁層3,5の熱膨張係数は、絶縁層4の熱膨張係数よりも小さいことが好ましい。このように、無芯材樹脂層である絶縁層4をコア層である絶縁層3,5で挟み込む構造とすれば、回路基板1の厚さが薄い場合であっても十分な機械的強度を得ることが可能となる。絶縁層3と絶縁層5の厚みは、互いに同じであっても構わない。
【0020】
絶縁層4には、半導体ICなどの電子部品60が埋め込まれている。また、回路基板1には、電子部品60の近傍に絶縁層4,5を貫通して設けられ、底部において絶縁層3の表面を露出させるキャビティCが設けられており、キャビティCの内部に半導体ICなどの電子部品70が収容されている。電子部品60,70の種類については特に限定されないが、電子部品70についてはマイクロフォン、圧力センサー、温度センサー、ガスセンサーなどのセンサーチップであっても構わないし、電子部品60については電子部品70を制御するコントローラチップであっても構わない。キャビティCを電子部品60の近傍に設ければ、電子部品60と電子部品70を接続する配線の配線長を短くすることができる。電子部品60は、絶縁層4に埋め込み可能な厚さ、例えば100μm以下に薄型化されている。これに対し、電子部品70は電子部品60よりも厚みが大きいが、キャビティCに収容することによって回路基板1の全体の厚みが抑制されている。電子部品70は、最上層に位置する絶縁層5の表面から突出していても構わない。キャビティCの内壁は、絶縁層3~5の主面に対して垂直であることが好ましいが、製造プロセスによってはキャビティCの内壁を完全な垂直とすることは困難であるため、キャビティCの内壁はテーパー状であっても構わない。
【0021】
キャビティCの底部近傍には凹部A1が設けられている。凹部A1は、キャビティCの径を底部において局所的に拡大させる部分であり、平面視でキャビティCの底部の全周に亘って設けられている。このような凹部A1が設けられていることにより、キャビティCの内壁は、底部近傍においてオーバーハング形状を構成する。キャビティCに収容された電子部品70は、接着剤74によって回路基板1に固定されている。接着剤74は、キャビティCの底面を構成する絶縁層3の表面、並びに、キャビティCの内壁を構成する絶縁層4の断面と接しているとともに、一部が凹部A1に充填されている。このように、接着剤74の一部が凹部A1に充填されることにより、絶縁層3,4aに対する接着剤74の接着強度が高められる。
【0022】
絶縁層3にはキャビティCと連通する複数の貫通孔Tが設けられている。これにより、電子部品70の検出部73が貫通孔Tを介して雰囲気中に晒されることから、空気の振動、圧力、温度又は組成を検出することが可能となる。貫通孔Tの数については特に限定されないが、1つの大きな貫通孔Tを設けるよりも、サイズの小さい複数の貫通孔Tを設けることが好ましい。これによれば、貫通孔Tから異物が混入しにくくなる。但し、電子部品70の種類によっては、必ずしも貫通孔Tを設ける必要はない。
【0023】
最上層に位置する絶縁層5及びその表面に形成された導体層L1の一部は、ソルダーレジストSR1によって覆われている。同様に、最下層に位置する絶縁層3及びその表面に形成された導体層L4の一部は、ソルダーレジストSR2によって覆われている。特に限定されるものではないが、ソルダーレジストSR1は回路基板1の上面1aを構成し、ソルダーレジストSR2は回路基板1の下面1bを構成する。図示しないが、回路基板1の上面1aには、キャパシタやインダクタなどの電子部品を搭載することができる。下面1bにはマザーボードと接続されるユーザー端子を形成することができる。
【0024】
導体層L1は、配線パターン11~14を含んでいる。配線パターン11~14のうち、ソルダーレジストSR1で覆われていない部分は、AuなどからなるメッキPが施されていても構わない。配線パターン11は、ボンディングワイヤBW1を介して電子部品70のボンディングパッド71に接続される。同様に、配線パターン12は、ボンディングワイヤBW2を介して電子部品70のボンディングパッド72に接続される。一方、配線パターン13は、キャビティCの開口部の周囲において絶縁層5が露出しないよう、キャビティCの開口部を取り囲むように設けられている。配線パターン13は、グランド電位が与えられるグランドパターンであることが好ましい。これによれば、配線パターン13によってシールド効果も得られる。
【0025】
導体層L2は、配線パターン21~23を含んでいる。配線パターン21~23は、絶縁層5を貫通して設けられたビア導体50~52を介して、導体層L1の配線パターン11,12,14にそれぞれ接続されている。また、配線パターン22,23は、平面視で電子部品60と重なる位置に設けられたビア導体55,56を介して、電子部品60の端子電極61,62にそれぞれ接続されている。
【0026】
導体層L3は、配線パターン32,33を含んでいる。配線パターン32,33は、絶縁層4を貫通して設けられたビア導体53,54を介して、導体層L2の配線パターン21,23にそれぞれ接続されている。ビア導体53,54は、平面視で電子部品60と重ならない位置に配置されている。
【0027】
導体層L4は、配線パターン41~43を含んでいる。配線パターン41は、キャビティCと重なる位置に設けられており、貫通孔Tに対応する部分においては除去されている。配線パターン42,43は、絶縁層3を貫通して設けられたビア導体58,59を介して、導体層L3の配線パターン32,33にそれぞれ接続されている。配線パターン41~43のうち、ソルダーレジストSR2で覆われていない部分は、AuなどからなるメッキPが施されていても構わない。
【0028】
以上が第1の実施形態による回路基板1の構造である。このように、本実施形態による回路基板1は、電子部品70を収容するキャビティCを備えているとともに、キャビティCと連通する複数の貫通孔Tを備えていることから、電子部品70の厚みが大きい場合であっても全体の厚さを抑えつつ、貫通孔Tを介して空気の振動、圧力、温度又は組成を検出することが可能となる。しかも、キャビティCの内壁は、底部近傍においてオーバーハング形状を有しており、接着剤74の一部がオーバーハング形状によって形成される凹部A1に充填されていることから、接着剤74による接着力を高めることも可能となる。また、キャビティCの開口部の周囲において絶縁層5が露出しないよう、配線パターン13がキャビティCの開口部を取り囲むように設けられていることから、絶縁層5に含まれるガラスクロスなどの芯材の脱落を防止することも可能となる。
【0029】
次に、本実施形態による回路基板1の製造方法について説明する。
【0030】
図2~
図17は、回路基板1の製造方法を説明するための工程図である。
【0031】
まず、
図2に示すように、ガラス繊維などの芯材を含む絶縁層3の両面にCu等の導体箔からなる導体層L3,L4が貼合されてなる基材(ワークボード)、すなわち両面CCL(Copper Clad Laminate)を準備する。絶縁層3に含まれる芯材の厚みは、ハンドリングを容易にするための適度な剛性を確保するため、40μm以上であることが望ましい。なお、導体層L3,L4の材質については特に制限されず、上述したCuの他、例えば、Au、Ag、Ni、Pd、Sn、Cr、Al、W、Fe、Ti、SUS材等の金属導電材料が挙げられ、これらの中でも、導電率やコストの観点からCuを用いることが好ましい。後述する他の導体層L1,L2についても同様である。また、導体層L3の表面L3aは、絶縁層4aに対する密着性を高めるために、粗化されていることが好ましい。
【0032】
また、絶縁層3に用いる樹脂材料は、シート状又はフィルム状に成形可能なものであれば特に制限されず使用可能であり、ガラスエポキシの他、例えば、ビニルベンジル樹脂、ポリビニルベンジルエーテル化合物樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)、ポリフェニレエーテル(ポリフェニレンエーテルオキサイド)樹脂(PPE,PPO)、シアネートエステル樹脂、エポキシ+活性エステル硬化樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂(ポリフェニレンオキサオド樹脂)、硬化性ポリオレフィン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、若しくはベンゾオキサジン樹脂の単体、又は、これらの樹脂に、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸アルミウイスカ、チタン酸カリウム繊維、アルミナ、ガラスフレーク、ガラス繊維、窒化タンタル、窒化アルミニウム等を添加した材料、さらに、これらの樹脂に、マグネシウム、ケイ素、チタン、亜鉛、カルシウム、ストロンチウム、ジルコニウム、錫、ネオジウム、サマリウム、アルミニウム、ビスマス、鉛、ランタン、リチウム及びタンタルのうち少なくとも1種の金属を含む金属酸化物粉末を添加した材料を用いることができ、電気特性、機械特性、吸水性、リフロー耐性等の観点から、適宜選択して用いることができる。さらに、絶縁層3に含まれる芯材としては、ガラス繊維、アラミド繊維等の樹脂繊維等を配合した材料を挙げることができる。後述する他の絶縁層4a,4b,5についても同様である。
【0033】
次に、
図3に示すように、例えばフォトリソグラフィー法など公知の手法を用いて導体層L3をパターニングすることにより、配線パターン31~33を形成する。配線パターン31は、キャビティCを形成すべき領域と重なる位置に設けられる。また、配線パターン31には、貫通孔Tを形成すべき領域と重なる位置に開口部31aが設けられている。次に、
図4に示すように、導体層L3を埋め込むよう、絶縁層3の表面に例えば未硬化(Bステージ状態)の樹脂シート等を真空圧着等によって積層することにより、絶縁層4aを形成する。
【0034】
次に、
図5に示すように、絶縁層4a上に電子部品60を載置する。電子部品60は、端子電極61,62が形成された主面が上側を向くよう、フェースアップ方式で搭載される。電子部品60が半導体ICである場合、シリコン基板が例えば200μm以下、より好ましくは50~100μm程度に薄型化されていても構わない。
【0035】
次に、
図6に示すように、電子部品60を覆うよう、絶縁層4b及び導体層L2を形成する。絶縁層4bの形成は、例えば、未硬化又は半硬化状態の熱硬化性樹脂を塗布した後、未硬化樹脂の場合それを加熱して半硬化させ、さらに、プレス手段を用いて導体層L2とともに硬化成形することが好ましい。絶縁層4bは、電子部品60の埋め込みを妨げる繊維が含まれない樹脂シートが望ましい。これにより、電子部品60が絶縁層4に埋め込まれる。
【0036】
次に、
図7に示すように、例えばフォトリソグラフィー法など公知の手法を用いて導体層L2の一部をエッチングにより除去することにより、絶縁層4を露出させる開口部53a~56aを形成する。このうち、開口部53a,54aはそれぞれ配線パターン32,33と重なる位置に形成され、開口部55a,56aはそれぞれ電子部品60の端子電極61,62と重なる位置に形成される。
【0037】
次に、
図8に示すように、導体層L2をマスクとしてレーザー加工又はブラスト加工を行うことにより、導体層L2で覆われていない部分における絶縁層4を除去する。これにより、開口部53a~56aに対応する位置には、それぞれビア53b~56bが形成される。ビア53b~56bの底部においては、それぞれ配線パターン32,33及び端子電極61,62が露出する。
【0038】
次に、
図9に示すように、無電解メッキ及び電解メッキを施すことにより、ビア53b~56bの内部にそれぞれビア導体53~56を形成する。無電解メッキ及び電解メッキを行う前に、導体層L2を全て削除しても構わない。これにより、ビア導体53~56を介して、導体層L3の配線パターン32,33及び電子部品60の端子電極61,62が導体層L2に接続される。次に、
図10に示すように、導体層L2をフォトリソグラフィー法など公知の手法によってパターニングすることにより、配線パターン21~23を形成する。
【0039】
次に、
図11に示すように、導体層L2を埋め込むよう、絶縁層5と導体層L1が積層されたシートを真空熱プレスする。次に、
図12に示すように、例えばフォトリソグラフィー法など公知の手法を用いて導体層L1,L4の一部をエッチングにより除去することにより、導体層L1に絶縁層5を露出させる開口部50a~52a,Caを形成し、導体層L4に絶縁層3を露出させる開口部57a~59aを形成する。開口部Caは配線パターン31と重なる位置に設けられ、開口部57aは開口部31aと重なる位置に設けられる。
【0040】
次に、
図13に示すように、導体層L1,L4をマスクとしてレーザー加工又はブラスト加工を行うことにより、導体層L1で覆われていない部分における絶縁層5,4を除去するとともに、導体層L4で覆われていない部分における絶縁層3を除去する。これにより、開口部50a~52a,58a,59aに対応する位置には、それぞれビア50b~52b,58b,59bが形成され、開口部Caに対応する位置にはキャビティCが形成され、開口部57aに対応する位置には貫通孔Tが形成される。開口部50a~52aの形成とキャビティCの形成は、同時に行っても構わないし、順次行っても構わない。この時、キャビティCの底部における平面サイズは、配線パターン31の平面サイズよりも小さく、このため、配線パターン31の外周縁部は絶縁層4aで覆われた状態となる。
【0041】
このように、キャビティCの形成においては、配線パターン13をマスクの一部とし、配線パターン31をストッパーとして加工を行うことにより、所望の形状を有するキャビティCを容易に形成することができる。また、キャビティCを形成すると、絶縁層5に含まれるガラスクロスなどの芯材がキャビティCの内部に突出することがある。このような場合であっても、配線パターン13がキャビティCの開口部を取り囲むように設けられ、これによりキャビティCの開口部の周囲が配線パターン13によって押さえられることから、ガラスクロスなどの芯材の脱落が生じにくい。
【0042】
レーザー加工又はブラスト加工においては、被加工物の厚み方向に対するガラスクロスの比率が多いほど、また、被加工物である樹脂に含まれるフィラーの充填率が多いほど、単位時間当たりの加工量が少なくなる。このことは、一般に、被加工物の熱膨張係数が大きいほど単位時間当たりの加工量が多くなることを意味する。このため、絶縁層5よりも絶縁層4の熱膨張係数が大きい場合、絶縁層5を加工する第1段階、つまりアスペクト比が小さい段階においては、単位時間当たりの加工量が比較的小さい。これに対し、絶縁層4を加工する第2の段階、つまりアスペクト比が大きい段階においては、単位時間当たりの加工量が比較的大きくなる。これにより、アスペクト比の大きいキャビティを形成する場合に生じる内壁のテーパーが抑えられ、より垂直に近い内壁を有するキャビティCを形成することが可能となる。但し、キャビティCの形成方法がレーザー加工又はブラスト加工に限定されるものではなく、他の方法、例えばドリル加工を用いても構わない。
【0043】
次に、
図14に示すように、無電解メッキ及び電解メッキを施すことにより、ビア50b~52b,58b,59bの内部にそれぞれビア導体50~52,58,59を形成する。この時、キャビティCの内壁や貫通孔Tの内壁にメッキ膜が形成されても構わない。次に、
図15に示すように、導体層L1,L4をフォトリソグラフィー法など公知の手法によってパターニングすることにより、導体層L1に配線パターン11~14を形成し、導体層L4に配線パターン41~43を形成する。この時、キャビティCの底面に露出する配線パターン31も除去され、これによりキャビティCの底部には凹部A1が形成される。したがって、凹部A1の高さは導体層L3の厚みと等しい。
【0044】
そして、
図16に示すように、所定の平面位置にソルダーレジストSR1,SR2を形成した後、
図17に示すように、ソルダーレジストSR1,SR2から露出する配線パターン11~13,41~43の表面にAuなどからなるメッキPを形成すれば、回路基板1の前駆体が完成する。回路基板1の前駆体は、キャビティCに電子部品70を収容する前の半完成品である。そして、キャビティCの内部に接着剤74を供給した後、キャビティCに電子部品70を収容し、ボンディングワイヤBW1,BW2を用いた電気的接続を行えば、回路基板1が完成する。
【0045】
このように、本実施形態においては、配線パターン31をストッパーとして配線パターン31よりも平面サイズの小さいキャビティCを形成し、その後、配線パターン31を除去していることから、キャビティCの底部近傍に凹部A1を形成することが可能となる。また、配線パターン31には開口部31aが設けられていることから、キャビティCに連通する貫通孔TをキャビティCと同時に形成することが可能となる。
【0046】
しかも、キャビティCをレーザー加工又はブラスト加工によって形成する場合、下層に位置する絶縁層4の材料として、ガラスクロスを含まず、且つ、上層に位置する絶縁層5よりも樹脂に含まれるフィラーの充填率が少なく、これにより絶縁層5よりも熱膨張係数の大きい材料を用いれば、キャビティCの内壁をより垂直に加工することが可能となる。これにより、回路基板1の平面サイズを小型化することが可能となる。
【0047】
図18は、本発明の第2の実施形態による回路基板2の構造を説明するための模式的な断面図である。
【0048】
図18に示すように、第2の実施形態による回路基板2は、キャビティCの内壁に別の凹部A2が設けられている点において、第1の実施形態による回路基板1と相違している。その他の基本的な構成は第1の実施形態による回路基板1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。凹部A2は絶縁層4bと絶縁層5の境界部分に設けられており、キャビティCを形成した後、キャビティCの内壁に露出する導体層L2を除去することによって形成することができる。そして、キャビティCの底部近傍に位置する凹部A1だけでなく、別の凹部A2にも接着剤74を充填させれば、接着剤74の接着強度をより高めることが可能となる。
【0049】
図19は、本発明の第3の実施形態による回路基板6の構造を説明するための模式的な断面図である。
【0050】
図19に示すように、第3の実施形態による回路基板6は、絶縁層3,4にキャビティCが設けられ、絶縁層5に貫通孔Tが設けられている点において、第1の実施形態による回路基板1と相違している。その他の基本的な構成は第1の実施形態による回路基板1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態が例示するように、キャビティCと貫通孔Tの上下位置は、第1の実施形態による回路基板1と逆であっても構わない。
【0051】
図20は、本発明の第4の実施形態による回路基板7の構造を説明するための模式的な断面図である。
【0052】
図20に示すように、第4の実施形態による回路基板7は、絶縁層5にキャビティCが設けられ、絶縁層3,4に貫通孔Tが設けられている点において、第1の実施形態による回路基板1と相違している。その他の基本的な構成は第1の実施形態による回路基板1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態においては、電子部品60が埋め込まれた絶縁層4とキャビティCが形成された絶縁層5が別であることから、平面視で電子部品60とキャビティCに部分的な重なりを持たせることが可能となる。特に、
図20に示すように、平面視で電子部品60と電子部品70に部分的な重なりを持たせれば、回路基板7の平面サイズを小型化することも可能となる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0054】
1,2,6,7 回路基板
1a 回路基板の上面
1b 回路基板の下面
3,4,4a,4b,5 絶縁層
11~14,21~23,31~33,41~43 配線パターン
31a,50a~59a,Ca 開口部
50~56,58,59 ビア導体
50b~56b,58b,59b ビア
60,70 電子部品
61,62 端子電極
71,72 ボンディングパッド
73 検出部
74 接着剤
A1,A2 凹部
BW1,BW2 ボンディングワイヤ
C キャビティ
L1~L4 導体層
L3a 導体層の表面
P メッキ
SR1,SR2 ソルダーレジスト
T 貫通孔