(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/32 20060101AFI20240214BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20240214BHJP
F25B 27/02 20060101ALI20240214BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240214BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240214BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20240214BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240214BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20240214BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20240214BHJP
B60K 11/08 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B60H1/32 626A
B60H1/32 615
B60H1/00 101R
F25B27/02 Z
F25B1/00 321Z
B60L1/00 L
B60L9/18 J
B60L50/60
B60L58/26
B60K11/04 J
B60K11/08
(21)【出願番号】P 2020111492
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聡
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】山田 淳司
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-181909(JP,A)
【文献】国際公開第2002/064388(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/077811(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/044353(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
F25B 27/02
F25B 1/00
B60L 1/00
B60L 9/18
B60L 50/60
B60L 58/26
B60K 11/04
B60K 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された前記冷媒を放熱させて、車室内空間へ送風される空気を加熱する放熱部(12、42)と、
前記放熱部で放熱された前記冷媒を減圧させる減圧部(14a、14c)と、
前記減圧部で減圧された前記冷媒に外気から吸熱させる外気吸熱部(16、19、50
、54)と、
前記減圧部で減圧された前記冷媒に廃熱機器(80、56)の廃熱を吸熱させる廃熱吸熱部(19)と、
前記外気吸熱部に導入される前記外気の通路の開度を調整するように開閉するシャッタ(90)と、
前記外気吸熱部および前記廃熱吸熱部での前記冷媒の吸熱量よりも前記廃熱機器の廃熱量が多いと判断される場合、前記シャッタを閉じる制御部(60)とを備える冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記外気吸熱部への前記冷媒の流れが遮断されている場合、前記シャッタを閉じる請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記外気吸熱部の前記冷媒の温度に起因する物理量と外気温度とに基づいて前記外気吸熱部が吸熱しているか否かを判定し、
前記外気吸熱部が吸熱していると判定した場合、前記外気吸熱部および前記廃熱吸熱部での前記冷媒の吸熱量よりも前記廃熱機器の廃熱量が多いか否かを判断し、
前記外気吸熱部および前記廃熱吸熱部での前記冷媒の吸熱量よりも前記廃熱機器の廃熱量が多いと判断される場合、前記シャッタを閉じる請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記廃熱吸熱部は、前記廃熱機器を冷却する熱媒体から前記冷媒に吸熱させ、
さらに、前記熱媒体と前記外気とを熱交換させるラジエータ(54)を備え、
前記シャッタは、前記ラジエータに導入される前記外気の通路も開閉し、
前記制御部は、前記熱媒体の温度が強制冷却温度以上になった場合、前記シャッタを開く請求項1ないし3のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記廃熱吸熱部で前記廃熱機器の廃熱を吸熱する廃熱回収モードと、前記外気吸熱部で前記外気から吸熱する外気吸熱モードとを切り替え可能になっており、
前記廃熱吸熱部は、前記廃熱機器を冷却する熱媒体から前記冷媒に吸熱させ、
前記制御部は、前記熱媒体の温度が廃熱回収温度以上になった場合、前記廃熱回収モードに移行し、前記廃熱回収モードにおいて、前記外気吸熱部および前記廃熱吸熱部での前記冷媒の吸熱量よりも前記廃熱機器の廃熱量が多いと判断される場合、前記シャッタを閉じる請求項1ないし4のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記廃熱機器は、車両の走行負荷が高くなると廃熱量が多くなるという特性を有しており、
前記制御部は、前記走行負荷が所定負荷を超えている場合、前記シャッタを閉じる請求項1ないし5のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された車両冷凍サイクル装置は、車室内の冷房が行われる際には凝縮器として機能し、車室内の暖房が行われる際には蒸発器として機能する熱交換器を備えている。
【0003】
車両の外部から熱交換器に向けて空気が流入する経路はシャッター装置によって開閉される。熱交換器が凝縮器として機能する場合、シャッター装置は開かれた状態になり、熱交換器では、車両の外部から流入した空気に冷媒が放熱することによって冷媒が凝縮される。熱交換器が蒸発器として機能する場合、シャッター装置は閉じられた状態になり、熱交換器では、車両の外部の空気が流入せず、エンジンの廃熱を冷媒が吸熱することによって冷媒が蒸発する。すなわち、エンジンの廃熱を利用して車室内を暖房することにより車両の省エネルギー化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来技術では、熱交換器が蒸発器として機能する場合にエンジンの廃熱が十分に得られないと車室内を十分に暖房することができない。例えば、ハイブリッド車のようにエンジンの作動頻度が少ない車両では、エンジンの廃熱が暖房に必要な熱量よりも少ないことがあるため車室内を十分に暖房できないことが起こりうる。そのため、省エネルギー化を十分に図ることができないことが起こりうる。
【0006】
本発明は、上記点に鑑みて、車両の省エネルギー化を効果的に実現できる冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の冷凍サイクル装置は、
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
圧縮機から吐出された冷媒を放熱させて、車室内空間へ送風される空気を加熱する放熱部(12、42)と、
放熱部で放熱された冷媒を減圧させる減圧部(14a、14c)と、
減圧部で減圧された冷媒に外気から吸熱させる外気吸熱部(16、19、50、54)と、
減圧部で減圧された冷媒に廃熱機器(80、56)の廃熱を吸熱させる廃熱吸熱部(19)と、
外気吸熱部に導入される外気の通路の開度を調整するように開閉するシャッタ(90)と、
外気吸熱部および廃熱吸熱部での冷媒の吸熱量よりも廃熱機器の廃熱量が多いと判断される場合、シャッタを閉じる制御部(60)とを備える。
【0008】
これによると、廃熱吸熱部で廃熱機器から吸熱するのみならず外気吸熱部で外気から吸熱して暖房を行うので、暖房の省エネルギー化を図ることができる。さらに、暖房のために外気吸熱部で外気から吸熱する必要がない場合、シャッタを閉じるので車両の走行抵抗を低減して車両の省エネルギー化を図ることができる。
【0009】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【
図2】第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態の制御プログラムの制御処理の一部を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態のバッテリおよび冷却対象機器に関する温度領域を示すグラフである。
【
図5】第1実施形態の室外器単独暖房モードの制御処理を示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態の車両用空調装置の全体構成図であり、室外器単独暖房モードにおける冷媒の流れを示している。
【
図7】第1実施形態の並列暖房モードの制御処理を示すフローチャートである。
【
図8】第1実施形態の並列暖房モードにおける膨張弁開度パターンを示す制御特性図である。
【
図9】第1実施形態の車両用空調装置の全体構成図であり、並列暖房モードにおける冷媒の流れを示している。
【
図10】第1実施形態のチラー単独暖房モードの制御処理を示すフローチャートである。
【
図11】第1実施形態の車両用空調装置の全体構成図であり、チラー単独暖房モードにおける冷媒の流れを示している。
【
図12】第1実施形態における冷凍サイクル装置の廃熱回収量と圧縮機の消費電力および冷凍サイクル装置の蒸発圧力との関係を示すグラフである。
【
図13】第1実施形態におけるシャッタ開度と室外熱交換器への導風量および車両の空気抵抗値との関係を示すグラフである。
【
図14】第2実施形態の並列暖房モードにおける膨張弁開度パターンおよび冷却用膨張弁の所定開度を示す制御特性図である。
【
図15】第3実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【
図16】第4実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1~
図13を用いて、第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明に係る冷凍サイクル装置10を、電動モータから走行用の駆動力を得る電気自動車に搭載された車両用空調装置1に適用している。車両用空調装置1は、バッテリ温度調整機能付きの空調装置である。車両用空調装置1は、空調対象空間である車室内空間の空調を行うとともに、バッテリ80の温度を調整する。
【0012】
バッテリ80は、電動モータ等の車載機器へ供給される電力を蓄える二次電池である。本実施形態のバッテリ80は、リチウムイオン電池である。バッテリ80は、複数の電池セル81を積層配置し、これらの電池セル81を電気的に直列あるいは並列に接続することによって形成された、いわゆる組電池である。
【0013】
この種のバッテリは、低温になると出力が低下しやすく、高温になると劣化が進行しやすい。このため、バッテリの温度は、バッテリの充放電容量を充分に活用することができる適切な温度範囲内(本実施形態では、15℃以上、かつ、55℃以下)に維持されている必要がある。
【0014】
そこで、車両用空調装置1では、冷凍サイクル装置10によって生成された冷熱によってバッテリ80を冷却することができるようになっている。本実施形態の冷凍サイクル装置10における冷却対象物(換言すれば、吸熱対象物)は、空気およびバッテリ80である。バッテリ80は、作動に伴って廃熱を発生する廃熱機器である。
【0015】
車両用空調装置1は、
図1の全体構成図に示すように、冷凍サイクル装置10、室内空調ユニット30、高温側熱媒体回路40、低温側熱媒体回路50等を備えている。
【0016】
冷凍サイクル装置10は、車室内の空調を行うために、車室内へ送風される空気を冷却し、高温側熱媒体回路40を循環する高温側熱媒体を加熱する。冷凍サイクル装置10は、バッテリ80を冷却するために、低温側熱媒体回路50を循環する低温側熱媒体を冷却する。
【0017】
冷凍サイクル装置10は、車室内の空調を行うために、様々な運転モード用の冷媒回路を切替可能である。例えば、冷房モードの冷媒回路、除湿暖房モードの冷媒回路、暖房モードの冷媒回路等を切替可能である。冷凍サイクル装置10は、空調用の各運転モードにおいて、バッテリ80を冷却する運転モードとバッテリ80の冷却を行わない運転モードとを切替可能である。
【0018】
冷凍サイクル装置10では、冷媒としてHFO系冷媒(具体的には、R1234yf)を採用しており、圧縮機11から吐出された吐出冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されている。冷凍機油の一部は、冷媒とともにサイクルを循環している。
【0019】
冷凍サイクル装置10の構成機器のうち、圧縮機11は、冷凍サイクル装置10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。圧縮機11は、車室の前方に配置されて電動モータ等が収容される駆動装置室内に配置されている。圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、サイクル制御装置60から出力される制御信号によって、回転数(すなわち、冷媒吐出能力)が制御される。
【0020】
圧縮機11の吐出口には、水冷媒熱交換器12の冷媒通路の入口側が接続されている。水冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を流通させる冷媒通路と、高温側熱媒体回路40を循環する高温側熱媒体を流通させる水通路とを有している。水冷媒熱交換器12は、冷媒通路を流通する高圧冷媒と、水通路を流通する高温側熱媒体とを熱交換させて、高温側熱媒体を加熱する加熱用の熱交換器である。
【0021】
水冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口には、互いに連通する3つの流入出口を有する第1三方継手13aの流入口側が接続されている。このような三方継手としては、複数の配管を接合して形成されたものや、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けることによって形成されたものを採用することができる。
【0022】
冷凍サイクル装置10は、第2~第6三方継手13b~13fを備えている。これらの第2~第6三方継手13b~13fの基本的構成は、第1三方継手13aと同様である。
【0023】
第1三方継手13aの一方の流出口には、暖房用膨張弁14aの入口側が接続されている。第1三方継手13aの他方の流出口には、バイパス通路22aを介して、第2三方継手13bの一方の流入口側が接続されている。バイパス通路22aには、除湿用開閉弁15aが配置されている。
【0024】
除湿用開閉弁15aは、第1三方継手13aの他方の流出口側と第2三方継手13bの一方の流入口側とを接続する冷媒通路を開閉する電磁弁である。冷凍サイクル装置10は、暖房用開閉弁15bを備えている。暖房用開閉弁15bの基本的構成は、除湿用開閉弁15aと同様である。
【0025】
除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bは、冷媒通路を開閉することで、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bは、サイクルの冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部である。除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bは、サイクル制御装置60から出力される制御電圧によって制御される。
【0026】
暖房用膨張弁14aは、少なくとも車室内の暖房を行う運転モード時に、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した高圧冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量(質量流量)を調整する暖房用減圧部である。暖房用膨張弁14aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
【0027】
冷凍サイクル装置10は、冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁14cを備えている。冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁14cの基本的構成は、暖房用膨張弁14aと同様である。
【0028】
暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁14cは、弁開度を全開にすることで流量調整作用および冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能、および弁開度を全閉にすることで冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。
【0029】
この全開機能および全閉機能によって、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁14cは、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁14cは、冷媒回路切替部として機能する。暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁14cは、サイクル制御装置60から出力される制御信号(制御パルス)によって制御される。
【0030】
暖房用膨張弁14aの出口には、室外熱交換器16の冷媒入口側が接続されている。室外熱交換器16は、暖房用膨張弁14aから流出した冷媒と図示しない冷却ファンにより送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器16は、駆動装置室内の前方側に配置されている。このため、車両走行時には、室外熱交換器16に走行風を当てることができる。室外熱交換器16は、冷媒から外気に放熱させる外気放熱部であるとともに、冷媒に外気から吸熱させる外気吸熱部でもある。
【0031】
駆動装置室内において室外熱交換器16の前方側には、シャッタ90が配置されている。シャッタ90は、駆動装置室内において車両の外部から室外熱交換器16に向けて空気が流入する通路の開度を調整するように開閉する。シャッタ90が開かれている場合、車両の外部から室外熱交換器16に向けて空気が流入する。シャッタ90が閉じられている場合、車両の外部から室外熱交換器16に向けて空気がほぼ流入しなくなる。シャッタ90は、サイクル制御装置60から出力される制御信号(制御パルス)によって制御される。
【0032】
室外熱交換器16の冷媒出口には、第3三方継手13cの流入口側が接続されている。第3三方継手13cの一方の流出口には、暖房用通路22bを介して、第4三方継手13dの一方の流入口側が接続されている。暖房用通路22bには、この冷媒通路を開閉する暖房用開閉弁15bが配置されている。
【0033】
第3三方継手13cの他方の流出口には、第2三方継手13bの他方の流入口側が接続されている。第3三方継手13cの他方の流出口側と第2三方継手13bの他方の流入口側とを接続する冷媒通路には、逆止弁17が配置されている。逆止弁17は、第3三方継手13c側から第2三方継手13b側へ冷媒が流れることを許容し、第2三方継手13b側から第3三方継手13c側へ冷媒が流れることを禁止する。
【0034】
第2三方継手13bの流出口には、第5三方継手13eの流入口側が接続されている。第5三方継手13eの一方の流出口には、冷房用膨張弁14bの入口側が接続されている。第5三方継手13eの他方の流出口には、冷却用膨張弁14cの入口側が接続されている。
【0035】
冷房用膨張弁14bは、少なくとも車室内の冷房を行う運転モード時に、室外熱交換器16から流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する空調用減圧部である。
【0036】
冷房用膨張弁14bの出口には、室内蒸発器18の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器18は、室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。室内蒸発器18は、冷房用膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒と送風機32から送風された空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、低圧冷媒に吸熱作用を発揮させることによって空気を冷却する空調用蒸発部である。室内蒸発器18の冷媒出口には、第6三方継手13fの一方の流入口側が接続されている。
【0037】
冷却用膨張弁14cは、少なくともバッテリ80の冷却を行う運転モード時に、室外熱交換器16から流出した冷媒を減圧させるとともに、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する電池用減圧部である。
【0038】
冷却用膨張弁14cの出口には、チラー19の冷媒通路の入口側が接続されている。チラー19は、冷却用膨張弁14cにて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路と、低温側熱媒体回路50を循環する低温側熱媒体を流通させる水通路とを有している。チラー19は、冷媒通路を流通する低圧冷媒と、水通路を流通する低温側熱媒体とを熱交換させて、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発部である。チラー19は、冷媒にバッテリ80の廃熱を吸熱させる廃熱吸熱部である。チラー19の冷媒通路の出口には、第6三方継手13fの他方の流入口側が接続されている。
【0039】
第6三方継手13fの流出口には、蒸発圧力調整弁20の入口側が接続されている。蒸発圧力調整弁20は、室内蒸発器18の着霜を抑制するために、室内蒸発器18における冷媒蒸発圧力を、予め定めた基準圧力以上に維持する。蒸発圧力調整弁20は、室内蒸発器18の出口側冷媒の圧力の上昇に伴って、弁開度を増加させる機械式の可変絞り機構である。
【0040】
これにより、蒸発圧力調整弁20は、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度を、室内蒸発器18の着霜を抑制可能な着霜抑制温度(本実施形態では、1℃)以上に維持している。蒸発圧力調整弁20は、合流部である第6三方継手13fよりも冷媒流れ下流側に配置されている。このため、蒸発圧力調整弁20は、チラー19における冷媒蒸発温度についても、着霜抑制温度以上に維持している。
【0041】
蒸発圧力調整弁20の出口には、第4三方継手13dの他方の流入口側が接続されている。第4三方継手13dの流出口には、アキュムレータ21の入口側が接続されている。アキュムレータ21は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰液相冷媒を蓄える気液分離部である。アキュムレータ21の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
【0042】
アキュムレータ21には、分離された液相冷媒中に混在する冷凍機油を圧縮機11に戻すオイル戻し穴が形成されている。アキュムレータ21内の冷凍機油は、少量の液相冷媒とともに圧縮機11へ戻される。
【0043】
本実施形態の第5三方継手13eは、室外熱交換器16から流出した冷媒の流れを分岐する分岐部である。第6三方継手13fは、室内蒸発器18から流出した冷媒の流れとチラー19から流出した冷媒の流れとを合流させて、圧縮機11の吸入側へ流出させる合流部である。
【0044】
室内蒸発器18およびチラー19は、冷媒流れに対して互いに並列的に接続されている。バイパス通路22aは、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒を、分岐部の上流側へ導いている。暖房用通路22bは、室外熱交換器16から流出した冷媒を、圧縮機11の吸入口側へ導いている。
【0045】
高温側熱媒体回路40は、高温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。高温側熱媒体としては、エチレングリコール、ジメチルポリシロキサン、あるいはナノ流体等を含む溶液、不凍液等を採用することができる。高温側熱媒体回路40には、水冷媒熱交換器12の水通路、高温側熱媒体ポンプ41、ヒータコア42、電気ヒータ43等が配置されている。
【0046】
高温側熱媒体ポンプ41は、高温側熱媒体を水冷媒熱交換器12の水通路の入口側へ圧送する水ポンプである。高温側熱媒体ポンプ41は、サイクル制御装置60から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
【0047】
水冷媒熱交換器12の水通路の出口には、ヒータコア42の熱媒体入口側が接続されている。ヒータコア42は、水冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体と室内蒸発器18を通過した空気とを熱交換させて、空気を加熱する熱交換器である。ヒータコア42は、室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。ヒータコア42の熱媒体出口には、高温側熱媒体ポンプ41の吸入口側が接続されている。
【0048】
従って、高温側熱媒体回路40では、高温側熱媒体ポンプ41が、ヒータコア42へ流入する高温側熱媒体の流量を調整することによって、ヒータコア42における高温側熱媒体の空気への放熱量(すなわち、ヒータコア42における空気の加熱量)を調整することができる。
【0049】
電気ヒータ43は、例えば、PTC素子(即ち、正特性サーミスタ)を有するPTCヒータである。電気ヒータ43は、サイクル制御装置60から出力される制御電圧によって、高温側熱媒体を加熱するための熱量を任意に調整することができる。
【0050】
水冷媒熱交換器12および高温側熱媒体回路40の各構成機器は、圧縮機11から吐出された冷媒を熱源として、空気を加熱する加熱部である。
【0051】
低温側熱媒体回路50は、低温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。低温側熱媒体としては、高温側熱媒体と同様の流体を採用することができる。低温側熱媒体回路50には、チラー19の水通路、第1低温側熱媒体ポンプ51、冷却用熱交換部52、第1三方弁53a、低温側ラジエータ54、第2低温側熱媒体ポンプ55、冷却対象機器56等が配置されている。
【0052】
第1低温側熱媒体ポンプ51は、低温側熱媒体を冷却用熱交換部52の入口側へ圧送する水ポンプである。第2低温側熱媒体ポンプ55は、低温側熱媒体を冷却対象機器56の入口側へ圧送する水ポンプである。第1低温側熱媒体ポンプ51および第2低温側熱媒体ポンプ55の基本的構成は、高温側熱媒体ポンプ41と同様である。
【0053】
冷却対象機器56は、作動に伴って廃熱を発生する廃熱機器であり、例えばインバータ、モータジェネレータ、ADAS制御装置等である。インバータ、モータジェネレータは、車両の走行負荷(例えば走行速度)が高くなると廃熱量が多くなるという特性を有している。
【0054】
冷却用熱交換部52は、熱媒体流路を有している。冷却用熱交換部52は、熱媒体流路を流通する低温側熱媒体によって冷却されある。
【0055】
チラー19の水通路の出口には、第1三方弁53aの一方の流入口側および第2三方弁53bの一方の流入口側が接続されている。第1三方弁53aおよび第2三方弁53bは、1つの流入口と、2つの流出口とを有し、2つの流出口の通路面積比を連続的に調整可能な電気式の三方流量調整弁である。第1三方弁53aおよび第2三方弁53bは、サイクル制御装置60から出力される制御信号によって制御される。
【0056】
第1三方弁53aの一方の流出口には、第1低温側熱媒体ポンプ51の吸入口側が接続され、第1三方弁53aの他方の流出口には、チラー19の水通路の入口側が接続されている。第1低温側熱媒体ポンプ51の吐出口には、冷却用熱交換部52の入口側が接続されている。冷却用熱交換部52は、複数の電池セル81に接触するように配置された金属製の複数の熱媒体流路を有している。冷却用熱交換部52は、熱媒体流路を流通する低温側熱媒体と電池セル81とを熱交換させることによって、バッテリ80を冷却する熱交換部である。
【0057】
冷却用熱交換部52は、積層配置された電池セル81同士の間に熱媒体流路を配置することによって形成されている。冷却用熱交換部52は、バッテリ80に一体的に形成されていてもよい。例えば、積層配置された電池セル81を収容する専用ケースに熱媒体流路を設けることによって、バッテリ80に一体的に形成されていてもよい。冷却用熱交換部52の出口には、第1三方弁53aの他方の流入口側が接続されている。
【0058】
第2三方弁53bの一方の流出口には、低温側ラジエータ54の熱媒体入口側が接続され、第2三方弁53bの他方の流出口には、チラー19の水通路の入口側が接続されている。
【0059】
低温側ラジエータ54は、冷却用熱交換部52から流出した冷媒と図示しない外気ファンにより送風された外気とを熱交換させて、低温側熱媒体の有する熱を外気に放熱させる熱交換器である。
【0060】
低温側ラジエータ54は、冷却用熱交換部52から流出した冷媒と図示しない外気ファンにより送風された外気とを熱交換させて、外気の有する熱を低温側熱媒体に吸熱させる熱交換器でもある。
【0061】
低温側ラジエータ54は、駆動装置室内の前方側に配置されている。このため、車両走行時には、低温側ラジエータ54に走行風を当てることができる。低温側ラジエータ54は、空気の流れにおいて、室外熱交換器16と直列に配置されている。低温側ラジエータ54は、空気の流れにおいて、室外熱交換器16と並列に配置されていてもよい。低温側ラジエータ54は、室外熱交換器16等と一体的に形成されていてもよい。低温側ラジエータ54に向けて空気が流入する通路の開度は、シャッタ90によって調整される。
【0062】
低温側ラジエータ54の熱媒体出口には、第2低温側熱媒体ポンプ55の吸入口側およびチラー19の水通路の入口側が接続されている。第2低温側熱媒体ポンプ55の吐出口には、冷却対象機器56の水通路の入口側が接続されている。
【0063】
低温側熱媒体回路50では、第1低温側熱媒体ポンプ51、第2低温側熱媒体ポンプ55、第1三方弁53aおよび第2三方弁53bが、チラー19、冷却用熱交換部52、低温側ラジエータ54、冷却対象機器56へ流入する低温側熱媒体の流量を調整することによって、冷却用熱交換部52における低温側熱媒体がバッテリ80から奪う吸熱量、および低温側熱媒体が冷却対象機器56から奪う吸熱量を調整することができる。
【0064】
チラー19および低温側熱媒体回路50の各構成機器は、冷却用膨張弁14cから流出した冷媒を蒸発させて、バッテリ80および冷却対象機器56を冷却する冷却部である。チラー19および低温側熱媒体回路50の各構成機器は、冷媒にバッテリ80および冷却対象機器56の廃熱を吸熱させる廃熱吸熱部である。
【0065】
外気吸熱部である室外熱交換器16、ならびに廃熱吸熱部であるチラー19および低温側熱媒体回路50の各構成機器は、外気から冷媒に吸熱させるとともにバッテリ80および冷却対象機器56の廃熱を冷媒に吸熱させる吸熱部である。
【0066】
室内空調ユニット30は、冷凍サイクル装置10によって温度調整された空気を車室内へ吹き出すためのものである。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。
【0067】
室内空調ユニット30は、
図1に示すように、その外殻を形成する空調ケース31内に形成された空気通路内に送風機32、室内蒸発器18、ヒータコア42等を収容したものである。
【0068】
空調ケース31は、車室内に送風される空気の空気通路を形成している。空調ケース31は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。
【0069】
空調ケース31の空気流れ最上流側には、内外気切替装置33が配置されている。内外気切替装置33は、空調ケース31内へ内気(すなわち車室内空気)と外気(すなわち車室外空気)とを切替導入するものである。
【0070】
内外気切替装置33は、空調ケース31内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。内外気切替ドア用の電動アクチュエータは、サイクル制御装置60から出力される制御信号によって制御される。
【0071】
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、送風機32が配置されている。送風機32は、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。送風機32は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。送風機32は、サイクル制御装置60から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、送風能力)が制御される。
【0072】
送風機32の空気流れ下流側には、室内蒸発器18、ヒータコア42が、空気流れに対して、この順に配置されている。室内蒸発器18は、ヒータコア42よりも、空気流れ上流側に配置されている。
【0073】
空調ケース31内には、室内蒸発器18通過後の空気を、ヒータコア42を迂回して流す冷風バイパス通路35が設けられている。空調ケース31内の室内蒸発器18の空気流れ下流側、かつヒータコア42の空気流れ上流側には、エアミックスドア34が配置されている。
【0074】
エアミックスドア34は、室内蒸発器18通過後の空気のうち、ヒータコア42側を通過する空気の風量と冷風バイパス通路35を通過させる空気の風量との風量割合を調整する風量割合調整部である。エアミックスドア34は、エアミックスドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、サイクル制御装置60から出力される制御信号によって制御される。
【0075】
空調ケース31内のヒータコア42および冷風バイパス通路35の空気流れ下流側には、混合空間が配置されている。混合空間は、ヒータコア42にて加熱された空気と冷風バイパス通路35を通過して加熱されていない空気とを混合させる空間である。
【0076】
空調ケース31の空気流れ下流部には、混合空間にて混合された空気(すなわち、空調風)を、空調対象空間である車室内へ吹き出すための開口穴が配置されている。
【0077】
この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
【0078】
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
【0079】
エアミックスドア34が、ヒータコア42を通過させる風量と冷風バイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整される。これにより、各吹出口から車室内へ吹き出される空気(空調風)の温度が調整される。
【0080】
フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイスドア、フットドア、およびデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。フェイスドアは、フェイス開口穴の開口面積を調整するものである。フットドアは、フット開口穴の開口面積を調整するものである。デフロスタドアは、デフロスタ開口穴の開口面積を調整するものである。
【0081】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替装置を構成するものである。これらのドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータも、サイクル制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0082】
吹出口モード切替装置によって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
【0083】
フェイスモードは、フェイス吹出口を全開としてフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。フットモードは、フット吹出口を全開とするとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出す吹出口モードである。
【0084】
乗員が操作パネル70に設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタモードに切り替えることもできる。デフロスタモードは、デフロスタ吹出口を全開としてデフロスタ吹出口からフロント窓ガラス内面に空気を吹き出す吹出口モードである。
【0085】
次に、本実施形態の電気制御部の概要について説明する。サイクル制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器11、14a~14c、15a、15b、32、41、43、51、53等の作動を制御する。
【0086】
サイクル制御装置60の入力側には、
図2のブロック図に示すように、内気温センサ61、外気温センサ62、日射センサ63、第1~第5冷媒温度センサ64a~64e、蒸発器温度センサ64f、第1、第2冷媒圧力センサ65a、65b、高温側熱媒体温度センサ66a、第1、第2低温側熱媒体温度センサ67a、67b、空調風温度センサ68、バッテリ温度センサ69等が接続されている。そして、サイクル制御装置60には、これらのセンサ群の検出信号が入力される。
【0087】
内気温センサ61は、内気温Tr(すなわち車室内温度)を検出する内気温検出部である。外気温センサ62は、外気温Tam(すなわち車室外温度)を検出する外気温検出部である。日射センサ63は、車室内へ照射される日射量Tsを検出する日射量検出部である。
【0088】
第1冷媒温度センサ64aは、圧縮機11から吐出された冷媒の温度T1を検出する吐出冷媒温度検出部である。第2冷媒温度センサ64bは、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の温度T2を検出する第2冷媒温度検出部である。第3冷媒温度センサ64cは、室外熱交換器16から流出した冷媒の温度T3を検出する第3冷媒温度検出部である。
【0089】
第4冷媒温度センサ64dは、室内蒸発器18から流出した冷媒の温度T4を検出する第4冷媒温度検出部である。第5冷媒温度センサ64eは、チラー19の冷媒通路から流出した冷媒の温度T5を検出する第5冷媒温度検出部である。
【0090】
蒸発器温度センサ64fは、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度である蒸発器温度Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。本実施形態の蒸発器温度センサ64fは、室内蒸発器18の熱交換フィン温度を検出している。
【0091】
第1冷媒圧力センサ65aは、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の圧力P1を検出する第1冷媒圧力検出部である。第2冷媒圧力センサ65bは、チラー19の冷媒通路から流出した冷媒の圧力P2を検出する第2冷媒圧力検出部である。
【0092】
高温側熱媒体温度センサ66aは、水冷媒熱交換器12の水通路から流出した高温側熱媒体の温度である高温側熱媒体温度TWHを検出する高温側熱媒体温度検出部である。
【0093】
第1低温側熱媒体温度センサ67aは、チラー19の水通路から流出した低温側熱媒体の温度である第1低温側熱媒体温度TWL1を検出する第1低温側熱媒体温度検出部である。第2低温側熱媒体温度センサ67bは、冷却用熱交換部52から流出した低温側熱媒体の温度である第2低温側熱媒体温度TWL2を検出する第2低温側熱媒体温度検出部である。
【0094】
空調風温度センサ68は、混合空間から車室内へ送風される空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
【0095】
バッテリ温度センサ69は、バッテリ温度TB(すなわち、バッテリ80の温度)を検出するバッテリ温度検出部である。本実施形態のバッテリ温度センサ69は、複数の温度センサを有し、バッテリ80の複数の箇所の温度を検出している。このため、サイクル制御装置60では、バッテリ80の各部の温度差を検出することもできる。バッテリ温度TBとしては、複数の温度センサの検出値の平均値を採用している。
【0096】
機器温度センサ69bは、冷却対象機器56から流出した低温側熱媒体の温度である第3低温側熱媒体温度TWL3を検出する第3低温側熱媒体温度検出部である。
【0097】
図2に示すように、サイクル制御装置60の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル70が接続され、この操作パネル70に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0098】
操作パネル70に設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置の自動制御運転を設定あるいは解除するオートスイッチ、室内蒸発器18で空気の冷却を行うことを要求するエアコンスイッチ、送風機32の風量をマニュアル設定する風量設定スイッチ、車室内の目標温度Tsetを設定する温度設定スイッチ、吹出モードをマニュアル設定する吹出モード切替スイッチ等がある。
【0099】
なお、本実施形態のサイクル制御装置60は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものである。サイクル制御装置60のうちそれぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)は、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部である。
【0100】
例えば、サイクル制御装置60のうち、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、圧縮機11の回転数)を制御する構成は、圧縮機制御部60aである。また、暖房用膨張弁14a、冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁14cの作動を制御する構成は、膨張弁制御部60bである。除湿用開閉弁15aおよび暖房用開閉弁15bの作動を制御する構成は、冷媒回路切替制御部60cである。
【0101】
さらに、高温側熱媒体ポンプ41の高温側熱媒体の圧送能力を制御する構成は、高温側熱媒体ポンプ制御部60dである。第1低温側熱媒体ポンプ51の低温側熱媒体の圧送能力を制御する構成は、低温側熱媒体ポンプ制御部60eである。
【0102】
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、車室内の空調を行うとともに、バッテリ80および冷却対象機器56の温度を調整する。冷凍サイクル装置10では、冷媒回路を切り替えて、冷房運転、暖房運転および除湿暖房運転を行うことができる。
【0103】
冷房運転では、室内蒸発器18で空気を冷却して車室内へ吹き出すことによって車室内の冷房を行う。冷房運転では、必要に応じて、バッテリ80および冷却対象機器56の冷却も行うことができる。
【0104】
除湿暖房運転では、室内蒸発器18で冷却されて除湿された空気をヒータコア42で再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う。除湿暖房運転では、必要に応じて、バッテリ80および冷却対象機器56の冷却も行うことができる。
【0105】
暖房運転では、ヒータコア42で空気を加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う。暖房運転では、必要に応じて、バッテリ80および冷却対象機器56の冷却も行うことができる。
【0106】
冷房運転、除湿暖房運転、暖房運転の切り替えは、サイクル制御装置60が制御プログラムを実行することによって行われる。制御プログラムは、乗員の操作によって操作パネル70のオートスイッチが投入(ON)されて、車室内の自動制御が設定された際に実行される。
【0107】
例えば、制御プログラムは、上述したセンサ群の検出信号、および操作パネル70の操作信号を読み込む。そして、外気温Tamが基準外気温KA(本実施形態では、0℃)以上、かつ目標吹出温度TAOが冷房用基準温度α1以下である場合、冷房運転が選択される。
【0108】
例えば、外気温Tamが基準外気温KA(本実施形態では、0℃)以上、かつ目標吹出温度TAOが暖房用基準温度γ以上である場合、除湿暖房運転が選択される。
【0109】
例えば、外気温Tamが基準外気温KA(本実施形態では、0℃)未満、かつ目標吹出温度TAOが暖房用基準温度γ以上である場合、暖房運転が選択される。
【0110】
目標吹出温度TAOは、以下数式F1によって算出される。
TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×Ts+C…(F1)
Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度である。Trは内気センサによって検出された車室内温度である。Tamは外気センサによって検出された車室外温度である。Tsは日射センサによって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0111】
基準外気温KAは、室内蒸発器18にて空気を冷却することが、空調対象空間の冷房あるいは除湿を行うために有効となるように設定されている。
【0112】
より詳細には、本実施形態では、室内蒸発器18の着霜を抑制するために、蒸発圧力調整弁20によって室内蒸発器18における冷媒蒸発温度を着霜抑制温度(本実施形態では、1℃)以上に維持している。このため、室内蒸発器18では、空気を着霜抑制温度より低い温度に冷却することができない。
【0113】
つまり、室内蒸発器18へ流入する空気の温度が着霜抑制温度よりも低くなっている際には、室内蒸発器18にて空気を冷却することは有効ではない。そこで、基準外気温KAを着霜抑制温度より低い値に設定し、外気温Tamが基準外気温KAより低くなっている際には、室内蒸発器18にて空気を冷却しないようにしている。
【0114】
暖房運転では、以下の3種類の作動モードでの運転を行うことができる。
【0115】
(1)室外器単独暖房モード
室外器単独暖房モードでは、チラー19で低温側熱媒体から吸熱することなく、室外熱交換器16で外気から吸熱してヒータコア42で空気を加熱する。
【0116】
(2)並列暖房モード
並列暖房モードでは、室外熱交換器16で外気から吸熱するとともにチラー19で低温側熱媒体から吸熱してヒータコア42で空気を加熱する。
【0117】
(3)チラー単独暖房モード
チラー単独暖房モードでは、室外熱交換器16で外気から吸熱することなく、チラー19で低温側熱媒体から吸熱してヒータコア42で空気を加熱する。
【0118】
室外器単独暖房モードおよび並列暖房モードは、室外熱交換器16で外気から吸熱する外気吸熱モードである。並列暖房モードおよびチラー単独暖房モードは、チラー19でバッテリ80および冷却対象機器56のうち少なくとも一方の廃熱を吸熱する廃熱回収モードである。
【0119】
室外器単独暖房モード、並列暖房モードおよびチラー単独暖房モードを切り替える制御プログラムについて、
図3を用いて説明する。
図3等のフローチャートに示す各制御ステップは、サイクル制御装置60が有する機能実現部である。
【0120】
まず、
図3のステップS10では、チラー19での廃熱回収が可能か否かが判定される。具体的には、バッテリ80の温度および冷却対象機器56の温度のうち少なくとも一方が、
図4に示す廃熱回収可能領域にある場合、チラー19での廃熱回収が可能であると判定される。
【0121】
バッテリ80の温度および冷却対象機器56の温度が共に
図4に示す廃熱回収可能領域にある場合、少なくともバッテリ80から廃熱回収を行う。すなわち、バッテリ80から廃熱回収を冷却対象機器56からの廃熱回収よりも優先する。これにより、バッテリ80の温度を適切に維持できる。
【0122】
ステップS10において、低温側熱媒体の温度が廃熱回収温度以上である場合、チラー19での廃熱回収が可能であると判定してもよい。廃熱回収温度は、
図4における廃熱回収可能領域と暖機加温領域との境界の温度である。
【0123】
ステップS10にてチラー19での廃熱回収が可能でないと判定された場合、ステップS20へ進み、暖房モードとして(1)室外器単独暖房モードが選択される。ステップS10にてチラー19での廃熱回収が可能であると判定された場合、ステップS30へ進み、廃熱量が吸熱量よりも大きいか否かが判定される。
【0124】
すなわち、冷凍サイクル装置10の冷媒による吸熱の対象となっている廃熱機器の廃熱量(本実施形態では、バッテリ80および冷却対象機器56の廃熱量)が、冷凍サイクル装置10全体での冷媒の吸熱量(本実施形態では、室外熱交換器16およびチラー19での冷媒の吸熱量)よりも大きいか否かが判定される。
【0125】
具体的には、バッテリ80および冷却対象機器56の廃熱量を算出するとともに室外熱交換器16およびチラー19での冷媒の吸熱量を算出し、算出した廃熱量と吸熱量とを比較する。
【0126】
例えば、廃熱量は、バッテリ80および冷却対象機器56の入口と出口との間の低温側熱媒体の温度差と、低温側熱媒体の流量とを用いて算出できる。低温側熱媒体の流量は、流量センサで検出してもよいし、第1低温側熱媒体ポンプ51および第2低温側熱媒体ポンプ55の出力を用いて算出してもよい。例えば、廃熱量は、バッテリ80および冷却対象機器56の電流値と電気抵抗値とを用いて発熱量を算出し、算出した発熱量に効率を掛け合わせて算出できる。
【0127】
例えば、室外熱交換器16での冷媒の吸熱量は、室外熱交換器16の入口と出口との間のエンタルピ差と、室外熱交換器16での冷媒流量とを用いて算出できる。チラー19での冷媒の吸熱量は、チラー19の入口と出口との間のエンタルピ差と、チラー19での冷媒流量とを用いて算出できる。
【0128】
例えば、室外熱交換器16およびチラー19での冷媒の吸熱量は、車両用空調装置1の暖房能力から圧縮機11の動力を差し引いて算出できる。車両用空調装置1の暖房能力は、ヒータコア42における高温側熱媒体の流量と高温側熱媒体の温度とを用いて算出できる。
【0129】
ステップS30にて廃熱量が吸熱量よりも大きくないと判定された場合、ステップS40へ進み、並列暖房モードが選択される。
【0130】
ステップS30にて廃熱量が吸熱量よりも大きいと判定された場合、ステップS50へ進み、チラー単独暖房モードが選択される。
【0131】
以下に、暖房運転での各作動モードにおける車両用空調装置1の詳細作動について説明する。以下の説明の各作動モードで参照される制御マップは、予め各作動モード毎に制御装置に記憶されたものである。
【0132】
(1)室外器単独暖房モード
室外器単独暖房モードでは、
サイクル制御装置60が、
図5に示す室外器単独暖房モードの制御フローを実行する。まず、ステップS900では、ヒータコア42にて空気を加熱できるように、高温側熱媒体の目標高温側熱媒体温度TWHOを決定する。目標高温側熱媒体温度TWHOは、目標吹出温度TAOおよびヒータコア42の効率に基づいて、制御マップを参照して決定される。本実施形態の制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標高温側熱媒体温度TWHOが上昇するように決定される。
【0133】
ステップS910では、圧縮機11の回転数の増減量ΔIVOを決定する。室外器単独暖房モードでは、増減量ΔIVOは、目標高温側熱媒体温度TWHOと高温側熱媒体温度TWHとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、高温側熱媒体温度TWHが目標高温側熱媒体温度TWHOに近づくように決定される。
【0134】
ステップS920では、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の目標過冷却度SCO2を決定する。目標過冷却度SCO2は、室内蒸発器18へ流入する空気の吸込温度あるいは外気温Tamに基づいて、制御マップを参照して決定される。本実施形態の制御マップでは、サイクルの成績係数(COP)が極大値に近づくように、目標過冷却度SCO2を決定する。
【0135】
ステップS930では、暖房用膨張弁14aの絞り開度の増減量ΔEVHを決定する。増減量ΔEVHは、目標過冷却度SCO2と水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の過冷却度SC2との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の過冷却度SC2が目標過冷却度SCO2に近づくように決定される。
【0136】
水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の過冷却度SC2は、第2冷媒温度センサ64bによって検出された温度T2および第1冷媒圧力センサ65aによって検出された圧力P1に基づいて算出される。
【0137】
ステップS940では、以下数式F2を用いて、エアミックスドア34の開度SWを算定する。
SW={TAO+(Tefin+C2)}/{TWH+(Tefin+C2)}
…(F2)
TWHは、高温側熱媒体温度センサ66aによって検出された高温側熱媒体温度である。C2は制御用の定数である。室外器単独暖房モードでは、目標吹出温度TAOが高くなるのでエアミックスドア34の開度SWが100%に近づく。このため、室外器単独暖房モードでは、室内蒸発器18通過後の空気のほぼ全流量がヒータコア42を通過するように、エアミックスドア34の開度が決定される。
【0138】
ステップS950では、冷凍サイクル装置10を暖房モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、冷却用膨張弁14cを全閉状態とし、除湿用開閉弁15aを閉じ、暖房用開閉弁15bを開くとともにシャッタ90を開ける。これにより、室外熱交換器16で外気から吸熱される。さらに、ステップS910、S930、S940で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0139】
従って、室外器単独暖房モードの冷凍サイクル装置10では、
図6の太実線に示すように、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、暖房用通路22b、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0140】
つまり、室外器単独暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能し、暖房用膨張弁14aが減圧部として機能し、室外熱交換器16が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
【0141】
これによれば、室外熱交換器16にて外気から吸熱し、水冷媒熱交換器12にて高温側熱媒体を加熱することができる。従って、暖房モードの車両用空調装置1では、ヒータコア42にて加熱された空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
【0142】
(2)並列暖房モード
並列暖房モードでは、
サイクル制御装置60が、
図7に示す並列暖房モードの制御フローを実行する。まず、ステップS500では、ヒータコア42にて空気を加熱できるように、室外器単独暖房モードと同様に、高温側熱媒体の目標高温側熱媒体温度TWHOが決定される。
【0143】
ステップS510では、圧縮機11の回転数の増減量ΔIVOを決定する。暖房並列冷却モードでは、増減量ΔIVOは、室外器単独暖房モードと同様に、目標高温側熱媒体温度TWHOと高温側熱媒体温度TWHとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、高温側熱媒体温度TWHが目標高温側熱媒体温度TWHOに近づくように決定される。
【0144】
ステップS520では、チラー19の冷媒通路の出口側冷媒の目標過熱度SHCOを決定する。目標過熱度SHCOとしては、予め定めた定数(本実施形態では、5℃)を採用することができる。
【0145】
ステップS530では、開度パターンKPN2の変化量ΔKPN2を決定する。開度パターンKPN2は、暖房用膨張弁14aの絞り開度および冷却用膨張弁14cの絞り開度の組合せを決定するためのパラメータである。
【0146】
暖房並列冷却モードでは、目標過熱度SHCOとチラー19の冷媒通路の出口側冷媒の過熱度SHCとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、過熱度SHCが目標過熱度SHCOに近づくように決定される。
【0147】
具体的には、
図8に示すように、目標吹出温度TAOが上昇するに伴って、開度パターンKPN2が大きくなる。そして、開度パターンKPN2が大きくなるに伴って、暖房用膨張弁14aの絞り開度が小さくなり、冷却用膨張弁14cの絞り開度が大きくなる。
【0148】
従って、開度パターンKPN2が増加すると大きくなると、チラー19の冷媒通路へ流入する冷媒流量が増加し、チラー19の冷媒通路の出口側冷媒の過熱度SHCが低下する。
【0149】
ステップS540では、室外器単独暖房モードと同様に、エアミックスドア34の開度SWを算定して、ステップS580へ進む。
【0150】
ステップS580では、冷凍サイクル装置10を並列暖房モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを絞り状態とし、冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、冷却用膨張弁14cを絞り状態とし、除湿用開閉弁15aを開き、暖房用開閉弁15bを開くとともにシャッタ90を開ける。さらに、ステップS510、S530、S540で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0151】
従って、並列暖房モードの冷凍サイクル装置10では、
図9の太実線に示すように、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、暖房用膨張弁14a、室外熱交換器16、暖房用通路22b、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、バイパス通路22a、冷却用膨張弁14c、チラー19、蒸発圧力調整弁20、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0152】
つまり、並列暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能し、暖房用膨張弁14aが減圧部として機能し、室外熱交換器16が蒸発器として機能するとともに、暖房用膨張弁14aおよび室外熱交換器16に対して並列的に接続された冷却用膨張弁14cが減圧部として機能し、チラー19が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
【0153】
これによれば、室外熱交換器16にて外気から吸熱するとともにチラー19にて低温側熱媒体から吸熱して、水冷媒熱交換器12にて高温側熱媒体を加熱することができる。
【0154】
従って、並列暖房モードの車両用空調装置1では、ヒータコア42にて加熱された空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
【0155】
並列暖房モードでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って開度パターンKPN2を大きくすることによって、水冷媒熱交換器12における冷媒の高温側熱媒体への放熱量を増加させることができる。従って、並列暖房モードでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴ってヒータコア42における空気の加熱能力を向上させることができる。
【0156】
(3)チラー単独暖房モード
冷却モードでは、
サイクル制御装置60が、
図10に示すチラー単独暖房モードの制御フローを実行する。まず、ステップS1000~S1020では、室外器単独暖房モードのステップS900~S920と同様に、高温側熱媒体の目標高温側熱媒体温度TWHO、圧縮機11の回転数の増減量ΔIVO、目標過冷却度SCO2を決定する。
【0157】
ステップS1030では、冷却用膨張弁14cの絞り開度の増減量ΔEVBを決定する。増減量ΔEVBは、目標過冷却度SCO2と水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の過冷却度SC2との偏差に基づいて、フィードバック制御手法により、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の過冷却度SC2が目標過冷却度SCO2に近づくように決定される。
【0158】
ステップS1040では、室外器単独暖房モードのステップS940と同様に、エアミックスドア34の開度SWを算定して、ステップS1050へ進む。
【0159】
ステップS1050では、冷凍サイクル装置10をチラー単独暖房モードの冷媒回路に切り替えるために、暖房用膨張弁14aを全閉状態とし、冷房用膨張弁14bを全閉状態とし、冷却用膨張弁14cを絞り状態とし、除湿用開閉弁15aを開き、暖房用開閉弁15bを閉じるとともにシャッタ90を閉じる。さらに、ステップS1010、S1030、S1040で決定された制御状態が得られるように、各制御対象機器に対して制御信号あるいは制御電圧を出力して、ステップS10へ戻る。
【0160】
従って、チラー単独暖房モードの冷凍サイクル装置10では、
図11の太実線に示すように、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、バイパス通路22a、冷却用膨張弁14c、チラー19、蒸発圧力調整弁20、アキュムレータ21、圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0161】
つまり、チラー単独暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水冷媒熱交換器12が圧縮機11から吐出された冷媒を放熱させる放熱器として機能し、冷却用膨張弁14cが減圧部として機能し、チラー19が蒸発器として機能する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
【0162】
これによれば、チラー19にて低温側熱媒体から吸熱して、水冷媒熱交換器12にて高温側熱媒体を加熱することができる。従って、チラー単独暖房モードの車両用空調装置1では、ヒータコア42にて加熱された空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。シャッタ90を閉じるので、車両の空気抵抗を抑えることができる。
【0163】
サイクル制御装置60は、室外器単独暖房モード、並列暖房モードおよびチラー単独暖房モードに応じたシャッタ90の制御のみならず、以下のようなシャッタ90の制御も行う。
【0164】
サイクル制御装置60は、バッテリ80の温度および冷却対象機器56の温度のうち少なくとも一方が、
図4に示す強制冷却領域にある場合、シャッタ90を開ける。換言すれば、サイクル制御装置60は、バッテリ80の温度および冷却対象機器56の温度のうち少なくとも一方が、強制冷却温度以上になった場合、シャッタ90を開ける。強制冷却温度は、
図4における廃熱回収可能領域と強制冷却領域との境界の温度である。これにより、低温側ラジエータ54で低温側熱媒体から外気に放熱して低温側熱媒体の温度を低下させることができる。したがって、バッテリ80の温度および冷却対象機器56の温度を
図4に示す廃熱回収可能領域にすることができる。
【0165】
サイクル制御装置60は、バッテリ80の温度および冷却対象機器56の温度のうち少なくとも一方が、
図4に示す暖機加温領域にある場合、シャッタ90を開けることで、低温側ラジエータ54で低温側熱媒体に外気から吸熱させて低温側熱媒体の温度を上昇させることができる。
【0166】
換言すれば、サイクル制御装置60は、バッテリ80の温度および冷却対象機器56の温度のうち少なくとも一方が、廃熱回収温度以下になった場合、シャッタ90を開けることで、低温側ラジエータ54で低温側熱媒体に外気から吸熱させて低温側熱媒体の温度を上昇させることができる。廃熱回収温度は、
図4における廃熱回収可能領域と暖機加温領域との境界の温度である。したがって、バッテリ80の温度および冷却対象機器56の温度を
図4に示す廃熱回収可能領域にすることができる。
【0167】
バッテリ80の温度が廃熱回収可能領域にあり、バッテリ80の廃熱量が低温側ラジエータ54での外気からの吸熱量よりも多い場合、バッテリ80から吸熱することが可能であるのでシャッタ90を閉じることができる。その際、冷却対象機器56が暖機加温領域にあってもよい。
【0168】
冷却対象機器56の温度が廃熱回収可能領域にあり、冷却対象機器56の廃熱量が低温側ラジエータ54での外気からの吸熱量よりも多い場合、冷却対象機器56から吸熱することが可能であるのでシャッタ90を閉じることができる。その際、バッテリ80が暖機加温領域にあってもよい。
【0169】
サイクル制御装置60は、車両の走行抵抗が大きくなり且つ冷却対象機器56の廃熱量が大きくなる高車速時にシャッタ90を閉じる。換言すれば、サイクル制御装置60は、車両の走行速度が所定速度を超えている場合、シャッタ90を閉じる。これにより、冷却対象機器56の廃熱量を暖房に有効利用しつつ車両の走行抵抗を効果的に低減して車両の省エネルギー化を図ることができる。
【0170】
サイクル制御装置60は、車両の走行負荷が高くなって冷却対象機器56の廃熱量が大きくなる時にシャッタ90を閉じるようにしてもよい。換言すれば、サイクル制御装置60は、車両の走行負荷が所定負荷を超えている場合、シャッタ90を閉じるようにしてもよい。これにより、冷却対象機器56の廃熱量を暖房に有効利用しつつ車両の走行抵抗を効果的に低減して車両の省エネルギー化を図ることができる。
【0171】
図12は、冷凍サイクル装置10の廃熱回収量と圧縮機11の消費電力および冷凍サイクル装置10の蒸発圧力との関係を示すグラフであり、外気温度-7℃、外気の風速2m/s、内気温度9℃、室内容積250m
3/h、暖房能力3.58kWの条件下での検証結果を示している。
【0172】
インバータやモータジェネレータのような冷却対象機器56は、高速走行により廃熱量が増加する。廃熱量が増加して廃熱回収量が増加すると冷凍サイクル装置10の蒸発圧力が増加するため圧縮機11の消費電力が減少する。したがって、省エネルギー化を図ることができる。
【0173】
図13に示すように、シャッタ90の開度が小さくなると室外熱交換器16への導風量は少なくなるが車両の空気抵抗値(いわゆるCd値)は低減する。本実施形態では、チラー単独暖房モードでは室外熱交換器16に外気を導入する必要がないことからシャッタ90を閉じる。これにより、チラー単独暖房モード時に車両の空気抵抗を減少させることができるので省エネルギー化を図ることができる。
【0174】
本実施形態では、ステップS30、S50等で説明したように、サイクル制御装置60は、室外熱交換器16およびチラー19での冷媒の吸熱量よりもバッテリ80および冷却対象機器56の廃熱量が多いと判断される場合、シャッタ90を閉じる。
【0175】
これによると、チラー19で冷却対象機器56から吸熱するのみならず室外熱交換器16で外気から吸熱して暖房を行うので、暖房の省エネルギー化を図ることができる。さらに、暖房のために室外熱交換器16で外気から吸熱する必要がない場合、シャッタ90を閉じるので車両の走行抵抗を低減して車両の省エネルギー化を図ることができる。
【0176】
本実施形態では、ステップS1050等で説明したように、サイクル制御装置60は、室外熱交換器16への冷媒の流れが遮断されている場合、シャッタ90を閉じる。これによると、室外熱交換器16で外気から吸熱しない場合、シャッタ90を閉じるので、車両の走行抵抗を低減して車両の省エネルギー化を図ることができる。
【0177】
本実施形態では、サイクル制御装置60は、低温側熱媒体の温度が強制冷却温度以上になった場合、シャッタ90を開く。これにより、低温側熱媒体を低温側ラジエータ54で強制的に冷却できるので、低温側熱媒体の温度が上昇しすぎることを抑制できる。
【0178】
本実施形態では、サイクル制御装置60は、低温側熱媒体の温度が廃熱回収温度以上になった場合、チラー19でバッテリ80および冷却対象機器56のうち少なくとも一方の廃熱を吸熱する廃熱回収モードに移行し、廃熱回収モードにおいて、室外熱交換器16での吸熱量よりもバッテリ80および冷却対象機器56の廃熱量が多いと判断される場合、シャッタを閉じる。
【0179】
これにより、バッテリ80および冷却対象機器56の廃熱を暖房に有効利用できるので、効果的に省エネルギー化を図ることができる。
【0180】
本実施形態では、サイクル制御装置60は、車両の走行負荷が所定負荷を超えている場合(すなわち、バッテリ80および冷却対象機器56の廃熱量が大きくなっている場合)、シャッタを閉じる。これによると、バッテリ80および冷却対象機器56の廃熱を暖房に有効利用しつつ車両の走行抵抗を効果的に低減して車両の省エネルギー化を図ることができる。
【0181】
本実施形態では、暖房運転でのシャッタ90の開閉作動について説明したが、このようなシャッタ90の開閉作動を除湿暖房モードに対しても同様に適用できる。
【0182】
(第2実施形態)
上記第1実施形態のステップS30では、算出した廃熱量と吸熱量とを比較することで廃熱量が吸熱量よりも大きいか否かが判定されるが、本実施形態のステップS30では、冷凍サイクル装置10の作動状態に基づいて廃熱量が吸熱量よりも大きいか否かが判定される。
【0183】
具体的には、暖房用膨張弁14aの開度が所定開度KB以下である場合、廃熱量が吸熱量よりも大きいと判定される。例えば、
図14に示すように、開度パターンKPN2が閾値δ以上である場合、暖房用膨張弁14aの開度が所定開度KB以下となるので、廃熱量が吸熱量よりも大きいと判定される。
【0184】
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0185】
(第3実施形態)
本実施形態は、
図15に示すように、上記第1実施形態に対してバイパス通路22aが廃止されている。したがって、本実施形態では、(2)並列暖房モードがない。(3)チラー単独暖房モードでは、室外熱交換器16での冷媒温度が外気温度と同等になるように暖房用膨張弁14aが制御される。これにより、チラー単独暖房モードでは、室外熱交換器16での吸熱が停止され、チラー19にて吸熱される。
【0186】
暖房運転または除湿暖房運転において、室外熱交換器16が放熱器として機能しているか吸熱器として機能しているかが、冷媒温度、冷媒圧力、外気温度等に基づいて判定される。例えば、室外熱交換器16での冷媒温度が外気温度よりも高い場合、室外熱交換器16が放熱器として機能していると判定され、室外熱交換器16での冷媒温度が外気温度よりも低い場合、室外熱交換器16が吸熱器として機能していると判定される。室外熱交換器16での冷媒温度は、冷媒温度センサで検出されてもよいし、室外熱交換器16での冷媒圧力から算出されてもよい。
【0187】
室外熱交換器16が吸熱器として機能している場合、上記実施形態と同様に、バッテリ80および冷却対象機器56の廃熱量が室外熱交換器16での吸熱量よりも大きければ(3)チラー単独暖房モードが選択される。その際、シャッタ90が閉じられるので、車両の空気抵抗を減少させて省エネルギー化を図ることができる。
【0188】
すなわち、本実施形態では、サイクル制御装置60は、室外熱交換器16の冷媒の温度に起因する物理量と外気温度とに基づいて室外熱交換器16が吸熱しているか否かを判定する。室外熱交換器16が吸熱していると判定した場合、チラー19での吸熱量よりもバッテリ80および冷却対象機器56の廃熱量が多いか否かを判断する。そして、チラー19での吸熱量よりもバッテリ80および冷却対象機器56の廃熱量が多いと判断される場合、シャッタ90を閉じる。
【0189】
これにより、暖房のために室外熱交換器16で外気から吸熱する必要がない場合、シャッタ90を閉じるので車両の走行抵抗を低減して車両の省エネルギー化を図ることができる。
【0190】
(第4実施形態)
上記実施形態では、暖房冷却モード時に室外熱交換器16で外気から冷媒に吸熱させるが、本実施形態では、
図16に示すように、暖房冷却モード時に室外熱交換器16で外気から冷媒に吸熱させるが、低温側ラジエータ54、低温側熱媒体回路50およびチラー19で外気から低温側熱媒体を介して冷媒に吸熱させる。本実施形態の低温側ラジエータ54、低温側熱媒体回路50およびチラー19は、冷媒に外気から吸熱させる外気吸熱部である。
【0191】
低温側熱媒体回路50には、バッテリ80および冷却対象機器56も配置されている。したがって、低温側ラジエータ54、低温側熱媒体回路50およびチラー19は、外気から冷媒に吸熱させるとともにバッテリ80および冷却対象機器56の廃熱を冷媒に吸熱させる吸熱部である。
【0192】
本実施形態の冷凍サイクル装置10は、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、冷房用膨張弁14b、室内蒸発器18、蒸発圧力調整弁20、冷却用膨張弁14cおよびチラー19を備える蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルである。
【0193】
冷却用膨張弁14cおよびチラー19は、冷媒流れにおいて、冷房用膨張弁14b、室内蒸発器18および蒸発圧力調整弁20に対して並列に配置されている。
【0194】
本実施形態の冷凍サイクル装置10には、第1冷媒循環回路と第2冷媒循環回路とが形成される。第1冷媒循環回路では、冷媒が圧縮機11、水冷媒熱交換器12、冷房用膨張弁14b、室内蒸発器18、蒸発圧力調整弁20、圧縮機11の順に循環する。第2冷媒循環回路では、冷媒が圧縮機11、水冷媒熱交換器12、冷却用膨張弁14c、チラー19の順に循環する。
【0195】
水冷媒熱交換器12は、凝縮部12a、レシーバ12bおよび過冷却部12cを有している。凝縮部12aは、圧縮機11から吐出された高圧側冷媒と高温側熱媒体回路40の冷却水とを熱交換させることによって高圧側冷媒を凝縮させる。
【0196】
レシーバ12bは、凝縮部12aから流出した高圧冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒を下流側へ流出させるとともに、サイクルの余剰冷媒を貯える気液分離部である。
【0197】
過冷却部12cは、レシーバ12bから流出した液相冷媒と高温側熱媒体回路40の冷却水とを熱交換させて液相冷媒を過冷却する。
【0198】
高温側熱媒体回路40には、水冷媒熱交換器12、高温側熱媒体ポンプ41、ヒータコア42、高温側ラジエータ44、高温側リザーブタンク45、ヒータコア流路開閉弁46およびラジエータ流路開閉弁47が配置されている。
【0199】
高温側熱媒体ポンプ41は、冷却水を吸入して吐出する熱媒体ポンプである。高温側熱媒体ポンプ41は電動式のポンプである。高温側熱媒体ポンプ41は、吐出流量が一定となる電動式のポンプであるが、高温側熱媒体ポンプ41は、吐出流量が可変な電動式のポンプであってもよい。
【0200】
ヒータコア42は、高温側熱媒体回路40の冷却水と車室内へ送風される空気とを熱交換させて車室内へ送風される空気を加熱する空気加熱器である。ヒータコア42では、冷却水が、車室内へ送風される空気に放熱する。
【0201】
水冷媒熱交換器12およびヒータコア42は、圧縮機11から吐出された高圧の冷媒を放熱させることによって、車室内へ送風される空気を加熱する空気加熱部である。
【0202】
高温側ラジエータ44は、高温側熱媒体回路40の冷却水と外気とを熱交換させて冷却水から外気に放熱させる放熱器である。
【0203】
高温側リザーブタンク45は、余剰冷却水を貯留する冷却水貯留部である。高温側リザーブタンク45に余剰冷却水を貯留しておくことによって、各流路を循環する冷却水の液量の低下を抑制することができる。
【0204】
高温側リザーブタンク45は、密閉式リザーブタンクまたは大気開放式リザーブタンクである。密閉式リザーブタンクは、蓄えている冷却水の液面における圧力を所定圧力にするリザーブタンクである。大気開放式リザーブタンクは、蓄えている冷却水の液面における圧力を大気圧にするリザーブタンクである。
【0205】
水冷媒熱交換器12、高温側熱媒体ポンプ41および高温側リザーブタンク45は、凝縮器流路40aに配置されている。凝縮器流路40aは、高温側熱媒体回路40の冷却水が流れる流路である。
【0206】
ヒータコア42およびヒータコア流路開閉弁46は、ヒータコア流路40bに配置されている。ヒータコア流路40bは、高温側熱媒体回路40の冷却水が流れる流路である。ヒータコア流路開閉弁46は、ヒータコア流路40bを開閉する電磁弁である。ヒータコア流路開閉弁46の作動は、サイクル制御装置60によって制御される。
【0207】
高温側ラジエータ44およびラジエータ流路開閉弁47は、ラジエータ流路40cに配置されている。ラジエータ流路40cは、高温側熱媒体回路40の冷却水がヒータコア42に対して並列に流れる流路である。ラジエータ流路開閉弁47は、ラジエータ流路40cを開閉する電磁弁である。ラジエータ流路開閉弁47の作動は、サイクル制御装置60によって制御される。
【0208】
ヒータコア流路開閉弁46は、高温側熱媒体回路40において、ヒータコア流路40bとラジエータ流路40cとの分岐部である高温側分岐部40dと、ヒータコア42との間に配置されている。ヒータコア流路開閉弁46は、ヒータコア42に流入する高温側熱媒体回路40の冷却水の流量を調整する。
【0209】
ラジエータ流路開閉弁47は、高温側熱媒体回路40において、高温側分岐部40dと高温側ラジエータ44との間に配置されている。ラジエータ流路開閉弁47は、高温側ラジエータ44に流入する高温側熱媒体回路40の冷却水の流量を調整する。
【0210】
ヒータコア流路開閉弁46およびラジエータ流路開閉弁47は、ヒータコア42を流れる冷却水と高温側ラジエータ44を流れる冷却水との流量比を調整する高温熱媒体調整部である。ヒータコア42を流れる冷却水と高温側ラジエータ44を流れる冷却水との流量比は、高温熱媒体流量比である。ラジエータ流路開閉弁47は放熱器側調整部である。ヒータコア流路開閉弁46は空気加熱器側調整部である。ヒータコア流路開閉弁46およびラジエータ流路開閉弁47は、冷却水の流量を調整する流量調整機構(換言すれば、流量調整機構)である。
【0211】
低温側熱媒体回路50には、低温側熱媒体ポンプ51、チラー19、冷却用熱交換部52、低温側ラジエータ54、冷却対象機器56および低温側リザーブタンク57が配置されている。
【0212】
高温側ラジエータ44および低温側ラジエータ54は、外気の流れ方向において、この順番に直列に配置されている。
【0213】
高温側ラジエータ44および低温側ラジエータ54は、車両の最前部に配置されている。従って、車両の走行時には高温側ラジエータ44および低温側ラジエータ54に走行風を当てることができるようになっている。
【0214】
低温側リザーブタンク57は、余剰冷却水を貯留する冷却水貯留部である。低温側リザーブタンク57に余剰冷却水を貯留しておくことによって、各流路を循環する冷却水の液量の低下を抑制することができる。低温側リザーブタンク57は、密閉式リザーブタンクや大気開放式リザーブタンクである。
【0215】
低温側熱媒体回路50には三方弁53が配置されている。三方弁53は、冷却用熱交換部52側へ流れる冷却水の流量と、低温側ラジエータ54側へ流れる冷却水の流量との流量比を調整する低温熱媒体調整部である。
【0216】
三方弁53は、低温側ラジエータ54に冷却水が流れる状態と流れない状態とを切り替える熱媒体流れ切替部である。三方弁53の作動は、サイクル制御装置60によって制御される。
【0217】
本実施形態の作動について説明する。本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒回路、高温側熱媒体回路40および低温側熱媒体回路50を切り替えて、冷房運転、暖房運転および除湿暖房運転を行うことができる。
【0218】
少なくともチラー19に冷媒が流れてヒータコア42で暖房する作動モードにおいて、チラー19での吸熱量がバッテリ80および冷却対象機器56の廃熱量よりも大きい場合、バッテリ80および冷却対象機器56を流れる冷却水の流量が三方弁53によって調整されて吸熱量が制御され、その際はシャッタ90が開けられる。
【0219】
バッテリ80および冷却対象機器56の廃熱量がチラー19での吸熱量よりも大きい場合、低温側ラジエータ54での外気からの吸熱は行われず、チラー19にてバッテリ80および冷却対象機器56の廃熱が吸熱される。その際、シャッタ90が閉じられることにより車両の空気抵抗を減少させることができるので、省エネルギー化を図ることができる。
【0220】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。例えば、冷凍サイクル装置10の加熱部として、室内凝縮器を採用してもよい。
【0221】
(a)暖房運転で各作動モードごとにシャッタ90の開閉を決定したが、除湿暖房運転でも同様に各作動モードごとにシャッタ90の開閉を決定してもよい。
【0222】
(b)上述の実施形態では、複数の運転モードに切り替え可能な冷凍サイクル装置10について説明したが、冷凍サイクル装置10の運転モードの切り替えはこれに限定されない。少なくとも暖房運転または除湿暖房運転を実行可能であればよい。また、各運転モードの詳細制御は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
【0223】
(c)冷凍サイクル装置の構成機器は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。上述した効果を発揮できるように、複数のサイクル構成機器の一体化等を行ってもよい。例えば、第2三方継手13bと第5三方継手13eとを一体化させた四方継手構造のものを採用してもよい。また、冷房用膨張弁14bおよび冷却用膨張弁14cとして、全閉機能を有しない電気式膨張弁と開閉弁とを直接的に接続したものを採用してもよい。
【0224】
また、上述の実施形態では、冷媒としてR1234yfを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R134a、R600a、R410A、R404A、R32、R407C、等を採用してもよい。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。さらに、冷媒として二酸化炭素を採用して、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成してもよい。
【0225】
(d)加熱部の構成は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。例えば、第1実施形態で説明した高温側熱媒体回路40に対して、低温側熱媒体回路50の第1三方弁53aおよび低温側ラジエータ54と同様の三方弁および高温側ラジエータを追加し、余剰の熱を外気に放熱させるようにしてもよい。さらに、ハイブリッド車両のように内燃機関(エンジン)を備える車両では、高温側熱媒体回路40にエンジン冷却水を循環させるようにしてもよい。
【0226】
(e)電池冷却部の構成は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。例えば、電池冷却部として、第1実施形態で説明した低温側熱媒体回路50のチラー19を凝縮部とし、冷却用熱交換部52を蒸発部として機能させるサーモサイフォンを採用してもよい。これによれば、第1低温側熱媒体ポンプ51を廃止することができる。
【0227】
サーモサイフォンは、冷媒を蒸発させる蒸発部と冷媒を凝縮させる凝縮部とを有し、蒸発部と凝縮部とを閉ループ状に(すなわち、環状に)接続することによって構成されている。そして、蒸発部における冷媒の温度と凝縮部における冷媒の温度との温度差によって回路内の冷媒に比重差を生じさせ、重力の作用によって冷媒を自然循環させて、冷媒とともに熱を輸送する熱輸送回路である。
【0228】
また、上述の実施形態では、冷却対象機器56の例としてインバータ、モータジェネレータ、ADAS制御装置を挙げたが、冷却対象機器56はこれに限定されない。例えば、冷却対象機器56は、バッテリ80に電力を充電する充電器のように作動時に発熱を伴う電気機器であってもよい。
【符号の説明】
【0229】
11 圧縮機
12 水冷媒熱交換器(放熱部)
14b 冷房用膨張弁(減圧部)
14c 冷却用膨張弁(減圧部)
16 室外熱交換器(外気吸熱部)
19 チラー(廃熱吸熱部)
42 ヒータコア(放熱部)
56 冷却対象機器(廃熱機器)
60 サイクル制御装置(制御部)
80 バッテリ(廃熱機器)
90 シャッタ