(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60K 11/02 20060101AFI20240214BHJP
B60K 6/00 20071001ALI20240214BHJP
B60K 6/26 20071001ALI20240214BHJP
B60K 6/22 20071001ALI20240214BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20240214BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20240214BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20240214BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20240214BHJP
【FI】
B60K11/02
B60K6/00
B60K6/26
B60K6/22
B60K6/24
B60K6/40
B60K6/48
B60K6/54
(21)【出願番号】P 2020113719
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋
(72)【発明者】
【氏名】上野 聡士
(72)【発明者】
【氏名】古川 晶博
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-097052(JP,A)
【文献】特開2005-125841(JP,A)
【文献】特開2001-322439(JP,A)
【文献】特開2017-140991(JP,A)
【文献】特開2006-168600(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0258838(US,A1)
【文献】特開2013-034269(JP,A)
【文献】特開2008-155829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/02
B60K 6/00
B60K 6/26
B60K 6/22
B60K 6/24
B60K 6/40
B60K 6/48
B60K 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接配置されたエンジンおよびモータを有した、車両走行用の駆動源である駆動ユニットと、
前記駆動ユニットの出力軸に連結され、駆動力を駆動輪に伝達するためのシャフトと、
前記シャフトの周囲を覆うカバー部材と、
直流電流を交流電流に変換して出力するインバータと、
前記インバータの出力ターミナルと前記モータの入力ターミナルとを電気接続する接続配線と、
を備え、
前記カバー部材および前記インバータは、フロアパネルに形成されたフロアトンネルの内部空間内に収容されており、
前記インバータは、前記駆動ユニットから離間して配置され、
且つ、前記カバー部材に対して上方に離間した状態で当該カバー部材の長手方向に沿って配置されるように、前記フロアトンネルに対してブラケットを介して取り付けられており、
前記接続配線は、可撓性を有するとともに、前記インバータの出力ターミナルと前記モータの入力ターミナルとの間の直線距離よりも長い配線長を有するワイヤーハーネスで形成されている、
車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記駆動ユニットは、車体
における前記インバータから離間した箇所に対して取り付けられて
いる、
車両。
【請求項3】
請求項2に記載の車両において、
前記接続配線は、前記フロアトンネル内で配策されている、
車両。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の車両において、
前記エンジンと前記モータとが隣接する方向の一方から前記エンジンと前記接続配線とを見る場合に、前記接続配線は、前記エンジンの外周よりも内側に収まるように配策されている、
車両。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の車両において、
前記シャフトの延伸方向に交差する方向の外側から前記カバー部材と前記接続配線とを見る場合に、前記接続配線は、前記カバー部材の上の所定領域を迂回するように湾曲して配策されている、
車両。
【請求項6】
請求項5に記載の車両において、
前記所定領域には、前記モータを冷却するための部材であるモータ冷却用部材が取り付けられている、
車両。
【請求項7】
請求項6に記載の車両において、
前記モータを冷却するためのオイルの経路であるモータ冷却オイル経路と、
前記モータ冷却オイル経路を流れる前記オイルよりも沸点が低い沸騰冷却用冷媒が循環する循環経路と、前記循環経路の途中に配設され、前記オイルと前記沸騰冷却用冷媒とが熱交換する沸騰部と、前記沸騰冷却用冷媒が凝縮される凝縮部と、を有する沸騰冷却器と、
を更に備え、
前記モータ冷却用部材は、前記沸騰冷却器の前記凝縮部である、
車両。
【請求項8】
請求項7に記載の車両において、
前記凝縮部は、前記カバー部材に対して、前記車両の上下方向の上側に取り付けられている、
車両。
【請求項9】
請求項5から請求項8の何れかに記載の車両において、
前記接続配線は、複数設けられているとともに、前記接続配線のそれぞれの一端が前記出力ターミナルにおける複数の第1接続部に接続されており、前記接続配線のそれぞれの他端が前記入力ターミナルにおける複数の第2接続部に接続されており、
前記複数の第1接続部を通る第1仮想直線と、前記複数の第2接続部を通る第2仮想直線とを仮定する場合に、
前記シャフトの延伸方向に交差する方向の外側から前記出力ターミナルおよび前記入力ターミナルを見る場合に、前記第1仮想直線および前記第2仮想直線の少なくとも一方は、前記シャフトの前記延伸方向に対して斜め方向に延びる、
車両。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れかに記載の車両において、
前記エンジンは、ロータリーエンジンである、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関し、特に車両走行用の駆動源であるモータとインバータとの間を接続するワイヤーハーネスの配策構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低減などを目的として、車両走行用の駆動源としてエンジンに加えてモータを備えたハイブリッド型の車両が普及してきている。
【0003】
特許文献1には、走行用の駆動源としてエンジンおよびモータを備えた自動車が開示されている。特許文献1に開示の自動車では、走行用の駆動源として備えるエンジンおよびモータがともにフロントエリアに搭載されている。
【0004】
特許文献1に開示の自動車では、エンジンで走行するエンジン駆動モードと、モータで走行するモータ駆動モードとが切り替え可能となっている。運転者によりモータ駆動モードが選択された場合には、モータの駆動により自動車の走行がなされる。
【0005】
一方、運転者がエンジン駆動モードを選択した場合には、自動車の発進の際にはモータによるトルクアシストがなされ、所定車速以上でエンジンの駆動による自動車の走行がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のようなハイブリッド型の車両においても、車両運動性能の更なる向上が求められている。車両の運動性能を高めようとする場合には、エンジンとモータとをユニット化して車両の中央に近い領域に配置することが有効である。このようにエンジンとモータとをユニット化した上で上記のような領域に配置することで、車両が旋回し易くなり車両運動性能の向上を図ることができる。
【0008】
ここで、ハイブリッド型の車両において、モータの電源はバッテリである。バッテリは、直流電流を出力するが、車両走行用の駆動源として用いられるモータの多くは交流電流により駆動する。このため、バッテリとモータとの間には、直流電流を交流電流に変換するインバータが介挿される。
【0009】
従来のハイブリッド型の車両においては、インバータをモータの上に固定した構造が採用されることが多かった。これは、モータとインバータとの間の距離を短くし、モータとインバータとの間の接続配線であるバスバーの長さをできるだけ短くしようとするためである。
【0010】
しかしながら、エンジンとモータとをユニット化してなる駆動ユニットを採用する車両において、モータの上など駆動ユニットに対して直にインバータを固定することはできるだけ避けることが望ましい。これは、エンジンとモータとを有する駆動ユニットを採用する車両において、仮にインバータをモータの上に固定した場合には、エンジンの駆動時に生じる振動が直接インバータに伝わる。この振動によりインバータの電気部品がダメージを受け、場合によっては故障の原因となることが考えられるからである。
【0011】
なお、振動に対して強い部品を用いてインバータを構成すれば、モータの上にインバータを固定する構造を採用してもインバータの故障を回避できるとも考えられるが、インバータの製造コストの上昇を招くことになり、このような構造を採用することは難しい。
【0012】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、エンジンとモータとのユニット化を図りながら、製造コストの上昇を抑制しつつインバータの故障を抑制することができる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、駆動ユニットから離間させてインバータを配置してなる構造を考えた。このように、インバータを駆動ユニットから離間させて配置することにより、エンジンの駆動時に生じる振動が直接インバータに伝わらず、高額な電気部品を用いたインバータを採用することなく、インバータの故障を抑制することができる。よって、製造コストの上昇を抑えながら、インバータの故障を抑制することができると考えられる。
【0014】
しかしながら、インバータを駆動ユニットから離間させた場合には、インバータとモータとの間の距離が長くなり、その分だけインバータとモータとを接続する接続配線の配線長も長くする必要がある。上記のように、バスバーによりインバータとモータとの間の接続を行う構造を採用する従来技術では、上記のように配線長が長くなった場合に、エンジンの振動時にバスバーに作用する応力が増加してしまう。このようなインバータを駆動ユニットから離間させて配置した場合の接続配線の損傷を防ごうとする場合には、断面積を大きくしたり高強度の材料を用いたりするなどバスバーを強固なものとすることが考えられるが、この場合には製造コストの増加や重量の増加を招いてしまうことになる。
【0015】
そこで、本発明の一態様に係る車両は、互いに隣接配置されたエンジンおよびモータを有した、車両走行用の駆動源である駆動ユニットと、前記駆動ユニットの出力軸に連結され、駆動力を駆動輪に伝達するためのシャフトと、前記シャフトの周囲を覆うカバー部材と、直流電流を交流電流に変換して出力するインバータと、前記インバータの出力ターミナルと前記モータの入力ターミナルとを電気接続する接続配線と、を備え、前記カバー部材および前記インバータは、フロアパネルに形成されたフロアトンネルの内部空間内に収容されており、前記インバータは、前記駆動ユニットから離間して配置され、且つ、前記カバー部材に対して上方に離間した状態で当該カバー部材の長手方向に沿って配置されるように、前記フロアトンネルに対してブラケットを介して取り付けられており、前記接続配線は、可撓性を有するとともに、前記インバータの出力ターミナルと前記モータの入力ターミナルとの間の直線距離よりも長い配線長を有するワイヤーハーネスで形成されている。
【0016】
上記態様に係る車両では、エンジンとモータとがユニット化されてなる駆動ユニットを備えるので、エンジンとモータとがユニット化されていない場合に比べて駆動源の小型化が可能であり、車両の中央またはその近傍に駆動ユニットを配置することが可能である。よって、上記態様に係る車両では、車両運動性能の向上を図ることが可能となる。
【0017】
また、上記態様に係る車両では、インバータを駆動ユニットから離間させて配置しているので、エンジンの駆動時に発生する振動がインバータに影響を及ぼすのを抑制することができる。よって、上記態様に係る車両では、エンジンの駆動時における振動に起因したインバータの故障を抑制することができる。
【0018】
また、上記態様に係る車両では、インバータとモータとの接続を、バスバーではなく可撓性を有するワイヤーハーネスを用いるとともに、ワイヤーハーネスの配線長をインバータの出力ターミナルとモータの入力ターミナルとの間の直線距離よりも長くしているので、エンジンの駆動時に振動が発生しても、当該ワイヤーハーネスに大きな応力が作用するのを抑制することができる。即ち、インバータとモータとの間を、可撓性を有するワイヤーハーネスを用い、且つ、配線長が上記直線距離よりも長いワイヤーハーネスを撓ませて配策することで、仮にワイヤーハーネスに振動が加わったとしても緩衝が可能であり、コストの上昇を抑えながら振動によるワイヤーハーネスの損傷を抑制することができる。
また、上記態様に係る車両では、インバータをカバー部材からも離間させて配置するので、エンジンの駆動時に生じる振動がカバー部材を介してインバータに伝達されるのを更に抑制することができる。即ち、シャフトの周囲を覆うように設けられるカバー部材にもエンジンの振動が伝達されるが、インバータをカバー部材から離間させて配置することで、エンジンの駆動時に生じる振動がカバー部材を介してインバータに伝達されるのを抑制することができる。
さらに、上記態様に係る車両では、フロアトンネルにインバータを取り付けることとしているので、エンジンの駆動時における振動が車体を介してインバータへ伝達されるのを効果的に抑制することができる。即ち、フロアトンネルは、車体の剛性を補強するために設けられた高剛性な部位であるので、当該部位にインバータを取り付けることにより、エンジンの駆動による振動をインバータに伝わりにくくすることができる。
【0019】
上記態様に係る車両において、前記駆動ユニットは、車体における前記インバータから離間した箇所に対して取り付けられている、ことにしてもよい。
【0020】
上記のように、駆動ユニットを、車体におけるインバータの取付箇所から離間させる、言い換えると、インバータの取付箇所を駆動ユニットから離間させることにより、車体の取付箇所を介してのエンジンからインバータへの振動の伝達が抑制される。よって、上記構成を採用する場合には、エンジンの駆動時における振動に起因するインバータの損傷を抑制するのに更に有効である。
【0021】
上記態様に係る車両において、前記接続配線は、前記フロアトンネル内で配策されている、ことにしてもよい。
【0023】
上記のように、接続配線をフロアトンネル内で配策するようにすれば、接続配線が車室に露出せず、車室を狭めてしまうのを抑制することができる。
【0024】
上記態様に係る車両において、前記エンジンと前記モータとが隣接する方向の一方から前記エンジンと前記接続配線とを見る場合に、前記接続配線は、前記エンジンの外周よりも内側に収まるように配策されている、ことにしてもよい。
【0025】
上記のように、エンジンの外周よりも内側に収まるように接続配線を配策することにより、フロアトンネルの断面サイズの大型化を抑制しながら、接続配線をフロアトンネル内に収めることが可能となる。
【0028】
上記態様に係る車両において、前記シャフトの延伸方向に交差する方向の外側から前記カバー部材と前記接続配線とを見る場合に、前記接続配線は、前記カバー部材の上の所定領域を迂回するように湾曲して配策されている、ことにしてもよい。
【0029】
上記のように、接続配線を、カバー部材の上の所定領域を迂回するように湾曲して配策されてなる構成を採用する場合には、当該所定領域に別部材を取り付けることが可能となり、スペースの有効利用が可能となる。よって、駆動ユニットおよびその付帯部品からなるセット構成の小型化に有効である。
【0030】
上記態様に係る車両において、前記所定領域には、前記モータを冷却するための部材であるモータ冷却用部材が取り付けられている、ことにしてもよい。
【0031】
上記のように、上記所定領域にモータ冷却用部材を取り付けることとすれば、スペースの有効利用が可能となる。
【0032】
上記態様に係る車両において、前記モータを冷却するためのオイルの経路であるモータ冷却オイル経路と、前記モータ冷却オイル経路を流れる前記オイルよりも沸点が低い沸騰冷却用冷媒が循環する循環経路と、前記循環経路の途中に配設され、前記オイルと前記沸騰冷却用冷媒とが熱交換する沸騰部と、前記沸騰冷却用冷媒が凝縮される凝縮部と、を有する沸騰冷却器と、を更に備え、前記モータ冷却用部材は、前記沸騰冷却器の前記凝縮部である、ことにしてもよい。
【0033】
上記のように、沸騰冷却器をモータに取り付けることにより、モータの駆動時に発生する熱を効果的に冷却することが可能となる。よって、上記構成を採用する場合には、モータを高出力駆動したり、長時間継続駆動したりしても、モータを適温に維持することが可能となる。
【0034】
上記態様に係る車両において、前記凝縮部は、前記カバー部材に対して、前記車両の上下方向の上側に取り付けられている、ことにしてもよい。
【0035】
上記のように、沸騰冷却器の凝縮部をカバー部材の上側に取り付ける構成を採用すれば、凝縮部から排出される熱がカバー部材を介してモータなどに伝達されるのを抑制することができる。即ち、仮に凝縮部をカバー部材の下側に取り付けた場合には、凝縮部から排出された熱がカバー部材に伝達されることが考えられえる。この場合には、凝縮部から排出された熱が、カバー部材を介してモータに伝達されることになる。
【0036】
これに対して、上記のように凝縮部をカバー部材の上側に取り付けることとすれば、凝縮部から排出された熱がカバー部材を介してモータに伝達されるのを抑制することができる。
【0037】
上記態様に係る車両において、前記接続配線は、複数設けられているとともに、前記接続配線のそれぞれの一端が前記出力ターミナルにおける複数の第1接続部に接続されており、前記接続配線のそれぞれの他端が前記入力ターミナルにおける複数の第2接続部に接続されており、前記複数の第1接続部を通る第1仮想直線と、前記複数の第2接続部を通る第2仮想直線とを仮定する場合に、前記シャフトの延伸方向に交差する方向の外側から前記出力ターミナルと前記入力ターミナルとを見る場合に、前記第1仮想直線および前記第2仮想直線の少なくとも一方は、前記シャフトの前記延伸方向に対して斜め方向に延びる、ことにしてもよい。
【0038】
上記のように、上記第1仮想直線および第2仮想直線の少なくとも一方がシャフトの延伸方向に対して斜め方向に延びるよう複数の第1接続部および/または複数の第2接続部を配置すれば、接続配線同士がカバー部材の断面方向に重なるのを抑制することが可能となる。よって、接続配線をカバー部材の表面に沿って配策でき、カバー部材の断面方向への突出などを抑制することができる。
【0039】
上記態様に係る車両において、前記エンジンは、ロータリーエンジンである、ことにしてもよい。
【0040】
上記のように、ロータリーエンジンを採用する場合には、高回転時に振動が発生するが、上記のような接続配線を採用することにより、エンジンの駆動時における振動に起因するインバータおよび接続配線の損傷を抑制することができる。
【発明の効果】
【0041】
上記の各態様に係る車両では、エンジンとモータとのユニット化を図りながら、製造コストの上昇を抑制しつつインバータの故障を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。
【
図2】車両における駆動ユニットの搭載位置を示す模式図である。
【
図6】モータの冷却に係る構成を示す模式図である。
【
図7】駆動ユニットよりも後方の構成を示す斜視図である。
【
図10】ワイヤーハーネスの配策構造を示す側面図である。
【
図11】ワイヤーハーネスの配策構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0044】
また、以下の説明で用いる図面において、「F」は車両前方、「R」は車両後方、「U」は車両上方、「L」は車両下方、「Le」は車両左方、「Ri」は車両右方をそれぞれ示す。
【0045】
[実施形態]
1.車両1の概略構成
本実施形態に係る車両1の概略構成について、
図1を用いて説明する。
【0046】
図1に示すように、車両1では、当該車両1を駆動するための駆動ユニット10が、フロントエリア1aにおける後方側部分に搭載されている。駆動ユニット10は、エンジン11~13とモータ14とを有する。駆動ユニット10の詳細な構造については、後述する。
【0047】
駆動ユニット10の出力軸には、プロペラシャフト15が接続されている。プロペラシャフト15は、駆動ユニット10からの駆動力を駆動輪である後輪20,21に伝達するための「シャフト」である。プロペラシャフト15は、車両1の車幅方向中央を後方側に向けて延びている。プロペラシャフト15の後端は、トランスミッション16に接続されている。
【0048】
トランスミッション16には、デファレンシャルギヤ17が接続されている。そして、デファレンシャルギヤ17の車幅方向左右には、ドライブシャフト18,19がそれぞれ接続されている。ドライブシャフト18,19は、それぞれ後輪20,21に接続されている。即ち、本実施形態に係る車両1では、フロントエリア1aに搭載された駆動ユニット10が発生する駆動力により後輪20,21を駆動して走行する。
【0049】
また、車両1においては、前輪22,23のそれぞれに対して、モータ24,25が接続されている。詳細な図示を省略しているが、モータ24,25は、所謂、インホイールモータである。モータ24,25は、車両1の発進時に動力を発生して前輪22,23に伝えるアシストモータとして機能する。また、モータ24,25は、車両1の減速時に発電する回生ブレーキとしても機能する。そして、車両1の減速時にモータ24,25で発生した電力は、キャパシタ28等に充電される。
【0050】
車両1には、バッテリ26およびインバータ27も搭載されている。バッテリ26は、駆動ユニット10のモータ14に対して電力を供給するための蓄電モジュールである。インバータ27は、バッテリ26から供給された直流電流を交流電流に変換する電力変換モジュールである。
【0051】
ここで、本実施形態に係る車両1では、駆動ユニット10の駆動モードとして、エンジン駆動モードとモータ駆動モードとを備える。エンジン駆動モードは、エンジン11~13から出力される駆動力で後輪20,21を駆動して走行するモードである。モータ駆動モードは、モータ14から出力される駆動力で後輪20,21を駆動して走行するモードである。
【0052】
なお、車両1では、エンジン駆動モードで駆動の際にはモータ14は駆動力を発生させず、モータ駆動モードで駆動の際にはエンジン11~13は駆動力を発生させないように構成している。
【0053】
車両1において、エンジン駆動モードとモータ駆動モードとの切替制御は、駆動モード制御部29が行う。駆動モード制御部29は、CPU,ROM,RAM等を有するマイクロプロセッサを備えて構成されている。駆動モード制御部29は、運転者からの指示や、車両1の状況(車速、加減速度、バッテリ残容量)などを基に駆動モードの制御を実行する。
【0054】
2.駆動ユニット10の搭載位置
車両1における駆動ユニット10の搭載位置について、
図2を用いて説明する。
【0055】
上述のように、車両1では、駆動ユニット10がフロントエリア1aの後方側部分に搭載されている。具体的には、駆動ユニット10の重心Ax10が、前輪22,23(
図2では、前輪23のみを図示)の回転中心Ax23よりも後方側に位置するように駆動ユニット10が搭載されている。また、駆動ユニット10は、重心Ax10が前輪22,23の回転中心Ax23よりも下方側に位置するように搭載されている。
【0056】
即ち、車両1においては、重量物である駆動ユニット10をコンパクト化することによって、当該駆動ユニット10がフロントエリア1aの後方側部分であって、ボンネット30と間隔を空けた下方側に搭載されている。これにより、車両1の重心位置Ax1を車両1の長手方向の略中央の低い箇所とすることができる。
【0057】
3.駆動ユニット10およびその周辺の構成
駆動ユニット10の詳細構成およびその周辺の構成について、
図3から
図5を用いて説明する。
【0058】
図3および
図4に示すように、駆動ユニット10が有するエンジン11~13は、一例としてロータリーピストンを有するロータリーエンジンである。車両1において、エンジン11~13としてロータリーエンジンを採用することにより、駆動ユニット10の小型化を図るのに優位である。なお、詳細な図示を省略しているが、駆動ユニット10は、フロントサブフレームに対してマウントを介して固定されている。フロントサブームは、「車体の第1箇所」に該当し、フロントエリア1aの下部において、左右に配されたフロントサイドフレームの間に架設された車体の一部である。
【0059】
図4に示すように、エンジン11~13の下方には、オイルパン38が配設されている。オイルパン38は、車両前後方向および車幅方向の寸法に対して、高さ方向の寸法が小さい扁平形状を有する。これにより、駆動ユニット10の高さを低く抑えるのに優位である。
【0060】
上記のように、本実施形態に係る車両1においては、オイルパン38が扁平形状を有するため、エンジンオイルの収容容量が少ない。このため、エンジン11~13を流通したエンジンオイルを集めることが主な機能である。よって、駆動ユニット10の側方には、オイルパン38で集められたエンジンオイルを貯留するためのオイルタンク35が設けられている。
【0061】
図3および
図4に示すように、駆動ユニット10の前方には、ラジエータ31およびオイルクーラ32が配設されている。ラジエータ31は、エンジン11~13の熱により高温となった冷却水を冷却するためのデバイスであり、後方側にラジエータファン31aを有する。
【0062】
オイルクーラ32は、ラジエータ31の後方に配置され、ラジエータ31に沿うように配設されている。オイルクーラ32の平面サイズは、ラジエータ31よりも小型である。
【0063】
エンジン11~13とラジエータ31との間は、配管36,37により接続されている。配管37とエンジン11~13との接続部分には、ウォーターポンプ34が設けられている。
【0064】
オイルクーラ32、エンジン11~13、オイルタンク35、およびオイルパン38の相互間は、配管39~41等で接続されている。配管41とエンジン11~13との接続部分には、オイルポンプ33が設けられている。
【0065】
駆動ユニット10におけるモータ14は、エンジン13の後方に隣接して配置されている。エンジン11~13とモータ14とは出力軸を共有する直結構造となっている。車両1の上下方向および車幅方向において、モータ14の外観サイズは、エンジン11~13よりも小さく形成されている。
【0066】
図3から
図5に示すように、モータ14の側部ハウジング14bには、2つの熱交換器42,43が取り付けられている。熱交換器42,43は、ともに車幅方向左側に配置されている。また、熱交換器43は、熱交換器42に対して上方に離間した状態でモータ14の側部ハウジング14bに取り付けられている。そして、熱交換器42,43は、モータ14の後部ハウジング14aよりも前方に収まるように配置されている。換言すると、熱交換器42および熱交換器43は、車両1の前後方向において、モータ14の側部ハウジング14bで収まるように配置されている。
【0067】
また、熱交換器42および熱交換器43のそれぞれは、高さ方向の寸法が長さ方向の寸法および幅方向の寸法に比べて小さい扁平な外観形状を有する。このように、扁平な外観形状を有する熱交換器42および熱交換器43を採用することにより、駆動ユニット10に対して熱交換器42,43が取り付けられてなるセット構成のサイズを小型化するのに優位である。
【0068】
図5に示すように、モータ14の後部ハウジング14aは、後端側の端面がトルクチューブ47で覆われている。トルクチューブ47は、「カバー部材」に該当する。そして、モータ14の側部ハウジング14bからトルクチューブ47の前方側部分までにかけての領域には、沸騰冷却器44が設けられている。沸騰冷却器44は、沸騰部44a、凝縮部44b、配管44c、および沸騰冷却器ファン44dを有する。沸騰冷却器44の配管44cには、モータ14の冷却用オイルよりも沸点が低い沸騰冷却用冷媒が充填されている。
【0069】
沸騰部44aは、モータ14の側部ハウジング14bに取り付けられており、沸騰冷却用冷媒とモータ14の冷却用オイル(モータ冷却オイル)との間で熱交換する部分である。
【0070】
凝縮部44bは、モータ14よりも後方側に配されたトルクチューブ47の前方側部分に取り付けられている。凝縮部44bは、沸騰部44aでの熱交換により沸騰した(蒸発した)沸騰冷却用冷媒を凝縮させる部分である。配管44cは、沸騰部44aと凝縮部44bとの間での沸騰冷却用冷媒の循環経路である。沸騰冷却器ファン44dは、凝縮部44bに送風することで沸騰冷却用冷媒の凝縮を促進するための部分である。
【0071】
沸騰冷却器44において、沸騰冷却器ファン44dは、凝縮部44bの下方に隣接配置されている。そして、沸騰冷却器ファン44dからは、上方に向けて送風される。沸騰冷却器44の凝縮部44bおよび沸騰冷却器ファン44dをモータ14よりも後方のトルクチューブ47に取り付けることにより、凝縮部44bを通過して暖まった空気が再びモータ14のハウジング14a,14bに吹きかけられるのを防ぐことができる。よって、モータ14を適温に維持するのに有効である。
【0072】
なお、詳細な図示を省略しているが、モータ14のハウジング14a,14b内には、モータ14を冷却するためのモータ冷却オイルが通流する経路、および当該経路の切替を行うオイルコントロールバルブが設けられている。
【0073】
4.モータ14の冷却構成
駆動ユニット10におけるモータ14の冷却構成について、
図6を用いて説明する。
【0074】
図6に示すように、モータ14は、ハウジング14a,14b(
図6では、側部ハウジング14bのみを図示)と、ロータ・ステータ14cと、オイルパン14dとを有する。ハウジング14a,14bの上部には、モータ冷却オイル経路LN22,LN31,LN32が接続されている。
【0075】
モータ駆動モードの実行時において、モータ冷却オイルは、モータ冷却オイル経路LN22,LN31,LN32の何れかからロータ・ステータ14cを冷却してオイルパン14dに流れる。オイルパン14dで受けられたモータ冷却オイルは、モータ冷却オイル経路LN33を通りモータ14用のオイルポンプ50に送られる。なお、モータ冷却オイル経路LN33には、プレッシャーリリーフバルブ51も接続されている。
【0076】
モータ冷却オイルは、オイルポンプ50からモータ冷却オイル経路LN34を通りオイルコントロールバルブ46に送られる。オイルコントロールバルブ46は、モータ冷却オイルの導出経路をモータ冷却オイル経路LN21またはモータ冷却オイル経路LN22の何れか一方に切り替えるバルブである。
【0077】
モータ冷却オイル経路LN21は、オイルコントロールバルブ45に接続されている。オイルコントロールバルブ45は、モータ冷却オイルの導出経路をモータ冷却オイル経路LN11またはモータ冷却オイル経路LN12の何れか一方に切り替えるバルブである。
【0078】
モータ冷却オイル経路LN11は、熱交換器42を介してモータ冷却オイル経路LN31に接続されている。モータ冷却オイル経路LN12は、熱交換器43を介してモータ冷却オイル経路LN32に接続されている。
【0079】
エンジンオイルの循環経路において、オイルポンプ33から導出されたエンジンオイルは、エンジン冷却オイル経路LN41から熱交換器42を介してエンジン冷却オイル経路LN42へと流れる。熱交換器42を経由してエンジン冷却オイル経路LN42に流れたエンジンオイルは、エキセントリックシャフトへと送られる。そして、ロータを潤滑・冷却する。
【0080】
また、エンジン冷却オイル経路LN42に送られたエンジンオイルの一部は、エンジン11~13の燃焼室に噴射され、ハウジング、アペックスシール、およびサイドシールを潤滑・冷却する。
【0081】
熱交換器42では、モータ冷却オイルとエンジンオイルとの間で熱交換可能となっている。即ち、モータ駆動モードの実行時においては、モータ14で発生した熱をエンジンオイルへと伝達して冷却するとともに、エンジンオイルを昇温することができるようになっている。よって、車両1では、モータ駆動モードの実行時において、エンジンオイルの循環経路を共用してモータ14の冷却ができるとともに、燃料が燃焼室に供給されていない状態でのエンジン11~13の暖気を行うこともできる。これより、駆動ユニット10の冷却系統の小型化を図ることができるとともに、エンジン駆動モードに移行した際のエンジン効率の向上を図ることができる。
【0082】
エンジン11~13の冷却水の循環経路において、エンジン11~13の高圧ウォータージャケットから導出された冷却水は、エンジン冷却水経路LN43から熱交換器43を介してエンジン冷却水経路LN44に送られる。熱交換器43を経由してエンジン冷却水経路LN44へと流れた冷却水は、エンジン11~13の低圧ウォータージャケットに導入される。
【0083】
熱交換器43では、モータ冷却オイルとエンジン冷却用の冷却水との間で熱交換可能となっている。これによっても、モータ駆動モードの実行時において、モータ14で発生した熱を冷却水へと伝達して冷却するとともに、冷却水を昇温することができるようになっている。よって、駆動ユニット10の冷却系統の小型化を図ることができるとともに、エンジン駆動モードに移行した際のエンジン効率の向上を図ることができる。なお、熱交換器43でモータ冷却オイルの熱を冷却水に伝達する冷却系統を用いる場合では、熱交換器42でモータ冷却オイルの熱をエンジンオイルに伝達する冷却系統を用いる場合よりも高い冷却性能を得ることができる。これは、冷却水の冷却のためのラジエータ31がオイルクーラ32よりも大型であることに加えて、ラジエータ31にはラジエータファン31aを有することによるものである。
【0084】
モータ14のオイルパン14dには、沸騰冷却器44の沸騰部44aが配設されている。ここで、
図5を用いて説明したように、沸騰部44aは、その外殻がモータ14の側部ハウジング14bに取り付けられているが、配管44cに充填された沸騰冷却用冷媒がオイルパン14d内のモータ冷却オイルと熱交換可能となっている。
【0085】
また、車両1においては、バルブ制御部52およびエンジン水温センサ53も備える。エンジン水温センサ53は、例えば、エンジン13とラジエータ31との間の配管36に設けられている。バルブ制御部52は、CPU、ROM、RAM等を有するマイクロプロセッサを備えて構成されている。バルブ制御部52は、エンジン水温センサ53と信号線SL1で接続され、オイルコントロールバルブ45,46のそれぞれと信号線SL2,SL3で接続され、沸騰冷却器44の沸騰冷却器ファン44dと信号線SL4で接続されている。
【0086】
5.バルブ制御部52が実行するモータ14の冷却制御方法
バルブ制御部52は、モータ駆動モードの実行時において(モータ14の駆動力により車両1が走行している場合において)、エンジン水温センサ53からのエンジン水温に関する情報を基に、オイルコントロールバルブ45,46の切替制御および沸騰冷却器ファン44dの駆動制御を実行する。具体的には、次のように制御を行う。
【0087】
(1)エンジン水温が第1閾値(例えば、40℃)未満の場合
エンジン水温が第1閾値未満の場合には、バルブ制御部52は、モータ冷却オイル経路LN34とモータ冷却オイル経路LN21とが接続されるようにオイルコントロールバルブ46を切替制御し、モータ冷却オイル経路LN21とモータ冷却オイル経路LN11とが接続されるようにオイルコントロールバルブ45を切替制御する。なお、沸騰冷却器ファン44dは停止した状態とする。
【0088】
(2)エンジン水温が第1閾値以上第2閾値(例えば、80℃)未満の場合
エンジン水温が第1閾値以上第2閾値未満の場合には、バルブ制御部52は、モータ冷却オイル経路LN34とモータ冷却オイル経路LN21とが接続されるようにオイルコントロールバルブ46を切替制御し、モータ冷却オイル経路LN21とモータ冷却オイル経路LN12とが接続されるようにオイルコントロールバルブ45を切替制御する。そして、バルブ制御部52は、沸騰冷却器ファン44dを駆動させる。
【0089】
(3)エンジン水温が第2閾値以上の場合
エンジン水温が第2閾値以上の場合には、バルブ制御部52は、モータ冷却オイル経路LN34とモータ冷却オイル経路LN21とが接続されるようにオイルコントロールバルブ46を切替制御する。そして、バルブ制御部52は、沸騰冷却器ファン44dの駆動状態を維持させる。
【0090】
6.インバータ27の配置
車両1におけるインバータ27の配置形態について、
図7から
図9を用いて説明する。
【0091】
図7に示すように、駆動ユニット10におけるモータ14の後方に設けられたトルクチューブ47は、フロアパネル(車体)におけるフロアトンネル48の内部空間(下方空間)48aに収容されている。フロアトンネル48は、フロントエリア1aと車室とを区画するダッシュパネル(図示を省略)の後方に設けられた部位であって、フロアパネルを補強するための部位として設けられている。
【0092】
なお、沸騰冷却器44の凝縮部44bをはじめとする各部もフロアトンネル48の内部空間48aに収容されている。
【0093】
図8に示すように、インバータ27は、フロアトンネル48の内部空間48aにおいて、トルクチューブ47の上方に配置されている。インバータ27は、トルクチューブ47の上方において、当該トルクチューブ47の長手方向に沿うように配置されている。インバータ27は、前部にターミナル27aを有する。
【0094】
ターミナル27aには、3本のワイヤーハーネス49が接続されている。3本のワイヤーハーネス49は、それぞれが可撓性を有する接続配線であり、インバータ27とモータ14とを電気的に接続している。なお、ターミナル27aは、「出力ターミナル」に該当する。
【0095】
図9に示すように、インバータ27は、フロアトンネル48の内部空間48aにおいて、フロアトンネル48に対してブラケット54を介して取り付けられている。インバータ27とトルクチューブ47との間には、隙間が空けられている。なお、トルクチューブ47の内部空間47aには、プロペラシャフト15が収容されている。
【0096】
ここで、駆動ユニット10の駆動時において、駆動ユニット10とともにトルクチューブ47が振動したとしても、インバータ27とトルクチューブ47との間に隙間が空けられているので、インバータ27に対して振動が直接伝わることがない。
【0097】
また、上述のように、駆動ユニット10は、フロントサブフレームに取り付けられているのに対して、インバータ27は、第1箇所から離間したフロアトンネル48に取り付けられている。このため、駆動ユニット10の駆動時に振動が発生しても、車体の取付箇所を介しての駆動ユニット10からインバータ27への振動の伝達が抑制される。
【0098】
なお、フロントサブフレームは「車体の第1箇所」に該当し、フロアパネルにおけるフロアトンネルが形成された部分は「車体の第2箇所」に該当する。
【0099】
7.ワイヤーハーネス49の配策構造
ワイヤーハーネス49の配策構造について、
図10および
図11を用いて説明する。
【0100】
図10および
図11に示すように、インバータ27のターミナル27aとモータ14のターミナル(入力ターミナル)14eとの間は、3本のワイヤーハーネス49で接続されている。モータ14のターミナル14eは、モータ14における側部ハウジング14bの上部に配設されている。
図11に示すように、出力ターミナルであるインバータ27のターミナル27aと、入力ターミナルであるモータ14のターミナル14eとは、車両1の前後方向に対向する位置関係をもって配置されている。
【0101】
図11に示すように、3本のワイヤーハーネス49は、インバータ27のターミナル27aに設けられた接続部27a1~27a3にそれぞれの一端が接続されている。接続部27a1~27a3を通る仮想直線L
27を仮定する場合に、接続部27a1~27a3は、仮想直線L
27が駆動ユニット10の中心軸L
10に対して角度θ
27で斜め方向に配向されるように配設されている。θ
27は、90°よりも大きい鈍角である。なお、接続部27a1~27a3は「第1接続部」に該当し、仮想直線L
27は「第1仮想直線」に該当する。
【0102】
3本のワイヤーハーネス49のそれぞれは、ターミナル27aから車両1の斜め左に向けて延出されている(矢印A1~A3)。
【0103】
3本のワイヤーハーネス49のそれぞれにおける他端は、モータ14のターミナル14eに設けられた接続部14e1~14e3に接続されている。接続部14e1~14e3を通る仮想直線L14を仮定する場合に、接続部14e1~14e3は、仮想直線L14が駆動ユニット10の中心軸L10に対して角度θ14で配向されるように配設されている。なお、θ14は、略90°である。なお、接続部14e1~14e3は「第2接続部」に該当し、仮想直線L14は「第2仮想直線」に該当する。
【0104】
3本のワイヤーハーネス49のそれぞれは、ターミナル14eから車両1の斜め左に向けて延出されている(矢印B1~B3)。
【0105】
図11に示すように、3本のワイヤーハーネス49は、ターミナル27aの接続部27a1~27a3のそれぞれと、ターミナル14eの接続部14e1~14e3のそれぞれとの直線距離よりも長い配線長を有する。このため、3本のワイヤーハーネス49は、ターミナル27aとターミナル14eとの間の領域を迂回するように湾曲した状態で配策されている。ワイヤーハーネス49が迂回する領域には、沸騰冷却器44の凝縮部44bが配設されている。また、ワイヤーハーネス49を左側に湾曲して配策することで、右側に沸騰冷却器44の配管44cを配設することができる。これにより、インバータ27および沸騰冷却器44を駆動ユニット10に対して高いスペース効率をもって取り付けることができ、駆動ユニット10、インバータ27、および沸騰冷却器44の全体としての小型化を図ることができる。
【0106】
図10に示すように、3本のワイヤーハーネス49は、トルクチューブ47よりも上方を通過し、トルクチューブ47には接触しないように配策されている。また、3本のワイヤーハーネス49は、駆動ユニット10におけるエンジン11~13の外周Dの内側に収まるように配策されている。特に、エンジン11~13の上端を通り、車両1の前後方向に引いた仮想直線L
Uよりも下方に収められている。これにより、フロアトンネル48の断面方向のサイズを大きくしなくても、ワイヤーハーネス49をフロアトンネル48の内部空間48aに収めることができる。
【0107】
図11に示すように、3本のワイヤーハーネス49は、互いの間に間隔を空け、且つ、交差しないように配策されている。これにより、3本のワイヤーハーネス49は、互いの接触が防がれ、被覆部の損傷等が抑制される。
【0108】
[変形例]
上記実施形態では、
図11に示すように、ワイヤーハーネス49を左側の湾曲するように配策することとしたが、本発明では、右側に湾曲するように配策してもよい。
【0109】
上記実施形態では、インバータ27をフロアトンネル48に取り付けることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。車体における駆動ユニットが取り付けられる箇所に対して、異なる箇所にインバータを取り付けることとすれば、上記同様の効果を得ることができる。
【0110】
上記実施形態では、モータ14として交流モータを採用することとしたため、バッテリ26とモータ14との間にインバータ27を設けることとしたが、本発明は、モータの種類に応じて種々の電力変換器を設けることが可能である。例えば、DC-DC変換器(DCチョッパ)などを採用する場合においても、上記実施形態と同様の接続配線を採用することで、上記同様の効果を得ることができる。
【0111】
上記実施形態では、3つのエンジン11~13と1つのモータ14とで構成された駆動ユニット10を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、1つのエンジンと1つのモータとで構成される駆動ユニットや、複数のエンジンと複数のモータとで構成される駆動ユニットを採用することもできる。
【0112】
上記実施形態では、エンジン11~13をロータリーエンジンとしたが、本発明は、レシプロエンジンを採用することもできる。なお、ロータリーエンジンを採用する上記実施形態では、駆動ユニット10の小型化を図ることができ、車両1の中央に近い領域に駆動ユニット10を配置することが可能である。よって、エンジン11~13としてロータリーエンジンを採用する場合には、より高い車両運動性能を実現するのに優位である。ただし、ロータリーエンジンは高回転型であって駆動時に生じる振動が大きい。これに対して、インバータおよび接続配線を上記実施形態のような構成にすることで、インバータや接続配線へのダメージを抑えることが可能となる。
【0113】
上記実施形態では、車両1の一例としてFR車を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、リヤに駆動ユニットを搭載し、駆動力を後輪に伝達するRR車や、運転席の後部に駆動ユニットを搭載し、駆動力を後輪に伝達するMR車、さらにはフロントエリアの後方側部分に駆動ユニットを搭載し、駆動力を前輪に伝達するFF車を採用することも可能である。
【0114】
上記実施形態では、
図11を用いて説明したように、仮想直線L
27が中心軸L
10に対して90°よりも大きい角度θ
27で交差するように接続部27a1~27a3を配置し、仮想直線L
14が中心軸L
10に対して略90°の角度θ
14で交差するように接続部14e1~14e3を配置することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、θ
27が略90°となるように接続部27a1~27a3を配置し、θ
14が90°よりも小さくなるように接続部14e1~14e3を配置してもよいし、θ
27が90°よりも大きくなるように接続部27a1~27a3を配置し、θ
14が90°よりも小さくなるように接続部14e1~14e3を配置してもよい。θ
27を90°よりも大きく、θ
14を90°よりも小さくする場合には、上方からの平面視において、仮想直線L
27と仮想直線L
14とがハの字を形成することになる。
【符号の説明】
【0115】
1 車両
10 駆動ユニット
11~13 エンジン
14 モータ
14a 後部ハウジング(ハウジング)
14e ターミナル(入力ターミナル)
14e1~14e3 接続部(第2接続部)
15 プロペラシャフト(シャフト)
26 バッテリ
27 インバータ
27a ターミナル(出力ターミナル)
27a1~27a3 接続部(第1接続部)
44 沸騰冷却器
44b 凝縮部(モータ冷却用部材)
44c 配管(モータ冷却用部材)
47 トルクチューブ(カバー部材)
48 フロアトンネル
49 ワイヤーハーネス(接続配線)