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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/02 20060101AFI20240214BHJP
   B60K 6/00 20071001ALI20240214BHJP
   B60K 6/22 20071001ALI20240214BHJP
   B60K 6/24 20071001ALI20240214BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20240214BHJP
   B60K 6/405 20071001ALI20240214BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20240214BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20240214BHJP
   B60W 10/30 20060101ALI20240214BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20240214BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20240214BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20240214BHJP
   F01M 5/00 20060101ALI20240214BHJP
   F01P 7/16 20060101ALI20240214BHJP
   F01P 3/22 20060101ALI20240214BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B60K11/02
B60K6/00
B60K6/22 ZHV
B60K6/24
B60K6/26
B60K6/405
B60K6/48
B60K6/54
B60W10/30 900
B60W20/00
H02K9/19 A
B60L50/16
F01M5/00 E
F01P7/16 Z
F01P3/22 K
F01P3/22 C
F01P3/20 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020113744
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012141
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋
(72)【発明者】
【氏名】上野 聡士
(72)【発明者】
【氏名】木ノ下 浩
(72)【発明者】
【氏名】米盛 敬
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-054409(JP,A)
【文献】特開2004-346831(JP,A)
【文献】特開2014-206301(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102007005391(DE,A1)
【文献】特表2010-517843(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0085510(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/02
B60K 6/00
B60K 6/22
B60K 6/24
B60K 6/26
B60K 6/405
B60K 6/48
B60K 6/54
B60W 10/30
B60W 20/00
H02K 9/19
B60L 50/16
F01M 5/00
F01P 7/16
F01P 3/22
F01P 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接配置されたエンジンおよびモータを有し、前記エンジンで車両を走行させるエンジン駆動モードと、前記モータで前記車両を走行させるモータ駆動モードとを駆動モードとして有する駆動ユニットと、
前記エンジンを冷却するためのエンジン用第1冷媒の経路である第1エンジン冷却経路と、
前記エンジンを冷却するためのエンジン用第2冷媒の経路であって、当該経路中に前記エンジン用第2冷媒を冷却するためのファンを有するとともに、前記第1エンジン冷却経路とは異なる経路である第2エンジン冷却経路と、
前記モータを冷却するためのモータ用冷媒の経路であって、互いに異なる経路である第1モータ冷却経路および第2モータ冷却経路を有するモータ冷却経路と、
前記第1エンジン冷却経路を流れる前記エンジン用第1冷媒と前記第1モータ冷却経路を流れる前記モータ用冷媒とが熱交換する第1熱交換器と、
前記第2エンジン冷却経路を流れる前記エンジン用第2冷媒と前記第2モータ冷却経路を流れる前記モータ用冷媒とが熱交換する第2熱交換器と、
前記第1モータ冷却経路と前記第2モータ冷却経路とを切り替える第1切替手段と、
前記エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段と、
前記エンジンの温度に基づき前記第1切替手段を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記モータ駆動モードの実行時において、
前記エンジンの温度が所定の第1閾値未満の場合に、前記第1モータ冷却経路により前記モータを冷却し、前記エンジンの温度が前記第1閾値以上の場合に、前記第2モータ冷却経路により前記モータを冷却する、ように前記第1切替手段を切替制御する、
車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記モータ用冷媒よりも沸点が低い沸騰冷却用冷媒が循環する経路と、前記循環経路の途中に配設され、前記モータ用冷媒と前記沸騰冷却用冷媒との間で熱交換する沸騰部と、前記沸騰冷却用冷媒が凝縮される凝縮部と、を有する沸騰冷却器を更に備え、
前記モータは、前記エンジンの温度が前記第1閾値以上の場合に、前記沸騰冷却用冷媒が前記沸騰部で沸騰し、沸騰した前記沸騰冷却用冷媒が前記凝縮部で凝縮されることにより、冷却される、
車両。
【請求項3】
請求項2に記載の車両において、
前記モータは、前記モータ用冷媒を受けるパンを下部に有し、
前記沸騰冷却器の前記沸騰部は、前記パン内に配設されている、
車両。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の車両において、
前記沸騰冷却器は、前記凝縮部に隣接配置され、前記凝縮部を空冷するための沸騰冷却器ファンを更に有し、
前記制御装置は、前記エンジンの温度が前記第1閾値以上の場合に、前記沸騰冷却器ファンを駆動させる、
車両。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の車両において、
前記モータ冷却経路は、前記第1切替手段よりも前記モータ用冷媒の流れ方向の上流側から分岐して、前記第1熱交換器および前記第2熱交換器の何れも経由せずに前記モータに接続された経路である第3モータ冷却経路を更に有し、
前記第3モータ冷却経路が分岐する箇所に設けられ、前記第1切替手段への経路と前記第3モータ冷却経路とを切り替える第2切替手段を更に備え、
前記制御装置は、前記モータ駆動モードの実行時において、前記エンジンの温度が前記第1閾値よりも高い第2閾値以上の場合に、前記第3モータ冷却経路により前記モータを冷却させる、ように前記第2切替手段を制御する、
車両。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載の車両において、
前記モータは、ロータおよびステータと、当該ロータおよびステータの外方を覆うハウジングと有し、
前記モータ用冷媒は、オイルであって、前記ハウジング内を上部から下部に通流する、
車両。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載の車両において、
前記エンジン用第1冷媒はエンジンオイルであり、前記エンジン用第2冷媒は冷却水である、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関し、特にエンジンとモータとを有する駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低減などを目的として、車両走行用の駆動源としてエンジンに加えてモータを備えたハイブリッド型の車両が普及してきている。
【0003】
特許文献1には、車両走行用の駆動源としてエンジンおよびモータを備えた自動車が開示されている。特許文献1に開示の自動車では、車両走行用の駆動源として備えるエンジンおよびモータがともにフロントエリアに搭載されている。
【0004】
特許文献1に開示の自動車では、エンジンで走行するエンジン駆動モードと、モータで走行するモータ駆動モードとが切替可能となっている。運転者によりモータ駆動モードが選択された場合には、モータにより自動車の駆動がなされる。
【0005】
一方、運転者がエンジン駆動モードを選択した場合には、自動車の発進の際にはモータによるトルクアシストがなされ、所定車速以上でエンジンによる駆動がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-162964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のようなハイブリッド型の車両においても、車両運動性能の更なる向上が求められている。車両の運動性能を高めようとする場合には、エンジンおよびモータからなる駆動ユニットを車両における中央に近い領域に配置することが有効である。このように駆動ユニットを配置することにより、車両が旋回し易くなり車両運動性能の向上を図ることができる。
【0008】
しかしながら、車両における中央に近い領域には、乗員スペースがあるので、駆動ユニットを搭載するためのスペースは限られている。このため、車両運動性能の向上を図るために駆動ユニットを車両の中央に近い領域に配置するためには、駆動ユニットの小型化を図ることが必要となる。
【0009】
本発明は、上記のような要望に応えるためになされたものであって、エンジンとモータとを有する駆動ユニットの小型化により車両運動性能の向上を図ることができる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
まず、車両を走行させるために駆動ユニットを駆動させた場合には、エンジンおよびモータは発熱する。このため、駆動ユニットには、エンジンおよびモータを冷却するための冷却手段を設ける必要があるが、エンジンを冷却するための冷却系統と、モータを冷却するための冷却系統とを別々に設ける場合には、冷却手段を設けた状態での駆動ユニットの大型化が避けられない。
【0011】
そこで、本発明者等は、車両運動性能の更なる向上を図るための一方策として、エンジンを冷却するための冷却系統とモータを冷却するための冷却系統とを共用することで、冷却手段を設けた状態での駆動ユニットの小型化を図ることを考えた。具体的には、エンジンの冷却系統として備えられている冷却水の循環経路やエンジンオイルの循環経路を、モータを冷却する手段として用いることで、個別に冷却系統を設けるよりも冷却手段を設けた駆動ユニットの小型化を図ることができると考えた。
【0012】
ここで、モータの駆動により車両が走行する場合には、エンジンの駆動力は小さい、あるいはゼロであるため、エンジン温度は比較的低い状態である。このため、モータの冷却系統をエンジンの冷却系統に接続することで、低温状態のエンジンがモータの熱を奪うことになる。よって、本発明者等は、エンジンの冷却系統とは別にモータの冷却系統を設けなくても、モータの冷却性能を確保できると考えた。
【0013】
上記のようにエンジンの冷却系統とモータの冷却系統とを共用することで、冷却手段を設けた状態での駆動ユニットの小型化を図ることができれば、車両における駆動ユニットの搭載場所をより車両の中央に近い領域とすることができ、車両運動性能の向上を図ることができる。
【0014】
しかしながら、本発明者等が上記のような冷却系統の共用について検討したところ、モータによる駆動が継続した場合に、モータの熱がエンジンの冷却系統を介してエンジンに伝達されてエンジンの温度が上昇し、エンジンがモータから奪うことができる熱量が低下してゆき、エンジンの温度がモータを十分に冷却できない温度にまで達してしまうような状況が生じ得ることを究明した。
【0015】
そこで、本発明の一態様に係る車両は、互いに隣接配置されたエンジンおよびモータを有し、前記エンジンで車両を走行させるエンジン駆動モードと、前記モータで前記車両を走行させるモータ駆動モードとを駆動モードとして有する駆動ユニットと、前記エンジンを冷却するためのエンジン用第1冷媒の経路である第1エンジン冷却経路と、前記エンジンを冷却するためのエンジン用第2冷媒の経路であって、当該経路中に前記エンジン用第2冷媒を冷却するためのファンを有するとともに、前記第1エンジン冷却経路とは異なる経路である第2エンジン冷却経路と、前記モータを冷却するためのモータ用冷媒の経路であって、互いに異なる経路である第1モータ冷却経路および第2モータ冷却経路を有するモータ冷却経路と、前記第1エンジン冷却経路を流れる前記エンジン用第1冷媒と前記第1モータ冷却経路を流れる前記モータ用冷媒とが熱交換する第1熱交換器と、前記第2エンジン冷却経路を流れる前記エンジン用第2冷媒と前記第2モータ冷却経路を流れる前記モータ用冷媒とが熱交換する第2熱交換器と、前記第1モータ冷却経路と前記第2モータ冷却経路とを切り替える第1切替手段と、前記エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段と、前記エンジンの温度に基づき前記第1切替手段を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記モータ駆動モードの実行時において、前記エンジンの温度が所定の第1閾値未満の場合に、前記第1モータ冷却経路により前記モータを冷却し、前記エンジンの温度が前記第1閾値以上の場合に、前記第2モータ冷却経路により前記モータを冷却する、ように前記第1切替手段を切替制御する。
【0016】
上記態様に係る車両では、エンジン用第1冷媒とモータ用冷媒とが熱交換する第1熱交換器と、エンジン用第2冷媒とモータ用冷媒とが熱交換する第2熱交換器とを備えるので、モータの駆動時に発生する熱をエンジンの冷却経路を用いて冷却することができる。換言すると、上記態様に係る車両では、モータの冷却手段とエンジンの冷却手段とを共用するので、個別に冷却手段を設ける場合に比べて冷却手段を設けた状態での駆動ユニットの小型化を図ることが可能となる。よって、例えば、駆動ユニットを車両のフロントエリアに搭載する場合には、駆動ユニットをフロントエリアの後方側部分(車両の中央に近い領域)に搭載することが可能となり、車両の重心を車両中央またはその近傍に位置させることが可能となる。これより、上記態様に係る車両では、車両運動性能の向上を図ることができる。
【0017】
また、上記態様に係る車両では、モータ駆動モードの実行時において、エンジンの温度が第1閾値未満の場合には、第1モータ冷却経路を用いてモータを冷却させることとしている。即ち、エンジンの温度が第1閾値未満の場合には、モータで発生した熱が第1熱交換器により第1エンジン冷却経路のエンジン用第1冷媒へと伝達され、モータが冷却される。よって、エンジンの温度が第1閾値未満の場合には、モータで発生した熱を受けても第2エンジン冷却経路中におけるファンの不必要な駆動を抑制することができる。
【0018】
また、上記態様に係る車両では、モータ駆動モードの実行時(モータでの車両走行時)において、エンジンの温度が第1閾値以上の場合においては、第2モータ冷却経路を用いてモータを冷却することとしている。即ち、エンジンの温度が第1閾値以上の場合には、モータで発生した熱が第2熱交換器により、ファンを有する第2エンジン冷却経路のエンジン用第2冷媒へと伝達され、モータが冷却される。よって、エンジンの温度が第1閾値以上の場合には、ファンを有する第2エンジン冷却経路を用いてモータの温度を適温に維持することができる。
【0019】
上記態様に係る車両において、前記モータ用冷媒よりも沸点が低い沸騰冷却用冷媒が循環する経路と、前記循環経路の途中に配設され、前記モータ用冷媒と前記沸騰冷却用冷媒との間で熱交換する沸騰部と、前記沸騰冷却用冷媒が凝縮される凝縮部と、を有する沸騰冷却器を更に備え、前記モータは、前記エンジンの温度が前記第1閾値以上の場合に、前記沸騰冷却用冷媒が前記沸騰部で沸騰し、沸騰した前記沸騰冷却用冷媒が前記凝縮部で凝縮されることにより、冷却される、ことにしてもよい。
【0020】
上記構成を採用する場合には、エンジンの温度が第1閾値以上の場合に、モータで発生した熱が沸騰冷却器でも冷却されるので、モータを高出力駆動したり、長時間継続して駆動したりするような場合にも、モータを適温に維持することが可能となる。
【0021】
上記態様に係る車両において、前記モータは、前記モータ用冷媒を受けるパンを下部に有し、前記沸騰冷却器の前記沸騰部は、前記パン内に配設されている、ことにしてもよい。
【0022】
上記構成を採用する場合には、エンジンの温度が第1閾値以上となった場合においても、パン内に沸騰冷却器の沸騰器を配設することにより、モータを適温に維持するのに優位である。
【0023】
上記態様に係る車両において、前記沸騰冷却器は、前記凝縮部に隣接配置され、前記凝縮部を空冷するための沸騰冷却器ファンを更に有し、前記制御装置は、前記エンジンの温度が前記第1閾値以上の場合に、前記沸騰冷却器ファンを駆動させる、ことにしてもよい。
【0024】
上記構成を採用する場合には、エンジンの温度が第1閾値以上の場合にも、沸騰冷却器ファンを駆動させることで沸騰冷却用冷媒の冷却が効果的になされる。よって、モータを適温に維持するのに更に優位である。
【0025】
上記態様に係る車両において、前記モータ冷却経路は、前記第1切替手段よりも前記モータ用冷媒の流れ方向の上流側から分岐して、前記第1熱交換器および前記第2熱交換器の何れも経由せずに前記モータに接続された経路である第3モータ冷却経路を更に有し、前記第3モータ冷却経路が分岐する箇所に設けられ、前記第1切替手段への経路と前記第3モータ冷却経路とを切り替える第2切替手段を更に備え、前記制御装置は、前記モータ駆動モードの実行時において、前記エンジンの温度が前記第1閾値よりも高い第2閾値以上の場合に、前記第3モータ冷却経路により前記モータを冷却させる、ように前記第2切替手段を制御する、ことにしてもよい。
【0026】
上記構成を採用する場合には、エンジンの温度が第2閾値まで上昇すると、第1熱交換域および第2熱交換器の何れも経由せず第3モータ冷却経路を流れるモータ用冷媒を用いてモータを冷却するので、エンジンの温度がそれ以上に上昇するのを抑制することができる。即ち、エンジンの温度が第2閾値以上になった場合には、専ら沸騰冷却器を用いてモータを冷却することでモータの温度を適温に維持することができる。
【0027】
上記態様に係る車両において、前記モータは、ロータおよびステータと、当該ロータおよびステータの外方を覆うハウジングと有し、前記モータ用冷媒は、オイルであって、前記ハウジング内を上部から下部に通流する、ことにしてもよい。
【0028】
上記構成を採用する場合には、モータのハウジング内をオイル(モータ用冷媒)を通流させることで、ハウジング内に収容されたロータおよびステータをオイルで直接冷却することができる。よって、モータ駆動モードでの車両走行時において、モータを適温に維持するのに優位である。
【0029】
上記態様に係る車両において、前記エンジン用第1冷媒はエンジンオイルであり、前記エンジン用第2冷媒は冷却水である、ことにしてもよい。
【0030】
上記構成を採用する場合には、エンジンの温度が第1閾値未満の場合にはモータで発生した熱によりエンジンオイルを昇温させ、エンジンの温度が第1閾値以上の場合にはモータで発生した熱により冷却水を昇温することができる。よって、モータ駆動モードで車両が走行している間に、エンジンの温度を上昇させることができ、エンジン駆動モードに移行した際のエンジン効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0031】
上記の各態様に係る車両では、エンジンとモータとを有する駆動ユニットの小型化により車両運動性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。
図2】車両における駆動ユニットの搭載位置を示す模式図である。
図3】駆動ユニットの構成を示す斜視図である。
図4】駆動ユニットの構成を示す斜視図である。
図5】駆動ユニットにおける沸騰冷却器の配置を示す斜視図である。
図6】オイルコントロールバルブの配置を示す斜視図である。
図7】(a)は、エンジンにおける冷却水循環経路を示す模式図であり、(b)は、エンジンにおけるエンジンオイル循環経路を示す模式図である。
図8】モータの冷却に係る構成を示す模式図である。
図9】バルブ制御部が実行するモータ冷却制御方法を示すフローチャートである。
図10】(a)は、エンジンの水温が第1閾値未満である場合のオイルの流れを示す模式図であり、(b)は、エンジンの水温が第1閾値以上で、且つ、第2閾値未満である場合のオイルの流れを示す模式図である。
図11】エンジンの水温が第2閾値以上の場合のオイルの流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0034】
また、以下の説明で用いる図面において、「F」は車両前方、「R」は車両後方、「U」は車両上方、「L」は車両下方をそれぞれ示す。
【0035】
[実施形態]
1.車両1の概略構成
本実施形態に係る車両1の概略構成について、図1を用いて説明する。
【0036】
図1に示すように、車両1では、当該車両1を駆動するための駆動ユニット10が、フロントエリア1aにおける後方側部分に搭載されている。駆動ユニット10は、エンジン11~13とモータ14とを有する。駆動ユニット10の詳細な構造については、後述する。
【0037】
駆動ユニット10には、プロペラシャフト15が接続されている。プロペラシャフト15は、車両1の車幅方向中央を後方側に向けて延びている。プロペラシャフト15の後端は、トランスミッション16に接続されている。
【0038】
トランスミッション16には、デファレンシャルギヤ17が接続されている。そして、デファレンシャルギヤ17の車幅方向左右には、ドライブシャフト18,19がそれぞれ連結されている。ドライブシャフト18,19は、それぞれ後輪20,21に接続されている。即ち、本実施形態に係る車両1では、フロントエリア1aに搭載された駆動ユニット10が発生する駆動力により後輪20,21を駆動する。
【0039】
また、車両1においては、前輪22,23のそれぞれに対して、モータ24,25が接続されている。詳細な図示を省略しているが、モータ24,25は、所謂、インホイールモータである。モータ24,25は、車両1の発進時に動力を発生して前輪22,23に伝えるアシストモータとして機能する。また、モータ24,25は、車両1の減速時に発電する回生ブレーキとしても機能する。そして、車両1の減速時にモータ24,25で発生した電力は、キャパシタ28等に充電される。
【0040】
車両1には、バッテリ26およびインバータ27も搭載されている。バッテリ26は、駆動ユニット10のモータ14に対して電力を供給するための蓄電モジュールである。本実施形態に係るバッテリ26は、例えば、リチウムイオンバッテリである。バッテリ26からの電力は、インバータ27を介してモータ14に供給される。
【0041】
ここで、本実施形態に係る車両1では、駆動ユニット10の駆動モードとして、エンジン駆動モードとモータ駆動モードとを備える。エンジン駆動モードは、エンジン11~13から出力される駆動力で後輪20,21を駆動して走行するモードである。モータ駆動モードは、モータ14から出力される駆動力で後輪20,21を駆動して走行するモードである。
【0042】
なお、車両1では、エンジン駆動モードで駆動の際にはモータ14は駆動力を発生させず、モータ駆動モードで駆動の際にはエンジン11~13は駆動力を発生させないように構成している。
【0043】
車両1において、エンジン駆動モードとモータ駆動モータとの切替制御は、駆動モード制御部29が行う。駆動モード制御部29は、CPU、ROM、RAM等を有するマイクロプロセッサを備えて構成されている。駆動モード制御部29は、運転者からの指示や、車両1の状況(車速、加減速度、バッテリ残容量)などを基に駆動モードの制御を実行する。
【0044】
2.駆動ユニット10の搭載位置
車両1における駆動ユニット10の搭載位置について、図2を用いて説明する。
【0045】
上述のように、車両1では、駆動ユニット10がフロントエリア1aの後方側部分に搭載されている。具体的には、駆動ユニット10の重心Ax10が、前輪22,23(図2では、前輪23のみを図示)の回転中心Ax23よりも後方側に位置するように駆動ユニット10が搭載されている。また、駆動ユニット10は、重心Ax10が前輪22,23の回転中心Ax23よりも下方側に位置するように搭載されている。
【0046】
即ち、車両1においては、重量物である駆動ユニット10をコンパクト化することによって、当該駆動ユニット10がフロントエリア1aの後方側部分であって、ボンネット30と間隔を空けた下方側部分に搭載されている。これにより、車両1の重心位置Ax1を車両1の長手方向の略中央の低い箇所とすることができる。
【0047】
3.駆動ユニット10およびその周辺の構成
駆動ユニット10の詳細構成およびその周辺の構成について、図3から図6を用いて説明する。
【0048】
図3および図4に示すように、駆動ユニット10が有するエンジン11~13は、一例としてロータリーピストンを有するロータリーエンジンである。車両1において、エンジン11~13としてロータリーエンジンを採用することにより、駆動ユニット10の小型化を図るのに優位である。
【0049】
図4に示すように、エンジン11~13の下方には、オイルパン38が配設されている。オイルパン38は、車両前後方向および車幅方向の寸法に対して、高さ方向の寸法が小さい偏平形状を有する。これにより、駆動ユニット10の高さを低く抑えるのに優位である。
【0050】
上記のように、本実施形態に係る車両1においては、オイルパン38が偏平形状を有するため、エンジンオイルの収容容量が少ない。このため、エンジン11~13を流通したエンジンオイルを集めることが主な機能である。よって、駆動ユニット10の側方には、オイルパン38で集められたエンジンオイルを貯留するためのオイルタンク35が設けられている。
【0051】
図3および図4に示すように、駆動ユニット10が有するモータ14は、エンジン13の後方に隣接して配置されている。エンジン11~13とモータ14とは出力軸を共有する直結構造となっている。モータ14の外周面には、2つの熱交換器42,43が取り付けられている。また、図5に示すように、モータ14の外周面には、沸騰冷却器44の沸騰部44aも取り付けられている。
【0052】
なお、詳しくは後述するが、熱交換器42が「第1熱交換器」に該当し、熱交換器43が「第2熱交換器」に該当する。
【0053】
沸騰冷却器44は、沸騰部44aの他に、凝縮部44b、配管44c、および沸騰冷却器ファン44dを有する。凝縮部44bは、モータ14の後方に配設されており、沸騰冷却器ファン44dは、凝縮部44bに隣接配置されている。配管44cは、沸騰部44aと凝縮部44bとを連結する。配管44c内には、沸騰冷却用冷媒が充填されている。
【0054】
図3および図4に示すように、駆動ユニット10の前方には、ラジエータ31およびオイルクーラ32が配設されている。ラジエータ31は、エンジン11~13の熱により高温となった冷却水を冷却するためのデバイスであり、後方側にラジエータファン31aを有する。なお、ラジエータファン31aが、「第2エンジン冷却経路におけるファン」に該当する。
【0055】
オイルクーラ32は、ラジエータ31の後方に配置され、ラジエータ31に沿うように配設されている。オイルクーラ32の平面サイズは、ラジエータ31よりも小型である。
【0056】
エンジン11~13とラジエータ31との間は、配管36,37により接続されている。配管37とエンジン11~13との接続部分には、ウォーターポンプ34が設けられている。
【0057】
オイルクーラ32、エンジン11~13、オイルタンク35、およびオイルパン38の相互間は、配管39~41等で接続されている。配管41とエンジン11~13との接続部分には、オイルポンプ33が設けられている。
【0058】
図6に示すように、モータ14の後部ハウジング14aには、2つのオイルコントロールバルブ45,46が配設されている。オイルコントロールバルブ45とオイルコントロールバルブ46とは、後部ハウジング14aの中心部分よりも上部において、左右に振り分けられた状態で配設されている。なお、詳しくは後述するが、オイルコントロールバルブ45が「第1切替手段」に該当し、オイルコントロールバルブ46が「第2切替手段」に該当する。
【0059】
4. エンジン11~13における冷却水循環経路
駆動ユニット10のエンジン11~13での冷却水循環経路について、図7(a)を用いて説明する。
【0060】
図7(a)に示すように、エンジン11~13の冷却水循環経路は、ラジエータ31とエンジン11~13と熱交換器43との間を循環するように形成されている。具体的には、ラジエータ31で冷却された冷却水は、ウォーターポンプ34から前方のエンジン11の高圧ウォータージャケットに導入される。その後、冷却水は、エンジン12の高圧ウォータージャケットからエンジン13の高圧ウォータージャケットを通り、熱交換器43へと導入される。
【0061】
熱交換器43を通過した冷却水は、エンジン11の低圧ウォータージャケット、エンジン12の低圧ウォータージャケット、およびエンジン13の低圧ウォータージャケットの順で循環して、ラジエータ31へと戻る。
【0062】
なお、後述するが、熱交換器43では、モータ14を冷却するためのオイルと熱交換可能に構成されている。
【0063】
5.エンジン11~13におけるエンジンオイル循環経路
駆動ユニット10のエンジン11~13におけるエンジンオイル循環経路について、図7(b)を用いて説明する。
【0064】
図7(b)に示すように、エンジン11~13のエンジンオイル循環経路は、オイルクーラ32と熱交換器42とエンジン11~13とオイルタンク35との間を循環するように形成されている。具体的には、オイルクーラ32で冷却されたエンジンオイルは、オイルポンプ33から熱交換器42を通り、エンジン11~13に導入される。各エンジン11~13内を通流したエンジンオイルは、オイルパン38で集められてオイルタンク35に送られる。
【0065】
オイルタンク35に送られたエンジンオイルは、一時的にオイルタンク35内で貯留され、その後、オイルクーラ32へと送られる。
【0066】
なお、後述するが、熱交換器42でも、モータ14を冷却するためのオイルと熱交換可能に構成されている。
【0067】
6.モータ14の冷却構成
駆動ユニット10におけるモータ14の冷却構成について、図8を用いて説明する。
【0068】
図8に示すように、モータ14は、ハウジング14a,14b(図8では、側部ハウジング14bのみを図示)と、ロータ・ステータ14cと、オイルパン14dとを有する。ハウジング14a,14bの上部には、モータ冷却オイル経路LN22,LN31,LN32が接続されている。モータ冷却オイル経路LN31は「第1モータ冷却経路」に該当し、モータ冷却オイル経路LN32は「第2モータ冷却経路」に該当し、モータ冷却オイル経路LN22は「第3モータ冷却経路」に該当する。
【0069】
モータ駆動モードの実行時(モータ駆動モードでの車両走行時)において、モータ冷却用のオイルは、モータ冷却オイル経路LN22,LN31,LN32の何れかからロータ・ステータ14cを冷却してオイルパン14dに流れる。オイルパン14dで受けられたオイルは、モータ冷却オイル経路LN33を通りモータ14用のオイルポンプ50に送られる。なお、モータ冷却オイル経路LN33には、プレッシャーリリーフバルブ51も接続されている。
【0070】
オイルは、オイルポンプ50からモータ冷却オイル経路LN34を通りオイルコントロールバルブ46に送られる。オイルコントロールバルブ46は、上述のように「第2切替手段」に該当し、オイルの導出経路をモータ冷却オイル経路LN21またはモータ冷却オイル経路LN22の何れか一方に切り替えるバルブである。
【0071】
モータ冷却オイル経路LN21は、オイルコントロールバルブ45に接続されている。オイルコントロールバルブ45は、上述のように「第1切替手段」に該当し、オイルの導出経路をモータ冷却オイル経路LN11またはモータ冷却オイル経路LN12の何れか一方に切り替えるバルブである。
【0072】
モータ冷却オイル経路LN11は「第1モータ冷却経路」に該当し、モータ冷却オイル経路LN12は「第2モータ冷却経路」に該当する。モータ冷却オイル経路LN11は、熱交換器42を介してモータ冷却オイル経路LN31に接続されている。モータ冷却オイル経路LN12は、熱交換器43を介してモータ冷却オイル経路LN32に接続されている。
【0073】
エンジンオイルの循環経路において、オイルポンプ33から導出されたエンジンオイルは、エンジン冷却オイル経路LN41から熱交換器42を介してエンジン冷却オイル経路LN42へと流れる。熱交換器42を経由してエンジン冷却オイル経路LN42へと流れたエンジンオイルは、エキセントリックシャフトへと送られる。そして、ロータを潤滑・冷却する。
【0074】
また、エンジン冷却オイル経路LN42に送られたエンジンオイルの一部は、エンジン11~13の燃焼室に噴射され、ハウジング、アペックスシール、およびサイドシールを潤滑・冷却する。
【0075】
熱交換器42では、モータ冷却用のオイルとエンジンオイルとの間で熱交換可能となっている。即ち、モータ駆動モードの実行時においては、モータ14で発生した熱により、エンジンオイルを昇温できるようになっている。よって、車両1では、モータ駆動モードの実行時において、燃料が燃焼室に供給されていないエンジン11~13の暖気を行うことができ、エンジン駆動モードに移行した際のエンジン効率の向上を図ることができる。
【0076】
本実施形態において、エンジン冷却オイル経路LN41およびエンジン冷却オイル経路LN42は、「第1エンジン冷却経路」に該当する。
【0077】
エンジン11~13の冷却水の循環経路において、エンジン11~13の高圧ウォータージャケットから導出された冷却水は、エンジン冷却水経路LN43から熱交換器43を介してエンジン冷却水経路LN44に接続されている。熱交換器43を経由してエンジン冷却水経路LN44へと流れた冷却水は、エンジン11~13の低圧ウォータージャケットに導入される。
【0078】
熱交換器43では、モータ冷却用のオイルとエンジン11~13のウォータージャケットを通流する冷却水との間で熱交換可能となっている。これによっても、モータ駆動モードの実行時においては、モータ14で発生した熱でエンジン11~13の暖気を行うことができ、エンジン駆動モードに移行した際のエンジン効率の向上を図ることができる。
【0079】
モータ14のオイルパン14dには、沸騰冷却器44の沸騰部44aが配設されている。ここで、図5を用いて説明したように、沸騰部44aは、その外殻がモータ14の外周部に取り付けられているが、オイルパン14d内のオイルと熱交換可能となっている。なお、沸騰冷却器44の沸騰冷却用冷媒には、モータ14を冷却するためのオイルよりも沸点が低い冷媒が採用されている。
【0080】
また、車両1においては、バルブ制御部52およびエンジン水温センサ53も備える。エンジン水温センサ53は、「エンジン温度検出手段」に該当し、例えば、エンジン13とラジエータ31との間の配管36に設けられている。バルブ制御部52は、「制御装置」に該当し、CPU、ROM、RAM等を有するマイクロプロセッサを備えて構成されている。バルブ制御部52は、エンジン水温センサ53からのエンジン水温に関する情報を基に、オイルコントロールバルブ45,46の切替制御および沸騰冷却器ファン44dの駆動制御を実行する。
【0081】
7.バルブ制御部52が実行するモータ14の冷却制御方法
バルブ制御部52が実行するモータ14の冷却制御方法について、図9から図11を用いて説明する。
【0082】
図9に示すように、バルブ制御部52は、車両1がモータ駆動モードの実行中であるか否かを判断する(ステップS1)。バルブ制御部52は、ステップS1の判定に際して、駆動モード制御部29から駆動モードに関する情報を取得する。バルブ制御部52がモータ駆動モードであると判断した場合には(ステップS1:YES)、エンジン水温Tの読み込みを行う(ステップS2)。バルブ制御部52は、エンジン水温Tをエンジン水温センサ53から取得する。
【0083】
バルブ制御部52は、取得したエンジン水温Tが、予め設定された第1閾値TTH1未満であるか否かを判断する(ステップS3)。本実施形態において、第1閾値TTH1は、一例として40℃に規定されている。バルブ制御部52がエンジン水温Tが第1閾値TTH1未満であると判断した場合には(ステップS3:YES)、モータ冷却オイル経路LN34とモータ冷却オイル経路LN21とが接続されるようにオイルコントロールバルブ46を切替制御し(ステップS4)、モータ冷却オイル経路LN21とモータ冷却オイル経路LN11とが接続されるようにオイルコントロールバルブ45を切替制御する(ステップS5)。
【0084】
図10(a)に示すように、エンジン水温Tが第1閾値TTH1未満の場合に(ステップS3:YES)、オイルポンプ50から送られたモータ冷却用のオイルは、モータ冷却オイル経路LN34,LN21,LN11,LN31を通り、モータ14に導入される。そして、オイルは、熱交換器42において、エンジンオイルとの間で熱交換する。これにより、燃焼室に燃料が供給されていないエンジン11~13の昇温を図ることができ、モータ14の適温の維持を図りながら、エンジン11~13の暖気を行う。
【0085】
図9に戻って、バルブ制御部52がエンジン水温Tが第1閾値TTH1以上であると判断した場合には(ステップS3:NO)、エンジン水温Tが、予め設定された第2閾値TTH2未満であるか否かを判断する(ステップS6)。本実施形態において、第2閾値TTH2は、一例として80℃に規定されている。
【0086】
バルブ制御部52がエンジン水温Tが第1閾値TTH1以上第2閾値TTH2未満であると判断した場合には(ステップS6:YES)、モータ冷却オイル経路LN34とモータ冷却オイル経路LN21とが接続されるようにオイルコントロールバルブ46を切替制御し(ステップS7)、モータ冷却オイル経路LN21とモータ冷却オイル経路LN12とが接続されるようにオイルコントロールバルブ45を切替制御する(ステップS8)。また、バルブ制御部52は、沸騰冷却器44の沸騰冷却器ファン44dを作動させる(ステップS9)。
【0087】
図10(b)に示すように、エンジン水温Tが第1閾値TTH1以上第2閾値TTH2未満の場合に(ステップS6:YES)、オイルポンプ50から送られたモータ冷却用のオイルは、モータ冷却オイル経路LN34,LN21,LN12,LN32を通り、モータ14に導入される。そして、オイルは、熱交換器43において、エンジン11~13の冷却水との間で熱交換するここで、冷却水の循環経路には、ラジエータファン31aを有するラジエータ31が設けられているため、モータ冷却用のオイルから冷却水に伝達された熱がより高効率に冷却される。
【0088】
さらに、エンジン水温Tが第1閾値TTH1以上第2閾値TTH2未満の場合に(ステップS6:YES)、沸騰冷却器44の沸騰冷却器ファン44dも作動されるため、モータ14をより冷却することができる。よって、モータ14の継続的な駆動等によってモータ温度が上昇した場合においても、さらに効率的な冷却によりモータ14の温度を適温に維持することができ、モータ14における磁石の磁力低下を抑制することができる。
【0089】
図9に戻って、バルブ制御部52がエンジン水温Tが第2閾値TTH2以上であると判断した場合には(ステップS6:NO)、モータ冷却オイル経路LN34とモータ冷却オイル経路LN22とが接続されるようにオイルコントロールバルブ46を切替制御するとともに(ステップS10)、沸騰冷却器44の沸騰冷却器ファン44dを作動させる(ステップS11)。
【0090】
図11に示すように、エンジン水温Tが第2閾値TTH2以上の場合には(ステップS6:NO)、モータ冷却用のオイルを熱交換器42,43を経由させないようにする。即ち、沸騰冷却器44によりモータ14の冷却を行う。これは、既にエンジン11~13の温度が所定以上に上昇しているため、熱交換器42,43を介してエンジン11~13に熱を伝達することが困難であると判断させれるためである。
【0091】
[変形例]
上記実施形態に係る車両1では、3つのエンジン11~13と1つのモータ14とで構成された駆動ユニット10を採用したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、1つのエンジンと1つのモータとで構成される駆動ユニットや、複数のエンジンと複数のモータとで構成される駆動ユニットを採用することもできる。
【0092】
上記実施形態に係る車両1では、エンジン11~13をロータリーエンジンとしたが、本発明は、レシプロエンジンを採用することもできる。ただし、ロータリーエンジンを採用する上記実施形態に係る車両1では、駆動ユニット10をよりコンパクトにすることができ、より高い車両運動性能を実現するのに優位である。
【0093】
上記実施形態に係る車両1では、オイルクーラ32には冷却ファンを備えないこととしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。オイルクーラに冷却ファンを備えたり、オイルクーラのフィンに霧状の水を噴霧することができる機構を付加したりすることなども可能である。
【0094】
上記実施形態では、車両1の一例としてFR車を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、リヤに駆動ユニットを搭載し、駆動力を後輪に伝達するRR車や、運転席の後部に駆動ユニットを搭載し、駆動力を後輪に伝達するMR車、さらにはフロントエリアの後方部分に駆動ユニットを搭載し、駆動力を前輪に伝達するFF車を採用することも可能である。
【0095】
上記実施形態では、オイルコントロールバルブ45,46としてスプール式のバルブを採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ポペット式やスライド式のバルブを採用することもできる。
【符号の説明】
【0096】
1 車両
10 駆動ユニット
11~13 エンジン
14 モータ
26 バッテリ
29 駆動モード制御部
31 ラジエータ
31a ラジエータファン(ファン)
32 オイルクーラ
42 熱交換器(第1熱交換器)
43 熱交換器(第2熱交換器)
44 沸騰冷却器
45 オイルコントロールバルブ(第1切替手段)
46 オイルコントロールバルブ(第2切替手段)
52 バルブ制御部(制御装置)
53 エンジン水温センサ(エンジン温度検出手段)
LN11,LN31 モータ冷却オイル経路(第1モータ冷却経路)
LN12,LN32 モータ冷却オイル経路(第2モータ冷却経路)
LN22 モータ冷却オイル経路(第3モータ冷却経路)
LN21,LN33,LN34 モータ冷却オイル経路
LN41,LN42 エンジン冷却オイル経路(第1エンジン冷却経路)
LN43,LN44 エンジン冷却水経路(第2エンジン冷却経路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11