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特許7435317コーヒーメーカー用浄水カートリッジ、およびそれを装着したコーヒーメーカー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】コーヒーメーカー用浄水カートリッジ、およびそれを装着したコーヒーメーカー
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/60 20060101AFI20240214BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20240214BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20240214BHJP
   C02F 1/58 20230101ALI20240214BHJP
   C02F 1/50 20230101ALI20240214BHJP
   A47J 31/44 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A47J31/60 105
C02F1/28 G
C02F1/42 A
C02F1/58 L
C02F1/50 510A
C02F1/50 520B
C02F1/50 531E
C02F1/50 540C
C02F1/50 550C
C02F1/50 560B
C02F1/50 560D
A47J31/44 180
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020113845
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012194
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山内 敬大
(72)【発明者】
【氏名】磯部 卓
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-46624(JP,A)
【文献】特開2018-75569(JP,A)
【文献】特開2004-230358(JP,A)
【文献】特開2005-313163(JP,A)
【文献】特開2008-23424(JP,A)
【文献】特開2003-53335(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0050133(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/60
C02F 1/28
C02F 1/42
C02F 1/58
C02F 1/50
A47J 31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水流入口および底部に浄水流出口を有したカートリッジ本体と、
前記カートリッジ本体の内部に収められた濾材と、を有し、
前記カートリッジ本体の天井部に、前記カートリッジ本体の内部と外部とを連通する空気抜き穴が形成された、コーヒーメーカー用浄水カートリッジ。
【請求項2】
前記カートリッジ本体の内部に、前記底部から前記天井部に向けて延在し天井部まで至らない仕切りであって、上端が前記原水流入口および前記浄水流出口よりも上方に位置する仕切り部を有し、
前記カートリッジ本体の内部は、前記仕切り部により、前記原水流入口に連通する区画と前記浄水流出口に連通する区画とで分けられており、
前記原水流入口に連通する区画と前記浄水流出口に連通する区画とは、前記仕切り部の上端と前記天井部との隙間で連通している、請求項1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジ。
【請求項3】
前記カートリッジ本体の内部に、前記底部から前記天井部に至る仕切りであって、前記原水流入口および前記浄水流出口よりも上方に位置する開口が形成された仕切り部を有し、
前記カートリッジ本体の内部は、前記仕切り部により、前記原水流入口に連通する区画と前記浄水流出口に連通する区画とで分けられており、
前記原水流入口に連通する区画と前記浄水流出口に連通する区画とは、前記仕切り部の開口で連通している、請求項1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジ。
【請求項4】
前記空気抜き穴を気密に塞げる栓を有する、請求項1~3のいずれかのコーヒーメーカー用浄水カートリッジ。
【請求項5】
さらに、中空の筒状の部材であって、中空の部分と前記空気抜き穴とが連通するように前記カートリッジ本体の外側に筒状部を有する、請求項1~3のいずれかのコーヒーメーカー用浄水カートリッジ。
【請求項6】
前記筒状部を気密に塞げる栓を有する、請求項5のコーヒーメーカー用浄水カートリッジ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかのコーヒーメーカー用浄水カートリッジが、水タンクに装着されたコーヒーメーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯水タンクに装着して水道水を浄化するコーヒーメーカー用浄水カートリッジと、その浄水カートリッジを水タンクに装着したコーヒーメーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浄水機能付きコーヒーマシンが知られている。特許文献1には、フィルタカートリッジ内に原水入口と浄水出口の間に邪魔板(仕切り部)を設けたコーヒーマシンの水タンク用フィルタカートリッジが開示されている。入口と出口の流路長を増加させることで、濾材全体を効率的に使用でき、フィルタカートリッジのコンパクト化を実現できる。
【0003】
特許文献2には、内部の電気ヒーターなどで加熱された水を給水タンクに還流するコーヒーメーカーが開示されている。これにより給水タンクに備えられた濾過材の親水性が一時的に高まり、濾過材の空気が抜け、安定した流量を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-46624号公報
【文献】特開平3-170118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、使用開始時に、フィルタカートリッジ内の空気が抜けず、流量が低下してしまうという問題点がある。さらに、コーヒーメーカーの吸引ポンプにより水と共に空気を吸引・排出させると、ポンプへ大きな負荷がかかって、ポンプが故障する可能性もある。
【0006】
特許文献2の技術では、加熱された水を濾材に掛けることで空気抜きが速やかにできるものの、加熱した水を還流する必要があり、コーヒーメーカーの構造が複雑化し、コーヒーメーカーが高価になってしまう。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑み、コーヒーメーカーの構成を複雑化することなく、フィルタカートリッジ内の空気を速やかに抜いて安定した流量を実現できる、コーヒーメーカー用浄水カートリッジを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、
原水流入口および底部に浄水流出口を有したカートリッジ本体と、
上記カートリッジ本体の内部に収められた濾材と、を有し、
上記カートリッジ本体の天井部に、上記カートリッジ本体の内部と外部とを連通する空気抜き穴が形成されている。
【0009】
本発明のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、上記発明において、上記カートリッジ本体の内部に、上記底部から上記天井部に向けて延在し天井部まで至らない仕切りであって、上端が上記原水流入口および上記浄水流出口よりも上方に位置する仕切り部を有し、
上記カートリッジ本体の内部は、上記仕切り部により、上記原水流入口に連通する区画と上記浄水流出口に連通する区画とで分けられており、
上記原水流入口に連通する区画と上記浄水流出口に連通する区画とは、上記仕切り部の上端と上記天井部との隙間で連通している。
【0010】
本発明のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、上記発明において、上記カートリッジ本体の内部に、上記底部から上記天井部に至る仕切りであって、上記原水流入口および上記浄水流出口よりも上方に位置する開口が形成された仕切り部を有し、
上記カートリッジ本体の内部は、上記仕切り部により、上記原水流入口に連通する区画と上記浄水流出口に連通する区画とで分けられており、
上記原水流入口に連通する区画と上記浄水流出口に連通する区画とは、上記仕切り部の開口で連通している。
【0011】
本発明のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、上記発明において、上記空気抜き穴を気密に塞げる栓を有する。
【0012】
本発明のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、上記発明において、さらに、中空の筒状の部材であって、中空の部分と上記空気抜き穴とが連通するように上記カートリッジ本体の外側に筒状部を有する。
【0013】
本発明のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、上記発明において、上記筒状部を気密に塞げる栓を有する。
【0014】
本発明のコーヒーメーカーは、本発明のコーヒーメーカー用浄水カートリッジを水タンクに装着している。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、使用開始前に水に沈めることで、カートリッジ本体内部の空気を空気抜き穴から抜くことができる。これによりコーヒーメーカーの吸引ポンプによって空気を吸引・排出することがないので、ポンプの負荷を軽減できる。
【0016】
また、本発明の好ましい態様のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、原水流入口と浄水流出口の間に仕切り部が設けられており、さらに原水流入口から浄水流出口までの流路が長くなるように隙間または開口がある。これにより濾材全体を効率的に使用でき、浄水カートリッジのコンパクト化を図れる。
【0017】
また、本発明の好ましい態様のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、空気を抜いた後に栓で空気抜き穴を塞ぐことで、サイフォンの原理を利用できる。すなわち、原水流入口と浄水流出口の間に仕切り部があったとしても、サイフォンの原理で仕切り部を超えて水が流れ、ポンプによる吸引に頼らず水が流れる。これによりポンプへの負荷を低減できる。また空気抜き穴から不必要に水が漏れ出ることを防ぐほか、空気抜き穴からの原水流入を防ぎ、安定した除去性能を維持できる。
【0018】
また、本発明の好ましい態様のコーヒーメーカー用浄水カートリッジは、空気抜き穴と連通する筒部を設けることで原水流入口と空気穴の水頭圧を大きくできる。これにより、細かい濾材を使用した場合でも、水がカートリッジ本体内部に入りやすくなり、空気を抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの縦断面図である。
図2図1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジを、コーヒーメーカーの水タンクに装着した状態の縦断面図である。
図3図1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの斜視図である。
図4図1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの吸盤の斜視図である。
図5図1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジを水タンクに装着したコーヒーメーカーの斜視図である。
図6】本発明の別の実施形態のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの縦断面図である。
図7】本発明のさらに別の実施形態のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの縦断面図である。図2は、図1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジを、コーヒーメーカーの水タンクに装着した状態の縦断面図である。図3は、図1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジを下方から見た斜視図である。
【0021】
浄水カートリッジ1を構成する各部材について説明する。浄水カートリッジ1は、カートリッジ本体4とカートリッジ本体の内部空間に収納した粒状濾材10を有している。カートリッジ本体4は、上端が開口した有底筒状の濾材収容ケース2と、濾材収容ケース2の上端開口に固定される蓋3で構成されている。
【0022】
濾材収容ケース2は、略台形や半円形である水タンクの底近傍の横断面に合うように、水平断面が長丸形になっている。底面中央に浄水流出口12を有し、水タンク51の底面に突出する給水口52に被せることができるようになっている。浄水流出口12には流出口メッシュ13が設けられていて、粒状濾材10が給水口52に流出しないように保持している。流出口メッシュ13は、濾材収容ケース2を射出成形する際に、インサート成形によりメッシュクロスを一体化して固定している。射出成形後にメッシュクロスや不織布を超音波溶着によって固定して、流出口メッシュにしても良い。また、金型にメッシュ形状を形成し、射出成形によってメッシュを形成し、流出口メッシュにしても良い。
【0023】
濾材収容ケース2の底面の長軸方向・両端付近には、一対の半円形の原水流入口11A、11Bが配設されている。原水流入口11A、11Bには、それぞれ流入口メッシュ14A、14Bが設けられていて、粒状濾材10が水タンク51に漏れ出ないように保持している。流入口メッシュ14A、14Bは、流出口メッシュ13と同様、濾材収容ケース2を射出成形する際に、インサート成形によりメッシュクロスを一体化して固定している。射出成形後にメッシュクロスや不織布を超音波溶着によって固定して、流入口メッシュにしても良く、金型にメッシュ形状を形成し、射出成形によってメッシュを形成して流入口メッシュにしても良い。
【0024】
濾材収容ケース2の浄水流出口12と原水流入口11Aの間には仕切り部15Aが立設していて、浄水流出口12と原水流入口11Bの間には仕切り部15Bが立設している。これら仕切り部15A、15Bによって、濾材収容ケース2の中は、原水流入口11A、原水流入口11B、浄水流出口12のそれぞれに連通した区画に分けられている。仕切り部15Aの上端と仕切り部15Bの上端は、濾材収容ケース2の開口端よりも低くなっている。つまり、仕切り部15A、15Bは蓋3まで達しておらず、仕切り部15A、15Bの上端と蓋3との間にはそれぞれ隙間がある。この隙間を通じて、濾材収容ケース内の各区画は連通している。さらに仕切り部15A、15Bの上端は、原水流入口11A、原水流入口11B、浄水流出口12よりも上方に位置しているので、仕切り部15Aの外側は原水流入口11Aから流入した水が上向きに流れる流路、仕切り部15Bの外側も原水流入口11Bから流入した水が上向きに流れる流路、仕切り部15Aと仕切り部15Bの間は浄水流出口12に向かう下向きの流路が形成される。このように原水流入口11A、11Bから浄水流出口12までの流路が長くなるので、濾材全体を効率的に使用でき、浄水カートリッジのコンパクト化を図れる。仕切り部15A、15Bの上端は、流路をかせぐため、濾材収容ケース2の底面から蓋3までの距離の50%よりも上に位置することが好ましい。また仕切り部15A、15Bの上端は、上端と蓋3との間に水が流れるように、上端と蓋3との距離が3mm以上となる位置にすることが好ましい。
【0025】
図6を参照する。図6は、本発明の別の実施形態のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの縦断面図である。図1の実施形態では、仕切り部15A、15Bは蓋3まで達していないが、図6の実施形態のように、仕切り部15A、15Bを蓋3まで達するようにして、仕切り部15A、15Bに開口を設けてもよい。図1の実施形態の仕切り部15A、15Bの上端と蓋3との間の隙間と同じく、この開口により各区間が連通し、さらに開口が原水流入口11A、原水流入口11B、浄水流出口12よりも上方に位置しているので、原水流入口11A、11Bから浄水流出口12までの流路を長くできる。
【0026】
再び図1~3を参照する。濾材収容ケース2の底部の外側の面には、浄水流出口12の周りを囲むようにシール部材21が固定されていて、水タンク51に投入した原水(水道水)と浄水カートリッジから流出した浄水が混ざらないようにシールしている。シール部材21はリング状であり、濾材収容ケースの底部から外側に向かうにつれて拡径している。シール部材21を水タンク51の底面に押しつけると、シール部材21の外径が大きくなりながら内面が水タンクに密着し、しっかりとシールされて原水と浄水が混ざることが無い。シール部材21の材質はシリコーンゴム、NBRゴム、EPDMゴム、塩ビゴムなどのゴム素材が好ましく使用できる。ゴム素材の硬度は、厚さを調整して硬度30度~70度の範囲で適宜選択できる。硬度が30度以上であると、柔らか過ぎることなく適度な剛性を有した形状で安定しており、濾材収容ケース2にしっかりと固定できる。硬度が70度以下であると、固過ぎることなく変形が容易であり、水タンク51の底面に隙間なくぴったりと密着できる。本実施形態では、シール部材21の材質としては安全性が高いシリコーンゴムを選択し、ゴムの硬度は50度とした。ここでゴム硬度とは、JIS K 6253に規定されたタイプAに基づく。
【0027】
濾材収容ケース2の底部近傍の外側の面には一対の吸盤固定軸22A、22Bが設けられていて、後述の吸盤23、24の固定に用いられる。吸盤固定軸は一対としたが、二対あれば固定の安定性は増す。もちろん三対でも良い。
【0028】
濾材収容ケース2の開口を塞ぐ蓋3は、水平断面が長丸形状の筒部3Aと、平板部3Bと、直立円筒部3Cが一体になった構成である。筒部3Aを、濾材収容ケース2の外側面に被せた状態で超音波溶着により一体化することで、濾材収容ケース2と蓋3の内部空間を形成しながら、濾材収容ケース2と蓋3の隙間から原水(水道水)が流入することを防いでいる。
【0029】
平板部3Bの中央には空気抜き穴31が設けられ、空気抜き穴31を囲むように直立円筒部3Cが平板部3Bに連結している。直立円筒部3Cは中空で、その上端が水タンク51の水面よりも高く位置するようになっている。すなわち空気抜き穴31は、水タンク51の水面の上の空間と連通可能になっている。
【0030】
空気抜き穴31には、空気抜き穴メッシュ32が設けられていて、粒状濾材10が濾材収容ケース2と蓋3で形成される内部空間から漏れ出ないように保持している。空気抜きメッシュ32は、蓋3を射出成形する際に、インサート成形によりメッシュクロスを一体化して固定している。射出成形後にメッシュクロスや不織布を超音波溶着によって固定して、空気抜き穴メッシュにしても良い。また、金型にメッシュ形状を形成し、射出成形によってメッシュを形成して空気抜き穴メッシュにしても良い。
【0031】
直立円筒部3Cの内側には、円柱形のシャフト栓33が配設され、その下端近傍はOリング34を介して空気抜き穴31に嵌入するようになっている。なお直立円筒部3Cの上端と流入口メッシュ14A、14Bの水平間距離は、大きいほど好ましい。使い始めの空気抜きをする際、流入口メッシュ14A、14Bの表面張力以上の水頭圧であれば、濾材収容ケース2の内部に水が流入しやすくなる。流入口メッシュ14A、14Bがポリプロピレンのメッシュクロスで、メッシュサイズが150であれば、直立円筒部3Cの上端と流入口メッシュ14A、14Bの水平間距離は、130mm以上であることが好ましい。シャフト栓33の上端近傍には鍔33Aが設けられ、鍔33Aを直立円筒部3Cの上端面に当てることで、シャフト栓33を所定の固定位置に停止できるようになっている。
【0032】
図7は、本発明のさらに別の施形態のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの縦断面図である。この図に示すように、直立円筒部3Cやシャフト栓33を備えない形態であってもよい。樹脂製のキャップ34で空気穴31を覆うように嵌めて、栓をしても良い。
【0033】
図4は、図1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジの吸盤の斜視図である。吸盤23は、お椀状の吸盤部23Aと、横穴23Cを有する軸部23Bとから成る。濾材収容ケース2の外側面の吸盤固定軸22Aを横穴23Cに挿入することで固定される。吸着面、すなわちお椀状の吸盤部の内面がケースの底部から外側に向かう方向に向けられている。吸盤24についても同様に、濾材収容ケース2の外側面の吸盤固定軸22Bを横穴24Cに挿入することで固定される。
【0034】
吸盤の吸着力は、吸盤の外径、円弧径、材質、硬度、表面粗さなどで調整できる。吸盤の外径を7mm以上20mm以下、材質をシリコーンゴム、ゴム硬度を比較的柔らかめの30度以上70度以下の範囲にするなどして、吸盤23の吸着力と吸盤24の吸着力の合計を500gf以上2000gf以下に調整している。これによって浄水カートリッジ1の取り付けも取り外しも容易になっている。吸着力の合計が500gf以上であると、浄水カートリッジ1を水タンクの底に安定して固定でき、シール部材21によるシール性が保てる。吸着力が2000gf以下であると、浄水カートリッジ1を手で引っ張れば、水タンクの底から簡単に取り外せる。そのため、水タンクから浄水カートリッジ1を取り外せなくなったり、吸盤固定軸22Aや22Bを破損させてしまったりすることもない。
【0035】
濾材収容ケース2には、粒状濾材10として粒状・銀添着活性炭とイオン交換体の混合物を使用している。粒状・銀添着活性炭により、水道水中の遊離残留塩素を分解するとともに、カビ臭の原因物質である2メチルイソボルネオールなどの有機物を吸着除去している。イオン交換体により、マグネシウムやカルシウムなどを適度に除去し、硬度を調整している。この浄水をコーヒーの抽出に使うことで、カルキ臭で味を損なうことなく、美味しいコーヒーを飲用できる。粒状・銀添着活性炭から少量の銀イオンが溶出することにより、粒状濾材10に滞留した水で細菌が増殖することを抑制している。
【0036】
濾材収容ケース2と蓋3で形成される内部空間において、粒状濾材10の上部に弾性部材8が設けられている。濾材収容ケース2に粒状濾材10を充填する生産工程において、濾材収容ケース2の開口端から溢れないように充填すると、粒状濾材10の充填上面が開口端から少し下になり空間ができる。しかし、充填完了後、粒状濾材10の上から弾性部材8を載せ、さらに上から蓋3を嵌着させると、弾性部材8が粒状濾材10と蓋3に密着することで空間を埋めることができ、粒状濾材10が空間を動いて偏ることは無い。生産工程において、粒状濾材10の充填量が若干ばらついても、弾性部材8の弾力で空間をしっかりと埋めることができる。弾性部材8としては、ポリオレフィンフォームやシリコーンゴムを使用できる。
【0037】
以上のように構成された浄水カートリッジ1のコーヒーメーカーの水タンクへの装着について説明する。図5は、図1のコーヒーメーカー用浄水カートリッジを搭載したコーヒーメーカーの斜視図である。
【0038】
コーヒーメーカーの水タンク51の底近傍の横断面は略台形や半円形であり、その長尺方向に、水平断面が長丸形である浄水カートリッジ1の長尺方向を合わせるように、底面を下にして挿入する。次に、浄水カートリッジ1の底面中央に設けた浄水流出口12の中心を、水タンク51の底面にある給水口52の中心に合わせ、浄水流出口12を給水口52に被せる。浄水カートリッジ1の底面を水タンク51の底面に近付けるように押すと、浄水カートリッジ1の一対の吸盤23、24が水タンク51の底面に密着して、しっかりと固定される。浄水カートリッジ1の底部の外面に、浄水流出口12の周りを囲むように固定したシール部材21が、外径が大きくなりながら内面が水タンク51に密着してシール機能を発揮し、水タンク51に投入した原水(水道水)と浄水カートリッジ1から流出した浄水は混ざらない。
【0039】
浄水カートリッジ1を、一対の吸盤23、24によって水タンク51の底に装着するので、水タンク51の底近傍の横断面が略台形であっても半円形であっても装着できる。浄水カートリッジ1の形状を水タンク51の内周面形状にぴったりと対応させる必要は無い。すなわち、浄水カートリッジ1は、水タンク51の底近傍の横断面が異なる複数のコーヒーメーカーに対応できる。
【0040】
浄水カートリッジ1を水タンク51の中に装着するので、コーヒーメーカー自体が大型化したり、水タンク51の外側での水漏れ懸念が増したりすることは無い。浄水カートリッジ1の交換において、水タンク51の底部の流出口の下を分解する必要が無く、手間がかからない。
【0041】
次に、浄水カートリッジ1を使用する前の空気抜き操作について説明する。乾燥した粒状活性炭の通水初期には、活性炭の細孔内部の空気と水が入れ替わることによって気泡が大量に発生するが、これが通水の妨げになったり、コーヒーメーカーの吸引ポンプに大きな負荷がかかって故障の原因になったりする。そこで、コーヒーメーカーの水タンク51に浄水カートリッジ1を装着した状態で、浄水カートリッジ1のシャフト栓33を抜き取り、水タンク51に原水(水道水)を注ぎ入れる。原水は、原水流入口11A、11Bから浄水カートリッジ1内に流入し、同時に浄水カートリッジ1内の空気が空気抜き穴31から抜け出る。乾燥した粒状活性炭が水に浸ることで気泡が発生するが、それも空気抜き穴31から抜け出る。浄水カートリッジ1内の空気が全て抜け切った後に、シャフト栓33を蓋3の直立円筒部3Cに差し込んで空気抜き穴31を閉塞する。気密に閉塞することで、空気抜き穴31から不必要に空気が流入することや、空気抜き穴31から水が漏れ出ることを防いでいる。また空気抜き穴31から水が流入することも防いでいる。
【0042】
空気抜き操作が完了したら、所定量の原水(水道水)を水タンク51に注ぎ込んで、コーヒーの抽出を行う。原水が浄水カートリッジ1に流入し、粒状濾材10により、水道水中の遊離残留塩素を分解するとともに、カビ臭の原因物質である2メチルイソボルネオールなどの有機物を吸着除去する。マグネシウムやカルシウムなどを適度に除去し、硬度を調整する。水タンク51の給水口から供給された浄水をコーヒーの抽出に使うことで、味を損なうことなく、美味しいコーヒーを飲用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 浄水カートリッジ
2 濾材収容ケース
3 蓋
3A 筒部
3B 平板部
3C 直立円筒部
4 カートリッジ本体
8 弾性部材
10 粒状濾材
11A 原水流入口
11B 原水流入口
12 浄水流出口
13 流出口メッシュ
14A 流入口メッシュ
14B 流入口メッシュ
15A 仕切り部
15B 仕切り部
21 シール部材
22A 吸盤固定軸
22B 吸盤固定軸
23 吸盤
23A 吸盤部
23B 軸部
23C 横穴
24 吸盤
24C 横穴
31 空気抜き穴
32 空気抜き穴メッシュ
33 シャフト栓(筒状部)
33A 鍔
34 キャップ
51 水タンク
52 給水口
101 浄水カートリッジ
102 濾材収容ケース
103 蓋
103A 筒部
103B 平板部
111A 原水流入口
111B 原水流入口
112 浄水流出口
121 シール部材
123 吸盤
124 吸盤
131 空気抜き穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7