(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】混合比算出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 25/18 20060101AFI20240214BHJP
G01N 27/18 20060101ALI20240214BHJP
G01N 27/22 20060101ALI20240214BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20240214BHJP
G01N 29/024 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G01N25/18 K
G01N27/18
G01N27/22 Z
G01N27/04 Z
G01N29/024
(21)【出願番号】P 2020115607
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2019152361
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 慎也
(72)【発明者】
【氏名】神山 進
(72)【発明者】
【氏名】叶 肇
(72)【発明者】
【氏名】中尾 秀之
(72)【発明者】
【氏名】半田 憲一
【審査官】目黒 大地
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/037209(WO,A1)
【文献】特表2002-543385(JP,A)
【文献】特開2017-194390(JP,A)
【文献】特表2004-514138(JP,A)
【文献】特開平08-050109(JP,A)
【文献】国際公開第2017/126269(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00-25/72
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
G01N 29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3種以上の流体を含む混合流体の混合比を算出する混合比算出装置であって、
前記混合流体を加熱する第1発熱部と、
前記混合流体の所定の熱的特性値の基礎情報を検出する基礎情報検出部と、
前記混合流体における前記流体の混合比を算出する混合比算出部と、
を備え、
前記基礎情報検出部は、
前記混合流体に温度差を生じさせる第2発熱部と、
前記混合流体に生じる温度差に対応する信号を出力する温度差検出部と、
を有し、
前記混合比算出部は、
前記第1発熱部によって前記混合流体を第1温度とし、
前記第1発熱部によって前記第1温度とされた前記混合流体に対する
前記温度差検出部の出力に基づいて前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値を取得し、
前記第1発熱部によって前記混合流体を、前記第1温度とは異なる第2温度とし、
前記第1発熱部によって前記第2温度とされた前記混合流体に対する
前記温度差検出部の出力に基づいて前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値を取得し、
前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値と前記混合流体に含まれる第1流体の前記混合流体における混合比との関係を規定する第1関係情報を取得し、
前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値と前記第1流体の前記混合流体における混合比との関係を規定する第2関係情報を取得し、
前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値と、前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値と、前記第1関係情報と、前記第2関係情報とに基づいて、前記混合流体における前記流体の混合比を算出
し、
前記第1発熱部、前記第2発熱部及び前記温度差検出部は、同一チップに形成され、
前記第2発熱部が前記第1発熱部の機能を有することを特徴とする混合比算出装置。
【請求項2】
前記混合流体は、3種の前記流体からなることを特徴とする請求項1に記載の混合比算出装置。
【請求項3】
前記混合流体は、4種以上の前記流体からなり、かつ、疑似的に1種の流体として前記
混合比の算出が可能な疑似成分流体を構成する2種以上の前記流体を含み、
前記混合流体は、前記流体及び前記疑似成分流体を含む3種からなることを特徴とする請求項1に記載の混合比算出装置。
【請求項4】
前記疑似成分流体は、前記熱的特性値が同じ又は近似する、2種以上の前記流体から構成されることを特徴とする請求項3に記載の混合比算出装置。
【請求項5】
前記疑似成分流体は、前記混合流体における混合比が同じ又は近似する、2種以上の前記流体から構成されることを特徴とする請求項3に記載の混合比算出装置。
【請求項6】
4種以上の前記流体は、前記混合流体における混合比が所定値以下であり、前記混合比を算出する対象から除かれる前記流体を含むことを特徴とする請求項3に記載の混合比算出装置。
【請求項7】
前記混合比算出部は、
前記温度差検出部の出力を前記混合流体の前記熱的特性値に変換する変換情報を取得し、
前記変換情報に基づいて、前記温度差検出部の出力を、前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値に変換し、
前記変換情報に基づいて、前記温度差検出部の出力を、前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値に変換することを特徴とする請求項
1に記載の混合比算出装置。
【請求項8】
前記混合比算出部は、
前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値として、前記第1温度とされた前記混合流体に対する前記温度差検出部の出力を用い、
前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値として、前記第2温度とされた前記混合流体に対する前記温度差検出部の出力を用いることを特徴とする請求項
1に記載の混合比算出装置。
【請求項9】
前記温度差検出部は、前記第2発熱部からの距離が異なる位置に配置される第1温度差検出部及び第2温度差検出部を含むことを特徴とする請求項
1に記載の混合比算出装置。
【請求項10】
前記第1発熱部は、前記混合流体を前記第1温度とする第1温度加熱部と前記混合流体を前記第2温度とする第2温度加熱部とを含むことを特徴とする請求項
1に記載の混合比算出装置。
【請求項11】
前記混合流体の温度を検知する温度検知部を有することを特徴とする請求項
1乃至
10のいずれか1項に記載の混合比算出装置。
【請求項12】
前記熱的特性値は、熱伝導率、電気伝導率、誘電率又は音速のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の混合比算出装置。
【請求項13】
前記流体は、気体又は液体であることを特徴とする請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の混合比算出装置。
【請求項14】
酸素、窒素及びアルゴンを含む混合気体から酸素が濃縮された混合気体における混合比としてのアルゴン濃度を算出することを特徴とする請求項1乃至
13のいずれか1項に記載の混合比算出装置。
【請求項15】
前記第1関係情報は、前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値と前記第1
流体の前記混合流体における混合比との関係を規定する関係式の係数であり、
前記第2関係情報は、前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値と前記第1流体の前記混合流体における混合比との関係を規定する関係式の係数であることを特徴とする請求項1乃至
14のいずれか1項に記載の混合比算出装置。
【請求項16】
前記第1関係情報は、前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値と前記第1流体の前記混合流体における混合比とを関係付けた曲線であり、
前記第2関係情報は、前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値と前記第1流体の前記混合流体における混合比とを関係付けた曲線であることを特徴とする請求項1乃至
15のいずれか1項に記載の混合比算出装置。
【請求項17】
前記第1発熱部を前記混合流体の混合比を算出するときに発熱させることを特徴とする請求項1乃至
16のいずれか1項に記載の混合比算出装置。
【請求項18】
3種以上の流体を含む混合流体の混合比を算出する混合比算出装置であって、
前記混合流体を加熱する第1発熱部と、
前記混合流体の所定の熱的特性値の基礎情報を検出する基礎情報検出部と、
前記混合流体における前記流体の混合比を算出する混合比算出部と、
を備え、
前記基礎情報検出部は、
前記混合流体に温度差を生じさせる第2発熱部と、
前記混合流体に生じる温度差に対応する信号を出力する温度差検出部と、
を有し、
前記混合比算出部は、
前記第1発熱部によって前記混合流体を第1温度とし、
前記第1発熱部によって前記第1温度とされた前記混合流体に対する前記温度差検出部の出力に基づいて前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値を取得し、
前記第1発熱部によって前記混合流体を、前記第1温度とは異なる第2温度とし、
前記第1発熱部によって前記第2温度とされた前記混合流体に対する前記温度差検出部の出力に基づいて前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値を取得し、
前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値と前記混合流体に含まれる第1流体の前記混合流体における混合比との関係を規定する第1関係情報を取得し、
前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値と前記第1流体の前記混合流体における混合比との関係を規定する第2関係情報を取得し、
前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値と、前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値と、前記第1関係情報と、前記第2関係情報とに基づいて、前記混合流体における前記流体の混合比を算出し、
前記第1発熱部、前記第2発熱部及び前記温度差検出部は、同一チップに形成され、
前記第1発熱部は、前記混合流体を前記第1温度とする第1温度加熱部と前記混合流体を前記第2温度とする第2温度加熱部とを含むことを特徴とする混合比算出装置。
【請求項19】
前記混合流体の温度を検知する温度検知部を有することを特徴とする請求項18に記載の混合比算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合比算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2種以上の成分が混合された流体のうちの特定の成分の成分比を特定する機能を有する装置が提案されていた(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0003】
しかし、これらの装置はいずれも2種の混合ガスを対象とするものである。
【0004】
例えば、
図22Aの酸素と窒素(アルゴン0%)のように熱的性質の異なる2種の混合ガスについては、混合ガスの熱伝導率は酸素濃度に対して一義的に決まる。このため、熱的性質の一種である熱伝導率を熱式のセンサによって検出すれば、センサの出力から、これに一対一対応する酸素濃度を特定することができる。
【0005】
しかし、
図22Bに示すように、酸素と窒素に加えて濃度不明のアルゴンを含む3種の成分からなる混合ガスについて、混合ガスの熱伝導率をセンサによって検出しても、センサの同一の出力に対応する酸素濃度は、アルゴンの濃度にも依存するため一義的に決まらない。
図22Bは、酸素、窒素及びアルゴンからなる混合ガスの成分と熱伝導率を検出するためのセンサの出力との関係を、横軸に酸素濃度、縦軸にセンサ出力をとって示したグラフである。ここでは、プロットした値をX字の印で示し、実線で表示される線が、アルゴンが0%(すなわち、混合ガスが酸素と窒素のみからなる)の場合を示す。そして、プロットした値を三角の印で示し、破線で表示される線が、アルゴンが3%の場合を示す。また、プロットした値を菱形の印で示し、二点鎖線で表示される線が、アルゴンが4.17%の場合を示し、プロットされる値を正方形で示し、一点鎖線で表示された線が、アルゴンが5%の場合を示す。
図22Bにおいて、破線で示すようなセンサの出力が得られた場合に、酸素濃度との関係を示す曲線と破線との交点の横軸の値、すなわち、酸素濃度は、アルゴンの濃度に応じて異なる値となる。この例では、センサの出力に対応する酸素濃度は、アルゴンの濃度に応じて、a1,a2,a3,a4の4つの値をとり得ることとなるため、酸素濃度を一義的に決定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-090317号公報
【文献】特開2006-275608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、3種以上の成分からなる混合流体の成分比を算出することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明は、
3種以上の流体を含む混合流体の混合比を算出する混合比算出装置であって、
前記混合流体を加熱する第1発熱部と、
前記混合流体の所定の熱的特性値の基礎情報を検出する基礎情報検出部と、
前記混合流体における前記流体の混合比を算出する混合比算出部と、
を備え、
前記混合比算出部は、
前記第1発熱部によって前記混合流体を第1温度とし、
前記第1温度とされた前記混合流体に対する前記基礎情報検出部の検出結果に基づいて前記第1温度における前記混合流体の所定の熱的特性値を取得し、
前記第1発熱部によって前記混合流体を、前記第1温度とは異なる第2温度とし、
前記第2温度とされた前記混合流体に対する前記基礎情報検出部の検出結果に基づいて前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値を取得し、
前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値と前記混合流体に含まれる第1流体の前記混合流体における混合比との関係を規定する第1関係情報を取得し、
前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値と前記第1流体の前記混合流体における混合比との関係を規定する第2関係情報を取得し、
前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値と、前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値と、前記第1関係情報と、前記第2関係情報とに基づいて、前記混合流体における前記流体の混合比を算出することを特徴とする混合比算出装置である。
【0009】
ある温度における混合流体の熱的特性値と混合流体に含まれる第1流体の混合比との関係が分かっていても、この関係自体が混合流体に含まれる他の流体の混合比に依存して変化するために、混合流体の熱的特性値を取得しても、混合流体の混合比を算出することができなかった。しかし、異なる2つの温度における混合流体の熱的特性値と第1流体の混合比との関係が分かれば、これら2つの温度のいずれにおいても第1流体の混合比は共通であるから、これら2つの温度における混合流体の熱的特性値を取得すれば、それぞれの熱的特性値に、第1流体の共通の混合比が対応するという条件により、他の流体の如何なる混合比に対応する関係が妥当するかを特定することができる。従って、このような条件を満たす第1流体の混合比と他の流体の混合比が特定され、残り1種類の流体を含め3種類以上の成分を含む混合流体の混合比(成分比)を算出することが可能となる。
【0010】
本発明においては、混合流体を加熱する第1発熱部によって、混合流体の温度を第1温度と、第1温度とは異なる第2温度とする。そして、混合流体の所定の熱的特性値を取得する構成として、混合流体の所定の熱的特性値の基礎情報を検出する基礎情報検出部と、混合比算出部とを備える。ここでは、混合比算出部は、第1発熱部によって混合流体を第1温度とし、第1温度とされた混合流体に対する基礎情報検出部の検出結果に基づいて、第1温度における混合流体の熱的特性値を取得する。また、混合比算出部は、第1発熱部によって混合流体を第温度とし、第2温度とされた混合流体に対する基礎情報検出部の検出結果に基づいて、第2温度における混合流体の熱的特性値を取得する。混合比算出部は、第1温度における混合流体の熱的特性値と混合流体に含まれる第1流体の混合流体における混合比との関係を規定する第1関係情報と、第2温度における混合流体の熱的特性値と混合流体に含まれる第1流体の混合流体における混合比との関係を示す第2関係情報を取得しておく。そして、第1温度における混合流体の熱的特性値と、第2温度における混合流体の熱的特性値と、第1関係情報と、第2関係情報とに基づき、上述の原理により混合流体における第1流体を含む流体の混合比を算出する。ここで、所定の熱的特性値とは、熱(温度)に依存して値が変化する流体の特性の値である。また、基礎情報とは基礎情報検出部により検出し得る情報であり、基礎情報検出部の検出結果に対して、所定の算出式や所定の変換テーブル等を用いた所定の処理を行うことにより上述の所定の熱的特性値を取得し得る熱的特性値の基礎となる情報である。また、基礎情報検出部によって検出された基礎情報を、熱的特性値として用いてもよい。
【0011】
本発明においては、
前記混合流体は、3種の前記流体からなるようにしてもよい。
【0012】
本発明では、3種以上の流体を含む混合流体に対して混合比を算出するが、3種類の流
体からなる混合流体について、それぞれの流体の濃度を算出し、混合流体の混合比を算出することができる。
【0013】
本発明においては、
前記混合流体は、4種以上の前記流体からなり、かつ、疑似的に1種の流体として前記混合比の算出が可能な疑似成分流体を構成する2種以上の前記流体を含み、
前記混合流体は、前記流体及び前記疑似成分流体を含む3種からなるようにしてもよい。
【0014】
これによれば、4種以上の流体からなる混合流体に対して、疑似的に1種の流体として混合比の算出が可能な疑似成分流体を構成する2種以上の流体を含むことにより、混合流体が、2種の流体と1種の疑似成分流体の計3種からなり、又は、1種の流体と2種の疑似成分流体の計3種からなるものとして扱うことができる。すなわち、4種以上の流体からなる混合流体を、3種の流体からなる混合流体のように扱い、混合比の算出を行うことができる。疑似成分流体を構成する2種以上の流体は、限定されない。また、疑似成分流体を構成する流体の種類は2種に限られず、3種以上の流体から1種の疑似成分流体を構成してもよい。
【0015】
また、本発明においては、
前記疑似成分流体は、前記熱的特性値が同じ又は近似する、2種以上の前記流体から構成されるようにしてもよい。
【0016】
これによれば、熱的特性値が同じ又は近似する、2種以上の流体から疑似流体成分流体を構成するので、熱的特性値が同じ又は近似する2種以上の流体を1種の流体と同じように扱い、3種の流体からなる混合流体と同様に混合比を算出することができる。
【0017】
また、本発明においては、
前記疑似成分流体は、前記混合流体における混合比が同じ又は近似する、2種以上の前記流体から構成されるようにしてもよい。
【0018】
これによれば、混合流体における混合比が同じ又は近似する、2種以上の流体から疑似成分流体を構成するので、混合比が同じ又は近似する2種以上の流体を1種の流体と同じように扱い、3種の流体からなる混合流体と同様に混合比を算出することができる。疑似成分流体を構成する2種以上の流体の混合比は、本発明によって算出されるものとは異なり、仕様等に基づいて得られる値であればよい。
【0019】
また、本発明においては、
4種以上の前記流体は、前記混合流体における混合比が所定値以下であり、前記混合比を算出する対象から除かれる前記流体を含むようにしてもよい。
【0020】
これによれば、混合流体に含まれる4種以上の流体のうち、混合流体における混合比が所定値以下である流体については、本発明によって混合比を算出する対象となる流体から除き、他の流体を3種の流体からなる混合流体と同様に扱い、混合比を算出することができる。所定値は、適宜設定することができる。ここで、他の流体は、3種の流体であってもよいし、疑似成分流体を構成する2種以上の流体を含めて3種と扱われる流体であってもよい。また、混合流体に含まれる他の流体と熱的特性値が大きく異なる場合には、混合流体における混合比が所定値以下であっても、混合比を算出する対象から除かないようにしてもよい。また、所定値以下か否かを判断する際の混合比は、本発明によって算出されるものとは異なり、仕様等に基づいて得られる値であればよい。
【0021】
また、本発明においては、
前記基礎情報検出部は、
前記混合流体に生じる温度差に対応する信号を出力する温度差検出部と、
前記混合流体に温度差を生じさせる第2発熱部と、
を有し、
前記混合比算出部は、
前記第2発熱部によって前記混合流体に温度差を生じさせ、
前記第1発熱部によって前記第1温度とされた前記混合流体に対する前記温度差検出部の出力に基づいて前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値を取得し、
前記第1発熱部によって前記第2温度とされた前記混合流体に対する前記温度差検出部の出力に基づいて前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値を取得するようにしてもよい。
【0022】
これによれば、基礎情報検出部は、混合流体に温度差を生じさせる第2発熱部と、混合流体の熱的特性に応じて、混合気体に生じる温度差に対応する信号を出力する温度差検出部とを有する。そして、混合比算出部は、第1発熱部によって第1温度とされた混合流体に、第2発熱部によって局所的な温度差(温度分布)を生じさせ、温度差検出部の出力に基づいて第1温度における混合流体の熱的特性値を取得する。また、混合比算出部は、第1発熱部によって第2温度とされた混合流体に、第2発熱部によって局所的な(温度分布)を生じさせ、温度差検出部の出力に基づいて第2温度における混合流体の熱的特性値を取得する。温度差検出部は、混合流体に生じる温度差に対応する信号を出力するので、混合流体の熱的特性として、熱伝導率のような温度分布に関係する特性を採用することができる。
【0023】
また、本発明においては、
前記混合比算出部は、
前記温度差検出部の出力を前記混合流体の前記熱的特性値に変換する変換情報を取得し、
前記変換情報に基づいて、前記温度差検出部の出力を、前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値に変換し、
前記変換情報に基づいて、前記温度差検出部の出力を、前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値に変換するようにしてもよい。
【0024】
これによれば、第1関係情報及び第2関係情報として、温度差検出部の特性によらない、混合流体の熱的特性値と第1流体の混合比との関係に基づいて、混合流体の混合比を算出することができる。
【0025】
また、本発明においては、
前記混合比算出部は、
前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値として、前記第1温度とされた前記混合流体に対する前記温度差検出部の出力を用い、
前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値として、前記第2温度とされた前記混合流体に対する前記温度差検出部の出力を用いるようにしてもよい。
【0026】
これによれば、温度差検出部の出力を別の熱的特性値に変換するための情報が不要となるので、これらの情報のための記憶装置の容量を減らすことができる。
【0027】
また、本発明においては、
前記第1発熱部、前記第2発熱部及び温度差検出部は、同一チップに形成されているようにしてもよい。
【0028】
このようにすれば、第1発熱部及び第2発熱部を同一プロセスで形成することができ、製造コストを下げることができる。また、第1発熱部を第2発熱部及び温度差検出部と同じチップ上に形成するので小型化が可能となる。第1発熱部及び第2発熱部により加熱する領域は必要最小となる温度差検出部の近傍に限定されるので、省電力化が可能となる。
【0029】
また、前記第2発熱部が前記第1発熱部の機能を有するようにしてもよい。
【0030】
このようにすれば、構造を簡略化することができるので、低コスト化と小型化が可能となる。
【0031】
また、前記温度差検出部は、前記第2発熱部からの距離が異なる位置に配置される第1温度差検出部及び第2温度差検出部を含むようにしてもよい。
【0032】
このようにすれば、第2発熱部から遠い低温領域に第1温度差検出部を配置し、第2発熱部に近い高温領域に第2温度差検出部を配置することにより、第1温度差検出部と第2温度差検出部とにより、2温度のデータを得ることができる。このため、応答性と精度に優れる。また、第1発熱部の機能を有する第2発熱部の温度の切り替えが不要となるため、制御が簡単になる。
【0033】
また、本発明においては、
前記第1発熱部は、前記混合流体を前記第1温度とする第1温度加熱部と前記混合流体を前記第2温度とする第2温度加熱部とを含むようにしてもよい。
【0034】
このようにすれば、第1温度加熱部と第2温度加熱部により、同時に第1温度と第2温度に対するデータを計測することができ、応答性と精度に優れ、第1発熱部による加熱温度の切り替えが不要となり制御が簡易になる。
【0035】
前記混合流体の温度を検知する温度検知部を有するようにしてもよい。
【0036】
このようにすれば、温度を検知することにより、第1発熱部が無駄な発熱をしないので、省電力化が可能となる。また、第1発熱部が無駄な発熱をしないので、第1発熱部の寿命が延びる。また、温度差検出部の雰囲気温度を一定にできるので、検出結果が環境温度の影響を受けることがなく、温度キャリブレーションのコストが不要となる。
【0037】
また、本発明においては、
前記熱的特性値は、熱伝導率、電気伝導率、誘電率又は音速のいずれかとすることができる。
【0038】
熱的特性値は熱に依存して変化する特性値であり、流体の性質、混合流体に含まれる流体の熱的特性の差等の要因を考慮して、熱伝導率、電気伝導率、誘電率又は音速のいずかを選択することができる。
【0039】
また、本発明においては、
前記流体は、気体又は液体である。
【0040】
このように、本発明は、気体又は流体のいずれに対しても、混合比を算出することができる。
【0041】
また、本発明においては、
酸素、窒素及びアルゴンを含む混合気体から酸素が濃縮された混合気体における混合比としてのアルゴン濃度を算出するようにしてもよい。
【0042】
このようにすれば、酸素、窒素及びアルゴンを含む混合気体としての空気を圧縮機によって圧縮し、圧縮した空気から窒素を吸着して酸素を濃縮する酸素濃縮器において、算出されたアルゴン濃度により窒素の吸着の適否を判断し、窒素の吸着量を最適化するように圧縮機の圧力を制御することにより適切な濃度に酸素を濃縮することができる。
【0043】
また、本発明においては、
前記第1関係情報は、前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値と前記第1流体の前記混合流体における混合比との関係を規定する関係式の係数であり、
前記第2関係情報は、前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値と前記第1流体の前記混合流体における混合比との関係を規定する関係式の係数であるようにすればよい。
【0044】
このようにすれば、関係式の係数のみを取得すれば、第1温度及び第2温度における混合流体の熱的特性値と第1流体の混合比との関係を、関係式の演算により求めることができるので、記憶装置の容量を減らすことができる。
【0045】
また、本発明においては、
前記第1関係情報は、前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値と前記第1流体の前記混合流体における混合比とを関係付けた曲線であり、
前記第2関係情報は、前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値と前記第1流体の前記混合流体における混合比とを関係付けた曲線であるようにしてもよい。
【0046】
このようにすれば、第1温度及び第2温度における熱的特性値と第1流体の混合比との関係を求める演算を簡易化することができる。また、既知の曲線を用いることでノイズに強くなる。
【0047】
前記第1発熱部を前記混合流体の混合比を算出するときに発熱させるようにしてもよい。
【0048】
このようにすれば、第1発熱部を無駄に発熱させないので、省電力化が可能となる。また、第1発熱部の寿命を延ばすことができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、3種以上の成分からなる混合流体の成分比を算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明の適用例に係る混合比算出装置の機能ブロック図である。
【
図2】本発明の適用例に係る混合比算出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施例1に係る混合比算出装置の検出素子を示す図である。
【
図4】本発明の実施例1に係る混合比算出装置の機能ブロック図である。
【
図5】本発明の実施例1における流量測定原理を説明する図である。
【
図6】本発明の実施例1に係る混合比算出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施例1に係る混合ガスの熱伝導率と酸素濃度の関係を示すグラフである。
【
図8】本発明の実施例1に係る混合ガスの熱伝導率と酸素濃度の関係を示すグラフである。
【
図9】本発明の実施例1に係る混合比算出処理の原理を説明するグラフである。
【
図10】本発明の実施例1に係る混合比算出の対象となる混合ガスの成分と熱伝導率を示すグラフである。
【
図11】本発明の実施例1の変更例に係る混合比算出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施例3に係る混合比算出装置の検出素子を示す平面図である。
【
図13】本発明の実施例4に係る混合比算出装置の検出素子を示す平面図である。
【
図14】本発明の実施例4に係る混合比算出装置の機能ブロック図である。
【
図15】本発明の実施例5に係る混合比算出装置の検出素子の平面図である。
【
図16】本発明の実施例6に係る混合比算出装置の検出素子の平面図である。
【
図17】本発明の実施例7に係る酸素濃縮器の概略構成図である。
【
図18】本発明の実施例7に係る酸素濃縮器における吸着の態様について説明する図である。
【
図19】本発明の実施例7に係る混合ガスの熱伝導率と酸素濃度の関係を示すグラフである。
【
図20】本発明の実施例8に係る混合比算出装置の計測部の概略構成を示す図である。
【
図21】本発明の実施例9に係る混合比算出装置の計測部の概略構成を示す図である。
【
図22】従来例に係るセンサ出力と酸素濃度との関係を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
〔適用例〕
以下、本発明の適用例について、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本発明が適用される混合比算出装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。
図2は、混合比算出処理の概略を示すフローチャートである。
【0052】
混合比算出装置1は、3種以上の成分を含む混合流体の混合比を算出する装置である。ここでは、3種の流体からなる混合流体の混合比を算出する場合を例に説明する。混合比算出装置1は、主として計測部10、制御部20、記憶部30、入力部4、出力部5を含んで構成される。計測部10は、混合流体の熱に依存して変化する特性を検知するセンサ11と、混合流体を加熱するヒーター12と、混合流体の流路17を含む。制御部20は、少なくとも混合比算出部22を含む。制御部20は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等
の記憶装置とを含む。ROM等に記憶されたプログラムをRAM等の作業領域に展開してCPUにおいて実行することにより、混合比算出等の所定の目的に合致した各機能を実現する。記憶部30は、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性の記憶装置によって構成される第1記憶部31及び第2記憶部32を含み、混合比算出処理に必要なパラメータ等の情報を記憶する。そして、入力部4は、ユーザの入力を受け付ける手段であり、出力部5は、情報を出力する手段である。
【0053】
熱に依存して変化する特性(以下、「熱的特性」ともいう)が異なる2種類の流体からなる混合流体の場合は、温度に対する熱的特性と混合流体の混合比(成分比)との関係が一義的に定まる。このため、温度に対する熱的特性と混合流体の混合比との関係を予め取得しておけば、流路17に流れる混合流体をヒーター12によって所定温度に加熱し、センサ11によって混合流体の熱的特性を検知することにより、混合流体の混合比を算出することができる。
【0054】
これに対して、混合流体が3種類の流体からなるものであれば、温度に対する熱的特性
と混合流体の混合比との関係が一義的に定まらない。すなわち、ある温度における混合流体の熱的特性と、混合流体に含まれる特定の流体の混合比との関係は、混合流体に含まれる他のいずかの流体の混合比によって異なるので、1つの温度における熱的特性の検知のみでは、特定の流体の混合比を算出することができない。しかし、上述の温度と異なる温度における混合流体の熱的特性を検知すると、それぞれの温度における混合流体の熱的特性値に対応する特定の流体の混合比は同一であるから、この関係を利用すれば、他のいずれかの流体の混合比によって異なる、混合流体に含まれる特定の流体の混合比との関係のうち、いずれの関係が妥当するかが確定できる。従って、いずれかの温度における混合流体の熱的特性値から、特定の流体の混合比を算出することができる。
【0055】
このため、本発明が適用される混合比算出装置1では、
図2に示すような処理手順により、3種類の流体からなる混合流体の混合比を算出している。
【0056】
まず、流路17に混合流体を導入する(ステップS1)。
次に、ヒーター12の温度をT1として混合流体を加熱する(ステップS2)。
そして、制御部20において、センサ11の出力V1と第1記憶部31に記憶されたパラメータとにより、センサ11の出力V1から、温度T1での混合流体の熱的特性値y1を算出する(ステップS3)。
【0057】
次に、ヒーター12の温度をT2として混合流体を加熱する(ステップS4)。
そして、制御部において、センサ11の出力V2と第1記憶部31に記憶されたパラメータとにより、センサ11の出力V2から、温度T2での混合流体の熱的特性値y2を算出する(ステップS5)。
【0058】
次に、制御部20において、ステップS3とステップS5において算出した2つの温度T1,T2での混合流体の熱的特性値と、第2記憶部32に記憶されたパラメータから混合流体の成分を算出する(ステップS6)。
そして、出力部5に混合流体に含まれる各流体の混合比を出力する(ステップS7)。
【0059】
ここで、流体には気体及び液体が含まれ、混合流体は、気体が混合された混合気体であってもよいし、液体が混合された混合液体であってもよい。
また、混合流体の熱的特性は、混合流体に含まれる各流体による差が大きいことが好ましいので、このような差等を考慮し、熱伝導率、音速、電気伝導率、誘電率等の特性から適宜選択することできる。
また、上述の処理では、センサ11の出力から混合流体の熱的特性値を算出していたが、センサ11の出力と混合流体の混合比との関係を予め取得しておけば、混合流体の熱的特性値を算出することなく、混合流体の混合比を算出できる。
【0060】
3種の流体からなる混合流体について説明したが、混合比や、熱的特性値が同じ又は近似する2種以上の流体は、混合比の算出処理の上では、疑似的に1種の流体、すなわち1種の成分として扱うことができる。このため、疑似的に1種の流体として扱うことができる2種以上の流体を疑似成分流体と定義し、疑似成分流体を含む混合流体を、3種の流体からなる混合流体と同様に扱うことにより、上述の発明を、3種以上の流体を含む混合流体についても適用することができる。
【0061】
〔実施例1〕
以下では、本発明の実施例に係る混合比算出装置2について、図面を用いて、より詳細に説明する。ここでは、本発明の基本となる実施例である、3種の流体からなる混合流体の混合比を算出する混合比算出装置2について説明する。
【0062】
<装置構成>
図3Aは、本実施例に係る混合比算出装置2に含まれる検出素子100の一例を示す平面図である。
図3Bは、検出素子の概略構造を示す断面図である。本実施例及び以下の実施例に係る混合比算出装置2は、混合流体の流れを測定する機能を有する流量測定装置としても構成され、例えば、ガスセンサ、ガスフローメーター、酸素濃縮器、呼気検査器にその他医療等の産業機器、組込機器に組み込まれ、流路を通過する流体の量を測定するとともに混合流体の成分比を算出する。
【0063】
また、
図3Aに示すように、本実施例に係る検出素子100は、検出用マイクロヒーター110、第1サーモパイル111及び第2サーモパイル112を備える。検出用マイクロヒーター110は、例えば、ポリシリコンで形成された抵抗体であり、検出素子100の中央部分に設けられる。検出用マイクロヒーター110、第1サーモパイル111及び第2サーモパイル112の上面(紙面手前側)には絶縁薄膜が形成されるが、図では省略している。また、検出素子100は、電極パッド113,113、回路基板114を備える。
図3Bに示すように、第1サーモパイル111及び第2サーモパイル112の下方(紙面奥側)の回路基板114には、キャビティ114aが設けられる。また、検出用マイクロヒーター110、第1サーモパイル111及び第2サーモパイル112の上面には、絶縁薄膜115が形成されている。ここでは、検出用マイクロヒーター110が、本発明の「第2発熱部」に対応する。また、第2サーモパイル112(及び/又は第1サーモパイル111)が、本発明の「混合流体に生じる温度差に対応する信号を出力する温度差検出部」に対応する。そして、検出用マイクロヒーター110と、第2サーモパイル112(及び/又は第1サーモパイル111)とが、本発明の「基礎情報検出部」に対応する。また、第2サーモパイル112(及び/又は第1サーモパイル111)の出力が、本発明の「基礎情報」に対応する。
ここでは、測定対象である気体は、検出素子の上面側を紙面に平行に流される。検出素子は、第1サーモパイル111が気体の流れる方向の上流側、第2サーモパイル112が気体の流れる方向の下流側となるように配置される。
本実施例では、測定対象である気体を加熱するための加熱用ヒーター116は、検出素子に導入される気体の上流側の適宜の位置に、検出素子100のチップとは別に配置される。本実施例では、加熱用ヒーター116が、本発明の「第1発熱部」に対応する。
【0064】
図4は、本発明の混合比算出装置2の機能ブロック図である。
計測部10は、第1サーモパイル111、第2サーモパイル112、検出用マイクロヒーター110、加熱用ヒーター116、ガス流路117を有する。
【0065】
制御部20は、流量算出部21及び混合比算出部22を有する。制御部20は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access
Memory)等の記憶装置とを含む。ROM等に記憶されたプログラムをRAM等の作業領
域に展開してCPUにおいて実行することにより、後述するような、所定の目的に合致した各機能を実現することができる。
【0066】
第1記憶部31及び第2記憶部32は、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性の記憶装置によって構成される。第1記憶部31及び第2記憶部32は、物理的に別個の記憶装置によって構成される場合に限られない。
入力部4は、ユーザの入力を受け付ける手段であり、例えば、タッチパネルディスプレイやキーボード等によって構成される。
出力部5は、測定結果等の情報を出力する手段であり、タッチパネルディスプレイ等の情報を表示して出力する表示部を含むがこれに限られず、外部装置に送信して出力する通信部を含んでもよい。
【0067】
<流量測定原理>
検出素子100を用いた流量測定の原理を説明する。
図5Aは、フローセンサが配置されたガス流路117にガスの流れがない状態で、検出用マイクロヒーター110が起動されている場合の温度分布の一例を模式的に示したものである。
図5Bは、検出素子における熱の流れを回路で表現した熱回路図である。
図5Cは、フローセンサが配置されたガス流路117にガスの流れがある状態で、検出用マイクロヒーター110を起動している場合の温度分布の一例を模式的に示したものである。
【0068】
まず、本発明が適用される熱式のフローセンサにおける気体に流量測定原理の説明に先立ち、
図5Bを参照して、気体の熱伝導率の測定原理について説明する。
【0069】
ここでは、ヒーターの発熱量をI、絶縁薄膜の熱抵抗をRs、サーモパイルの熱抵抗をRt、気体の熱抵抗をRg、サーモパイル両端の温度差をΔTとする。このとき、
図1Bに示された回路において、ガスの流れが無い状態でΔTは以下の式(1)によって表される。
【数1】
このように、サーモパイルの両端の温度差ΔTは、ガスの熱抵抗Rgによって変化することが分かる。従って、両端の温度差ΔTに比例する値を出力するサーモパイルによって、気体の熱抵抗、さらには熱伝導率を算出することができる。
【0070】
次に、熱式のフローセンサにおける気体の流量測定原理を説明する。
フローセンサが配置されたガス流路117にガスの流れがない場合には、検出用マイクロヒーター110からの熱は、検出用マイクロヒーター110を中心として対称に拡散する。このため、第1サーモパイル111と第2サーモパイル112のそれぞれからの出力に差は生じない。一方で、フローセンサが配置されたガス流路117にガスの流れがある場合には、検出用マイクロヒーター110からの熱は、矢印で示すガスの流れの影響を受けて、検出用マイクロヒーター110を中心として対称には広がらず、下流の第2サーモパイル112側へ、より拡散していく。このため、第1サーモパイル111と第2サーモパイル112のそれぞれからの出力に差が生じる。また、ガスの流量が多いほど、第1サーモパイル111と第2サーモパイル112のそれぞれからの出力の差は大きくなる。
【0071】
このような、ガスの流量と、第1サーモパイル111及び第2サーモパイル112からの出力の差との関係は、例えば、下記の式(2)のように表される。
【数2】
ここでは、ΔVは第1サーモパイル111及び第2サーモパイル112からの出力の差、T
Aは環境温度、T
Bはヒーター温度を表す。また、v
fは流体の流速、A及びbは定数である。
本実施例の流量測定装置としても機能する混合比算出装置では、流量算出部21からの指示により、フローセンサに測定対象のガスを導入し、検出用マイクロヒーター110を起動する。そして、第1サーモパイル111及び第2サーモパイル112からの出力を取得し、上述の式に従って測定対象のガスの流量を算出する。
【0072】
<混合比算出処理>
図6のフローチャートを参照して、混合比の算出処理について説明する。なお、以下の説明において、酸素及びアルゴンを含む混合ガスに言及する場合には、特に断らない限り、酸素濃度は混合ガス全体量に対する酸素量を示し、アルゴン濃度は酸素量に対するアルゴン量を示すものとする。
【0073】
まず、混合比の算出処理に先立ち、いくつかのアルゴン濃度に対して、酸素濃度と第2サーモパイル112の出力値から算出される混合ガスの熱伝導率との関係を取得しておく。そして、各アルゴン濃度に対する、酸素濃度と第2サーモパイル112の出力値から算出される混合ガスの熱伝導率との関係を規定するパラメータを第2記憶部32に記憶しておく。本実施例では、酸素濃度と第2サーモパイル112の出力値から算出される混合ガスの熱伝導率との関係を規定するパラメータが、本発明の「第2関係情報」に対応する。なお、第2サーモパイル112の出力から、混合ガスの熱伝導率を算出するためのパラメータは第1記憶部31に記憶しておく。ここで、第2サーモパイル112の出力から混合ガスの熱伝導率を算出するためのパラメータは、本発明の「第1関係情報」に対応する。また、本実施例では、熱伝導率が、本発明の「熱的特性」に対応する。いくつかのアルゴン濃度は、離散的に変化するアルゴン濃度に限られず、連続的に変化するアルゴン濃度であってもよい。
上述の、いくつかのアルゴン濃度に対して、酸素濃度と第2サーモパイル112の出力値から算出される混合ガスの熱伝導率との関係を取得し、各アルゴン濃度に対する、酸素濃度と第2サーモパイル112の出力値から算出される混合ガスの熱伝導率との関係式を規定するパラメータを第2記憶部に記憶する処理は、加熱用ヒーターの2つの温度(ここではT1及びT2とする)に対して行っておく。
【0074】
このように、加熱用ヒーター116の2つの温度T
1及びT
2に対して、取得された、3つのアルゴン濃度に対する、酸素濃度と第2サーモパイル112の出力値から算出される混合ガスの熱伝導率との関係の一例を
図7に示す。ここでは、3つのアルゴン濃度に対する。酸素濃度と熱伝導率との関係のみを例示しているが、アルゴン濃度の数はこれに限られない。
ここでは、加熱用ヒーター116の温度T
1及びT
2に対して、アルゴン濃度z
1,z
2,z
3に対する、酸素濃度と第2サーモパイル112の出力値から算出される混合ガスの熱伝導率との関係が取得されている。アルゴン濃度z
1%に対する酸素と混合ガスの熱伝導率との関係を実線、z
2%に対する関係を点線、z
3%に対する関係を一点鎖線で示している。
【0075】
以下に、混合比算出処理について説明する。
まず、混合比算出部22は、フローセンサが配置されたガス流路117に混合ガスを導入する(ステップS11)。
次に、混合比算出部22は、検出用マイクロヒーター110を起動させるとともに、加熱用ヒーター116を温度T1に加熱させる(ステップS12)。他の実施例を含め、以下の説明では、混合流体(混合ガス)の温度を第1温度であるT1と第2温度であるT2とする際に、いずれも加熱用ヒーター116によって加熱する場合について説明する。しかし、いずれか低い方の温度(例えば、T1)を環境温度(室温)とし、このときには加熱用ヒーター116を発熱させず、T2とする場合にのみ加熱用ヒーター116を発熱させるように制御してもよい。
【0076】
そして、混合比算出部22は、第2サーモパイル112の出力値V
1を取得し、この出力値V
1と第1記憶部31に記憶されたパラメータから、温度T
1での混合ガスの熱伝導率を算出する(ステップS13)。第1記憶部31には、第2サーモパイル112の出力値を混合ガスの熱伝導率に変換する係数等の第2サーモパイル112に固有のパラメータが記憶されている。ここでは、第1記憶部31に記憶されたパラメータが、本発明の「変
換情報」に対応する。
このようにして算出された熱伝導率をy
1とする。このとき、
図8に示すように、第2記憶部32に記憶された混合ガスの熱伝導率と酸素濃度との関係に関する情報によれば、加熱用ヒーター116の温度がT
1である場合に、アルゴン濃度z
1%であれば酸素濃度はx
1%に対応し、アルゴン濃度がz
2%であれば酸素濃度はx
2%に対応し、アルゴン濃度がz
3%であれば酸素濃度はx
3%に対応する。すなわち、加熱用ヒーター116の温度がT
1である場合の混合ガスの熱伝導率y
1のみからでは、これに対応する酸素濃度を算出することができない。
【0077】
次に、混合比算出部22は、検出用マイクロヒーター110を起動させた状態で、加熱用ヒーター116を温度T2に加熱させる(ステップS14)。
そして、混合比算出部22は、第2サーモパイルの出力値V2を取得し、この出力値V2と第1記憶部31に記憶されたパラメータから、混合ガスの熱伝導率を算出する。このようにして算出された熱伝導率をy2とする(ステップS15)。
【0078】
ここで、加熱用ヒーター116の温度がT
2であり、アルゴン濃度がz
1,z
2,z
3である場合の、酸素濃度と第2サーモパイル112の出力値から算出される混合ガスの熱伝導率との関係を第1記憶部31から取得する。これらが、
図7の上方の3本の曲線である。
【0079】
そして、混合比算出部22は、混合ガスのT
1及びT
2の2温度での熱伝導率と、第2記憶部32に記憶されたパラメータから、混合ガスの混合比を算出する(ステップS16)。
このとき、第2記憶部32に記憶されているパラメータは、
図7に示すような、アルゴン濃度に依存する、T
1及びT
2の2温度での混合ガスの熱伝導率と酸素濃度との関係である。
図9に示すように、温度T
1における混合ガスの熱伝導率y
1に対応する酸素濃度と、温度T
2における混合ガスの熱伝導率y
2に対する酸素濃度は同一であるから、各アルゴン濃度に対応する曲線のうち、第2サーモパイル112の出力から算出される混合ガスの熱伝導率y
2に対応する酸素濃度が、熱伝導率y1に対応する酸素濃度と同一のx
2となる曲線を抽出する。そしてこの曲線に対応するアルゴン濃度z
2が、測定対象の混合ガスのアルゴン濃度として算出される。また、温度T
1における熱伝導率がy
1となり温度T
2における熱伝導率がy
2となるx
2が、測定対象の混合ガスの酸素濃度として算出される。このようにして、3種の混合ガスに対する混合比を算出することができる。
【0080】
上述したように、本実施例では、異なるアルゴン濃度に対する、混合ガスの熱伝導率と酸素濃度との関係を2つの温度について保持していれば、それぞれの温度での混合ガスの熱伝導率を算出し、これに対応する酸素濃度が等しくなる酸素濃度として、混合ガスの酸素濃度を算出することができる。そして、それぞれの温度において混合ガスの熱伝導率に対して酸素濃度が上述の値となるような関係に対応するアルゴン濃度が混合ガスのアルゴン濃度として算出される。
【0081】
以下に、3種の混合ガスの混合比を算出する上述の処理の理論的背景について説明する。
酸素濃度(%)をx、第2サーモパイル112の出力に基づいて算出される混合ガスの熱伝導率をyとし、酸素、アルゴン、窒素の3成分からなる混合ガスについて、加熱用ヒーター116の温度T
1で熱伝導率y
1が得られ、温度T
2で熱伝導率y
2が得られたとする。
このとき、y
1,y
2とxとの関係は以下の式(3)及び式(4)で表される。
【数3】
【数4】
ここで、酸素濃度(%)が0のときに、加熱用ヒーター116の温度T
1で熱伝導率y
01が得られ、温度T
2で熱伝導率y
02が得られたとする。上記式にx=0を代入すれば、y
01=c
1、y
02=c
2となるから、未知数はx,a
1,b
1,a
2,b
2の5個となる。
ただし、a
1,b
1,a
2,b
2は全てアルゴン濃度zの関数なので、a
1=f
a1(z),b
1=f
b1(z),a
2=f
a2(z),b
2=f
b2(z)の各関数を予め求めておけば、連立方程式の未知数はxとzの2個にあるので、これらの連立方程式を解くことにより、未知数である酸素濃度及びアルゴン濃度を求めることが可能となる。
【0082】
酸素、窒素、アルゴンの3相ガスにおいては、a
1,a
2はzに依存せずほぼ一定であり、b
1,b
2は以下の式(5)及び式(6)ようにzに対して1次の相関で近似できることが発明者らの研究によってわかった。すなわち、
【数5】
【数6】
これらの式を上述のy
1,y
2に関する式(3)及び式(4)に代入して整理すると、
【数7】
【数8】
従って、熱伝導率y
1とy
2とが得られれば、式(7)及び式(8)からそれぞれ酸素濃度xとアルゴン濃度zが得られる。
【0083】
上述のように、第2記憶部32に記憶された、2つの温度での、アルゴン濃度に依存する、混合ガスの熱伝導率と酸素濃度との関係であるパラメータは、熱伝導率から混合ガスの混合比を算出する式の係数として与えることができる。
【0084】
また、第2記憶部32に記憶されたパラメータは、
図7に模式的に示したような、2つの温度での、アルゴン濃度に依存する、混合ガスの熱伝導率と酸素濃度との関係を示す曲線であってもよい。
このように、第2記憶部32に、2つの温度での、アルゴン濃度に依存する、混合ガスの熱伝導率と酸素濃度との関係を示す曲線を、パラメータとして記憶しておくことにより、混合比算出の演算を簡易化することができる。また、既知の曲線を用いることで、ノイズに強くなる。
【0085】
<4種以上の流体からなる混合流体の取り扱い>
上述の実施例1では、本発明の基本的な実施例として、3種の流体からなる混合流体の混合比を算出する混合比算出装置2について説明した。
ここでは、混合流体が、4種以上の流体からなる混合流体である場合に、混合比を算出し得る混合比算出装置2について説明する。4種以上の流体からなる混合流体の取り扱いは、以下の変形例及び各実施例にも同様に適用できる。混合比算出装置2の構成及び混合比算出処理の手順は、実施例1と共通であるため、詳細な説明は省略する。
【0086】
ここでも、流体として、気体を例に説明する。
LPガスはプロパンとブタンの混合ガスであり、都市ガスは、メタンと少量のエタンの混合ガスである。これらの混合ガスにさらに水素が混入している場合には、全部で5成分、すなわち、5種のガスからなる混合ガスとなる。
【0087】
図10に、この混合ガスに含まれる燃料ガス(LPガス及び都市ガス)の成分及び水素の熱伝導率を示す。この混合ガスは、(i)熱伝導率が高い水素、(ii)熱伝導率が中程
度の都市ガス、(iii)熱伝導率が低いLPガスからなる。すなわち、熱伝導率を基準と
して、熱伝導率が同じ又は近似する2種以上の気体を疑似的に1成分の気体であるとみなすと、5種のガスからなる混合ガスを、3種のガスからなる混合ガスとみなすことができる。疑似的に1成分の気体(ガス)と扱うことができる2種以上の気体(ガス)を疑似成分気体(ガス)と定義すると、メタンとエタンの2成分からなる都市ガスは、1種の疑似成分ガスであり、プロパンとブタンの2成分からなるLPガスも、1種の疑似成分ガスを構成する。
【0088】
このようにすれば、5種のガスからなる混合ガスを、3種のガスからなる混合ガスとして、混合比算出装置2の算出対象とすることにより、水素の混合比(濃度)を算出することができる。また、混合比算出装置2において、疑似成分ガスである都市ガス及びLPガスの混合比を算出することにより、都市ガスとLPガスの判別を行うこともできる。
【0089】
このように、4種以上の気体からなる混合気体を、3種の気体と同様に扱い、混合比算出装置2における混合比の算出対象とする方法は、上述のように、熱伝導率が同じ又は近似する2種以上の気体から疑似成分気体を構成する場合に限られない。
例えば、混合比(成分比)が同じ又は近似する2種以上の気体をまとめて、疑似成分気体を構成することもできる。
また、混合比(成分比)が異なる場合であっても、熱伝導率のような熱的特性値が同じ又は近似する2種以上の気体をまとめて、疑似成分気体を構成することもできる。
また、混合比(成分比)が所定値よりも小さい気体については、熱伝導率等の熱的特性値が極端に違わない限り、混合比を算出する処理においては無視することもできる。混合比の大きさを判定する所定値は、適宜設定することができる。
【0090】
<変形例>
次に、実施例1の変形例について説明する。実施例1と同様の構成については、同様の符号を用いて説明を省略する。
本変形例に係る検出素子の構成は、実施例1に係る検出素子100と同様である。本変形例では、加熱用ヒーター116を混合ガスの濃度検出時のみ発熱させる。
このようにすれば、加熱用ヒーター116を無駄に加熱することがないので、省電力化
が可能である。また、無駄に加熱することがないので、加熱用ヒーター116の寿命を延ばすことができる。
本変形例における加熱用ヒーター116の制御は、後述する実施例2~4のそれぞれの加熱用ヒーターについても同様に適用できる。
【0091】
<他の変形例>
次に、実施例1の他の変形例について説明する。実施例1と同様の構成については、同様の符号を用いて説明を省略する。
図11のフローチャートを参照して、本変形例の混合比算出処理について説明する。
実施例1では、第2サーモパイル112の出力値と、第1記憶部31に記憶されたパラメータから、混合ガスの熱伝導率を算出していた。本変形例では、第2サーモパイル112の出力から熱伝導率を介することなく、混合ガスの混合比を算出する。この場合には、混合比算出装置2は、第2サーモパイル112の出力値から、混合ガスの熱伝導率を算出するためのパラメータを記憶した第1記憶部31を備えなくともよい。
【0092】
ステップS11及びステップS12は、実施例1と同様である。次に、本変形例では、混合比算出部22は、第2サーモパイル出力V1を取得する(ステップS23)。
続くステップS14は実施例1と同様である。
次に、混合比算出部22は、第2サーモパイル出力V2を取得する(ステップS25)。
そして、混合比算出部22は、混合ガスの2温度での第2サーモパイル出力と、第2記憶部32に記憶されたパラメータから混合ガスの混合比を算出する(ステップS26)。ここで、第2記憶部32には、混合ガスの異なる2温度での第2サーモパイル112の出力値を混合ガスの混合比に変換する係数等の、第2サーモパイル112に固有のパラメータが記憶されている。
そして、実施例1と同様に、出力部5に混合ガスの混合比を出力する(ステップS17)。
【0093】
このようにすれば、第1記憶部31を備える必要がなく、第2記憶部32に記憶しておくのは、混合ガスの異なる2温度での第2サーモパイル112の出力値を混合ガスの混合比に変換する係数等のパラメータだけでよいので、記憶装置の容量を減らすことができる。
【0094】
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。実施例1と同様の構成については、同様の符号を用いて説明を省略する。
本変形例に係る検出素子の構成は、実施例1に係る検出素子100と同じである。
実施例1では、検出素子100の検出用マイクロヒーター110とは別に加熱用ヒーター116を設けていたが、本実施例では、検出用マイクロヒーター110に、加熱用ヒーターの機能を担わせる。すなわち、流量検出のために測定対象気体を加熱するための検出用マイクロヒーター110を、混合比算出のために測定対象気体を加熱するためにも用いる。
【0095】
このようにすれば、検出素子の構造を簡略化することができるので、低コスト化と小型化が可能となる。また、ガスを異なる温度に設定するための加熱と、検出のための加熱とを同一のヒーターで担うので、省電力化が可能となる。
【0096】
〔実施例3〕
次に、実施例3について説明する。実施例1及び実施例2と同様の構成については、同様の符号を用いて説明を省略する。
実施例3は、上述の実施例2と同様に、検出用マイクロヒーター110が加熱用マイクロヒーターを兼ねる構成である。本実施例では、第1サーモパイル111と第2サーモパイル112の検出用マイクロヒーター110に対する配置を、上述の変形例から変更している。
図12は、本実施例に係る検出素子200の概略構成を模式的に示す平面図である。
本実施例では、検出用マイクロヒーター110からの距離が異なる位置に第1サーモパイル11と第2サーモパイル112を配置している。具体的には、第1サーモパイル111と検出用マイクロヒーター110との距離を、第2サーモパイル112と検出用マイクロヒーター110との距離よりも大きくなるように、第1サーモパイル111及び第2サーモパイル112を配置している。すなわち、第2サーモパイル112は、検出用マイクロヒーター110に近い高温領域に配置され、第1サーモパイル111は、検出用マイクロヒーター110から離れた低温領域に配置される。このように、検出素子200の熱分布を利用し、第1サーモパイル111と第2サーモパイル112により、2温度のデータを得ることができる。本実施例では、第1サーモパイル111が本発明の「第1温度差検出部」に対応し、第2サーモパイル112が本発明の「第2温度差検出部」に対応する。
【0097】
このようにすれば、同時に2温度のデータが得られるので、応答性と精度に優れる。また、加熱マイクロヒーターを兼ねる検出用マイクロヒーターの温度の切り替えが不要となるため、制御が簡単になる。そして、検出用マイクロヒーター110が加熱用マイクロヒーターを兼ねることにより、フローセンサの構造を簡略化することができるので、低コスト化と小型化が可能となる。また、ガスを異なる温度に設定するための加熱と、検出のための加熱とを同一のヒーターで担うので、省電力化が可能となる。
【0098】
〔実施例4〕
本実施例に係る検出素子300では、同一MEMSチップ上に検出用ヒーターと同様に加熱用マイクロヒーターを設ける。
図13は、本実施例に係る検出素子300の概略構成を示す平面図である。
図14は、本実施例に係る混合比算出装置3の機能ブロック図である。の実施例1と同様の構成については、同様の符号を用いて説明を省略する。
図13に示すように、本実施例では、同一のチップ上に、検出用マイクロヒーター110、加熱用マイクロヒーター118、第1サーモパイル111及び第2サーモパイル112を備える。すなわち、本実施例では、加熱用マイクロヒーター118は、MEMSチップ上に、検出用マイクロヒーターと同じプロセスで形成される。
図14に示すように、本実施例に係る混合比算出装置3における計測部10は、第1サーモパイル111、第2サーモパイル112、検出用マイクロヒーター110、加熱用マイクロヒーター118及びガス流路117を有する。
【0099】
検出用マイクロヒーター110は、例えば、ポリシリコンで形成された抵抗体であり、検出素子の中央部分に設けられる。加熱用マイクロヒーター118も同様に、ポリシリコンで形成された抵抗体によって構成することができる。加熱用マイクロヒーター118,118は、検出用マイクロヒーター110を挟んで配置される。また、加熱用マイクロヒーター118,118は第1サーモパイル111を挟んで、その両側に配置される。また、加熱用マイクロヒーター118,118は第2サーモパイル112を挟んで、その両側に配置される。また、第1サーモパイル111と第2サーモパイル112は、検出用マイクロヒーター110を挟むようにその両側に設けられる。検出用マイクロヒーター110、加熱用マイクロヒーター118、第1サーモパイル111及び第2サーモパイル112の上面(紙面手前側)には絶縁薄膜が形成されるが、図では省略している。また、検出素子は、電極パッド113…113、回路基板114を備える。実施例1と同様に、第1サーモパイル111及び第2サーモパイル112の下方(紙面奥側)の回路基板114には、キャビティが設けられる。
ここでは、測定対象である気体は、検出素子の上面側を紙面に平行に流される。検出素子は、第1サーモパイルが気体の流れる方向の上流側、第2サーモパイルが気体の流れる方向の下流側、加熱用マイクロヒーター118,118,118,118は、気体の流れる上流側及び下流側となるように配置される。
【0100】
このようにすれば、検出用マイクロヒーター110と加熱用マイクロヒーター118を同じプロセスで同時に形成できるので、製造コストを低減することができる。また、加熱用マイクロヒーター118がMEMSチップ上に形成されるので、小型化が可能となる。また、加熱用マイクロヒーター118による加熱が、必要最小となる第1サーモパイル111及び第2サーモパイル112の近傍に限定されるので、省電力化が可能となる。
【0101】
実施例1では、第2サーモパイル112の出力値を用いて混合ガスの混合比を算出していたが、第1サーモパイル111の出力値を用いてもよいし、第1サーモパイル111の出力値と第2サーモパイル112の出力値との算出平均を用いてもよい。
【0102】
〔実施例5〕
実施例5に係る検出素子400について説明する。実施例4と同様の構成については、同様の符号を用いて説明を省略する。
図15は、本実施例に係る検出素子400の概略構成を示す平面図である。
本実施例では、MEMSチップ上に第1加熱用マイクロヒーター119,119と、第2加熱用マイクロヒーター120,120とを形成している。ここでは、上流側に配置した第1加熱用マイクロヒーター119,119を温度T
1とで発熱させ、下流側に配置した第2加熱用マイクロヒーター120,120を温度T
2で発熱させるというように、異なる温度で発熱させ、それぞれの温度での熱伝導率を同時に取得する。ここでは、第1加熱用マイクロヒーター119,119が、本発明の「第1温度加熱部」に対応し、第2加熱用マイクロヒーター120,120が、本発明の「第2温度加熱部」に対応する。
【0103】
このようにすれば、同時に2温度データが取れるので、応答性に優れ、加熱用マイクロヒーターの温度切り替えが不要となるので、制御が簡易になる。
【0104】
〔実施例6〕
本実施例では、測定対象気体の温度を測定する温度センサ121,122を設け、温度センサ121,122の出力に応じて加熱用マイクロヒーター119,120の発熱温度を制御する。実施例3と同様の構成については、同様の符号を用いて説明を省略する。
図16は、本実施例に係る検出素子500の概略構成を示す平面図である。
温度センサ121,122は、基板上114の、各加熱用マイクロヒーター119,120の電極パッド113,113の間に配置されている。すなわち、温度センサ121,121は、第1加熱用マイクロヒーター119,119が接続される電極パッド113,113の間に配置され、温度センサ122,122は、第2加熱用マイクロヒーター120,120が接続される電極パッド113,113の間に配置される。ここでは、温度センサ121,122が、本発明の「温度検知部」に対応する。
【0105】
このようにすれば、温度センサ121,122によって検知された温度によって第1加熱用マイクロヒーター119及び第2加熱用マイクロヒーター120を制御することができるので、むだな加熱をすることなく、省電力化が可能となる。また、温度センサ121,122によって検知された温度によって第1加熱用マイクロヒーター119及び第2加熱用マイクロヒーター120を制御することができる、むだな加熱をしないので、第1加熱用マイクロヒーター119及び第2加熱用マイクロヒーター120の寿命を延ばすことができる。また、温度センサ121,122がMEMSチップ上に配置され、センサ雰囲気温度が一定となるので、測定値が環境温度の変化の影響を受けることがなく、温度キャ
リブレーションのコストが不要となる。
【0106】
ここでは、実施例3のように異なる温度で発熱する第1加熱用マイクロヒーター119,119及び第2加熱用マイクロヒーターを有する検出素子に対して、温度センサ121,122を設けたが、実施例2のように加熱用マイクロヒーター118,118,118,118が同じ温度で発熱する構成において、温度センサをもうけてもよい。
【0107】
〔実施例7〕
本実施例は、混合比算出装置を含む酸素濃縮器である。
図17は、本実施例に係る酸素濃縮器600の概略構成を示す図である。
酸素濃縮器600は、例えば、呼吸器疾患を患う患者等が使用するものである。酸素濃縮器600は、例えば、系外から取り込んだ空気を圧縮する圧縮機601と、圧縮機601において圧縮された空気の加圧又は減圧を行う、高濃度の酸素を生成するシーブベッド602を備える。また、酸素濃縮器600は、生成された高濃度の酸素を貯蔵する酸素タンク603と、酸素タンク603から患者へ送られる高濃度酸素を含む混合ガスの流量を制御する流量制御電磁弁604を備える。酸素タンク603には、酸素タンク内の圧力を検出する圧力計605が設けられる。また、流量制御電磁弁604の下流側には、流量制御電磁弁604を介して供給される混合ガスのアルゴン濃度を検出する濃度検出装置606が配置される。そして、濃度検出装置606の下流側には、圧力計607が設けられる。この圧力計607は、患者へと供給される混合ガスの圧力を検出する。例えば、呼吸器疾患を患う患者が、酸素濃縮器600から酸素を吸入する際に、患者が正常に呼吸しているか否かの判定や、患者の吸入の強度等の判定を行うことができる。
【0108】
圧縮機601によって圧縮された空気は、窒素、酸素及びアルゴンの3種の成分からなる混合ガスと考えることができる。圧縮された空気が供給されるシーブベッド602において、空気から窒素を吸着することにより酸素を濃縮する。シーブベッド602における吸着のされやすさは、窒素>酸素≫アルゴンの順になっている。このため、シーブベッド602における吸着の適否、すなわち、圧縮機601の圧力の適否に応じて、シーブベッド602から酸素タンク603に供給される混合ガスの成分比が異なることとなる。
図18A,
図18B及び
図18Cは、それぞれ、吸着過剰、最適吸着、吸着不足の場合の混合ガスの成分比の一例を示す。
図18A,
図18B及び
図18Cにおいて、格子線を付した部分が窒素、斜線を付した部分が酸素、点を付した部分がアルゴンの成分比を示す。圧縮機の圧力が低く、吸着が不全の状態が生じると、シーブベッドから酸素タンクに供給される混合ガスに未吸着の窒素が残存することになる(
図18C参照)。このように窒素が適切に吸着されていない状態では、酸素もアルゴンも吸着されないので、酸素に対するアルゴンの比率は、通常の空気中における比率と等しく4.45%である。シーブベッド602における吸着が最適な状態では、窒素が適切に吸着され、シーブベッドから酸素タンクに供給される混合ガス中に残存する窒素は無視することができる(
図18B参照)。このとき、酸素がシーブベッドに吸着されることもないので、酸素に対するアルゴンの比率は、やはり4.45%である。しかし、圧縮機の圧力が高く、過剰に吸着される状態が生じると、シーブベッドにおいて窒素のみならず酸素も吸着される(
図18A参照)。このとき、シーブベッドから酸素タンクに供給される混合ガスでは、アルゴンに対して酸素が相対的に減少するため、酸素に対するアルゴンの比率が増大し、4.45%以上の値となる。
【0109】
このように、濃度検出装置606において、供給される混合ガスのアルゴン濃度又は酸素濃度を検出することにより、シーブベッド602における吸着の適否を判断することができるので、濃度検出装置606の検出結果に基づいて圧縮機601を制御することにより、患者に適切な濃度の酸素を供給することができる。
【0110】
以下に、濃度検出装置606における酸素濃度の検出、すなわち混合比の算出について説明する。
上述のように、吸着不足の場合と過剰吸着の場合とでは、混合ガスの組成が異なるため、吸着不足の場合の酸素濃度と混合ガスの熱伝導率との関係と、過剰吸着の場合の酸素濃度と混合ガスとの関係とは異なることが推定される。例えば、酸素濃度と熱伝導率に
図18Dに示すような関係があるとする。
図18Dでは、吸着不足の場合の酸素濃度と混合ガスの熱伝導率との関係を表す曲線R1を実線で示し、過剰吸着の場合の酸素濃度と混合ガスの熱伝導率との関係を示す曲線R2を点線で示している。このとき、曲線R1と曲線R2との交点R3が最適吸着の状態を示す。
【0111】
酸素濃度と混合ガスの熱伝導率とが、このような異なる曲線で示される関係のうちいずれの関係にあるかが分かれば、シーブベッドにおける吸着について、吸着不足の状態か過剰吸着の状態かを判別することができる。
吸着不足の状態、最適吸着の状態及び過剰吸着の状態を含む、酸素濃度と混合ガスの熱伝導率との関係を予め取得しておく。曲線で表される酸素濃度と混合ガスの熱伝導率との関係を第2記憶部32に記憶しておいてもよいし、酸素濃度と混合ガスの熱伝導率との関係を表す近似式の係数を第2記憶部32に記憶しておいてもよい。
【0112】
図19には、加熱用ヒーターの温度がT
1である場合の酸素濃度と混合ガスの熱伝導率との関係R11,R12と、加熱用ヒーターの温度がT
2である場合の酸素濃度と混合ガスの熱伝導率との関係R21,R22を示す。ここでは、実線で示す曲線R11は、加熱用ヒーターの温度がT
1であり、かつ、吸着不足の状態の酸素濃度と混合ガス(窒素、酸素及びアルゴンからなる)の熱伝導率との関係を示す。そして、点線で示す曲線R12は、加熱用ヒーターの温度がT
1であり、かつ、過剰吸着の状態の酸素濃度と混合ガス(酸素及びアルゴンからなる)の熱伝導率との関係を示す。また、実線で示す曲線R21は、加熱用ヒーターの温度がT
2であり、かつ、吸着不足の状態の酸素濃度と混合ガス(窒素、酸素及びアルゴンからなる)の熱伝導率との関係を示す。そして、点線で示す曲線R22は、加熱用ヒーターの温度がT
2であり、かつ、過剰吸着の状態の酸素濃度と混合ガス(酸素及びアルゴンからなる)の熱伝導率との関係を示す。
【0113】
加熱用ヒーターの温度がT1であるときに、測定対象気体の熱伝導率の値としてy1が取得された場合に、混合ガスの熱伝導率と酸素濃度との関係がR11の曲線で示される関係にあるとすれば酸素濃度はx1となり、混合ガスの熱伝導率と酸素濃度との関係がR12の曲線で示される関係にあるとすれば酸素濃度はx2となる。
【0114】
次に、加熱用ヒーターの温度をT2としたときに、測定対象気体の熱伝導率の値としてy2が取得された場合には、混合ガスの熱伝導率と酸素濃度との関係がR11及びR21の曲線で表されることが分かる。従って、測定対象気体は窒素、酸素及びアルゴンからなる混合気体であり、曲線R11において熱伝導率がy1となるx1がこのときの酸素濃度となる。加熱用ヒーターの温度をT2としたときに、測定対象気体の熱伝導率の値としてy2´が取得された場合には、混合ガスの熱伝導率と酸素濃度との関係がR12及びR22の曲線で表されることが分かる。従って、測定対象気体は、酸素及びアルゴンからなる混合気体であり、曲線R12において熱伝導率がy2となるx2がこのときの酸素濃度となる。また、熱伝導率と酸素濃度との関係が、曲線R11又は曲線R12(曲線R21又は曲線R22)のいずれの曲線によって表されるかが分かれば、酸素に対するアルゴンの濃度は分かるので、酸素濃度とともにアルゴン濃度も分かる。
【0115】
このようにして、酸素濃縮器600における濃度検出装置606によるアルゴン濃度又は酸素濃度の検出結果に基づいて窒素吸着量を最適化するように圧縮機601の濃縮圧力を制御することにより、圧縮機601の動作の無駄をなくすことができるので、省電力化
が可能となる。また、酸素濃縮器600における濃度検出装置606によるアルゴン濃度又は酸素濃度の検出結果に基づいて窒素吸着量を最適化するように圧縮機601の濃縮圧力を制御することにより、シーブベッド602における無駄な吸着をなくすことができるので、シーブベッド602のフィルターの長寿命化が可能となる。
【0116】
〔実施例8〕
次に、実施例8に係る混合比算出装置について説明する。実施例1と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。計測部10を除く構成及び混合比算出処理については、上述の実施例と同様であるために説明を省略する。
上述の各実施例では、混合ガスの熱的性質として熱伝導率又はサーモパイルの出力を用い、異なる2つの温度に対する熱伝導率等を測定することにより、混合ガスの成分比を算出した。本実施例では、混合ガスの熱的性質として音速に着目し、異なる2つの温度における混合ガス中の音速を測定する。
【0117】
図20に、本実施例に係る計測部10の構成を模式的に示す。ここでは、計測部10は、混合ガスが流通するガス流路17に混合ガスを加熱する加熱用ヒーター130を配置している。そして、混合ガス中を伝播する超音波の速度(音速)を測定する超音波センサ131を配置している。本実施例では、加熱用ヒーター130が、本発明の「第1発熱部」に対応する。また、本実施例では、超音波センサ131が、本発明の「基礎情報検出部」に対応する。超音波センサ131は、ガス流路17を流れる混合ガス中の音速の変化を検出し得るように、ガス流路17に対して配置される。例えば、超音波センサ131は、ガス流路17を挟んで配置された超音波の発信部と受信部を含んで構成することができ、発信部から発信された超音波が受信部で受信されるまでの時間と発信部から受信部までの距離により、混合ガス中の音速を検出することができる。
【0118】
各温度における混合ガスの成分比と音速との関係を予め取得しておき、異なる2つの温度において測定された2つの音速から、混合ガスが満たすべき成分比と音速との関係がいずれの成分比に対応するものであるかを特定し、特定された関係のもとでの測定された音速に対する成分比を算出する。
【0119】
このようにすれば、熱伝導率の差が小さいガスを含む混合ガスについても、音速に差がある場合にも、混合比を算出することができる。
【0120】
〔実施例9〕
次に、実施例9に係る混合比算出装置について説明する。実施例1と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。計測部10を除く構成及び混合比算出処理については、上述の実施例と同様であるために説明を省略する。
上述の各実施例では、混合ガスについて混合比を算出しているが、本発明の基本原理は、流体として気体に限らず液体についても妥当する。本実施例では、3成分の混合液について、混合ガスに対する場合と同様に、混合比を算出する。ここでは、混合液に含まれる流体が有する温度に依存して変化する特性として熱伝導率を用いることができるが、液体については電気伝導率又は誘電率を用いることもできる。
【0121】
図21に、本実施例に係る計測部10の構成を模式的に示す。ここでは、計測部10は、混合液体が流通する流路117に混合液体を加熱する加熱用ヒーターを兼ねる検出用ヒーター132を配置している。そして、混合液体の熱伝導率、電気伝導率又は誘電率を検知するセンサ133を配置している。本実施例では、検出用ヒーター132が、本発明の「第1発熱部」及び「第2発熱部」に対応する。また、センサ133が、本発明の「温度差検出部」に対応する。
【0122】
各温度における混合液体の成分比と熱伝導率、電気伝導率又は誘電率との関係を予め取得しておき、異なる2つの温度において検知された2つの熱伝導率、電気伝導率又は誘電率から、混合液体が満たすべき成分比と熱伝導率、電気伝導率又は誘電率との関係がいずれの成分比に対応するものであるかを特定し、特定された関係のもとでの検知された熱伝導率、電気伝導率又は誘電率に対する成分比を算出する。
【0123】
このようにすれば、混合液体についても、混合比を算出することができる。
【0124】
なお、以下には本発明の構成要件と実施例の構成とを対比可能とするために、本発明の構成要件を図面の符号付きで記載しておく。
<発明1>
3種以上の流体を含む混合流体の混合比を算出する混合比算出装置(2,3)であって、
前記混合流体を加熱する第1発熱部(116,118)と、
前記混合流体の所定の熱的特性値の基礎情報を検出する基礎情報検出部と、
前記混合流体における前記流体の混合比を算出する混合比算出部(22)と、
を備え、
前記混合比算出部(22)、
前記第2発熱部(110)によって前記混合流体に温度差を生じさせ、
前記第1発熱部(116,118)によって前記混合流体を第1温度に加熱し、
前記第1温度とされた前記混合流体に対する基礎情報検出部(110,111,112)の出力に基づいて前記第1温度における前記混合流体の所定の熱的特性値を取得し、
前記第1発熱部(116,118)によって前記混合流体を、前記第1温度とは異なる第2温度に加熱し、
前記第2温度とされた前記混合流体に対する前記基礎情報検出部(110,111,112)の出力に基づいて前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値を取得し、
前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値と前記混合流体に含まれる第1流体の前記混合流体における混合比との関係を規定する第1関係情報を取得し、
前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値と前記第1流体の前記混合流体における混合比との関係を規定する第2関係情報を取得し、
前記第1温度における前記混合流体の前記熱的特性値と、前記第2温度における前記混合流体の前記熱的特性値と、前記第1関係情報と、前記第2関係情報とに基づいて、前記混合流体における前記流体の混合比を算出することを特徴とする混合比算出装置。
【符号の説明】
【0125】
2,3,606:混合比算出装置
22:混合比算出部
110:検出用マイクロヒーター
111:第1サーモパイル
112:第2サーモパイル
116,118:加熱用ヒーター
130,132:ヒーター