(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】照明器具
(51)【国際特許分類】
F21V 5/00 20180101AFI20240214BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240214BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20240214BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240214BHJP
F21Y 105/12 20160101ALN20240214BHJP
【FI】
F21V5/00 510
F21S2/00 631
F21V5/04 650
F21V5/04 200
F21Y115:10 500
F21Y115:10 300
F21Y105:12
(21)【出願番号】P 2020116376
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】723014807
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 大輔
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-130585(JP,U)
【文献】特開2002-260401(JP,A)
【文献】特開2007-250513(JP,A)
【文献】国際公開第2011/096098(WO,A1)
【文献】特開2001-126506(JP,A)
【文献】米国特許第07559672(US,B1)
【文献】登録実用新案第3188622(JP,U)
【文献】国際公開第2012/164791(WO,A1)
【文献】特開2012-255271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 5/00
F21S 2/00
F21V 5/04
F21Y 115/10
F21Y 105/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に配列された複数の発光素子を有し、第1方向に延びた光を放射する光源を備え、前記光源の光によって
道路の側方から前記道路を照明する照明器具において、
前記光源から
前記道路の横断方向に放射された光が入射する第1光学板と、
前記第1光学板から出射された光が入射する第2光学板と、を備え、
前記第1光学板は、
前記第1方向に直交する第2方向において前記照明器具の照明光軸よりも上側の領域には、
前記上側の領域に入射する入射光を集光することで当該入射光を平行光化するリニアフレネルレンズ部を有し、
前記第2光学板は、
前記第1光学板から入射する光を前記第1方向に拡げて出射するレンズ部を備える
ことを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記第1光学板は、
前記第2方向において前記照明器具の照明光軸よりも下側の領域には、
前記第1方向に延びる複数の凸部が形成され、前記照明光軸より下方に光を拡散させて出射するレンチキュラーレンズ部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記第1光学板は、
出射面の法線方向を前記照明光軸の方向を向けて配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の照明器具。
【請求項4】
前記第1光学板のリニアフレネルレンズ部
には前記第1方向に延びる複数のフレネルプリズムが前記第2方向に並べて設けられ、複数の
前記フレネルプリズムはそれぞれ、フレネル面とライズ面とを有する断面三角形状を成し、
前記第1光学板の表面の主面に対する前記ライズ面の傾斜角であるライズ角は、
前記第1光学板の入射面に入射し当該入射面で屈折した光が前記ライズ面に入射することがない角度に設定されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の照明器具。
【請求項5】
前記第2方向における前記第1光学板の端部から出射される光を遮光する第1光学板端部遮光部を備える
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の照明器具。
【請求項6】
前記第2光学板は、
前記第2方向における前記照明光軸よりも下側に、前記第1光学板に向けて湾曲した湾曲部を備える
ことを特徴する請求項1から5のいずれかに記載の照明器具。
【請求項7】
直線状に配列された前記発光素子の一部の発光素子が、前記第2方向にずらして配置されている
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
道路を照明する道路照明器具には、支柱に支持されて高所から路面を照明する器具の他に、道路脇の比較的低い位置から路面を照明する低位置道路照明器具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低位置道路照明器具では、車両を運転する運転者への影響を考慮して、漏れ光を抑えることが望まれており、特に、器具本体よりも上方に向かう出射光(以下、「上方出射光」という)の光量を抑えることが望まれている。
さらに近年では、低位置道路照明器具の設置場所によっては、上方出射光について許容される光度値が具体的に規定されている場合もある。
しかしながら、従来の低位置道路照明器具では、上方出射光の光度値についての規定を満足させることは困難であった。
【0005】
本発明は、上方出射光を抑えることができる照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、直線状に配列された複数の発光素子を有し、第1方向に延びた光を放射する光源を備え、前記光源の光によって道路の側方から前記道路を照明する照明器具において、前記光源から前記道路の横断方向に放射された光が入射する第1光学板と、前記第1光学板から出射された光が入射する第2光学板と、を備え、前記第1光学板は、前記第1方向に直交する第2方向において前記照明器具の照明光軸よりも上側の領域には、前記上側の領域に入射する入射光を集光することで当該入射光を平行光化するリニアフレネルレンズ部を有し、前記第2光学板は、前記第1光学板から入射する光を前記第1方向に拡げて出射するレンズ部を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様は、上記照明器具において、前記第1光学板は、前記第2方向において前記照明器具の照明光軸よりも下側の領域には、前記第1方向に延びる複数の凸部が形成され、前記照明光軸より下方に光を拡散させて出射するレンチキュラーレンズ部を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様は、上記照明器具において、前記第1光学板は、出射面の法線方向を前記照明光軸の方向を向けて配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様は、上記照明器具において、前記第1光学板のリニアフレネルレンズ部には前記第1方向に延びる複数のフレネルプリズムが前記第2方向に並べて設けられ、複数の前記フレネルプリズムはそれぞれ、フレネル面とライズ面とを有する断面三角形状を成し、前記第1光学板の表面の主面に対する前記ライズ面の傾斜角であるライズ角は、前記第1光学板の入射面に入射し当該入射面で屈折した光が前記ライズ面に入射することがない角度に設定されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様は、上記照明器具において、前記第2方向における前記第1光学板の端部から出射される光を遮光する第1光学板端部遮光部を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様は、上記照明器具において、前記第2光学板は、前記第2方向における前記照明光軸よりも下側に、前記第1光学板に向けて湾曲した湾曲部を備えることを特徴する。
【0012】
本発明の一態様は、上記照明器具において、直線状に配列された前記発光素子の一部の発光素子が、前記第2方向にずらして配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上方出射光を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る低位置道路照明器具の構成を示す斜視図である。
【
図2】低位置道路照明器具の内部構成を示す正面図である。
【
図3】光源ユニットを含む位置で切断した器具本体の横断面図である。
【
図4】LED光源の構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は縦断面図である。
【
図5】
図3における光源ユニットを、その周辺構成ともに拡大して示す図である。
【
図6】第1光学板のリニアフレネルレンズ部の拡大図である。
【
図9】LED光源と第2光学板の相対位置関係を示す縦断面図である。
【
図10】
図9の矢視X部の拡大図であり、レンズ部における光源対面範囲の拡大図である。
【
図11】
図9の矢視Y部の拡大図であり、レンズ部における光源外側範囲の拡大図である。
【
図12】低位置道路照明器具によって照明された道路面の照度分布を示す図である。
【
図13】基板の構成を示す図であり、(A)は実装面の側を視た図であり、(B)は裏面側を視た図である。
【
図14】光源ユニットの構成部材の配置を変更することで得られる照明光の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る低位置道路照明器具1の構成を示す斜視図である。
低位置道路照明器具1は、道路脇の構造物(遮音壁や橋梁など)に、道路を走行する車両の運転者の視線と略同じ設置高さ(例えば約1メートルの高さ)で設置され、その設置位置から道路の路面を照明する照明器具である。
図1に示すように、低位置道路照明器具1は、道路の走行方向Aに延びた直方体状の器具本体2を備え、器具本体2の正面2Fを道路の側に向けた姿勢で、器具本体2の両端部が上記構造物に固定金具4によって固定される。両端の固定金具4は、ボルト4Aで器具本体2を軸支することで、ボルト4Aを中心に路面に対して器具本体2を傾動自在に支持しており、これにより、器具本体2の鉛直方向の取付角が調整可能となっている。
【0016】
なお、以下、器具本体2の長手方向(第1方向)を器具幅方向Dw、器具本体2の正面視において器具幅方向Dwと直交する方向(第2方向)を器具高さ方向Dh、器具本体2の厚み方向を器具奥行き方向Ddと言う。
【0017】
器具本体2は、正面が開口した直方体形状の金属製(例えばアルミニウム合金等)の箱体であり、その正面開口2Aは、器具本体2に締結金具5で結合された略矩形状の前面カバー8で閉塞されている。前面カバー8は、ガラスや樹脂等の透明な材料で形成された矩形板材であり、防水パッキン7を間に挟んで器具本体2に取り付けられている。
【0018】
本実施形態では、前面カバー8の裏面(器具本体2の内側を向く面)に、その全面を覆う大きさの出射開口形成遮光板9が配置されており、この出射開口形成遮光板9の面内に2つの出射開口10が形成されている。
【0019】
出射開口10は、路面を照明する照明光を器具本体2の内部から外部に通すための開口である。出射開口10は、器具幅方向Dw(すなわち道路の走行方向A)に延びる矩形状を成すことで当該走行方向Aに沿った広い範囲が照明光で照明できるようになっており、前面カバー8の面内では、これらが器具幅方向Dwに適宜の間隔で並んで設けられている。
【0020】
上述の出射開口形成遮光板9が前面カバー8の裏側に設けられることで、この低位置道路照明器具1では、前面カバー8の全体から照明光を出射する構成に比べ、漏れ光が抑えられる。
また出射開口形成遮光板9の表裏両面には、光の反射を抑える塗装(例えば、艶消し黒塗装)が施されており、裏面側においては、器具本体2の内部で遮光された光成分による迷光の発生が防止され、また表面側においては、車両のヘッドライト等の反射が防止されている。
【0021】
図2は、低位置道路照明器具1の内部構成を示す正面図である。なお、
図2は、前面カバー8及び出射開口形成遮光板9を低位置道路照明器具1から外した状態を示している。
同図に示すように、器具本体2の内部には、2つの光源ユニット12と、電源端子台14と、電源ボックス16と、が収められている。
光源ユニット12は、器具本体2の内部において、上述した出射開口10に対向配置され、上方出射光の光量を所定値以下に抑えつつ、器具幅方向Dwに延びた照明光を出射開口10から出射して路面を照らす光源ユニットである。2つの光源ユニット12は同じもので、左側の光源ユニット12は第1光学板を露出させた状態を示している。光源ユニット12の構成については後に詳述する。
【0022】
電源端子台14は、器具本体2の外から引き込まれた商用電源の電力線と、電源ボックス16の配線とを結線する端子台である。電源ボックス16は、光源ユニット12を点灯する直流電力を生成する装置であり、AC-DC変換器を内蔵し、外部から供給される商用の交流電力を直流電力に変換する。なお、電源ボックス16は、外部からの調光指示に基づいて直流電力(例えば直流電流)を可変し、光源ユニット12の光量を可変してもよい。また、器具本体2には、停電時等に使用する非常用の電力としてバッテリーを内蔵してもよい。
【0023】
図3は、光源ユニット12を含む位置で切断した器具本体2の横断面図である。なお、かかる横断面の器具奥行き方向Ddは、道路脇に設置された低位置道路照明器具1の道路横断方向に一致する。
【0024】
光源ユニット12は、
図3に示すように、LED光源20と、第1光学板22と、第2光学板24と、を備え、これらがこの順に器具本体2の背面2Bの側から前面カバー8とにかけて配置されている。また本実施形態の光源ユニット12は、第1光学板22の第2光学板24の側(すなわち出射側)に配置された第1光学板端部遮光部26を備えている。
【0025】
図4はLED光源20の構成を示す図であり、
図4(A)は平面図、
図4(B)は縦断面図である。
図4(A)に示すように、LED光源20は、発光素子の一例たる複数のSMD(Surface Mount Device)型のLED30と、これらのLED30を実装した基板32と、を備え、
図3に示すように、器具本体2の内部に設けられたベース板18に電源ボックス16などの他の内蔵部品とともに取り付けられている。
【0026】
複数のLED30は、
図4(B)に示すように、一定の間隔Paで直線状に基板32に配列されることで、当該配列の方向に延びた線状光を放射する線状光源として構成されている。
基板32の実装面32Aは、例えば黒色のレジスト材といった、当該実装面32Aでの反射を抑える低反射性材料が塗布されており、当該実装面32Aでの反射による迷光の発生、及び、当該迷光による上方光束の発生が抑えられている。なお、実装面32Aへの低反射性材料の塗布に代えて、実装面32Aでの反射光を遮光するカバーで当該実装面32Aを覆ってもよい。
【0027】
LED光源20は、LED30の直線状の配列方向を器具幅方向Dw(すなわち走行方向A)に向けて器具本体2に取り付けられることで、当該器具幅方向Dwに延びた光を放射する。なお、LED30の発光色は適宜である。
【0028】
図5は、
図3における光源ユニット12の横断面を、その周辺構成ともに拡大して示す図である。
第1光学板22は、同図に示すように、器具高さ方向Dhにおいて、LED光源20の放射光のうち、照明光軸Kaよりも上側の領域である上側領域Raに入射する入射光を集光することで、低位置道路照明器具1の横断面において照明光軸Kaに平行な平行光にする機能を有した光学部材である。
照明光軸Kaは、低位置道路照明器具1の照明光の光軸である。
さらに第1光学板22は、器具高さ方向Dhにおいて、上側領域Raより下側の領域である下側領域Rbに入射する入射光を拡散する機能も備える。
なお、一般に、第1光学板22に直線状に並んだ各LED30の放射光のうち、道路横断面方向(器具奥行き方向Dd)に対し斜め方向の光は、本実施形態の第1光学板22が押出し形状であるために、上側領域Raに入射した入射光を、得ようとする目的の上記平行光よりも照明光軸Kaに近づく方向に屈折して出射している。
【0029】
第2光学板24は、第1光学板22から入射する光を、器具幅方向Dw(すなわち道路の走行方向A)に拡げて前面カバー8へ出射する光学部材である。
【0030】
本実施形態の光源ユニット12によれば、器具高さ方向Dhにおいて照明光軸Kaよりも上方の出射光が第1光学板22によって平行光化されるため、上方出射光の源となる上方光束が抑えられる。
また、第1光学板22の出射光は第2光学板24によって器具幅方向Dwに拡げられるため、低位置道路照明器具1の照明光は走行方向Aに延びた光となる。これにより、低位置道路照明器具1の設置間隔を従前の器具よりも広げる(いわゆる、広スパン化する)ことができる。
さらに、器具高さ方向Dhにおいて照明光軸Kaよりも下方の出射光は、第1光学板22によって拡散されるため、例えば運転者などが低位置道路照明器具1の正面2Fを下方から覗き込んだ場合に、光源ユニット12のギラツキ感を抑えることができる。
【0031】
図5に示すように、本実施形態の光源ユニット12において、第1光学板22は、その表面の法線方向22Dが鉛直角90度方向Bよりも下方を向くように傾いた状態で配置されており、これにより、照明光軸Kaが鉛直角90度方向Bよりも下方に向けられている(換言すれば、第1光学板22は、その表面の法線方向22Dを、照明光軸Kaの設計値の方向にほぼ一致させたうえ、実際の配光分布のピーク角度が照明光軸Kaの向きと一致するように配置されている)。本実施形態では、かかる照明光軸Kaは鉛直角80度±5度の範囲(すなわち、鉛直角90度方向Bを基準にした下向きの角度である俯角が10度±5度の範囲)に設定されている。
このように、照明光軸Kaが鉛直角90度方向Bよりも下方を向くことで、上方出射光の発生がさらに抑えられる。
また、第1光学板22の照明光軸Kaの方向の光量を高めることができ、照明光軸Kaを鉛直角80度±5度とすることで、道路への設置状態において、低位置道路照明器具1からみて道路幅方向の近傍側のみならず遠方側も照らすことができ、当該遠方側における照度も確保できる。
【0032】
なお、照明光軸Kaの基準角度を鉛直角80度(俯角10度)に設定する手法としては、本実施形態のように、後述するリニアフレネルレンズ部40の出射光がフレネル面50(
図6)の法線に平行な光となるように第1光学板22を設計し、この第1光学板22を俯角10度に配置すればよい。この場合、LED30は、光源ユニット12の横断面において、リニアフレネルレンズ部40の入射側焦点上(実際には入射側焦点を含んで器具幅方向Dwに水平な線上)に配置されている。LED30が入射側焦点上に配置されていれば、LED光源20の光軸である光源光軸Kb(
図5)の角度が照明光軸Kaと異なっていてもほとんど影響しない。ただし、上述のように、LED30から器具幅方向Dwに拡がる光が道路横断面方向(器具奥行き方向Dd)に対して平行でなく斜め方向からリニアフレネルレンズ部40に入射すると出射光がフレネル面50の法線方向より下向きになるため、この点を考慮して、第1光学板22を俯角10度より少し上向き(例えば俯角8度)に配置してもよい。
また別の手法として、全てのLED光源20を、リニアフレネルレンズ部40の入射側焦点より器具高さ方向Dhの上方向に数mmずらした状態で器具本体2に載置することで、リニアフレネルレンズ部40からの平行光を下向きにする手法がある。ただし、この手法はリニアフレネルレンズ部40から出射される出射光の光度ピークが太くなり、道路照明として使用するには効率が悪くなる傾向がある。
さらに別の手法として、
図5に示す構成において、第1光学板22を垂直に配置し、リニアフレネルレンズ部40の平行光の出射角度が俯角10度になるように光学設計する手法や、照明光軸Kaが水平になるように設計された器具本体2を傾けて設置することで、照明光軸Kaを鉛直角90度方向Bよりも下方に向くようにする手法などもある。
【0033】
第1光学板端部遮光部26は、器具高さ方向Dhにおいて、第1光学板22の上端部22Ta、及び下端部22Tbを正面側(前面カバー8の側)からみて覆い隠すことで、これら上端部22Ta、及び下端部22Tbから出射される光を遮光する部材であり、適宜の遮光板によって構成されている。上端部22Ta、及び下端部22Tbから出射される光は迷光の源となるため、かかる光が遮光されることで、このような迷光によって生じ得る上方光束を第1光学板端部遮光部26によって確実にカットできる。
【0034】
次いで第1光学板22の具体的構成について説明する。
第1光学板22は、上側領域Raにリニアフレネルレンズ部40を有しており、この上側領域Raの下側の入射範囲である下側領域Rbにレンチキュラーレンズ部42を有している。
なお、
図5には、リニアフレネルレンズ部40の領域の凹凸形状、レンチキュラーレンズ部42の領域の凹凸形状、及び、リニアフレネルレンズ部40とレンチキュラーレンズ部42との境界部の凹凸形状を、それぞれ
図5(A)、
図5(B)、及び
図5(C)の拡大図に示している。ただし、これら拡大図は、凹凸形状を実際よりも強調して描かれており、実際の凹凸比率は図示の通りではない。
第1光学板22において、上側領域Raと下側領域Rbの境界は、
図5(C)に示すように、照明光軸Kaを含み器具幅方向Dwに伸びる光軸面である。この境界では、リニアフレネルレンズ部40の後述するフレネルプリズム44の谷部44Sが光軸面内に位置し、当該光軸面内にあるフレネルプリズム44の谷部44Sに連続してレンチキュラーレンズ部42の領域が始まっている(すなわち、レンチキュラーレンズ部42の領域の開始点も光軸面内にある)。
【0035】
リニアフレネルレンズ部40は、器具高さ方向Dhにおいて上側領域Raへの入射光を集光することで平行光化する集光レンズとして機能する部位である。
一般にリニアフレネルレンズとは、シリンドリカルレンズのシリンドリカル面を、多数の断面三角形状のフレネルプリズムを並べて構成した光学レンズである。
第1光学板22の上側領域Raには、
図5に示すように、上側領域Raの出射側の表面(出射面40B)に、器具幅方向Dwに延びる多数の上記フレネルプリズム44が形成されることでリニアフレネルレンズ部40が構成されている。なお、第1光学板22において、上側領域Raの入射側の表面(入射面40A)は平坦面である。
【0036】
本実施形態のリニアフレネルレンズ部40は、器具奥行き方向Ddにおいて、LED光源20の発光点(本実施形態では、LED30の位置)を焦点としており、照明光軸Kaの方向に最大光度の光束が得られるようになっている。
【0037】
レンチキュラーレンズ部42は、器具高さ方向Dhにおいて下側領域Rbの入射光を拡散する光学レンズである。
一般にレンチキュラーレンズとは、一方向に互いに並列に延びる多数の微細なシリンドリカルな凸部(以下、シリンドリカル凸部46という)から成る光学レンズである。
第1光学板22の下側領域Rbには、
図5に示すように、出射側の表面(出射面42B)に、器具幅方向Dwに延びる多数のシリンドリカル凸部46が形成されることでレンチキュラーレンズ部42が構成されている。なお、第1光学板22において、下側領域Rbの入射側の表面(入射面42A)も上側領域Raと同じく平坦面である。
【0038】
本実施形態において、シリンドリカル凸部46は、曲率が1.5mm、高さが0.003mmであり、器具高さ方向Dhに0.2mmのピッチで形成されており、このように小さな曲率のシリンドリカル凸部46によって、光源ユニット12の上述したギラツキ感が抑えられている。
【0039】
上述のように、本実施形態の第1光学板22は、リニアフレネルレンズ部40がシリンドリカルレンズである場合に比べ、第1光学板22の厚みを抑えることができ、光源ユニット12、及び器具本体2を薄型化できる。
【0040】
次いで、第1光学板22のリニアフレネルレンズ部40について更に詳述する。
図6は、第1光学板22のリニアフレネルレンズ部40の拡大図である。
図6に示すように、リニアフレネルレンズ部40の入射面40Aは平坦面であり、出射面40Bに断面三角形の多数のフレネルプリズム44が形成されている。
各フレネルプリズム44は、光学的に等価なシリンドリカルレンズのシリンドリカル面と同じように入射光を屈折させるフレネル面50と、フレネル面50同士をつなぐライズ面52と、を有している。
かかる第1光学板22は、リニアフレネルレンズ部40の断面形状を形成する押出形状を有した型枠を用いて透明な樹脂を押出成形することで、または、樹脂平板を金型で挟み込んだ状態で高温にする熱プレス成形することで製造されている。
【0041】
ここで本実施形態では、フレネルプリズム44において、フレネル面50とライズ面52とが成す頂点44Tの頂角αが45度以上となることで、各フレネルプリズム44が押出成形時に熱変形し難くなっており、高精度な光制御を実現する第1光学板22を押出成形品、または、熱プレス成形品として製造可能としている。
【0042】
また本実施形態では、第1光学板22(リニアフレネルレンズ部40)の出射面40Bの主面40BSに対するライズ面52の傾斜角であるライズ角βが次の所定角度に設定されている。すなわち、ライズ角βは、
図6に示すように、リニアフレネルレンズ部40の入射面40Aに入射し、当該入射面40Aで屈折してリニアフレネルレンズ部40の内部を進む光線Haが、出射面40Bにおいてライズ面52に入射することがない所定角度(すなわち、略全ての光線Haがフレネル面50に入射する所定角度)に設定されている。
このように、ライズ面52への光線Haの入射が防止されることで、当該ライズ面52で全反射した光線Haによって上方光束が発生することがない。
【0043】
ただし、フレネル面50においては、
図6に示すように、そこに入射する光線Haの一部がフレネル反射することでライズ面52に入射する光線Ha1が生じ、この光線Ha1が上方光束になり得る次の2つの光線Hb1、Hb2を生じさせる。
光線Hb1は、ライズ面52から出射したHa1が隣の(すなわち対向する)フレネル面50で反射されることで生じる光線である。
また光線Hb2は、ライズ面52から出射したHa1が隣のフレネル面50から再び第1光学板22に入り、ライズ面52および入射面40Aで全反射し、他のフレネル面50に入射し、当該フレネル面50から低位置道路照明器具1の上方に向かって出射される光線(
図6中、点線で示した光線)である。
発明者は、光学シミュレーションを行った結果、上方光束を抑える観点において、光線Hb1、Hb2のうち、光線Hb2が無視できないほどの光量となることが分かった。
【0044】
そこで本実施形態では、リニアフレネルレンズ部40のライズ角βの角度を、幾つかのフレネルプリズム44について変更することで、
図6に実線で示すように光線Hb2が下方を指向するようにしている。なお、ライズ角βの変更は、上述したように、光線Haがライズ面52に入射しない角度の範囲において行われる。
【0045】
より具体的には、
図6に示すように、幾つかのフレネルプリズム44のライズ角βを、頂角αが大きくなるように変更する。なお、
図6には、ライズ角βの変更後(すなわち本実施形態)のライズ面52を実線で示し、変更前のライズ面52を点線で示している。
かかるライズ角βの変更により、フレネル面50でフレネル反射した光線Ha1がライズ面52から出射する際の屈折角が変わり、隣のフレネルプリズム44のフレネル面50への入射角が直角に近付く角度となる。さらに、光線Ha1が入射した隣のフレネルプリズム44においても、ライズ面52および入射面40Aで光線Ha1が全反射する角度が変わる。この結果、光線Hb2は、フレネル面50から出射する際の指向方向が低位置道路照明器具1の下方に向くようになり、当該光線Hb2による上方光束の発生が防止される。
【0046】
なお、ライズ角βの上述のような変更により、隣のフレネルプリズム44のフレネル面50への光線Ha1の入射角が直角により近付くため、
図6に実線で示すように、当該光線Ha1が隣のフレネルプリズム44のフレネル面50で反射して成る光線Hb1が変更前(
図6中、点線で示す)よりも上方に向かう。しかしながら、フレネル面50から第1光学板22に再入射する光のほうが多く、この光線Hb1は非常に少ないため、ライズ角βの変更の結果、本実施形態では、光線Ha1による上方光束が無視できるレベルまで低減されている。
なお、ライズ角βの上述した変更が行われない場合、フレネルプリズム44の頂角αは、照明光軸Kaから遠いものほど頂角αが漸次に小さくなる。これに対し、かかる変更が行われた場合には、幾つかのフレネルプリズム44において、そのフレネルプリズム44よりも照明光軸Kaに近いフレネルプリズム44よりも頂角αが大きくなっている。
【0047】
ここで、仮に、上述したリニアフレネルレンズ部40を構成するフレネルプリズム44が第1光学板22の入射面40Aの側に形成された場合、フレネルプリズム44のライズ面52に入射する光によって上方光束が発生し易くなる。
これに対し、本実施形態では、上述の通り、フレネルプリズム44が第1光学板22の出射面40Bに設けられているため、このような上方光束が発生することもない。
【0048】
次いで第2光学板24の具体的構成について説明する。
図7は第2光学板24を正面側から視た斜視図であり、
図8は第2光学板24の縦断面図である。なお、
図8では、第2光学板24の延在方向の両端側が省略されている。
第2光学板24は、
図7に示すように、器具幅方向Dwに延びる透明な略板状のレンズ部60を備え、このレンズ部60の延在方向の両端部に、器具本体2に取付固定するための取付部62が形成されている。
レンズ部60は、
図7において裏面の側が入射面60A(
図8)、正面の側が出射面60Bとなっており、入射面60A、及び出射面60Bには、器具高さ方向Dh(すなわち、第1光学板54の上記フレネルプリズム44と交差(直交)する方向)に延びる入射面側凸状部64(
図8)、及び出射面側凸状部66がそれぞれ器具幅方向Dwに多数並べて設けられている。
【0049】
入射面側凸状部64は、
図7に示すように、縦断面において、第2光学板24に入射した光Hb(すなわち、第1光学板22の出射光)を器具幅方向Dwにおける遠方側に屈折させるものである。遠方側とはレンズ部60の中心である光学中心60Cから遠ざかる側である。これによって、レンズ部60からは器具幅方向Dwの遠方側に大きく拡がる光がレンズ部60から出射される。
なお、レンズ部60は、器具幅方向Dwにおいて、光学中心60Cを中心に対称形状を成している。
【0050】
一方、出射面側凸状部66は、縦断面において、入射面60Aの側から入射する光を器具幅方向Dwに全反射するものであり、詳細は後述する。
【0051】
図9は、LED光源20と第2光学板24の相対位置関係を示す縦断面図である。
同図に示すように、第2光学板24のレンズ部60は、少なくともLED光源20におけるLED配列範囲Maよりも器具幅方向Dwに長く形成されている。LED配列範囲Maは、LED光源20においてLED30が並べられている器具幅方向Dwの範囲である。
以下では、レンズ部60において、LED配列範囲Maを覆い各LED30に対面する部位を光源対面範囲61Aと呼び、当該光源対面範囲61Aよりも外側の範囲を光源外側範囲61Bと呼ぶ。
レンズ部60には、上述した入射面側凸状部64、及び出射面側凸状部66が光源対面範囲61A、及び光源外側範囲61Bの両方に設けられている。
【0052】
図10は、
図9の矢視X部の拡大図であり、レンズ部60における光源対面範囲61Aの拡大図である。
光源対面範囲61A内の入射面側凸状部64はそれぞれ、一対の側面64Aから成る断面略二等辺三角形状を成している。本実施形態では、これら入射面側凸状部64において、入射面60Aの主面60ASに対する側面64Aの立ち上がり角度γを45度以上とすることで、入射面側凸状部64に入射する光が効率良く器具幅方向Dwに拡げられるようになっている。
【0053】
また光源対面範囲61A内の出射面側凸状部66はそれぞれ、LED光源20のLED30のそれぞれに正対する位置(LED30の発光素子光軸Kc上)に形成されている。これらの出射面側凸状部66は、一対の側面66Aから成る断面略二等辺三角形状を成している。側面66Aは、入射面60Aの側から入射する光Hcを全反射する面であり、これにより、
図10に示すように、縦断面において、出射面側凸状部66のそれぞれから当該出射面側凸状部66を中心に器具幅方向Dwの両側に拡がる光が放射状に出射される。出射面側凸状部66のそれぞれから出射された光は、低位置道路照明器具1の正面側の道路面を照らす光であり、これらの光が器具幅方向Dwに放射状に拡がることで、道路面の均斉度が高められ、また低位置道路照明器具1の設置間隔が広げられる。
本実施形態では、かかる出射面側凸状部66において、出射面60Bの主面60BSに対する側面66Aの立ち上がり角度δが45度以上となっている。
【0054】
本実施形態では、光源対面範囲61A内の出射面側凸状部66のそれぞれは、
図9に示すように、LED30の発光素子光軸Kc上に設けられている。一方、光源対面範囲61Aの入射面60Aにおいて、出射面側凸状部66と対向する対向部位68は、略平面に近い僅かな凸状の曲面に形成されており、入射面側凸状部64が形成されていない(すなわち、光源対面範囲61Aにおいて入射面側凸状部64は出射面側凸状部66同士の間に形成されている)。これにより、各LED30の発光素子光軸Kc上の光束が出射面側凸状部66に効率良く入射し、器具幅方向Dwに放射状に拡がるように出射される。
そして、各LED30の発光素子光軸Kc上の光束が拡げて出射されることで、発光素子光軸Kc上の光量が緩和されるため、均斉度が更に高められ、また光源ユニット12を直視した際の眩しさも緩和される。
【0055】
図11は、
図9の矢視Y部の拡大図であり、レンズ部60における光源外側範囲61Bの拡大図である。
光源外側範囲61B内の入射面側凸状部64は、光源対面範囲61A内の入射面側凸状部64が二等辺三角形状であるのに対し、レンズ部60の光学中心60C側の側面64A1が長く、他方の側面64A2が短い断面三角形状を成している。光源外側範囲61Bでは、かかる入射面側凸状部64が連続的に形成されることで入射面60Aが鋸歯状となっている。
光学中心60C側の側面64A1が長くなることで、縦断面において、各LED30の放射光のうちの器具幅方向Dwに斜めに進む光を、より多く入射面側凸状部64に入射させることができ、また、かかる光を入射面側凸状部64によって器具幅方向Dwに更に屈折させて出射することができる。
【0056】
かかる入射面側凸状部64が連続的に形成されることで、車両の運転者などが光源ユニット12を見たときに器具幅方向Dwに光が連なって見えるため、見かけの光源面積が大きくなり、眩しさ感を緩和することができる。
またレンズ部60の入射面60Aにおいては、入射面側凸状部64同士の間の上記対向部位68も曲面形状を成しているため、車両が走行するにつれて運転者が光源ユニット12を見る角度が変化した場合でも、見かけの光量の急激な変化が抑えられる。
【0057】
一方、光源外側範囲61B内の出射面側凸状部66も、レンズ部60の光学中心60C側の側面66A1が長く、他方の側面66A2が短い断面三角形状を成している。かかる出射面側凸状部66が適宜の間隔で形成されている。
光源外側範囲61Bにも出射面側凸状部66が設けられることで、これら出射面側凸状部66内での全反射により、これら出射面側凸状部66のそれぞれから正面側に向けて器具幅方向Dwに放射状に拡がる光を出射することができる。また、光源外側範囲61Bの光が、より連なって見えるようになる。
【0058】
また、本実施形態のレンズ部60によれば、入射面側凸状部64、及び出射面側凸状部66が設けられることで、レンズ部60を正面視した際の輝度分布に、器具高さ方向Dhに延びる線状の複数の暗部が器具幅方向Dwに生じ、眩しさが低減される。
【0059】
さて、前掲
図5に示すように、光源ユニット12の正面側には、出射開口10が形成された上述の出射開口形成遮光板9が配置されている。この出射開口形成遮光板9は、第2光学板24の器具高さ方向Dhにおける上端部24Taを正面視において覆うように配置されている。これにより、上端部24Taで生じた迷光に起因する上方光束が出射開口形成遮光板9で確実にカットされ、上方出射光の光量を更に低減できる。
なお、本実施形態では、出射開口形成遮光板9を光源ユニット12と前面カバー8の間(前面カバー8の裏面側)に設けたが、前面カバー8の表面側に設けてもよい。
【0060】
かかる第2光学板24は、前掲
図5に示すように、横断面視において、レンズ部60の出射面60Bの法線方向60Dを鉛直角90度方向Bに向けて配置される。また本実施形態のレンズ部60は、
図5に示すように、器具高さ方向Dhにおける照明光軸Kaよりも下方に湾曲部70を備えている。湾曲部70は、横断面視において、出射面60Bの法線方向60Dが鉛直角90度未満になることで第1光学板22に向けて湾曲した部位である。
この湾曲部70においては、上記入射面側凸状部64、及び出射面側凸状部66の突出方向が鉛直角90度方向Bよりも下方を向くため、出射光が道路面内の縦断方向面に沿って拡がり易くなる。これにより、道路横断方向において道路面の中の器具寄りの場所の照度が高くなり易い現象を緩和することができ、また、道路面のうち低位置道路照明器具1が設置された側を走行方向Aの遠方(特に低位置道路照明器具1同士の間)まで照らすことができる。
【0061】
次いで、本実施形態のLED光源20について詳述する。
前掲
図4(A)に示すように、LED光源20において、全てのLED30が器具幅方向Dwに延びる直線Laに沿って配列されるのではなく、一部の幾つかのLED30は、第1直線L1よりもΔd(本実施形態ではΔd=1mm)だけ実装面32A内で器具高さ方向Dhの上方にずらして配列されている。
【0062】
図12は、低位置道路照明器具1によって照明された道路面の照度分布を示す図である。
同図に示すように、全てのLED30を第1直線L1に沿ってずれる事無く配置した場合(図中:ずらし無し)、低位置道路照明器具1の正面側であって道路幅方向の略中央に照度が低い低照度箇所Qが生じる。
これに対し、一部のLED30を第1直線L1からずれ量Δdだけ上方にずらして配置した場合(図中:ずらし有り)、低照度箇所Qの照度が高められる。
【0063】
このように、本実施形態の低位置道路照明器具1においては、LED光源20が備える一部のLED30を第1直線L1から器具高さ方向Dhの上方にずらして配置するだけで、道路面の照度分布を調整し、照度ムラを簡単に改善することができる。
なお、ずらす対象のLED30、及び、ずれ量Δdは、光学シミュレーションや試作機の試験等によって適宜に決定可能である。
また、道路幅方向において低位置道路照明器具1よりも遠方に低照度箇所Qが生じる場合は、一部のLED30を第1直線L1から器具高さ方向Dhの下方にずらして配置することで、当該低照度箇所Qの照度を改善することができる。ただし、LED30が下方にずれることで上方光束が発生し易くなり得るため、ずらす対象のLED30、及び、ずれ量Δdは、上方光束による上方出射光の光度値が規定値を超えない範囲で決定される。
【0064】
図13は基板32の構成を示す図であり、
図13(A)は実装面32Aの側を視た図であり、
図13(B)は裏面側を視た図である。
同図に示すように、実装面32A、及び裏面のそれぞれには、回路を構成する導電パターン80A、80Bが銅箔によって形成されている。そして本実施形態では、裏面側の導電パターン80Bは、実装面32Aの導電パターン80Aを、実装面32Aの側から見て、そのまま裏面に投影した形状となっている。
一般に、LED30を実装する基板32においては、器具側への熱伝導や放熱をよくするため、裏面側の導電パターン80Bは、実装面32Aの導電パターン80Aよりも大きな面積を有するように形成される。
しかしながら、実装面32Aと裏面とで導電パターン80A、80Bの形状や面積が異なる場合、基板温度上昇時には両面の間に熱膨張差が生じ、リフロー時や高温点灯時などにおいて基板32に反りを発生させる要因となる。
本実施形態では、裏面側の導電パターン80Bは、実装面32Aの導電パターン80Aを、実装面32Aの側から見て、そのまま裏面に投影した形状となっており、これら両方の導電パターン80A、及び導電パターン80Bが同一形状、同一面積であり、かつ、同一箇所に形成されることで、上述の熱膨張差が生じることがなく、基板32の反りを抑えることができる。
【0065】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0066】
本実施形態の低位置道路照明器具1は、LED光源20から放射された光が入射する第1光学板22と、当該第1光学板22から出射された光が入射する第2光学板24と、を備え、第1光学板22は、器具幅方向Dw(第1方向)に直交する器具高さ方向Dh(第2方向)において照明光軸Kaよりも上側の上側領域Raに、入射光を集光することで当該入射光を平行光化するリニアフレネルレンズ部40を有している。また、第2光学板24は、第1光学板22から入射する光を器具幅方向Dwに拡げて出射するレンズ部60を備えている。
【0067】
かかる構成によれば、器具高さ方向Dhにおいて照明光軸Kaよりも上方の出射光が第1光学板22によって平行光化されるため、上方出射光の源となる上方光束が発生することがない。これにより、上方出射光の光度値が抑えられた低位置道路照明器具1が実現できる。
また、第1光学板22の出射光は第2光学板24によって器具幅方向Dwに拡げられるため、低位置道路照明器具1の照明光は走行方向Aに延びた光となる。これにより、低位置道路照明器具1の設置間隔を従前の器具よりも広げる(いわゆる、広スパン化)ことができる。
さらに、器具高さ方向Dhにおいて照明光軸Kaよりも下方の出射光は、第1光学板22によって拡散されるため、例えば運転者などが低位置道路照明器具1の正面2Fを下方から覗き込んだ場合に、光源ユニット12のギラツキ感を抑えることができる。
これに加え、第1光学板22は、リニアフレネルレンズ部40がシリンドリカルレンズである場合に比べて厚みを抑えることができ、光源ユニット12、及び器具本体2を薄型化できる。
また、第1光学板22、第2光学板24、及び出射開口形成遮光板9(照射開口10)のそれぞれの距離を調整することで、道路幅員や路肩幅員、低位置道路照明器具1の設置高さ、低位置道路照明器具1の設置間隔などに応じて適切な照明光を得ることができ、共通の構成で広いラインナップを実現し、低コスト化を図ることができる。例えば、
図14に示すように、路肩幅員が広い道路の照明に適した照明光(図中、広路肩用)や、路肩幅員が狭い道路の照明に適した照明光(図中、狭路肩用)を得ることができる。
【0068】
本実施形態の低位置道路照明器具1において、第1光学板22は、器具高さ方向Dhにおいて照明光軸Kaよりも下側の下側領域Rbに、レンチキュラーレンズ部42を有している。
これにより、第1光学板22の厚みを増すことなく、下側領域Rbに入射する光を拡散させることができる。
【0069】
本実施形態の低位置道路照明器具1において、照明光軸Kaは俯角が10度±5度の範囲に設定されているため、上方光束の発生がより確実に抑えられる。
【0070】
本実施形態の低位置道路照明器具1において、第1光学板22のリニアフレネルレンズ部40を構成する複数のフレネルプリズム44が、当該第1光学板22の出射面40Bに設けられている。
これにより、LED光源20の放射光がフレネルプリズム44のライズ面52で反射することで、上方光束を生じさせてしまうことがない。
【0071】
本実施形態の低位置道路照明器具1において、第1光学板22は、出射面40Bの法線方向22Dを照明光軸Kaの方向を向けて配置されているため、照明光軸Kaの方向の光量を高め、低位置道路照明器具1の正面側において、当該低位置道路照明器具1から遠い箇所の照度を確保することができる。
【0072】
本実施形態の低位置道路照明器具1において、第1光学板22のリニアフレネルレンズ部40を構成する複数のフレネルプリズム44はそれぞれ、フレネル面50とライズ面52とを有する断面三角形状を成し、当該ライズ面52のライズ角βは、第1光学板22の入射面40Aに入射し当該入射面40Aで屈折した光線Haがライズ面52に入射することがない角度に設定されている。
これにより、ライズ面52への光線Haの入射が防止されることで、当該ライズ面52で全反射した光線Haによって上方光束が発生することがない。
【0073】
本実施形態の低位置道路照明器具1において、器具高さ方向Dhにおける第1光学板22の上端部22Ta、及び下端部22Tbから出射される光を遮光する第1光学板端部遮光部26を備えている。
これにより、上端部22Ta、及び下端部22Tbから出射され得る迷光が遮光されることで、この迷光によって生じ得る上方光束を第1光学板端部遮光部26によって確実にカットできる。
【0074】
本実施形態の低位置道路照明器具1において、第2光学板24は、器具高さ方向Dhにおける照明光軸Kaよりも下側に、第1光学板22に向けて湾曲した湾曲部70を備える。
この湾曲部70においては、入射面側凸状部64、及び出射面側凸状部66の突出方向が鉛直角90度方向Bよりも下方を向くため、出射光が器具幅方向Dwに拡がり易くなる。これにより、道路横断方向において道路面の中の器具寄りの場所の照度が高くなり易い現象を緩和することができ、また、道路面のうち低位置道路照明器具1が設置された側を走行方向Aの遠方まで照らすことができる。
【0075】
本実施形態の低位置道路照明器具1において、LED光源20は、LED30が実装された基板32を備え、この基板32の実装面32Aは、当該実装面32Aでの反射を抑える低反射性材料、或いは、当該実装面からの反射光を遮光するカバー部材で覆われている。
これにより、実装面32Aでの反射による迷光の発生や、当該迷光による上方光束の発生を抑えることができる。
【0076】
本実施形態の低位置道路照明器具1において、直線状に配列されたLED30の一部が、器具高さ方向Dhにずらして配置されている。
これにより、道路面の照度分布を調整し、照度ムラを簡単に改善することができる。
【0077】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであって、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて任意に変形、及び応用が可能である。
【0078】
上述した低位置道路照明器具1において、第2光学板24のレンズ部60の入射面側凸状部64、及び出射面側凸状部66は、器具幅方向Dwにおいて光学中心60Cに対称ではなく非対称な形状であってもよい。
これより、プロビーム側に多くの光量を振り分けた、いわゆるプロビーム配光を実現できる。第2光学板24を交換するだけで、器具幅方向Dwにおいて対称な配光と、プロビーム配光とを簡単に切り替えることができる。
【0079】
上述した低位置道路照明器具1において、第2光学板24の入射面側凸状部64を、第1光学板22の入射面40Aに設けることで、第2光学板24を省略し、高効率化や、さらなる薄型化、コストダウン化を図ってもよい。
【0080】
上述した低位置道路照明器具1において、LED光源20の数や、LED30の数などは、必要な照明光の光束に応じて適宜に変更可能である。
【0081】
上述した低位置道路照明器具1において、LED光源20のLED30は、SMD型ではなく、器具幅方向Dwに長い矩形状に多数の発光素子(典型的にはLED)を集積したCOB(Chip On Board)型であってもよい。
【0082】
上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数値、形状は、特段の断りがない限り、それら方向や数値、形状と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【符号の説明】
【0083】
1 位置道路照明器具(照明器具)
9 出射開口形成遮光板
10 出射開口
12 光源ユニット
20 LED光源(光源)
22 第1光学板
22D 法線方向
22Ta 上端部
22Tb 下端部
24 第2光学板
26 第1光学板端部遮光部
30 LED(発光素子)
32 基板
32A 実装面
40 リニアフレネルレンズ部
42 レンチキュラーレンズ部
44 フレネルプリズム
50 フレネル面
52 ライズ面
60 レンズ部
60C 光学中心
64 入射面側凸状部
66 出射面側凸状部
70 湾曲部
Dh 器具高さ方向(第2方向)
Dw 器具幅方向(第1方向)
Ka 照明光軸
Kb 光源光軸
Kc 発光素子光軸
Ra 上側領域
Rb 下側領域
β ライズ角