(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20240214BHJP
G01D 11/24 20060101ALI20240214BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G01D11/24 B
H05K5/02 L
(21)【出願番号】P 2020119200
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2020003829
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】土岐 公宏
(72)【発明者】
【氏名】山北 稔
(72)【発明者】
【氏名】常峰 佑華
(72)【発明者】
【氏名】山口 昌之
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/009092(WO,A1)
【文献】特開2015-025725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/06
G01D 11/24
G02B 27/01
B60R 11/02
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有し、前記内部空間と外部とを連通させる開口部(11)を上面に有する筐体(10)と、
前記開口部を覆うように前記筐体に取り付けられる防塵シート(20)と、
を備え、
前記筐体は、前記開口部の外周部分における前記防塵シートと対向する部分であるシート載置部(12)に、上方に向かって突出する複数の位置決めピン(13)を有し、
前記防塵シートは、前記複数の位置決めピンに対向する部分に、前記複数の位置決めピンを挿通させるための孔である複数の位置決め孔(21)を有し、
前記シート載置部には、前記複数の位置決めピンそれぞれの周囲のうち少なくとも前記開口部側となる部分に、前記シート載置部における前記防塵シートに接する面である載置面(121)よりも凹んだ部分である凹部(122)が形成される、車両用表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用表示装置であって、
前記載置面は、前記シート載置部における前記防塵シートの隅部に対向する部分を含む部分に形成される、車両用表示装置。
【請求項3】
内部空間を有し、前記内部空間と外部とを連通させる開口部(11)を上面に有する筐体(10)と、
前記開口部を覆うように前記筐体に取り付けられる防塵シート(20)と、
前記防塵シートを前記筐体に固定する複数の取付ピン(30)と、
を備え、
前記筐体は、前記開口部の外周部分における前記防塵シートと対向する部分であるシート載置部(12)に、前記複数の取付ピンが差し込まれる穴である複数の差込穴(124)を有し、
前記防塵シートは、前記複数の差込穴に対向する部分に、前記複数の取付ピンを挿通させるための孔である複数の取付孔(22)を有し、
前記シート載置部には、前記複数の差込穴それぞれの周囲のうち少なくとも前記開口部側となる部分に、前記シート載置部における前記防塵シートに接する面である載置面(121)よりも凹んだ部分である凹部(125)が形成される、車両用表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用表示装置であって、
前記複数の取付ピンは、第1の取付ピン(30a)及び第2の取付ピン(30b)を有し、
前記載置面は、一定の曲率で湾曲する湾曲載置面(121c,121d)を有し、
前記湾曲載置面は、前記開口部の第1方向の両方の縁部を構成し、前記第1方向と直交する第2方向に長さを有し、前記第2方向における両側の端部の間が凹んだ湾曲形状を有し、
前記防塵シートは、前記湾曲載置面と接する当接部(20c,20d)を有し、
前記当接部は、前記湾曲載置面に沿って湾曲するように、前記第1の取付ピン及び前記第2の取付ピンにより前記湾曲載置面に固定され、
前記第1の取付ピン及び前記第2の取付ピンは、前記当接部の前記第2方向における両側の端部である第1の終端Q1及び第2の終端Q2までの間に配置され、
前記第1の取付ピンが取り付けられる位置である位置P1は、前記第2の取付ピンが取り付けられる位置である位置P2よりも前記第1の終端Q1側に配置され、
前記第1の取付ピン及び前記第2の取付ピンは、下記数式(1A)、(1B)及び(1C)を満たす前記位置P1及び前記位置P2に配置される、車両用表示装置。
【数1】
なお、上記数式(1A)~(1C)において、前記第1の終端Q1から前記第2の終端Q2までの円弧の曲率半径を半径rとし、前記位置P1から前記位置P2までの円弧の中心角を中心角θ0とし、前記位置P1から前記第1の終端Q1までの円弧の中心角を中心角θ1とし、前記位置P2から前記第2の終端Q2までの円弧の中心角を中心角θ2と
し、前記半径r及びd0~d2の単位はmmである。
【請求項5】
請求項3に記載の車両用表示装置であって、
前記複数の取付ピンは、第1の取付ピン(30a)及び第2の取付ピン(30b)を有し、
前記載置面は、曲率が変化する点である変曲点を有するように湾曲する湾曲載置面(121c,121d)を有し、
前記湾曲載置面は、前記開口部の第1方向の両方の縁部を構成し、前記第1方向と直交する第2方向に長さを有し、前記第2方向における両側の端部の間が凹んだ湾曲形状を有し、
前記防塵シートは、前記湾曲載置面と接する当接部(20c,20d)を有し、
前記当接部は、前記湾曲載置面に沿って湾曲するように、前記第1の取付ピン及び前記第2の取付ピンにより前記湾曲載置面に固定され、
前記第1の取付ピン及び前記第2の取付ピンは、前記当接部の前記第2方向における両側の端部である第1の終端Q1及び第2の終端Q2までの間に配置され、
前記第1の取付ピン及び前記第2の取付ピンのいずれか一方は、前記変曲点に配置され、
前記第1の取付ピンが取り付けられる位置である位置P1は、前記第2の取付ピンが取り付けられる位置である位置P2よりも前記第1の終端Q1側に配置され、
前記第1の取付ピン及び前記第2の取付ピンは、下記数式(2A)、(2B)及び(2C)、又は、数式(3A)、(3B)及び(3C)を満たす前記位置P1及び前記位置P2に配置される、車両用表示装置。
【数2】
又は
【数3】
なお、上記数式(2A)~(2C)及び数式(3A)~(3C)において、前記第1の終端Q1から前記変曲点までの円弧の曲率半径を半径r1とし、前記第2の終端Q2から前記変曲点までの円弧の曲率半径を半径r2とし、前記位置P1から前記位置P2までの円弧の中心角を中心角θ0とし、前記位置P1から前記第1の終端Q1までの円弧の中心角を中心角θ1とし、前記位置P2から前記第2の終端Q2までの円弧の中心角を中心角θ2と
し、前記半径r1、前記半径r2及びd0~d2の単位はmmである。
【請求項6】
請求項3に記載の車両用表示装置であって、
前記複数の取付ピンは、第1の取付ピン(30a)及び第2の取付ピン(30b)を有し、
前記載置面は、曲率が変化する点である変曲点を有するように湾曲する湾曲載置面(121c,121d)を有し、
前記湾曲載置面は、前記開口部の第1方向の両方の縁部を構成し、前記第1方向と直交する第2方向に長さを有し、前記第2方向における両側の端部の間が凹んだ湾曲形状を有し、
前記防塵シートは、前記湾曲載置面と接する当接部(20c,20d)を有し、
前記当接部は、前記湾曲載置面に沿って湾曲するように、前記第1の取付ピン及び前記第2の取付ピンにより前記湾曲載置面に固定され、
前記第1の取付ピン及び前記第2の取付ピンは、前記当接部の前記第2方向における両側の端部である第1の終端Q1及び第2の終端Q2までの間に、前記変曲点を挟んで配置され、
前記第1の取付ピンが取り付けられる位置である位置P1は、前記第2の取付ピンが取り付けられる位置である位置P2よりも前記第1の終端Q1側に配置され、
前記第1の取付ピン及び前記第2の取付ピンは、下記数式(4A)、(4B)及び(4C)を満たす前記位置P1及び前記位置P2に配置される、車両用表示装置。
【数4】
なお、上記数式(4A)~(4C)において、前記第1の終端Q1から前記変曲点までの円弧の曲率半径を半径r1とし、前記第2の終端Q2から前記変曲点までの円弧の曲率半径を半径r2とし、前記位置P1から前記変曲点までの円弧の中心角を中心角θ0とし、前記位置P2から前記変曲点までの円弧の中心角を中心角θ1とし、前記位置P2から前記第2の終端Q2までの円弧の中心角を中心角θ2とし、前記位置P1から前記第1の終端Q1までの円弧の中心角を中心角θ3と
し、前記半径r1、前記半径r2及びd0~d2の単位はmmである。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の車両用表示装置であって、
前記当接部の前記湾曲載置面への固定には、前記第1の取付ピン及び前記第2の取付ピンの2つの取付ピンが用いられる、車両用表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用表示装置であって、
前記筐体は、前記シート載置部に、上方に向かって突出する複数の位置決めピン(13)を有し、
前記複数の位置決めピンは、前記シート載置部の四隅において対角線上に配置される、車両用表示装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の車両用表示装置であって、
前記シート載置部は、前記開口部を囲む部分に形成される前記載置面の外周部分に、溝状に形成される排水路(126)を有し、
前記排水路は、前記排水路内の液体を排出する排出口(127)を有し、
前記排水路と前記凹部(122,125)とは連続しており、
前記凹部及び前記排水路の底部(1221,1251,1261)は、前記排出口に近づくにつれて鉛直方向の高さが低くなるように形成されている、車両用表示装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の車両用表示装置であって、
前記車両用表示装置は、ヘッドアップディスプレイ(1)である、車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたヘッドアップディスプレイ装置(以下「HUD装置」という。)は、筐体の上面に、筐体内部に収容される表示器から発せられた表示光を通過させるための開口部が設けられている。この種のHUD装置では、筐体の開口部から筐体内部へ液体が侵入すると筐体内部の機器に悪影響を与えることから、特許文献1では、筐体内部の液体を排出する排出口と、開口部から筐体内部へ侵入した液体を排出口へと導く斜面と、を筐体に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のHUD装置には、筐体の開口部が防塵シートによって覆われているものがあり、防塵シートはピンによって筐体に取り付けられる。このようなHUD装置では、当該ピンと防塵シートに形成されるピン孔との間の微小な隙間から防塵シートの下面と筐体における防塵シートの載置面との間に入り込んだ液体が、開口部の方向に流れ、開口部から筐体内部へと侵入する事象が発生し得るという課題が見出された。
【0005】
このような事象に対し、防塵シートの下面と筐体における防塵シートの載置面との間に両面接着シートを貼って液体の入り込みを防ぐことにより、入り込んだ液体が開口部の方向に流れて開口部から筐体内部へと侵入することを抑制する方法が考えられる。しかしながら、当該方法では、両面接着シートの部品費及び組み付け工数の増加等によって製造コストが増加する。
【0006】
本開示の一局面は、コストを削減しつつ、開口部から筐体内部へと液体が侵入することを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、車両用表示装置であって、筐体(10)と、防塵シート(20)と、を備える。筐体は、内部空間を有し、内部空間と外部とを連通させる開口部(11)を上面に有する。防塵シートは、開口部を覆うように筐体に取り付けられる。筐体は、開口部の外周部分における防塵シートと対向する部分であるシート載置部(12)に、上方に向かって突出する複数の位置決めピン(13)を有する。防塵シートは、複数の位置決めピンに対向する部分に、複数の位置決めピンを挿通させるための孔である複数の位置決め孔(21)を有する。シート載置部には、複数の位置決めピンそれぞれの周囲のうち少なくとも開口部側となる部分に、シート載置部における防塵シートに接する面である載置面(121)よりも凹んだ部分である凹部(122)が形成される。
【0008】
このような構成によれば、両面接着シートを用いずとも、位置決めピンと位置決め孔との間の隙間から防塵シートよりも下方へ入り込んだ液体が開口部へと流れることを抑制できる。このため、コストを削減しつつ、開口部から筐体内部へと液体が侵入することを抑制できる。
【0009】
本開示の別の態様は、車両用表示装置であって、筐体(10)と、防塵シート(20)と、複数の取付ピン(30)と、を備える。筐体は、内部空間を有し、内部空間と外部とを連通させる開口部(11)を上面に有する。防塵シートは、開口部を覆うように筐体に取り付けられる。複数の取付ピンは、防塵シートを筐体に固定する。筐体は、開口部の外周部分における防塵シートと対向する部分であるシート載置部(12)に、複数の取付ピンが差し込まれる穴である複数の差込穴(124)を有する。防塵シートは、複数の差込穴に対向する部分に、複数の取付ピンを挿通させるための孔である複数の取付孔(22)を有する。シート載置部には、複数の差込穴それぞれの周囲のうち少なくとも開口部側となる部分に、シート載置部における防塵シートに接する面である載置面(121)よりも凹んだ部分である凹部(125)が形成される。
【0010】
このような構成によれば、両面接着シートを用いずとも、取付ピンと取付孔との間の隙間から防塵シートよりも下方へ入り込んだ液体が開口部へと流れることを抑制できる。このため、コストを削減しつつ、開口部から筐体内部へと液体が侵入することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】HUD装置の車両への取付状態及び作用を示す概略図である。
【
図3】防塵シートが取り付けられていない状態のHUD装置の斜視図である。
【
図4】防塵シートが取り付けられていない状態のHUD装置を鉛直方向上方から見た平面図である。
【
図5】位置決めピン周りの排水構造を拡大した斜視図である。
【
図6】取付ピン周りの排水構造を拡大した斜視図である。
【
図9】防塵シートよりも下方へ入り込んだ液体が排水構造により排出される全体的な流れを示した図である。
【
図10】第1の湾曲載置面及び第2の湾曲載置面が一定の曲率で湾曲する構成において、第1の取付ピン及び第2の取付ピンが取り付けられる位置の配置条件を示す模式図である。
【
図11】第1の湾曲載置面及び第2の湾曲載置面が変曲点を有するように湾曲し、第1の取付ピンが変曲点に配置される構成において、第1の取付ピン及び第2の取付ピンが取り付けられる位置の配置条件を示す模式図である。
【
図12】第1の湾曲載置面及び第2の湾曲載置面が変曲点を有するように湾曲し、第2の取付ピンが変曲点に配置される構成において、第1の取付ピン及び第2の取付ピンが取り付けられる位置の配置条件を示す模式図である。
【
図13】第1の湾曲載置面及び第2の湾曲載置面が変曲点を有するように湾曲し、第1の取付ピン及び第2の取付ピンのいずれも変曲点に配置されない構成において、第1の取付ピン及び第2の取付ピンが取り付けられる位置の配置条件を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
[1-1.HUD装置の構造]
図1~
図4に示すHUD装置1は、車両に搭載され、ドライバの前方に位置するウィンドシールド又はコンバイナを被投影部材として表示光を投影することにより、表示光が示す情報を、車両の前景に重畳された虚像Vとしてドライバに認識させる装置である。HUDは、Head-Up Displayの略である。
図2に示すように、本実施形態では、被投影部材はウィンドシールド4である。
【0013】
HUD装置1は、ウィンドシールド4の下方であって、車両の前席正面に設けられたインストルメントパネル5の内部に設けられる。インストルメントパネル5は、その上面にHUD装置1からの表示光を通過させるインパネ開口部51を有する。HUD装置1から投射された表示光は、インパネ開口部51を通過し、ウィンドシールド4に反射してドライバの視線方向に向かう。これによりドライバは、表示光が表す情報を車両の前景に重畳された虚像Vとして認識する。
【0014】
以下、
図2のようにHUD装置1が車両に設置された状態での車両の前後方向、左右方向及び上下方向を基準に、HUD装置1の方向を表現する。なお、
図1~
図9では、車両の前後方向をX軸方向で、左右方向をY軸方向で、上下方向をZ軸方向で、表している。
【0015】
図1に示すように、HUD装置1は、筐体10と、防塵シート20と、複数の取付ピン30と、を備える。
筐体10は、
図3及び
図4に示すように、内部空間を有し、内部空間と外部とを連通させる開口部11を上面に有する。筐体10の内部空間には、表示ユニットが収容される。表示ユニットは、図示を省略するが、表示部と、光学系と、を有する。表示部は、画像を表示する液晶パネル等で構成され、虚像を形成するための表示光を放射する。光学系は、反射鏡及びレンズを含む複数の光学部品を有し、表示部から照射された表示光が、筐体10の開口部11を介して外部に投射されるように表示光を導く。
【0016】
防塵シート20は、
図1に示すように、可視光を透過する樹脂材料で形成された平板状のシート材である。防塵シート20は、筐体10の開口部11よりも外形が大きく形成されており、本実施形態では、長方形状をしている。防塵シート20は、開口部11の全体を覆うように筐体10に取り付けられる。
【0017】
筐体10の上面のうち、開口部11の外周部分における防塵シート20と対向する部分を、シート載置部12という。シート載置部12は、
図3及び
図4に示すように、防塵シート20に接する面である載置面121を有する。載置面121は、開口部11の外周を一周するように開口部11を囲む部分に少なくとも形成される。載置面121は、シート載置部12における開口部11を囲む部分以外の部分、例えば、本実施形態では後述する当て形状123の上面、にも形成されてもよい。防塵シート20は、載置面121に載置されて下方から支持される。なお、シート載置部12とは、開口部11の外周部分における防塵シート20と対向する部分すべてをいい、後述する第1凹部122、第2凹部125及び排水路126等のように、防塵シート20と対向するが防塵シート20に接していない部分も含むものである。載置面121は、後方側から前方側にかけて鉛直方向の高さが徐々に低くなるように傾斜している。
【0018】
具体的には、載置面121は、第1の載置面121aと、第2の載置面121bと、第1の湾曲載置面121cと、第2の湾曲載置面121dと、を有する。
第1の載置面121aは、開口部11の外周部分における後方側の縁部を構成し、Y軸方向に長さを有する面である。第2の載置面121bは、開口部11の外周部分における前方側の縁部を構成し、Y軸方向に長さを有する面である。第2の載置面121bは、第1の載置面121aよりも鉛直方向の高さが低い位置において、第1の載置面121aと対向して配置される。すなわち、第1の載置面121a及び第2の載置面121bは、開口部11のX軸方向の両方の端部を構成する。
【0019】
第1の湾曲載置面121cは、開口部11の外周部分における右方側の縁部を構成し、X軸方向に長さを有する面である。第2の湾曲載置面121dは、開口部11の外周部分における左方側の縁部を構成し、X軸方向に長さを有する面である。第1の湾曲載置面121c及び第2の湾曲載置面121dは、第1の載置面121aと第2の載置面121bとの間に互いに対向して配置される。すなわち、第1の湾曲載置面121c及び第2の湾曲載置面121dは、開口部11のY軸方向の両方の端部を構成する。第1の湾曲載置面121c及び第2の湾曲載置面121dは、X軸方向における両側の端部の間が凹んだ湾曲形状を有する。換言すると、第1の湾曲載置面121c及び第2の湾曲載置面121dは、鉛直方向下方に向かって凹んだ湾曲形状を有する。
【0020】
図1に示すように、防塵シート20は、シート載置部12に設けられる後述する複数の位置決めピン13によって適当な取付位置に位置決めされ、シート載置部12において複数の取付ピン30によって筐体10に固定される。防塵シート20は、載置面121に沿って後方側から前方側にかけて鉛直方向の高さが徐々に低くなるように傾斜して筐体10に取り付けられる。
【0021】
防塵シート20は、載置面121と接する部分として、第1の端部20aと、第2の端部20bと、第1の当接部20cと、第2の当接部20dと、を有する。具体的には、第1の端部20aが第1の載置面121aと接し、第2の端部20bが第2の載置面121bと接し、第1の当接部20cが第1の湾曲載置面121cと接し、第2の当接部20dが第2の湾曲載置面121dと接する。
【0022】
第1の当接部20c及び第2の当接部20dは、第1の湾曲載置面121c及び第2の湾曲載置面121dにそれぞれ沿って湾曲するように、複数の取付ピン30により第1の湾曲載置面121c及び第2の湾曲載置面121dにそれぞれ固定される。これにより、
図2に示すように、防塵シート20のX-Z断面形状は、湾曲形状を有する。
【0023】
図1、
図3及び
図4に示すように、筐体10は、シート載置部12に、上方に向かって突出する複数の位置決めピン13を有する。防塵シート20は、複数の位置決めピン13に対向する部分に、複数の位置決めピン13を挿通させるための孔である複数の位置決め孔21を有する。位置決めピン13の先端部分は、対応する位置決め孔21よりも所定の長さだけ上方へ突出する。複数の位置決め孔21に複数の位置決めピン13が挿通されることにより、防塵シート20が取付位置に位置決めされ、防塵シート20の移動が規制される。
【0024】
位置決めピン13は、シート載置部12における防塵シート20の隅部に対向する部分に設けられている。本実施形態のように防塵シート20が長方形状である場合、位置決めピン13は、シート載置部12における、防塵シート20の四隅のうち少なくとも二隅に対向する部分に設けられる。本実施形態では、位置決めピン13は、シート載置部12における、防塵シート20の四隅のうち左前及び右前の二隅に対向する部分に設けられている。なお、位置決めピン13は、シート載置部12における、防塵シート20の四隅において、対角線上に配置されてもよい。例えば、位置決めピン13は、シート載置部12における、防塵シート20の四隅のうち左前及び右後の二隅、又は、右前及び左後の二隅に設けられていてもよい。
【0025】
筐体10は、シート載置部12に、複数の取付ピン30が差し込まれる穴である複数の差込穴124を有する。差込穴124は、シート載置部12における、防塵シート20の四隅以外の部分に対向する部分に設けられる。防塵シート20は、複数の差込穴124に対向する部分に、複数の取付ピン30を挿通させるための孔である複数の取付孔22を有する。複数の取付ピン30は、防塵シート20の上方から、複数の取付孔22に挿通された後、複数の差込穴124に差し込まれて固定される。これにより、防塵シート20は、複数の取付ピン30の後述する本体部31とシート載置部12との間に挟まれ、筐体10に固定される。
【0026】
取付ピン30は、
図8に示すように、円板状の本体部31と、本体部31の上面から突出する取手部32と、本体部31の下面から突出する複数の脚部33と、を有する。複数の脚部33は、その先端に、互いに外方向を向くように突設された係合爪34を有する。取付ピン30は、複数の脚部33が弾性変形された状態で筐体10の差込穴124に差し込まれ、差込穴124を通過した脚部33が元の形状に戻ることで係合爪34が差込穴124の下面側に係合して固定される、いわゆるスナップフィット構造を有する。
【0027】
HUD装置1は、
図1に示すように防塵シート20が筐体10に取り付けられた状態で、防塵シート20の下面と載置面121との間への液体の入り込みが生じやすい部分に、当該部分から入り込んだ液体を排出する排水構造を備える。なお、ここでいう液体は水に限られない。液体の入り込みが生じやすい部分とは、具体的には、位置決めピン13と位置決め孔21との間の隙間、取付ピン30と取付孔22との間の隙間、及び、防塵シート20の縁部である。シート載置部12は、
図5に示す位置決めピン13周りに設けられる排水構造、及び、
図6~
図8に示す取付ピン30周りに設けられる排水構造を有する。これらの排水構造の詳細については後述する。
【0028】
さらに、シート載置部12は、防塵シート20の縁部周りに設けられる排水構造として、
図3及び
図4に示す排水路126を有する。排水路126は、開口部11を囲む部分に形成される載置面121の外周部分に、溝状に形成される。本実施形態では、排水路126は、開口部11を囲む部分に形成される載置面121の外周部分の全周に形成されている。すなわち、シート載置部12における防塵シート20の縁部に対向する部分には、載置面121が形成されない。
【0029】
排水路126は、開口部11を囲む部分に形成される載置面121を上面に有する部分の側面と、底部1261と、当該側面と対向するように底部1261から立設する側壁14と、により溝状に形成される。
図1に示すように、側壁14は、防塵シート20の縁部に沿って防塵シート20の周囲を外側から囲むように位置する。また、
図8に示すように、側壁14は、上縁の位置が防塵シート20よりも高くなるように形成されている。
図8に矢印で示すように、防塵シート20の縁部から防塵シート20よりも下方へ入り込んだ液体は、側壁14の表面を伝って排水路126の底部1261へと流れるように誘導される。側壁14の上縁は、防塵シート20の縁部から入り込んだ液体が防塵シート20の下面へと回り込むことなく側壁14の表面を伝う場合の液体の表面張力が得られるだけの長さ、防塵シート20よりも上方に突出している。
【0030】
図3及び
図4に示すように、排水路126は、排水路126内の液体を排出する排出口127を有する。排水路126の底部1261は、排出口127に近づくにつれて鉛直方向の高さが低くなるように形成されている。具体的には、排水路126の底部1261は、後方側から前方側にかけて鉛直方向の高さが低くなるように傾斜しており、排出口127は排水路126における前方側の部分に設けられている。本実施形態では、排出口127は、前方左側、前方中央及び前方右側の3箇所に設けられる。排水路126内の液体は、排水路126の傾斜に沿って流れ、排出口127から排出される。
【0031】
[1-2.位置決めピン周りの排水構造]
図3~
図5に示すように、シート載置部12には、複数の位置決めピン13それぞれの周囲のうち少なくとも開口部11側となる部分に、載置面121よりも凹んだ部分である第1凹部122が形成される。すなわち、第1凹部122の底部1221は、載置面121よりも鉛直方向の高さが低くなっている。本実施形態では、位置決めピン13の周囲の全周において第1凹部122が形成されており、
図5に示すように、位置決めピン13は、第1凹部122の底部1221から突出する円柱状の形状をしている。なお、
図5では防塵シート20を省略しており、実際の位置決め孔21の位置を二点鎖線で示している。位置決めピン13の先端部分は、位置決め孔21よりも上方へ突出している。
【0032】
図5に矢印で示すように、位置決めピン13と位置決め孔21との間の隙間から防塵シート20よりも下方へ入り込んだ液体は、液体の表面張力により位置決めピン13の表面を伝って第1凹部122の底部1221へと流れるように誘導される。位置決めピン13の先端部分は、当該隙間から入り込んだ液体が防塵シート20の下面へと回り込むことなく位置決めピン13の表面を伝う場合の液体の表面張力が得られるだけの長さ、位置決め孔21よりも上方に突出している。
【0033】
第1凹部122は、排水路126と連続している。第1凹部122の底部1221は、排水路126の底部1261と同様、後方側から前方側にかけて鉛直方向の高さが低くなるように傾斜している。換言すれば、底部1221は、排出口127に近づくにつれて鉛直方向の高さが低くなるように形成されている。なお、本実施形態では、第1凹部122の底部1221と排水路126の底部1261とは、段差なく一体的に形成されている。
図5に矢印で示すように、位置決めピン13を伝って底部1221へと流れ込んだ液体は、排水路126へと誘導され、排出口127から排出される。
【0034】
図4に示すように、シート載置部12は、位置決めピン13よりも開口部11から遠い部分に、防塵シート20に下方から接して防塵シート20の隅部を支持する当て形状123を有する。
図5に示すように、当て形状123は、第1凹部122の底部1221から突出する円柱状の形状をしており、上面に載置面121を有する。本実施形態では、位置決めピン13の外周部分には載置面121が形成されないため、当て形状123を設けることにより、防塵シート20の位置決めピン13周りの隅部を支持している。このように、防塵シート20のすべての隅部が支持されるように、載置面121は、シート載置部12における防塵シート20の隅部に対向する部分を含む部分に形成される。
【0035】
[1-3.取付ピン周りの排水構造]
図3~
図4及び
図6~
図8に示すように、シート載置部12には、複数の差込穴124それぞれの周囲のうち少なくとも開口部11側となる部分に、載置面121よりも凹んだ部分である第2凹部125が形成される。すなわち、第2凹部125の底部1251は、載置面121よりも鉛直方向の高さが低くなっている。第2凹部125は、排水路126と連続している。
図4に示すように、本実施形態では、第2凹部125は、鉛直方向上方から見てU字状に形成されており、U字の内側に差込穴124を含み、U字の両端部が排水路126と連続するように位置する。
【0036】
図6及び
図7に示すように、第2凹部125の底部1251は、排水路126の底部1261と同様、後方側から前方側にかけて鉛直方向の高さが低くなるように傾斜している。換言すれば、底部1251は、排出口127に近づくにつれて鉛直方向の高さが低くなるように形成されている。
【0037】
図7及び
図8に矢印で示すように、取付ピン30と取付孔22との間の隙間から防塵シート20よりも下方へ入り込んだ液体は、開口部11よりも手前に位置する第2凹部125へと流れ込むように誘導される。第2凹部125へと流れ込んだ液体は、
図6に矢印で示すように、排水路126へと誘導され、排出口127から排出される。
【0038】
[1-4.排水構造における液体の全体的な流れ]
防塵シート20よりも下方へ入り込んだ液体が上述した排水構造により排出される全体的な流れを、
図9に矢印で示す。
【0039】
位置決めピン13と位置決め孔21との間の隙間から防塵シート20よりも下方へ入り込んだ液体は、位置決めピン13の表面を伝って第1凹部122へと流れ込む。第1凹部122内の液体は、排水路126へと誘導される。
【0040】
取付ピン30と取付孔22との間の隙間から防塵シート20よりも下方へ入り込んだ液体は、第2凹部125へと流れ込む。第2凹部125内の液体は、排水路126へと誘導される。
【0041】
防塵シート20の縁部から防塵シート20よりも下方へ入り込んだ液体は、側壁14の表面を伝って排水路126へと流れ込む。
排水路126内の液体は、排水路126の傾斜に沿って流れ、排出口127から排出される。
【0042】
[1-5.複数の取付ピンが取り付けられる位置の決め方]
図1に示すように、第1の当接部20cの第1の湾曲載置面121cへの固定には、複数の取付ピン30として第1の取付ピン30a及び第2の取付ピン30bの2つの取付ピンが用いられる。また、第2の当接部20dの第2の湾曲載置面121dへの固定にも、第1の取付ピン30a及び第2の取付ピン30bの2つの取付ピンが用いられる。なお、第1の当接部20c及び第2の当接部20dは、同様な形状で湾曲して第1の湾曲載置面121c及び第2の湾曲載置面121dに固定されるため、以下では、第1の当接部20cを例に説明する。
【0043】
<第1の湾曲載置面及び第2の湾曲載置面が一定の曲率を有する場合の例>
まず、第1の湾曲載置面121c及び第2の湾曲載置面121dが一定の曲率で湾曲する構成において、位置P1及び位置P2の配置条件を
図10を用いて説明する。ここで、位置P1は、第1の取付ピン30aが取り付けられる位置であり、位置P2は、第2の取付ピン30bが取り付けられる位置である。
【0044】
図10に示すように、第1の取付ピン30a及び第2の取付ピン30bは、第1の当接部20cのX軸方向における両側の端部である第1の終端Q1及び第2の終端Q2までの間に配置される。位置P1は、位置P2よりも第1の終端Q1側に配置される。このような場合に、第1の取付ピン30a及び第2の取付ピン30bは、下記数式(1A)、(1B)及び(1C)を満たす位置P1及び位置P2に配置される。
【0045】
【0046】
なお、上記数式(1A)~(1C)において、第1の終端Q1から第2の終端Q2までの円弧の曲率半径を半径rとする。また、位置P1から位置P2までの円弧の中心角を中心角θ0とし、位置P1から第1の終端Q1までの円弧の中心角を中心角θ1とし、位置P2から第2の終端Q2までの円弧の中心角を中心角θ2とする。
【0047】
<第1の湾曲載置面及び第2の湾曲載置面が変曲点を有し、第1の取付ピン及び第2の取付ピンのいずれか一方が変曲点に配置される場合の例>
次に、第1の湾曲載置面121c及び第2の湾曲載置面121dが、曲率が変化する変曲点Sを有するように湾曲する構成であって、第1の取付ピン30a及び第2の取付ピン30bのいずれか一方が変曲点Sに配置される構成において、位置P1及び位置P2の配置条件を
図11及び
図12を用いて説明する。なお、第1の取付ピン30aが変曲点Sに配置される構成を
図11に示し、第2の取付ピン30bが変曲点Sに配置される構成を
図12に示す。
【0048】
図11に示すように、第1の取付ピン30a及び第2の取付ピン30bは、第1の当接部20cのX軸方向における両側の端部である第1の終端Q1及び第2の終端Q2までの間に配置される。位置P1は、位置P2よりも第1の終端Q1側に配置され、位置P1が変曲点Sに配置される。このような場合に、第1の取付ピン30a及び第2の取付ピン30bは、下記数式(2A)、(2B)及び(2C)を満たす位置P1及び位置P2に配置される。
【0049】
【0050】
図12に示すように、第1の取付ピン30a及び第2の取付ピン30bは、第1の当接部20cのX軸方向における両側の端部である第1の終端Q1及び第2の終端Q2までの間に配置される。位置P1は、位置P2よりも第1の終端Q1側に配置され、位置P2が変曲点Sに配置される。このような場合に、第1の取付ピン30a及び第2の取付ピン30bは、下記数式(3A)、(3B)及び(3C)を満たす位置P1及び位置P2に配置される。
【0051】
【0052】
なお、上記数式(2A)~(2C)及び数式(3A)~(3C)において、第1の終端Q1から変曲点Sまでの円弧の曲率半径を半径r1とし、第2の終端Q2から変曲点Sまでの円弧の曲率半径を半径r2とする。また、位置P1から位置P2までの円弧の中心角を中心角θ0とし、位置P1から第1の終端Q1までの円弧の中心角を中心角θ1とし、位置P2から第2の終端Q2までの円弧の中心角を中心角θ2とする。
【0053】
<第1の湾曲載置面及び第2の湾曲載置面が変曲点を有し、第1の取付ピン及び第2の取付ピンのいずれも変曲点に配置されない場合の例>
次に、第1の湾曲載置面121c及び第2の湾曲載置面121dが、変曲点Sを有するように湾曲する構成であって、第1の取付ピン30a及び第2の取付ピン30bが変曲点Sに配置されない構成において、位置P1及び位置P2の配置条件を
図13を用いて説明する。
【0054】
図13に示すように、第1の取付ピン30a及び第2の取付ピン30bは、第1の当接部20cのX軸方向における両側の端部である第1の終端Q1及び第2の終端Q2までの間に、変曲点Sを挟んで配置される。位置P1は、位置P2よりも第1の終端Q1側に配置される。このような場合に、第1の取付ピン30a及び第2の取付ピン30bは、下記数式(4A)、(4B)及び(4C)を満たす位置P1及び位置P2に配置される。
【0055】
【0056】
なお、上記数式(4A)~(4C)において、第1の終端Q1から変曲点Sまでの円弧の曲率半径を半径r1とし、第2の終端Q2から変曲点Sまでの円弧の曲率半径を半径r2とする。また、位置P1から変曲点Sまでの円弧の中心角を中心角θ0とし、位置P2から変曲点Sまでの円弧の中心角を中心角θ1とし、位置P2から第2の終端Q2までの円弧の中心角を中心角θ2とし、位置P1から第1の終端Q1までの円弧の中心角を中心角θ3とする。
【0057】
[2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)シート載置部12には、複数の位置決めピン13それぞれの周囲のうち少なくとも開口部11側となる部分に、載置面121よりも凹んだ部分である第1凹部122が形成される。このような構成によれば、位置決めピン13と位置決め孔21との間の隙間から防塵シート20よりも下方へ入り込んだ液体を、開口部11よりも手前に位置する第1凹部122へと誘導できる。このため、防塵シート20の下面と載置面121との間に貼って液体の入り込みを防ぐ両面接着シートを用いずとも、防塵シート20よりも下方へ入り込んだ液体が開口部11へと流れることを抑制できる。よって、コストを削減しつつ、開口部11から筐体10の内部へと液体が侵入することを抑制できる。
【0058】
(2b)シート載置部12は当て形状123を有し、当て形状123の上面に形成される載置面121によって防塵シート20の位置決めピン13周りの隅部が支持される。すなわち、防塵シート20のすべての隅部が支持されるように、載置面121は、シート載置部12における防塵シート20の隅部に対向する部分を含む部分に形成される。このような構成によれば、防塵シート20の隅部が下方から支持されるため、防塵シート20の隅部に治具を引っ掛ける等による外的な力によって、防塵シート20の隅部が変形することを抑制できる。
【0059】
(2c)シート載置部12には、複数の差込穴124それぞれの周囲のうち少なくとも開口部11側となる部分に、載置面121よりも凹んだ部分である第2凹部125が形成される。このような構成によれば、取付ピン30と取付孔22との間の隙間から防塵シート20よりも下方へ入り込んだ液体は、開口部11よりも手前に位置する第2凹部125へと流れ込むため、両面接着シートを用いずとも、当該液体が開口部11へと流れることを抑制できる。このため、コストを削減しつつ、開口部11から筐体10の内部へと液体が侵入することを抑制できる。
【0060】
(2d)シート載置部12は、開口部11を囲む載置面121の外周部分に形成される溝状の排水路126を有し、排水路126は、排水路126内の液体を排出する排出口127を有する。第1凹部122及び第2凹部125は、排水路126に連続している。このような構成によれば、第1凹部122及び第2凹部125に流れ込んだ液体を排水路126へと誘導し、排水路126内の液体を排出口127から排出できるため、防塵シート20よりも下方へ入り込んだ液体が排水構造内に留まることを抑制できる。
【0061】
また、防塵シート20の縁部から防塵シート20よりも下方へ入り込んだ液体を排水路126へと誘導することにより、当該液体が開口部11へと流れることを抑制できるため、開口部11から筐体10の内部へと液体が侵入することをより抑制できる。
【0062】
(2e)第1凹部122の底部1221、第2凹部125の底部1251及び排水路126の底部1261は、排出口127に近づくにつれて鉛直方向の高さが低くなるように形成されている。このような構成によれば、排水構造内の液体が傾斜に沿って排出口127の方向へ流れるため、排水構造内の液体の排出がよりスムーズとなる。
【0063】
(2f)本実施形態では、防塵シート20が取り付けられたHUD装置1が搭載される際に、防塵シート20で反射する外来光がドライバの視線に到達するのを抑制するために、防塵シート20は湾曲した状態で筐体10に取り付けられる。このように湾曲した状態の防塵シート20を筐体10に取り付ける複数の取付ピン30の位置によって、防塵シート20が防塵シート20の載置面121から浮く浮き量が変化する。
【0064】
このような防塵シート20の浮きを抑制するために、防塵シート20の下面と筐体10における防塵シート20の載置面121との間を両面接着シートで固定したり、超音波溶着により固定したりする方法が考えられる。
【0065】
しかしながら、当該方法では、両面接着シートの部品費及び組み付け工数の増加や超音波溶着の工数の増加等によって製造コストが増加する。
本実施形態では、上述した数1~数4の数式(1A)~(1C)を満たす位置P1及び位置P2に第1の取付ピン30a及び第2の取付ピン30bがそれぞれ配置される。このため、位置P1から位置P2間の浮き量d0、位置P1から第1の終端Q1までの浮き量d1、及び、位置P2から第2の終端Q2間の浮き量d2がそれぞれ1mm以下に低減される。浮き量d0~d2とは、第1の当接部20c及び第2の当接部20dが第1の湾曲載置面121c及び第2の湾曲載置面121dから浮く浮き量である。したがって、防塵シート20が載置面121から浮くのを抑制することができる。その結果、コストを削減しつつ、筐体10内部への異物の侵入を抑制することができ、防塵シート20の性能を向上することができる。
【0066】
(2g)本実施形態では、第1の当接部20cの第1の湾曲載置面121cへの固定、及び、第2の当接部20dの第2の湾曲載置面121dへの固定には、それぞれ第1の取付ピン30a及び第2の取付ピン30bの2つの取付ピンが用いられる。これにより、例えば、3つ以上の取付ピンを用いる構成、防塵シート20の載置面121との間を両面接着シートで固定したり、超音波溶着により固定したりする構成等と比較して、コストを削減しつつ、筐体10内部への異物の侵入を抑制することができる。
【0067】
(2h)本実施形態では、第1の取付ピン30a及び第2の取付ピン30bが、第1の当接部20c及び第2の当接部20dの第1の終端Q1及び第2の終端Q2までの間に、上述した数1~数4の数式(1A)~(1C)を満たすように配置される。このように、第1の取付ピン30a及び第2の取付ピン30bが防塵シート20の四隅に配置されないため、位置決めピン13を、シート載置部12における、防塵シート20の四隅において、対角線上に配置することができる。これにより、防塵シート20の筐体10への組付け精度を向上することができる。
【0068】
なお、本実施形態では、第1凹部122及び第2凹部125が凹部に相当する。また、第1の湾曲載置面121c及び第2の湾曲載置面121dが湾曲載置面に相当し、Y軸方向が第1方向に相当し、X軸方向が第2方向に相当する。また、第1の当接部20c及び第2の当接部20dが当接部に相当する。
【0069】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0070】
(3a)上記実施形態では、位置決めピン13の周囲の全周において第1凹部122が形成されているが、第1凹部は、位置決めピンの周囲のうち少なくとも開口部11側に形成されていれば、必ずしも位置決めピンの周囲の全周に形成されなくてもよい。例えば、第1凹部は、位置決めピンの周囲のうち開口部11側となる半周部分にのみ形成されていてもよい。
【0071】
(3b)上記実施形態では、位置決めピン13は、シート載置部12における防塵シート20の隅部に対向する部分に設けられており、差込穴124は、シート載置部12における防塵シート20の四隅以外の部分に対向する部分に設けられている。しかし、位置決めピン及び差込穴の設けられる位置は、これに限定されない。例えば、位置決めピンは、シート載置部における防塵シートの四隅以外の部分に対向する部分に設けられていてもよい。また例えば、差込穴は、シート載置部における防塵シートの隅部に対向する部分に設けられていてもよい。
【0072】
(3c)上記実施形態では、位置決めピン13を2個、取付ピン30を4個、設けているが、位置決めピン13及び取付ピン30の個数はこれに限定されない。例えば、位置決めピン13は、シート載置部における防塵シートの隅部すべてに対向する部分に設けられ、合計4個であってもよい。また例えば、取付ピン30は、シート載置部における開口部11の前後左右側それぞれに2個ずつ設けられ、合計8個であってもよい。また例えば、後述するように、位置決めピン13又は取付ピン30が設けられない構成でもよい。
【0073】
(3d)上記実施形態では、HUD装置1は、位置決めピン13周りに設けられる排水構造及び取付ピン30周りに設けられる排水構造の両方を備える構成であるが、HUD装置は、これらの排水構造のうちいずれか一方のみを備える構成でもよい。例えば、防塵シートを筐体に取り付ける際に位置決め用の治具等を用いて位置決めを行うため、位置決めピン13が設けられない構成の場合、HUD装置は、取付ピン30周りに設けられる排水構造のみを備える。また例えば、取付ピン30の代わりに、載置面121との間に防塵シートを挟み込んで固定する挟持部材等を用いて防塵シートを筐体に取り付けるため、取付ピンが設けられない構成の場合、HUD装置は、位置決めピン13周りに設けられる排水構造のみを備える。
【0074】
(3e)上記実施形態では、シート載置部12は、位置決めピン13よりも開口部11から遠い部分に当て形状123を有するが、シート載置部12が当て形状123を有しない構成でもよい。すなわち、載置面は、シート載置部における防塵シート20の隅部に対向する部分に必ずしも形成されなくてもよい。
【0075】
(3f)上記実施形態では、排水路126は、開口部11を囲む部分に形成される載置面121の外周部分の全周に形成されているが、排水路は、必ずしも開口部11を囲む部分に形成される載置面121の外周部分の全周に形成されなくてもよい。例えば、排水路は、開口部11を囲む部分に形成される載置面121の外周部分のうち鉛直方向の高さが最も低い前方側の部分には形成されなくてもよい。
【0076】
(3g)上記実施形態では、シート載置部12は排水路126を有するが、シート載置部12が排水路126を有しない構成でもよい。
(3h)上記実施形態では、第1凹部122の底部1221、第2凹部125の底部1251及び排水路126の底部1261は、排出口127に近づくにつれて鉛直方向の高さが低くなるように形成されている。しかし、底部1221、底部1251及び底部1261の鉛直方向の高さはこれに限定されない。例えば、底部1221、底部1251及び底部1261は、鉛直方向の高さが一定であってもよい。また例えば、底部1221及び底部1251は鉛直方向の高さが一定であるが、底部1261は排出口127に近づくにつれて鉛直方向の高さが低くなるように形成されていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、載置面121及び防塵シート20は、後方側から前方側にかけて鉛直方向の高さが徐々に低くなるように傾斜しているが、載置面121及び防塵シート20についても、上記底部と同様、鉛直方向の高さはこれに限定されない。
【0078】
(3i)上記実施形態では、車両用表示装置としてHUD装置1を例示したが、車両用表示装置の種類はこれに限定されない。
(3j)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…HUD装置、10…筐体、11…開口部、12…シート載置部、13…位置決めピン、20…防塵シート、21…位置決め孔、22…取付孔、30…取付ピン、121…載置面、122…第1凹部、124…差込穴、125…第2凹部。