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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23D 17/00 20060101AFI20240214BHJP
   F23Q 9/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
F23D17/00 A
F23Q9/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020119939
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022016933
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】彭 宏偉
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 務
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102297426(CN,A)
【文献】特開平06-117612(JP,A)
【文献】実開昭62-125864(JP,U)
【文献】実開昭59-023518(JP,U)
【文献】特開2018-204912(JP,A)
【文献】特開2020-026921(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0314045(US,A1)
【文献】特開2018-091592(JP,A)
【文献】特開平07-301404(JP,A)
【文献】特開2004-053048(JP,A)
【文献】実開昭54-141536(JP,U)
【文献】特開昭61-024913(JP,A)
【文献】特開2004-263974(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2009-0002893(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 17/00
F23Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを燃料ガスとして用いる第1ガスが流通する第1ガス流通路を形成する第1ガス流通管と、
前記第1ガス流通管の下流側に接続される第1保炎器と、
前記第1ガス流通管を包囲し、前記第1ガス流通管の外周面との間に燃焼用空気が流通する第1燃焼用空気流路を形成するバーナ外筒と、
第2ガスが流通する第2ガス流通路を形成する第2ガス流通管及び該第2ガスに混合される燃焼用空気が流通する第2燃焼用空気流路を形成する燃焼用空気流通管を有するパイロットバーナと、を備え、
前記燃焼用空気流通管は、前記第2ガス流通管に燃焼用空気を供給し、該第2ガス流通管には、前記第2ガスと燃焼用空気との予混合ガスが流通し、
前記パイロットバーナは、前記第2ガス流通管の下流側に配置される第2保炎器を更に備え、
前記第2ガス流通管は、前記第1ガス流通路に配置される燃焼装置。
【請求項2】
前記第2保炎器は、前記第2ガス流通路の一部を塞ぐように配置される板状の保炎部材と、該保炎部材の下流側に配置される保炎筒と、を備え、
前記保炎部材と前記保炎筒の先端部との間の距離Lは、前記保炎筒の径Dに対して、0.5D≦L≦1.5Dの関係を満たす範囲に設定される請求項に記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記保炎筒の先端部の位置は、前記第1ガス流通管の先端部よりも下流側に位置する請求項に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記第1ガス流通管の外側に配置される火炎検知器を更に備え、
前記第1保炎器は、基端部が前記第1ガス流通管の下流側の端部に接続されると共に、先端部が第1ガスの流れの下流側に向かって拡開する円錐台状に形成され、
前記第1保炎器の周面には、前記燃焼用空気が流通する複数の貫通孔が形成され、
前記複数の貫通孔のうち、前記火炎検知器から前記第1ガス流通管の管軸と平行に延びる軸が前記火炎検知器と交わる位置にある貫通孔は、他の貫通孔よりも大きい請求項1~のいずれかに記載の燃焼装置。
【請求項5】
前記第1ガス流通管に接続され、該第1ガス流通管に不活性ガスを供給する不活性ガス供給管と、
前記第1ガス流通管への第1ガスの供給を停止させた状態で、前記不活性ガス供給管から前記第1ガス流通管に不活性ガスを供給させる制御部と、を更に備える請求項1~のいずれかに記載の燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスを含む燃料ガスを燃焼させる燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ガスが流通する燃料ガス配管、この燃料ガス配管の下流側に接続される保炎器、及び燃料ガス配管を包囲するように配置され燃料ガス配管の外周面との間に燃焼用空気が流通するバーナ外筒を備え、燃料ガス配管の下流側において燃料ガスと燃焼用空気とを混合させて燃焼させる先混合方式のメインバーナを備えるボイラ等の燃焼装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、先混合方式のメインバーナを備える燃焼装置において、メインバーナの近傍に配置され、メインバーナを燃焼させる前に着火されるパイロットバーナを更に備える燃焼装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-201019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような燃焼装置において燃焼を開始する場合、まず、パイロットバーナに燃料が供給されると共にバーナ外筒から燃焼用空気が供給された状態でパイロットバーナが着火される。次いで、パイロットバーナが着火した状態においてメインバーナに燃料ガスが供給されることでメインバーナが着火され、燃焼が開始される。
【0005】
ここで、メインバーナに供給される燃料ガスとして、空気と混合した場合の燃焼範囲が広い水素ガスを用いた場合には、燃焼装置の燃焼を開始する前に、燃料ガス配管を含む燃焼装置の内部に窒素等の不活性ガスを供給する不活性ガスによるパージを行うことが求められる。
このように、燃焼を開始する前に不活性ガスによるパージを行った場合には、メインバーナおよび燃料ガス配管に不活性ガスが残存した状態で、パイロットバーナが着火され燃焼が行われるため、不活性ガスの影響によってパイロットバーナの火炎が安定しない場合があった。
【0006】
従って、本発明は、パイロットバーナの火炎を安定的に保てる燃焼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水素を含む第1ガスが流通する第1ガス流通路を形成する第1ガス流通管と、前記第1ガス流通管の下流側に接続される第1保炎器と、前記第1ガス流通管を包囲し、前記第1ガス流通管の外周面との間に燃焼用空気が流通する第1燃焼用空気流路を形成するバーナ外筒と、第2ガスが流通する第2ガス流通路を形成する第2ガス流通管及び該第2ガスに混合される燃焼用空気が流通する第2燃焼用空気流路を形成する燃焼用空気流通管を有するパイロットバーナと、を備える燃焼装置に関する。
【0008】
また、前記燃焼用空気流通管は、前記第2ガス流通管に燃焼用空気を供給し、該第2ガス流通管には、前記第2ガスと燃焼用空気との予混合ガスが流通することが好ましい。
【0009】
また、前記パイロットバーナは、前記第2ガス流通管の下流側に配置される第2保炎器を更に備え、前記第2ガス流通管は、前記第1ガス流通路に配置されることが好ましい。
【0010】
また、第2保炎器は、前記第2ガス流路の一部を塞ぐように配置される板状の保炎部材と、該保炎部材の下流側に配置される保炎筒と、を備え、前記保炎部材と前記保炎筒の先端部との間の距離Lは、前記保炎筒の径Dに対して、0.5D≦L≦1.5Dの関係を満たす範囲に設定されることが好ましい。
【0011】
また、前記保炎筒の先端部の位置は、前記第1ガス流通管の先端部よりも下流側に位置することが好ましい。
【0012】
また、燃焼装置は、前記第1ガス流通管の外側に配置される火炎検知器を更に備え、前記第1保炎器は、基端部が前記第1ガス流通管の下流側の端部に接続されると共に、先端部が第1ガスの流れの下流側に向かって拡開する円錐台状に形成され、前記第1保炎器の周面には、前記燃焼用空気が流通する複数の貫通孔が形成され、前記複数の貫通孔のうち、前記火炎検知器から前記第1ガス流通管の管軸と平行に延びる軸が前記火炎検知器と交わる位置にある貫通孔は、他の貫通孔よりも大きいことが好ましい。
【0013】
また、燃焼装置は、前記第1ガス流通管に接続され、該第1ガス流通管に不活性ガスを供給する不活性ガス供給管と、前記第1ガス流通管への第1ガスの供給を停止させた状態で、前記不活性ガス供給管から前記第1ガス流通管に不活性ガスを供給させる制御部と、を更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の燃焼装置によれば、パイロットバーナの火炎を安定的に保てる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る燃焼装置の全体構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係るパイロットバーナの第2保炎器部分を拡大して示す図である。
図3図2に示す第2保炎器を示す分解斜視図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る燃焼装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の燃焼装置の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。燃焼装置1は、水素ガスを燃料ガスとして用いて燃焼させる燃焼装置であり、実施形態では、水素ガスを燃焼させて蒸気を生成する蒸気ボイラに適用される。
蒸気ボイラは、内部に燃焼室が形成される缶体と、この缶体の内部に鉛直方向に延びて配置される複数の水管と、缶体の下部に配置されて複数の水管の下端部が接続され水管に供給される水が貯留される下部ヘッダと、缶体の上部に配置されて複数の水管の上端部が接続され水管の内部で水が加熱されて生成された蒸気が導入される上部ヘッダ(缶体、水管、下部ヘッダ及び上部ヘッダはいずれも図示せず)と、缶体の上部に配置されて缶体の内部を加熱する燃焼装置1と、を備える。
【0017】
燃焼装置1は、水素を含む第1ガスをメイン燃料として燃焼させるメインバーナ10と、このメインバーナ10による第1ガスの燃焼開始前に第2ガスを燃料として燃焼させるパイロットバーナ20と、メインバーナ10及びパイロットバーナ20に形成される火炎を検知する火炎検知器30と、着火装置40と、燃焼装置1の燃焼を制御する制御部90と、を備える。また、燃焼装置1は、メインバーナ10に第1ガスを供給する第1ガス供給ラインL1と、メインバーナ10に不活性ガスを供給する不活性ガス供給管としての不活性ガス供給ラインL2と、パイロットバーナ20に第2ガスを供給する第2ガス供給ラインL3と、を備える。
【0018】
メインバーナ10は、缶体の上部に配置され、第1ガス流通管11と、第1保炎器12と、バーナ外筒13と、を備える。
第1ガス流通管11は、鉛直方向に延びて配置され、下端部が缶体の内部(燃焼室)に位置する。第1ガス流通管11の上端側は、第1ガス供給ラインL1に接続される。第1ガス流通管11の内部には、第1ガスが鉛直方向下方に向かって流通する第1ガス流通路が形成される。
【0019】
第1保炎器12は、第1ガス流通管11の下端部に接続される。第1保炎器12は、下方に向かって拡開した円錐台形状の管状部材により構成される。第1保炎器12の上端部の径は、第1ガス流通管11の下端部の径と略同一に構成される。
【0020】
第1保炎器12の周面には、複数の貫通孔121が形成される。貫通孔121は、上下方向(拡開方向)に所定間隔をあけて複数列形成されている。また、貫通孔121は、各列において、周方向に所定間隔をあけて複数形成されている。貫通孔121の大きさは、上端側の列から下端側の列に向かうに従って徐々に大きくなっている。
実施形態では、最も上部の列に形成された複数の貫通孔121のうちの一の貫通孔121aの大きさは、同じ列の他の貫通孔121の大きさよりも大きく形成される。径の大きい貫通孔121aは、後述の火炎検知器30の直下(鉛直方向下方)の位置に配置される。
【0021】
バーナ外筒13は、円筒状に構成され、第1ガス流通管11及び第1保炎器12を包囲するように第1ガス流通管11と同軸となるように配置される。バーナ外筒13の上端側は、燃焼用空気が供給される燃焼用空気供給路としてのウィンドボックス60の内部に上方に開口した状態で配置される。バーナ外筒13の下端部は、第1保炎器12の下端部よりも下方に位置する。バーナ外筒13の内径は、第1保炎器12の下端部の外径よりもわずかに大きい径に設定される。バーナ外筒13の内部における第1ガス流通管11の外周面との間には、ウィンドボックス60を通じて供給された燃焼用空気が流通する第1燃焼用空気流通路が形成される。
【0022】
パイロットバーナ20は、メインバーナ10の近傍に配置され、第2ガス流通管21と、燃焼用空気流通管22と、第2保炎器23と、を備える。
第2ガス流通管21は、鉛直方向に延びて配置される。第1実施形態では、第2ガス流通管21は、第1ガス流通管11よりも小径に構成され、第1ガス流通管11の内側に、第1ガス流通管11と同軸に配置される。即ち、第2ガス流通管21は、第1ガス流通路に配置される。第2ガス流通管21の上端側は、第2ガス供給ラインL3に接続される。
【0023】
燃焼用空気流通管22は、パイロットバーナ20で燃焼される第2ガスに混合される燃焼用空気が流通する第2燃焼用空気流路を形成する。第1実施形態では、燃焼用空気流通管22の上流側は、ウィンドボックス60に接続され、下流側は第2ガス供給ラインL3に接続される。即ち、第1実施形態では、燃焼用空気流通管22は、第2ガス供給ラインL3を介して第2ガス流通管21に接続される。これにより、第2ガス流通管21には、第2ガスと燃焼用空気との予混合ガスが流通する。燃焼用空気流通管22には、第2燃焼用空気流路を開閉する空気開閉弁221が配置される。
予混合ガス(第2ガスと燃焼用空気との混合ガス)の空気比は、後述の火炎検知器30において、パイロットバーナ20に形成される火炎の検知を好適に行う観点から、1から1.2であることが好ましい。空気比を1から1.2とすることで、パイロットバーナ20において形成される火炎の長さを長くできる。
【0024】
第2保炎器23は、第2ガス流通管21の下流側に配置される。第1実施形態では、第2保炎器23は、第2ガス流通管21の下端部に接続される。第2保炎器23は、図2及び図3に示すように、保炎部材231と、保炎筒232と、を備える。
【0025】
保炎部材231は、中央部に中央貫通孔234が形成されると共に、中央貫通孔234の周囲に、周方向に所定間隔をあけて複数の周囲貫通孔235が形成された円板状部材により構成される。保炎部材231は、上面側が中央貫通孔234に向かって下り傾斜となったすり鉢状の凹状面となっており、この凹状面に周囲貫通孔235が形成される。保炎部材231の外径は、第2ガス流通管21の下端部の内径と略同径に形成される。保炎部材231は、第2ガス流通管21の下端部に溶接等により接合され、第2ガス流路の一部を塞ぐ。
【0026】
保炎筒232は、第2ガス流通管21と略同径の筒状部材により構成され、第2ガス流通管21の下端部に、第2ガス流通管21と同軸となるように接続される。第1実施形態では、保炎筒232の下端部の位置は、第1ガス流通管11の下端部の位置よりも下方に位置する。また、保炎筒232の下端部は、第1保炎器12に形成された複数の貫通孔121のうちの最も上段の貫通孔121よりも上方に位置する。
保炎筒232の長さ(保炎部材231と保炎筒232の先端部との間の距離、換言すれば、保炎部材231とパイロットバーナ20の下端部との間の距離)Lと、保炎筒232の内径(第2ガス流通管21の内径)Dとは、第2保炎器23における保炎性を好適に確保する観点から、0.5D≦L≦1.5Dの範囲に設定されることが好ましい。
【0027】
尚、第1実施形態では、第2保炎器23は、保炎部材231と保炎筒232とにより構成される形態として説明したが、これに限らない。即ち、第2保炎器23を、保炎部材231のみにより構成し、第2ガス流通管21の下端部から所定長さ上方に保炎部材231を接合して配置してもよい。言い換えれば、第1実施形態の第2ガス流通管21と保炎筒232とを合わせた部材を第2ガス流通管とし、この第2ガス流通管の下端部から所定長さ上方に第2保炎器としての保炎筒を配置してパイロットバーナを構成してもよい。
【0028】
火炎検知器30は、第1保炎器12の鉛直方向上方に配置される。火炎検知器30は、ウィンドボックス60、第1燃焼用空気流路、及び第1保炎器12に形成された貫通孔121aを通じて、メインバーナ10又はパイロットバーナ20により形成された火炎を検知する。火炎検知器30は、火炎を検知可能な紫外線火炎検知器等の光学的センサ31を有して構成される。
【0029】
着火装置40は、先端部において点火を行うスパークロッド41を備え、第2ガス流通管21に沿って第2ガス流通管21の内部に配置される。着火装置40は、第2ガス流通管21から噴出される第2ガスと燃焼用空気との予混合ガスに着火を行う。
【0030】
第1ガス供給ラインL1は、メインバーナ10(第1ガス流通管11)に第1ガスを供給する。第1実施形態では、第1ガスとして水素ガスが用いられる。第1ガス供給ラインL1には、この第1ガス供給ラインL1を開閉する第1ガス開閉弁61が配置される。
不活性ガス供給ラインL2は、メインバーナ10に不活性ガスを供給する。第1実施形態では、不活性ガス供給ラインL2は、第1ガス供給ラインL1における第1ガス開閉弁61よりも下流側に接続され、第1ガス供給ラインL1を通じてメインバーナ10に不活性ガスを供給する。不活性ガスとしては、例えば窒素ガスが用いられる。不活性ガス供給ラインL2には、この不活性ガス供給ラインL2を開閉する不活性ガス開閉弁62が配置される。
第2ガス供給ラインL3は、パイロットバーナ20に第2ガスを供給する。第1実施形態では、第2ガスとして液化石油ガス(LPG)、都市ガス等の炭化水素ガスが用いられる。第2ガス供給ラインL3には、この第2ガス供給ラインL3を開閉する第2ガス開閉弁63が配置される。
【0031】
制御部90は、各種弁の開閉や着火装置40の動作を制御することで、燃焼装置1の燃焼を制御する。
【0032】
以下、制御部90による燃焼装置1の燃焼制御について説明する。
制御部90は、燃焼装置1による燃焼を開始する場合、まず、第1ガス開閉弁61を閉止し、不活性ガス開閉弁62を開放し、メインバーナ10に不活性ガスを供給する不活性ガスパージ(プレパージ)を行う。また、送風機(図示せず)を駆動させ、ウィンドボックス60に燃焼用空気を導入する。これにより、メインバーナ10における第1ガス流通管11(第1ガス流路)及びメインバーナ10に不活性ガスが供給される。また、ウィンドボックス60からバーナ外筒13を通じて燃焼用空気が缶体の内部に供給され缶体の内部のエアパージが行われる。
【0033】
不活性ガスパージを行った後、制御部90は、パイロットバーナ20を着火する。具体的には、制御部90は、不活性ガス開閉弁62を閉止し、第2ガス開閉弁63及び空気開閉弁221を開放し、第2ガス流通管21に第2ガスと燃焼用空気の予混合ガスを供給する。また、着火装置40により予混合ガスに点火し、パイロットバーナ20を着火する。ここで、パイロットバーナ20には、第2ガスに混合されるパイロットバーナを着火するための燃焼用空気が供給される。これにより、不活性ガスパージによりメインバーナ10に不活性ガスが残存していた場合であっても、この不活性ガスの影響によりパイロットバーナ20の燃焼が阻害されない。よって、パイロットバーナ20の火炎を安定的に保てる。また、パイロットバーナ20に形成された火炎は、第2保炎器23において安定的に保たれる。
パイロットバーナ20の火炎は、火炎検知器30により検知される。
【0034】
パイロットバーナ20が着火された後(火炎検知器30によりパイロットバーナ20の火炎が検知された後)、制御部90は、メインバーナ10を着火する。具体的には、制御部90は、第1ガス開閉弁61を開放し、第1ガス供給ラインL1を通じて第1ガス流通管11(第1ガス流通路)に第1ガスである水素ガスを供給する。第1ガス流通路を通じて第1ガス流通管11から噴出された水素ガスは、第1保炎器12において複数の貫通孔121を通じて第1保炎器12の上流側から供給される燃焼用空気と混合(先混合)され、パイロットバーナ20の火炎により着火される。更に、第1保炎器12とバーナ外筒13の隙間から噴き出す燃焼用空気と混合されて燃焼する。
メインバーナ10が着火された後、制御部90は、第2ガス開閉弁63を閉止し、パイロットバーナ20の燃焼を停止させる。尚、ここで、空気開閉弁221は閉止せずに開放しておくことで、メインバーナ10の燃焼中においてもパイロットバーナ20に燃焼用空気の供給が継続されるため、パイロットバーナ20が過熱されることを防げる。
メインバーナ10の火炎も、火炎検知器30により検知される。
【0035】
メインバーナ10の燃焼を停止させる場合、制御部90は、第1ガス開閉弁61を閉止する。これにより、メインバーナ10への水素ガスの供給が停止され、火炎は消火する。火炎の消火は、火炎検知器30により検知される。
メインバーナ10の燃焼が停止された後、制御部90は、不活性ガス開閉弁62を開放して、再び不活性ガスパージ(ポストパージ)を行う。不活性ガスパージを行った後、制御部90は、不活性ガス開閉弁62を閉止し、送風機の駆動を停止させる。
【0036】
以上説明した第1実施形態の燃焼装置1によれば、以下のような効果を奏する。
【0037】
(1)燃焼装置1を、水素を含む第1ガスを燃焼させる先混合方式のメインバーナ10と、パイロットバーナ20と、を含んで構成し、パイロットバーナ20を、第2ガスが流通する第2ガス流通管21と、第2ガスに混合される燃焼用空気が流通する燃焼用空気流通管22と、を含んで構成した。これにより、パイロットバーナ20を着火するときに、燃焼用空気流通管22を通じて第2ガスに好適に燃焼用空気を供給できる。よって、メインバーナ10の燃焼ガスとして水素ガスを含む第1ガスを用いた場合に、第1ガス流通管11を不活性ガスによりパージした場合等においても、不活性ガスの影響によりパイロットバーナ20の燃焼が阻害されないので、パイロットバーナの火炎を安定的に保てる。
【0038】
(2)燃焼用空気流通管22を、第2ガス供給ラインL3を介して第2ガス流通管21の基端側に接続し、第2ガス流通管21に第2ガスと燃焼用空気との予混合ガスを流通させた。これにより、パイロットバーナ20を予混合方式に構成できるので、パイロットバーナ20をシンプルに構成できる。
【0039】
(3)パイロットバーナ20を、第2保炎器23を含んで構成し、第2ガス流通管21を第1ガス流通路に配置した。これにより、パイロットバーナ20を、バーナ外筒13の内側に形成される第1燃焼用空気流路ではなく、第1ガス流通管11の内側に配置できるので、第1燃焼用空気流路における燃焼用空気の流れを乱すことなく燃焼装置1を構成できる。よって、燃焼装置1の燃焼状態をより安定化させられる。また、燃焼装置1を小型化できる。
【0040】
(4)第2保炎器23を、保炎部材231と、保炎筒232と、を含んで構成し、保炎部材231と保炎筒232の先端部との間の距離Lを、保炎筒232の径Dに対して、0.5D≦L≦1.5Dの関係を満たす範囲に設定した。これにより、第1ガス流通管11を不活性ガスでパージした場合において第1ガス流通管11から噴出した不活性ガスが第2保炎器23(保炎筒232)の内側に侵入して保炎部材231から下流側に形成される火炎が不安定になることを防げる。
【0041】
(5)保炎筒232の先端部の位置を、第1ガス流通管11の先端部よりも下流側(下方)に位置させた。これにより、第1ガス流通管11を不活性ガスでパージした場合において第1ガス流通管11の先端部から噴出した不活性ガスを保炎筒232の内部に侵入させにくくできる。
【0042】
(6)メインバーナ10において、火炎は、第1保炎器12に形成された複数の貫通孔121のうちの最も上段の貫通孔121が形成された位置から下方に向けて形成される。そこで、保炎筒232の先端部(下端部)の位置を、第1保炎器12における貫通孔121が形成された位置より上流側(上方)に位置させた。これにより、メインバーナ10が燃焼している状態において、第1保炎器12に形成された火炎によってパイロットバーナ20が加熱されることを抑制できるので、パイロットバーナ20を長寿命化できる。
【0043】
(7)燃焼装置1を、火炎検知器30を含んで構成し、第1保炎器12を、周面に複数の貫通孔121を形成して構成すると共に、複数の貫通孔121のうち、火炎検知器30から第1ガス流通管11の管軸と平行に延びる軸が火炎検知器30と交わる位置にある貫通孔121aを、他の貫通孔121よりも大きく形成した。これにより、第1保炎器12の内側において形成された火炎から火炎検知器30に到達する光量を増加させられるので、第1保炎器12の中心部近傍に形成されるパイロットバーナ20の火炎をより正確に検知させられる。
【0044】
(8)燃焼装置1を、不活性ガス供給ラインL2と、制御部90と、を含んで構成し、制御部90に、第1ガス流通管11への第1ガスの供給を停止させた状態で不活性ガス供給ラインL2から第1ガス流通管11に不活性ガスを供給させる不活性ガスパージを行わせた。これにより、水素ガスを含む第1ガスの供給が停止した状態で、第1ガス流通管11を不活性ガスでパージさせられるので、燃焼装置1の安全性を向上させられる。
【0045】
次に、本発明の第2実施形態に係る燃焼装置1Aにつき、図4を参照しながら説明する。第2実施形態の燃焼装置1Aは、パイロットバーナ20Aの構成において、第1実施形態と異なる。より詳細には、第2実施形態では、パイロットバーナ20Aは、燃焼用空気と第2ガスとが第2ガス流通管21Aよりも下流側で混合されて燃焼される先混合バーナにより構成されている点で、第1実施形態と異なる。尚、第2実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0046】
第2実施形態において、パイロットバーナ20Aは、第2ガス流通管21Aと、燃焼用空気流通管22Aと、第2保炎器23Aと、を備える。
第2ガス流通管21Aは、鉛直方向に延びて配置される。第2実施形態では、第2ガス流通管21Aは、第1ガス流通管11よりも小径に構成され、第1ガス流通管11の内側に、第1ガス流通管11と同軸に配置される。第2ガス流通管21Aの上端側は、第2ガス供給ラインL3に接続される。第2ガス流通管21の内部には、第2ガス流通路が形成される。第2ガス流通管21Aの下端部は、第1ガス流通管11の下端部よりも上方(上流側)に位置する。
【0047】
燃焼用空気流通管22Aは、鉛直配管部222Aと、連結配管部223Aと、を備える。鉛直配管部222Aは、第1ガス流通管11よりも小径、かつ、第2ガス流通管21Aよりも大径に構成され、第1ガス流通管11の内側、かつ第2ガス流通管21Aよりも外側に、第1ガス流通管11及び第2ガス流通管21Aと同軸に配置される。鉛直配管部222Aの下流側の端部(下端部)は、第1ガス流通管11の下端部よりも下方に位置する。また、鉛直配管部222Aの下端部は、第1保炎器12に形成された複数の貫通孔121のうちの最も上段の貫通孔121よりも上方に位置する。連結配管部223Aは、ウィンドボックス60と鉛直配管部222Aの上端側とを連結する。連結配管部223Aには、第2燃焼用空気流路を開閉する空気開閉弁221Aが配置される。
【0048】
第2実施形態では、第2ガス流通管21Aの内部(第2ガス流通路)には、第2ガスのみが流通し、第2ガス流通管21Aの外側かつ鉛直配管部222Aの内側の空間(第2燃焼用空気流路)には、燃焼用空気のみが流通する。
【0049】
第2保炎器23Aは、第2ガス流通管21Aの下端部に接続される。第2実施形態では、第2保炎器23Aは、下方に向かって拡開した円錐台形状の管状部材により構成される。第2保炎器23Aの上端部の径は、第2ガス流通管21Aの下端部の径と略同一に構成される。また、第2保炎器23Aの下端部の径は、鉛直配管部222Aの内径よりもわずかに小さく構成される。第2保炎器23Aの下端部は、鉛直配管部222Aの下端部よりも上方に位置する。
【0050】
第2保炎器23Aの周面には、複数の貫通孔231Aが形成される。貫通孔231Aは、上下方向(拡開方向)に所定間隔をあけて複数列形成されている。また、貫通孔231Aは、各列において、周方向に所定間隔をあけて複数形成されている。貫通孔231Aの大きさは、上端側の列から下端側の列に向かうに従って徐々に大きくなっている。
第2実施形態では、第2保炎器23Aの先端部と燃焼用空気流通管22A(鉛直配管部222A)の先端部との間の距離Lは、第2保炎器23Aにおける保炎性を好適に確保する観点から、燃焼用空気流通管22A(鉛直配管部222A)の径Dに対して、0.5D≦L≦1.5Dの関係を満たす範囲に設定されることが好ましい。
【0051】
第2実施形態のパイロットバーナ20Aによれば、第2ガス流通管21Aの下端部から第2保炎器23Aの内側に第2ガスが供給される。また、第2ガス流通管21Aの外周と鉛直配管部222Aの内周との間の空間から第2保炎器23Aの上流側に供給された燃焼用空気が複数の貫通孔231Aを通じて、第2保炎器23Aの内側に導入される。そして、第2保炎器23Aの内側において、第2ガスと燃焼用空気が混合された混合気が着火装置40により着火されて火炎が形成される。
【0052】
以上説明した第2実施形態の燃焼装置1Aによれば、上述の(1)、(3)、(7)、(8)の効果を奏する他、以下のような効果を奏する。
【0053】
(9)第2保炎器23Aの先端部と燃焼用空気流通管22A(鉛直配管部222A)の先端部との間の距離Lを、燃焼用空気流通管22A(鉛直配管部222A)の径Dに対して、0.5D≦L≦1.5Dの関係を満たす範囲に設定した。これにより、第1ガス流通管11を不活性ガスでパージした場合において第1ガス流通管11から噴出した不活性ガスがパイロットバーナ20A(燃焼用空気流通管22A)の内側に侵入して第2保炎器23Aから下流側に形成される火炎が吹き消されることを防げる。
【0054】
(10)燃焼用空気流通管22A(鉛直配管部222A)の先端部の位置を、第1ガス流通管11の先端部よりも下流側(下方)に位置させた。これにより、第1ガス流通管11を不活性ガスでパージした場合において第1ガス流通管11の先端部から噴出した不活性ガスをパイロットバーナ20A(燃焼用空気流通管22A)の内部に侵入させにくくできる。
【0055】
(11)メインバーナ10において、火炎は、第1保炎器12に形成された複数の貫通孔121のうちの最も上段の貫通孔121が形成された位置から下方に向けて形成される。そこで、燃焼用空気流通管22A(鉛直配管部222A)の先端部(下端部)の位置を、第1保炎器12における貫通孔121が形成された位置より上流側(上方)に位置させた。これにより、メインバーナ10が燃焼している状態において、第1保炎器12に形成された火炎によってパイロットバーナ20が加熱されることを抑制できるので、パイロットバーナ20Aを長寿命化できる。
【0056】
以上、本発明の燃焼装置の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、本発明の燃焼装置を蒸気ボイラに適用したが、これに限らない。即ち、本発明の燃焼装置を、温水ボイラに適用してもよい。
【0057】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、パイロットバーナ20,20A(第2ガス流通管21,21A)を、第1ガス流通路(第1ガス流通管11の内側)に配置したが、これに限らない。即ち、第2ガス流通管を、第1燃焼用空気流路(第1ガス流通管の外側かつバーナ外筒の内側)に配置してパイロットバーナを構成してもよい。
【0058】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、第2ガスとして炭化水素ガスを用いたが、これに限らない。即ち、第2ガスとして水素ガスを用いてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1、1A 燃焼装置
11 第1ガス流通管
12 第1保炎器
13 バーナ外筒
21、21A 第2ガス流通管
22、22A 燃焼用空気流通管
20 パイロットバーナ
23、23A 第2保炎器
30 火炎検知器
90 制御部
121、121a 貫通孔
231 保炎部材
232 保炎筒
L2 不活性ガス供給ライン(不活性ガス供給管)
図1
図2
図3
図4