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特許7435330ヘッドモーショントラッカ装置および航空機用ヘッドモーショントラッカ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ヘッドモーショントラッカ装置および航空機用ヘッドモーショントラッカ装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20240214BHJP
   H04N 23/45 20230101ALI20240214BHJP
   B64D 47/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H04N23/60 500
H04N23/45
B64D47/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020120728
(22)【出願日】2020-07-14
(65)【公開番号】P2022017894
(43)【公開日】2022-01-26
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】松原 行信
(72)【発明者】
【氏名】多和田 一穂
(72)【発明者】
【氏名】日比 柾宏
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-530438(JP,A)
【文献】特表2016-541035(JP,A)
【文献】特開2011-015831(JP,A)
【文献】国際公開第2018/189880(WO,A1)
【文献】特開2009-036517(JP,A)
【文献】特開2014-215748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
H04N 23/45
B64D 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察者の頭部に装着される頭部装着部と、
前記頭部装着部に取り付けられ、前記観察者の頭部の向きに沿った方向の画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記画像に基づいて、前記観察者の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成された制御部とを備え
前記制御部は、前記画像取得部により取得された前記画像に基づいて、前記観察者の周囲の三次元の周囲環境地図を作成する制御を行うように構成されており、
前記周囲環境地図は、
現時点において前記画像取得部により取得された第1画像により構成される第1周囲環境地図と、
前記第1画像よりも前の第2画像により構成される第2周囲環境地図と、
前記第2画像に前記第1画像を合成した画像に基づく第3周囲環境地図とを含み、
前記制御部は、前記第2周囲環境地図と、前記第3周囲環境地図とに基づいて、前記第1周囲環境地図を取得するとともに、前記観察者の頭部の位置および角度を推定する制御を行うように構成されている、ヘッドモーショントラッカ装置。
【請求項2】
記制御部は、前記第1周囲環境地図に含まれる複数の特徴点に基づいて、前記観察者の頭部の位置および角度を推定する制御を行うように構成されている、請求項に記載のヘッドモーショントラッカ装置。
【請求項3】
記制御部は、少なくとも前記第1周囲環境地図に含まれる前記複数の特徴点および前記第2周囲環境地図に基づいて、前記観察者の頭部の位置および角度を推定する制御を行うように構成されている、請求項に記載のヘッドモーショントラッカ装置。
【請求項4】
記制御部は、前記第2周囲環境地図と、前記第3周囲環境地図との比較に基づいて、前記第1周囲環境地図を取得するとともに、前記観察者の頭部の位置および角度を推定する制御を行うように構成されている、請求項に記載のヘッドモーショントラッカ装置。
【請求項5】
前記観察者の周囲に配置され、前記画像取得部により前記画像として取得される複数の目印部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1周囲環境地図に含まれる前記複数の目印部を前記複数の特徴点を全て取得可能な前記観察者の頭部の位置および角度を、現時点の前記観察者の頭部の位置および角度として推定する制御を行うように構成されている、請求項のいずれか1項に記載のヘッドモーショントラッカ装置。
【請求項6】
前記制御部は、現時点よりも前の時点の前記観察者の頭部の位置および角度に基づいて、互いに頭部の位置および角度が異なる複数の前記観察者の頭部の位置および角度を作成するとともに、作成した前記複数の前記観察者の頭部の位置および角度を変化させた後、前記第1周囲環境地図に含まれる前記複数の特徴点を全て取得可能な前記観察者の頭部の位置および角度を選択する制御を行うように構成されている、請求項に記載のヘッドモーショントラッカ装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1画像中のコントラストの差に基づいて、前記複数の特徴点を取得する制御を行うように構成されている、請求項のいずれか1項に記載のヘッドモーショントラッカ装置。
【請求項8】
前記観察者の周囲に配置され、前記画像取得部により前記画像として取得される目印部をさらに備え、
前記制御部は、前記目印部が取得された前記画像に基づく三次元の前記周囲環境地図中の前記目印部に基づいて、前記観察者の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成されている、請求項のいずれか1項に記載のヘッドモーショントラッカ装置。
【請求項9】
前記制御部は、制御部側通信部を含み、
前記目印部は、
前記制御部側通信部と通信可能な目印部側通信部と、
前記観察者を乗せた移動体の基準位置に対する前記目印部の位置を記憶する記憶部とを含み、
前記制御部は、前記画像取得部により前記目印部を取得した場合、前記目印部側通信部を介して前記記憶部から取得した前記目印部の位置に基づいて、前記観察者の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成されている、請求項に記載のヘッドモーショントラッカ装置。
【請求項10】
前記観察者の頭部の角速度を計測する装置側ジャイロセンサをさらに備え、
前記目印部は、前記観察者を乗せた移動体の角速度を計測する目印部側ジャイロセンサを含み、
前記制御部は、前記周囲環境地図に基づいて前記観察者の頭部の角度が所定時間内に取得できない場合、前記装置側ジャイロセンサにより計測された前記観察者の頭部の角速度と、前記目印部側ジャイロセンサにより計測された前記移動体の角速度との差に基づいて、前記観察者の頭部の角度を取得する制御を行うように構成されている、請求項またはに記載のヘッドモーショントラッカ装置。
【請求項11】
前記画像取得部は、並んで配置された2つのカメラを有し、
前記制御部は、2つの前記カメラの視差に基づいて、前記観察者の頭部の向きに沿った方向の距離を取得するとともに、2つの前記カメラにより取得した距離に基づいて、三次元の前記周囲環境地図を作成する制御を行うように構成されている、請求項10のいずれか1項に記載のヘッドモーショントラッカ装置。
【請求項12】
航空機の機体内の観察者としてのパイロットに装着されるヘッドモーショントラッカ装置を備え、
前記ヘッドモーショントラッカ装置は、
前記パイロットの頭部に取り付けられる頭部装着部と、
前記頭部装着部に取り付けられ、前記パイロットの頭部の向きに沿った方向の画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記画像に基づいて、前記パイロットの頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成された制御部とを含み、
前記制御部は、前記画像取得部により取得された前記画像に基づいて、前記観察者の周囲の三次元の周囲環境地図を作成する制御を行うように構成されており、
前記周囲環境地図は、
現時点において前記画像取得部により取得された第1画像により構成される第1周囲環境地図と、
前記第1画像よりも前の第2画像により構成される第2周囲環境地図と、
前記第2画像に前記第1画像を合成した画像に基づく第3周囲環境地図とを含み、
前記制御部は、前記第2周囲環境地図と、前記第3周囲環境地図とに基づいて、前記第1周囲環境地図を取得するとともに、前記観察者の頭部の位置および角度を推定する制御を行うように構成されている、航空機用ヘッドモーショントラッカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドモーショントラッカ装置および航空機用ヘッドモーショントラッカ装置に関し、特に、観察者の頭部に装着される頭部装着部を備えるヘッドモーショントラッカ装置および航空機用ヘッドモーショントラッカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、観察者の頭部に装着される頭部装着部を備えるヘッドモーショントラッカ装置および航空機用ヘッドモーショントラッカ装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、パイロット(観察者)の頭部に装着されるヘルメット(頭部装着部)を備えるヘッドモーショントラッカ装置が開示されている。このヘッドモーショントラッカ装置は、上記ヘルメットと、搭乗体(航空機の機体)内に設置されたカメラ装置と、制御部とを備える。
【0004】
上記特許文献1のヘルメットには、互いに異なる波長の赤外光を発光する複数の頭部装着体発光部が配置されている。制御部は、カメラ装置により撮影された複数の頭部装着体発光部の各々の位置情報に基づいて、パイロットの頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成されている。ヘッドモーショントラッカ装置では、制御部によりパイロットの頭部の位置および角度を取得するために、複数の頭部装着体発光部を確実に撮影可能な位置にカメラ装置が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-109319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のヘッドモーショントラッカ装置では、複数の頭部装着体発光部を確実に撮影可能な位置にカメラ装置を航空機の機体内に設置する必要があるので、航空機の機体にカメラ装置(画像取得部)の設置スペースを確保する必要がある。このため、上記特許文献1のヘッドモーショントラッカ装置では、既存の搭乗体において上記設置スペースを確保することが困難な場合があるので、ヘッドモーショントラッカ装置を既存の搭乗体(移動体)であっても容易に適用可能とすることが望まれている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、既存の移動体であっても容易に適用することが可能なヘッドモーショントラッカ装置および航空機用ヘッドモーショントラッカ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるヘッドモーショントラッカ装置は、観察者の頭部に装着される頭部装着部と、頭部装着部に取り付けられ、観察者の頭部の向きに沿った方向の画像を取得する画像取得部と、画像取得部により取得された画像に基づいて、観察者の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成された制御部とを備え、制御部は、画像取得部により取得された画像に基づいて、観察者の周囲の三次元の周囲環境地図を作成する制御を行うように構成されており、周囲環境地図は、現時点において画像取得部により取得された第1画像により構成される第1周囲環境地図と、第1画像よりも前の第2画像により構成される第2周囲環境地図と、第2画像に第1画像を合成した画像に基づく第3周囲環境地図とを含み、制御部は、第2周囲環境地図と、第3周囲環境地図とに基づいて、第1周囲環境地図を取得するとともに、観察者の頭部の位置および角度を推定する制御を行うように構成されている
【0009】
この発明の第1の局面におけるヘッドモーショントラッカ装置では、上記のように、頭部装着部に取り付けられた画像取得部を設ける。また、ヘッドモーショントラッカ装置では、画像取得部により取得された画像に基づいて、観察者の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成された制御部を設ける。これにより、移動体ではなく、頭部装着部に取り付けられた画像取得部の画像に基づいて、制御部により観察者の頭部の位置および角度を取得することができる。すなわち、移動体に画像取得部を設置することなく、制御部により観察者の頭部の位置および角度を取得することができる。その結果、移動体に画像取得部の設置スペースを確保する必要がないので、ヘッドモーショントラッカ装置を既存の移動体であっても容易に適用することができる。
【0010】
上記目的を達成するために、この発明の第2の局面における航空機用ヘッドモーショントラッカ装置は、航空機の機体内の観察者としてのパイロットに装着されるヘッドモーショントラッカ装置を備え、ヘッドモーショントラッカ装置は、パイロットの頭部に取り付けられる頭部装着部と、頭部装着部に取り付けられ、パイロットの頭部の向きに沿った方向の画像を取得する画像取得部と、画像取得部により取得された画像に基づいて、パイロットの頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成された制御部とを含み、制御部は、画像取得部により取得された画像に基づいて、観察者の周囲の三次元の周囲環境地図を作成する制御を行うように構成されており、周囲環境地図は、現時点において画像取得部により取得された第1画像により構成される第1周囲環境地図と、第1画像よりも前の第2画像により構成される第2周囲環境地図と、第2画像に第1画像を合成した画像に基づく第3周囲環境地図とを含み、制御部は、第2周囲環境地図と、第3周囲環境地図とに基づいて、第1周囲環境地図を取得するとともに、観察者の頭部の位置および角度を推定する制御を行うように構成されている
【0011】
この発明の第2の局面における航空機用ヘッドモーショントラッカ装置は、上記のように、頭部装着部に取り付けられた画像取得部を設ける。また、ヘッドモーショントラッカ装置では、画像取得部により取得された画像に基づいて、観察者の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成された制御部を設ける。これにより、移動体ではなく、頭部装着部に取り付けられた画像取得部の画像に基づいて制御部により、観察者の頭部の位置および角度を取得することができる。すなわち、移動体に画像取得部を設置することなく、制御部により観察者の頭部の位置および角度を取得することができる。その結果、移動体に画像取得部の設置スペースを確保する必要がないので、ヘッドモーショントラッカ装置を既存の移動体であっても容易に適用することが可能な航空機用ヘッドモーショントラッカ装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記第1の局面におけるヘッドモーショントラッカ装置は、観察者の頭部に装着される頭部装着部と、頭部装着部に取り付けられ、観察者の頭部の向きに沿った方向の画像を取得する画像取得部と、画像取得部により取得された画像に基づいて、観察者の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成された制御部とを備える。これにより、移動体ではなく、頭部装着部に取り付けられた画像取得部の画像に基づいて、制御部により観察者の頭部の位置および角度を取得することができる。すなわち、移動体に画像取得部を設置することなく、制御部により観察者の頭部の位置および角度を取得することができる。その結果、移動体に画像取得部の設置スペースを確保する必要がないので、ヘッドモーショントラッカ装置を既存の移動体であっても容易に適用することができる。
【0013】
上記第2の局面における航空機用ヘッドモーショントラッカ装置は、航空機の機体内の観察者としてのパイロットに装着されるヘッドモーショントラッカ装置を備え、ヘッドモーショントラッカ装置は、パイロットの頭部に取り付けられる頭部装着部と、頭部装着部に取り付けられ、パイロットの頭部の向きに沿った方向の画像を取得する画像取得部と、画像取得部により取得された画像に基づいて、パイロットの頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成された制御部とを含む。これにより、移動体ではなく、頭部装着部に取り付けられた画像取得部の画像に基づいて制御部により、観察者の頭部の位置および角度を取得することができる。すなわち、移動体に画像取得部を設置することなく、制御部により観察者の頭部の位置および角度を取得することができる。その結果、移動体に画像取得部の設置スペースを確保する必要がないので、ヘッドモーショントラッカ装置を既存の移動体であっても容易に適用することが可能な航空機用ヘッドモーショントラッカ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態によるヘッドモーショントラッカ装置を航空機内のパイロットが装着した状態を示した模式図である。
図2】第1実施形態によるヘッドモーショントラッカ装置の構成を示したブロック図である。
図3】第1実施形態によるヘッドモーショントラッカ装置の画像取得部によりパイロットの正面を撮影した状態および移動前画像(ベース画像)を示した模式図である。
図4】第1実施形態によるヘッドモーショントラッカ装置の画像取得部により作成された前フレーム地図(ベース地図)を示した模式図である。
図5】第1実施形態によるヘッドモーショントラッカ装置の画像取得部によりパイロットの正面よりも下側を撮影した状態、移動前画像および移動後画像を示した模式図である。
図6】第1実施形態によるヘッドモーショントラッカ装置の画像取得部により作成された現フレーム地図を示した模式図である。
図7】第1実施形態によるヘッドモーショントラッカ装置において作成された移動後環境地図を示した模式図である。
図8】第1実施形態によるヘッドモーショントラッカ装置を装着したパイロットの頭部の動きの一例を示した模式図である。
図9】第1実施形態によるヘッドモーショントラッカ装置の制御部におけるパイロットの頭部の位置および角度を推定する方法を示した模式図である。
図10】第1実施形態によるパイロットの頭部の位置および角度取得処理を示したフローチャートである。
図11】第2実施形態によるヘッドモーショントラッカ装置を航空機内のパイロットが装着した状態を示した模式図である。
図12】第2実施形態によるヘッドモーショントラッカ装置の目印部の構成を示したブロック図である。
図13】第2実施形態によるヘッドモーショントラッカ装置の構成を示したブロック図である。
図14】第2実施形態によるヘッドモーショントラッカ装置の制御部側通信部と、目印部側通信部とが通信している状態を示した模式図である。
図15】第2実施形態によるヘッドモーショントラッカ装置の制御部におけるパイロットの頭部の位置および角度の推定において、作成するパイロットの頭部の位置および角度を減少させた例を示した模式図である。
図16】第3実施形態によるヘッドモーショントラッカ装置の構成を示したブロック図である。
図17】第3実施形態によるヘッドモーショントラッカ装置および目印部を示した模式図である。
図18】第2実施形態の第1変形例によるヘッドモーショントラッカ装置を示した模式図である。
図19】第3実施形態の第2変形例によるヘッドモーショントラッカ装置の構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
[第1実施形態]
図1図9を参照して、第1実施形態による航空機用ヘッドモーショントラッカ装置10(以下、単にヘッドモーショントラッカ装置10と記載)の構成について説明する。ヘッドモーショントラッカ装置10は、図1に示すように、航空機100内のパイロット11に装着されるヘッドマウントディスプレイに設けられている。詳細には、ヘッドモーショントラッカ装置10は、ヘッドマウントディスプレイにおいて、パイロット11の頭部の位置および角度を計測する機能を有している。なお、航空機用ヘッドモーショントラッカ装置10は、特許請求の範囲の「ヘッドモーショントラッカ装置」の一例である。また、航空機100は、特許請求の範囲の「移動体」の一例である。パイロット11は、特許請求の範囲の「観察者」の一例である。
【0017】
具体的には、図1および図2に示すように、ヘッドモーショントラッカ装置10は、頭部装着部1と、画像取得部2と、目印部3と、制御部4とを備えている。
【0018】
頭部装着部1は、頭部装着部1は、ヘルメット、ヘッドセットおよびベルトなどの、パイロット11の頭部に装着される部材である。画像取得部2は、頭部装着部1に取り付けられ、パイロット11の頭部の向きに沿った方向(以下、A方向とする)の画像を取得するように構成されている。画像取得部2は、並んで配置された複数(2つ)のカメラ21を含んでいる。詳細には、2つのカメラ21は、エリアセンサカメラである。2つのカメラ21は、紫外光および近赤外光に感度を有している。2つのカメラ21は、所定の間隔を空けて配置されている。2つのカメラ21の各々は、同一のA方向を撮影するように構成されている。2つのカメラ21には、同じレンズが装着されている。具体的には、2つのカメラ21には、同じ広角レンズまたは魚眼レンズが装着されている。
【0019】
目印部3は、パイロット11の周囲に配置され、画像取得部2により画像として取得される。すなわち、目印部3は、マーカとしての機能を有している。目印部3は、航空機100に複数(3つ)配置されている。目印部3は、航空機100のコクピット内に配置されている。なお、目印部3は、1、2または4つ以上配置されてもよい。
【0020】
目印部3は、取付部31と、発光部32とを含んでいる。取付部31は、目印部3を移動体に取り付けるための土台である。発光部32は、取付部31のパイロット11側の面に取り付けられている。発光部32は、紫外光または近赤外光を照射可能なLED(Light Emitting Diode)、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser(垂直共振器面発光レーザ))などにより構成されている。また、発光部32は、広角に光を照射可能とするためのレンズが取り付けられている。
【0021】
目印部3は、非接触給電および太陽光発電などにより電力が供給されるように構成されている。このように、目印部3に電力を供給するための配線接続が不要である。
【0022】
目印部3は、パイロット11の頭部の位置および角度を精度よく計測する必要があるので、パイロット11の正面側に複数(2つ)配置されている。これにより、パイロット11が正面を向いた際、画像取得部2により複数(2つ)の目印部3が取得される。
【0023】
制御部4は、各種の制御および演算処理を行うコンピュータにより構成されている。制御部4は、画像処理部41と、CPU(Central Processing Unit)部42と、記憶部43とを含んでいる。
【0024】
画像処理部41は、画像取得部2において取得した画像に基づいて、画像における特徴点12の抽出処理、および、機械学習により画像に基づいて三次元地図としての周囲環境地図5を作成する処理などを行う機能を有している。画像処理部41において作成された周囲環境地図5は、記憶部43に記憶される。ここで、画像中の特徴点12とは、取得された画像中において、コントラストの差から取得される、航空機100内の躯体の形状、航空機100内に配置されたスイッチおよびディスプレイなどの部分の重心点を示す。また、画像の特徴点12としては、目印部3も特徴点12として取得される。
【0025】
周囲環境地図5において、相対座標系(XYZ座標系)は、2つのカメラ21の並ぶ方向に延びる軸をX軸(図4参照)とし、2つのカメラ21の光軸方向に延びる軸をY軸(図4参照)とし、X軸およびY軸に直交する方向に延びる軸をZ軸(図4参照)とする。また、相対座標系の原点は、2つのカメラ21の中点とする。
【0026】
ここで、2つのカメラ21がエリアセンサカメラであるので、画像処理部41は、周囲環境地図5におけるXZ平面の情報を取得可能である。また、画像取得部2は、2つのカメラ21の視差に基づくステレオ法により、周囲環境地図5におけるY軸方向の情報を取得可能である。
【0027】
周囲環境地図5は、ベース地図51図4参照)と、現フレーム地図52図6参照)と、前フレーム地図53図4参照)とを有している。なお、ベース地図51および前フレーム地図53は、特許請求の範囲の「第2周囲環境地図」の一例である。なお、現フレーム地図52は、特許請求の範囲の「第3周囲環境地図」の一例である。
【0028】
ベース地図51は、周囲環境地図5において基準となる地図である。ベース地図51は、たとえば、A方向として真正面をパイロット11が向いた状態で際に撮影されたベース画像61に基づく周囲環境地図5であってもよい。ベース地図51は、記憶部43にあらかじめ登録されている。
【0029】
前フレーム地図53は、現時点よりも前に記憶部43に記憶された現フレーム地図52である。前フレーム地図53は、たとえば、A方向として真正面をパイロット11が向いた際に撮影された移動前画像62に基づく三次元地図であってもよい。なお、移動前画像62は、特許請求の範囲の「第2画像」の一例である。
【0030】
現フレーム地図52は、たとえば、真正面をパイロット11が向いた際に撮影された移動前画像62と、真正面からパイロット11の頭部が移動した際に撮影された移動後画像63とを合成した画像に基づく三次元地図であってもよい。現フレーム地図52は、画像取得部2により取得された画像に合わせて追加されていく。なお、移動後画像63は、特許請求の範囲の「第1画像」の一例である。
【0031】
CPU部42は、比較処理42aと、位置角度検出処理42bとを実行する機能を有している。比較処理42aは、画像処理部41において変換された周囲環境地図5を比較する処理である。位置角度検出処理42bは、画像処理部41により作成された周囲環境地図5に基づいて、パイロット11の頭部の現時点における位置および角度を検出する処理である。位置角度検出処理42bについては、一例を用いて後に説明する。
【0032】
記憶部43は、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を有する記憶媒体である。ここで、RAMには、前フレーム地図53が記憶されている。また、ROMには、ベース地図51が記憶されている。
【0033】
(位置角度検出処理)
第1実施形態の制御部4は、画像取得部2により取得された画像に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成されている。なお、パイロット11の頭部の位置および角度は、2つのカメラ21の中点の位置および角度として示される。
【0034】
詳細には、制御部4は、画像取得部2により取得される画像のうち、航空機100内の外界を視認可能な窓以外の部分に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成されている。すなわち、制御部4は、画像取得部2により取得された画像中において、航空機100内の躯体の形状、航空機100内に配置されたスイッチおよびディスプレイなどの特徴点12に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成されている。
【0035】
図3図9を参照して、パーティクルフィルタを適用した位置角度検出処理42bを一例として説明する。なお、以下の説明では、ベース地図51と、前フレーム地図53とが、同じである例を示しているが、ベース地図51と、前フレーム地図53とが、異なっていてもよい。ベース地図51と、前フレーム地図53とが、異なる場合、前フレーム地図53を用いて位置角度検出処理42bが行われてもよい。
【0036】
図3および図4に示すように、制御部4は、パイロット11が真正面を向いた時の画像(移動前画像62)に基づいて、機械学習によりパイロット11の周囲の三次元の周囲環境地図5(前フレーム地図53)を作成する制御を行うように構成されている。すなわち、制御部4は、2つのカメラ21の視差に基づいて、パイロット11の頭部の向きに沿った方向の距離を取得するとともに、取得した距離に基づいて、三次元の周囲環境地図5(前フレーム地図53)を作成する制御を行うように構成されている。この際、制御部4は、移動前画像62中のコントラストの差に基づいて、複数の特徴点12を取得する制御を行うように構成されている。制御部4は、移動前画像62中のコントラストの差に基づいて、複数の目印部3を取得する制御を行うように構成されている。
【0037】
ここで、パイロット11の頭部の位置および角度は、それぞれ、(X1、Y1、Z1)および(RL1、EL1、AZ1)と示される。RL1は、ロール方向(X軸に対する回転)の角度である。EL1は、エレベーション方向(Y軸に対する回転)の角度である。AZ1は、アジマス方向(Z軸に対する回転)の角度である。
【0038】
次に、図5および図6には、パイロット11の頭部を真正面の向きから下方向に移動させた場合が示されている。この場合、制御部4は、移動前画像62およびパイロット11の頭部が移動した後のA方向の画像(移動後画像63)に基づいて、機械学習によりパイロット11の周囲の三次元の周囲環境地図5(現フレーム地図52)を作成する制御を行うように構成されている。すなわち、制御部4は、2つのカメラ21の視差に基づいて、パイロット11の頭部の向きに沿った方向の距離を取得するとともに、取得した距離に基づいて、三次元の周囲環境地図5(現フレーム地図52)を作成する制御を行うように構成されている。この際、制御部4は、移動後画像63中のコントラストの差に基づいて、複数の特徴点12を取得する制御を行うように構成されている。制御部4は、移動後画像63中のコントラストの差に基づいて、複数の目印部3を取得する制御を行うように構成されている。
【0039】
現フレーム地図52は、移動前画像62と、移動後画像63とにおいて同じ部分(共通部分)を合成するとともに、移動前画像62とは異なる移動後画像63の部分を追加した画像に基づいて作成される一続きの三次元地図である。ここで、現フレーム地図52は、次に移動後画像63が取得される際には、前フレーム地図53となる。そして、上記前フレーム地図53には、同様に、移動後画像63が合成・追加されていく。このように、現フレーム地図52は、現フレーム以降の周囲環境地図5の作成に用いられる。
【0040】
ここで、真正面の向きから下方向に移動させた後のパイロット11の頭部の位置および角度は、それぞれ、(X2、Y2、Z2)および(RL2、EL2、AZ2)と示される。
【0041】
次に、図7に示すように、制御部4は、前フレーム地図53と、現フレーム地図52との比較に基づいて、移動後環境地図54を取得する制御を行うように構成されている。すなわち、制御部4は、現フレーム地図52の中から、移動後画像63に対応する部分を取得する制御を行うように構成されている。なお、移動後環境地図54は、特許請求の範囲の「第1周囲環境地図」の一例である。
【0042】
このように、移動後環境地図54は、現フレーム(現時点)において画像取得部2により取得された移動後画像63により構成された地図である。現フレーム地図52は、移動前画像62に移動後画像63を合成した画像に基づく地図である。前フレーム地図53は、移動後画像63よりも前のフレーム(前の時点)の移動前画像62により構成された地図である。
【0043】
そして、図7および図8に示すように、制御部4は、移動後環境地図54に含まれる複数の特徴点12および特徴点12としての目印部3を全て取得可能なパイロット11の頭部の位置および角度を、現時点のパイロット11の頭部の位置および角度として推定する制御を行うように構成されている。
【0044】
詳細には、図9に示すように、制御部4は、パーティクルフィルタに基づいて、現フレームのパイロット11の頭部の位置および角度として推定する制御を行うように構成されている。
【0045】
すなわち、制御部4は、現フレームよりも前のフレームのパイロット11の頭部の位置および角度に基づいて、互いに頭部の位置および角度が異なる複数のパイロット11の頭部の位置および角度を作成する制御を行うように構成されている。制御部4は、作成した互いに頭部の位置および角度が異なる複数のパイロット11の頭部の位置および角度をランダムに移動させる制御を行うように構成されている。
【0046】
制御部4は、ランダムに移動させた複数のパイロット11の頭部の位置および角度のうちから、現フレーム地図52から移動後環境地図54と相関関係のある地図を取得可能なパイロット11の頭部の位置および角度を選択する制御を行うように構成されている。詳細には、制御部4は、作成した複数のパイロット11の頭部の位置および角度のうちから、移動後環境地図54に含まれる複数の特徴点12および特徴点12としての目印部3を全て取得可能なパイロット11の頭部の位置および角度を選択する制御を行うように構成されている。
【0047】
そして、制御部4は、相関関係のある地図を取得可能なパイロット11の頭部の位置および角度(図9の○印)に基づいて、互いに頭部の位置および角度が異なる複数のパイロット11の頭部の位置および角度を作成する制御を行うように構成されている。この際、制御部4は、相関関係のないパイロット11の頭部の位置および角度(図9の×印)を削除する制御を行うように構成されている。
【0048】
上記したように、制御部4は、A方向(パイロット11の頭部の向きに沿った方向)の移動前画像62に基づいて、パイロット11の周囲の三次元の前フレーム地図53を作成する制御を行うように構成されている。制御部4は、A方向(パイロット11の頭部の向きに沿った方向)の移動前画像62および移動後画像63に基づいて、パイロット11の周囲の三次元の現フレーム地図52を作成する制御を行うように構成されている。制御部4は、前フレーム地図53および現フレーム地図52に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成されている。
【0049】
ここで、制御部4は、前フレーム地図53と、現フレーム地図52との比較に基づいて、移動後環境地図54を取得するとともに、パイロット11の頭部の位置および角度を推定する制御を行うように構成されている。すなわち、制御部4は、現フレーム地図52から移動後環境地図54を取得する制御を行うように構成されている。
【0050】
制御部4は、目印部3が取得された移動後画像63に基づく三次元の移動後環境地図54中の目印部3に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得するとともに、複数の特徴点12が取得された移動後画像63に基づく三次元の移動後環境地図54中の複数の特徴点12に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成されている。すなわち、制御部4は、移動後環境地図54に含まれる複数の特徴点12および目印部3に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を推定する制御を行うように構成されている。
【0051】
(頭部の位置および角度取得処理)
以下に、図3図10を参照して、頭部の位置および角度取得処理について説明する。頭部の位置および角度取得処理は、パイロット11の頭部に装着されたカメラ21を用いて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する処理である。
【0052】
ステップS1において、制御部4では、記憶部43からベース地図51が前フレーム地図53として取得される(図3および図4を参照)。
【0053】
ステップS2において、制御部4では、パイロット11の向いてる方向の画像に基づいて現フレーム地図52が取得される(図5および図6を参照)。ステップS3において、制御部4では、前フレーム地図53と、現フレーム地図52との比較に基づいて、移動後環境地図54が取得される(図7を参照)。ステップS4において、制御部4では、現フレーム地図52において、移動後環境地図54に含まれる複数の特徴点12および目印部3を全て取得可能な観察者の頭部の位置および角度が推定される(図9を参照)。
【0054】
ステップS5において、制御部4では、現フレーム地図52が前フレーム地図53として記憶部43に記憶される。ステップS5の後、ステップS3に戻り処理が繰り返される。
【0055】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0056】
第1実施形態では、上記のように、ヘッドモーショントラッカ装置10に、頭部装着部1に取り付けられた画像取得部2を設ける。また、ヘッドモーショントラッカ装置10に、画像取得部2により取得された画像に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成された制御部4を設ける。これにより、航空機100ではなく、頭部装着部1に取り付けられた画像取得部2の画像に基づいて、制御部4によりパイロット11の頭部の位置および角度を取得することができる。すなわち、航空機100に画像取得部2を設置することなく、制御部4によりパイロット11の頭部の位置および角度を取得することができる。この結果、航空機100に画像取得部2の設置スペースを確保する必要がないので、ヘッドモーショントラッカ装置10を既存の航空機100であっても容易に適用することができる。
【0057】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部4を、パイロット11の頭部の向きに沿った方向の画像に基づいて、パイロット11の周囲の三次元の周囲環境地図5を作成する制御を行うとともに、周囲環境地図5に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成する。これにより、仮想空間上の周囲環境地図5に対する制御部4の演算によって、パイロット11の頭部の位置および角度を取得することができるので、航空機100ごとに異なるパイロット11の周囲の三次元の周囲環境地図5においてもパイロット11の頭部の位置および角度を確実に取得することができる。
【0058】
また、第1実施形態では、上記のように、周囲環境地図5に、現フレーム(現時点)において画像取得部2により取得された移動後画像63により構成される移動後環境地図54を設ける。制御部4を、移動後環境地図54に含まれる複数の特徴点12に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を推定する制御を行うように構成する。これにより、複数の特徴点12を参照してパイロット11の頭部の位置および角度を推定するので、パイロット11の頭部の位置および角度をより正確に推定することができる。
【0059】
また、第1実施形態では、上記のように、周囲環境地図5に、移動後画像63よりも前の移動前画像62により構成される前フレーム地図53を設ける。制御部4を、少なくとも移動後環境地図54に含まれる複数の特徴点12および前フレーム地図53に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を推定する制御を行うように構成する。これにより、移動後環境地図54の複数の特徴点12のみに基づいてパイロット11の頭部の位置および角度を推定する場合と比較して、移動前画像62により構成される前フレーム地図53も用いることにより、パイロット11の頭部の位置および角度の変化をより正確に把握することができる。この結果、パイロット11の頭部の位置および角度の推定の精度を向上させることができる。
【0060】
また、第1実施形態では、上記のように、周囲環境地図5に、移動前画像62に移動後画像63を合成した画像に基づく現フレーム地図52を設ける。制御部4を、前フレーム地図53と、現フレーム地図52との比較に基づいて、移動後環境地図54を取得するとともに、パイロット11の頭部の位置および角度を推定する制御を行うように構成する。これにより、移動前画像62に移動後画像63を合成した画像に基づく現フレーム地図52により、移動後画像63のみに基づいて移動後環境地図54を取得する場合と比較して、移動後環境地図54に含まれる情報量を増加させることができる。この結果、より緻密な移動後環境地図54を作成することができるので、パイロット11の頭部の位置および角度の推定の精度をより向上させることができる。
【0061】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部4を、移動後環境地図54に含まれる複数の特徴点12を全て取得可能なパイロット11の頭部の位置および角度を、現フレーム(現時点)のパイロット11の頭部の位置および角度として推定する制御を行うように構成する。これにより、移動後環境地図54に含まれる複数の特徴点12を全て取得可能か否かで、現フレーム(現時点)のパイロット11の頭部の位置および角度を取得することができるので、簡易な方法によりパイロット11の頭部の位置および角度を推定することができる。
【0062】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部4を、前フレーム(現フレーム(現時点)よりも前の時点)のパイロット11の頭部の位置および角度に基づいて、互いに頭部の位置および角度が異なる複数のパイロット11の頭部の位置および角度を作成するとともに、作成した複数のパイロット11の頭部の位置および角度を変化させた後、移動後環境地図54に含まれる複数の特徴点12を全て取得可能なパイロット11の頭部の位置および角度を選択する制御を行うように構成する。これにより、パイロット11の頭部の位置および角度を複数作成することにより、多くのバリエーションから現フレーム(現時点)のパイロット11の頭部の位置および角度を推定することができるので、より適切なパイロット11の頭部の位置および角度を選択することができる。
【0063】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部4を、移動後画像63中のコントラストの差に基づいて、複数の特徴点12を取得する制御を行うように構成する。これにより、簡易な方法により複数の特徴点12を取得することができるので、制御部4への処理負荷の増加を抑制することができる。
【0064】
また、第1実施形態では、上記のように、ヘッドモーショントラッカ装置10に、パイロット11の周囲に配置され、画像取得部2により画像として取得される目印部3を設ける。制御部4を、目印部3が取得された画像に基づく三次元の周囲環境地図5中の目印部3に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成する。これにより、画像取得部2により取得される画像中の特徴点12として目印部3を用いることができるので、画像取得部2が特徴点12をより確実に取得することができる。
【0065】
また、第1実施形態では、上記のように、画像取得部2に、並んで配置された2つのカメラ21を設ける。制御部4を、2つのカメラ21の視差に基づいて、パイロット11の頭部の向きに沿った方向の距離を取得するとともに、2つのカメラ21により取得した距離に基づいて、三次元の周囲環境地図5を作成する制御を行うように構成する。これにより、1つのカメラ21によりパイロット11の頭部の向きに沿った方向の距離を取得する場合と比較して、パイロット11の頭部の向きに沿った方向の距離を正確に取得することができるので、三次元の周囲環境地図5をより正確に作成することができる。
【0066】
また、第1実施形態では、上記のように、航空機用ヘッドモーショントラッカ装置に、航空機100の機体内の観察者としてのパイロット11に装着されるヘッドモーショントラッカ装置10を設ける。ヘッドモーショントラッカ装置10に、頭部装着部1に取り付けられた画像取得部2を設ける。また、ヘッドモーショントラッカ装置10では、画像取得部2により取得された画像に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成された制御部4を設ける。これにより、航空機100ではなく、頭部装着部1に取り付けられた画像取得部2の画像に基づいて制御部4により、パイロット11の頭部の位置および角度を取得することができる。すなわち、航空機100に画像取得部2を設置することなく、制御部4によりパイロット11の頭部の位置および角度を取得することができる。この結果、航空機100に画像取得部2の設置スペースを確保する必要がないので、ヘッドモーショントラッカ装置10を既存の航空機100であっても容易に適用することが可能な航空機用ヘッドモーショントラッカ装置10を得ることができる。
【0067】
[第2実施形態]
次に、図11図14を参照して、第2実施形態のヘッドモーショントラッカ装置210について説明する。詳細には、発光するだけの目印部3を備える第1実施形態のヘッドモーショントラッカ装置10とは異なり、第2実施形態のヘッドモーショントラッカ装置210では、目印部203が目印部側通信部234を備えている。なお、第2実施形態において、上記第1実施形態と同様の構成に関しては、同じ符号を付して説明を省略する。
【0068】
図11および図12に示すように、ヘッドモーショントラッカ装置210は、頭部装着部1と、画像取得部2と、目印部203と、制御部204(図13参照)とを備えている。
【0069】
目印部203は、パイロット11の周囲に配置され、画像取得部2により画像として取得される。目印部203は、マーカとしての機能および通信機能の両方を有している。目印部203は、移動体に複数(3つ)配置されている。なお、目印部203は、1、2または4つ以上配置されてもよい。
【0070】
複数の目印部203は、良好な現フレーム地図52を持続的に取得可能とするため、パイロット11がいずれの方向を向いた場合においても、少なくとも1つ以上の目印部203が画像取得部2により撮影可能な位置に配置されている。これにより、制御部204によりパイロット11の頭部の位置および角度の推定精度の低下を回避することができる。また、制御部204により目印部203が検出されない状態を確実に回避することができる。
【0071】
目印部203は、取付部31と、発光部203aと、受光部203bと、制御部203cとを含んでいる。
【0072】
発光部203aは、マーカ機能とともに、制御部204との光通信のために用いられている。発光部203aは、紫外光または近赤外光を照射可能なLEDおよびVCSELなどにより構成されている。また、発光部203aは、広角に光を照射可能とするためのレンズが取り付けられている。受光部203bは、紫外光または近赤外光を受光可能なフォトダイオードなどの受光素子により構成されている。受光部203bは、広角に光を受光可能とするためのレンズが取り付けられている。
【0073】
制御部203cは、CPU部231と、記憶部232と、センサ部233と、目印部側通信部234とを有している。
【0074】
CPU部231は、センサデータ処理231aに所定の処理を実行させる機能を有している。センサデータ処理231aは、センサ部233からの計測値を、制御部204に送信可能な計測値情報に変換する処理を行う。センサデータ処理231aは、制御部204からのデータを、制御部203cに認識可能なデータに変換する処理を行う。
【0075】
記憶部232は、RAMおよびROMを有する記憶媒体である。記憶部232には、目印部203の識別番号232aと、機体座標位置232bとが記憶されている。機体座標位置232bとは、パイロット11を乗せた航空機100の機体の基準位置に対する目印部203の座標位置を示す。機体座標位置232bは、目印部203を機体に設置する際に、計測した後、記憶部232に入力される。なお、機体座標位置232bは、特許請求の範囲の「目印部の位置」の一例である。また、航空機100は、特許請求の範囲の「移動体」の一例である。
【0076】
センサ部233は、加速度センサ233a、ジャイロセンサ233b、傾斜センサ233cおよび方位センサ233dを有している。加速度センサ233aは、機体の加速度を計測する。ジャイロセンサ233bは、機体の角速度を計測する。傾斜センサ233cは、機体の傾きを計測する。方位センサ233dは、機体の方位を計測する。なお、ジャイロセンサ233bは、特許請求の範囲の「目印部側ジャイロセンサ」の一例である。
【0077】
目印部側通信部234は、後述する制御部側通信部204f(図13参照)と通信可能に構成されている。目印部側通信部234は、光および電波による無線通信機能を有している。目印部側通信部234は、制御部204の記憶部204bの機体座標位置232bの調整・設定の際、制御部側通信部204fと電波による無線通信を行う。また、目印部側通信部234は、調整・設定以外の通常使用の際、制御部側通信部204fと光による無線通信を行う。目印部側通信部234は、目印部203の識別番号232aの情報、目印部203の機体座標位置232bの情報、センサ部233の計測値情報を光により、制御部側通信部204fに送信するように構成されている。
【0078】
ここで、目印部側通信部234は、発光部203aを発光させる制御を行うように構成されている。すなわち、目印部側通信部234は、発光部203aのマーカとしての発光、および、制御部側通信部204fと光による無線通信としての発光部203aの発光を重畳して行うことが可能である。目印部側通信部234は、制御部204側の発光部204cの発光を受光部203bにより受光する。
【0079】
図13および図14に示すように、制御部204は、各種の制御および演算処理を行うコンピュータにより構成されている。制御部204は、画像処理部41と、CPU部204aと、記憶部204bと、発光部204cと、受光部204dと、センサ部204eと、制御部側通信部204fとを含んでいる。
【0080】
CPU部204aは、比較処理42aと、位置角度検出処理42bと、センサデータ処理240とに所定の処理実行させる機能を有している。センサデータ処理240は、センサ部204eからの計測値を、制御部204において認識可能な計測値情報に変換する処理を行う。センサデータ処理240は、目印部203から送信された情報を受け渡す処理も行う。センサデータ処理240は、制御部204から送信するデータを、制御部203cに送信可能なデータに変換する処理を行う。
【0081】
記憶部204bは、RAMおよびROMを有する記憶媒体である。記憶部204bには、前フレーム地図53と、ベース地図51と、機体座標位置232bとが記憶されている。
【0082】
発光部204cは、紫外光または近赤外光を照射可能なLEDおよびVCSELなどにより構成されている。発光部204cの光軸は、カメラ21の光軸と同じ方向に配置されている。発光部204cは、広角に光を照射可能とするためのレンズが取り付けられている。発光部204cは、制御部側通信部204fにより、発光部204cの照明光としての発光、および、目印部側通信部234と光による無線通信としての発光部204cの発光の両方を行うことが可能である。
【0083】
受光部204dは、紫外光または近赤外光を受光可能なフォトダイオードなどの受光素子により構成されている。受光部204dは、広角に光を受光可能とするためのレンズが取り付けられている。
【0084】
センサ部204eは、加速度センサ241、ジャイロセンサ242、傾斜センサ243および方位センサ244を有している。加速度センサ241は、パイロット11の頭部の加速度を計測する。ジャイロセンサ242は、パイロット11の頭部の角速度を計測する。傾斜センサ243は、パイロット11の頭部の傾きを計測する。方位センサ244は、パイロット11の頭部の方位を計測する。なお、ジャイロセンサ242は、特許請求の範囲の「装置側ジャイロセンサ」の一例である。
【0085】
制御部側通信部204fは、目印部側通信部234と通信可能に構成されている。制御部側通信部204fは、光および電波による無線通信機能を有している。制御部側通信部204fは、制御部204の記憶部204bの機体座標位置232bの調整・設定の際、目印部側通信部234と電波による無線通信を行う。また、制御部側通信部204fは、調整・設定以外の通常使用の際、目印部側通信部234と光による無線通信を行う。制御側通信部は、目印部203の識別番号232aの情報、目印部203の機体座標位置232bの情報、センサ部233の計測値情報を光により、目印部側通信部234から受信するように構成されている。制御部側通信部204fは、発光部204cを照明光として発光させるように構成されている。
【0086】
(位置角度検出処理)
図13および図14に示すように。第2実施形態の制御部204は、画像取得部2により取得された画像に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成されている。なお、パイロット11の頭部の位置および角度は、2つのカメラ21の中点の位置および角度として示される。
【0087】
制御部204は、画像取得部2により取得された移動後画像63から十分な数の特徴点12を抽出できなかった場合、センサ部233の計測値情報と、センサ部204eの計測値情報とに基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成されている。また、制御部204は、前フレーム地図53および現フレーム地図52に基づいて、観察者の頭部の角度が所定時間内に取得できない場合も同様の制御を行うように構成されている。この際、制御部204は、発光部204cの光により、画像取得部2により取得された目印部203にセンサ部204eの計測値情報を要求する信号を送信する制御を行うように構成されている。
【0088】
詳細には、制御部204は、前フレーム地図53および現フレーム地図52に基づいてパイロット11の頭部の角度が所定時間内に取得できない場合、ジャイロセンサ242により計測されたパイロット11の頭部の角速度と、ジャイロセンサ233bにより計測された航空機100の角速度との差に基づいて、パイロット11の頭部の角度を取得する制御を行うように構成されている。すなわち、ジャイロセンサ233bにより計測された航空機100の角速度の情報は、ジャイロセンサ242により計測された頭部の角速度に含まれる航空機100の角速度の情報を相殺するために用いられる。これにより、制御部204が光通信により航空機100の角速度の情報を取得可能であるので、制御部204が航空機100の角速度の情報を取得するために専用のケーブルを用いなくてもよい。
【0089】
また、詳細には、制御部204は、前フレーム地図53および現フレーム地図52に基づいてパイロット11の頭部の角度が所定時間内に取得できない場合、加速度センサ241により計測されたパイロット11の頭部の加速度と、加速度センサ233aにより計測された航空機100の加速度との差に基づいて、パイロット11の頭部の位置を取得する制御を行うように構成されている。すなわち、加速度センサ233aにより計測された航空機100の加速度の情報は、加速度センサ241により計測された頭部の加速度に含まれる航空機100の加速度の情報を相殺するために用いられる。これにより、制御部204が光通信により航空機100の加速度の情報を取得可能であるので、制御部204が航空機100の加速度の情報を取得するために専用のケーブルを用いなくてもよい。
【0090】
なお、光による通信だけではなく、必要に応じて、パイロット11により、航空機100の機体の姿勢、方位角などが入力されてもよい。
【0091】
制御部204は、ジャイロセンサ233bおよびジャイロセンサ242により取得されたパイロット11の頭部の角度と、前フレーム地図53および現フレーム地図52に基づいて推定されたパイロット11の頭部の角度とを比較する制御を行うように構成されている。さらに、制御部204は、加速度センサ233aおよび加速度センサ241により取得されたパイロット11の頭部の位置と、前フレーム地図53および現フレーム地図52に基づいて推定されたパイロット11の頭部の位置とを比較する制御を行うように構成されている。制御部204は、上記した2つの比較結果の両方において、パイロット11の頭部の角度および位置が一致する場合、前フレーム地図53と、ベース地図51とを合成するか、または、ベース地図51を前フレーム地図53に更新する制御を行うように構成されている。
【0092】
制御部204は、前フレーム地図53と現フレーム地図52とが似通っていること、および、外乱などに起因するパイロット11の頭部の位置および角度の精度の低下を防止するため、移動後環境地図54上の特徴点12の座標位置ではなく、目印部203の機体座標位置232bによるパイロット11の頭部の位置および角度の推定を行うように構成されている。詳細には、制御部204は、画像取得部2により目印部203を取得した場合、目印部側通信部234を介して記憶部232から取得した目印部203の機体座標位置232bに基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成されている。これにより、画像取得部2により目印部203を取得するたびに、パイロット11の頭部の位置および角度を再設定(リセット)することが可能である。ここで、制御部204は、パイロット11の頭部の位置および角度を再設定した場合、目印部203の機体座標位置232bに基づいて、前フレーム地図53の座標位置を補正する制御を行うことが好ましい。なお、機体座標位置232bは、特許請求の範囲の「目印部の位置」の一例である。
【0093】
図15に示すように、制御部204は、現フレームよりも前のフレームのパイロット11の頭部の位置および角度に基づいて、互いに頭部の位置および角度が異なる複数のパイロット11の頭部の位置および角度を作成する際、作成する複数のパイロット11の頭部の位置および角度を制限する制御を行うように構成されている。すなわち、制御部204は、傾斜センサ243および方位センサ244の計測値情報に基づいて、作成する複数のパイロット11の頭部の位置および角度を制限する制御を行うように構成されている。これにより、参照して比較する複数のパイロット11の頭部の位置および角度が減少するので、制御部204の処理を軽減することが可能である。なお、第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態の構成と同様である。
【0094】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0095】
第2実施形態では、上記のように、ヘッドモーショントラッカ装置210に、頭部装着部1に取り付けられた画像取得部2を設ける。また、ヘッドモーショントラッカ装置210に、画像取得部2により取得された画像に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成された制御部204を設ける。これにより、ヘッドモーショントラッカ装置210を既存の航空機100であっても容易に適用することができる。
【0096】
また、第2実施形態では、上記のように、制御部204に、制御部側通信部204fを設ける。目印部203に、制御部側通信部304fと通信可能な目印部側通信部234と、パイロット11を乗せた航空機100の基準位置に対する目印部203の位置を記憶する記憶部232とを設ける。制御部204を、画像取得部2により目印部203を取得した場合、目印部側通信部234を介して記憶部232から取得した目印部203の位置に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成する。これにより、画像取得部2により取得される画像により目印部203の位置を取得する場合と比較して、目印部203の位置の精度を高くすることができるので、三次元の周囲環境地図5中の目印部203の位置の精度を向上させることができる。この結果、制御部204により、より正確なパイロット11の頭部の位置および角度を取得することができる。
【0097】
また、第2実施形態では、上記のように、ヘッドモーショントラッカ装置210に、パイロット11の頭部の角速度を計測するジャイロセンサ242を設ける。目印部203に、パイロットを乗せた航空機100の角速度を計測するジャイロセンサ233bを設ける。制御部204を、周囲環境地図5に基づいてパイロット11の頭部の角度が所定時間内に取得できない場合、ジャイロセンサ242により計測されたパイロット11の頭部の角速度と、ジャイロセンサ233bにより計測された航空機100の角速度との差に基づいて、パイロット11の頭部の角度を取得する制御を行うように構成する。これにより、周囲環境地図5に基づいてパイロット11の頭部の角度を取得できない場合に、ジャイロセンサ242およびジャイロセンサ233bによりパイロット11の頭部の角度を補完することができるので、パイロット11の頭部の角度を確実に取得することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態の効果と同様である。
【0098】
[第3実施形態]
次に、図16および図17を参照して、第3実施形態のヘッドモーショントラッカ装置310について説明する。詳細には、発光部203aを有する目印部203を備える第2実施形態のヘッドモーショントラッカ装置210とは異なり、第3実施形態のヘッドモーショントラッカ装置310では、目印部304が反射して発光する。なお、第3実施形態において、上記第2実施形態と同様の構成に関しては、同じ符号を付して説明を省略する。
【0099】
具体的には、図16および図17に示すように、ヘッドモーショントラッカ装置310は、頭部装着部1と、画像取得部302と、発光部303と、目印部304と、制御部305とを備えている。
【0100】
画像取得部302は、1つのカメラ21と、受光光学系(図示せず)とを含んでいる。詳細には、カメラ21は、エリアセンサカメラである。カメラ21は、紫外光および近赤外光に感度を有している。カメラ21には、発光部303から発光し、機体の内表面において反射した反射光が受光光学系を介して入射する。受光光学系は、カメラ21に特定の波長領域以外の光を受光させないようにするため、特定波長領域の光のみを通過させるフィルタおよびレンズなどを有している。
【0101】
画像取得部302は、距離を算出する機能を有する。詳細には、画像取得部302は、発光部303の発光時の波長と、発光部303の上記反射光の波長との差に基づいて、距離を取得可能なように構成されている。
【0102】
発光部303は、紫外光または近赤外光を照射可能なLEDおよびVCSELなどにより構成されている。発光部303の光軸は、カメラ21の光軸と同じ方向に配置されている。ここで、発光部303は、周囲の光の影響を受けにくい波長の光であることが好ましい。発光部303は、広角に光を照射可能とするためのレンズが取り付けられている。
【0103】
ここで、画像取得部302には、距離を算出する機能を向上させるために、カメラ21の光軸方向角度および発光部303の光軸方向角度を変更可能な機構(モータなど)が設けられていることが好ましい。
【0104】
目印部304は、パイロット11の周囲に配置され、画像取得部302により画像として取得される。目印部304は、マーカとしての機能を有している。目印部304は、特徴点抽出処理を容易にするため、再帰性反射体または特定波長領域に反射特性を有する反射体で構成されている。目印部304は、移動体に複数(3つ)配置されている。なお、目印部304は、1、2または4つ以上配置されてもよい。
【0105】
複数の目印部304は、パイロット11の頭部の位置および角度の推定精度が特に必要な領域、および、特徴点12を抽出しにくい領域などに配置されている。
【0106】
制御部305は、各種の制御および演算処理を行うコンピュータにより構成されている。制御部305は、画像処理部41と、CPU部305aと、記憶部305bと、センサ部305cとを含んでいる。
【0107】
CPU部305aは、比較処理42aと、位置角度検出処理42bと、センサデータ処理350とを実行する機能を有している。センサデータ処理350は、センサ部305cからの計測値を、制御部305において認識可能な計測値情報に変換する処理を行う。
【0108】
記憶部305bは、RAMおよびROMを有する記憶媒体である。記憶部305bには、前フレーム地図53と、ベース地図51と、機体座標位置306とが記憶されている。
【0109】
センサ部305cは、加速度センサ351、ジャイロセンサ352、傾斜センサ353および方位センサ354を有している。なお、ジャイロセンサ352は、特許請求の範囲の「装置側ジャイロセンサ」の一例である。
【0110】
(位置角度検出処理)
図16および図17に示すように。第3実施形態の制御部305は、画像取得部302により取得された画像に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成されている。なお、パイロット11の頭部の位置および角度は、1つのカメラ21の先端の中点の位置および角度として示される。
【0111】
ここで、1つのカメラ21がエリアセンサカメラであるので、画像処理部41は、三次元地図におけるXZ平面の情報を取得可能である。また、画像取得部302は、距離測定機能により、三次元地図におけるY軸方向の情報を取得可能である。
【0112】
詳細には、制御部305は、画像取得部302により取得される画像のうち、航空機100内の部分に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成されている。すなわち、制御部305は、画像取得部302により取得された画像中において、航空機100内の躯体の形状、航空機100内に配置されたスイッチおよびディスプレイなどの特徴点12に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成されている。また、画像の特徴点12としては、目印部304も特徴点12である。
【0113】
制御部305は、発光部303から発光した光に対する、スイッチ、ディスプレイおよび目印部304などからの反射光を利用して、複数の特徴点12を取得する制御を行うように構成されている。ここで、制御部305は、機体内表面に対する発光部303からの光の角度および反射率、発光部303からの光が届かない領域、および、画像中のコントラストに起因して画像中の情報の欠損の発生を抑制するために、画像取得部302により算出される距離により画像中の情報を補完する制御を行うように構成されている。なお、第3実施形態のその他の構成は、第2実施形態の構成と同様である。
【0114】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0115】
第3実施形態では、上記のように、ヘッドモーショントラッカ装置310に、頭部装着部1に取り付けられた画像取得部302を設ける。また、ヘッドモーショントラッカ装置310に、画像取得部302により取得された画像に基づいて、パイロット11の頭部の位置および角度を取得する制御を行うように構成された制御部305を設ける。これにより、ヘッドモーショントラッカ装置310を既存の航空機100であっても容易に適用することができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、第2実施形態の効果と同様である。
【0116】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0117】
たとえば、上記第1~第3実施形態では、航空機100は、特許請求の範囲の「移動体」の一例である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移動体は、車輌であってもよい。
【0118】
また、上記第1~第3実施形態では、パーティクルフィルタによる位置角度検出処理42bを一例として説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、位置角度検出処理は、拡張カルマンフィルタなどにより行われてもよい。
【0119】
また、上記第1~第3実施形態では、制御部4(204,305)は、特徴点12および目印部3の両方で位置角度検出処理42bを行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、特徴点または目印部のいずれかで位置角度検出処理を行ってもよい。たとえば、図18に示す第1変形例のように、目印部3が配置されていない領域では、制御部は、航空機100の機体のフレームなどに基づく特徴点12のみにより位置角度検出処理42bを行うように構成されていてもよい。
【0120】
また、上記第1~第3実施形態では、制御部4(204、305)は、前フレーム地図53(第2周囲環境地図)と、現フレーム地図52(第3周囲環境地図)との比較に基づいて、位置角度検出処理42bを行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、ベース地図と、第3周囲環境地図との比較に基づいて、位置角度検出処理を行うように構成されていてもよい。また、制御部は、ベース地図と、第2周囲環境地図と、第3周囲環境地図との比較に基づいて、位置角度検出処理を行うように構成されていてもよい。
【0121】
また、上記第1~第3実施形態では、ヘッドモーショントラッカ装置10(210、310)は、目印部3(203、304)を備えている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ヘッドモーショントラッカ装置は、目印部を備えていなくてもよい。
【0122】
また、上記第1~第3実施形態では、移動前画像62(第2画像)は、1枚である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2画像は、複数枚あってもよい。
【0123】
また、上記第1および第2実施形態では、目印部3は、発光するように構成された例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、目印部は、画像取得部から観測する角度によって、取付部の形状が変化するような構成を有していてもよいし、発光部の光の形状が変化するような構成を有していてもよい。
【0124】
また、上記第2実施形態では、制御部204は、目印部203からの光通信により、目印部3の識別番号232aおよび機体座標位置232bを取得する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、目印部にAR(Augumented Reality)タグ(QR(Quick Response)コード、AprilTAGなど)を設けることにより、画像取得部により目印部の位置、識別番号を取得させてもよい。
【0125】
また、上記第3実施形態では、ヘッドモーショントラッカ装置310は、1つの画像取得部302を備えている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図19に示す第2変形例のように、ヘッドモーショントラッカ装置410は、2つの画像取得部402を備えていてもよい。この場合、ヘッドモーショントラッカ装置410は、2つの画像取得部402を同期させて撮影させることにより、2つの画像取得部402の視差に基づいて距離を取得するステレオ画像処理部403を備えていてもよい。
【0126】
また、上記第1~第3実施形態では、制御部4(204、305)は、機械学習により、パイロット11(観察者)の周囲の三次元の周囲環境地図5を作成する制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、機械学習以外の方法により、三次元の周囲環境地図を作成してもよい。
【0127】
また、上記第1~第3実施形態では、航空機100(移動体)内にパイロット11(観測者)だけが搭乗している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移動体内に複数の観測者が乗っていてもよい。そして、複数の観測者は各々は、ヘッドモーショントラッカ装置を装着していてもよい。この場合、複数のヘッドモーショントラッカ装置は、それぞれ、異なる光(紫外光および近赤外光)を受光可能な画像取得部を備えていてもよい。これにより、複数のヘッドモーショントラッカ装置が、同時に運用可能となる。
【符号の説明】
【0128】
1 頭部装着部
2、302、402 画像取得部
3、203、304 目印部
4、204、305 制御部
5 周囲環境地図
10、210、310、410 航空機用ヘッドモーショントラッカ装置(ヘッドモーショントラッカ装置)
11 パイロット(観察者)
12 特徴点
21 カメラ
52 現フレーム地図(第3周囲環境地図)
53 前フレーム地図(第2周囲環境地図)
54 移動後環境地図(第1周囲環境地図)
62 移動前画像(第2画像)
63 移動後画像(第1画像)
100 航空機
204f 制御部側通信部
232 記憶部
233b ジャイロセンサ(目印部側ジャイロセンサ)
234 目印部側通信部
242 ジャイロセンサ(装置側ジャイロセンサ)
図1
図2
図3
図4
図5
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