(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】カバー部材
(51)【国際特許分類】
B60K 35/50 20240101AFI20240214BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240214BHJP
【FI】
B60K37/04
B60K35/00 A
(21)【出願番号】P 2020126560
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】二宮 康徳
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-103008(JP,A)
【文献】実開昭55-179932(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/06
G02B27/01
G01D 11/24-11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示光(Ld)の投影によって虚像(Vi)を表示する虚像表示装置(10)を搭載する移動体(A)において用いられ、前記虚像表示装置の筐体(51)に形成される投影開口(53a)の周囲に、当該筐体の少なくとも一部を覆うように設置されるカバー部材であって、
前記投影開口を通じて前記筐体の内部に入射し前記筐体の内部の反射鏡面(32)にて反射された外光の到達が想定される到達想定範囲(70a)に形成され、第1方向(D1)を向く複数の第1壁面(71)及び前記第1方向とは異なる第2方向(D2)を向く複数の第2壁面(72)を含み、前記第1壁面及び前記第2壁面が交互に1つずつ並ぶ壁面構造(70b,270b,370b)、を備え
、
前記第2方向は、前記第2壁面を表示光の投影範囲(PA)側へ向ける方向であり、
前記第2壁面には、前記反射鏡面により反射された外光が直接的に入射しないカバー部材。
【請求項2】
表示光(Ld)の投影によって虚像(Vi)を表示する虚像表示装置(10)を搭載する移動体(A)において用いられ、前記虚像表示装置の筐体(51)に形成される投影開口(53a)の周囲に、当該筐体の少なくとも一部を覆うように設置されるカバー部材であって、
前記投影開口を通じて前記筐体の内部に入射し前記筐体の内部の反射鏡面(32)にて反射された外光の到達が想定される到達想定範囲(70a)に形成され、第1方向(D1)を向く少なくとも1つの第1壁面(71)及び前記第1方向とは異なる第2方向(D2)を向く少なくとも1つの第2壁面(72)を含む壁面構造(70b,270b,370b)、を備え、
前記第1壁面は、前記反射鏡面により反射され前記第1壁面に到達する外光を、前記第2壁面に到達するように反射
し、
前記第2方向は、前記第2壁面を表示光の投影範囲(PA)側へ向ける方向であり、
前記第2壁面には、前記反射鏡面により反射された外光が直接的に入射しないカバー部材。
【請求項3】
前記壁面構造は、複数の前記第1壁面及び複数の前記第2壁面を含み、
前記第1壁面及び前記第2壁面は、交互に1つずつ並ぶ請求項2に記載のカバー部材。
【請求項4】
前記移動体にて前記虚像が視認可能となる空間領域を視認領域(EB)と定義すると、
前記第1方向及び前記第2方向は、前記第1壁面又は前記第2壁面にて反射された外光が前記移動体のウィンドシールド(WS)で反射されても、前記視認領域の域外に到達するように規定されている請求項1~
3のいずれか一項に記載のカバー部材。
【請求項5】
前記虚像の視認者の眼の位置の分布に基づき予め規定される仮想の空間領域をアイリプス(EL)として定義すると、
前記第1方向及び前記第2方向は、前記第1壁面又は前記第2壁面にて反射された外光が前記移動体のウィンドシールド(WS)で反射されても、前記アイリプスの域外に到達するように規定されている請求項1~
3のいずれか一項に記載のカバー部材。
【請求項6】
表示光(Ld)の投影によって虚像(Vi)を表示する虚像表示装置(10)を搭載する移動体(A)において用いられ、前記虚像表示装置の筐体(51)に形成される投影開口(53a)の周囲に、当該筐体の少なくとも一部を覆うように設置されるカバー部材であって、
前記投影開口を通じて前記筐体の内部に入射し前記筐体の内部の反射鏡面(32)にて反射された外光の到達が想定される到達想定範囲(70a)に形成され、第1方向(D1)を向く複数の第1壁面(71)及び前記第1方向とは異なる第2方向(D2)を向く複数の第2壁面(72)を含み、前記第1壁面及び前記第2壁面が交互に1つずつ並ぶ壁面構造(70b,270b,370b)、を備え
、
前記移動体にて前記虚像が視認可能となる空間領域を視認領域(EB)と定義すると、
前記第1方向及び前記第2方向は、前記第1壁面又は前記第2壁面にて反射された外光が前記移動体のウィンドシールド(WS)で反射されても、前記視認領域の域外に到達するように規定されているカバー部材。
【請求項7】
表示光(Ld)の投影によって虚像(Vi)を表示する虚像表示装置(10)を搭載する移動体(A)において用いられ、前記虚像表示装置の筐体(51)に形成される投影開口(53a)の周囲に、当該筐体の少なくとも一部を覆うように設置されるカバー部材であって、
前記投影開口を通じて前記筐体の内部に入射し前記筐体の内部の反射鏡面(32)にて反射された外光の到達が想定される到達想定範囲(70a)に形成され、第1方向(D1)を向く少なくとも1つの第1壁面(71)及び前記第1方向とは異なる第2方向(D2)を向く少なくとも1つの第2壁面(72)を含む壁面構造(70b,270b,370b)、を備え、
前記第1壁面は、前記反射鏡面により反射され前記第1壁面に到達する外光を、前記第2壁面に到達するように反射
し、
前記移動体にて前記虚像が視認可能となる空間領域を視認領域(EB)と定義すると、
前記第1方向及び前記第2方向は、前記第1壁面又は前記第2壁面にて反射された外光が前記移動体のウィンドシールド(WS)で反射されても、前記視認領域の域外に到達するように規定されているカバー部材。
【請求項8】
表示光(Ld)の投影によって虚像(Vi)を表示する虚像表示装置(10)を搭載する移動体(A)において用いられ、前記虚像表示装置の筐体(51)に形成される投影開口(53a)の周囲に、当該筐体の少なくとも一部を覆うように設置されるカバー部材であって、
前記投影開口を通じて前記筐体の内部に入射し前記筐体の内部の反射鏡面(32)にて反射された外光の到達が想定される到達想定範囲(70a)に形成され、第1方向(D1)を向く複数の第1壁面(71)及び前記第1方向とは異なる第2方向(D2)を向く複数の第2壁面(72)を含み、前記第1壁面及び前記第2壁面が交互に1つずつ並ぶ壁面構造(70b,270b,370b)、を備え
、
前記虚像の視認者の眼の位置の分布に基づき予め規定される仮想の空間領域をアイリプス(EL)として定義すると、
前記第1方向及び前記第2方向は、前記第1壁面又は前記第2壁面にて反射された外光が前記移動体のウィンドシールド(WS)で反射されても、前記アイリプスの域外に到達するように規定されているカバー部材。
【請求項9】
表示光(Ld)の投影によって虚像(Vi)を表示する虚像表示装置(10)を搭載する移動体(A)において用いられ、前記虚像表示装置の筐体(51)に形成される投影開口(53a)の周囲に、当該筐体の少なくとも一部を覆うように設置されるカバー部材であって、
前記投影開口を通じて前記筐体の内部に入射し前記筐体の内部の反射鏡面(32)にて反射された外光の到達が想定される到達想定範囲(70a)に形成され、第1方向(D1)を向く少なくとも1つの第1壁面(71)及び前記第1方向とは異なる第2方向(D2)を向く少なくとも1つの第2壁面(72)を含む壁面構造(70b,270b,370b)、を備え、
前記第1壁面は、前記反射鏡面により反射され前記第1壁面に到達する外光を、前記第2壁面に到達するように反射
し、
前記虚像の視認者の眼の位置の分布に基づき予め規定される仮想の空間領域をアイリプス(EL)として定義すると、
前記第1方向及び前記第2方向は、前記第1壁面又は前記第2壁面にて反射された外光が前記移動体のウィンドシールド(WS)で反射されても、前記アイリプスの域外に到達するように規定されているカバー部材。
【請求項10】
前記壁面構造は、複数の前記第1壁面及び複数の前記第2壁面を含み、
前記第1壁面及び前記第2壁面は、交互に1つずつ並ぶ請求項
8又は9に記載のカバー部材。
【請求項11】
前記第1方向は、前記第1壁面を前記反射鏡面側へ向ける方向であり、
前記第1壁面は、前記反射鏡面により反射され前記第1壁面に到達する外光を、隣接する前記第2壁面に到達するよう反射する請求項1~
10のいずれか一項に記載のカバー部材。
【請求項12】
前記壁面構造は、前記投影開口に対し、前記移動体に設けられた運転席側に位置している請求項1~
11のいずれか一項に記載のカバー部材。
【請求項13】
互いに隣接する前記第1壁面及び前記第2壁面は、断面円弧状となる部分円筒壁面(73a,73b)を介して連続している請求項1~
12のいずれか一項に記載のカバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書による開示は、虚像表示装置を搭載する車両において用いられるカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヘッドアップディスプレイ(以下、HUD)装置のための反射防止構造が開示されている。特許文献1に記載されているように、ウィンドシールドを透過した外光の一部は、ハウジングの内部に入射し、凹面状の光学反射面によって反射され、例えばハウジングの開口の周囲に設けられたHUDカバーに到達する。このHUDカバーには、反射遮断部材が組み合わされている。反射遮断部材は、光学反射面からHUDカバーに到達し、さらにウィンドシールド側に反射された外光を遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、HUDカバーのようなカバー部材に、反射遮断部材が追加されている。こうした構成によれば、光学反射面からカバー部材に入射する外光は、カバー部材によって反射されても、ウィンドシールドには到達し難い。その結果、カバー部材のウィンドシールドへの映り込みが抑制され得る。しかし、反射遮断部材の追加は、カバー部材の構造を複雑化させる要因となり得た。
【0005】
本開示は、構造の複雑化を回避しつつ、映り込みの抑制が可能なカバー部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、開示された1つの態様は、表示光(Ld)の投影によって虚像(Vi)を表示する虚像表示装置(10)を搭載する移動体(A)において用いられ、虚像表示装置の筐体(51)に形成される投影開口(53a)の周囲に、当該筐体の少なくとも一部を覆うように設置されるカバー部材であって、投影開口を通じて筐体の内部に入射し筐体の内部の反射鏡面(32)にて反射された外光の到達が想定される到達想定範囲(70a)に形成され、第1方向(D1)を向く複数の第1壁面(71)及び第1方向とは異なる第2方向(D2)を向く複数の第2壁面(72)を含み、第1壁面及び第2壁面が交互に1つずつ並ぶ壁面構造(70b,270b,370b)、を備え、第2方向は、第2壁面を表示光の投影範囲(PA)側へ向ける方向であり、第2壁面には、反射鏡面により反射された外光が直接的に入射しないカバー部材とされる。
また開示された1つの態様は、表示光(Ld)の投影によって虚像(Vi)を表示する虚像表示装置(10)を搭載する移動体(A)において用いられ、虚像表示装置の筐体(51)に形成される投影開口(53a)の周囲に、当該筐体の少なくとも一部を覆うように設置されるカバー部材であって、投影開口を通じて筐体の内部に入射し筐体の内部の反射鏡面(32)にて反射された外光の到達が想定される到達想定範囲(70a)に形成され、第1方向(D1)を向く複数の第1壁面(71)及び第1方向とは異なる第2方向(D2)を向く複数の第2壁面(72)を含み、第1壁面及び第2壁面が交互に1つずつ並ぶ壁面構造(70b,270b,370b)、を備え、移動体にて虚像が視認可能となる空間領域を視認領域(EB)と定義すると、第1方向及び第2方向は、第1壁面又は第2壁面にて反射された外光が移動体のウィンドシールド(WS)で反射されても、視認領域の域外に到達するように規定されているカバー部材とされる。
また開示された1つの態様は、表示光(Ld)の投影によって虚像(Vi)を表示する虚像表示装置(10)を搭載する移動体(A)において用いられ、虚像表示装置の筐体(51)に形成される投影開口(53a)の周囲に、当該筐体の少なくとも一部を覆うように設置されるカバー部材であって、投影開口を通じて筐体の内部に入射し筐体の内部の反射鏡面(32)にて反射された外光の到達が想定される到達想定範囲(70a)に形成され、第1方向(D1)を向く複数の第1壁面(71)及び第1方向とは異なる第2方向(D2)を向く複数の第2壁面(72)を含み、第1壁面及び第2壁面が交互に1つずつ並ぶ壁面構造(70b,270b,370b)、を備え、虚像の視認者の眼の位置の分布に基づき予め規定される仮想の空間領域をアイリプス(EL)として定義すると、第1方向及び第2方向は、第1壁面又は第2壁面にて反射された外光が移動体のウィンドシールド(WS)で反射されても、アイリプスの域外に到達するように規定されているカバー部材とされる。
【0007】
これらのような態様では、筐体の内部の反射鏡面にて反射された外光(以下、反射外光)は、到達想定範囲に形成された壁面構造に到達すると、交互に並ぶ複数の第1壁面及び複数の第2壁面によってさらに反射される。第1壁面及び第2壁面が互いに異なる方向を向く構成のため、壁面構造に入射した反射外光は、複数方向に反射され、纏まった状態のまま視認者の眼に到達し難くなる。以上によれば、第1壁面及び第2壁面を含むという簡素な構成でカバー部材の構造の複雑化を回避しつつ、さらにカバー部材の映り込みの抑制も可能になる。
【0008】
また開示された1つの態様は、表示光(Ld)の投影によって虚像(Vi)を表示する虚像表示装置(10)を搭載する移動体(A)において用いられ、虚像表示装置の筐体(51)に形成される投影開口(53a)の周囲に、当該筐体の少なくとも一部を覆うように設置されるカバー部材であって、投影開口を通じて筐体の内部に入射し筐体の内部の反射鏡面(32)にて反射された外光の到達が想定される到達想定範囲(70a)に形成され、第1方向(D1)を向く少なくとも1つの第1壁面(71)及び第1方向とは異なる第2方向(D2)を向く少なくとも1つの第2壁面(72)を含む壁面構造(70b,270b,370b)、を備え、第1壁面は、反射鏡面により反射され第1壁面に到達する外光を、第2壁面に到達するように反射し、第2方向は、第2壁面を表示光の投影範囲(PA)側へ向ける方向であり、第2壁面には、反射鏡面により反射された外光が直接的に入射しないカバー部材とされる。
また開示された1つの態様は、表示光(Ld)の投影によって虚像(Vi)を表示する虚像表示装置(10)を搭載する移動体(A)において用いられ、虚像表示装置の筐体(51)に形成される投影開口(53a)の周囲に、当該筐体の少なくとも一部を覆うように設置されるカバー部材であって、投影開口を通じて筐体の内部に入射し筐体の内部の反射鏡面(32)にて反射された外光の到達が想定される到達想定範囲(70a)に形成され、第1方向(D1)を向く少なくとも1つの第1壁面(71)及び第1方向とは異なる第2方向(D2)を向く少なくとも1つの第2壁面(72)を含む壁面構造(70b,270b,370b)、を備え、第1壁面は、反射鏡面により反射され第1壁面に到達する外光を、第2壁面に到達するように反射し、移動体にて虚像が視認可能となる空間領域を視認領域(EB)と定義すると、第1方向及び第2方向は、第1壁面又は第2壁面にて反射された外光が移動体のウィンドシールド(WS)で反射されても、視認領域の域外に到達するように規定されているカバー部材とされる。
また開示された1つの態様は、表示光(Ld)の投影によって虚像(Vi)を表示する虚像表示装置(10)を搭載する移動体(A)において用いられ、虚像表示装置の筐体(51)に形成される投影開口(53a)の周囲に、当該筐体の少なくとも一部を覆うように設置されるカバー部材であって、投影開口を通じて筐体の内部に入射し筐体の内部の反射鏡面(32)にて反射された外光の到達が想定される到達想定範囲(70a)に形成され、第1方向(D1)を向く少なくとも1つの第1壁面(71)及び第1方向とは異なる第2方向(D2)を向く少なくとも1つの第2壁面(72)を含む壁面構造(70b,270b,370b)、を備え、第1壁面は、反射鏡面により反射され第1壁面に到達する外光を、第2壁面に到達するように反射し、虚像の視認者の眼の位置の分布に基づき予め規定される仮想の空間領域をアイリプス(EL)として定義すると、第1方向及び第2方向は、第1壁面又は第2壁面にて反射された外光が移動体のウィンドシールド(WS)で反射されても、アイリプスの域外に到達するように規定されているカバー部材とされる。
【0009】
これらのような態様では、筐体の内部の反射鏡面にて反射された反射外光は、到達想定範囲に形成された壁面構造に到達すると、第1壁面にて第2壁面に到達するよう反射される。第1壁面及び第2壁面での連続的な反射によれば、反射の際に生じる減衰により、反射外光のエネルギーが低減される。その結果、第1壁面及び第2壁面の形成という簡素な構成で、カバー部材の構造の複雑化を回避しつつ、さらにカバー部材の映り込みの抑制も可能になる。
【0010】
尚、上記及び特許請求の範囲等の括弧内の参照番号は、後述する実施形態における具体的な構成との対応関係の一例を示すものにすぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第1実施形態によるベゼルがHUD装置と共に車両に搭載された状態を示す図である。
【
図2】ベゼル及びHUD装置の車載状態を、インスツルメントパネルの上側から見た図である。
【
図6】
図4の矢印VIの方向にベゼルを見た正面図である。
【
図8】視認領域を基準に規定する第1臨界角度を説明するための図である。
【
図9】視認領域を基準に規定する第2臨界角度を説明するための図である。
【
図11】アイリプスを基準に規定する第1臨界角度を説明するための図である。
【
図12】アイリプスを基準に規定する第2臨界角度を説明するための図である。
【
図14】第1壁面に規定する角度の定義の詳細を説明するための図である。
【
図15】第2壁面に規定する角度の定義の詳細を説明するための図である。
【
図16】第1壁面及び第2壁面による連続反射の様子を説明するための図である。
【
図17】第2実施形態によるベゼルの壁面構造を拡大して示す図である。
【
図18】第3実施形態によるベゼルの第1反射領域と壁面構造7との関係を示す図である。
【
図19】第2反射領域と壁面構造との関係を示す図である。
【
図20】変形例10のベゼルに形成される壁面構造を示す図である。
【
図21】変形例11のベゼルに形成される壁面構造を示す図である。
【
図22】変形例12のベゼルに形成される壁面構造を示す図である。
【
図23】変形例13のベゼルに形成される壁面構造を示す図である。
【
図24】変形例14のベゼルに形成される第1壁面及び第2壁面の各形状の詳細を示す図である。
【
図25】変形例15のベゼルに形成される第1壁面及び第2壁面の各形状の詳細を示す図である。
【
図26】変形例16のベゼルに形成される第1壁面及び第2壁面の各形状の詳細を示す図である。
【
図27】変形例17にて、ベゼルが適用されるHUD装置の構成を示す図である。
【
図28】反射鏡の組み合わせ例を示す一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0013】
(第1実施形態)
図1~
図6に示す本開示の第1実施形態によるベゼル70は、例えば車両A等の移動体において用いられる。ベゼル70は、ヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置)10と共に、車両Aに搭載されている。HUD装置10は、車両AのインスツルメントパネルINP内に設けられた収容空間に収容されている。ベゼル70は、HUD装置10の筐体51の少なくとも一部を覆うように、インスツルメントパネルINP又は車両Aの構造体に組み付けられている。ベゼル70は、インスツルメントパネルINPと一体的となり、収容空間に蓋をするカバー部材となる。
【0014】
尚、以下の説明における前方Ze及び後方Go(前後方向)並びに左方Hi及び右方Mi(左右方向)は、水平面上に静止させた車両Aを基準として規定される。具体的に、前後方向は、車両Aの長手方向(進行方向)に沿って規定される。また左右方向は、車両Aの幅方向に沿って規定される。さらに、上方Ue及び下方Si(上下方向)は、前後方向及び左右方向を規定した水平面の鉛直方向に沿って規定される。また、記載の簡略化のため、各方向を示す符号の記載を適宜省略する場合がある。
【0015】
HUD装置10は、
図1に示すように、投影面PAへの表示光Ldの投影によって虚像Viを表示する虚像表示装置である。一例として、HUD装置10は、車両AのウィンドシールドWSの車室側の表面を投影面PAとして利用し、虚像Viを視認可能にする。ウィンドシールドWSは、例えばガラス又は合成樹脂により透光性の板状に形成されている。ウィンドシールドWSは、インスツルメントパネルINPよりも上方Ueに配置されている。ウィンドシールドWSは、上方Ueへ向かうほど後方Goに傾斜した姿勢で車両Aに設置されている。
【0016】
HUD装置10によって投影面PAに投影された表示光Ldは、後傾姿勢となる投影面PAにて後方Goに反射され、車室内に設定された視認領域EBに到達する。インスツルメントパネルINPと対向配置された運転席に着座する乗員(視認者)は、視認領域EBにアイポイントEPを位置させることで、表示光Ldが結像されてなる虚像Viを、ウィンドシールドWSよりも前方Zeに視認する。例えば、車速、燃料残量及びバッテリ残量等の車両の状態を示す情報、視界補助情報、道路情報、並びにナビゲーション情報が、各種情報として虚像表示される。
【0017】
尚、投影面PAは、ウィンドシールドWSに貼り付けられたフィルム状のコンバイナ等によって形成されていてもよく、又はウィンドシールドWSとは別体の板状のコンバイナ等によって形成されてもよい。
【0018】
視認領域EBは、HUD装置10により表示される虚像が視認可能となる空間領域である。視認領域EBは、アイボックスとも呼称される。ここでいう視認可能とは、例えば虚像Viの全体が所定の輝度以上となる状態を示す。視認領域EBは、典型的には、車両Aに設定されたアイリプスELと重なるように設定される。
【0019】
アイリプスELは、車種毎に規定される仮想的な空間領域であり、乗員(視認者)のアイポイントEPの空間分布を統計的に表したアイレンジに基づいて、仮想の楕円体状に設定されている。アイリプスELは、運転席のヘッドレスト近傍に位置する。一例として、90パーセンタイルアイリプスが採用される。尚、90パーセンタイル以上99パーセンタイル以下のアイリプスELが適宜採用されてよい。
【0020】
次に、HUD装置10の構成の詳細を説明する。HUD装置10は、表示器11、平面鏡21及び凹面鏡31、制御ユニット41並びに筐体51等により構成されている。
【0021】
表示器11は、例えば透過型の表示器である。表示器11は、液晶パネル及びバックライトと、これらを収容するケーシングとを有している。表示器11は、バックライトにより液晶パネルの表示画面12を透過照明し、虚像Viとして結像される表示光Ldを射出する。尚、表示器11には、反射型の液晶パネルを有する液晶表示器、自発光可能なEL(Electroluminescence)パネルを有するEL表示器が用いられてもよい。さらに、レーザスキャナ方式のプロジェクタ、及びDLP(Digital Light Processing:登録商標)方式のプロジェクタが、表示器として用いられてもよい。
【0022】
平面鏡21及び凹面鏡31は、表示器11から射出された表示光Ldを、ウィンドシールドWSへと導光する反射鏡である。平面鏡21及び凹面鏡31は、例えば合成樹脂又はガラス等により、矩形の平板状又は湾曲板状に形成されている。平面鏡21には、滑らかな平面状の反射面(以下、第1反射面22)が形成されている。平面鏡21は、第1反射面22を前方Ze且つ下方Siへ向けた姿勢で、表示器11の上方Ueに配置されている。第1反射面22は、表示画面12から入射した表示光Ldを、前方Zeの凹面鏡31へ向けて反射する。
【0023】
凹面鏡31には、凹状に湾曲した滑らかな凹面状の反射面(以下、第2反射面32)が形成されている。凹面鏡31は、第2反射面32を後方Go且つ上方Ueへ向けた姿勢で、表示器11及び平面鏡21の前方Zeに配置されている。第2反射面32は、第1反射面22にて反射された表示光Ldを、上方UeのウィンドシールドWSへ向けて反射する。凹面鏡31は、虚像Viの結像サイズを、表示画面12の表示サイズに対して拡大する拡大光学系として機能する。
【0024】
ここで、ウィンドシールドWSでの表示光の反射角は、フレネルの式を考慮して、45度よりも大きなブリュースター角近傍に設定される。故に、第2反射面32にて反射された表示光Ldの光路(以下、表示光路OP)の方向は、後方Go且つ上方Ueへ向かう斜め方向とされる。即ち、凹面鏡31から投影面PAへ至る表示光路OPは、凹面鏡31を起点として後方Go且つ上方Ueへ直線的に進行するよう規定される。
【0025】
制御ユニット41は、少なくとも1つのプロセッサ、RAM、記憶媒体、及び入出力インターフェース等を含む制御回路42を主体とした構成である。制御回路42は、表示器11による表示光Ldの射出を制御する表示制御機能を有している。加えて、制御回路42は、調整スイッチへの入力に基づき凹面鏡31の姿勢を調整する姿勢調整機能をさらに有している。調整スイッチは、HUD装置10の筐体外部に設置され、制御回路42と電気的に接続されている。一例として、調整スイッチは、ステアリングホイールのリム部、又はインスツルメントパネルINP等に設置されている。制御回路42は、調整スイッチに入力される操作に応じて、左右方向に沿って規定された回転軸31aまわりに、所定の角度範囲内で、凹面鏡31を回転させる。回転軸31aまわりでの凹面鏡31の姿勢変化に伴い、第2反射面32の向きが調整されることで、第2反射面32から投影面PAに到る表示光路OPが、前後方向に移動する。その結果、視認領域EB及び虚像Viが、上下方向に調整される。
【0026】
筐体51は、例えば合成樹脂又は金属等により、遮光性を有する中空の箱状に形成されている。筐体51は、表示器11、平面鏡21及び凹面鏡31等の光学系の構成を、内部の光学系収容空間に収容している。光学系収容空間は、天井壁52、底壁58、及びこれらを接続する複数の側壁57等によって区画されている。
【0027】
天井壁52には、開口部53及び傾斜部54が形成されている。開口部53は、表示光を通過させる光学的な投影開口53aを区画している。投影開口53aは、天井壁52の一部であって、天井壁52のうちの比較的前方Zeに設けられている。投影開口53aは、凹面鏡31の上方Ueに開口している。投影開口53aは、第2反射面32から投影面PAへ向かう表示光路OPに天井壁52の壁部分が干渉しないような形状に形成されている。投影開口53aは、例えば薄板状に形成された透光性の防塵シートによって物理的に塞がれていてもよい。
【0028】
傾斜部54は、開口部53の後方Goに形成されている。傾斜部54は、第2反射面32から投影面PAへ向かう表示光路OPと実質平行となるように、投影開口53aに近づくほど下方Siへ傾斜した姿勢となっている。こうした傾斜部54の傾斜形状により、天井壁52と表示光路OPとの干渉が回避されている。
【0029】
底壁58の外側には、回路ケース43が組み付けられている。回路ケース43は、底壁58との間に、制御回路42が形成された回路基板を収容する回路収容空間を形成する。回路基板は、回路ケース43及び筐体51のいずれか一方に固定されている。
【0030】
次に、ベゼル70の構成の詳細を、
図1~
図7に基づき説明する。ベゼル70は、例えば合成樹脂又は金属等の遮光性を有する材料によって形成されている。ベゼル70は、全体として扁平な枠体状又は中空の多角柱状を呈している(
図3参照)。ベゼル70は、4つのベゼル周壁74を有している。各ベゼル周壁74のそれぞれには、少なくとも1つの取付部74aが設けられている。各取付部74aがインスツルメントパネルINP等に保持されると、ベゼル70は、HUD装置10の投影開口53aの周囲に、筐体51の少なくとも一部を覆うように設置される。具体的に、ベゼル70は、筐体51の天井壁52に設けられた開口部53の周縁を、各ベゼル周壁74により全周に亘って上側から覆うように設定される。
【0031】
ベゼル70は、4つのベゼル周壁74によって囲まれたベゼル開口75を区画している。ベゼル開口75は、上方Ueへ向かうに従って横断面積が拡大される拡大形状とされている。ベゼル開口75は、インスツルメントパネルINPへのベゼル70の固定により、HUD装置10の投影開口53aと上下方向に重なるように、投影開口53aの上方Ueに配置される。ベゼル開口75は、投影開口53aと共に、凹面鏡31から投影面PAへ投影される表示光Ldを通過させる光学的な開口となる。
【0032】
4つのベゼル周壁74のうちでベゼル開口75よりも後方Goに位置する1つには、壁面構造70bが形成されている。壁面構造70bが形成されるベゼル周壁74(以下、後方周壁74b)は、車載された状態で、ベゼル開口75に対し後方Go(運転席側)に位置する(
図4参照)。後方周壁74bは、筐体51の傾斜部54の上方Ueに配置される。後方周壁74bは、上方Ueへ向かうに従い後方Goへ傾斜する傾斜姿勢に形成されている(
図5参照)。壁面構造70bは、後方周壁74bの内周側の表面部であって、外部に露出し(
図2参照)、且つ、ウィンドシールドWSと上下方向に対向する範囲に形成されている(
図1参照)。
【0033】
ここで、壁面構造70bが形成される後方周壁74bの内周側の表面部は、凹面鏡31の第2反射面32に反射された外光(以下、反射外光ROL)の到達が想定される到達想定範囲70aとなる。到達想定範囲70aについて詳記すると、例えば太陽光等の外光OLの照射方向が斜め前方向であるとき、ウィンドシールドWSの投影面PAよりも後方Goの範囲を透過した外光OLは、さらに投影開口53aを透過して、筐体51の内部に入射する。筐体51の内部に入り込んだ外光OLは、凹面鏡31の第2反射面32にて反射される。このとき、外光OLの第2反射面32における反射角は、表示光Ldの反射角よりも小さくなる。故に、反射外光ROLは、表示光Ldの表示光路OPよりも下方Siの範囲に到達する。そのため、表示光路OPから僅かに下方Siずれた範囲であって、筐体51の傾斜部54を覆うベゼル70の範囲に、到達想定範囲70aが規定される。
【0034】
仮に、到達想定範囲70aの表面が単一の鏡面状に形成されている場合、到達想定範囲70aに到達した反射外光ROLは、到達想定範囲70aの表面で2次的に反射されると、直接的又はウィンドシールドWSにてさらに反射されて、視認領域EBに到達し得る。こうした事態を回避するため、到達想定範囲70aには、反射外光ROLを2次的に反射する反射方向を制御可能な壁面構造70bが形成されている。
【0035】
壁面構造70bは、筐体51に形成された投影開口53aに対し、車両Aに設けられた運転席側に位置している。壁面構造70bは、複数の第1壁面71及び複数の第2壁面72を含んでいる。各第1壁面71及び各第2壁面72は、表示光路OPの延伸方向と略平行に、車両Aの前後方向に沿って、交互に1つずつ配列されている。第1壁面71及び第2壁面72は、それぞれ平面状に形成されている。第1壁面71及び第2壁面72は、実質的に一定の幅にて、ベゼル開口75の周縁に沿って左右方向に帯状に延伸している。第1壁面71及び第2壁面72は、筐体51に形成された投影開口53aの横幅と同程度、又は投影開口53aの横幅よりも僅かに長く、左右方向に延伸している。これにり、第1壁面71及び第2壁面72の各左端は、投影開口53aの左縁よりも僅かに左方Hiに位置する。同様に、第1壁面71及び第2壁面72の各右端は、投影開口53aの右縁よりも僅かに右方Miに位置する。
【0036】
以上の第1壁面71及び第2壁面72の交互配置により、壁面構造70bは、左右方向に延伸したストライプ状を呈している。そのため、後方周壁74bの横断面において、連続的に形成された第1壁面71及び第2壁面72は、ジグザグな鋸刃状を呈する。互いに隣接する第1壁面71及び第2壁面72は、断面円弧状となる微小な部分円筒壁面73a,73bを介して連続している。各部分円筒壁面73a,73bの曲率半径は、成形可能な最小値とされるのが望ましい。
【0037】
複数の第1壁面71は、共通の第1方向D1を向いている。一方、複数の第2壁面72は、第1方向D1とは異なる向きであって、共通の第2方向D2を向いている。ここで、共通の向きの意義は、概念的に共通と捉えることが可能であればよく、同じ壁面構造70b中において、第1壁面71の勾配同士又は第2壁面72の勾配同士が厳密に一致していることを要求するものではない。即ち、第1方向D1は、第1壁面71を第2反射面32側へ向ける方向であり、第2方向D2は、第2壁面72を投影面PA側へ向ける方向である等、共通の向きの意義は、概念的に捉えることが可能である。
【0038】
第1壁面71の幅及び第2壁面72の幅は、凹面鏡31の第2反射面32の寸法に対して十分小さく設定されている。具体的に、第1壁面71及び第2壁面72の各幅は、2cm以下、より望ましくは0.5mm以下に設定される。但し、第1壁面71及び第2壁面72の配列数の少ない壁面構造70bでは、第1壁面71及び第2壁面72の各幅が10cm程度とされてもよい。複数の第1壁面71の個々の幅は、全て実質同一であってもよく、或いはベゼル開口75に近い位置ほど広くされるか又は狭くされてもよい。同様に、複数の第2壁面72の個々の幅は、全て実質同一であってもよく、或いはベゼル開口75に近い位置ほど広くされるか又は狭くされてもよい。また、第1壁面71の幅は、第2壁面72の幅よりも広くされてもよく、又は第2壁面72の幅よりも広くされてもよい。さらに、第1壁面71の幅は、第2壁面72の幅と実質同一であってもよい。
【0039】
壁面構造70bを含む到達想定範囲70aの全体は、低反射構造とされている。具体的に、到達想定範囲70aの全体には、光(外光OL)を吸収する塗膜が形成されている。塗膜の反射率は、例えば3%程度となっている。塗膜を形成する塗装は、少なくとも到達想定範囲70aを含むよう施されている。塗膜は、ベゼル70の全体に形成されていてもよく、各ベゼル周壁74の内周側の壁面のみに形成されていてもよい。さらに、塗膜を形成する替わりに又は塗膜を形成すると共に、シボ等の形成によって第1壁面71及び第2壁面72の表面を粗面状にする加工が壁面構造70bに施されていてもよい。
【0040】
次に、車両Aの縦中心面に平行な縦断面上における、各第1壁面71の角度及び各第2壁面72の角度の詳細を、
図7~
図16に基づき、
図1~
図6を参照しつつ、説明する。車両Aの縦中心面は、直進姿勢にある車両Aの左右車輪間の中点を通る鉛直面である。
【0041】
第2反射面32の上方Ueの縁部に反射面上端32aを規定すると、この反射面上端32aから所定の第1壁面71へ向かう仮想の直線が、端基準第1直線L1と定義される(
図7及び
図8参照)。端基準第1直線L1は、所定の第1壁面71の幅方向の中央部を通過するよう規定される。さらに、端基準第1直線L1に対して第1壁面71がつくる角度が、端基準第1角度αと定義される。端基準第1角度αは、第1壁面71よりも後方Goの端基準第1直線L1から、この第1壁面71へ向かう角度とされる。端基準第1角度αは、第1壁面71よりも後方Goの端基準第1直線L1を基準として、端基準第1直線L1よりも上側(
図7における時計回りの方向)が「正」となり、端基準第1直線L1よりも下側(
図7における反時計回りの方向)が「負」となる。
【0042】
ここで、反射面上端32aから端基準第1直線L1に沿って第1壁面71に入射する光線RB1(
図8参照)を仮定する。光線RB1は、反射外光ROLを想定した光線である。光線RB1は、第1壁面71によって上方Ueに反射されると、ウィンドシールドWSにて視認領域EBへ向けてさらに反射される。こうした光線RB1が視認領域EBの上端EBaに到達するときの端基準第1角度αが、第1臨界角度θ1(
図8参照)と定義される。
【0043】
また、第2反射面32の下方の縁部に反射面下端32bを規定すると、この反射面下端32bから所定の第2壁面72へ向かう仮想の直線が、端基準第2直線L2と定義される。端基準第2直線L2は、所定の第2壁面72の幅方向の中央部を通過するよう規定される。さらに、端基準第2直線L2に対して第2壁面72がつくる角度が、端基準第2角度βと定義される(
図7及び
図9参照)。端基準第2角度βは、第2壁面72よりも後方Goの端基準第2直線L2か、この第2壁面72へ向かう角度とされる。端基準第2角度βは、第2壁面72よりも後方Goの端基準第2直線L2を基準として、端基準第2直線L2よりも上側(
図7における時計回りの方向)が「正」となり、端基準第2直線L2よりも下側(
図7における反時計回りの方向)が「負」となる。
【0044】
尚、鏡面状の第2反射面32が凹面鏡31の縁まで形成されていれば、反射面上端32a及び反射面下端32bは、それぞれ凹面鏡31の上端及び下端と実質的に一致する。一方で、鏡面状の第2反射面32が例えば遮光の枠状部に囲まれた構成であれば、当該枠状部の内側の境界上に、反射面上端32a及び反射面下端32bが規定される。
【0045】
さらに、反射面下端32bから端基準第2直線L2に沿って第2壁面72に入射する光線RB2(
図9参照)を仮定する。光線RB2も、光線RB1と同様に、反射外光ROLを想定した光線である。光線RB2は、第2壁面72によって上方Ueに反射されると、ウィンドシールドWSにて視認領域EBへ向けてさらに反射される。こうした光線RB2が視認領域EBの下端EBbに到達するときの端基準第2角度βが、第2臨界角度θ2(
図9及び
図10参照)と定義される。尚、視認領域EBの上端EBa及び下端EBbは、視認領域EBを挟んで上下方向に対向する位置に規定される。
【0046】
第1実施形態にて実際に採用される端基準第1角度α及び端基準第2角度βが、それぞれ端基準第1角度αe及び端基準第2角度βeである(
図7参照)。実際の端基準第1角度αe及び端基準第2角度βeは、以下の第1~第3の関係をすべて満たす角度にそれぞれ規定されている。具体的に、第1関係は、互いに隣接する第1壁面71及び第2壁面72について、端基準第1角度αe>端基準第2角度βeが成立していることである。第2の関係は、第1壁面71について、端基準第1角度αe
<第1臨界角度θ1が成立していることである。第3の関係は、各第2壁面72について、端基準第2角度βe
>第2臨界角度θ2が成立していることである。
【0047】
以上の第1~第3の関係を全て満たすことにより、第2反射面32から到達想定範囲70aに到達した反射外光ROLは、第1壁面71によって反射されたとしても、視認領域EBの上端EBaのさらに上方Ueを通過する。加えて、反射外光ROLは、第2壁面72によって反射されたとしても、視認領域EBの下端EBbのさらに下方Siを通過する。以上のように、第1実施形態では、第1壁面71又は第2壁面72にて反射された反射外光ROLがウィンドシールドWSで反射されても、視認領域EBの域外に到達するように、第1方向D1及び第2方向D2がそれぞれ規定されている。
【0048】
さらに、上記の視認領域EBを基準とした第1臨界角度θ1及び第2臨界角度θ2に替えて、アイリプスELを基準とした第1臨界角度φ1(
図11参照)及び第2臨界角度φ2(
図12及び
図13参照)が、定義可能である。第1臨界角度φ1は、反射面上端32aから第1壁面71に入射する仮想の光線RL1がウィンドシールドWSにて反射されることで、アイリプスELの上端ELaに到達するときの端基準第1角度αである(
図11参照)。第2臨界角度φ2は、反射面下端32bから第2壁面72に入射する仮想の光線RL2がウィンドシールドWSにて反射されることで、アイリプスELの下端ELbに到達するときの端基準第2角度βである。尚、光線RL1,RL2は、それぞれ反射外光ROLを想定した光線である。尚、アイリプスELの上端ELa及び下端ELbは、アイリプスELを挟んで上下方向に対向する位置に規定される。
【0049】
端基準第1角度αe及び端基準第2角度βeは、上記の第1の関係に加えて、アイリプスELに基づき定義された第1臨界角度φ1及び第2臨界角度φ2を用いる第4及び第5の関係をさらに満たす角度とされる。具体的に、第4の関係は、端基準第1角度αe<第1臨界角度φ1が成立していることである。第5の関係は、端基準第2角度βe>第2臨界角度φ2が成立していることである。
【0050】
以上の第1,第4及び第5の関係を全て満たすことにより、第2反射面32から到達想定範囲70aに到達した反射外光ROLは、第1壁面71によって反射されたとしても、アイリプスELの上端ELaのさらに上方Ueを通過する。加えて、反射外光ROLは、第2壁面72によって反射されたとしても、アイリプスELの下端ELbのさらに下方Siを通過する。以上のように、第1実施形態では、第1壁面71又は第2壁面72にて反射された反射外光ROLがウィンドシールドWSで反射されても、アイリプスELの域外に到達するように、第1方向D1及び第2方向D2がそれぞれ規定されている。
【0051】
また、端基準第1直線L1及び端基準第2直線L2(
図7参照)とは別に、点基準第1直線L1f(
図14参照)及び点基準第2直線L2f(
図15参照)が定義可能である。
【0052】
点基準第1直線L1fは、第2反射面32上にある任意の第1所定点から、第1壁面71へ向かう仮想の直線である。点基準第1直線L1fは、端基準第1直線L1と同様に、第1壁面71の幅方向の中央部を通過するよう規定される。さらに、点基準第1直線L1fに対して第1壁面71がつくる角度が、点基準第1角度αf(
図14参照)と定義される。
【0053】
点基準第1角度αfは、第1壁面71よりも後方Goの点基準第1直線L1fを基準とし、この区間の点基準第1直線L1fから第1壁面71へ向かう角度とされる。点基準第1角度αfは、点基準第1直線L1fよりも上側(
図14における時計回りの方向)が「正」となり、点基準第1直線L1fよりも下側(
図14における反時計回りの方向)が「負」となる。
【0054】
点基準第2直線L2fは、第2反射面32上にある任意の第2所定点から第2壁面72へ向かう仮想の直線である。点基準第2直線L2fは、端基準第2直線L2と同様に、第2壁面72の幅方向の中央部を通過するよう規定される。さらに、点基準第2直線L2fに対して第2壁面72がつくる角度が、点基準第2角度βf(
図15参照)と定義される。
【0055】
点基準第2角度βfは、第2壁面72よりも後方Goの点基準第2直線L2fを基準とし、この区間の点基準第2直線L2fから第2壁面72へ向かう角度とされる。点基準第2角度βfは、点基準第2直線L2fよりも上側(
図15における時計回りの方向)が「正」となり、点基準第2直線L2fよりも下側(
図15における反時計回りの方向)が「負」となる。
【0056】
第2反射面32には、点基準第1角度αfについて、90°<αf<180°の範囲内となるような第1所定点が1点以上存在する。同様に、第2反射面32には、点基準第2角度βfについて、-90°<βf<0°の範囲内となるような第2所定点が1点以上存在する。第1所定点及び第2所定点は、第2反射面32の領域内であれば、第2反射面32上のいずれの箇所に存在していてもよい。加えて、第1所定点は、第1壁面71毎に異なっていてもよい。また、第2所定点は、第2壁面72毎に異なっていてもよい。
【0057】
尚、任意の第1所定点及び第2所定点を、仮想的に、反射面上端32aから反射面下端32bへ向けて徐々に移動させると、点基準第1角度αf及び点基準第2角度βfは共に、通常、離散的な値を取ることもなく、且つ、極値を現出させることもない。故に、反射面上端32a及び反射面下端32bをそれぞれ第1所定点とした各点基準第1角度αfについて、共に90°<αf<180°の範囲内とすれば、第2反射面32上のいずれの箇所を第1所定点としても、点基準第1角度αfは、この角度範囲内となる。同様に、反射面上端32a及び反射面下端32bをそれぞれ第2所定点とした各点基準第2角度βfについて、共に-90°<βf<0°の範囲内とすれば、第2反射面32上のいずれの箇所を第2所定点としても、点基準第2角度βfは、この角度範囲内となる。
【0058】
以上のような壁面構造70bでは、互いに対向する配置となる一対の第1壁面71及び第2壁面72の間に、鋭角状の谷部が形成される(
図16参照)。第1壁面71及び第2壁面72の間に形成される鋭角γによれば、第2反射面32により反射されて壁面構造70bに到達した反射外光ROLを、各第1壁面71は、隣接する第2壁面72に到達するよう反射する。第1壁面71の前方Zeに位置し、当該第1壁面71との間で鋭角γを形成する第2壁面72は、後方Goの第1壁面71から入射する反射外光ROLをさらに上方Ueへ反射する。その結果、第1壁面71及び第2壁面72にて連続的に反射された反射外光ROLは、ウィンドシールドWSを透過するか、或いはウィンドシールドWSにて視認領域EBの域外又はアイリプスELの域外に反射される。加えて、上述した点基準第2角度βf(
図15参照)の範囲設定によれば、第2反射面32により反射された反射外光ROLは、各第2壁面72へは直接的に入射しなくなる。
【0059】
(作用効果)
ここまで説明した第1実施形態の作用効果を以下に説明する。
【0060】
第1実施形態では、筐体51の内部の第2反射面32にて反射された反射外光ROLは、到達想定範囲70aに形成された壁面構造70bに到達すると、交互に並ぶ複数の第1壁面71及び複数の第2壁面72によってさらに反射される。これら第1壁面71及び第2壁面72が互いに異なる方向を向く構成のため、壁面構造70bに入射した反射外光ROLは、複数方向に反射される。即ち、反射外光ROLは、纏まった状態のまま視認者の眼に到達し難くなる。以上によれば、第1壁面71及び第2壁面72を含むという簡素な構成でベゼル70の構造の複雑化を回避しつつ、さらにベゼル70の映り込みの抑制も、可能になる。
【0061】
加えて第1実施形態では、筐体51の内部の第2反射面32にて反射された反射外光ROLは、到達想定範囲70aに形成された壁面構造70bに到達すると、第1壁面71にて第2壁面72に到達するよう反射される。こうした第1壁面71及び第2壁面72での連続的な反射によれば、反射の際に生じる減衰により、反射外光ROLのエネルギーが低減される。その結果、第1壁面71及び第2壁面72の形成という簡素な構成でベゼル70の構造の複雑化を回避しつつ、さらにベゼル70の映り込みの抑制も可能になる。
【0062】
以上によれば、ベゼル70の反射像を視認者が煩わしく感じ易くなること、又は視認者が外光OLを眩しく感じ易くなること等は、発生し難くなる。したがって、HUD装置10によって表示される虚像Viの表示品質の向上が、ベゼル70に設けた壁面構造70bによって達成可能となる。
【0063】
また第1実施形態における第1方向D1は、第1壁面71を第2反射面32側へ向ける方向である。そして、第1壁面71は、第2反射面32により反射されて第1壁面71に到達する反射外光ROLを、前方Zeの隣接する第2壁面72に到達するよう反射する。こうした第1方向D1の規定による第1壁面71の姿勢によれば、反射外光ROLを連続反射によって弱める減衰作用が高い確実性をもって発揮され得る。その結果、ウィンドシールドWSへのベゼル70の映り込みは、いっそう抑制される。
【0064】
さらに第1実施形態における第2方向D2は、第2壁面72を投影面PA側へ向ける方向である。そして、第2壁面72には、第2反射面32により反射された反射外光ROLが直接的に入射しない。こうした第2方向の規定による第2壁面72の姿勢によれば、第2壁面72での反射外光ROLの反射に起因するベゼル70の映り込みは、発生し難くなる。
【0065】
加えて第1実施形態のベゼル70では、壁面構造70bは、筐体51の投影開口53aに対し、運転席側に位置している。仮に投影開口53aの運転席側に臨む範囲が反射外光ROLによって照明されてしまうと、アイポイントEPの正面にベゼル70の映り込みが生じてしまう。そのため、投影開口53aの運転席側に壁面構造70bを設け、反射外光ROLの2次的な反射を抑制する構造は、映り込みの抑制による視認者の煩わしさの低減に、特に有効となる。
【0066】
また第1実施形態では、互いに隣接する第1壁面71及び第2壁面72は、断面円弧状となる部分円筒壁面73a,73bを介して連続している。以上のように、第1壁面71及び第2壁面72の間の部分円筒壁面73a,73bの存在を許容すれば、実質連続的に第1壁面71及び第2壁面72が並ぶ壁面構造70bの成形が容易となる。また、部分円筒壁面73a,73bの横断面の半径を小さくすることで、壁面構造70bに反射外光ROLが到達しても、ウィンドシールドWSへの部分円筒壁面73a,73bの線状の映り込みは、生じ難くなる。
【0067】
さらに第1実施形態の第1方向D1及び第2方向D2は、第1壁面71又は第2壁面72にて反射された反射外光ROLがウィンドシールドWSでさらに反射されても、視認領域EBの域外に到達するように規定されている。故に、視認領域EBにアイポイントEPを位置させた視認者に、ベゼル70の映り込みが視認される事態は、回避される。
【0068】
具体的に、第1実施形態では、端基準第1角度αeが端基準第2角度βeよりも大きい、端基準第1角度αeが第1臨界角度θ1よりも小さい、及び端基準第2角度βeが第2臨界角度θ2よりも大きい、という第1~第3の関係が全て成立している。これらの条件成立によれば、第2反射面32から壁面構造70bに到達した反射外光ROLは、視認領域EBの域外に向かうようになる。その結果、ベゼル70の反射像が虚像Viと共に視認され、外光の眩しさを視認者に感じさせてしまう事態は、さらに確実に回避され得る。
【0069】
加えて第1実施形態の第1方向D1及び第2方向D2は、第1壁面71又は第2壁面72にて反射された反射外光ROLがウィンドシールドWSでさらに反射されても、アイリプスELの域外に到達するように規定されている。故に、アイリプスELの領域内にアイポイントEPを位置させた視認者に、ベゼル70の映り込みが視認される事態は、回避される。
【0070】
具体的に、第1実施形態では、端基準第1角度αeが端基準第2角度βeよりも大きい、端基準第1角度αeが第1臨界角度φ1よりも小さい、及び端基準第2角度βeが第2臨界角度φ2よりも大きい、という第1,第4,第5の関係が全て成立している。これらの条件成立によれば、第2反射面32から壁面構造70bに到達した反射外光ROLは、アイリプスELの域外に向かうようになる。その結果、ベゼル70の反射像が虚像Viと共に視認され、外光の眩しさを視認者に感じさせてしまう事態は、さらに確実に回避され得る。
【0071】
ここで、反射外光ROLによる映り込みを抑制する手法として、ベゼルの後方周壁を、上方Ueほど前方Zeに突き出した傾斜形状、又は前後方向に沿った水平形状等にすることが比較例として考えられる。しかし、前方Zeに突き出した傾斜形状の後方周壁は、表示光路OPと干渉し易くなる。また、水平形状の後方周壁は、筐体51の天井壁52との干渉、ひいては、天井壁52と平面鏡21との干渉等を誘発し得る。
【0072】
対して第1実施形態では、後方周壁74bは、表示光Ldの表示光路OPに沿った傾斜姿勢に形成されている。故に、後方周壁74bと表示光路OPとの干渉、及び後方周壁74bと天井壁52との干渉等は、発生し難い。さらに、後方周壁74bの内側の表面部に沿って配列された第1壁面71と第2壁面72は、表示光Ldの進行を阻害することなく、ベゼル70の映り込みを抑制し得る。したがって、傾斜姿勢の後方周壁74bに壁面構造70bを設ける構成は、HUD装置10及びベゼル70の省スペースでの収容を可能にしつつ、虚像Viの表示品質の向上に寄与できる。
【0073】
さらに第1実施形態では、点基準第1角度αfが+90°よりも大きく、+180度よりも小さい角度に設定される。言い替えると、点基準第1角度αfは、0°~+90°の範囲を避けた角度に設定される。以上の結果、第1壁面71にて反射された反射外光ROLの大部分は、第2壁面72へ向けて反射され得る。故に、連続反射による減衰作用により、視認者の眼への反射外光ROLの到達は、いっそう抑制可能になる。
【0074】
加えて第1実施形態では、点基準第2角度βfが-90度よりも大きく、0度よりも小さい角度に設定される。言い替えると、点基準第2角度βfも、0°~+90°の範囲を避けた角度に設定される。以上の結果、第2反射面32から第2壁面72への直接的な反射外光ROLの入射が発生しなくなる。故に、ウィンドシールドWSへのベゼル70の映り込みも抑制され得る。
【0075】
また第1実施形態の第1壁面71及び第2壁面72は、塗膜による吸収及びシボ等による拡散の少なくとも一方により、反射外光ROLの強度を反射時に顕著に低下させ得る。以上によれば、第1壁面71及び第2壁面72にて複数回の連続反射を行わせる構成と相俟って、反射外光ROLの強度の累積的な低下が可能になる。その結果、ウィンドシールドWSへのベゼル70の映り込みも抑制される。
【0076】
尚、第1実施形態では、車両Aが「移動体」に相当し、投影面PAが「投影範囲」に相当し、第2反射面32が「反射鏡面」に相当し、HUD装置10が「虚像表示装置」に相当し、ベゼル70が「カバー部材」に相当する。
【0077】
さらに、第1実施形態では、壁面構造70bにて、各第1壁面71は、実質的に同じ勾配に形成される。同様に、各第2壁面72は、実質的に同じ勾配に形成されている。ここでいう「勾配」との物理量は、上述したように、水平面上に置かれた車両Aを基準とする座標系での第1壁面71及び第2壁面72の傾き度合を定義する物理量である。
【0078】
一方、上記のα,αe,αf,θ1,φ1等の「角度」との物理量は、各第1壁面71の第2反射面32に対する相対位置に応じて規定される端基準第1直線L1又は点基準第2直線L2fを基準とする物理量である。同様に、上記のβ,βe,βf,θ2,φ2等の「角度」と記載した物理量は、各第2壁面72の第2反射面32に対する相対位置に応じて規定される端基準第2直線L2又は点基準第2直線L2fを基準とする物理量である。
【0079】
以上により、仮に同一の「角度(例えば、αe)」を各第1壁面71に適用したとしても、各第1壁面71に規定される端基準第1直線L1が異なるため、車両Aを基準とする座標系での「勾配」は、全ての第1壁面71で同一にならない可能性がある。第2壁面72についても同様に、同一の「角度(例えば、βe)」が適用されても、各第2壁面72の「勾配」は同一にならない可能性がある。
【0080】
(第2実施形態)
図17に示す本開示の第2実施形態は、第1実施形態の変形例である。以下、第4実施形態のベゼル270に設けられた壁面構造270bについて、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0081】
壁面構造270bには、第1勾配領域SA1及び第2勾配領域SA2が設けられている。第1勾配領域SA1は、第2勾配領域SA2よりもベゼル開口75に近い位置に設けられている。言い替えると、第2勾配領域SA2は、第1勾配領域SA1を挟んで、ベゼル開口75の反対側に位置している。
【0082】
第1勾配領域SA1及び第2勾配領域SA2のそれぞれには、第1壁面71及び第2壁面72が複数配列されている。第1勾配領域SA1及び第2勾配領域SA2では、第1壁面71及び第2壁面72の各勾配の設定が互いに異なっている。こうした設定により、反射面上端32aとの相対的な位置関係が各勾配領域SA1,SA2で互いに異なっていても、第1勾配領域SA1の第1壁面71の端基準第1角度αeは、第2勾配領域SA2の第1壁面71の端基準第1角度αeと同程度の角度となる。同様に、反射面下端32bとの相対的な位置関係が各勾配領域SA1,SA2で互いに異なっていても、第1勾配領域SA1の第2壁面72の端基準第2角度βeは、第2勾配領域SA2の第2壁面72の端基準第2角度βeと同程度の角度となる。
【0083】
ここまで説明した第2実施形態では、第1勾配領域SA1及び第2勾配領域SA2を規定することで、第1壁面71及び第2壁面72の各向きが、第2反射面32との相対的な位置関係に応じて最適化され得る。その結果、到達想定範囲70aに到達した反射外光ROL(
図7参照)によるベゼル270の映り込みがいっそう抑制される。
【0084】
尚、第1壁面71の勾配及び第2壁面72の勾配は、これらの壁面が交互に並ぶ配列方向SDに沿って、連続的に変化してもよい。こうした変形例では、第1壁面71の勾配及び第2壁面72の勾配が、第2反射面32との相対的な位置関係に応じて、より適切な設定となり得る。さらに、第1壁面71及び第2壁面72のうち、一方のみの勾配が、領域毎に又は連続的に変化してもよい。
【0085】
(第3実施形態)
図18及び
図19に示す本開示の第3実施形態は、第1実施形態の別の変形例である。以下、第3実施形態の凹面鏡31及びベゼル370について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0086】
凹面鏡31の第2反射面32は、第1反射領域RA1及び第2反射領域RA2に仮想的に分割されている。第1反射領域RA1及び第2反射領域RA2は、第2反射面32の上下方向に並ぶ配置とされている。第1反射領域RA1は、第2反射領域RA2の上方Ueに位置し、反射面上端32aを含んでいる。一方、第2反射領域RA2は、第1反射領域RA1の下方Siに位置し、反射面下端32bを含んでいる。
【0087】
図18に示すように、第1反射領域RA1の領域上端RA1aから第1壁面71へ向かう端基準第1直線L1と、端基準第1直線L1を基準とする第1壁面71の端基準第1角度αeが定義される。同様に、第1反射領域RA1の領域下端RA1b(反射面下端32b)から第2壁面72へ向かう端基準第2直線L2と、端基準第2直線L2を基準とする第2壁面72の端基準第2角度βeが定義される。
【0088】
さらに、端基準第1直線L1に基づき、第1壁面71の第1臨界角度θ1,φ1(
図8及び
図11参照)が定義される。加えて、端基準第2直線L2に基づき、第2壁面72の第2臨界角度θ2,φ2(
図9及び
図12参照)が定義される。その結果、第3実施形態でも、αe>βeの関係、αe
<θ1の関係、及びβe
>θ2の関係が全て成立する。又は、αe>βeの関係、αe
<φ1の関係、及びβe
>φ2が全て成立する。以上により、第1反射領域RA1に対しては、反射外光ROL(
図7参照)の視認領域EB(
図1参照)又はアイリプスEL(
図1参照)への到達が抑制される。
【0089】
また、
図19に示すように、第2反射領域RA2上にある任意の第1所定点から第1壁面71へ向かう仮想の点基準第1直線L1fと、点基準第1直線L1fに対して第1壁面71がつくる点基準第1角度αfとが定義される。点基準第1角度αfは、第2反射領域RA2のあらゆる点に対して、+90度より大きく、且つ、+180度よりも小さくなるように設定される。
【0090】
同様に、第2反射領域RA2上にある任意の第2所定点から第2壁面72へ向かう仮想の点基準第2直線L2fと、点基準第2直線L2fに対して第2壁面72がつくる点基準第2角度βfとが定義される。点基準第2角度βfは、第2反射領域RA2のあらゆる点に対して、-90度よりも大きく、且つ、0度よりも小さくなるように設定される。
【0091】
以上により、第2反射領域RA2にて反射された反射外光ROLは、第1壁面71に到達しても、第2壁面72へ向けて反射される。さらに、第2反射領域RA2から第2壁面72への反射外光ROLの直接的な到達が抑制される。
【0092】
ここまで説明した第3実施形態では、仮想的に分割した第1反射領域RA1及び第2反射領域RA2に対し、壁面構造370bは、異なる作用を発揮し、ベゼル370の映り込みを抑制させている。以上によれば、凹面鏡31の第2反射面32が大型化しても、虚像Viの表示品質の確保が可能になる。
【0093】
尚、第1反射領域RA1及び第2反射領域RA2の仮想的な分割は、壁面構造370bに含まれる全ての第1壁面71及び第2壁面72に対して共通に設定されていてよい。又は、第1反射領域RA1及び第2反射領域RA2の仮想的な分割が、壁面71,72毎に個別に異なっていてもよい。
【0094】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0095】
上記第1実施形態等では、筐体51の傾斜部54の外表面部は、概ね平滑な平面状とされていた。一方で、上記実施形態の変形例1では、筐体51の傾斜部54の外表面部にも、ベゼル70に設けられた壁面構造と実質同一の第1壁面及び第2壁面が形成されている。以上の変形例1によれば、到達想定範囲70aがベゼル70の後方周壁74b内に限定されず、傾斜部54に及んでいても、傾斜部54の外表面部に形成された壁面構造が、ベゼル70と共に反射外光ROLによる映り込みを抑制する。
【0096】
上記実施形態では、枠体状を呈するベゼルに壁面構造が設けられていた。しかし、壁面構造を備え、HUD筐体の少なくとも一部を覆うことができれば、カバー部材は、上述のベゼルに限定されない。投影開口の周囲に設置される種々の部品をカバー部材として、上述の壁面構造を設けることが可能である。
【0097】
具体的に、上記実施形態の変形例2では、投影開口53aの後方Goに配置され、HUD筐体の上方Ueに位置する湾曲板状又は平板状のカバー部材の外表面部に、壁面構造70bが形成されている。この変形例2のカバー部材は、例えば左右方向に延伸する矩形の板状を呈しており、HUD筐体に固定されている。
【0098】
また、上記実施形態の変形例3では、HUD装置10を収容する収容区間の上方Ueを覆い、インスツルメントパネルINPの一部を形成するカバー部材に、壁面構造70bが形成されている。さらに、上記実施形態の変形例4では、インスツルメントパネルINPの一部に、壁面構造70bが直接的に形成されている。
【0099】
上記実施形態の変形例5では、平面鏡21の第1反射面22によって反射された外光OLの到達が想定される範囲にも、到達想定範囲が規定されている。こうした変形例5では、カバー部材のうちで投影開口53aの運転席側以外の箇所にも、第1壁面71及び第2壁面72を含む壁面構造が形成される。以上のように、到達想定範囲70a及び壁面構造70bの位置は、投影開口53aの後方Goに限定されてない。
【0100】
上記実施形態の変形例6の壁面構造では、第1壁面71及び第2壁面72の間の部分円筒壁面73a,73bが省略されている。さらに、上記実施形態の変形例7の壁面構造では、第1壁面71及び第2壁面72の間に、これらの壁面を接続させる平面状の壁面がさらに形成されている。
【0101】
上記実施形態の変形例8の壁面構造では、第1壁面71及び第2壁面72は、それぞれ1つずつのみ形成されている。このように、第1壁面又は第2壁面の少なくとも一方は、複数でなくてもよい。また、上記実施形態の変形例9の壁面構造では、反射外光ROLを第1壁面71及び第2壁面72で必ず連続反射させるための構成が採用されていない。第1壁面71に到達した反射外光ROLの一部は、隣接する第2壁面72とは異なる方向へ向けて反射される。また、変形例9では、反射外光ROLの一部は、第2壁面72に直接的に到達する。
【0102】
上記実施形態における壁面構造70bの形態は、適宜変更されてよい。例えば、
図20に示す変形例10のベゼル470において、壁面構造70bは、凸状に湾曲する曲板状の後方周壁74bの表面部に形成されている。また、
図21に示す変形例11のベゼル570において、壁面構造70bは、凹状に湾曲する曲板状の後方周壁74bの表面部に形成されている。さらに、
図22に示す変形例12のベゼル670において、壁面構造70bは、逆L字状に屈曲する凸折れ部とされた後方周壁74bの表面部に形成されている。加えて、
図23に示す変形例13のベゼル770において、壁面構造70bは、L字状に屈曲する凹折れ部とされた後方周壁74bの表面部に形成されている。以上のような変形例10~13では、後方周壁74bの内周側表面部の湾曲に応じて、第1壁面71及び第2壁面72の向き及び面幅が徐々に変化している。
【0103】
また、
図24に示す変形例14のベゼル870に設けられた壁面構造70bでは、第2壁面72が平面状に形成される一方で、第1壁面71は、凹状に湾曲した部分円筒面状に形成されている。さらに、
図25に示す変形例15のベゼル970に設けられた壁面構造70bでは、第1壁面71が平面状に形成されている一方で、第2壁面72は、凹状に湾曲した部分円筒面状に形成されている。加えて、
図26に示す変形例16のベゼル1070に設けられた壁面構造70bでは、第1壁面71が凹状に湾曲した部分円筒面状に形成される一方で、第2壁面72は、凸状に湾曲した部分円筒面状に形成されている。以上の変形例14~16のように、第1壁面71及び第2壁面72の少なくとも一方は、平面状ではなく、曲面状に形成されてよい。
【0104】
上記実施形態のHUD装置10にて、平面鏡21及び凹面鏡31によって構成されていた拡大光学系は、3つ以上の反射鏡を含む構成であってもよい。具体的に、
図27に示す変形例17にて、ベゼル70が適用されるHUD装置では、平面鏡21に加えて、2つの凹面鏡31が、筐体51の内部に収容されている。平面鏡21は、表示器11から入射する表示光を、第1凹面鏡91及び第2凹面鏡92の各第2反射面32へ向けて反射する。第1凹面鏡91及び第2凹面鏡92は、ウィンドシールドよりも前方の異なる位置に、第1虚像及び第2虚像をそれぞれ結像させる。
【0105】
以上のように、3つ以上の反射鏡を備えるHUD装置にも、壁面構造を設けたベゼルが適用可能である。この場合、壁面構造は、少なくとも1つの反射鏡にて反射された反射外光の到達想定範囲に形成される。また、HUD装置の反射鏡を、表示光路に沿って投影開口に近い位置から順に第1ミラー、第2ミラー及び第3ミラーと定義すると、各反射鏡の種類の組み合わせは、
図28に示すように、凹面鏡、凸面鏡及び平面鏡のうちで適宜変更可能である。
【0106】
上記実施形態にて説明した第1~第5の関係のうち、一部の関係が満たされてなくてもよい。例えば、変形例18の壁面構造70bでは、第1~第3の関係が満たされる一方で、第4及び第5の関係は、満たされていない。また、変形例19の壁面構造70bでは、第1,第4及び第5の関係が満たされる一方で、第2及び第2の関係は、満たされていない。さらに、第1壁面71と第2壁面72との間に形成される谷部の角度は、鈍角であってもよい。
【0107】
本開示によるカバー部材が虚像表示装置と共に搭載される車両Aは、一般的な自家用の乗用車に限定されず、レンタカー用の車両、有人タクシー用の車両、ライドシェア用の車両、貨物車両及びバス等であってもよい。さらに、モビリティサービスに用いられるドライバーレス車両に、カバー部材及び虚像表示装置は、搭載されてよい。加えて、カバー部材及び虚像表示装置を搭載する車両は、右ハンドル車両であってもよく、又は左ハンドル車両であってもよい。
【0108】
さらに、カバー部材及び虚像表示装置は、車両とは異なる移動体にも搭載可能である。例えば、作業現場で運用される重機、鉄道車両、トラム、及び航空機等の移動体、さらに、アミューズメント施設等に配列された運転遊具及び運転シミュレータ等の擬似的な移動体にも、カバー部材及び虚像表示装置は、搭載されてよい。加えて、想定される外光の種類も、移動体の種別に応じて、太陽光、月明かり及び街灯等、適宜変更されてよい。
【符号の説明】
【0109】
10 HUD装置(虚像表示装置)、32 第2反射面(反射鏡面)、51 筐体、53a 投影開口、70,270,370,470,570,670,770,870,970,1070 ベゼル(カバー部材)、70a 到達想定範囲、70b,270b,370b 壁面構造、71 第1壁面、72 第2壁面、73a,73b 部分円筒壁面、A 車両(移動体)、D1 第1方向、D2 第2方向、EB 視認領域、EL アイリプス、Ld 表示光、PA 投影面(投影範囲)、Vi 虚像、WS ウィンドシールド