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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】シールド電線の端末構造およびスリーブ
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20240214BHJP
   H01R 13/655 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
H01B7/00 306
H01R13/655
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020126665
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023611
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三井 翔平
(72)【発明者】
【氏名】橋本 宣仁
(72)【発明者】
【氏名】窪田 基樹
(72)【発明者】
【氏名】金村 佳佑
(72)【発明者】
【氏名】山中 航
(72)【発明者】
【氏名】若原 忍
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-252930(JP,A)
【文献】特開2010-232046(JP,A)
【文献】特開2020-021538(JP,A)
【文献】特開2019-197624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01R 13/655
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線と、
前記芯線を覆う絶縁体と、
前記絶縁体を覆う箔と、
前記箔を覆う編組と、
前記編組を覆うシースと、
前記シースの端部から露出した前記編組と前記箔との間に配置されるスリーブと、を備え、
前記シースの端部と前記スリーブとの間は、互いに離れて隙間を形成し
前記箔が剥がれ、前記隙間が小さくなる場合に、前記隙間に入り込んだ前記箔によって前記編組の膨らみが形成されるように、前記隙間が設定されている、シールド電線の端末構造。
【請求項2】
前記スリーブは、前記箔の外径よりも大きい内径の筒状のスリーブ本体を有している、請求項1に記載のシールド電線の端末構造。
【請求項3】
前記スリーブは、前記スリーブ本体の周方向に間隔を置いて配置される複数の突部を有し、前記複数の突部は、径方向内側に突出して前記箔と接するように形成されている、請求項2に記載のシールド電線の端末構造。
【請求項4】
前記スリーブ本体は、小径筒部と、前記小径筒部に並んで配置される、前記小径筒部よりも大径の大径筒部と、を有し、前記大径筒部の外面は、端子のバレルに押圧され得る受け面になっている、請求項3に記載のシールド電線の端末構造。
【請求項5】
芯線と、
前記芯線を覆う絶縁体と、
前記絶縁体を覆う箔と、
前記箔を覆う編組と、
前記編組を覆うシースと、
前記シースの端部から露出した前記編組と前記箔との間に配置されるスリーブと、を備え、
前記シースの端部と前記スリーブとの間は、互いに離れて隙間を形成し、
前記スリーブは、前記箔の外径よりも大きい内径の筒状のスリーブ本体を有し、さらに、
前記スリーブは、前記スリーブ本体の周方向に間隔を置いて配置される複数の突部を有し、前記複数の突部は、径方向内側に突出して前記箔と接するように形成され、
前記スリーブ本体は、小径筒部と、前記小径筒部に並んで配置される、前記小径筒部よりも大径の大径筒部と、を有し、前記大径筒部の外面は、端子のバレルに押圧され得る受け面になっており、
前記大径筒部は、前記スリーブ本体の軸方向の中央部に配置され、
前記小径筒部は、前記スリーブ本体の軸方向の両端部に配置され、
前記複数の突部は、前記スリーブ本体の軸方向の両端部における前記小径筒部のそれぞれに同数ずつ分かれて配置される、シールド電線の端末構造。
【請求項6】
前記スリーブは、前記シースの端部と対向する縁部に、前記シースの端部から離れる向きに凹んだ凹部を有している請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシールド電線の端末構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のシールド電線の端末構造におけるスリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シールド電線の端末構造およびスリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
シールド電線は、高周波の電気信号を伝送する伝送路を構成する。例えば、特許文献1には、シールド電線の端末部分に露出した編組と絶縁体との間に配置されるスリーブが開示されている。スリーブは、端子のバレルによって押圧され、変形させられる。編組はスリーブとバレルとの間に挟まれて保持される。この種のシールド電線の端末構造およびスリーブは、特許文献2および特許文献3にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-232046号公報
【文献】特開2005-197068号公報
【文献】実開平3-71580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の構成に加え、編組の内側に金属製の箔が設けられ、箔が絶縁体を覆うように配置されていれば、伝送特性をより向上させることができ、好ましいと言える。しかし、この構成を採用すると、箔と編組との間にスリーブが挿入されることになり、箔がスリーブと干渉して剥がれる可能性がある。仮に、箔が剥がれたことに気付かないままシールド電線を使用すると、所期の伝送特性を得ることができないといった問題がある。
【0005】
そこで、本開示は、箔の状態を検知することが可能なシールド電線の端末構造およびスリーブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のシールド電線の端末構造は、芯線と、前記芯線を覆う絶縁体と、前記絶縁体を覆う箔と、前記箔を覆う編組と、前記編組を覆うシースと、前記シースの端部から露出した前記編組と前記箔との間に配置されるスリーブと、を備え、前記シースの端部と前記スリーブとの間は、互いに離れて隙間を形成している。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、箔の状態を検知することが可能なシールド電線の端末構造およびスリーブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態において、シールド電線の端末構造を示す側断面図である。
図2図2は、シールド電線の端末構造を示す横断面図である。
図3図3は、シールド電線が端子に接続された状態を示す側断面図である。
図4図4は、スリーブの斜視図である。
図5図5は、スリーブの側断面図である。
図6図6は、箔が剥がれ、編組が膨らんだ状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のシールド電線の端末構造は、
(1)芯線と、前記芯線を覆う絶縁体と、前記絶縁体を覆う箔と、前記箔を覆う編組と、前記編組を覆うシースと、前記シースの端部から露出した前記編組と前記箔との間に配置されるスリーブと、を備え、前記シースの端部と前記スリーブとの間は、互いに離れて隙間を形成している。これによれば、仮に、箔が剥がれていると、隙間が小さくなり、隙間に編組の膨らみが形成されるため、この編組の膨らみを見ることにより、箔が剥がれていることを知ることができる。これに対し、箔が剥がれていないと、隙間に編組の膨らみが形成されないため、箔が剥がれていないと判断することができる。よって、本開示の構成によれば、箔の状態、例えば、箔が剥がれているかどうかを検知することができる。
【0010】
(2)前記スリーブは、前記箔の外径よりも大きい内径の筒状のスリーブ本体を有しているのが好ましい。これによれば、スリーブ本体と箔との接触を回避した状態で、箔の外側にスリーブ本体を配置することができ、箔が剥がれるのを未然に抑えることができる。
【0011】
(3)前記スリーブは、前記スリーブ本体の周方向に間隔を置いて配置される複数の突部を有し、前記複数の突部は、径方向内側に突出して前記箔と接するように形成されていると良い。これによれば、複数の突部が箔と接し、スリーブのシールド電線からの脱落(離脱)を阻止することができる。
【0012】
(4)前記スリーブ本体は、小径筒部と、前記小径筒部に並んで配置される、前記小径筒部よりも大径の大径筒部と、を有し、前記大径筒部の外面は、端子のバレルに押圧され得る受け面になっていると良い。これによれば、大径筒部が箔と接触するのを確実に回避することができる。また、大径筒部が箔剥がれを抑える機能と端子の押圧力を受ける機能とを兼備することができる。
【0013】
(5)前記大径筒部は、前記スリーブ本体の軸方向の中央部に配置され、前記小径筒部は、前記スリーブ本体の軸方向の両端部に配置され、前記複数の突部は、前記スリーブ本体の軸方向の両端部における前記小径筒部のそれぞれに同数ずつ分かれて配置されると良い。これによれば、スリーブの軸方向の方向性を無くすことができる。その結果、例えば、スリーブの取り付け方向を識別しなくて済むようになる。
【0014】
(6)前記スリーブは、前記シースの端部と対向する縁部に、前記シースの端部から離れる向きに凹んだ凹部を有していると良い。これによれば、凹部の形成位置において隙間が拡張し、編組の膨らみ等を確認する領域を広く確保することができる。その結果、箔の状態を検知する信頼性を高めることができる。
【0015】
また、本開示は、上述の(1)~(6)に記載のシールド電線の端末構造におけるスリーブを含む。これによれば、スリーブがシースの端部から離れて位置することになるため、スリーブの全長を短くすることができ、材料コストを低減することができる。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0017】
シールド電線10は、自動車等の車両に搭載される。シールド電線10は、全体として断面円形をなし、図1および図2に示すように、径方向中心に位置する金属製の芯線11と、芯線11の外周を覆う発泡樹脂製の絶縁体12と、絶縁体12の外周を覆う銅箔等の金属製の箔13と、箔13の外周を覆う金属製の編組14と、編組14の外周を覆う絶縁樹脂製のシース15と、を備えている。芯線11、絶縁体12、箔13、編組14およびシース15は、芯線11の軸心を中心として同心状に配置される。箔13および編組14は、電磁ノイズを遮蔽するシールド層16を構成する。このうち、箔13は、伝送路のインピーダンスを規定値に調整する役割を有する。
【0018】
シールド電線10の端末部は、皮剥ぎ等の端末処理が施され、図1に示すように、シース15よりも前方(シールド電線10の先方)に、シールド層16の先端部16Aを露出させる。芯線11の先端部11Aは、絶縁体12の前端より前方に露出している。
【0019】
シールド電線10の端末部は、シールド層16の先端部16Aに、スリーブ17を備えている。スリーブ17は、円筒状をなし、径方向に関して箔13と編組14との間に配置される。スリーブ17は、端子30のバレル31から押圧力(圧着力、固着力)を受ける。スリーブ17の具体的構造については後述する。
【0020】
端子30は、導電性の金属板を曲げ加工して形成され、図3に示すように、上述のバレル31の他、シース用バレル32、端子本体33を有している。端子本体33は、円筒状をなし、バレル31よりも前方に配置される。端子本体33とバレル31とは、左右(図3の紙面厚み方向)に対をなす連結部34(図3では1つのみ図示)を介して連結されている。
【0021】
端子本体33の内部には、樹脂製の誘電体35が収容される。誘電体35は、前後方向に貫通する収容部36を有している。収容部36には、内導体端子37が挿入される。内導体端子37は、収容部36に挿入された状態で誘電体35の後方に突出する突出部分を有し、この突出部分に芯線接続部38を有している。芯線接続部38は、対をなす連結部34間に配置され、芯線11の先端部11Aに圧着して接続される。
【0022】
誘電体35の外面と端子本体33との間には、前方に開放された嵌合空間39が形成されている。嵌合空間39には、図示しない相手側端子が嵌合される。相手側端子は、端子本体33に電気的に接続される。また、相手側端子は、図示しない回路基板のグランド層に接続される。収容部36にはこの収容部36の前面開口を通して図示しない相手側内導体端子が挿入される。相手側内導体端子は、内導体端子37に電気的に接続される。
【0023】
バレル31は、オープンバレル状をなし、左右に対をなすバレル片41(図3では詳細を図示せず)を有している。バレル31は、スリーブ17を下敷きとして編組14に圧着して接続される。各バレル片41は、編組14の外周に沿って巻き付けられる。
【0024】
シース用バレル32は、バレル31よりも後方に配置される。シース用バレル32は、バレル31と同様、オープンバレル状をなし、左右に対をなすシース用バレル片42(図3では詳細を図示せず)を有している。シース用バレル32は、スリーブ17を介さずに、シース15に直接圧着して接続される。各シース用バレル片42は、シース15の外周に沿って巻き付けられる。
【0025】
さて、スリーブ17は、ステンレス鋼等の金属製であって、図4および図5に示すように、前後方向に貫通する円筒状のスリーブ本体18を有している。スリーブ本体18は、矩形の板材を丸めて円筒状に形成されている。スリーブ本体18は、上端に、前後方向(軸方向)に沿った合わせ縁19を有している。スリーブ本体18は、合わせ縁19を突き合わせた状態で、円筒状を維持する。
【0026】
スリーブ17の軸長(前後方向の長さであって、スリーブ本体18の軸長と同じ)は、シールド層16の先端部16Aの軸長よりも短くされている。
スリーブ本体18は、前後方向の中央部に、大径筒部21を有し、前後方向の両端部に、前後に対をなす小径筒部22を有している。大径筒部21は、各小径筒部22よりも大径に形成される。大径筒部21と各小径筒部22との間には、前後に対をなす段差27が形成されている。各小径筒部22は、各段差27を介して大径筒部21に並んで連結されている。各段差27は、大径筒部21から各小径筒部22にかけてテーパ状に縮径している。各小径筒部22は、互いに同一の軸長で構成される。各小径筒部22の軸長は、大径筒部21の軸長よりも短くされている。
【0027】
大径筒部21は、各小径筒部22に対し、スリーブ本体18の全周にわたって径方向外側に膨出する形状になっている。大径筒部21は、前後方向に一定の厚みで形成されている。大径筒部21の内面および外面は、前後方向に沿って配置される。このうち、大径筒部21の外面は、編組14を介してバレル31と対向し、バレル31の押圧力を受ける受け面23として構成される。
【0028】
各小径筒部22は、同じく前後方向に一定の厚みで形成され、前後方向に沿った内面および外面を有している。各小径筒部22の厚みは、大径筒部21の厚みと同一とされている。図1に示すように、各小径筒部22の内径は、絶縁体12を覆う箔13の外径よりも大きくされている。
【0029】
スリーブ17は、図4および図5に示すように、各小径筒部22の径方向内側に突出する複数の突部24を有している。各突部24は、各小径筒部22にそれぞれ同数ずつ(具体的には4つずつ)配置される。各突部24は、各小径筒部22の内面において周方向に間隔(具体的には等間隔)を置いて配置される。各突部24は、各小径筒部22にそれぞれ同じ配列で配置される。
【0030】
各突部24は、各小径筒部22の外面をプレス加工で加圧することによりエンボス状に形成される。具体的には、図2に示すように、各突部24は、各小径筒部22の径方向内側にドーム状(半球面状)に突出した形状になっている。各突部24の頂部24Aは、絶縁体12を覆う箔13と接触することが可能とされている。
【0031】
スリーブ17は、図4および図5に示すように、後側の小径筒部22の上端後縁に、切欠状に開口した凹部25を有している。凹部25の奥端(前端)は、周方向(幅方向)に沿って配置される。凹部25の奥端は、合わせ縁19の後端と直角に交差している。スリーブ17は、後側の小径筒部22の下端後縁に、切欠状に開口した2つの副凹部26を有している。各副凹部26は、凹部25よりも小さい開口幅を有し、周方向に並んで配置される。スリーブ17は、凹部25および各副凹部26を除いて、前後方向の中心に対して対称(線対称)な形状になっている。
【0032】
次に、スリーブ17の取り付け方法および取り付け構造(シールド電線10の端末構造)について説明する。
スリーブ17は、シールド電線10の端末部における編組14と箔13との間に前方から挿入される。スリーブ17の挿入開始時において、後側の小径筒部22の内面が箔13から離れて位置することにより、後側の小径筒部22と箔13との接触を回避することができる。
【0033】
後側の小径筒部22の内側に箔13が配置された状態において、後側の小径筒部22における各突部24の頂部24Aが箔13の外面に点接触状態に接触する。スリーブ17の挿入過程の終盤においては、前側の小径筒部22における各突部24の頂部24Aも箔13の外面に点接触状態に接触する。その後、スリーブ17の挿入動作が進行する間、各突部24の頂部24Aが箔13の外面を摺動することになる。
【0034】
前後の小径筒部22間には大径の大径筒部21が配置され、大径筒部21の内面が箔13から離れて位置することから、スリーブ17の挿入動作が進行する間、大径筒部21と箔13との接触が回避される。言い換えれば、箔13は、各突部24の頂部24Aを介してのみ、スリーブ17と接触する。各突部24の頂部24Aが箔13の外面と接触することにより、スリーブ17がシールド層16から脱落(離脱)するのが阻止される。
【0035】
編組14は、スリーブ17の外面に深く被さる。図1に示すように、スリーブ17がシールド層16に正規に挿入されると、前側の小径筒部22の前端部を除いて、スリーブ17の外面が編組14で覆われる。
【0036】
スリーブ17がシールド層16に正規に挿入された状態において、スリーブ17はシース15の前端から離れて配置される。つまり、スリーブ17の後端とシース15の前端との間には、前後方向の隙間50が形成される。
【0037】
仮に、スリーブ17の挿入過程において、各突部24と箔13との接触に起因し、箔13が剥がれたり破断したりすると、スリーブ17がシース15に過剰に接近し、隙間50が正規値よりも小さくなるため、図6に示すように、隙間50に、箔13が入り込んで編組14の膨らみ14Aが形成される。よって、この膨らみ14Aを目視で確認することにより、箔13が剥がれていることを知ることができる。これに対し、編組14の膨らみ14Aが無く、図1に示すように、編組14が隙間50においてスリーブ17の外面からシース15の内面にかけてテーパ状に縮径する形態になっていれば、箔13が剥がれていないと判断することができる。よって、本実施形態によれば、箔13が剥がれているのかどうかを視認により検知することができる。
【0038】
特に、本実施形態の場合、スリーブ17の後端に、シース15の前端から離れる方向に凹んだ凹部25が設けられている。このため、凹部25の形成分、隙間50が拡張され、編組14の膨らみ14Aを介して箔13の状態を確認する視認領域も拡張される。よって、箔13の状態を視認により検知する信頼性を高めることができる。
【0039】
その後、スリーブ17は、端子30に圧着により支持される。端子30の圧着工程において、バレル31から径方向内側に押圧される。図3に示すように、スリーブ17の受け面23には、編組14を介してバレル31が対向して配置される。各突部24は、バレル31に押圧され、箔13を介して絶縁体12の外面に圧縮力を作用させた状態で固定される。
【0040】
各小径筒部22は、バレル31に押圧され、箔13と接触する。大径筒部21は、バレル31に押圧されても、箔13と接触せずに箔13から離れて配置される。もっとも、バレル31の押圧力が大きく、段差27が消失する程度にまでスリーブ17が変形した場合には、大径筒部21も箔13と接触する。逆に、バレル31の押圧力が小さい場合には、各突部24のみが箔13と接触し、各小径筒部22は箔13と接触せずに箔13から離れて配置される。
【0041】
シールド電線10の端末部が端子30に接続された後であっても、隙間50を通して編組14の膨らみ14Aを目視で確認することにより、箔13が剥がれていることを知ることができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、シース15の前端とスリーブ17の後端との間に形成された隙間50から編組14の膨らみ14Aを見ることにより、箔13が剥がれていることを知ることができる。これに対し、隙間50に編組14の膨らみ14Aが形成されていなければ、箔13が剥がれていないと判断することができる。よって、箔13の状態、例えば、箔13が剥がれているかどうかを検知することができる。特に、凹部25の形成位置において、隙間50が拡張し、編組14の膨らみ14A等を見る視認領域を広く確保することができるため、箔13の状態を検知する信頼性を高めることができる。







【0043】
スリーブ17は、シース15の後端から離れる分、軸方向に短く形成される。このため、スリーブ17の材料コストを低減することができる。また、スリーブ17とシース15との間に編組14が巻き込まれることもなく、シース用バレル32の押圧力(圧着力、固着力)が低下する懸念を払拭することができる。
【0044】
さらに、スリーブ本体18の内径は、各小径筒部22の内径を含め、絶縁体12を覆う箔13の外径よりも大きく設定されている。このため、シールド層16にスリーブ17を挿入する過程で、スリーブ本体18が箔13と接触するのを回避することができ、箔13が剥がれるのを未然に抑えることができる。特に、大径筒部21は、各小径筒部22よりも大径であるため、箔13との接触をより回避し易くなる。
【0045】
他方、各小径筒部22の径方向内側に突出する複数の突部24が箔13と接触することにより、スリーブ17がシールド層16から脱落するのを阻止することができる。
【0046】
また、本実施形態の場合、大径筒部21がスリーブ本体18の前後方向の中央部に設けられ、各小径筒部22がスリーブ本体18の前後方向の両端部に設けられ、各突部24が各小径筒部22のそれぞれに同数ずつ同じ配列で配置されている。このため、スリーブ17の前後方向の方向性を無くすことができ、例えば、シールド層16にスリーブ17を挿入する際に、スリーブ17の前後の向きを識別しなくても済むようになる。
【0047】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上述の実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上述の実施形態の場合、各小径筒部は大径筒部の両側に大径筒部と並んで配置されていたが、他の実施形態として、各小径筒部は大径筒部の前後両側のうちいずれか片側のみに大径筒部と並んで配置される構成であっても良い。
上述の実施形態の場合、スリーブ本体は大径筒部と各小径筒部とを有していたが、他の実施形態として、スリーブ本体は前後方向(軸方向)に同一径で形成されていても良い。スリーブ本体が前後方向に同一径で形成される場合、スリーブ本体の内径が絶縁体を覆う箔の外径よりも大きくされ、各突部がスリーブ本体の径方向内側に突出して箔と接触するように形成されていると良い。
【0048】
上述の実施形態の場合、編組はスリーブの外面側に配置されていたが、他の実施形態として、編組はスリーブの内面側から外面側にかけて曲げ返されていても良い。
上述の実施形態の場合、スリーブは凹部および各副凹部によって前後方向の対称性が失われていたが、他の実施形態として、スリーブは凹部および各副凹部の形成の有無に関わらず前後方向の対称性が確保されていても良い。
上述の実施形態の場合、箔の状態を隙間に形成された編組の膨らみによって検知していたが、検知方法はこれに限らず、例えば、編組の網目を通して箔の状態を見るようにしても良い。また、箔の状態はセンサ等の装置を用いて自動的に検知されても良い。
【符号の説明】
【0049】
10…シールド電線
11…芯線
11A…芯線の先端部
12…絶縁体
13…箔
14…編組
14A…膨らみ
15…シース
16…シールド層
16A…シールド層の先端部
17…スリーブ
18…スリーブ本体
19…合わせ縁
21…大径筒部
22…小径筒部
23…受け面
24…突部
24A…頂部
25…凹部
26…副凹部
27…段差
30…端子
31…バレル
32…シース用バレル
33…端子本体
34…連結部
35…誘電体
36…収容部
37…内導体端子
38…芯線接続部
39…嵌合空間
41…バレル片
42…シース用バレル片
50…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6