(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 1/06 20060101AFI20240214BHJP
H01H 50/38 20060101ALI20240214BHJP
H01H 50/54 20060101ALI20240214BHJP
H01H 9/44 20060101ALI20240214BHJP
H01H 9/42 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01H1/06 M
H01H50/38 H
H01H50/54 R
H01H50/54 B
H01H9/44 A
H01H9/42
(21)【出願番号】P 2020133166
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100206760
【氏名又は名称】黒川 惇
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 亮太
(72)【発明者】
【氏名】大塚 航平
(72)【発明者】
【氏名】西田 剛
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-007372(JP,U)
【文献】特開昭59-221918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 1/06
H01H 50/38
H01H 50/54
H01H 9/44
H01H 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1開閉用固定接点と、第1通電用固定接点とを含む第1固定端子と、
第2開閉用固定接点と、第2通電用固定接点とを含む第2固定端子と、
前記第1開閉用固定接点及び前記第2開閉用固定接点に接触可能な1対の開閉用可動接点を含み、前記第1開閉用固定接点及び前記第2開閉用固定接点に前記1対の開閉用可動接点が接触する接触方向と開離する開離方向とに移動可能に設けられた第1可動接触片と、
前記第1通電用固定接点及び前記第2通電用固定接点に接触可能な1対の通電用可動接点を含み、前記接触方向と前記開離方向とに移動可能に設けられた第2可動接触片と、
を備え、
前記第1可動接触片及び前記第2可動接触片が前記接触方向に移動するときにおいて、前記1対の通電用可動接点は、前記1対の開閉用可動接点が前記第1開閉用固定接点及び前記第2開閉用固定接点に接触した後で、前記第1通電用固定接点及び前記第2通電用固定接点に接触し、
前記1対の開閉用可動接点の間の電気経路は、前記1対の通電用可動接点の間の電気経路よりも電気抵抗が大き
く、
前記第1可動接触片は、前記第2可動接触片の長手方向に延びる延伸部と、前記延伸部の両端から前記延伸部と交差する方向に延び前記第2可動接触片と前記長手方向に重なる1対のアーム部とを含む、
電磁継電器。
【請求項2】
前記1対の開閉用可動接点が前記第1開閉用固定接点及び第2開閉用固定接点に接触した状態、且つ、前記1対の通電用可動接点が前記第1通電用固定接点及び前記第2通電用固定接点に接触した状態から前記第1可動接触片及び前記第2可動接触片が前記開離方向に移動するとき、前記1対の開閉用可動接点は、前記1対の通電用可動接点が前記第1
通電用固定接点及び第2
通電用固定接点から開離した後で、前記第1開閉用固定接点及び第2開閉用固定接点から開離する、
請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記第1可動接触片は、前記第2可動接触片よりも電気抵抗が大きい、
請求項1又は2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記第1可動接触片及び前記第2可動接触片を移動させる可動機構をさらに備え、
前記可動機構は、前記第1可動接触片と前記第2可動接触片とを一体的に移動させる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電磁継電器。
【請求項5】
前記1対の開閉用可動接点が前記第1開閉用固定接点及び前記第2開閉用固定接点に接触した後の前記第1可動接触片及び前記第2可動接触片の前記接触方向への移動は、前記第1可動接触片が弾性変形することで許容される、
請求項4に記載の電磁継電器。
【請求項6】
前記1対の開閉用可動接点が前記第1開閉用固定接点及び前記第2開閉用固定接点に接触した後の前記第1可動接触片及び前記第2可動接触片の前記接触方向への移動は、前記第1固定端子及び前記第2固定端子が弾性変形することで許容される、
請求項4に記載の電磁継電器。
【請求項7】
前記1対の開閉用可動接点うち前記第1開閉用固定接点に接触可能な第1開閉用可動接点と前記第1開閉用固定接点との間で生じるアークにローレンツ力を作用させる磁界を発生させる磁石部をさらに備え、
前記磁石部は、前記1対の通電用可動接点のうち前記第1通電用固定接点に接触可能な第1通電用可動接点及び前記第1通電用固定接点から前記アークが離れる方向に前記ローレンツ力を作用させるように設けられている、
請求項1から6のいずれか1項に記載の電磁継電器。
【請求項8】
前記磁石部は、前記アークに対して前記1対の通電用可動接点の間の前記電気経路から離れる方向に前記ローレンツ力を作用させるように設けられている、
請求項7に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気回路を開閉する電磁継電器が知られている。例えば、特許文献1の電磁継電器は、固定接点を含む固定端子と、可動接点を含む可動接触片とを備えている。可動接点は、固定接点に接触可能であり、可動接点が固定接点に接触又は固定接点から開離することで、電気回路が開閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁継電器は、固定接点と可動接点とが接触するときにおいて、例えば、接点間に流れる突入電流によって接点間にアークが発生して接点が溶着するおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、電磁継電器において、接点の溶着を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電磁継電器は、第1固定端子と、第2固定端子と、第1可動接触片と、第2可動接触片とを備える。第1固定端子は、第1開閉用固定接点と、第1通電用固定接点とを含む。第2固定端子は、第2開閉用固定接点と、第2通電用固定接点とを含む。第1可動接触片は、第1開閉用固定接点及び第2開閉用固定接点に接触可能な1対の開閉用可動接点を含む。第1可動接触片は、第1開閉用固定接点及び第2開閉用固定接点に1対の開閉用可動接点が接触する接触方向と開離する開離方向とに移動可能に設けられる。第2可動接触片は、第1通電用固定接点及び第2通電用固定接点に接触可能な1対の通電用可動接点を含む。第2可動接触片は、接触方向と開離方向とに移動可能に設けられる。第1可動接触片及び第2可動接触片が接触方向に移動するとき、1対の通電用可動接点は、1対の開閉用可動接点が第1開閉用固定接点及び第2開閉用固定接点に接触した後で、第1通電用固定接点及び第2通電用固定接点に接触する。1対の開閉用可動接点の間の電気経路は、1対の通電用可動接点の間の電気経路よりも電気抵抗が大きい。
【0007】
この電磁継電器では、1対の通電用可動接点は、1対の開閉用可動接点が第1開閉用固定接点及び第2開閉用固定接点に接触した後で、第1通電用固定接点及び第2通電用固定接点に接触する。また、1対の開閉用可動接点の間の電気経路は、1対の通電用可動接点の間の電気経路よりも電気抵抗が大きい。これにより、1対の通電用可動接点が第1開閉用固定接点及び第2開閉用固定接点に接触するときに、1対の開閉用可動接点の間の電気経路の電気抵抗によって通電用の接点間に生じるアークを抑制することができる。その結果、通電用の接点が溶融して溶着することを抑制することができる。また、電気経路を開閉用と通電用とに分けることで、それぞれの電気経路に適した経路設計、或いは接点部設計ができるので、設計の自由度が高くなる。
【0008】
1対の開閉用可動接点が第1開閉用固定接点及び第2開閉用固定接点に接触した状態、且つ、1対の通電用可動接点が第1通電用固定接点及び第2通電用固定接点に接触した状態から第1可動接触片及び第2可動接触片が開離方向に移動するとき、1対の開閉用可動接点は、1対の通電用可動接点が第1開閉用固定接点及び第2開閉用固定接点から開離した後で、第1開閉用固定接点及び第2開閉用固定接点から開離してもよい。この場合は、1対の通電用可動接点を第1通電用固定接点及び第2通電用固定接点から開離させるときの必要なアーク長を短くすることができるので、電磁継電器のコンパクト化を図ることができる。
【0009】
第1可動接触片は、第2可動接触片よりも電気抵抗が大きくてもよい。この場合は、簡単な構成で、1対の開閉用可動接点の間の電気経路の電気抵抗を1対の通電用可動接点の間の電気経路の電気抵抗よりも大きくすることができる。
【0010】
電磁継電器は、第1可動接触片及び第2可動接触片を移動させる可動機構をさらに備えもよい。可動機構は、第1可動接触片と第2可動接触片とを一体的に移動させてもよい。この場合、1対の開閉用可動接点が第1開閉用固定接点及び第2開閉用固定接点に接触する前に、1対の通電用可動接点が第1通電用固定接点及び第2通電用固定接点に接触することを防止することができる。
【0011】
1対の開閉用可動接点が第1開閉用固定接点及び第2開閉用固定接点に接触した後の第1可動接触片及び第2可動接触片の接触方向への移動は、第1可動接触片が弾性変形することで許容されてもよい。この場合は、簡単な構成で、1対の開閉用可動接点が第1開閉用固定接点及び第2開閉用固定接点に接触した後で、1対の通電用可動接点を第1通電用固定接点及び第2通電用固定接点に接触させることができる。
【0012】
1対の開閉用可動接点が第1開閉用固定接点及び第2開閉用固定接点に接触した後の第1可動接触片及び第2可動接触片の接触方向への移動は、第1固定端子及び第2固定端子が弾性変形することで許容されてもよい。この場合は、簡単な構成で、1対の開閉用可動接点が第1開閉用固定接点及び第2開閉用固定接点に接触した後で、1対の通電用可動接点を第1通電用固定接点及び第2通電用固定接点に接触させることができる。
【0013】
電磁継電器は、1対の開閉用可動接点うち第1開閉用固定接点に接触可能な第1開閉用可動接点と第1開閉用固定接点との間で生じるアークにローレンツ力を作用させる磁界を発生させる磁石部をさらに備えてもよい。磁石部は、1対の通電用可動接点のうち第1通電用固定接点に接触可能な第1通電用可動接点と第1通電用固定接点とからアークが離れる方向にローレンツ力を作用させるように設けられてもよい。この場合は、第1開閉用可動接点と第1開閉用固定接点との間で生じたアークによって第1通電用可動接点と第1通電用固定接点が溶融することを抑制することができる。
【0014】
磁石部は、アークに対して1対の通電用可動接点の間の電気経路から離れる方向にローレンツ力を作用させるように設けられてもよい。この場合は、第1開閉用可動接点と第1開閉用固定接点との間で生じたアークが1対の通電用可動接点の間の電気経路に干渉することを抑制することができる。
【0015】
第1可動接触片は、第2可動接触片の長手方向に延びる延伸部と、延伸部の両端から延伸部と交差する方向に延び第2可動接触片と長手方向に重なる1対のアーム部とを含んでもよい。この場合は、電磁継電器のコンパクト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電磁継電器において、接点の溶着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】電磁継電器の内部を側方から見た模式図である。
【
図2】電磁継電器の内部を上方から見た模式図である。
【
図3】可動機構が第1接触位置にあるときの接点装置周辺を上方から見た模式図である。
【
図4】可動機構が第2接触位置にあるときの接点装置周辺を上方から見た模式図である。
【
図5】可動機構が開離位置にあるときの接点装置周辺を上方から見た模式図である。
【
図6】変形例に係る接点装置周辺を上方から見た模式図である。
【
図7】変形例に係る接点装置周辺を上方から見た模式図である。
【
図8】変形例に係る電磁継電器の内部を接触方向から見た模式図である。
【
図9】変形例に係る電磁継電器の内部を側方から見た模式図である。
【
図10】変形例に係る電磁継電器の内部を接触方向から見た模式図である。
【
図11】変形例に係る接点装置周辺を上方から見た模式図である。
【
図12】変形例に係る接点装置周辺を上方から見た模式図である。
【
図13】変形例に係る接点装置周辺を側方から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一態様に係る電磁継電器の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、電磁継電器100の内部を側方から見た模式図である。なお、図面を参照するときにおいて、説明を分かり易くするために
図1における上側を「上」、下側を「下」、右側を「接触方向Y1」、左側を「開離方向Y2」、
図1の紙面と直交する方向をX方向として説明する。また、接触方向Y1及び開離方向Y2に平行な方向をY方向と呼ぶ。これらの方向は、説明の便宜上、定義されるものであって、電磁継電器100の配置方向を限定するものではない。
【0019】
電磁継電器100は、ケース2と、接点装置3と、駆動装置4とを備えている。ケース2は、樹脂などの絶縁性を有する材料で形成されている。ケース2は、ベース2aと、カバー2bとを含む。
【0020】
ベース2aは、接点装置3と駆動装置4とを支持する。カバー2bは、下方に向けて開口する箱型の部材であり、ベース2aを上方から覆うようにベース2aに固定されている。
【0021】
図2は、電磁継電器100の内部を上方から見た模式図である。接点装置3は、ベース2aに支持されている。接点装置3は、ケース2に収容されている。接点装置3は、固定端子6と、固定端子7と、第1可動接触片11と、第2可動接触片12と、可動機構13とを含む。固定端子6,7及び第2可動接触片12は、板状の端子であり、銅などの導電性を有する材料で形成されている。
【0022】
固定端子6は、第1固定端子の一例である。固定端子6は、ベース2aに支持されている。固定端子6は、例えば、ベース2aに圧入固定されている。固定端子6は、一部がケース2内に配置される。固定端子6は、第1固定接点6aと、第2固定接点6bと、外部接続部6cとを含む。第1固定接点6aは、第1開閉用固定接点の一例である。第2固定接点6bは、第1通電用固定接点の一例である。
【0023】
第1固定接点6a及び第2固定接点6bは、ケース2内に配置されている。第1固定接点6a及び第2固定接点6bは、固定端子6の開離方向Y2側の面に配置されている。第1固定接点6aは、固定端子6と一体である。本実施形態では、第1固定接点6aは、固定端子6の開離方向Y2側の面の一部によって構成されている。
【0024】
第2固定接点6bは、第1固定接点6aとX方向に離れて配置されている。第2固定接点6bは、第1固定接点6aよりも内側に配置されている。第2固定接点6bは、固定端子6と別体である。第2固定接点6bは、固定端子6の開離方向Y2側の面から開離方向Y2に突出している。外部接続部6cは、ケース2から外部に突出しており、図示しない外部機器と電気的に接続される。
【0025】
固定端子7は、第2固定端子の一例である。固定端子7は、固定端子6と同様の形状である。固定端子7は、固定端子6とX方向に離れて配置されている。固定端子7は、第3固定接点7aと、第4固定接点7bと、図示しない外部接続部とを含む。第3固定接点7aは、第2開閉用固定接点の一例である。第3固定接点7aは、第1固定接点6aと同様の構成である。第4固定接点7bは、第2通電用固定接点の一例である。第4固定接点7bは、第2固定接点6bと同様の構成である。
【0026】
第1可動接触片11は、例えば、弾性変形可能な板バネで構成されている。第1可動接触片11は、可動機構13に支持されている。第1可動接触片11は、固定端子6,7とY方向に対向して配置されている。第1可動接触片11は、接触方向Y1と開離方向Y2とに移動可能に設けられる。接触方向Y1は、後述する1対の開閉用可動接点16a,16bが第1固定接点6a及び第3固定接点7aに近づく方向である。開離方向Y2は、1対の開閉用可動接点16a,16bが第1固定接点6a及び第3固定接点7aから離れる方向である。
【0027】
第1可動接触片11は、延伸部11aと、第1アーム部11bと、第2アーム部11cと、1対の開閉用可動接点16a,16bとを含む。延伸部11aは、第2可動接触片12の長手方向(X方向)に延びている。延伸部11aは、可動機構13をX方向に貫通している。第1アーム部11b及び第2アーム部11cは、X方向と交差する方向にのびている。第1アーム部11b及び第2アーム部11cは、第2可動接触片12とX方向に重なる。第1アーム部11bは、延伸部11aの一端から湾曲して固定端子6に向かって延びている。第2アーム部11cは、延伸部11aの他端から湾曲して固定端子7に向かって延びている。第1アーム部11b及び第2アーム部11cは、1対のアーム部の一例である。
【0028】
1対の開閉用可動接点16a,16bは、第1固定接点6a及び第3固定接点7aに接触可能である。以下では、1対の開閉用可動接点16a,16bの一方の接点を第1可動接点16a、他方の接点を第3可動接点16bと記す。第1可動接点16aは、第1開閉用可動接点の一例である。第1可動接点16aは、第1アーム部11bの先端に配置されている。第1可動接点16aは、第1固定接点6aに接触可能である。第1可動接点16aは、第1固定接点6aとY方向に対向する位置に配置されている。第1可動接点16aは、第1可動接触片11と一体である。本実施形態では、第1可動接点16aは、第1可動接触片11の接触方向Y1側の面の一部によって構成されている。なお、第1可動接点16aは、第1可動接触片11と別体であってもよい。
【0029】
第3可動接点16bは、第2アーム部11cの先端に配置されている。第3可動接点16bは、第3固定接点7aに接触可能である。第3可動接点16bは、第3固定接点7aとY方向に対向する位置に配置されている。第3可動接点16bは、第1可動接点16aと同様に第1可動接触片11と一体であるが、第1可動接触片11と別体であってもよい。
【0030】
第2可動接触片12は、第1可動接触片11よりも接触方向Y1側で可動機構13に支持されている。第2可動接触片12は、第1可動接触片11の延伸部11aとY方向に重なる。第2可動接触片12は、X方向において、第1可動接触片11の第1アーム部11bと第2アーム部11cとの間に配置されている。第2可動接触片12は、固定端子6,7とY方向に対向して配置されている。第2可動接触片12は、接触方向Y1と開離方向Y2とに移動可能に設けられる。
【0031】
第2可動接触片12は、1対の通電用可動接点17a,17bを含む。以下では、1対の通電用可動接点17a,17bの一方の接点を第2可動接点17a、他方の接点を第4可動接点17bと記す。第2可動接点17aは、第1通電用可動接点の一例である。第2可動接点17aは、第2固定接点6bとY方向に対向する位置に配置されている。第2可動接点17aは、第2固定接点6bと接触可能である。第2可動接点17aは、第2可動接触片12と別体である。第2可動接点17aは、第2可動接触片12の接触方向Y1側の面から接触方向Y1に突出している。なお、第2可動接点17aは、第2可動接触片12と一体であってもよい。
【0032】
第4可動接点17bは、第2可動接点17aとX方向に離れて配置されている。第4可動接点17bは、第4固定接点7bとY方向に対向する位置に配置されている。第4可動接点17bは、第4固定接点7bと接触可能である。第4可動接点17bは、第2可動接触片12と別体である。第4可動接点17bは、第2可動接触片12の接触方向Y1側の面から接触方向Y1に突出している。なお、第4可動接点17bは、第2可動接触片12と一体であってもよい。
【0033】
可動機構13は、接触方向Y1と開離方向Y2とに移動可能に設けられる。可動機構13は、駆動装置4を介して第1可動接触片11と第2可動接触片12とを接触方向Y1と開離方向Y2とに一体的に移動させる。可動機構13は、
図2に示す開離位置から接触方向Y1に移動した
図3に示す第1接触位置よりもさらに接触方向Y1側の第2接触位置までの間を移動可能に設けられる。
【0034】
開離位置では、第1固定接点6a及び第3固定接点7aが1対の開閉用可動接点16a,16bから開離し、第2固定接点6b及び第4固定接点7bが1対の通電用可動接点17a,17bから開離した状態にある。第1接触位置では、第1固定接点6a及び第3固定接点7aが1対の開閉用可動接点16a,16bに接触し、第2固定接点6b及び第4固定接点7bが1対の通電用可動接点17a,17bから開離した状態にある。第2接触位置では、第1固定接点6a及び第3固定接点7aが1対の開閉用可動接点16a,16bに接触し、第2固定接点6b及び第4固定接点7bが1対の通電用可動接点17a,17bに接触した状態にある。
【0035】
可動機構13は、可動部材13aを含む。可動部材13aは、樹脂などの絶縁性を有する材料で形成されている。可動部材13aは、第1可動接触片11及び第2可動接触片12を支持している。可動部材13aは、駆動装置4に接続されている。
【0036】
駆動装置4は、電磁力によって可動機構13を接触方向Y1及び開離方向Y2に移動させる。これにより、可動機構13が開離位置から第2接触位置までの間を移動する。駆動装置4は、従来と同様の構成であり、図示しないスプール、コイル、可動鉄心、固定鉄心、ヨーク、復帰ばねなどを含む。可動鉄心は、可動機構13に接続されており、接触方向Y1と開離方向Y2とに移動可能である。
【0037】
ここで、
図5に拡大して示すように、可動機構13が開離位置にあるとき、Y方向における第1固定接点6aと第1可動接点16aとの間の距離D1は、Y方向における第2固定接点6bと第2可動接点17aとの間の距離D2よりも小さい。同様に、可動機構13が開離位置にあるとき、Y方向における第3固定接点7aと第3可動接点16bとの間の距離D3は、Y方向における第4固定接点7bと第4可動接点17bとの間の距離D4よりも小さい。距離D1は、距離D3と同程度である。距離D2は、距離D4と同程度である。
【0038】
次に、電磁継電器100の動作について説明する。駆動装置4が励磁されていない状態では、可動機構13が
図2に示す開離位置にある。駆動装置4が励磁されると、可動機構13が開離位置から
図3に示す第1接触位置に移動する。詳細には、コイルに電圧が印加されると、可動鉄心が復帰ばねの弾性力に抗して接触方向Y1に移動する。この可動機構13の移動に伴い、第1可動接触片11及び第2可動接触片12が可動機構13とともに接触方向Y1に移動する。これにより、1対の開閉用可動接点16a,16bが第1固定接点6a及び第3固定接点7aに接触する。その後、可動機構13は、さらに接触方向Y1に移動して、第1接触位置から
図4に示す第2接触位置に移動する。
【0039】
可動機構13が第1接触位置から第2接触位置に移動するときには、第1可動接触片11の第1アーム部11b及び第2アーム部12cが弾性変形することで、可動機構13の接触方向Y1、第1可動接触片11及び第2可動接触片12の接触方向Y1への移動が許容される。このとき、第1固定接点6a及び第3固定接点7aと1対の開閉用可動接点16a,16bとの接触状態は維持される。可動機構13が第1接触位置から第2接触位置に移動することで、1対の通電用可動接点17a,17bが第2固定接点6b及び第4固定接点7bに接触する。これにより、第1可動接触片11と第2可動接触片12とが固定端子6,7に対して電気的に並列に接続される。
【0040】
したがって、可動機構13が開離位置から第2接触位置に移動するときは、1対の開閉用可動接点16a,16bが第1固定接点6a及び第3固定接点7aに接触した後で、1対の通電用可動接点17a,17bが第2固定接点6b及び第4固定接点7bに接触する。一方、復帰時には、上述した動作と逆の動きをする。すなわち、コイルへの電圧の印加が停止されて可動機構13が第2接触位置から第1接触位置を経て開離位置に移動するときは、1対の通電用可動接点17a,17bが第2固定接点6b及び第4固定接点7bから開離した後で、1対の開閉用可動接点16a,16bが第1固定接点6a及び第3固定接点7aから開離する。
【0041】
ここで、1対の開閉用可動接点16a,16bの間の電気経路は、1対の通電用可動接点17a,17bの間の電気経路よりも電気抵抗が大きい。第1対の開閉用可動接点16a,16bの間の電気経路は、開閉用の電気経路であり、第1可動接触片11を通る電気経路である。1対の通電用可動接点17a,17bの間の電気経路は、通電用の電気経路であり、第2可動接触片12を通る電気経路である。例えば、第1可動接触片11は、第2可動接触片12よりも電気抵抗が大きい。第1可動接触片11は、第2可動接触片12よりも電気抵抗が大きい材料で形成されている。第1可動接触片11は、例えば、Cu-Ni合金、Cu-Mn-Ni合金、Ni-Cr合金、Ni-Cr-Al合金などの材料で形成されている。
【0042】
上記構成の電磁継電器100では、1対の開閉用可動接点16a,16bの間の電気経路は、1対の通電用可動接点17a,17bの間の電気経路よりも電気抵抗が大きいので、1対の通電用可動接点17a,17bが第2固定接点6b及び第4固定接点7bに接触するときに、1対の開閉用可動接点16a,16bの間の電気経路の電気抵抗によって1対の通電用可動接点17a,17bと第2固定接点6b及び第4固定接点7bとの間に生じるアークを抑制することができる。その結果、接点が溶融して溶着することを抑制することができる。また、電気経路を開閉用と通電用とに分けることで、それぞれの電気経路に適した経路設計、或いは接点部設計ができるので、設計の自由度が高くなる。また、1対の通電用可動接点17a,17bを第2固定接点6b及び第4固定接点7bから開離させるときの必要なアーク長を短くすることができるので、電磁継電器100のコンパクト化を図ることができる。
【0043】
以上、本発明の一態様に係る電磁継電器の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、ケース2、接点装置3、駆動装置4の構成が変更されてもよい。
【0044】
前記実施形態では、第1可動接触片11が弾性変形する構成であったが、第1可動接触片11が弾性変形する構成でなくてもよい。
図6に示すように、固定端子6,7側が弾性変形する構成であってもよい。例えば、固定端子6において、少なくとも第1固定接点6aが支持される支持部6dが弾性を有する構成であってもよい。同様に、固定端子7において、少なくとも第3固定接点7aが支持される支持部7dが弾性を有する構成であってもよい。或いは、バネ部材などによって第1可動接触片11及び第2可動接触片12の一方が他方に対して相対的に移動するように構成してもよい。例えば、可動機構13が第1接触位置から第2接触位置に移動する時に、第2可動接触片12のみが接触方向Y1に移動するような構成であってもよい。
【0045】
前記実施形態では、第1可動接触片11が第2可動接触片12よりも電気抵抗が大きい材料で形成されていたが、第1可動接触片11は、第2可動接触片12と同じ材料で形成されてもよい。この場合、第1可動接触片11は、例えば温度の上昇に伴い抵抗値が上昇するPTCサーミスタを含んでもよい。
【0046】
前記実施形態では、第1固定接点6aが固定端子6と一体であったが、
図7に示すように、第1固定接点6aは、固定端子6と別体であってもよい。同様に、第3固定接点7aは、固定端子7と別体であってもよい。また、前記実施形態では、第1可動接点16a及び第3可動接点16bが第1可動接触片11と一体であったが、第1可動接点16a及び第3可動接点16bは、第1可動接触片11と別体であってもよい。
【0047】
図8及び
図9に示すように、いわゆるヒンジ型の電磁継電気に本発明を適用してもよい。例えば、可動機構13は、駆動装置4に対して回動することで第1可動接触片11及び第2可動接触片12を接触方向Y1及び開離方向Y2に移動させる構成であってもよい。
図8及び
図9では、前記実施形態の構成と対応する構成に同じ符号を付している。ここでは、第1可動接触片11及び第2可動接触片12は、略U字形状であるが、
図10に示すように、一方向に延びる板状の端子で構成されてもよい。なお、
図8及び
図10では、固定端子6,7の図示を省略している。
【0048】
図11に示すように、電磁継電器100は、磁石部20をさらに備えてもよい。磁石部20は、第1固定接点6aと第1可動接点16aとの間で生じるアークにローレンツ力を作用させる磁界を発生させる。磁石部20は、第1固定接点6aと第1可動接点16aとの間で生じるアーク対して、第2固定接点6b及び第2可動接点17aから離れる方向にローレンツ力を作用させるように設けられている。磁石部20は、少なくとも1つの永久磁石によって構成されている。
【0049】
例えば、
図11に示す例では、通電経路に極性があり、固定端子6側がプラス側、固定端子7側がマイナス側である。したがって、通電時には、第2固定接点6bから第2可動接点17aに向かって電流が流れる。磁石部20は、
図11の紙面の奥側から手前側に向かう方向に磁束が流れるように配置されている。この場合は、第1固定接点6aと第1可動接点16aとの間で生じるアークに対して第2固定接点6b及び第2可動接点17aから離れる方向にローレンツ力F1が作用する。なお、
図11に示す例では、磁石部20によって、第2固定接点6bと第2可動接点17aとの間に生じるアークにもローレンツ力F1が作用する。また。第4固定接点7bと第4可動接点17bとの間、及び第4固定接点7bと第4可動接点17bとの間に生じるアークに対しては、第4固定接点7b及び第4可動接点17bから離れる方向にローレンツ力F2が作用する。
【0050】
図12及び
図13に示すように、磁石部20は、第1固定接点6aと第1可動接点16aとの間で生じるアークに対して、1対の通電用可動接点17a,17bの間の電気経路から離れる方向にローレンツ力F3,F4を作用させるように設けられてもよい。
図12及び
図13に示す例では、磁石部20は、第3可動接点16b側から第1可動接点16a側に向かう方向に磁束が流れるように配置されている。なお、磁石部20は、第1可動接点16a側から第3可動接点16b側に向かう方向に磁束が流れるように配置されてもよいし、第1可動接点16a側と第3可動接点16b側とで磁束の流れる向きが異なるように配置されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、本発明によれば、電磁継電器において、接点の溶着を抑制することができる。
【符号の説明】
【0052】
6 第1固定端子
6a 第1開閉用固定接点
6b 第1通電用固定接点
7 第2固定端子
7a 第2開閉用固定接点
7b 第2通電用固定接点
11 第1可動接触片
11a 延伸部
11b,11c 1対のアーム部
12 第2可動接触片
13 可動機構
16a,16b 1対の開閉用可動接点
17a,17b 1対の通電用可動接点
20 磁石部
100 電磁継電器