(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】有機溶剤回収システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/44 20060101AFI20240214BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20240214BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B01D53/44 130
B01D53/44 110
B01D53/81 ZAB
B01D53/96
(21)【出願番号】P 2020144541
(22)【出願日】2020-08-28
(62)【分割の表示】P 2019236744の分割
【原出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 勉
(72)【発明者】
【氏名】田中 将博
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-005956(JP,A)
【文献】特開2002-186821(JP,A)
【文献】特開2007-044595(JP,A)
【文献】特開2011-062645(JP,A)
【文献】特開2017-170427(JP,A)
【文献】国際公開第2011/021637(WO,A1)
【文献】特開2012-130875(JP,A)
【文献】特開2001-149732(JP,A)
【文献】特開昭63-059331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/73,53/74-53/85,53/92,53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産設備から排出される有機溶剤を含有する排ガスから前記有機溶剤を回収する有機溶剤回収システムであって、
前記有機溶剤を含有する前記排ガスを冷却することで、前記有機溶剤を液化凝縮し、前記有機溶剤の濃度が低減された冷却処理ガスとして排出する冷却凝縮装置と、
前記冷却処理ガスを通流させる第一通流経路と、
前記第一通流経路から導入された前記冷却処理ガスに含まれる前記有機溶剤を第一吸着素子にて吸着して前記有機溶剤の濃度が更に低減された第一処理ガスとして排出し、高温ガスを導入して前記第一吸着素子から前記有機溶剤を脱着して第一脱着ガスとして排出する第一濃縮装置と、
前記第一処理ガスの一部を通流させる第二通流経路と、
前記第二通流経路から導入された前記第一処理ガスに含まれる前記有機溶剤を第二吸着素子にて吸着して前記有機溶剤の濃度が更に低減された第二処理ガスとして排出し、高温ガスを導入して前記第二吸着素子から前記有機溶剤を脱着して第二脱着ガスとして排出する第二濃縮装置と、
前記第一脱着ガスおよび前記第二脱着ガスを前記冷却凝縮装置に戻す第三通流経路と、を備えた、有機溶剤回収システム。
【請求項2】
前記冷却凝縮装置は、前記冷却後の前記排ガスを接触させることで凝縮した前記有機溶剤と前記冷却処理ガスとを分離させる網目状構造体と、前記網目状構造体を通過後の前記冷却処理ガスを一定時間貯留させるチャンバーと、をさらに備え、
前記第一通流経路は、前記チャンバーの天井部から前記冷却処理ガスを前記第一濃縮装置に導入するように設置されている、請求項1に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項3】
前記チャンバーは、前記網目状構造体から排出される前記冷却処理ガスの排気方向と
対向するように前記第一通流経路の吸込みを可能にする仕切部を有する、請求項2に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項4】
前記冷却凝縮装置は、冷媒との熱交換により前記冷却を行う熱交換器をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項5】
前記第二通流経路から排出される前記第一処理ガスの一部以外である前記第一処理ガスの残部を、前記生産設備に戻す返却経路をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項6】
前記熱交換器は、第一熱交換器と、前記第一熱交換器の前段に設けた第二熱交換器とを含み、
前記第二熱交換器は、前記冷却凝縮装置に導入される前記排ガスを、前記第一処理ガスの残部との熱交換により冷却する、請求項
4に記載の有機溶剤回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤を含有する排ガスから有機溶剤を濃縮および回収する有機溶剤回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機溶剤を含有する排ガスから有機溶剤を回収する処理システムとして、冷却凝縮装置および吸着素子を使用した濃縮装置を組み合わせたものが知られている。冷却凝縮装置は、有機溶剤を凝縮回収し、排ガス中の有機溶剤濃度を低減させる。吸着素子を使用した濃縮装置は、冷却凝縮装置から排出された有機溶剤濃度が低減された排ガスを吸着素子に接触させて有機溶剤を吸着させて更に排ガス中の有機溶剤濃度を低減させるとともに、有機溶剤を吸着した吸着材に高温のガスを吹き付けて有機溶剤を脱着させて高濃度の有機溶剤を含有する脱着ガスとして排出する。脱着ガスは冷却凝縮装置に返送され、再処理される(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-101553号公報
【文献】特開2017-991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生産設備においては、一定量のクリーンガスが補給される。従って、補給ガス分の排ガスが外部環境へ排出される。近年、世界的な排ガス規制に伴い、極低濃度までの有機溶剤の除去が求められており、高度な処理効率が求められる。
【0005】
本発明は上記課題を背景になされたもので、排ガスから有機溶剤をより高効率に回収することが可能な有機溶剤回収システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、ついに本発明を完成するに到った。即ち本発明は、以下の通りである。
1.生産設備から排出される有機溶剤を含有する排ガスから前記有機溶剤を回収する有機溶剤回収システムであって、前記有機溶剤を含有する前記排ガスを冷却することで、前記有機溶剤を液化凝縮し、前記有機溶剤の濃度が低減された冷却処理ガスとして排出する冷却凝縮装置と、前記冷却処理ガスを通流させる第一通流経路と、前記第一通流経路から導入された前記冷却処理ガスに含まれる前記有機溶剤を第一吸着素子にて吸着して前記有機溶剤の濃度が更に低減された第一処理ガスとして排出し、高温ガスを導入して前記第一吸着素子から前記有機溶剤を脱着して第一脱着ガスとして排出する第一濃縮装置と、前記第一処理ガスの一部を通流させる第二通流経路と、前記第二通流経路から導入された前記第一処理ガスに含まれる前記有機溶剤を第二吸着素子にて吸着して前記有機溶剤の濃度が更に低減された第二処理ガスとして排出し、高温ガスを導入して前記第二吸着素子から前記有機溶剤を脱着して第二脱着ガスとして排出する第二濃縮装置と、前記第一脱着ガスおよび前記第二脱着ガスを前記冷却凝縮装置に戻す第三通流経路と、を備えた、有機溶剤回収システム。
2.前記冷却凝縮装置は、前記冷却後の前記排ガスを接触させることで凝縮した前記有機溶剤と前記冷却処理ガスとを分離させる網目状構造体と、前記網目状構造体を通過後の前記冷却処理ガスを一定時間貯留させるチャンバーと、をさらに備え、前記第一通流経路は、前記チャンバーの天井部から前記冷却処理ガスを前記第一濃縮装置に導入するように設置されている、上記1に記載の有機溶剤回収システム。
3.前記チャンバーは、前記網目状構造体から排出される前記冷却処理ガスの排気方向と対向するように前記第一通流経路の吸込みを可能にする仕切部を有する、上記2に記載の有機溶剤回収システム。
4.前記冷却凝縮装置は、冷媒との熱交換により前記冷却を行う熱交換器をさらに備える、上記1から上記3のいずれか1つに記載の有機溶剤回収システム。
5.前記第二通流経路から排出される前記第一処理ガスの一部以外である前記第一処理ガスの残部を、前記生産設備に戻す返却経路をさらに備える、上記1から上記4のいずれか1つに記載の有機溶剤回収システム。
6.前記熱交換器は、第一熱交換器と、前記第一熱交換器の前段に設けた第二熱交換器とを含み、前記第二熱交換器は、前記冷却凝縮装置に導入される前記排ガスを、前記第一処理ガスの残部との熱交換により冷却する、上記4または上記5に記載の有機溶剤回収システム。
また、以下の構成を備えてもよい。
1.有機溶剤を含有する排ガスを冷却することで、前記有機溶剤を液化凝縮し、前記有機溶剤の濃度が低減された冷却処理ガスとして排出する冷却凝縮装置と、前記冷却処理ガスの一部を通流させる第一通流経路と、吸着素子を有し、前記第一通流経路から導入された前記冷却処理ガスに含まれる前記有機溶剤を前記吸着素子にて吸着して前記有機溶剤の濃度が更に低減された清浄ガスとして排出し、高温ガスを導入して前記吸着素子から前記有機溶剤を脱着して脱着ガスとして排出する濃縮装置と、前記脱着ガスを前記冷却凝縮装置に導入する第二通流経路と、を備えた有機溶剤回収システムにおいて、前記冷却凝縮装置は、冷却後の前記排ガスを接触させることで凝縮した前記有機溶剤と前記冷却処理ガスとを分離させる網目状構造体と、当該網目状構造体を通過後の前記冷却処理ガスを一定時間貯留させるチャンバーとを備え、前記第一通流経路は、前記チャンバーの天井部から前記冷却処理ガスの一部を前記濃縮装置に導入するように設置されていることを特徴とする有機溶剤回収システム。
2.前記チャンバーは、前記網目状構造体から排出される冷却処理ガスの排気方向と対向するように前記第一通流経路の吸込みを可能にする仕切部を有することを特徴とする上記1に記載の有機溶剤回収システム。
3.前記冷却凝縮装置は、冷媒との熱交換により前記冷却を行う熱交換器を備えることを特徴とする上記1または2に記載の有機溶剤回収システム。
4.前記第二通流経路は、前記脱着部が前記脱着ガスと前記排気ガスとの合流位置より上部に設置されていることを特徴とする上記1から3のいずれか1つに記載の有機溶剤回収システム。
5.前記排ガスは生産設備から排出されるガスであり、前記第一通流経路から排出される前記冷却処理ガスの一部以外である前記冷却処理ガスの残部を、前記生産設備に戻す返却経路を備えていることを特徴とする上記1から4のいずれか1つに記載の有機溶剤回収システム。
6.前記冷却凝縮装置に導入される排ガスを、前記冷却処理ガスの残部との熱交換により冷却する第二熱交換器を、前記第一熱交換器の前段に備えていることを特徴とする上記5に記載の有機溶剤回収システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明による有機溶剤回収システムは、上記構成により、高効率に有機溶剤の回収および外部環境への有機溶剤の排出量を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態における有機溶剤回収システムの構成図の一例である。
【
図2】本発明の実施の形態における有機溶剤回収システムの別の構成図の一例である。
【
図3】本発明の実施の形態における有機溶剤回収システムのさらに別の構成図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す図の実施の形態においては、同一または対応する部分については、適宜省略し、その説明についても繰り返さないことにする。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態における有機溶剤回収システム1の構成図である。有機溶剤回収システム1は、冷却凝縮装置100、濃縮装置200、第一通流経路300、第二通流経路400とで構成されている。
【0011】
冷却凝縮装置100は、冷却部110と分離部120およびチャンバー123を有している。有機溶剤を含有する排ガス(G1)は冷却部110を通過することによって冷却し、それに伴って該有機溶剤を液化凝縮させる。次に該排ガス(G2)は、分離部120を通過することによって、液化凝縮された冷却凝縮液(L1)と有機溶剤濃度の低減された冷却処理ガス(G3)とに分離される。最後にチャンバー123を通じて、冷却処理ガスの一部(吸着入口ガス)(G4)が濃縮装置200へ供給するように分配されて、冷却凝縮装置100から排出される。
【0012】
冷却部110の冷却手段・構成は特に限定しないが、冷却水、冷水、ブラインなどの冷媒と排ガスとの間接的な熱交換によって冷却する第一熱交換器111などがある。冷却温度などの条件も回収対象となる有機溶剤によって適宜決めればよい。
【0013】
また、冷却部110は、第一熱交換器111の前に、冷却処理ガスの残部(リターンガス)(G5)と排ガス(G1)との熱交換によって排ガス(G1)を冷却させる第二熱交換器112を設けてもよい。第一熱交換器111に必要な伝面や冷媒量が削減されるからである。
【0014】
分離部120の分離手段・構成は特に限定しないが、デミスター、フィルター、メッシュなどの液滴を接触して捕捉する網目状構造体121などがある。網目状構造体121に捕捉された冷却凝縮液(L1)は、重力によって綿状構造体121下部に配置されたタンク122へ集液され、回収液(L3)として回収される。
【0015】
チャンバー123は、一定容量の空間を有する構造体である。濃縮装置200へ供給する冷却処理ガスの一部(吸着入口ガス)(G4)と、冷却処理ガスの残部(リターンガス)(G5)に分配される。
【0016】
濃縮装置200は、ガスが接触することによって、含有する有機溶剤を吸着し、加熱ガスを接触することによって、吸着した有機溶剤を脱着させる吸着材を含む吸着素子210を有している。また、吸着素子210は、脱着部(脱着ゾーン)211と吸着部(吸着ゾーン)212とを含んでいる。吸着部212では、冷却処理ガスの一部(吸着入口ガス)(G4)が導入されることで、吸着材に冷却処理ガスの一部(吸着入口ガス)(G4)が接触することで、冷却処理ガスの一部(吸着入口ガス)(G4)に含有される有機溶剤が吸着材に吸着され、これにより冷却処理ガスの一部(吸着入口ガス)(G4)が清浄化されて清浄ガス(G6)として排出される。
【0017】
脱着部211では、吸着材に冷却処理ガスの一部(吸着入口ガス)(G4)よりも高温のガス(G7)が導入されることで、有機溶剤が吸着材から脱着され、これにより有機溶剤を含有する脱着ガス(G8)として排出される。
【0018】
吸着素子210に含まれる吸着材としては、活性アルミナ、シリカゲル、活性炭素材やゼオライトが広く利用されており、中でも活性炭と疎水性ゼオライトが特に好適に利用されている。活性炭と疎水性ゼオライトは、低濃度の有機化合物を吸着、脱着する機能に優れており、古くから吸着材として各種の装置に利用されている。
【0019】
また、本発明の実施形態における濃縮装置の具体的な構成は特に限定しないが、
図1に示す通り、回転軸230と、回転軸230の周りに設けられた吸着素子210とを備え、回転軸231周りに吸着素子210を回転させることにより、吸着部212において、冷却処理ガスの一部(吸着入口ガス)(G4)中の有機溶剤を吸着した吸着材が連続的に脱着部211に移動する構成が知られている。
【0020】
本発明の実施形態における濃縮装置200は、
図1に示す通り、脱着部211は吸着部212よりも下部に配置された方が好ましい。脱着ガス(G8)中に含まれる有機溶剤の一部が液化凝縮して脱着凝縮液(L2)が発生した場合においても、吸着部212に脱着凝縮液(L2)が付着しにくくなるからである。脱着凝縮液(L2)は脱着部211より下部へ落ち、脱着部の外装の内面などを伝って回収される。より好ましくは、
図1に示す通り、脱着部211は下に傾斜をつけた方が良い。脱着凝縮液(L2)がより下へ落ち易くなるためである。
【0021】
濃縮装置200は、脱着部211の脱着処理が完了した部分が吸着部212への移行の前に移行するパージ部(図示せず)を有していてもよい。清浄ガス(G6)の一部がパージ部に導入され、パージ部から排出されたパージ部出口ガスが、吸着部212に導入されるような構成であってもよい。清浄ガス(G6)により脱着完了した吸着材をパージすることで、吸着材に残る脱着ガス(G8)が清浄ガス(G6)へ混入することを防ぎ、吸着材を冷却することができるからである。
【0022】
濃縮装置200は、脱着に使用する高温のガス(G7)は、清浄ガス(G6)の一部を再生ヒータ250などの加熱手段を用いて高温状態にしたものが好ましい。吸着部212で有機溶剤含有ガスの処理風量が増えないからである。排ガス(G1)の温度が50~200℃の温度の場合においては、排ガス(G1)の一部を再生ヒータ250などで昇温させて使用した方がより好ましい。高温の排ガス(G1)を脱着に用いることで、再生ヒータ250の使用ユーティリティを削減でき、排ガス(G1)の温度によっては脱着に再生ヒータ250が不要になるからである。また、冷却凝縮装置100へ排ガス(G1)および脱着ガス(G8)を通過させる割合は、排ガス(G1)が0%~50%であり、脱着ガス(G5)が50%~100%が想定される。
【0023】
第一通流経路300は、冷却処理ガスの一部(吸着入口ガス)(G4)をチャンバー123から濃縮装置200へ導入する部位である。第一通流経路300のチャンバー123への接続口は、チャンバー123の天井部が好ましい。分離部120で捕捉しきれなかった僅かな液滴の濃縮装置200への侵入を抑制し、後述する濃縮装置200の吸着素子210の濡れによる性能低下・強度低下などを防ぐためである。さらに好ましくは、冷却処理ガス(G3)の通気方向対して、対向するように冷却処理ガスの一部(吸着入口ガス)(G4)を取り出すようにした方が良い。より液滴の侵入を防ぐことができる。このほか、冷却処理ガスの一部(吸着入口ガス)(G4)の取り出し口に、上記綿状構造体121と類似の液滴侵入防止部材を設けても良いし、液滴を気化させるための加熱器を設けても良い。
【0024】
第二通流経路400は、脱着ガス(G8)を冷却凝縮装置100の排ガス(G1)導入部に返送する部位である。第二通流経路400は、脱着部211は、冷却凝縮装置100へ供給される排ガス(G1)の導入部よりもより上部に配置されるように接続されることが好ましい。前記濃縮装置200の脱着ガス(G8)から発生した前記脱着凝縮液(L2)が、冷却凝縮装置100へ移行しやすいからである。さらに好ましくは、冷却凝縮装置100の排ガス(G1)導入部およびタンク122の二か所に通気されるように構成された方が良い。脱着ガス(G8)から発生した前記脱着凝縮液(L2)が直接タンク122へ回収されやすくなるからである。
【0025】
本発明の実施形態における有機溶剤回収システム1の濃縮装置200の脱着に使用する高温のガス(G7)は、前述の通り清浄ガス(G6)の一部を再生ヒータ250などの加熱手段を用いて高温状態にしたものが好ましいが、排ガス(G1)の温度が50~200℃の温度の場合においては、排ガス(G1)の一部を再生ヒータ23などで昇温させて使用した方がより好ましい。高温の排ガスを脱着に用いることで、再生ヒータ23の使用ユーティリティを削減でき、排ガス(G1)の温度によっては脱着に再生ヒータ23が不要になるからである。また、冷却回収装置10へ排ガス(G1)および脱着ガス(G5)を通過させる割合は、排ガス(G1)が0%~50%であり、脱着ガス(G5)が50%~100%が想定される。
【0026】
排ガス(G1)は、生産設備から排出されるガスである場合、冷却処理ガスの残部(リターンガス)(G5)は、生産設備に戻される構成としてもよい。
【0027】
冷却処理ガスの残部(リターンガス)(G5)に含まれる有機溶剤濃度を更に低減したい場合、
図2に示すように、冷却処理ガスの残部(リターンガス)(G5)を処理する濃縮装置500を追加導入してもよい。また、清浄ガス(G6)に含まれる有機溶剤濃度を更に低減したい場合、
図3に示すように、清浄空気(G6)を処理する濃縮装置600を追加導入してもよい。濃縮装置500や濃縮装置600は、濃縮装置200と同じ構成でも別の構成であってもよい。また、追加導入する濃縮装置数に制限はない。何れの濃縮装置から排出される脱着ガスは、第二通流経路400を経由して、冷却凝縮装置100の排ガス(G1)導入部に返送される。
【0028】
本発明の実施形態では、排ガス(G1)に含有される有機溶剤としては、1℃~50℃の冷却にて液化して回収できる有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、たとえば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、またn-デカンである。これらは例示であり、これらに限定されることはない。含有される有機溶剤は、1種でも複数種でもよい。
【0029】
上記開示した実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、各種工場や研究施設等の生産設備から排出される有機溶剤を含有する排ガスを処理する装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 有機溶剤回収システム、50 排ガス導入経路、60 返還経路、100 冷却凝縮置、110 冷却部、111 第一熱交換器、112 第二熱交換器、120 分離部、121 網目状構造体、122 タンク、123 チャンバー、200 濃縮装置、210 吸着素子、211 脱着部、212 吸着部、230 回転軸、250 再生ヒータ、300 第一第二通流経路、400 第二通流経路、500 濃縮装置、600 濃縮装置、G1 排ガス、G2 冷却後の排ガス、G3 冷却処理ガス、G4 冷却処理ガスの一部、G5 冷却処理ガスの残部、G6 清浄ガス、G7 高温のガス、G8 脱着ガス、L1 冷却凝縮液、L2 脱着凝縮液、L3 回収液。