(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】パルプモールド蓋およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 43/08 20060101AFI20240214BHJP
B31D 5/02 20170101ALI20240214BHJP
【FI】
B65D43/08 200
B31D5/02
(21)【出願番号】P 2020149099
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2019162094
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 由貴
(72)【発明者】
【氏名】高木 瑞江
(72)【発明者】
【氏名】椎橋 礼子
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3190372(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0086511(US,A1)
【文献】特開2013-129921(JP,A)
【文献】特開2001-048151(JP,A)
【文献】特開2007-204148(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0011549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
D21J 1/00- 7/00
B31D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部と、該頂部の外周縁から垂下する外周縁部と、を備え、容器の開口端部に嵌合および嵌合解除可能なパルプモールド蓋であって、
パルプモールド蓋の密度が0.45g/cm
3
以上0.65g/cm
3
以下であり、
下
記要件
2を満たす、パルプモールド蓋。
要件2:前記容器の開口端部に嵌合した前記パルプモールド蓋の外周縁部の下端にL字形状の治具を引っ掛け、300mm/minの速度で引き上げ、嵌合が解除されたときの荷重値である開封力が、
0.15N/cm以上
0.41N/cm以下である。
【請求項2】
下記要件1
をさらに満たす、請求項1に記載のパルプモールド蓋。
要件1:前記パルプモールド蓋を前記容器の開口端部の上方に、該開口端部の上端に対して水平に置き、100mm/minの速度で鉛直方向に荷重をかけ、前記容器の開口端部に嵌合したときの最大荷重値である嵌合力が、0.6N/cm以上1.5N/cm以下である。
【請求項3】
前記外周縁部は、前記開口端部と嵌合する凸部を備える、請求項1または2に記載のパルプモールド蓋。
【請求項4】
前記頂部は、凹み段差部を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のパルプモールド蓋。
【請求項5】
前記外周縁部は、フランジ部を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載のパルプモールド蓋。
【請求項6】
下記要件3および要件4の少なくともいずれかを満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載のパルプモールド蓋。
要件3:パルプモールド蓋の外面および内面の少なくともいずれか一面の表面凸の高さSp(ISO 25178)が80μm以下である。
要件4:パルプモールド蓋の外面および内面の少なくともいずれか一面の表面凹凸差Sp+Sv絶対値(ISO 25178)が100μm以下である。
【請求項7】
上記要件3および要件4を共に満たす、請求項6に記載のパルプモールド蓋。
【請求項8】
パルプモールド蓋のパルプ原料が、バージンパルプを80質量%以上含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載のパルプモールド蓋。
【請求項9】
パルプモールド蓋のパルプ原料が、木材パルプおよび非木材パルプの混合パルプである、請求項1~8のいずれか1項に記載のパルプモールド蓋。
【請求項10】
パルプモールド蓋を構成するパルプのカナダ標準ろ水度が100mL以上700mL以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載のパルプモールド蓋。
【請求項11】
パルプモールド蓋が1層構成である、請求項1~
10のいずれか1項に記載のパルプモールド蓋。
【請求項12】
前記容器は、飲料用容器である、請求項1~
11のいずれか1項に記載のパルプモールド蓋。
【請求項13】
前記頂部は、飲み口および切込みの少なくともいずれかを備える、請求項1~
12のいずれか1項に記載のパルプモールド蓋。
【請求項14】
前記容器は、紙コップである、請求項1~
13のいずれか1項に記載のパルプモールド蓋。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか1項に記載のパルプモールド蓋の製造方法であり、
パルプ懸濁液を準備するパルプ懸濁液準備工程と、
パルプ懸濁液から抄型を介してパルプを抄き上げる抄き上げ工程と、
前記抄き上げ工程後に得られたモールド中間体を加熱しながら第1のプレス金型と前記第1のプレス金型とは反対方向に位置する第2のプレス金型とによりホットプレスするホットプレス工程とを有する、パルプモールド蓋の製造方法。
【請求項16】
前記ホットプレス工程における圧力が、0.1MPa以上3.0MPa以下である、請求項
15に記載のパルプモールド蓋の製造方法。
【請求項17】
前記ホットプレス工程における温度が、130℃以上280℃以下である、請求項
15または
16に記載のパルプモールド蓋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプモールド蓋およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器の蓋は、コスト等の観点から、プラスチック製であるものが多い。たとえば、特許文献1には、カップ状またはトレー状のプラスチック成形容器に被せて装着して、上周部のフランジにインナーシール材を熱融着して密封するプラスチック成形蓋であって、プラスチック成形蓋の内面側に、インナーシール材を、剥離可能層を介して積層した後に、真空,圧空成形したことを特徴とするインナーシール付のプラスチック成形蓋が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、プラスチックによる海洋汚染等が問題となっており、プラスチックを使用しない製品の開発が望まれている。また、プラスチック成形蓋では、閉めやすさと開けやすさとを両立し、通常の使用状態で嵌合状態を維持させることが難しいという課題があった。
【0005】
本発明は、閉めやすさと開けやすさとを両立し、通常の使用状態で嵌合状態を維持できるパルプモールド蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成を有することにより、閉めやすさと開けやすさとを両立し、通常の使用状態で嵌合状態を維持できるパルプモールド蓋を提供することができることを見出した。また、本発明者らは、表面の凹凸を特定の範囲とすることにより、耐油性および表面平滑性に優れるパルプモールド蓋を提供できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の<1>~<18>に関する。
<1> 頂部と、該頂部の外周縁から垂下する外周縁部と、を備え、容器の開口端部に嵌合および嵌合解除可能なパルプモールド蓋であって、下記要件1および要件2の少なくともいずれかを満たす、パルプモールド蓋。
要件1:前記パルプモールド蓋を前記容器の開口端部の上方に、該開口端部の上端に対して水平に置き、100mm/minの速度で鉛直方向に荷重をかけ、前記容器の開口端部に嵌合したときの最大荷重値である嵌合力が、0.2N/cm以上6.0N/cm以下である。
要件2:前記容器の開口端部に嵌合した前記パルプモールド蓋の外周縁部の下端にL字形状の治具を引っ掛け、300mm/minの速度で引き上げ、嵌合が解除されたときの荷重値である開封力が、0.05N/cm以上1.5N/cm以下である。
<2> 上記要件1および要件2を満たす、<1>に記載のパルプモールド蓋。
<3> 前記外周縁部は、前記開口端部と嵌合する凸部を備える、<1>または<2>に記載のパルプモールド蓋。
<4> 前記頂部は、凹み段差部を備える、<1>~<3>のいずれかに記載のパルプモールド蓋。
<5> 前記外周縁部は、フランジ部を備える、<1>~<4>のいずれかに記載のパルプモールド蓋。
<6> 下記要件3および要件4の少なくともいずれかを満たす、<1>~<5>のいずれかに記載のパルプモールド蓋。
要件3:パルプモールド蓋の外面および内面の少なくともいずれか一面の表面凸の高さSp(ISO 25178)が80μm以下である。
要件4:パルプモールド蓋の外面および内面の少なくともいずれか一面の表面凹凸差Sp+Sv絶対値(ISO 25178)が100μm以下である。
<7> 上記要件3および要件4を共に満たす、<6>に記載のパルプモールド蓋。
<8> パルプモールド蓋のパルプ原料が、バージンパルプを80質量%以上含有する、<1>~<7>のいずれかに記載のパルプモールド蓋。
<9> パルプモールド蓋のパルプ原料が、木材パルプおよび非木材パルプの混合パルプである、<1>~<8>のいずれかに記載のパルプモールド蓋。
<10> パルプモールド蓋を構成するパルプのカナダ標準ろ水度が100mL以上700mL以下である、<1>~<9>のいずれかに記載のパルプモールド蓋。
<11> パルプモールド蓋の密度が0.45g/cm3以上1.0g/cm3以下である、<1>~<10>のいずれかに記載のパルプモールド蓋。
<12> パルプモールド蓋が1層構成である、<1>~<11>のいずれかに記載のパルプモールド蓋。
<13> 前記容器は、飲料用容器である、<1>~<12>のいずれかに記載のパルプモールド蓋。
<14> 前記頂部は、飲み口および切込みの少なくともいずれかを備える、<1>~<13>のいずれかに記載のパルプモールド蓋。
<15> 前記容器は、紙コップである、<1>~<14>のいずれかに記載のパルプモールド蓋。
<16> <1>~<15>のいずれかに記載のパルプモールド蓋の製造方法であり、パルプ懸濁液を準備するパルプ懸濁液準備工程と、パルプ懸濁液から抄型を介してパルプを抄き上げる抄き上げ工程と、前記抄き上げ工程後に得られたモールド中間体を加熱しながら第1のプレス金型と前記第1のプレス金型とは反対方向に位置する第2のプレス金型とによりホットプレスするホットプレス工程とを有する、パルプモールド蓋の製造方法。
<17> 前記ホットプレス工程における圧力が、0.1MPa以上3.0MPa以下である、<16>に記載のパルプモールド蓋の製造方法。
<18> 前記ホットプレス工程における温度が、130℃以上280℃以下である、<16>または<17>に記載のパルプモールド蓋の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、閉めやすさと開けやすさとを両立し、通常の使用状態で嵌合状態を維持できるパルプモールド蓋が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一の実施形態に係るパルプモールド蓋を例示する縦断面概略図である。
【
図2】第一の実施形態に係るパルプモールド蓋と容器とが嵌合する状態を説明するための概略図であり、図中の分図(a)は、第一の実施形態に係るパルプモールド蓋を容器の上方に配置した状態を例示する縦断面概略図であり、図中の分図(b)は、第一の実施形態に係るパルプモールド蓋が容器に嵌合した状態を例示する縦断面概略図である。
【
図3】第一の実施形態に係るパルプモールド蓋と容器との嵌合を解除する状態を説明するための概略図であり、図中の分図(a)は、第一の実施形態に係るパルプモールド蓋の外周縁部の下端にL字形状の治具を引っ掛けた状態を例示する縦断面概略図であり、図中の分図(b)は、第一の実施形態に係るパルプモールド蓋と容器との嵌合が解除された状態を例示する縦断面概略図である。
【
図4】第二の実施形態に係るパルプモールド蓋を例示する外観斜視図であり、図中の分図(a)は、第二の実施形態に係るパルプモールド蓋を例示する平面側外観斜視図であり、図中の分図(b)は、第二の実施形態に係るパルプモールド蓋を例示する底面側外観斜視図である。
【
図5】第二の実施形態に係るパルプモールド蓋を例示する側面図であり、図中の分図(a)は、第二の実施形態に係るパルプモールド蓋を例示する側面図であり、図中の分図(b)は、第二の実施形態に係るパルプモールド蓋を例示する縦断面図である。
【
図6】第三の実施形態に係るパルプモールド蓋を例示する平面側外観斜視図である。
【
図7】変形例に係るパルプモールド蓋を例示する縦断面図である。
【
図8】変形例に係るパルプモールド蓋を例示する縦断面図である。
【
図9】変形例に係るパルプモールド蓋を例示する縦断面図である。
【
図10】変形例に係るパルプモールド蓋を例示する縦断面図である。
【
図11】変形例に係るパルプモールド蓋を例示する縦断面図である。
【
図12】本実施例に係るパルプモールド蓋の一例を示す平面側外観斜視図である。
【
図13】本実施例に係るパルプモールド蓋の一例を示す平面側外観斜視図である。
【
図14】実施例で作製したパルプモールド蓋の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[パルプモールド蓋]
本発明のパルプモールド蓋は、頂部と、該頂部の外周縁から垂下する外周縁部と、を備え、容器の開口端部に嵌合および嵌合解除可能なパルプモールド蓋であって、下記要件1および要件2の少なくともいずれかを満たし、好ましくは下記要件1および要件2を満たす。
要件1:前記パルプモールド蓋を前記容器の開口端部の上方に、該開口端部の上端に対して水平に置き、100mm/minの速度で鉛直方向に荷重をかけ、前記容器の開口端部に嵌合したときの最大荷重値である嵌合力(以下、単に「嵌合力」、または「嵌合ショックピーク値」ともいう)が、0.2N/cm以上6.0N/cm以下である。
要件2:前記容器の開口端部に嵌合した前記パルプモールド蓋の外周縁部の下端にL字形状の治具を引っ掛け、300mm/minの速度で引き上げ、嵌合が解除されたときの荷重値である開封力(以下、単に「開封力」、または「開封ショックピーク値」ともいう)が、0.05N/cm以上1.5N/cm以下である。
【0010】
(嵌合力)
パルプモールド蓋の嵌合力は、具体的には、以下のとおり測定される。まず、ISO 187:1990に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)に、パルプモールド蓋と容器とを24時間静置し、調温および調湿する。その後、パルプモールド蓋を容器の開口端部の上方に、開口端部の上端に対して水平に置き、100mm/minの速度で、パルプモールド蓋上面に鉛直方向に荷重をかける(
図2中の分図(a)参照)。そして、パルプモールド蓋が、容器の開口端部に嵌合したときの最大荷重値(嵌合ショックピーク値)を嵌合力とする(
図2中の分図(b)参照)。ここで、パルプモールド蓋上面に鉛直方向に荷重をかける際には、プレート(たとえば、株式会社イマダ製の円盤型圧縮治具「PC-5100」)等を用いることができる。また、ここで、水平とは、概ね水平な状態をいい、たとえば±5°程度の状態を許容するものとする。
【0011】
パルプモールド蓋の嵌合力は、閉めやすさと開けやすさとを両立し、通常の使用状態で、容器1との嵌合状態を維持させる観点から、好ましくは0.4N/cm以上、より好ましくは0.6N/cm以上、さらに好ましくは0.8N/cm以上、よりさらに好ましくは1.0N/cm以上であり、そして、好ましくは5.5N/cm以下、より好ましくは5.0N/cm以下、さらに好ましくは4.5N/cm以下、よりさらに好ましくは4.0N/cm以下である。
【0012】
パルプモールド蓋は、使用者により、鉛直方向(容器の方向)に押圧されると、プラスチック蓋とは異なり、容器の開口端部の一部のみではなく、容器の開口端部の全周と嵌合しやすいのでしっかり閉まり、容器の内容物が流出してしまうことを防ぐことができる。
【0013】
(開封力)
パルプモールド蓋の開封力は、具体的には、以下のとおり測定される。まず、ISO 187:1990に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)に、パルプモールド蓋が嵌合した容器を24時間静置し、調温および調湿する。その後、容器の開口端部に嵌合したパルプモールド蓋の外周縁部の下端にL字形状の治具を引っ掛け、300mm/minの速度で引き上げる(
図3中の分図(a)参照)。そして、パルプモールド蓋と容器との嵌合が解除されたときの荷重値(開封ショックピーク値)を開封力とする(
図3中の分図(b)参照)。ここで、L字形状の冶具は、株式会社イマダ製のチップ剥離用治具(GT-20)を用いることとする。
【0014】
パルプモールド蓋の開封力は、通常の使用状態で、容器との嵌合状態を維持し、閉めやすさと開けやすさとを両立する観点から、好ましくは0.15N/cm以上、より好ましくは0.25N/cm以上であり、そして、好ましくは1.4N/cm以下、より好ましくは1.3N/cm以下、さらに好ましくは1.2N/cm以下である。
【0015】
(表面凹凸)
本発明のパルプモールド蓋は、下記要件3および要件4の少なくともいずれかを満たすことが好ましく、下記要件3および要件4を共に満たすことがより好ましい。
要件3:パルプモールド蓋の外面および内面の少なくともいずれか一面の表面凸の高さSp(ISO 25178)が80μm以下である。
要件4:パルプモールド蓋の外面および内面の少なくともいずれか一面の表面凹凸差Sp+Sv絶対値(ISO 25178)が100μm以下である。
本発明において、パルプモールド蓋が上記の要件3および要件4のいずれかを満たすことにより、耐油性および表面平滑性に優れたパルプモールド蓋が得られる。
上述の効果が得られる詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように考えられる。要件3および要件4の少なくともいずれかを満たすことにより、パルプモールド蓋の表面の平均面からの凸の高さまたは凹凸差が小さくなり、これにより、表面の毛羽立ち等が抑制され、表面平滑性に優れたパルプモールド蓋が得られる。また、上述のような表面特性を有するパルプモールド蓋は、耐油性にも優れるものであった。これは、上記のようなSpまたはSp+Sv(絶対値)を得るためには、パルプモールド蓋の製造時のプレス圧力を高く設定する必要があり、また、パルプ原料として、特定のパルプ原料を適用することが好ましいことから、結果として、耐油性にも優れるパルプモールド蓋が得られたものと考えられる。
【0016】
なお、以下の説明において、表面凸の高さSpを単にSpともいい、表面凹の深さSvを単にSvともいう。また、表面凹凸差Sp+Sv(絶対値)を、単にSp+|Sv|ともいう。
ここで、表面凸の高さSp、表面凹の深さSvは、ISO 25178に準拠して測定される。
Spは、表面の平均面からの高さの最大値を意味し、本発明において、測定箇所(10箇所、1箇所当たりの測定面積=10mm×10mm)をランダムに選択して、それぞれの測定箇所で得られたSpを、Sp1、Sp2、Sp3・・・・Sp10としたとき、以下の式(1)により求められる。
表面凸の高さSp=(Sp1+Sp2+Sp3+・・・+Sp10)/10 (1)
また、同様にして測定箇所(10箇所、1箇所当たりの測定面積=10mm×10mm)をランダムに選択して、それぞれの測定箇所で得られたSvをSv1、Sv2、Sv3、・・・・Sv10としたとき、Svは以下の式(2)により求められる。
表面凹の深さSv=(Sv1+Sv2+Sv3+・・・+Sv10)/10 (2)
ここで、Svは、表面の平均面からの深さの最大値であることから、一般に負の値で表す。
したがって、表面凹凸差Sp+Sv(絶対値)は、Sp+|Sv|で表される。
なお、測定対象が1000mm2以下の面積の場合は、測定箇所を減らし、それぞれの測定箇所における測定面積は、100mm2とする。また、幅が10mm未満の場合は測定面積が100mm2となるように、長方形で測定を行ってもよい。
【0017】
≪要件3≫
要件3は、ISO 25178に準拠して測定される、パルプモールド蓋の外面および内面の少なくともいずれか一面の表面凸の高さSpが80μm以下であるとの要件である。
Spは、表面平滑性の観点から、好ましくは75μm以下、より好ましくは65μm以下、さらに好ましくは50μm以下、よりさらに好ましくは30μm以下、よりさらに好ましくは20μm以下、よりさらに好ましくは10μm以下、よりさらに好ましくは5μm以下である。下限はとくに限定されないが、製造容易性の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上である。
Spは、実施例に記載の方法により、ISO 25178に準拠して測定される。
【0018】
≪要件4≫
要件4は、ISO 25178に準拠して測定される、パルプモールド蓋の外面および内面の少なくともいずれか一面の表面凹凸差Sp+Sv(絶対値)が100μm以下であるとの要件である。
Sp+Sv(絶対値)は、表面平滑性の観点から、100μm以下、好ましくは95μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下、よりさらに好ましくは60μm以下、よりさらに好ましくは40μm以下、よりさらに好ましくは30μm以下、よりさらに好ましくは20μm以下、よりさらに好ましくは10μm以下である。下限はとくに限定されないが、製造容易性の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。
【0019】
本発明においてパルプモールド蓋は、要件3および要件4の少なくともいずれかを満たすことが好ましいが、少なくとも要件4を満たすことがより好ましく、要件3および4を共に満たすことがさらに好ましい。要件3および要件4を共に満たすことにより、より表面平滑性に優れるパルプモールド蓋が得られる。
なお、パルプモールド蓋の外面とは、後述する第1のプレス金型(雌型)に接する面であり、内面とは、後述する第2のプレス金型(雄型)に接触する面である。
本発明において、パルプモールド蓋の外面および内面のいずれか一面において、Spが80μm以下、およびSp+Sv(絶対値)が100μm以下のいずれかを満たすことが好ましい。これらの中でも、本発明のパルプモールド蓋は、手触りや口触り等の触感に優れることから、手や口が触れる面が、上記の要件を満たすことがより好ましい。また、外面および内面が、要件3および要件4を満たすことがさらに好ましい。
【0020】
<パルプ原料>
本発明のパルプモールド蓋のパルプ原料としては、木材パルプ、非木材パルプ、古紙が例示され、木材パルプ、非木材パルプが好ましく、木材パルプおよび非木材パルプの混合パルプであることがより好ましい。ここで、パルプ原料は、パルプモールド蓋を構成するパルプである。
木材パルプとしては、一般に製紙用途で使用されている木材パルプが挙げられ、その調製法の違いにより、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ;セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ;砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)、リファイナーグランドウッドパルプ(RGP)等の機械パルプ;等に分類される。
木材パルプとしては、原料により、針葉樹パルプおよび広葉樹パルプが例示される。針葉樹パルプとしては、モミ属、マツ属等から得られるパルプが例示される。また、広葉樹パルプとしては、アカシア属、ユーカリ属、ヤマナラシ属(たとえば、ポプラ)等から得られるパルプが例示される。
これらの中でも、木材パルプとしては、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、広葉樹クラフトパルプ(LKP)がより好ましい。
【0021】
本発明において、広葉樹パルプとしては、得られるパルプモールド蓋の平滑性の観点から、アカシア属およびユーカリ属の木材パルプが好ましい。広葉樹パルプは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明において、針葉樹パルプとしては、マツ属の針葉樹パルプが好ましく、ラジアータパインがより好ましい。パルプ原料として、針葉樹パルプを含有することにより、より強度に優れたパルプモールド蓋が得られる。針葉樹パルプは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
パルプ原料が木材パルプと非木材パルプとの混合パルプである場合、パルプ原料中の木材パルプの含有量は、パルプモールド蓋の表面平滑性および耐油性をより向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、よりさらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、よりさらに好ましくは55質量%以下である。
【0023】
非木材パルプは、植物の皮、茎、葉、葉鞘から採取した繊維である。具体的には、コットンリンター、ぼろ(木綿、リネン、大麻、ラミーなど)、わら、エスパルト、アバカ等のマニラ麻、ザイザル麻、黄麻、亜麻、ケナフ、ラミー、竹、バガス、がんぴ、みつまた、こうぞ、桑から得られるパルプが挙げられる。
非木材パルプは、パルプモールド蓋の耐油性を向上させる観点から、バガスおよび竹パルプから選択される少なくともいずれかを含むことが好ましく、バガスおよび竹パルプから選択される少なくともいずれかであることがより好ましく、バガスであることがさらに好ましい。
パルプ原料が木材パルプと非木材パルプとの混合パルプである場合、パルプ原料中の非木材パルプの含有量は、パルプモールド蓋の表面平滑性および耐油性をより向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、よりさらに好ましくは80質量%以下、よりさらに好ましくは55質量%以下である。
【0024】
本発明において、パルプ原料はバージンパルプを80質量%以上含有することが好ましい。バージンパルプの含有量を80質量%以上とすることにより、より表面平滑性に優れるパルプモールド蓋が得られる。パルプ原料中のバージンパルプの含有量は、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、よりさらに好ましくは100質量%である。
バージンパルプとしては、晒しパルプ、半晒しパルプが好ましい。
なお、未晒しパルプは、リグニンの残留量が多く、白色度が低く、装飾性に劣る傾向にある。したがって、パルプ原料中の未晒しパルプの含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、よりさらに好ましくは含有しないこと(0質量%)である。
また、パルプ原料として、マーセルパルプ、架橋パルプを含有すると、パルプモールド蓋の強度が低下したり、密度が低下する傾向がある。したがって、パルプ原料中のマーセルパルプおよび架橋パルプの含有量は、それぞれ、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、よりさらに好ましくは含有しないこと(0質量%)である。
古紙パルプは、インキの残留量が多く、分散性に劣る傾向がある。また、古紙の繊維は毛羽立ち、変形している傾向にある。また、古紙パルプは白色度が低く、インキがパルプ繊維上に残留したまま細長く黒く見える未脱墨繊維が存在し、黒ひげが発生する傾向にある。また、灰色に見えるビニール等や、黒色斑点スポットが残留しているためにチリが見られる。その結果として、得られるパルプモールド蓋の外観や、表面平滑性が低下する傾向にあることから、パルプ原料中の古紙パルプの含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、よりさらに好ましくは含有しないこと(0質量%)である。
【0025】
本発明において、パルプ原料のカナダ標準ろ水度は、パルプ原料の生産性、およびパルプモールド蓋を製造時の抄紙性の観点から、好ましくは100mL以上、より好ましくは150mL以上、さらに好ましくは200mL以上であり、そして、表面平滑性の観点から、好ましくは700mL以下、より好ましくは650mL以下、さらに好ましくは600mL以下、よりさらに好ましくは520mL以下、よりさらに好ましくは450mL以下、よりさらに好ましくは400mL以下、よりさらに好ましくは300mL以下である。
カナダ標準ろ水度が上記範囲内となるように、叩解の程度を調整すればよい。
カナダ標準ろ水度は、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定される。
【0026】
<その他の成分>
パルプモールド蓋は、上述したパルプを主原料として形成されている。パルプモールド蓋は、パルプ100%から形成されていてもよいが、パルプに加えて、各種内添助剤等の他の材料を添加することが可能である。
他の成分としては、タルク、カオリン等の無機物、ガラス繊維やカーボン繊維等の無機繊維、ポリオレフィン等の合成樹脂の粉末または繊維、カルボキシメチルセルロース等の多糖類、サイズ剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、耐油剤、歩留剤、濾水向上剤、嵩高剤、硫酸バンド、pH調整剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、顔料等の着色剤等が例示される。他の成分として、サイズ剤を含有することが好ましい。
【0027】
サイズ剤としては、ロジン系サイズ剤(たとえば、酸性ロジン系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤)、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体などのスチレン含有ポリマーが挙げられ、アルキルケテンダイマーが好ましい。
【0028】
湿潤紙力増強剤としては、内添用の湿潤紙力増強剤として、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂、エポキシ化ポリアミドポリアミン、ジアルデヒドでんぷん、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド、ポリアクリルアミド、メチロール化ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン等が例示される。
また、撥水剤としては、ワックスエマルジョン、金属石けん(ナトリウム、カリウム、亜鉛、リチウム、マグネシウム等のアルカリ塩)、脂肪酸クロム錯塩(ミリスチン錯塩、ステアリン酸クロミッククロライド錯塩等)、ジルコニウム撥水剤、シリコーンエマルジョン等が例示される。
本発明のパルプモールド蓋は、非木材パルプを含有する場合、パルプ原料のみで耐油性を向上させることが可能であることから、湿潤紙力増強剤および撥水剤の添加量を減少しても、または添加しなくても、十分な耐油性を得ることが可能である。なお、より高い耐油性および耐水性を得ることを目的として、湿潤紙力増強剤または撥水剤を添加する態様を排除するものではない。
【0029】
本発明のパルプモールド蓋は、後述する抄き上げ工程を複数回行ったり、ホットプレス工程において、複数のモールド中間体をホットプレスすることにより、複数層の構成としてもよいが、表面平滑性および耐油性により優れる観点から、1層構成とすることが好ましい。
【0030】
(密度)
本発明のパルプモールド蓋の密度は、表面平滑性および耐油性をより向上させる観点から、密度が好ましくは0.45g/cm3以上、より好ましくは0.50g/cm3以上、さらに好ましくは0.60g/cm3以上であり、そして、好ましくは1.0g/cm3以下、より好ましくは0.95g/cm3以下である。
パルプモールド蓋の密度は、JIS P 8118:2014に準じて測定することができる。なお、JIS P 8118:2014は紙や板紙に用いる方法であり、本発明においては、サンプルの大きさが規定通りに取れないことがあり、その際にはサンプルサイズを適宜調整して測定に用いる。坪量はJIS P 8124:2011に準じて測定するが、サンプルサイズの調整も前記同様である。測定には蓋の平面部分を用いる。
【0031】
(坪量)
パルプモールド蓋の坪量は、耐水性や強度の観点から、好ましくは200g/m2以上、より好ましくは250g/m2以上、さらに好ましくは300g/m2以上であり、そして、経済的観点からは、好ましくは1500g/m2以下、より好ましくは1000g/m2以下、さらに好ましくは500g/m2以下である。
パルプモールド蓋の坪量は、実施例に記載の方法により測定される。
【0032】
(厚さ)
パルプモールド蓋の厚さは、保温性とハンドリング性の観点から、好ましくは0.30mm以上、より好ましくは0.35mm以上であり、そして、好ましくは1.50mm以下、より好ましくは1.20mm以下である。パルプモールド蓋の厚さは、実施例に記載の方法により測定される。
【0033】
なお、容器は、内容物を収容することができるものであればとくに限定されないが、食品用容器、飲料用容器であることが好ましく、飲料用容器であることがより好ましい。飲料用容器は、たとえば、プラスチック(たとえば、PET(たとえば、C-PET)、PP、PE、PSなどの熱可塑性樹脂;生分解性プラスチック;天然素材混合プラスチック)、発砲スチロール、紙(たとえば、上質紙、パルプモールド)からなるコップが挙げられ、紙コップであることがより好ましい。なお、容器は、開口端部が外巻きのカール形状を有することが好ましい。
【0034】
<二次加工パルプモールド蓋>
本発明のパルプモールド蓋を表面加工して、二次加工パルプモールド蓋としてもよい。なお、本発明において、二次加工パルプモールド蓋とは、パルプモールド蓋に、表面加工を施したものである。なお、本発明のパルプモールド蓋は、表面平滑性に優れるため、表面加工を容易に施すことができるという利点をも有する。
二次加工の方法としてはとくに限定されず、パルプモールドの表面加工が可能な方法であればとくに限定されないが、二次加工パルプモールド蓋は、直刷法、ラミネート法、転写法、および蒸着法の少なくとも1つの表面加工法により表面加工されたものであることが好ましく、直刷法、ラミネート法、および転写法の少なくとも1つの表面加工法により表面加工されたものであることがより好ましく、ラミネート法および転写法の少なくとも1つの表面加工法により表面加工されたものであることがさらに好ましく、後述する真空ラミネート法およびホットスタンプ転写法の少なくとも1つの表面加工法により表面加工されたものであることがよりさらに好ましい。
なお、これらの方法に限定されず、予め印刷されたシール等を貼付してもよい。
【0035】
(直刷法)
直刷法は、色、柄、模様等の付与や、防水性、防湿性等の付与を目的として、直接パルプモールド蓋の表面にインクや樹脂を付与するものであり、含浸、印刷等により、パルプモールド蓋を表面加工する方法が挙げられる。
印刷としては、ゴム版や樹脂版による凸版印刷、シルクスクリーン印刷、タンポ印刷、静電印刷、熱転写印刷などのいずれの印刷手段であってもよい。印刷により、得られたパルプモールド蓋の表面に、図柄や文字等を設けることができる。
また、パルプモールド蓋への刷毛、スプレーなどによって直刷してもよい。これらの中でも、均一に樹脂等を付与する観点から、スプレー塗布が好ましい。スプレー塗布はエアスプレー、エアレススプレー、静電スプレー等のいずれにより行ってもよい。
パルプモールド蓋の表面に防水または防湿性を付与する場合には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、オレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の樹脂を固形分に含む水系エマルジョン塗料、またはこれらの樹脂の水溶液塗料若しくは有機溶剤系塗料等を塗工すればよい。
【0036】
(ラミネート法)
ラミネート加工は、樹脂フィルムで被覆することにより行われることが好ましく、使用される樹脂フィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル等のポリビニル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂フィルム、変性ポリエチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等の生分解性樹脂フィルムが挙げられる。製造コスト、成形性等を考慮すると、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、環境に配慮した廃棄性の点からは、生分解性樹脂フィルムが好ましい。ラミネート加工は、これらの樹脂フィルムの2種以上を積層させて形成してもよい。
樹脂フィルムの厚みはとくに限定されないが、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0037】
上記の樹脂フィルムをラミネート加工することにより、耐水性、耐油性、ガスバリア性等の機能を向上または付与することができる。
また、ラミネート加工する樹脂フィルムに、予め絵柄を印刷してもよく、着色性のある顔料、微細粒子(パール顔料、ホログラム等)、夜光染料・夜光顔料等を添加しておいてもよい。このような樹脂フィルムを使用することにより、パルプモールド蓋の表面に、光沢性や意匠性を付与することができる。
【0038】
ラミネート加工は、パルプモールド蓋に対して押出ラミネーション、熱ラミネーション、ドライラミネーション、またはウェットラミネーション等の公知の方法で行えばよい。
これらの中でも、熱ラミネーションが好ましく、真空ラミネーション、真空プレスが好ましく、真空ラミネーションがより好ましい。
真空ラミネーションは、基材側(パルプモールド側)からの吸引により、その上部に置かれたシートを変形させてラミネートを行ってもよく、また、予め真空にされた上下チャンバーを樹脂フィルムで2分割しておき、樹脂フィルム加熱装置を備えた上部チャンバーを圧空とすることにより、下部チャンバーに置かれた基材(パルプモールド蓋)にラミネートする方法でもよい。
また、真空プレスは、シリコンラバー等を基材(パルプモールド蓋)側からの真空吸引、場合により上部より圧空力を加えて基材形状に変形させ、シリコンゴム等と基材との間に挟まれた樹脂フィルムがシリコンゴムの圧力により基材にラミネートされる。
また、樹脂フィルムを、パルプモールド蓋の形状に合わせて、金型により予備成形し、パルプモールド蓋とラミネートしてもよい。
【0039】
ラミネート加工は、従来公知の方法で行えばよく、真空ラミネーション装置としては、TOM成形機(布施真空株式会社製)などが例示される。
また、ラミネーションの際の温度、圧力などの条件は、ラミネートする樹脂フィルムの素材および厚み、基材の形状、接着剤の有無等により適宜選択すればよいが、たとえば、ヒーターの加熱温度は80℃以上200℃以下で、貼合を行う。
【0040】
ラミネートの際に、樹脂フィルムとパルプモールド蓋との間に、接着剤を付与してもよく、また、付与しなくてもよい。接着剤としては、ポリウレタン系接着剤、ポリアクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、セルロース系接着剤、その他のラミネート用接着剤をしようすることができる。接着剤を付与する場合には、接着剤に着色性を有する顔料、パール顔料、微細粒子(ホログラム等)、夜光顔料、夜光染料等を添加してもよい。
【0041】
(転写法)
転写法としては、ホットスタンプ転写法、インモールド転写法、水圧転写法などの種々の転写法が例示され、乾式転写法、湿式転写法のいずれでもよい。またインモールド転写法において、予備成形工程を加えてもよい。
転写法の中では、ホットスタンプ転写法(以下、単に「ホットスタンプ法」ともいう)が好ましい。ホットスタンプ法は、「箔」と呼ばれる金属を蒸着したり、顔料を塗布したフィルムを使用し、箔表面に設けた熱接着層を介して基材に熱転写する方法である。ホットスタンプ法に使用される箔は、離型性を有するベースフィルム(たとえば、二軸延伸ポリエステルフィルム)、剥離層(保護層)、絵柄層または蒸着層、熱接着層の順に積層されており、必要に応じて、ベースフィルムと保護層との間に離形層が設けられる。ホットスタンプ法としては、(i)アップダウン方式、(ii)ロール転写方式が挙げられ、熱圧の存在する部分の絵柄層または蒸着層が、基材(パルプモールド蓋)に転移するという原理は同じである。アップダウン方式では、ヒーターが内蔵された型板を、ベースフィルム側から基材に押し付け、熱接着層を介して、絵柄層または蒸着層を基材に転写する。同様に、ロール転写方式では、加熱したローラをベースフィルム側から押し付けることで、絵柄層または蒸着層を基材に転写する。また、ベースフィルム側に研削加工、艶差処理、凹凸加工等を施すことにより、転写時に、絵柄層、蒸着層に賦形(凹凸を付す)を行うことも可能である。
【0042】
(蒸着)
蒸着は、従来公知の蒸着法を採用すればよく、物理蒸着でも化学蒸着でもよく、とくに限定されないが、パルプモールド蓋に金属光沢を付与する目的で蒸着することが好ましく、物理蒸着である真空蒸着がより好ましい。
蒸着材料は、アルミニウム、クロム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケルなどの金属類、SiO2、TiO2、ZrO2、MgF2などの酸化物やフッ化物を使用することが好ましい。
蒸着層の厚みは、とくに限定されないが、0.1μm以上であることが好ましい。
【0043】
[パルプモールド蓋の製造方法]
パルプモールド蓋の製造方法はとくに限定されないが、以下の工程1~工程3をこの順で有する製造方法により製造することが好ましい。
工程1:パルプ懸濁液を準備するパルプ懸濁液準備工程
工程2:パルプ懸濁液から抄型を介してパルプを抄き上げる抄き上げ工程
工程3:前記抄き上げ工程後に得られたモールド中間体を加熱しながら第1のプレス金型と前記第1のプレス金型とは反対方向に位置する第2のプレス金型とによりホットプレスするホットプレス工程
工程1では、パルプ原料、サイズ剤等のその他の添加剤を加えて、パルプ懸濁液(パルプスラリー)を調製する。該懸濁液の濃度(スラリー濃度)は、表面平滑性、寸法安定性、および生産性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0044】
工程2は、パルプ懸濁液から抄型を介してパルプを抄き上げる抄き上げ工程である。
パルプ懸濁液中に真空引き通水性構造の金網張り金型などの成形金型を浸漬し、パルプ懸濁液を成形金型に吸引して水を排出させると同時にパルプ繊維を型に積層吸着させて型に対称な立体的な湿紙を形成し、次いで、成形金型をパルプ懸濁液から引き上げ、含水した立体的な湿紙の吸引脱水または加圧脱水を行う。
この際、成形金型面にパルプを積層吸着した成形金型は、真空吸引を続けながら、パルプ吸着面と対向させて、真空吸引をきかせた取り型(離型装置)を接近させ、パルプモールド中間体を圧縮真空吸引して脱水した後、成形金型の真空圧を常圧に戻して、取り型にパルプモールド中間体を吸着させた状態で取り方を引き戻して離型する。
【0045】
工程3は、前記抄き上げ工程後に得られたモールド中間体を加熱しながら第1のプレス金型と前記第1のプレス金型とは反対方向に位置する第2のプレス金型とによりホットプレスするホットプレス工程である。
工程3は、工程2で得られた脱水後のパルプモールド中間体を、たとえば、多孔質金型からなるホットプレス用の第1のプレス金型に移し変える。前記第1のプレス金型に移し変えられたパルプモールド中間体は、第1のプレス金型と、第1のプレス金型とは反対方向に位置し、第1のプレス金型に係合するホットプレス用の第2のプレス金型とによって加熱、加圧されて、所定のパルプモールド蓋が得られる。
なお、ホットプレス用の第1のプレス金型および第2のプレス金型の少なくとも1つに内部に電熱ヒータを内蔵させ、それにより前記第1のプレス金型および第2のプレス金型の少なくとも1つを加熱することが好ましい。また、第1のプレス金型および第2のプレス金型を含む金型全体を熱風を導入した炉内に収容することによって、型の内部にも熱風が通過するようにしてもよい。
【0046】
工程3(ホットプレス工程)において、第1のプレス金型および第2のプレス金型によるプレス時の圧力は、表面平滑性に優れるパルプモールド蓋を得る観点から、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上、さらに好ましくは0.4MPa以上、よりさらに好ましくは0.6MPa以上であり、そして、消費電力および装置負荷の観点から、好ましくは3.0MPa以下、より好ましくは2.0MPa以下、さらに好ましくは1.5MPa以下である。
【0047】
工程3(ホットプレス工程)において、ホットプレス時の温度は、表面平滑性に優れるパルプモールド蓋を得る観点から、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは170℃以上であり、そして、消費電力、装置負荷、および変色抑制の観点から、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは230℃以下である。
【0048】
上記のようにして得られたパルプモールド蓋は、さらに、不要部分の断裁、必要に応じて穴あけ等の加工を施されて、たとえば飲み口および切込みの少なくともいずれかが形成されてもよい。
【0049】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0050】
まず、
図1ないし
図3を用いて、第一の実施形態に係るパルプモールド蓋100について説明する。
【0051】
[第一の実施形態に係るパルプモールド蓋]
図1ないし
図3に示すように、第一の実施形態に係るパルプモールド蓋100は、頂部10と、該頂部10の外周縁から垂下する外周縁部30と、を備え、容器1の開口端部3に嵌合および嵌合解除可能なパルプモールド蓋100であって、下記要件1および要件2の少なくともいずれかを満たし、好ましくは下記要件1および要件2を満たす。
要件1:パルプモールド蓋100を前記容器1の開口端部3の上方に、該開口端部3の上端5に対して水平に置き、100mm/minの速度で鉛直方向に荷重をかけ、容器1の開口端部3に嵌合したときの最大荷重値である嵌合力が、0.2N/cm以上6.0N/cm以下である。
要件2:容器1の開口端部3に嵌合したパルプモールド蓋100の外周縁部30の下端31にL字形状の治具Nを引っ掛け、300mm/minの速度で引き上げ、嵌合が解除されたときの荷重値である開封力が、0.05N/cm以上1.5N/cm以下である。
【0052】
頂部10は、パルプモールド蓋100の外周縁部30の下端31からの距離が一番長い部分、すなわち、パルプモールド蓋100における最高部分であり、容器1の開口部を覆う部分である。頂部10は、容器1の用途等に応じて、段差等を備えていてもよい。頂部10には、成形に用いる金型、レーザー等で凹凸模様を形成することができる。また、パルプモールド蓋100と嵌合する容器1が飲料用容器である場合、頂部10は、不図示の飲み口および切込みの少なくともいずれかを備えることが好ましい。切込みには、ストローなどを挿入することができる。
【0053】
外周縁部30は、頂部10の外周縁から垂下する部分であり、パルプモールド蓋100の外周側面を構成する。外周縁部30の内周側には、容器1の開口端部3と嵌合する凸部33を備えて構成される。外周縁部30は、容器1の用途等に応じて、段差、フランジ等を設けてもよい。外周縁部30にも、成形に用いる金型、レーザー等で凹凸模様を形成することができる。また、外周縁部30は、外周側に凸部を有してもよいし、凹部を有していてもよいし、凸部と凹部とを有していてもよい。
【0054】
凸部33は、外周縁部30からパルプモールド蓋100の内方に向かって、容器1の開口端部3と嵌合することができるように突出していればよい。凸部33は、中実であってもよく、縦断面視において中空であってもよく、外周縁部30を、外周側から窪ませて構成される溝部の内周側が突出して構成されるものであってもよい。凸部33は、外周縁部30の内周1周にわたって1条形成され、連続していてもよく、2条以上形成されていてもよい。また、凸部33は、外周縁部30の内周側に複数形成され、不連続で、破線状に配置されてもよく、外周縁部30の内周の一部だけに形成されていてもよく、たとえば、外周縁部30の内周径の半分に配置されていてもよい。開口端部3の形状等に応じて、凸部33の高さHおよび幅Wを調整することにより、パルプモールド蓋100の嵌合力および開封力が調整される(
図1参照)。
【0055】
容器1の上方に配置されたパルプモールド蓋100は、鉛直方向(
図2中の分図(a)における矢印方向)に押圧されることにより、容器1の開口端部3が、パルプモールド蓋100の凸部33を乗り越えて、容器1の開口端部3とパルプモールド蓋100の凸部33が嵌合可能である(
図2中の分図(b)参照)。
【0056】
また、容器1と嵌合したパルプモールド蓋100は、使用者が、外周縁部30の下端31に指等を引っ掛け、引き上げることにより(
図3中の分図(a)参照)、凸部33が、容器1の開口端部3を乗り越えて、容器1との嵌合が解除される(
図3中の分図(b)参照)。
【0057】
以上、第一の実施形態に係るパルプモールド蓋100について説明した。次に、
図4および
図5を用いて、第二の実施形態に係るパルプモールド蓋110について説明する。上述した実施形態と同一または類似する構成については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0058】
[第二の実施形態に係るパルプモールド蓋]
図4および
図5に示すように、第二の実施形態に係るパルプモールド蓋110は、頂部10と、該頂部10の外周縁から垂下する外周縁部30と、を備え、不図示の容器の開口端部に嵌合および嵌合解除可能であり、上記要件1および要件2の少なくともいずれかを満たし、好ましくは上記要件1および要件2を満たす。
【0059】
第二の実施形態に係るパルプモールド蓋110の頂部10は、傾斜部11,12と、窪んで段差を有する凹み段差部15と、を備えて構成される。
【0060】
傾斜部11,12は、凹み段差部15を形成するために配置される。第二の実施形態に係る傾斜部11,12は、第一傾斜部11と第二傾斜部12とを備えて構成される。第一傾斜部11と第二傾斜部12とは、傾斜が異なっているが、傾斜が同じであってもよいし、傾斜が途中で変わっていてもよい。また、傾斜部11,12は、第一傾斜部11のみを有し、第二傾斜部12を有していなくてもよく、傾斜部11,12の数は適宜変更することができる。第一傾斜部11または第二傾斜部12は、凹み段差部15に対して垂直であってもよい。また、第一傾斜部11および第二傾斜部12は、曲線形状の曲線部を有していてもよい。
【0061】
第二の実施形態に係る凹み段差部15は、後述する外周縁部30の内周側の凸部33が、傾斜部11,12と対向配置される深さまで窪んでいることが好ましい。このような構成により、パルプモールド蓋110は、不図示の容器の開口端部が、傾斜部11,12に案内および支持されながら、凸部33を乗り越えて嵌合し、嵌合が完了した状態でも傾斜部11,12が不図示の容器の開口端部を支持するため、容器との嵌合状態がより強固になる。なお、本実施形態では、1つの凹み段差部15を備えて構成されているが、複数の凹み段差部を備えていてもよい。複数の凹み段差部を備える場合、凹み段差部を形成するために、複数の傾斜部が形成されることになる。
【0062】
第二の実施形態に係るパルプモールド蓋110の外周縁部30は、不図示の容器の開口端部と嵌合する凸部33と、外周側から窪ませて構成される溝部34と、外周縁部30の下端31から外方に延びる鍔状のフランジ部35と、面取り部37と、を備えて構成される。
【0063】
本実施形態では、溝部34の内周面側が凸部33となっている。すなわち、外周縁部30を、外周側から窪ませて構成される溝部34の内周側が突出して凸部33が構成される。この凸部33が、不図示の容器の開口端部と嵌合する。本実施形態では、外周縁部30は、溝部34(凸部33)を複数有しており、溝部34(凸部33)が等間隔で不連続に、外周縁部30の上端または下端からの距離が一定となるように配置されている。また、本実施形態では、溝部34(凸部33)が矩形状を有して構成されている。しかし、溝部34および凸部33の形状および配置位置はこれに限定されない。
【0064】
フランジ部35を備えることにより、パルプモールド蓋110の使用者が、パルプモールド蓋110と不図示の容器との嵌合状態を解除する際に、フランジ部35に使用者の指が引っ掛かりやすくなり、パルプモールド蓋110を開けやすくなる。
【0065】
パルプモールド蓋110に、面取り部37が形成されると稜角がなくなるので、パルプモールド蓋110は全体的に丸みを帯びた印象になり、意匠性に優れるという効果を奏する。
【0066】
第二の実施形態に係るパルプモールド蓋110も、パルプモールド蓋110の上方から鉛直方向(
図2中の分図(a)の矢印参照)に押圧されることにより、不図示の容器の開口端部が、パルプモールド蓋110の凸部33を乗り越えて、パルプモールド蓋110の凸部33と係合し、不図示の容器と嵌合可能である。
【0067】
また、不図示の容器と嵌合したパルプモールド蓋110は、使用者が、外周縁部30の下端31に指等を引っ掛け、引き上げることにより(
図3中の分図(a)参照)、凸部33が、容器の開口端部を乗り越えて、容器との嵌合が解除される(
図3中の分図(b)参照)。
【0068】
以上、第二の実施形態に係るパルプモールド蓋110について説明した。次に、
図6を用いて第三の実施形態に係るパルプモールド蓋120について説明する。上述した実施形態と同一または類似する構成については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0069】
[第三の実施形態に係るパルプモールド蓋]
図6に示すように、第三の実施形態に係るパルプモールド蓋120は、頂部10と、該頂部10の外周縁から垂下する外周縁部30と、を備え、不図示の容器の開口端部に嵌合および嵌合解除可能であり、上記要件1および要件2の少なくともいずれかを満たし、好ましくは上記要件1および要件2を満たす。
【0070】
第三の実施形態に係る頂部10は、第一傾斜部11と、第一凹み段差部15Aと、第二傾斜部12と、第二凹み段差部15Bと、飲み口17と、2つの貫通孔19,19と、第三傾斜部13と、第三凹み段差部15Cと、第四傾斜部14と、を備えて構成される。
【0071】
第一傾斜部11は、第一凹み段差部15Aを形成するために配置される。第二傾斜部12は、第一凹み段差部15Aと第二凹み段差部15Bとを接続するように配置される。第三傾斜部13および第四傾斜部14は、第三凹み段差部15Cを形成するために配置される。第一傾斜部11、第二傾斜部12、第三傾斜部13、および第四傾斜部14は、それぞれ、第一凹み段差部15A、第二凹み段差部15B、第三凹み段差部15C、および第三凹み段差部15Cに対して垂直であってもよい。また、第一傾斜部11、第二傾斜部12、第三傾斜部13、および第四傾斜部14は、傾斜が一定でなくてもよく、曲線形状の曲線部を有していてもよい。
【0072】
本実施形態では、飲み口17は、略矩形状に構成されており、頂部10(パルプモールド蓋120における最高部)に配置されているが、適宜変更することができる。2つの貫通孔19,19は、蒸気や空気の通り道であり、使用者が飲み口17から飲料をスムーズに飲むために設置される。貫通孔19は、とくに限定されないが、飲み口17から離れた位置に配置されることが好ましい。貫通孔19は、1つ以上あればよく、その数や設置位置は適宜変更することができる。本実施形態では、2つの貫通孔19,19は、それぞれ、頂部10(パルプモールド蓋120における最高部)と、第二凹み段差部15Bとに配置されている。
【0073】
本実施形態では、第一凹み段差部15Aおよび第二凹み段差部15Bは、使用者が飲み口17から飲料を飲む際の使用方向から見たとき、略半円形状となっており、第一凹み段差部15Aは、欠けた部分が下弦に配置され、第二凹み段差部15Bは、欠けた部分が上弦に配置されているが、適宜変更することができる。また、本実施形態では、第三凹み段差部15Cは、第三傾斜部13の下端から外方に向けて鍔状に延びて構成されているが、適宜変更することができる。
【0074】
第三実施形態に係る頂部10は、第三傾斜部13を含む円柱形状部に鍔状の第三凹み段差部15Cと、第四傾斜部14と、を備えて構成されている。
【0075】
第三実施形態に係る外周縁部30は、外周側から窪ませて構成される溝部34と、溝部34の内周側において突出する凸部(不図示)と、外周縁部30の下端31から外方に延びる鍔状のフランジ部35と、面取り部37と、を備えて構成される。
【0076】
第三の実施形態に係るパルプモールド蓋120も、パルプモールド蓋120上面に鉛直方向(
図2中の分図(a)の矢印参照)に荷重がかけられることにより、不図示の容器の開口端部が、パルプモールド蓋120の凸部33を乗り越えて、不図示の容器の開口端部とパルプモールド蓋120の凸部33が嵌合可能である。
【0077】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載された範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更または改良を加えることが可能である。
【0078】
たとえば、上述した実施形態では、パルプモールド蓋110,120が、平面視円形状の容器と嵌合および嵌合解除可能なものである場合を例示して説明したが、たとえば平面視矩形状等の容器と嵌合および嵌合解除可能であるものとしてもよい。すなわち、パルプモールド蓋の頂部が平面視矩形状等を有していてもよい。
【0079】
また、たとえば、上述した実施形態では、凸部33が外周縁部30の内周1周にわたって1条形成されている場合、および矩形状を有し、等間隔で不連続に、外周縁部30の上端または下端からの距離が一定となるように配置されている場合を例示して説明した。しかし、凸部33の形状および配置位置はこれに限定されない。たとえば、凸部33は、外周縁部30の上端または下端からの距離が一定でない曲線であってもよいし、不連続曲線であってもよい。また、凸部33は、くの字形状、逆くの字形状、コの字形状、逆コの字形状、C字形状、逆C字形状、U字形状、逆U字形状等の特殊形状を有していてもよく、それらの組み合わせであってもよい。すなわち、外周縁部30が、複数の凸部33を有する場合、凸部33は、同じ形状であっても、異なる形状の組み合わせであってもよい。また、外周縁部30が複数の凸部33を備える場合、その配置間隔は、等間隔でなくてもよい。
【0080】
さらに、たとえば、上述した実施形態では、凸部33が縦断面視略半円形状を有している場合を例示して説明したが、凸部33の形状は、これに限定されない。
図7中の分図(a)に例示するように、凸部は、縦断面視において、三角形状を有していてもよく、四角形状等の多角形状を有していてもよい。また、
図7中の分図(b)に例示するように、凸部は、縦断面視において、フック形状を有していてもよい。さらに、
図7中の分図(c)に例示するように、凸部は、起伏、すなわち、凹凸を有していてもよい。
【0081】
また、たとえば、上述した実施形態では、凸部33が1条配置されている場合を例示して説明したが、凸部33の配置は、これに限定されない。
図8に例示するように、凸部は、2条配置されていてもよく、3条以上配置されていてもよく、その数や配置位置は適宜変更することができる。
図8では、パルプモールド蓋の縦断面視において、凸部が、外周縁部の上端または下端から一定の距離を有するように、2条配置されている場合を例示しているが、凸部は、外周縁部の上端または下端からの距離が異なるように配置されていてもよい。また、外周縁部に2条以上配置される凸部は、不連続であってもよく、その形状もとくに限定されず、上述した形状等に適宜変更可能である。さらに、外周縁部に2条以上配置される凸部は、曲線であってもよいし、不連続曲線であってもよい。また、
図8に例示するように、本発明のパルプモールド蓋は、上述した溝部34を備えていても、備えていなくてもよい。
なお、嵌合ショックピーク値が2つ以上あるときには、最大荷重値(嵌合ショックピーク値)を嵌合力とする。
【0082】
さらに、たとえば、上述した実施形態では、外周縁部30が凸部33を有している場合を例示して説明したが、
図9に例示するように、外周縁部30は凸部33を有していなくてもよい。
【0083】
また、たとえば、第一の実施形態に係るパルプモールド蓋100は、頂部10が平らになっている場合を例示して説明したが、
図9中の分図(b)に例示するように、頂部は、平らでなくてもよく、パルプモールド蓋の中央に向かって高くなるようなドーム形状に構成されていてもよい。また、頂部は、パルプモールド蓋の中央に向かって低くなるように構成されていてもよい。すなわち、頂部は、高低差を有していてもよい。
【0084】
さらに、
図10に例示するように、頂部は、第二の実施形態に係るパルプモールド蓋110のような傾斜部および凹み段差部を有していてもよい。
図10中の分図(a)に例示するように、頂部は、傾斜部および凹み段差部を1つずつ有していてもよいし、
図10中の分図(b)および
図10中の分図(c)に例示するように、傾斜部および凹み段差部を複数有していてもよく、その数および配置位置等は、適宜変更可能である。また、頂部の凹み段差部に対向する凹み段差部対向部は、
図10中の分図(b)に例示するように、直線形状を有して構成されていてもよく、
図10中の分図(c)に例示するように、対向する凹み段差部の形状に対応する形状を有していてもよく、その形状は適宜変更可能である。
【0085】
また、たとえば、上述した実施形態では、外周縁部30の厚さが一定である場合を例示して説明したが、
図11に例示するように、外周縁部30の厚さは一定でなくてもよい。
図11中の分図(a)に例示するように、外周縁部30の下端に向けて、末広がりになっていてもよいし、
図11中の分図(b)に例示するように、外周縁部30の上部から下部に向けて厚さが小さくなっていてもよい。すなわち、外周縁部30の厚さは一定でなくてもよく、差を有していてもよい。
なお、外周縁部30の厚さとは、フランジ部35を有している場合にはフランジ部35を除いた部分の厚さをいう。
【0086】
上述した変形例に係るパルプモールド蓋は、上述した実施形態に係るパルプモールド蓋100,110,120、または他の変形例に係るパルプモールド蓋が備える構成を有していてもよい。
【0087】
具体的には、上述した変形例に係るパルプモールド蓋は、たとえば、フランジ部35を有していてもよいし、飲み口17を有していてもよいし、貫通孔19を有していてもよいし、切込みを有していてもよい。
また、たとえば、
図7ないし
図9に例示されるパルプモールド蓋の外周縁部が、
図11中の分図(a)に例示されるパルプモールド蓋のように、外周縁部の下端に向けて、末広がりになっていてもよいし、
図11中の分図(b)に例示するように、外周縁部の上部から下部に向けて厚さが小さくなっていてもよい。
さらに、たとえば、
図7ないし
図9、および
図11に例示されるパルプモールド蓋が、傾斜部および凹み段差部を有していてもよく、その数および配置位置等は、適宜変更可能である。
また、たとえば、
図9ないし
図11では、パルプモールド蓋の外周縁部が、凸部を有していない場合を例示しているが、これに限定されず、凸部を有していてもよい。その場合、第一の実施形態に係るパルプモールド蓋100の形状と変形例に係るパルプモールド蓋の形状が同一になる場合があるが、凸部の形状や数、配置位置は、とくに限定されず、凸部が上述した形状等を有していてもよく、不連続であってもよく、外周縁部の上端または下端からの距離が異なるように配置されていてもよい。
さらに、たとえば、
図7に例示されるパルプモールド蓋の凸部が2条以上配置されていてもよいし、不連続で2条以上配置されていてもよい。
【0088】
その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0089】
以下に実施例と比較例とを挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0090】
[パルプモールド蓋の作製]
実施例1-1
広葉樹晒しパルプであるユーカリ晒しバージンパルプ(LBKP、カナダ標準ろ水度(CSF):620mL)をパルプスラリーにし、該パルプスラリー100質量%に対して、固形分換算でサイズ剤としてAKD(アルキルケテンダイマー、星光PMC株式会社製)を、0.8質量%を添加し、撹拌後にスラリー濃度を7質量%に調整した。凝集物を除去するために、該スラリーをろ過し、ろ過後の該スラリー中に、表面に金属メッシュを貼った抄紙金型を沈め、金型内部から真空吸引し、メッシュ上にパルプスラリーを吸い付け、立体的な湿紙を形成した。湿紙を脱水用金型へ移送し、0.65MPaの圧力で加圧脱水し、続いて180℃に加熱した金型へ湿紙を移送し、さらに1.1MPaの圧力で加圧乾燥し、余分の部分を断裁した後、パンチングにより
図12に示すパルプモールド蓋200を得た。
図12に示すように、パルプモールド蓋200は、頂部10と、該頂部10の外周縁から垂下する外周縁部30と、を備え、頂部10は、傾斜部11,12と、窪んで段差を有する凹み段差部15と、を備え、さらに、外周縁部30は、外周側から窪ませて内周1周にわたって配置される一条の溝部34と、溝部34の内周側において突出し、容器の開口端部と嵌合する1条の凸部(不図示)と、外周縁部30の下端31から外方に延びる鍔状のフランジ部35と、面取り部37と、を備えている。
パルプモールド蓋200の坪量は、400g/m
2であった。パルプモールド蓋200の内径は、嵌合力および開封力の測定に用いる容器(紙コップ)の外径とほぼ同等の80mmであった。パルプモールド蓋のサイズ(外径)は、約82mm、厚みは約0.7mm、密度は約0.57g/cm
3であった。パルプモールド蓋200を容器(紙コップ)に嵌合した際の嵌合力(嵌合ショックピーク値)が0.30N/cmになるように、凸部の深さと幅を調整した。そのパルプモールド蓋200は、嵌合が解除されたときの開封力(開封ショックピーク値)は0.10N/cmであった。
【0091】
実施例1-2
嵌合力(嵌合ショックピーク値)および開封力(開封ショックピーク値)が表1に記載された値となるように凸部の高さと幅を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、パルプモールド蓋を得た。
【0092】
実施例1-3
嵌合力(嵌合ショックピーク値)および開封力(開封ショックピーク値)が表1に記載された値となるように凸部の高さと幅を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、パルプモールド蓋を得た。
【0093】
実施例1-4
嵌合力(嵌合ショックピーク値)および開封力(開封ショックピーク値)が表1に記載された値となるように凸部の高さと幅を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、パルプモールド蓋を得た。
【0094】
実施例1-5
嵌合力(嵌合ショックピーク値)および開封力(開封ショックピーク値)が表1に記載された値となるように凸部の高さと幅を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、パルプモールド蓋を得た。
【0095】
実施例1-6
嵌合力(嵌合ショックピーク値)および開封力(開封ショックピーク値)が表1に記載された値となるように凸部の高さと幅を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、パルプモールド蓋を得た。
【0096】
実施例1-7
嵌合力(嵌合ショックピーク値)および開封力(開封ショックピーク値)が表1に記載された値となるように凸部の高さと幅を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、パルプモールド蓋を得た。
【0097】
実施例1-8
嵌合力(嵌合ショックピーク値)および開封力(開封ショックピーク値)が表1に記載された値となるように凸部の高さと幅を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、パルプモールド蓋を得た。
【0098】
実施例1-9
嵌合力(嵌合ショックピーク値)および開封力(開封ショックピーク値)が表1に記載された値となるように凸部の高さと幅を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、パルプモールド蓋を得た。
【0099】
実施例1-10
パルプモールド蓋の坪量を550g/m2、密度を0.55g/cm3に変更し、パルプモールド蓋を容器(紙コップ)に嵌合した際の嵌合力(嵌合ショックピーク値)が0.18N/cmになるように、凸部の深さと幅を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、パルプモールド蓋を得た。そのパルプモールド蓋は、開封力(開封ショックピーク値)が0.12N/cmであった。
【0100】
実施例1-11
パルプモールド蓋の坪量を300g/m2、密度を0.58g/cm3に変更し、パルプモールド蓋を容器(紙コップ)に嵌合した際の嵌合力(嵌合ショックピーク値)が6.2N/cmになるように、凸部の深さと幅を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、パルプモールド蓋を得た。そのパルプモールド蓋の開封力(開封ショックピーク値)は1.40N/cmであった。
【0101】
実施例1-12
金型を変更し、
図4に示すように、凸部の形状を1条ではなく、部分的に溝部(凸部)を形成して、凸部を破線状に配置するように変更し、凸部の深さと幅を調整し、嵌合力(嵌合ショックピーク値)が1.0N/cmになるに調整した以外は、実施例1-1と同様にして、パルプモールド蓋を得た。そのパルプモールド蓋は、開封力(開封ショックピーク値)が0.24N/cmであった。
【0102】
実施例1-13
金型を変更し、
図13に示すようなパルプモールド蓋210を得た。
図13に示すように、パルプモールド蓋210は、頂部10と、該頂部10の外周縁から垂下する外周縁部30と、を備え、頂部10は、傾斜部11と、第一凹み段差部15Aと、傾斜部12と、第二凹み段差部15Bと、を備え、さらに、外周縁部30は、フランジ部35と、面取り部37と、を備えている。実施例1-13に係るパルプモールド蓋210は、第一凹み段差部15Aよりも第二凹み段差部15Bの方が頂部10の最上部からの距離が短くなっている。なお、パルプモールド蓋210の縦断面は、
図10の分図(b)に例示されるパルプモールド蓋にフランジ部35が形成された形状になっている。
パルプモールド蓋210の坪量は、200g/m
2であった。パルプモールド蓋210の内径は、嵌合力および開封力の測定に用いる容器(紙コップ)の外径とほぼ同等の80mmであった。パルプモールド蓋のサイズ(外径)は、約82mm、厚みは約0.3mm、密度は約0.58g/cm
3であった。
パルプモールド蓋210の嵌合を解除したときの開封力(開封ショックピーク値)は0.15N/cmであった。また、実施例1-13のパルプモールド210蓋は、容器に嵌め込む際の嵌合ショックピーク値は0.60N/cmであった。
【0103】
比較例1-1
嵌合力(嵌合ショックピーク値)および開封力(開封ショックピーク値)が表1に記載された値となるように凸部の高さと幅を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、パルプモールド蓋を得た。
【0104】
比較例1-2
嵌合力(嵌合ショックピーク値)および開封力(開封ショックピーク値)が表1に記載された値となるように凸部の高さと幅を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、パルプモールド蓋を得た。
【0105】
参考例1-1
パルプモールド蓋200に代えて、市販のプラスチック製蓋(東罐興業株式会社製の商品名「SMT-280-F」)を用いた。
【0106】
実施例2-1
広葉樹パルプであるユーカリ晒しバージンパルプ(LBKP、カナダ標準ろ水度(CSF):500mL)をパルプスラリーにし、該パルプスラリー100質量%に対して、固形分換算でサイズ剤としてAKD(アルキルケテンダイマー、星光PMC株式会社製)を、0.8質量%を添加し、撹拌後にスラリー濃度を0.7質量%に調整した。凝集物を除去するために、該スラリーをろ過し、ろ過後の該スラリー中に、表面に金属メッシュを貼った抄紙金型を沈め、金型内部から真空吸引し、メッシュ上にパルプスラリーを吸い付け、立体的な湿紙を形成した。湿紙を脱水用金型へ移送し、0.7MPaの圧力で加圧脱水し、続いて180℃に加熱された金型へ湿紙を移送し、さらに1.2MPaの圧力で加圧乾燥し、余分の部分を断裁した後、パンチングにより
図14に示すパルプモールド蓋を得た。
パルプモールド蓋の坪量は、455g/m
2であった。パルプモールド蓋の内径は、嵌合力および開封力の測定に用いる容器(紙コップ)の外径とほぼ同等の80mmであった。パルプモールド蓋を容器(紙コップ)に嵌合した際の嵌合力(嵌合ショックピーク値)が1.5N/cmになるように、凸部の深さと幅を調整した。そのパルプモールド蓋は、嵌合が解除されたときの開封力(開封ショックピーク値)は0.40N/cmであった。パルプモールド蓋のサイズ(外径)は、約82mm、厚みは約0.7mm、密度は約0.65g/cm
3であった。また、実施例2-2~2-16についても同様であった。
【0107】
実施例2-2
広葉樹パルプであるユーカリ晒しバージンパルプ(LBKP、カナダ標準ろ水度(CSF):500mL)50質量部と、非木材パルプであるバガス晒しバージンパルプ(カナダ標準ろ水度(CSF):380mL)50質量部とを混合し、パルプスラリーを得た。このパルプスラリー100質量%に対して、固形分換算でサイズ剤としてAKD(アルキルケテンダイマー、星光PMC株式会社製)を、0.8質量%を添加し、撹拌後にスラリー濃度を0.7質量%に調整した。該スラリーを用いて、実施例2-1と同様に、パルプモールド蓋を容器(紙コップ)に嵌合した際の嵌合力(嵌合ショックピーク値)が1.5N/cmになるように、凸部の深さと幅を調整し、
図14に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0108】
実施例2-3
ユーカリ晒しバージンパルプをアカシア晒しバージンパルプに変更した以外は実施例2-1と同様に
図14に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0109】
実施例2-4
ユーカリ晒しバージンパルプをアカシア晒しバージンパルプに変更した以外は実施例2-2と同様に
図14に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0110】
実施例2-5
ユーカリ晒しバージンパルプのカナダ標準ろ水度(CSF)を350mLに変更した以外は実施例2-1と同様に
図14に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0111】
実施例2-6
ユーカリ晒しバージンパルプのカナダ標準ろ水度(CSF)を250mLに変更した以外は実施例2-1と同様に
図14に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0112】
実施例2-7
ユーカリ晒しバージンパルプ(LBKP、カナダ標準ろ水度(CSF):500mL)をバガスバージンパルプ(カナダ標準ろ水度(CSF):250mL)に変更した以外は実施例2-1と同様の方法で
図14に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0113】
実施例2-8
ユーカリ晒しバージンパルプのカナダ標準ろ水度(CSF)を250mLに、バガス晒しバージンパルプのカナダ標準ろ水度(CSF)を250mLに変更した以外は実施例2-2と同様に
図14に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0114】
実施例2-9
広葉樹パルプであるユーカリ晒しバージンパルプ(LBKP、カナダ標準ろ水度(CSF):500mL)45質量部と、古紙パルプ(カナダ標準ろ水度(CSF):500mL)5質量部と、バガス晒しバージンパルプ(カナダ標準ろ水度(CSF):380mL)50質量部とを混合し、パルプスラリーを得た。このパルプスラリー100質量%に対して、固形分換算でサイズ剤としてAKD(アルキルケテンダイマー、星光PMC株式会社製)を、0.8質量%を添加し、撹拌後にスラリー濃度を0.7質量%に調整した。該スラリーを用いて、実施例2-1と同様に、パルプモールド蓋を容器(紙コップ)に嵌合した際の嵌合力(嵌合ショックピーク値)が1.5N/cmになるように、凸部の深さと幅を調整し、
図14に示す形状のパルプモールド蓋を得た。外見上、古紙由来と思われる黒点がわずかに確認できた。
【0115】
実施例2-10
ユーカリ晒しバージンパルプ(LBKP、カナダ標準ろ水度(CSF):500mL)をラジアータパイン晒しバージンパルプ(NBKP、カナダ標準ろ水度(CSF):380mL)に変更した以外は実施例2-1と同様に
図14に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0116】
実施例2-11
針葉樹パルプであるラジアータパイン晒しバージンパルプ(NBKP、カナダ標準ろ水度(CSF):380mL)50質量部と、バガス晒しバージンパルプ(カナダ標準ろ水度(CSF):250mL)50質量部とを混合し、パルプスラリーを得た。このパルプスラリー100質量%に対して、固形分換算でサイズ剤としてAKD(アルキルケテンダイマー、星光PMC株式会社製)を、0.8質量%を添加し、撹拌後にスラリー濃度を0.7質量%に調整した。該スラリーを用いて、パルプモールド蓋を容器(紙コップ)に嵌合した際の嵌合力(嵌合ショックピーク値)が1.5N/cmになるように、凸部の深さと幅を調整し、実施例2-1と同様に、
図14に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0117】
実施例2-12
広葉樹パルプであるユーカリ晒しバージンパルプ(LBKP、カナダ標準ろ水度(CSF):500mL)をパルプスラリーにし、このパルプスラリー100質量%に対して、固形分換算でサイズ剤としてAKD(アルキルケテンダイマー、星光PMC株式会社製)を、0.8質量%を添加し、撹拌後にスラリー濃度を5.0質量%に調整した。該スラリーを用いて、実施例2-1と同様に、パルプモールド蓋を容器(紙コップ)に嵌合した際の嵌合力(嵌合ショックピーク値)が1.5N/cmになるように、凸部の深さと幅を調整し、
図14に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0118】
実施例2-13
広葉樹パルプであるユーカリ晒しバージンパルプ(LBKP、カナダ標準ろ水度(CSF):500mL)をパルプスラリーにし、このパルプスラリー100質量%に対して、固形分換算でサイズ剤としてAKD(アルキルケテンダイマー、星光PMC株式会社製)を、0.8質量%を添加し、撹拌後にスラリー濃度を2.5質量%に調整した。該スラリーを用いて、実施例2-1と同様に、パルプモールド蓋を容器(紙コップ)に嵌合した際の嵌合力(嵌合ショックピーク値)が1.5N/cmになるように、凸部の深さと幅を調整し、
図14に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0119】
実施例2-14
広葉樹パルプであるユーカリ晒しバージンパルプ(LBKP、カナダ標準ろ水度(CSF):500mL)をパルプスラリーにし、このパルプスラリー100質量%に対して、固形分換算でサイズ剤としてAKD(アルキルケテンダイマー、星光PMC株式会社製)を、0.8質量%を添加し、撹拌後にスラリー濃度を0.5質量%に調整した。該スラリーを用いて、実施例2-1と同様に、パルプモールド蓋を容器(紙コップ)に嵌合した際の嵌合力(嵌合ショックピーク値)が1.5N/cmになるように、凸部の深さと幅を調整し、
図14に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0120】
実施例2-15
広葉樹パルプであるユーカリ晒しバージンパルプ(LBKP、カナダ標準ろ水度(CSF):500mL)をパルプスラリーにし、このパルプスラリー100質量%に対して、固形分換算でサイズ剤としてAKD(アルキルケテンダイマー、星光PMC株式会社製)を、0.8質量%を添加し、撹拌後にスラリー濃度を0.3質量%に調整した。該スラリーを用いて、実施例2-1と同様に、パルプモールド蓋を容器(紙コップ)に嵌合した際の嵌合力(嵌合ショックピーク値)が1.5N/cmになるように、凸部の深さと幅を調整し、
図14に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0121】
実施例2-16
ユーカリ晒しバージンパルプ(LBKP、カナダ標準ろ水度(CSF):500mL)を竹晒しバージンパルプ(カナダ標準ろ水度(CSF):500mL)に変更した以外は実施例2-1と同様に
図14に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0122】
[評価および分析]
上述した実施例および比較例の原料パルプ、パルプモールド蓋、ならびに参考例のプラスチック製蓋について、以下の評価および分析を行った。その結果を表1及び2に示す。
【0123】
<原料パルプ>
(カナダ標準ろ水度(CSF))
パルプモールド蓋を構成する原料パルプのカナダ標準ろ水度は、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定した。
【0124】
<パルプモールド蓋>
(坪量)
パルプモールド蓋の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定した。
【0125】
(厚さおよび密度)
パルプモールド蓋の厚さおよび密度は、JIS P 8118 :2014に準じて測定を行った。
【0126】
(嵌合力)
パルプモールド蓋またはプラスチック製蓋の嵌合力は、以下のとおり測定した。まず、ISO 187:1990に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)に、パルプモールド蓋またはプラスチック製蓋と容器(市販の紙コップ、外径約80mm)とを24時間静置し、調温および調湿した。その後、パルプモールド蓋またはプラスチック製蓋を容器の開口端部の上方に、開口端部の上端に対して水平に置き、100mm/minの速度で鉛直方向に荷重をかけた(
図2参照)。そして、パルプモールド蓋またはプラスチック製蓋が、容器の開口端部に嵌合したときの最大荷重値(嵌合ショックピーク値)を嵌合力とした。
【0127】
(開封力)
パルプモールド蓋またはプラスチック製蓋の開封力は、以下のとおり測定した。まず、ISO 187:1990に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)に、パルプモールド蓋またはプラスチック製蓋が嵌合した容器(市販の紙コップ、外径:約80mm)を24時間静置し、調温および調湿した。その後、容器の開口端部に嵌合したパルプモールド蓋またはプラスチック製蓋の外周縁部の下端にL字形状の治具を引っ掛け、300mm/minの速度で引き上げた(
図3参照)。そして、パルプモールド蓋またはプラスチック製蓋と容器との嵌合が解除されたときの荷重値(開封ショックピーク値)を開封力とした。
【0128】
(表面凸の高さSp、表面凹凸の差Sp+Sv絶対値)
3D形状測定機 VR-3000(KEYENCE)、対応ヘッドVR-3200を用いて、ISO 25178に準じて測定した。
各実施例、比較例で作製したパルプモールド蓋を用意し、ISO 187:1990に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)に、24時間静置し、調温および調湿を行った。各蓋の測定箇所(10mm×10mm:10箇所)をランダムに選び、上記環境で倍率40×で測定を行った。なお、蓋は、
図12ないし
図14の紙面上で見えている面が外面であり、測定は外面について行った。
観察と解析は下記ソフトを用いて行った。
観察アプリケーション(VR-H2V)(KEYENCE)
解析アプリケーション(VR-H2A)(KEYENCE)
各測定箇所において、得られた外面の表面凸の高さSp1、Sp2、Sp3・・・Sp10、と外面の凹部の深さSv1、Sv2、Sv3・・・Sv10を用いて、下記の式にて計算した。
表面凸の高さSp=(Sp1+Sp2+Sp3+・・・+Sp10)/10 (1)
表面凹部の深さSv=(Sv1+Sv2+Sv3+・・・+Sv10)/10 (2)
【0129】
(液体の流出に関する評価)
容器(市販の紙コップ、外径:約80mm、高さ:90mm)に、上端から10mm程度まで果汁100%のオレンジジュースを入れ、パルプモールド蓋またはプラスチック製蓋と嵌合させ、容器を傾けた状態で10秒間保持し、果汁の流出の有無を確認し、下記の方法で評価を行った。
A:果汁の流出および滲出が全くない。
B:果汁の流出はないが、果汁がわずかに滲出している。
C:果汁の流出はないが、果汁が、実用上問題ない程度に滲出している。
D:果汁の流出がある。
【0130】
(開封のしやすさに関する評価)
パルプモールド蓋またはプラスチック製蓋を嵌合した容器(市販の紙コップ、外径:約80mm)を手で開封したときの開封のしやすさについて、下記の方法で評価を行った。
A:抵抗なく、開封可能である。
B:少し抵抗があるが、問題なく開封可能である。
C:抵抗があり、力を強く入れれば開封可能であり、実用上は問題ない。
D:かなり抵抗があり、力を強く入れて開封しようとすると、容器の内容物がこぼれるなどの問題が生じる場合がある。
【0131】
(平滑感)
各実施例、比較例で作製したパルプモールド蓋を10個ずつ用意し、ISO 187:1990に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)に、24時間静置し、調温および調湿を行った。
上記環境でパルプモールド蓋の表と裏を手で触り、下記のように評価した。
5:非常に平滑で、つるつるしている。
4:表面にわずかに繊維が感じられるが、平滑である。
3:平滑感はあるが、表面に繊維が多く感じられるレベル。
2:平滑感はあるが、表面に繊維が非常に多く感じられるレベル。
1:平滑感がなく、ざらざらしている。
0:1のレベル以下。
表中の数字は10個の平均値(小数点は四捨五入)である。
【0132】
(耐油性)
ヒマシ油/トルエン/ヘプタン=50/25/25の比率で試験液200mL(JAPAN TAPPI No.41:2000のキットナンバー6の配合相当)を作製し、実験に用いた。
各実施例、比較例で作製したパルプモールド蓋を5個ずつ用意し、ISO 187:1990に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)に、24時間静置し、調温および調湿を行った。上記環境でパルプモールド蓋の裏(内面)に、上記試験液を25mmの高さから試薬瓶のスポイド(JAPAN TAPPI No.41:2000と同様の試薬瓶)を用いて、蓋の水平部分に1滴を落とし、15秒後に、パルプモールド蓋の表(外面)から観察した。
4:蓋の表に液の浸透が全く見られなかった
3:蓋の表に液の浸透がわずかに確認されたが、その面積は、裏の液の広がりの15%以下であった
2:蓋の表に液の浸透が見られ、その面積は、裏の液の広がりの15%を超え、50%以下であった
1:蓋の表に液の浸透が見られ、その面積は、裏の液の広がりの50%を超えるものであった
表中の数字は5個の平均値(小数点は四捨五入)である。
【0133】
(口触り)
実施例2-1~2-16で作製したパルプモールド蓋を5個ずつ用意し、ISO 187:1990に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)に、24時間静置し、調温および調湿を行った。蓋を紙コップにかぶせ、上記環境で開孔部から水を飲むような形で口にあて、口に当たった際の感触を評価した。
5:繊維が口に当たる感触がなく、全く違和感がない。
4:わずかではあるが、繊維が口に当たる感じがあるが、違和感はない。
3:繊維が口に当たるが、違和感を感じるほどではない。
2:繊維が口に当たり、少し違和感がある。
1:繊維が口に当たり、違和感がある。
表中の数字は5個の平均値(小数点は四捨五入)である。
【0134】
【0135】
【0136】
表1および表2からわかるように、本発明のパルプモールド蓋によれば、嵌合力または開封力が所定範囲内であることによって閉めやすさと開けやすさとを両立し、通常の使用状態で嵌合状態を維持可能である。また、本発明のパルプモールド蓋によれば、表面凸の高さまたは表面凹凸差の絶対値が所定値以下であることによって耐油性および表面平滑性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明のパルプモールド蓋は、閉めやすさと開けやすさとを両立し、通常の使用状態で嵌合状態を維持可能であるので、たとえば紙コップ等の飲料用容器などの容器の蓋に好適である。
【符号の説明】
【0138】
100,110,120,200,210:パルプモールド蓋、10:頂部、11:第一傾斜部、12:第二傾斜部、13:第三傾斜部、14:第四傾斜部、15:凹み段差部、15A:第一凹み段差部、15B:第二凹み段差部、15C:第三凹み段差部、17:飲み口、19:貫通孔、30:外周縁部、31:(外周縁部の)下端、33:凸部、34:溝部、35:フランジ部、37:面取り部、1:容器、3:開口端部、5:(開口端部の)上端、N:L字形状の治具、H:凸部の高さ、W:凸部の幅