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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】噴射制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/04 20060101AFI20240214BHJP
   F02M 51/00 20060101ALI20240214BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
F02D41/04
F02M51/00 A
F02D45/00 369
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020157466
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051147
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】高谷 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】福田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩介
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-044469(JP,A)
【文献】特開2016-183597(JP,A)
【文献】特開2014-031731(JP,A)
【文献】特開2011-047318(JP,A)
【文献】特開2018-112086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 - 45/00
F02M 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射弁を電流駆動して開弁・閉弁することにより、内燃機関に対する燃料噴射を制御する噴射制御装置(1)であって、
バッテリ電圧を昇圧する昇圧回路(3)と、
前記昇圧回路を昇圧制御する昇圧制御部(5a)と、
前記昇圧回路に対する充電禁止時間を前記昇圧制御部に設定する充電制御設定部(10a)と、
通電指示のオンからオフへの切替タイミングから閉弁タイミングまでの時間を示す閉弁検出時間から閉弁検出最大時間を特定する最大時間特定部(10b)と、を備え、
前記充電制御設定部は、前記閉弁検出最大時間を前記充電禁止時間として前記昇圧制御部に設定する噴射制御装置。
【請求項2】
前記閉弁検出最大時間が設定されている期間で学習用微小噴射が行われたときの閉弁検出時間を学習し、閉弁検出学習時間を取得する学習時間取得部(10c)と、
前記閉弁検出学習時間の最大値を学習後最大時間として記憶する最大値記憶部(10d)と、を備える請求項1に記載した噴射制御装置。
【請求項3】
前記充電制御設定部は、前記学習後最大時間にマージン時間を加算した時間を学習後閉弁検出時間として算出し、次回のトリップ以降では、前記学習後閉弁検出時間を充電禁止時間として前記昇圧制御部に設定する請求項2に記載した噴射制御装置。
【請求項4】
前記学習後最大時間を更新する最大値更新部(10e)を備え、
前記充電制御設定部は、更新後の前記学習後最大時間にマージン時間を加算した時間を更新後の学習後閉弁検出時間として算出し、その算出した更新後の学習後閉弁検出時間を充電禁止時間として前記昇圧制御部に設定する請求項2又は3に記載した噴射制御装置。
【請求項5】
前記充電制御設定部は、前記充電禁止時間を上限値以下で前記昇圧制御部に設定する請求項1から4の何れか一項に記載した噴射制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射弁を電流駆動して開弁・閉弁することにより、内燃機関に対する燃料噴射を制御する噴射制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
噴射制御装置は、インジェクタと称される燃料噴射弁を電流駆動して開弁・閉弁することにより、例えば自動車のガソリンエンジン等の内燃機関に対する燃料噴射を制御する。噴射制御装置は、燃料噴射弁に高電圧を印加して開弁を制御する。即ち、噴射制御装置は、電源回路の基準電源電圧となるバッテリ電圧を昇圧する昇圧回路と、昇圧回路を昇圧制御する昇圧制御部とを備え、バッテリ電圧を昇圧回路により昇圧して昇圧電圧を生成し、その生成した昇圧電圧を燃料噴射弁に印加して開弁を制御する。又、噴射制御装置は、燃料噴射弁に通電される電流又は電圧の波形の変曲点を検出して燃料噴射弁の閉弁タイミングを検出する。噴射制御装置は、通電指示のオンからオフへの切替タイミングから閉弁タイミングまでの時間を閉弁検出時間として検出し、その検出した閉弁検出時間を学習して噴射精度を高めている。
【0003】
噴射制御装置においては、昇圧制御により充電ノイズが発生することがあり、燃料噴射弁の通電電流をモニタして開弁・閉弁を制御するときに、その昇圧制御により発生した充電ノイズが配線基板内又は電源系経路を伝達すると、電流モニタ精度が悪化してしまうことが判明している。電流モニタ精度が悪化すると、噴射量がばらつき、排気エミッションが悪化し、燃費が悪化してしまうことになる。このような事情から、充電ノイズの発生による悪影響が閉弁検出学習に及ぼされないように、昇圧制御を一定時間禁止する構成が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-33926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、昇圧制御を一定時間禁止する構成では、内燃機関の1サイクルあたりの充電可能時間が減少してしまい、充電可能時間を十分に確保することができない問題が発生する。このような問題を解決するために、昇圧回路を高速充電可能な回路とすることが考えられるが、高速充電可能な回路を設ける構成では、回路の大型化やコストアップ等の新たな問題が発生する。
【0006】
本発明は、上記した事情を考慮してなされたものであり、閉弁検出時間を適切に学習して噴射精度を適切に高めると共に、充電可能時間を適切に確保することができる噴射制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した発明によれば、噴射制御装置(1)は、燃料噴射弁を電流駆動して開弁・閉弁することにより、内燃機関に対する燃料噴射を制御する。噴射制御装置は、バッテリ電圧を昇圧する昇圧回路(3)と、前記昇圧回路を昇圧制御する昇圧制御部(5a)と、前記昇圧回路に対する充電禁止時間を前記昇圧制御部に設定する充電制御設定部(10a)と、通電指示のオンからオフへの切替タイミングから閉弁タイミングまでの時間を示す閉弁検出時間から閉弁検出最大時間を特定する最大時間特定部(10b)と、を備える。前記充電制御設定部は、前記閉弁検出最大時間を前記充電禁止時間として前記昇圧制御部に設定する。
【0008】
上記した構成によれば、通電指示のオンからオフへの切替タイミングから閉弁タイミングまでの時間を示す閉弁検出時間から閉弁検出最大時間を特定し、その特定した閉弁検出最大時間を充電禁止時間として昇圧制御部に設定し、閉弁検出最大時間で昇圧回路の充電を禁止し、一方、閉弁検出最大時間以外の時間で昇圧回路の充電を許可する。即ち、閉弁検出最大時間で昇圧回路の充電を禁止することで、閉弁検出時間を適切に学習して噴射精度を適切に高めることができる。一方、閉弁検出最大時間以外の時間で昇圧回路の充電を許可することで、充電可能時間を適切に確保することができる。これにより、昇圧回路を高速充電可能な回路とする必要がなく、閉弁検出時間を適切に学習して噴射精度を適切に高めると共に、充電可能時間を適切に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態を示すもので、電気的構成を示すブロック図
図2】タイミングチャート
図3】フローチャート(その1)
図4】フローチャート(その2)
図5】フローチャート(その3)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、内燃機関としての自動車のガソリンエンジンの直噴制御に適用した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る噴射制御装置としての電子制御装置1は、ECU(Electronic Control Unit)と称され、図1に示すように、エンジンの各気筒に設けられている燃料噴射弁2の燃料噴射を制御する。燃料噴射弁2は、インジェクタとも称され、ソレノイドコイル2aに通電してニードル弁を駆動することにより、エンジンの各気筒内に燃料を直接噴射する。尚、図1では4気筒のエンジンを例示しているが、3気筒、6気筒及び8気筒等でも適用することができる。又、ディーゼルエンジン用の噴射制御装置に適用することもできる。
【0011】
電子制御装置1は、昇圧回路3と、マイクロコンピュータ4(以下、マイコン4と称する)と、制御IC5と、駆動回路6と、電流検出部7とを備える。マイコン4は、1又は複数のコア10と、ROM及びRAM等のメモリ11と、A/D変換器等の周辺回路12とを備える。マイコン4は、エンジンの運転状態等を検出するための各種センサ8からセンサ信号Sを入力する。マイコン4は、後述するようにメモリ11に記憶されているプログラム及び各種センサ8から入力するセンサ信号S等に基づいて通電指示TQを算出する。
【0012】
各種センサ8としては、エンジンの冷却水の温度を検出するための水温センサ9を含む。図示は省略するが、各種センサ8には、上記した水温センサ9以外にも、排気の空燃比を検出するA/Fセンサ、エンジンのクランク角を検出するクランク角センサ、エンジンの吸入空気量を検出するエアフロメータ、燃料を噴射する際の燃料圧力を検出する燃圧センサ、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ等を含む。図1では、各種センサ8を簡略化して示している。
【0013】
マイコン4において、コア10は、各種センサ8から入力するセンサ信号Sからエンジンの負荷を把握し、そのエンジン負荷に基づいて燃料噴射弁2の要求される燃料噴射量を算出する。コア10は、燃料噴射弁2の要求される燃料噴射量を算出すると、その算出した燃料噴射量と、燃圧センサにより検出された燃料を噴射する際の燃料圧力とに基づいて通電指示TQの通電指示時間Tiを算出する。コア10は、各種センサ8から入力するセンサ信号Sから各気筒に対する噴射指令タイミングを算出し、通電指示TQを、その算出した噴射指令タイミングにおいて制御IC5に出力する。この場合、詳しい説明は省略するが、コア10は、A/Fセンサの検出した空燃比に基づいて目標空燃比となるようにA/F補正量を算出し、空燃比フィードバック制御を行う。又、コア10は、A/F補正の履歴に基づいてA/F学習を行い、A/F補正量の計算に学習補正値を加味する。
【0014】
制御IC5は、例えばASICによる集積回路装置であり、図示は省略するが、例えばロジック回路と、CPU等による制御主体と、RAMやROMやEEPROM等の記憶部と、コンパレータを用いた比較器等を備える。制御IC5は、そのハードウェア及びソフトウェア構成により、駆動回路6を介して燃料噴射弁2の電流制御等を行う。制御IC5は、昇圧制御部5a、通電制御部5b、電流モニタ部5c、面積補正量算出部5dとしての機能を備える。
【0015】
昇圧回路3は、図示は省略するが、バッテリ電圧VBを入力し、その入力したバッテリ電圧VBを昇圧して充電部としての昇圧コンデンサ3aに昇圧電圧Vboostを満充電電圧まで充電させる。バッテリ電圧VBは例えば12ボルトであり、昇圧電圧Vboostは例えば65ボルトである。昇圧電圧Vboostは、燃料噴射弁2の駆動用の電力として駆動回路6に供給される。昇圧制御部5aは、昇圧回路3を昇圧制御し、昇圧回路3に対する充電を制御する。
【0016】
駆動回路6は、バッテリ電圧VB及び昇圧電圧Vboostを入力する。図示は省略するが、駆動回路6は、各気筒の燃料噴射弁2のソレノイドコイル2aに対して昇圧電圧Vboostを印加するためのトランジスタ、バッテリ電圧VBを印加するためのトランジスタ、通電する気筒を選択するためのトランジスタ等を備える。駆動回路6の各トランジスタは、通電制御部5bによりオン・オフ制御される。駆動回路6は、通電制御部5bによる通電制御に基づいてソレノイドコイル2aに電圧を印加して燃料噴射弁2を駆動する。
【0017】
電流検出部7は、図示しない電流検出抵抗等から構成され、ソレノイドコイル2aに流れる電流を検出する。電流モニタ部5cは、例えば図示しない比較器やA/D変換器等から構成され、各気筒の燃料噴射弁2のソレノイドコイル2aに実際に流れる通電電流値EIについて電流検出部7を通じてモニタする。
【0018】
制御IC5は、マイコン4から入力する通電指示TQに応じた燃料噴射弁2の通電電流積算値を得るような通電時間Tiと通電電流値EIとの理想的な関係を示した通電電流プロファイルPIを記憶している。通電制御部5bは、通電電流プロファイルPIに基づいて駆動回路6を介して燃料噴射弁2に対する電流制御を行う。燃料噴射弁2の制御においては、燃料噴射弁2の通電電流の勾配が、周辺温度環境、経年劣化等の様々な要因を理由として通電電流プロファイルPIよりも低下し、実際の噴射量が指令噴射量よりも低くなる事情がある。一方、燃料噴射弁2を通電制御するにあたり、通電電流の積算値に比例した燃料噴射量が得られる。
【0019】
面積補正量算出部5dは、通電電流プロファイルPIの積算電流と、電流検出部7により検出された燃料噴射弁2に実際に流れる通電電流値EIの積算電流との差に基づいて電流値を同等とするように面積補正量を算出して通電時間補正量ΔTiを算出する。この場合、面積補正量算出部5dは、例えば通電電流プロファイルPI及び通電電流値EIの各々において、第1の電流閾値に達する時間を算出すると共に、第2の電流閾値に達する時間を算出し、それらの算出した時間から面積差を推定し、その推定した面積差と同等の面積を得るような面積補正量を算出して通電時間補正量ΔTiを算出する。面積補正量算出部5dは、上記した以外の手法を採用し、面積補正量を算出して通電時間補正量ΔTiを算出しても良い。面積補正量算出部5dが電流面積補正を行い、通電指示TQの通電時間を通電時間補正量ΔTiにしたがって補正し、通電時間を補正した補正後の通電指示TQにより、燃料噴射弁2の要求される適切な燃料噴射量を得ることが可能となる。尚、面積補正量算出部5dは、このようにして算出した通電時間補正量ΔTiをマイコン4に出力する。
【0020】
マイコン4は、噴射精度を高めるために閉弁検出学習を行う機能を有する。即ち、マイコン4は、燃料噴射弁2に通電される電流又は電圧の波形の変曲点を検出し、燃料噴射弁2の閉弁タイミングを検出し、補正後の通電指示TQのオンからオフへの切替タイミングから閉弁タイミングまでの時間を閉弁検出時間として検出し、その検出した閉弁検出時間を学習する。
【0021】
噴射制御装置1においては、昇圧制御により充電ノイズが発生することがあり、燃料噴射弁2の通電電流をモニタして開弁・閉弁を制御するときに、その昇圧制御により発生した充電ノイズが配線基板内又は電源系経路を伝達すると、電流モニタ精度が悪化してしまう事情がある。そのため、充電ノイズの発生による悪影響が閉弁検出学習に及ぼされないように、昇圧制御を一定時間禁止する構成があるが、そのような構成では、内燃機関の1サイクルあたりの充電可能時間が減少してしまい、充電可能時間を十分に確保することができない。又、昇圧回路3を高速充電可能な回路とすることが考えられるが、高速充電可能な回路を設ける構成では、回路の大型化やコストアップ等の新たな問題が発生する。
【0022】
そこで、本実施形態では、以下の構成を採用している。コア10は、充電制御設定部10aと、最大時間特定部10bと、学習時間取得部10cと、最大値記憶部10dと、最大値更新部10eとしての機能を備える。
【0023】
充電制御設定部10aは、充電許可指令を昇圧制御部5aに出力し、昇圧回路3に対する充電許可を昇圧制御部5aに設定する。昇圧制御部5aは、充電制御設定部10aから充電許可指令を入力し、充電許可が充電制御設定部10aにより設定されると、昇圧回路3を駆動させ、昇圧コンデンサ3aに昇圧電圧Vboostを満充電電圧まで充電させる。
【0024】
一方、充電制御設定部10aは、充電禁止指令を昇圧制御部5aに出力し、昇圧回路3に対する充電禁止を昇圧制御部5aに設定する。昇圧制御部5aは、充電制御設定部10aから充電禁止指令を入力し、充電禁止が充電制御設定部10aにより設定されると、その入力した充電禁止指令により指定される充電禁止帯において昇圧回路3を停止させる。この場合、充電禁止帯において昇圧回路3が停止されることで、昇圧制御による充電ノイズが発生することがなくなり、電流モニタ精度が悪化することもなくなる。
【0025】
ここで、閉弁検出時間を検出する態様について説明する。図2に示すように、噴射制御装置1は、噴射指令タイミングになると、通電指示TQをオフからオンに切替え、通電電流の燃料噴射弁2への供給を開始する。通電電流の燃料噴射弁2への供給が開始されると、燃料噴射弁2が開弁し、ニードル弁のリフト量が上昇し、エンジンの気筒内に燃料が噴射される。その後、噴射制御装置1は、電流面積補正による補正後の通電指示TQをオフからオンに切替え、通電電流の燃料噴射弁2への供給を停止する。通電電流の燃料噴射弁2への供給が停止されると、燃料噴射弁2の下流側電圧が発生し、その後、ニードル弁のリフト量が下降し、燃料噴射弁2が閉弁すると、リフト位置が着座したことによる磁束変化により起電力が発生し、燃料噴射弁2の下流側電圧に変曲点が発生する。コア10は、変曲点が発生したタイミングを燃料噴射弁2の閉弁タイミングとして検出し、補正後の通電指示TQのオンからオフへの切替タイミングから閉弁タイミングまでの時間を閉弁検出時間として検出する。
【0026】
充電制御設定部10aは、このようにして閉弁検出時間を検出する期間に対し、以下のようにして充電禁止指令を昇圧制御部5aに出力し、充電禁止指令により指定される充電禁止帯において昇圧回路3を停止させる。この場合、充電制御設定部10aは、TQオフから所定時間経過までを充電禁止帯とする固定式の充電禁止帯設定方式と、充電禁止帯を選択して決定する選択式の充電禁止帯設定方式との何れかにより充電禁止帯を設定する。
【0027】
充電制御設定部10aは、固定式の充電禁止帯設定方式では、所定時間を昇圧制御部5aに通知し、補正後の通電指示TQのオンからオフへの切替タイミングから所定時間が経過するタイミングまでの期間を充電禁止帯として設定する。ここで、所定時間は閉弁検出時間に対して十分に長い時間であり、充電制御設定部10aは、閉弁検出時間の全体の期間を充電禁止帯として設定する。
【0028】
充電制御設定部10aは、選択式の充電禁止帯設定方式では、幾つかのパターンの中から選択し、閉弁検出時間の一部又は全体の期間を充電禁止帯として設定する。充電制御設定部10aは、例えばパターン1として、閉弁検出時間のうち補正後の通電指示TQのオンからオフへの切替タイミングから燃料噴射弁2の下流側電圧が第2電圧値(例えば30ボルト)まで下降するタイミングまでの期間を充電禁止帯として設定しないが、燃料噴射弁2の下流側電圧が第2電圧値まで下降したタイミングから閉弁タイミングまでの期間を充電禁止帯として設定する。
【0029】
充電制御設定部10aは、例えばパターン2として、閉弁検出時間のうち補正後の通電指示TQのオンからオフへの切替タイミングから燃料噴射弁2の下流側電圧が第1電圧値(例えば60ボルト)まで下降するタイミングまでの期間を充電禁止帯として設定しないが、燃料噴射弁2の下流側電圧が第1電圧値まで下降したタイミングから閉弁タイミングまでの期間を充電禁止帯として設定する。
【0030】
充電制御設定部10aは、例えばパターン3として、閉弁検出時間のうち補正後の通電指示TQのオンからオフへの切替タイミングから閉弁タイミングまでの期間、即ち、閉弁検出時間の全期間を充電禁止帯として設定する。尚、充電制御設定部10aは、閉弁検出時間の全期間を充電禁止帯として設定しない場合もある。又、本実施形態では、充電禁止帯を任意に設定するパターンとして3パターンを例示したが、例示した以外のパターンで充電禁止帯を設定しても良い。
【0031】
又、充電禁止時間設定部10aは、閉弁検出されない可能性があることに備え、補正後の通電指示TQのオンからオフへの切替タイミングを起点とする強制解除時間を設定する。強制解除時間は充電禁止帯を強制的に解除する時間である。この場合、充電制御設定部10aは、強制解除時間を可変に設定可能であり、閉弁検出時間よりも長い時間を強制解除時間として設定する。
【0032】
最大時間特定部10bは、閉弁検出時間を検出すると、その検出した閉弁検出時間から閉弁検出最大時間を特定する。充電制御設定部10aは、閉弁検出最大時間が最大時間特定部10bにより特定されると、その特定されたる閉弁検出最大時間を充電禁止時間として昇圧制御部5aに設定する。学習時間取得部10cは、閉弁検出最大時間が設定されている期間で学習用微小噴射が行われたときの閉弁検出時間を学習し、閉弁検出学習時間を取得する。
【0033】
最大値記憶部10dは、閉弁検出学習時間が学習時間取得部10cにより取得されると、その取得された閉弁検出学習時間の最大値を学習後最大時間として特定し、その特定した学習後最大時間を記憶する。充電制御設定部10aは、学習後最大時間が最大値記憶部10dにより記憶されると、その最大値記憶部10dに記憶されている学習後最大時間にマージン時間を加算した時間を学習後閉弁検出時間として算出する。充電制御設定部10aは、次回のトリップ以降では、その算出した学習後閉弁検出時間を充電禁止時間として昇圧制御部5aに設定する。
【0034】
最大値更新部10eは、最大値記憶部10dに記憶されている学習後最大時間を更新する。充電制御設定部10aは、最大値記憶部10dに記憶されている学習後最大時間が更新されると、その更新後の閉弁検出学習時間の最大値にマージン時間を加算した時間を更新後の学習後閉弁検出時間として算出し、その算出した更新後の学習後閉弁検出時間を充電禁止時間として昇圧制御部5aに設定する。
【0035】
次に、上記した構成の作用について図3から図5を参照して説明する。ここでは、閉弁検出最大時間を設定する最大時間設定処理、最初の閉弁検出時間を学習する第1学習処理と、第1学習処理以降に閉弁検出時間を学習する第2学習処理とを説明する。
【0036】
(1)最大時間設定処理
マイコン4において、コア10は、最大時間設定処理の開始イベントが発生する毎に最大時間設定処理を開始する。図3に示すように、コア10は、最大時間設定処理を開始すると、過去の閉弁検出時間から閉弁検出最大時間を取得する(S1)。コア10は、その取得した閉弁検出最大時間を昇圧制御部5aに通知することで、その閉弁検出最大時間を昇圧制御部5aに設定し(S2)、最大時間設定処理を終了し、次の開始イベントの発生を待機する。即ち、コア10は、補正後の通電指示TQのオンからオフへの切替タイミングから閉弁検出最大時間が経過するタイミングまでの期間を充電禁止帯として設定する。
【0037】
(2)第1学習処理
マイコン4において、コア10は、第1学習処理の開始イベントが発生する毎に第1学習処理を開始する。図4に示すように、コア10は第1学習処理を開始すると、学習用微小噴射が行われたときの閉弁検出時間を学習し、閉弁検出学習時間を取得する(S11)。コア10は、学習用微小噴射が行われたときの閉弁検出時間を学習すると、閉弁検出学習回数をカウントアップする(S12)。
【0038】
コア10は、カウントアップ後の閉弁検出学習回数を予め規定されている規定回数と比較し、規定回数の閉弁検出学習を完了したか否かを判定する(S13)。コア10は、閉弁検出学習回数が規定回数に達しておらず、規定回数の閉弁検出学習を完了していないと判定すると(S13:NO)、第1学習処理を終了し、次の開始イベントの発生を待機する。即ち、コア10は、規定回数の閉弁検出学習を完了するまで、学習用微小噴射が行われたときの閉弁検出時間を学習し、閉弁検出学習時間を取得する。
【0039】
コア10は、閉弁検出学習回数が規定回数に達し、規定回数の閉弁検出学習を完了したと判定すると(S13:YES)、その規定回数の閉弁検出学習により取得した閉弁検出学習時間の最大値を学習後最大時間として特定する(S14)。コア10は、学習後最大時間を特定すると、その特定した学習後最大時間にマージン時間を加算して学習後閉弁検出時間を算出し(S15)、第1学習処理を終了し、次の開始イベントの発生を待機する。コア10は、次回のトリップ以降では、このようにして算出した学習後閉弁検出時間を昇圧制御部5aに通知することで、その学習後閉弁検出時間を昇圧制御部5aに設定し、補正後の通電指示TQのオンからオフへの切替タイミングから学習後閉弁検出時間が経過するタイミングまでの期間を新たな充電禁止帯として設定する。
【0040】
(3)第2学習処理
マイコン4において、コア10は、第2学習処理の開始イベントが発生する毎に第2学習処理を開始する。図5に示すように、コア10は、第2学習処理を開始すると、学習用微小噴射が行われたときの閉弁検出時間を学習し、閉弁検出学習時間を取得する(S21)。コア10は、学習用微小噴射が行われたときの閉弁検出時間を学習する毎に閉弁検出学習回数をカウントアップする(S22)。
【0041】
コア10は、カウントアップ後の閉弁検出学習回数を予め規定されている規定回数と比較し、規定回数の閉弁検出学習を完了したか否かを判定する(S23)。コア10は、閉弁検出学習回数が規定回数に達しておらず、規定回数の閉弁検出学習を完了していないと判定すると(S23:NO)、第2学習処理を終了し、次の開始イベントの発生を待機する。
【0042】
コア10は、閉弁検出学習回数が規定回数に達し、規定回数の閉弁検出学習を完了したと判定すると(S23:YES)、その規定回数の閉弁検出学習により取得した閉弁検出学習時間の最大値を現在の学習後最大時間と比較し、閉弁検出学習時間の最大値が現在の学習後最大時間を超えているか否かを判定する(S24)。コア10は、閉弁検出学習時間の最大値が現在の学習後最大時間を超えていないと判定すると(S24:NO)、第2学習処理を終了し、次の開始イベントの発生を待機する。
【0043】
コア10は、閉弁検出学習時間の最大値が現在の学習後最大時間を超えていると判定すると(S24:YES)、その現在の学習後最大時間を超えている閉弁検出学習時間の最大値を新たな学習後最大時間として特定し、学習後最大時間を更新する(S25)。コア10は、学習後最大時間を更新すると、その更新後の学習後最大時間にマージン時間を加算して新たな学習後閉弁検出時間を算出し、学習後閉弁検出時間を更新し(S26)、第2学習処理を終了し、次の開始イベントの発生を待機する。コア10は、次回のトリップ以降では、このようにして更新した学習後閉弁検出時間を昇圧制御部5aに通知することで、その更新後の学習後閉弁検出時間を昇圧制御部5aに設定し、補正後の通電指示TQのオンからオフへの切替タイミングから更新後の学習後閉弁検出時間が経過するタイミングまでの期間を新たな充電禁止帯として設定する。
【0044】
以上に説明したように本実施形態によれば、以下に示す作用効果を得ることができる。
噴射制御装置1において、閉弁検出時間から閉弁検出最大時間を特定し、その特定した閉弁検出最大時間を充電禁止時間として昇圧制御部5aに設定し、閉弁検出最大時間で昇圧回路3の充電を禁止し、一方、閉弁検出最大時間以外の時間で昇圧回路3の充電を許可する。即ち、閉弁検出最大時間で昇圧回路3の充電を禁止することで、閉弁検出時間を適切に学習して噴射精度を適切に高めることができる。一方、閉弁検出最大時間以外の時間で昇圧回路3の充電を許可することで、充電可能時間を適切に確保することができる。これにより、昇圧回路3を高速充電可能な回路とする必要がなく、回路の大型化やコストアップ等の懸念を回避しつつ、閉弁検出時間を適切に学習して噴射精度を適切に高めると共に、充電可能時間を適切に確保することができる。
【0045】
又、閉弁検出最大時間が設定されている期間で学習用微小噴射が行われたときの閉弁検出時間を学習し、その学習により取得した閉弁検出学習時間の最大値を学習後最大時間として記憶し、次回のトリップ以降では、その記憶した学習後最大時間にマージン時間を加算した学習後閉弁検出時間を充電禁止時間として昇圧制御部5aに設定することで、適切な充電禁止時間を設定することができる。
【0046】
又、学習後最大時間を更新し、その更新後の学習後最大時間にマージン時間を加算した更新後の学習後閉弁検出時間を充電禁止時間として昇圧制御部5aに設定することで、常に適切な充電禁止時間を設定することができる。
【0047】
又、充電禁止時間を上限値以下で昇圧制御部5aに設定することで、例えば閉弁を検出する回路の故障や断線等により閉弁を検出不可となったときに適切に対処することができる。即ち、上限値を超えて充電禁止時間を設定してしまうと、例えば閉弁を検出する回路の故障や断線等により閉弁を検出不可となったときに充電禁止を停止することができなく虞があるが、充電禁止時間を上限値以下で設定することで、充電禁止を停止することができ、適切に対処することができる。
【0048】
上記したマイコン4及び制御IC5は、一体化しても良く、この場合、高速演算可能な演算処理装置を用いることが望ましい。マイコン4及び制御IC5が提供する手段及び機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェア、ハードウェア、或いはそれらの組み合わせにより提供することができる。例えば制御装置がハードウェアである電子回路により提供される場合、1又は複数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路により構成することができる。又、例えば制御装置がソフトウェアにより各種制御を実行する場合には、記憶部にはプログラムが記憶されており、制御主体が当該プログラムを実行することで当該プログラムに対応する方法が実施される。
【0049】
その他、燃料噴射弁、昇圧回路、駆動回路、電流検出部等のハードウェア構成等についても種々な変更が可能である。本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、或いはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0050】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていても良い。
【符号の説明】
【0051】
図面中、1は電子制御装置(噴射制御装置)、2は燃料噴射弁、3は昇圧回路、5aは昇圧制御部、10aは充電制御設定部、10bは最大時間特定部、10cは学習時間取得部、10dは最大値記憶部、10eは最大値更新部である。
図1
図2
図3
図4
図5