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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/931 20200101AFI20240214BHJP
   G01S 13/60 20060101ALI20240214BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240214BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240214BHJP
   G01S 13/87 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
G01S13/931
G01S13/60 200
G08G1/16 C
B60W40/04
G01S13/87
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020203415
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090858
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】清水 直継
(72)【発明者】
【氏名】小野澤 雅人
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-058841(JP,A)
【文献】特開2015-161968(JP,A)
【文献】特開2020-030093(JP,A)
【文献】特開2020-121575(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0238904(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
G08G 1/16
B60W 40/04
B60R 21/0134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両(3A)の車線変更時の安全を図るために、レーダ波を用いて、前記自車両の後側方の確認を支援する車両制御装置(9)であって、
前記自車両から周囲に照射された前記レーダ波の反射波に基づいて、道路の幅方向における他車両(3B)の位置を示す横位置を推定するように構成された他車両位置推定部(21、S110)と、
前記自車両から周囲に照射された前記レーダ波の前記反射波に基づいて、当該反射波における雑音のレベルに対する信号のレベルの関係を示すSN指標を算出するように構成されたSN指標算出部(23、S210)と、
前記他車両位置推定部によって推定された前記他車両の前記横位置の情報に基づいて、前記他車両が走行する車線を判定する場合に、前記SN指標算出部によって算出された前記SN指標に基づいて、前記他車両が走行する前記車線の判定を行うように構成された車線判定部(25、S340)と、
前記車線判定部によって判定された判定結果に基づいて、前記他車両について警報を発すべき条件を満たしているか否かを判定するように構成された警報判定部(27、S360)と、
を備えた、車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記SN指標が所定値より高い場合に、第1の判定条件に基づいて、前記他車両が走行する前記車線の判定を行い、前記SN指標が前記所定値以下の場合に、前記第1の判定条件に他の条件を加えた第2の判定条件に基づいて、前記他車両が走行する前記車線の判定を行うように構成された、
車両制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両制御装置であって、
前記SN指標の高低に応じて、前記他車両が前記自車両が走行する第1レーンに隣接する第2レーンを走行中か否かを判定するように構成された、
車両制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記自車両が走行する前記車線を第1レーンとし、前記第1レーンに隣接する前記車線を第2レーンとし、前記第2レーンに隣接し且つ前記第1レーンと反対側の前記車線を第3レーンとした場合において、
前記他車両が前記第3レーンを走行中と判定された後に、前記他車両が走行する前記車線を判定する場合には、前記SN指標が高いほど、前記他車両が前記第2レーンを走行していると判定し易くするように構成された、
車両制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記SN指標の高低を判断するためのSN閾値を有し、前記SN閾値に基づいて、前記他車両が走行する前記車線を判定するために設定された走行カウンタのカウンタ値を更新するように構成された、
車両制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両制御装置であって、
前記SN指標が高いほど、前記走行カウンタのカウンタ値をアップし易くするように構成された、
車両制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記自車両が走行する前記車線を第1レーンとし、前記第1レーンに隣接する前記車線を第2レーンとし、前記第2レーンに隣接し且つ前記第1レーンと反対側の前記車線を第3レーンとした場合において、
前記他車両が、前記第3レーンを走行中かを判定する判定基準に基づいて、前記他車両が前記第3レーンを走行と推定される場合に、監視対象の前記他車両を特定するための監視フラグをオンするように構成された、
車両制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両制御装置であって、
前記他車両が、前記第3レーンから前記第2レーンに車線変更したことを判定する判定基準に基づいて、前記他車両が前記第2レーンに車線変更したと判定された場合に、前記監視フラグをオフするように構成された、
車両制御装置。
【請求項9】
請求項7に記載の車両制御装置であって、
前記第3レーンが存在しないとなったと推定される場合に、前記監視フラグをオフするように構成された、
車両制御装置。
【請求項10】
請求項7に記載の車両制御装置であって、
前記SN指標の高低を判断するためのSN閾値を有し、前記他車両が、前記第3レーンを走行していない条件と、前記SN閾値に基づいた判定条件と、に基づいて、前記他車両が前記第2レーンに車線変更したと推定される場合に、前記監視フラグをオフするように構成された、
車両制御装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記SN指標の高低を判断するためのSN閾値を有し、前記レーダ波の前記反射波における外乱による影響を抑制するために、前記SN指標に応じて前記SN閾値を変更するように構成された、
車両制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の車両制御装置であって、
前記他車両と壁との横位置差に応じて、前記SN閾値を変更するように構成された、
車両制御装置。
【請求項13】
請求項12に記載の車両制御装置であって、
前記他車両と壁との横位置差が判定値より小さい場合には、前記判定値より大きい場合に比べて、前記SN閾値を小さくするように構成された、
車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自車両の後側方等を確認して、必要に応じて警報を発することができるブラインドスポットモニタの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の周辺をレーダで監視し、レーダから得られた他車両等の状態に基づいて、自車両を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、近年では、ブラインドスポットモニタ(即ち、BSM)と呼ばれる技術が開発されている。
【0003】
このBSMの技術(以下、BSM制御)とは、自車両の走行中に車線変更を行う場合等に、他車両との接触等を抑制するために、自車両の後側方(即ち、斜め後方)の確認を支援する技術である。
【0004】
つまり、BSM制御とは、自車線に隣接する車線を同方向に走行する他車両をレーダで検知し、運転者にとって見えにくい領域(例えば、斜め後方の死角エリア)に存在する他車両の存在を報知する制御である。このBSM制御では、自車両が車線変更する場合等に、運転者にとって見えくい領域を走行する他車両が存在するときには、運転者に表示や音等によって警報を発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-2863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、走行方向が同じ車線が複数ある場合に、レーダによって、自車両が走行する車線(即ち、自車線)とは異なる車線(即ち、他車線)を走行する他車両を検出する際には、下記のような問題が生じる可能性がある。
【0007】
ここでは、例えば後述する図5に示すように、自車両が第1レーンを走行している場合に、自車両の斜め後方において、他車両(即ち、ターゲット車両)が第3レーンを走行している状況を例に挙げて説明する。
【0008】
レーダによって、他車両が第3レーンを走行していると判断されている場合には、自車両が第2レーンに車線変更しても、自車両が他車両と衝突する可能性が低いので、通常では警報を発しない。
【0009】
しかし、自車両と他車両とが隣接する車線を走行する状況となった場合、例えば、他車両が第2レーンに車線変更した場合に、自車両が第2レーンに車線変更すると、衝突の可能性がある。従って、例えば、他車両が第2レーンに車線変更した場合に、自車両が車線変更すると衝突の可能性があるときには、自車両が車線変更する前に警報を発することができる。
【0010】
ところで、他車両の位置をレーダからの電波の反射によって検出する場合には、何らかの原因で、他車両の位置を正確に検出できない可能性がある。つまり、他車両がどの車線を走行しているかを示す他車両の横位置を精度良く検出できない恐れがある。
【0011】
そのため、実際には、他車両が第3レーンを走行しているにもかかわらず、第2レーンを走行していると誤判定した場合には、警報を発する必要がないにもかかわらず、警報を発する恐れがある。
【0012】
本開示の一つの局面は、BSM制御において、他車両が走行する車線を精度良く推定して、適切に警報を発することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様は、自車両(3A)の車線変更時の安全を図るために、レーダ波を用いて、前記自車両の後側方の確認を支援する車両制御装置(9)に関するものである。
この車両制御装置は、他車両位置推定部(21、S110)とSN指標算出部(23、S210)と車線判定部(25、340)と警報判定部(27、360)とを備えている。
【0014】
他車両位置推定部は、前記自車両から周囲に照射された前記レーダ波の反射波に基づいて、道路の幅方向における他車両(3B)の位置を示す横位置を推定するように構成されている。
【0015】
SN指標算出部は、前記自車両から周囲に照射された前記レーダ波の反射波に基づいて、当該反射波における雑音のレベルに対する信号のレベルの関係を示すSN指標を算出するように構成されている。
【0016】
車線判定部は、前記他車両位置推定部によって推定された前記他車両の前記横位置の情報に基づいて、前記他車両が走行する車線を判定する場合に、前記SN指標算出部によって算出された前記SN指標に基づいて、前記他車両が走行する前記車線の判定を行うように構成されている。
【0017】
警報判定部は、前記車線判定部によって判定された判定結果に基づいて、前記他車両について警報を発すべき条件を満たしているか否かを判定するように構成されている。
このような構成により、本開示では、他車両が走行する車線(即ち、走行車線)を精度良く判定できるので、自車両の後側方(即ち、運転者から見て斜め後方)の死角エリア等を走行する他車両について、適切に警報を発することができる。
【0018】
以下、詳細に説明する。
レーダ波の反射波において、雑音(即ち、ノイズ:N)のレベルに対するターゲット(即ち、他車両)による信号(即ち、S)のレベルの関係を示すSN指標は、他車両の横位置の推定精度に影響を及ぼす。
【0019】
このSN指標は、例えば、雑音のレベルに対する信号のレベルの比(即ち、SN比:S/N)や、信号のレベルと雑音のレベルとの差(即ち、SN差:SーN)等のように、雑音のレベルと信号のレベルとの大きさの違いを表す指標であり、SN指標の大きさにより、他車両の横位置の推定精度が異なる。なお、レベルを電圧等の高さで示す場合は、レベルの大きさを高さで示すことができる。
【0020】
例えば、SN比やSN差が大きな場合には、横位置の推定精度が高く、一方、SN比やSN差が小さな場合には、横位置の推定精度が低い。従って、他車両の走行車線を判定する場合に、SN比やSN差を加味して判定することにより、他車両の走行車線の判定をより確実に行うことができる。
【0021】
そのため、例えば、他車両の走行車線の判定精度が高い場合には、その判定結果に応じて、適切に警報を発することができる。一方、他車両の走行車線の判定精度が低い場合には、例えば更に他の条件等を加味する等によって、走行車線の判定精度を高め、その判定結果に応じて、適切に警報を発することができる。
【0022】
つまり、本開示では、警報を発すべきときに適切に警報を発することができるとともに、警報を発する必要がない場合に、むやみに警報を発することを抑制することができるという顕著な効果を奏する。
【0023】
なお、この欄及び特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態の車両制御システムの構成を示すブロック図。
図2】車両のレーダ装置の検知範囲を示す説明図。
図3】車両制御装置を機能的に示すブロック図。
図4】車両制御装置が行うメイン処理を示すフローチャート。
図5】複数の車線を有する道路上を走行する車両を示す説明図。
図6】他車両が第3レーンを走行した場合に、レーダ装置によって検出された観測点や他車両の走行位置等を示す説明図。
図7】車両制御装置が行う警報処理を示すフローチャート。
図8】車両制御装置が行う警報処理の内容を詳細に示すフローチャート。
図9】他車両が第3レーンを走行した場合に、レーダ装置によって検出されたデータから算出されたSN差を示す説明図。
図10】第2レーン内の外側を走行する他車両の近くに壁がある場合の処理を説明する際の説明図。
図11】第3レーン内の内側を走行する他車両の遠くに壁がある場合の処理を説明する際の説明図。
図12】第2実施形態において、カウンタ閾値を設定するための処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本開示の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.全体構成]
まず、本第1実施形態における車両制御装置を含む車両制御システムの全体構成について説明する。
【0026】
図1に示すように、本第1実施形態の車両制御システム1は、車両3(例えば、図2参照)に搭載され、当該車両3の周囲の物体を検知して必要に応じて警報を発するように構成されたシステムである。この車両制御システム1は、2つのレーダ装置5L、5Rと、警報装置7と、車両制御装置9と、を備える。なお、以下では、車両3を、自車両3Aと他車両3Bとに分けて説明する場合がある。
【0027】
図2に示すように、レーダ装置5Lは、車両3の後部左側面に設置された左側のレーダ装置であり、レーダ装置5Rは、車両3の後部右側面に設置された右側のレーダ装置である。2つのレーダ装置5L、5Rの構成及び機能は、基本的に同じである。以下では、2つのレーダ装置5L、5Rをまとめてレーダ装置5とも称する。なお、車両制御システム1は、少なくとも1つのレーダ装置を備えていればよく、3つ以上のレーダ装置を備えてもよい。
【0028】
レーダ装置5は、レーダ波を繰り返し送受信して車両3の周辺を監視する、周知の電波を用いた探知装置ある。このレーダ装置5としては、例えばミリ波を用いたミリ波レーダを採用できる。なお、レーダ波としては、例えば、周波数が30GHz以上、波長が1cm以下の電波を採用できる。
【0029】
本第1実施形態では、FMCW方式で変調された送信信号と2FCW方式で変調された送信信号とを用いて、ターゲットである物体(即ち、物標)を検出するが、これに限定されるものではない。なお、FMCWは、Frequency Modulated Continuous Waveの略である。2FCWは、2 Frequency Continuous Waveの略である。
【0030】
なお、このFMCW方式と2FCW方式とでは、周知のようにそれぞれ長所と短所があるので、公知のように(例えば、特開2019-2863号公報参照)周囲の状況等に応じて、検知精度の高い方式のデータを採用することができる。
【0031】
レーダ装置5L、5Rは、各位置から自車両3Aの後方における左側及び右側等に向けてそれぞれレーダ波を送信することにより、物体検知領域内に存在する移動物体を含む物体を検知する。例えば、自車両3Aの後方や斜め後方や側方の自動車及び二輪車等の他車両3Bなどの物体を検知する。
【0032】
なお、図2では、水平面上において、右側のレーダ装置5Rにおける物体検知領域Rrrを斜線の領域で示している。左側のレーダ装置5Lの物体検知領域Rrlは、物体検知領域Rrrと左右対称であり、その領域の外周を破線で示している。
【0033】
レーダ装置5は、所定の送信信号に基づく送信波を送信する送信器としての機能、及び送信波を反射した物体から返ってきた反射波を受信波として受信するレーダセンサとしての機能を備える。そして、レーダ装置5は、アナログ波形である受信波を、デジタル信号に変換し、デジタル信号に変換した受信波、すなわちAD波形を車両制御装置9に送る。
【0034】
警報装置7は、車両制御装置9が車両3の後方や斜め後方等から接近する移動物体を検知した場合等に、車両制御装置9からの指令を受けて警報を行う周知の装置である。警報装置7は、例えば、車室内に設置された音声出力装置を備え、車両3の乗員に対して、警報音を出力する。又は、ドアミラーや運転席前方のメータパネル等に配置された表示ランプ等によって警報の光を表示する。
【0035】
[1-2.車両制御装置の電気的構成]
次に、車両制御装置9の電気的構成について説明する。
車両制御装置9は、図1に示すように、CPU11、ROM及びRAM等のメモリ13を備えた周知のマイクロコンピュータ(即ち、マイコン)15を中心に構成された電子制御装置である。
【0036】
マイクロコンピュータ15の各種機能は、CPU11が非遷移有形記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、メモリ13が、プログラムを格納した非遷移有形記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。
【0037】
なお、非遷移有形記録媒体とは、記録媒体のうちの電磁波を除く意味である。また、CPU11が実行する機能の一部又は全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、車両制御装置9を構成するマイクロコンピュータ15の数は1つでも複数でもよい。
【0038】
前記車両制御装置9は、後に詳述するように、レーダ装置5から得られるレーダ波の反射波の信号に基づいて、他車両3Bの横位置(即ち、車線の幅方向における位置)を推定して、他車両3Bがどの車線を走行しているかを判定する。そして、必要に応じて(例えば、衝突の可能性のある場合に)警報を発する。
【0039】
つまり、この車両制御装置9は、複数の車線を有する道路において、自車両3Aの車線変更時の安全を図るために、自車両3Aの後側方の確認を支援するものである。
詳しくは、車両制御装置9は、自車両3Aと同方向に走行する他車両3B(例えば、自車両3Aの後側方の他車両3B)の位置から、他車両3Bが走行する車線を検出する。そして、自車両3Aが他車両3Bが走行する車線側に車線変更をした場合に、自車両3Aが他車両3Bと接触する可能性があると判断されたときに、警報を発する。
【0040】
ここで、自車両3Aの後側方とは、運転席に着座する運転者から見て斜め後方を示しており、サイドミラー17(例えば、図2参照)等の死角などのように、運転者が他車両3Bを視認しにくい領域である。例えば自車両3Aの後側方としては、自車線以外の車線であって、運転者(即ち、運転席)の真横よりは後方の範囲が挙げられる。
【0041】
この車両制御装置9は、図3に機能的に示すように、他車両位置推定部21とSN指標算出部23と車線判定部25と警報判定部27とを備えている。
他車両位置推定部21は、自車両3Aから周囲に照射されたレーダ波の反射波に基づいて、道路の幅方向における他車両3Bの位置を示す横位置(即ち、自車両3Aに対する横位置)を推定するように構成されている。
【0042】
SN指標算出部23は、自車両3Aから周囲に照射されたレーダ波の反射波に基づいて、当該反射波における雑音のレベルに対する信号のレベルの関係を示すSN指標を算出するように構成されている。
【0043】
ここで、雑音のレベルとは、周知のように、例えば、反射波全体における全ての信号の強度、或いは反射波全体から所定のレベル以上の信号(例えば、ターゲットを示す信号と推定される信号)を除いた信号の強度である。また、信号のレベルとは、反射波においてターゲットを示す信号(即ち、ターゲットでの反射による信号)の強度である。この強度は、例えば、反射波の電力や電圧によって示すことができる。
【0044】
従って、雑音のレベルに対する信号のレベルの関係を示すSN指標とは、雑音のレベルに対してターゲットの信号のレベルがどの程度異なっているか、即ち、両レベルの大きさの違いを示す指標であり、両レベルの比(例えば、S/N:SN比)や差(例えば、S-N:SN差)等によって表現することができる。なお、両レベルを、例えば電圧で示す場合には、両レベルの大きさの違いを、電圧の高低の関係で示すことができる。
【0045】
なお、本第1実施形態では、SN指標算出部23は、自車両3Aから周囲に照射されたレーダ波の反射波に基づいて、その反射波における雑音のレベルと信号のレベルとの比を示すSN比を算出するように構成されている。
【0046】
車線判定部25は、他車両位置推定部21によって推定された他車両3Bの横位置の情報に基づいて、他車両3Bが走行する車線を判定する場合に、SN指標算出部23によって算出されたSN指標(例えば、SN比)に基づいて、他車両3Bが走行する車線の判定を行うように構成されている。
【0047】
警報判定部27は、車線判定部25によって判定された判定結果に基づいて、他車両3Bについて警報を発すべき条件を満たしているか否かを判定するように構成されている。従って、警報を発すべき条件を満たしている場合には、警報を発することができる。
【0048】
[1-3.処理内容]
次に、車両制御装置9が実行する各種の処理について、フローチャート等に基づいて説明する。これらの処理は、所定の周期毎(例えば、レーダ装置5の1回のスキャン毎)に繰り返し実行される。
【0049】
[1-3-1.メイン処理]
まず、車両制御装置9が実行する処理の全体(即ち、メイン処理)について、図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0050】
図4に示すように、ステップ(以下、S)100では、公知の方法によって、観測点を求めるための観測点算出処理を行う。
この観測点算出処理では、まず、レーダ装置5から照射したレーダ波の反射波(即ち、受信波)の波形(即ち、AD波形)を取得する。
【0051】
続いて、FFT波形を生成する。FFT波形は、AD波形を周知の高速フーリエ変換することで得られる波形である。なお、FFTとは、Fast Fourier Transformの略である。
続いて、FFT波形に基づいて、レーダ波の反射点である観測点を算出する。
【0052】
詳しくは、この観測点算出処理は、例えば下記のように実施される。
まず、車両制御装置9は、AD波形から、送信信号と受信信号との周波数差を周波数とする周波数差信号であるビート信号を生成する。
【0053】
そして、生成したビート信号に対してFFTによる周波数解析処理を実行して、FFT波形としての周波数スペクトラムを生成する。その際、変調方式毎に、ビート信号から周波数スペクトラムを生成する。
【0054】
なお、周波数スペクトラムとは、レーダ装置5からの送信信号の各周波数成分と各周波数成分に対応する信号強度との関係を示すデータである。なお、信号強度は、受信した信号の電力や電圧で表すことができる。
【0055】
本第1実施形態では、周知のFMCW方式で、物体(即ち、物標)を検知する。ここでは、ビート信号の周波数上昇部分と周波数下降部分の周波数スペクトラムを求め、その周波数スペクトラムに基づいて、物体の方位θと電力情報を抽出する。そして、抽出した方位θと電力情報を使用して、自車両3Aに対する物体(例えば、他車両3B)の速度(即ち、相対速度)及び自車両3Aから他車両3Bまでの距離Rを算出する。
【0056】
また、本第1実施形態では、周知の2FCW方式でも、物体を検知する。つまり、2つの送信周波数のそれぞれのビート信号から、それぞれ周波数スペクトラムを生成し、生成した2つの周波数スペクトラムに基づいて、他車両3Bの方位θと電力情報を抽出する。そして、抽出した方位θと電力情報を使用して、自車両3Aに対する他車両3Bの速度(即ち、相対速度)及び自車両3Aから他車両3Bまでの距離Rを算出する。
【0057】
ここで、FMCW方式と2FCW方式とによって得られた距離R及び方位θのいずれを用いるかは、上述した公報等に記載の公知の手法により選択することができる。なお、距離R及び方位θから、レーダ波の反射点である観測点の位置を求めることができる。
【0058】
続くS110では、公知の平滑位置認識処理を行う。この平滑位置認識処理とは、前記S100で求めた観測点のデータの平滑処理(即ち、フィルタ処理)を行うことによって、他車両3Bが走行する位置(即ち、走行位置)を推定する処理である。
【0059】
つまり、平滑位置認識処理とは、観測点のデータから、他車両3Bの走行位置である平滑位置をフィルタ処理によって求める処理であり、この平滑位置の時間変化により、他車両3Bの軌跡を推定することができる。
【0060】
<ここで、観測点と平滑位置との関係ついて説明する>
例えば、図5に示すように、同じ走行方向の車線(即ち、片側車線)が複数ある場合、自車両3Aが走行する車線(即ち、自車線)を第1レーンとすると、自車線に隣接する車線を第2レーンとし、第2レーンに隣接し自車線と反対側の車線を第3レーンとする。
【0061】
なお、第1レーンと第2レーンとの境界線(即ち、車線境界線)を、第1車線境界線とし、第2レーンと第3レーンとの境界線を、第2車線境界線とする。
そして、例えば、自車両3Aの斜め後方において、第3レーンを他車両3Bが走行している場合には、レーダ装置5によって、他車両3Bの走行位置、従って軌跡を推定することができる。
【0062】
図6に、自車両3Aと他車両3Bとが異なる車線を同方向に走行している場合において、他車両3Bの観測点と走行位置(即ち、平滑位置)とのデータを例示する。なお、この例では、実際には他車両3Bは第3レーンを走行しており、図6の破線で示すターゲット走行位置にて、実際に他車両3Bが走行した軌跡を示している。
【0063】
また、図6では、レーダ装置5によって得られた他車両3Bの走行位置を、レーダ認識結果としてあるが、この走行位置は、SN比を考慮する前の走行位置である。つまり、本第1実施形態では、後述するように、SN比を考慮して他車両3Bの走行位置の推定精度を高めている。
【0064】
なお、この図6では、推定された他車両3Bの走行位置は、第3レーン又は第2レーンにある。即ち、他車両3Bの走行位置が、図6の第2車線境界線より下側(即ち、第3レーン側)の場合には、第3レーンを走行とし、図6の第2車線境界線より上側(即ち、第2レーン側)の場合には、第2レーンを走行とする。
【0065】
また、図6において、横位置とは、自車両3Aの位置(即ち、自車両3Aの幅方向における中央の位置)を0mとした場合の自車両3Aからの幅方向の距離であり、第3レーン側にゆくほど横位置が大きくなる。縦位置とは、自車両3Aの位置(即ち、自車両3Aの走行方向における中央の位置)を0mとした場合の自車両3Aから後方の距離であり、後方にゆくほど縦位置の絶対値が大きくなる。なお、後方をマイナスで表示している。
【0066】
この他車両3Bの走行位置(即ち、平滑位置)は、周知のように、観測点のデータを用いて各種のフィルタ処理によって求めることができる。
本第1実施形態では、一般的なカルマンフィルタを用いてフィルタ処理を行う。
【0067】
このカルマンフィルタを用いたフィルタ処理とは、直前までの情報(即ち、予測)と、今回取得したでデータ(即ち、観測)をもとに、もっとも適切な(即ち、推定の誤差の共分散が最小となるような)システムの状態を推定する方法である。但し、測定値(即ち、データ)には、正規分布に従うノイズが乗っており、システムの状態を示す変数自体も正規分布に従うノイズが乗っているものとする。
【0068】
具体的には、以下の2ステップを時間発展とともに繰り返し実施する。つまり、「Correct」ステップから「Predict」ステップへの移行、その「Predict」ステップから「Correct」ステップへの移行を、繰り返して実施する。
【0069】
「Correct」ステップ [a:観測の更新、b:今回値の推定]
「Predict」ステップ [c:時刻の更新、b:次回値の予測]
なお、「予測」とは、前回値を用いて予測された状態を示し、事前推定とも呼ばれる。また、「推定」とは、予測を用いて推定された状態を示し、事後推定とも呼ばれる。また、「予測」、「推定」は、それぞれ所定のモデルに基づいて実施される。
【0070】
なお、上述したフィルタ処理以外に、例えば、特開2020-012795号公報に記載のα-βフィルタ処理等の公知のフィルタ処理を採用できる。
前記図4に戻り、続くS120では、後に詳述するようにして、警報処理を行う。この警報処理とは、S110で求めた他車両3Bの走行位置の情報に、後述するSN比の条件を加味して、他車両3Bの走行レーンを求め、例えば、自車両3Aが第2レーンに車線変更した場合に、自車両3Aが他車両3Bと接触する恐れがあるかを判定する処理である。
【0071】
続くS130では、出力処理を行い、一旦本処理を終了する。この出力処理とは、自車両3Aが第2レーンに車線変更した場合に、自車両3Aと他車両3Bとが接触する恐れがあるときには、運転者に対して、警報装置7を用いて、警報を発する処理である。
【0072】
[1-3-2.警報処理]
次に、前記S120の警報処理について、図7に示すフローチャートに基づいて、その概略を説明する。
【0073】
この警報処理は、第3レーンを走行中の他車両3Bが第2レーンに車線変更したと判定された場合に、所定の警報判定の処理を行うものである。
詳しくは、後述するように、レーダ波の反射波のSN比が所定値より高い場合には、第2レーンを走行している可能性が高いと判定し、車間距離や車速等の他の条件を加味して警報判定を行う。一方、SN比が前記所定値以下の場合には、第3レーンを走行している可能性があるとして、時間をかけて可能性の程度を判定し、前記他の条件を加味して警報判定を行う。
【0074】
なお、レーダ波の反射波のSN比とは、周知のように、FFTスペクトラム(即ち、信号)のノイズフロアに対する電力比であり、例えば、レーダ装置5や車両制御装置9にて求めることができる。
【0075】
図7に示すように、まず、S200では、第3レーン走行監視処理を行う。この第3レーン走行監視処理は、他車両3Bが第3レーンを走行しているかを監視する処理である。
つまり、本第1実施形態の処理では、他車両3Bが第3レーンから第2レーンに車線変更した場合のように、他車両3Bの走行車線が自車両3Aの走行車線に隣接する第2レーンに変化したこと(即ち、マージイン)を検出するために、まず、第3レーンを走行する他車両3Bを特定して監視する処理を行う。
【0076】
続くS210では、第2レーン走行カウンタ操作処理を行う。この第2レーン走行カウンタ操作処理とは、他車両3Bが第2レーンを走行していると判定するために用いる所定のカウンタの値を設定するための処理である。つまり、後に詳述するように、レーダ波の反射波のSN比の高低などに応じて、第2レーン走行カウンタの値を設定するための処理である。なお、SN比は、第2レーン走行カウンタ操作処理を行う前に、予めレーダ装置5から取得するか、車両制御装置9にて算出する。
【0077】
続くS220では、警報判定処理を行い、一旦本処理を終了する。この警報判定処理とは、上述した警報を発するか否かを判定するための処理である。
[1-3-3.警報処理の詳細]
次に、前記図7で説明した警報処理の具体的な内容について、図8のフローチャートに基づいて、詳細に説明する。
【0078】
なお、図8のS300~S320の処理が、図7のS200の第3レーン走行監視処理に該当し、図8のS330の処理が、図7のS210の第2レーン走行カウンタ操作処理に該当し、図8のS340~S370の処理が、図7のS220の警報判定処理に該当する。
【0079】
<<第3レーン走行監視処理>>
図8のフローチャートに示すように、S300では、判定対象の物標であるターゲット(即ち、他車両3B)について、第3レーン走行の前提条件を満たすか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS310に進み、一方否定判断されるとS320に進む。
【0080】
次に、前記前提条件について説明する。
この前提条件とは、他車両3Bが第3レーンを走行しているかを判定する条件であり、下記の表1に記載のように、[条件ZJ1]及び[条件ZJ2]の条件(即ち、and条件)が満たされた場合に、他車両3Bが第3レーンを走行していると判断する。
【0081】
【表1】
【0082】
詳しくは、[条件ZJ1]は、「他車両3Bが第3レーンを走行している」という条件であり、上述した平滑位置認識処理によって得られた他車両3Bの平滑位置(即ち、走行位置)から判断することができる。つまり、他車両3Bの横位置から他車両3Bが走行している車線を判断することができる。例えば、他車両3Bの横位置が所定のレーンに対応する所定範囲にある場合に、他車両3Bが所定のレーンを走行していると判断することができる。なお、第3レーン以外を走行する他車両3Bについては、警報タイミングを変更しない。
【0083】
[条件ZJ2]は、「第3レーンが存在する」という条件であり、レーダ波の反射波の状態等から判断することができる。つまり、自車両3Aの第2レーン側(即ち、外側)に、第3レーンが存在するのに十分な距離がある場合には、第3レーンが存在すると判断することができる。
【0084】
詳しくは、例えば、道路に沿って延びる壁がある場合には、自車両3Aから壁までの距離はレーダ装置5によって検出できるので、その距離から第3レーンが存在するかを判断できる。
【0085】
なお、この判定を行うのは、第2レーンの外側に壁がある場合には、他車両3Bが第2レーンを走行しているときでも、壁に引っ張られて(即ち、壁の影響を受けて)、他車両3Bが第3レーンを走行していると誤判定する可能性があるからである。
【0086】
また、[条件ZJ1]及び[条件ZJ2]以外に、他の条件を加味してもよい。例えば、「自車両3Aから他車両3Bまでの走行方向における距離(即ち、縦距離)が、所定値以上」という[条件ZJ3]や、「トラッキング回数(即ち、連続して接続された回数)が所定回以上」という[条件ZJ4]のうち、少なくとも一方を、and条件として加えてよい。
【0087】
そして、前記前提条件が満たされた場合に進むS310では、該当する他車両3Bについて、監視フラグをセット(即ち、オン)とする。つまり、該当する他車両3Bを監視対象とする。なお、以下では、オンをONと記す。
【0088】
なお、以降の処理では、この監視フラグがONとされた監視対象の他車両3B、即ち、第3レーンを走行していると判定された他車両3Bが、第2レーンに車線変更(即ち、マージイン)するかを判定する。
【0089】
続くS320では、第3レーン走行の監視条件が満たされているか否かを判定する。つまり、今回の監視対象の他車両3Bについて、監視フラグがONとなっているか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS330に進み、一方否定判断されるとS360に進む。
【0090】
<<第2レーン走行カウンタ操作処理>>
S330では、第2レーン走行カウンタ操作の処理を行う。この第2レーン走行カウンタ操作の処理とは、第2レーン走行カウンタ(以下、走行カウンタ)を操作する処理である。つまり、第2レーン走行カウンタ操作の処理とは、監視対象の他車両3Bが第3レーンから第2レーンに車線変更したか否かを判定するために用いる走行カウンタを操作する処理である。
【0091】
前記走行カウンタは、他車両3Bが第2レーンを走行しているかを判定する際に用いるカウンタであり、下記表2に示すように、所定の条件が満たされた場合に、カウンタ値の増減等を行う。
【0092】
この走行カウンタにより、SN比低下による第3レーン走行時の横位置ずれか(即ち、車線の誤検出か)、実際の第2レーンの走行かを、後述するように、SN比や隣接車線確率等を用いて判断することができる。なお、カウンタ値が大きくなるほど、第2レーンを走行している可能性が高くなる。
【0093】
以下、下記表2に基づいて詳細に説明する。
なお、走行カウンタの初期値は0、最大値は5、最小値は0である。また、SN閾値のS1、S2、S3には、S1>S2>S3の関係があり、S1、S2、S3としては、それぞれ、例えば、44dB、40dB、35dBの値を採用できる。なお、SN閾値とは、SN比の高低を判定するために設定する閾値であり、実験等により設定することができる。
【0094】
【表2】
【0095】
<操作(A)の場合>
SN比が所定の閾値であるSN閾値(例えば、S1)以上であり、且つ、監視対象のターゲット(即ち、他車両3B)が前回から連続して同じターゲットとして認識されたものである場合(即ち、接続状態が連続の場合)には、走行カウンタをインクリメント(例えば、1加算)する。ここでは、隣接車線確率は用いない。
【0096】
なお、接続状態が連続とは、公知のように、同じターゲットが、前回から今回にかけて連続して検知された状態を示し、所定の条件(同じターゲットと判定できる条件)が満たされた場合に、連続と判定する。
【0097】
この操作(A)の場合とは、SN比が高く、反射点の方位の精度である角度が安定している状態を示している。なお、反射点の方位がターゲットの範囲内である場合に、角度が安定していることになる。
【0098】
従って、レーダ装置5からの信号に基づいて、他車両3Bの走行位置(即ち、平滑位置)が第2レーンであると推定された場合において、SN比が高く、角度が安定している状態のときには、実際に、他車両3Bが第3レーンから第2レーンにマージインした可能性が高いことになる。
【0099】
<操作(B)の場合>
SN比が所定のSN閾値の範囲(例えば、S2以上、S1未満)であり、且つ、隣接車線確率P(t)が70%以上であり、且つ、接続状態が連続の場合には、走行カウンタをインクリメント(例えば、1加算)する。
【0100】
ここで、隣接車線確率とは、例えば特開2016-85567号公報等に記載のように公知であるので、簡単に説明する。つまり、隣接車線確率とは、自車線に隣接する車線(即ち、第2レーン)にターゲットが存在する確率であり、例えば下記式(1)で示すことができる。
【0101】
P(t)=P0.2+P(t-1)0.7・・・(1)
P :隣接車線確率(瞬時値)
P(t):隣接車線確率(フィルタ値)
t :隣接車線確率を求める処理のサイクル
この操作(B)の場合では、SN比だけでは、他車両3Bが第3レーンの走行か又は第2レーンにマージインしたかの判定が難しいので、隣接車線確率の条件も加味して判定している。
【0102】
<操作(C)の場合>
SN比が所定のSN閾値(例えば、S3)以下であり、且つ、接続状態が連続の場合には、走行カウンタをデクリメント(例えば、1減算)する。ここでは、隣接車線確率は用いない。
【0103】
この操作(C)の場合は、SN比が低く、角度が安定しないので、即ち、他車両3Bの走行位置が第2レーンとされたときでも、その確度が低いので、走行カウンタを減算している。
【0104】
<保持の場合>
上述した操作(A)~(C)のSN比と隣接車線確率の条件を満たさない場合、又は、接続状態が外挿の場合には、走行カウンタを保持し、変更しない。
【0105】
なお、ここで外挿とは、公知のように(例えば、特開2020-012795号公報参照)、前回検出されたターゲットと今回検出されたターゲットとが同一(即ち、連続)という条件は満たさないが、前回検出されたターゲットの走行状態から同じターゲットである可能性が高いと推定(即ち、外挿)できる状態を示している。
【0106】
<クリアの場合>
新規に検出されたターゲット(即ち、他車両3B)の場合、又は、監視フラグがONからOFF(即ち、オフ)に変更された場合には、走行カウンタの値をリセットする(即ち、ゼロにする)。
【0107】
このように、第2レーン走行カウンタ操作の処理では、SN比や隣接車線確率等を用いて走行カウンタの値を設定している。
なお、図9では、他車両3Bが第3レーン又は第2レーンを走行していると推定される場合における、ターゲットによる信号(即ち、S)のレベルとノイズ(即ち、N)のレベルとの例えば電圧の差(即ち、S-N)を示している。なお、図9では、S-NをSNと記載している。この図9は、前記図6に示すグラフと対応関係があるものであり、同じ縦位置における他車両3Bについて、SNの状態を例示している。
【0108】
<<警報判定処理>>
続くS340では、第3レーン走行の監視解除条件を満たすか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS350に進み、一方否定判断されるとS360に進む。
【0109】
この第3レーン走行の監視解除条件とは、上述した前提条件を満たして、監視フラグがONとされた他車両3Bについて、その監視フラグをリセット(即ち、OFF)するか否かを判定する条件である。
【0110】
この第3レーン走行の監視解除条件を下記表3に示す。
なお、表3に示すように、解除条件の1つでも成立した場合には、監視解除条件が満たされたと判断し、第3レーンを走行中の監視対象の他車両3に対する監視を解除する。この監視を解除することにより、後述するように、速やかに警報を発することが可能となる。
【0111】
【表3】
【0112】
<解除条件1の場合>
他車両3Bが第3レーンを走行しておらず、且つ、走行カウンタが所定のカウンタ閾値以上である場合には、監視解除条件が満たされたと判断する。
【0113】
つまり、他車両3Bが第3レーンを走行しておらず、且つ、第2レーンを走行していることが所定回数(即ち、カウンタ閾値以上)検出された場合には、他車両3Bが第3レーンから第2レーンに車線変更した可能が高いとして、第3レーンを走行している他車両3Bに対する監視を解除する。
【0114】
詳しくは、第3レーンを走行していた監視対象の他車両3Bが、今回第3レーンを走行していないことは、その走行位置(即ち、平滑位置)から判断できる。しかも、走行カウンタが所定のカウンタ閾値以上という条件から、安定して第2レーンの走行を検知できていると判断できる。このような理由により、他車両3Bが第3レーンから第2レーンにマージインしたと判断することができる。
【0115】
ここで、カウンタ閾値は、前記SN閾値に応じて変更する。このようにカウンタ閾値を変更する理由は、レーダ装置5の検出精度に影響を与える外乱の大小にかかわらず、同じような精度で第2レーンの走行を判断するためである。なお、SN閾値は、例えば外乱の程度によって適宜設定される。なお、外乱とは、自車両3Aの外部の環境のうち、レーダ装置5の反射波に影響を与えることによって、ターゲット(即ち、他車両3B)の検出精度に影響を与える要素であり、例えば壁等が挙げられる。
【0116】
例えば、後述するように、外乱が小さい場合には、SN閾値は高く設定されるがが、このようにSN閾値が高い場合には、カウンタ閾値を低めの値(例えば、2)に設定する。一方、外乱が大きい場合には、SN閾値が低く設定されるが、このようにSN閾値が低い場合(即ち、前記高い場合よりも低い場合)には、カウンタ閾値を高めの値(即ち、前記低めの値よりも高い例えば5)に設定する。
【0117】
このように、カウンタ閾値を設定するのは、例えば、SN比が低い場合には、レーダ装置5による検知精度が安定していないと考えられるために、通常より、状況判断の期間を長く設定するためである。
【0118】
<解除条件2の場合>
他車両3Bが第3レーンを走行しておらず、且つ、TTCが3sec以下の場合には、監視解除条件が満たされたと判断する。なお、TTCとは、ここでは、自車両3Aが第2レーンに車線変更した場合において、現在の相対速度等の状況が継続するとした場合に、他車両3Bが自車両3Aに衝突するまでの衝突予測時間である。このTTCは、車間距離を相対速度で割ることにより求めることができる。なお、TTCとは、Time to Collisionの略である。
【0119】
つまり、他車両3Bが第3レーンを走行しておらず、且つ、短時間で衝突の可能性がある場合には、他車両3Bに対する監視を解除するのである。
<解除条件3の場合>
第3レーンが存在していない場合には、監視解除条件が満たされたと判断する。
【0120】
第3レーンが存在しない場合としては、例えば、自車両3Aが第2レーンに車線変更した場合が挙げられる。
<解除条件4の場合>
ターゲット(即ち、他車両3B)の過去の警報フラグがONであり、且つ、ターゲットの過去の監視フラグがOFFの場合には、監視解除条件が満たされたと判断する。
【0121】
ここで、過去の警報フラグがONとは、今回監視対象となる前の処理(例えば、前回又は前々回等の処理)において警報対象となっていたことを意味している。なお、警報フラグとは、警報を発する条件が満たされた場合に設定されるフラグを示している。
【0122】
そして、S350では、監視解除条件が満たされたので、監視フラグをOFFにする。
なお、他車両3Bが自車線を走行している場合や、他車両3Bが最初から第2レーンを走行している場合には、今回の警報の対象である他車両3B、即ち、第3レーンから第2レーンに走行車線が変更された他車両3Bに該当しない。即ち、そのような他車両3Bは、最初から監視対象外である。
【0123】
続くS360では、警報判定条件を満たすか否か、即ち、監視フラグがOFFとなっているか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS370に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0124】
S370では、「alm 最終出力」をONにし、即ち、警報フラグを設定し、一旦本処理を終了する。
そして、このようにして警報フラグが設定された場合(即ち、ONの場合)には、警報装置7によって、警報が発せられる。
【0125】
なお、上述したS300~S370の処理は、全てのターゲットの物体(即ち、他車両3B)に対して実施される。
[1-4.効果]
上記第1実施形態では、以下の作用効果を得ることができる。
【0126】
(1a)本第1実施形態の車両制御装置9は、自車両3Aの車線変更時の安全を図るために、自車両3Aの後側方の確認を支援することができる。
この車両制御装置9は、他車両位置推定部21とSN指標算出部23と車線判定部25と警報判定部27とを備えている。
【0127】
このような構成により、本第1実施形態では、他車両3Bが走行する車線を精度良く判定できるので、自車両3Aの後側方の死角エリア等を走行する他車両3Bについて、適切に警報を発することができる。
【0128】
詳しくは、SN比が大きな場合には、横位置の推定精度が高く、一方、SN比が小さな場合には、横位置の推定精度が低い。従って、他車両3Bの走行車線を判定する場合に、SN比の大小を考慮して判定することにより、他車両3Bの走行車線の判定をより確実に行うことができる。
【0129】
そのため、例えば、他車両3Bの走行車線の判定精度が高い場合には、その判定結果に応じて、適切に(例えば、速やかに)警報を発することができる。一方、他車両3Bの走行車線の判定精度が低い場合には、例えば、更に他の条件等を加味する等によって(例えば、判定時間を長くすることによって)、走行車線の判定精度を高め、その判定結果に応じて、適切に警報を発することができる。
【0130】
つまり、警報を発すべきときに適切に(例えば、適切なタイミングで)警報を発することができるとともに、警報を発する必要がない場合に、むやみに警報を発することを抑制することができる。
【0131】
(1b)本第1実施形態の車両制御装置9は、SN比が所定のSN閾値より高い場合に、ある判定条件(即ち、第1の判定条件)に基づいて、他車両3Bが走行する車線の判定を行う。また、SN比が前記所定のSN閾値以下の場合に、第1の判定条件に他の条件(例えば、判定時間を長くした条件やその他の条件)を加えた第2の判定条件に基づいて、他車両3Bが走行する車線の判定を行う。これにより、安定して精度の高い車線判定を行うことができる。つまり、SN比が変動した場合でも、判定精度を確保することができる。
【0132】
(1c)本第1実施形態の車両制御装置9は、SN比の高低に応じて、他車両3Bが第2レーンを走行中か否かを判定することができる。
(1d)本第1実施形態の車両制御装置9は、他車両3Bが第3レーンを走行中と判定された後に、他車両3Bが走行する車線を判定する場合には、SN比が高いほど、例えばカウンタ閾値を低くして、他車両3Bが第2レーンを走行していると判定し易くすることができる。これにより、安定して精度の高い車線判定を行うことができる。
【0133】
(1e)本第1実施形態の車両制御装置9は、SN閾値に基づいて、他車両3Bが走行する車線を判定するために設定された走行カウンタのカウンタ値を更新することができる。
(1f)本第1実施形態の車両制御装置9は、SN比が高いほど、走行カウンタのカウンタ値をアップし易くすることができる。これにより、反射波の信頼性が高いほど、速やかに車線判定を行うことができ、必要に応じて速やかに警報を発することができる。
【0134】
(1g)本第1実施形態の車両制御装置9は、他車両3Bが、第3レーンを走行中かを判定する判定基準に基づいて、他車両3Bが第3レーンを走行と推定される場合に、監視対象の他車両3Bを特定するための監視フラグをオンすることができる。
【0135】
(1h)本第1実施形態の車両制御装置9は、他車両3Bが、第3レーンから第2レーンに車線変更したことを判定する判定基準に基づいて、他車両3Bが第2レーンに車線変更したと判定された場合に、監視フラグをオフすることができる。なお、この監視フラグがオフされた他車両3Bに対して、自車両3Aと衝突の恐れがある場合には、警報を発することができる。
【0136】
(1i)本第1実施形態の車両制御装置9は、第3レーンが存在しないとなったと推定される場合に、監視フラグをオフすることができる。
(1j)本第1実施形態の車両制御装置9は、他車両3Bが、第3レーンを走行していない条件とSN閾値に基づいた判定条件とに基づいて、他車両3Bが第2レーンに車線変更したと推定される場合に、監視フラグをオフすることができる。
【0137】
[1-5.文言の対応関係]
本第1実施形態と本開示との関係において、自車両3Aが自車両に対応し、他車両3Bが他車両に対応し、車両制御装置9が車両制御装置に対応し、他車両位置推定部21が他車両位置推定部に対応し、SN指標算出部23がSN指標算出部に対応し、車線判定部25が車線判定部に対応し、警報判定部27が警報判定部に対応する。
【0138】
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、以下では主として第1実施形態との相違点について説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0139】
本第2実施形態では、ターゲット(即ち、他車両3B)と壁との横位置差によりSN閾値を変更するので、この点を中心に説明する。
[2-1.制御の概要]
まず、第2実施形態の制御の概要について説明する。
【0140】
図10に示すように、第2レーンの外側(即ち、自車両3Aから遠い側)に壁がある場合には、この壁の影響によって、他車両3Bが第2レーン内の外側を走行しているときでも、第3レーンを走行していると誤判断される場合がある。
【0141】
つまり、壁があることによって生ずる反射波の変動(即ち、外乱)によって、他車両3Bの走行位置が誤判断されることがある。
そこで、他車両3Bの走行位置が第2レーンに車線変更されたと判定されたタイミングで、他車両3Bの横位置と壁の横位置とに基づいて、他車両3Bから壁までの距離を求める。そして、その距離が所定の判定値より小さい場合(即ち、壁が近い場合)には、SN閾値を調整する。
【0142】
具体的には、他車両3Bから壁までの距離が短い場合(即ち、他車両3Bが壁に近い場合)には、SN閾値を低くする。例えば、SN閾値をそれ以前に設定された値よりも所定dB分低くする。例えば、それ以前に45dBに設定されていた場合には、40dBに変更するように、SN閾値を低くする。
【0143】
詳しくは、他車両3Bが壁に近い場合には、外乱が大きいので、外乱(即ち、ノイズ)のレベルと信号のレベルとの差が小さくなり、上述した走行カウンタがアップしにくい。そこで、SN閾値を下げるが、外乱が大きく角度精度が悪い状態であるので、カウンタ閾値を上げる。
【0144】
ここで、カウンタ閾値を上げる理由は、角度精度が悪い状態で、SN閾値を下げてカウントアップし易くしているため、判定時間を長くして、できるだけ判定精度を高めるためである。
【0145】
なお、他車両3Bが壁に近い場合でも、SN比が所定値、例えば、SN閾値S3(例えば、35dB)より大きい場合には、角度が安定している車両として、SN閾値の変更は行わない。
【0146】
なお、上述したように、他車両3Bが第2レーンを走行していると判断された場合には、前記監視を解除する。
また、図11は、第3レーンの外側に壁がある場合を示している。なお、壁が存在しない場合も同様である。
【0147】
ここで、他車両3Bが第3レーン内の内側を走行した後に、第2レーンに車線変更したと判断された場合には、そのタイミングで、他車両3Bの横位置と壁の横位置とに基づいて、他車両3Bから壁までの距離を求める。そして、その距離が所定の判定値以上の場合(即ち、壁が遠い場合)には、SN閾値を調整する。
【0148】
具体的には、他車両3Bが壁から遠い場合には、SN閾値を高くする。例えば、SN閾値をそれ以前に設定された値よりも所定dB分高くする。
詳しくは、他車両3Bが壁から遠い場合には、外乱が小さいので、外乱(即ち、ノイズ)のレベルと信号のレベルとの差が大きくなり、走行カウンタはアップし易い。そこで、SN閾値を上げるが、外乱が小さく角度精度が良い状態であるので、カウンタ閾値を下げる。
【0149】
ここで、カウンタ閾値を下げる理由は、SN閾値を上げた状態でSN閾値の条件を満たしているので(即ち、データの信頼性が高いので)、判定時間を短くして、早めに警報対象に切り上げたいためである。
【0150】
なお、他車両3Bが壁から遠い場合でも、SN比が所定値(例えば、S3)以下の場合には、角度が安定していない車両として、変更前よりSN閾値を低くする。
[2-2.制御の処理]
次に、第2実施形態の制御の処理について、図12及び表4に基づいて説明する。
【0151】
本処理は、前記図8のS330において使用するSN閾値を、他車両3Bから壁までの距離に応じて変更して、走行カウンタを調整するための処理である。
図12のフローチャートに示すように、S400では、SN閾値を変更する閾値変更条件が成立したか否かを判定する。例えば、他車両3Bが第3レーンを走行していないという条件が満たされたか否かを判定する。ここで肯定判断されるとS410に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0152】
S410では、他車両3Bから壁までの距離を算出する。
続くS420では、壁距離条件Aの判定を行う。つまり、他車両3Bから壁までの距離(即ち、壁距離)が7m未満か又は7m以上かの判定を行う。ここで7m未満と判定された場合にはS480に進み、一方7m以上と判定された場合にはS430に進む。
【0153】
S430では、SN比条件Cの判定を行う。つまり、SN比が35dBより大であるか又は35dB以下であるかの判定を行う。ここで35dBより大と判定された場合にはS460に進み、一方35dB以下と判定された場合にはS440に進む。
【0154】
S440では、SN閾値を下げる。
続くS450では、カウンタ閾値を4に設定し、一旦本処理を終了する。
一方、前記S460では、SN閾値を上げる。
【0155】
続くS470では、カウンタ閾値を2に設定し、一旦本処理を終了する。
また、前記S420で壁距離が7m未満と判定されて進むS480では、壁距離条件Bの判定を行う。つまり、壁距離が3.5mより大であるか又は3.5m以下であるかの判定を行う。ここで3.5mより大と判定された場合にはS510に進み、一方3.5m以下と判定された場合にはS490に進む。
【0156】
S490では、SN閾値を下げる。
S500では、カウンタ閾値を4に設定し、一旦本処理を終了する。
一方、前記S510では、SN比条件Dの判定を行う。つまり、SN比が35dBより大であるか又は35dB以下であるかの判定を行う。ここで35dBより大と判定された場合にはS540に進み、一方35dB以下と判定された場合にはS520に進む。
【0157】
S520では、SN閾値を下げる。
続くS530では、カウンタ閾値を4に設定し、一旦本処理を終了する。
一方、前記S540では、カウンタ閾値を2に設定し、一旦本処理を終了する。
【0158】
ここで、上述するSN閾値やカウンタ閾値を設定する手法について、下記表4に基づいてまとめて説明する。
【0159】
【表4】
【0160】
壁距離が7m以上で外乱の影響が小さくても、SN比が35dB以下の場合には、ノイズのレベルと信号のレベルとの差が小さいと考えられる。この場合には、走行カウンタがアップし難いので、SN閾値を下げるが、角度精度が悪いので、カウンタ閾値を例えば4に上げる。
【0161】
壁距離が7m以上で外乱の影響が小さくても、SN比が35dBより大の場合には、ノイズのレベルと信号のレベルとの差が大きいと考えられる。この場合には、走行カウンタがアップし易いので、SN閾値を上げて、カウンタ閾値を例えば2に下げる。
【0162】
壁距離が3.5m以下で外乱の影響が大きい場合には、SN閾値を下げて、カウンタ閾値を例えば4に上げる。
壁距離が7m未満で3.5mより大の場合には、外乱の影響は中程度と考えられる。この場合に、SN比が35dBより大きい場合には、SN閾値の操作をしない。このとき、カウンタ閾値は例えば2のままである。
【0163】
壁距離が7m未満で3.5mより大の場合には、外乱の影響は中程度と考えられる。この場合に、SN比が35dB以下の場合には、ノイズのレベルと信号のレベルとの差が小さいと考えられる。この場合には、走行カウンタがアップし難いので、SN閾値を下げるが、角度精度が悪いので、カウンタ閾値を例えば4に上げる。
【0164】
なお、調整したSN閾値は、例えば、ターゲットを見失った場合、監視を解除した場合、TTCが3sec以下となった場合まで維持してもよい。或いは、各サイクルでの演算の際に、毎回可変にしてもよい。
【0165】
[2-3.効果]
(2a)本第2実施形態は、第1実施形態と同様な効果を奏する。
(2b)本第2実施形態は、レーダ波の反射波における外乱による影響を抑制する(例えば、除く)ために、SN比に応じてSN閾値を変更する。
【0166】
つまり、他車両3Bと壁との横位置差(即ち、他車両3Bから壁までの距離)に応じて、SN閾値を変更する。具体的には、他車両3Bと壁との横位置差が小さい場合には、大きい場合に比べて、SN閾値を小さくする。
【0167】
これにより、前記横位置差に起因する反射波の変動の影響を低減することができる。そのため、外乱の状態にかかわらず、安定した精度で走行車線を判定できる。
詳しくは、上述した処理によって、外乱の大小にかかわらず、同じような精度で、他車両3Bが第2レーンを走行していることを判断できる。その結果、適切なタイミングで警報を発することができる。
【0168】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0169】
(3a)本開示では、SN指標として、ターゲットの信号(即ち、S)のレベルとノイズ(即ち、N)のレベルとの比(即ち、S/N)を用いたが、信号のレベルとノイズのレベルとの差(即ち、S-N)を用いてもよい。つまり、SN指標として、雑音のレベルに対する信号のレベルの関係を示す各種の指標を採用できる。
【0170】
(3b)また、壁以外の各種の外乱(例えば、自然環境など)に応じて、前記第1実施形態のように、SN閾値を変更してもよい。さらに、TTCによって、SN閾値を変更してもよい。例えば、TTCが5sec以上の場合には、SN閾値を高くするようにしてもよい。
【0171】
(3c)本開示に記載の車両制御装置およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0172】
あるいは、本開示に記載の車両制御装置およびその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0173】
もしくは、本開示に記載の車両制御装置およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0174】
また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。制御部に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0175】
(3d)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0176】
(3e)上述した車両制御装置の他、当該車両制御装置を構成要素とするシステム、当該車両制御装置のコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移有形記録媒体、制御方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0177】
3A:自車両、3B:他車両、5:レーダ装置、9:車両制御装置、21:他車両位置推定部、23:SN指標算出部、25:車線判定部、27:警報判定部
図1
図2
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図12