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特許7435442血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/9066 20060101AFI20240214BHJP
   A61K 31/12 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240214BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240214BHJP
   A61K 125/00 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
A61K36/9066
A61K31/12
A61P9/00
A61P9/10
A61P9/10 101
A23L33/105
A61K125:00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020527658
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2019025705
(87)【国際公開番号】W WO2020004585
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2018125052
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306019030
【氏名又は名称】ハウスウェルネスフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内尾 隆正
(72)【発明者】
【氏名】室山 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 健吾
(72)【発明者】
【氏名】室▲崎▼ 伸二
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-143200(JP,A)
【文献】特表2009-530305(JP,A)
【文献】特開2012-236826(JP,A)
【文献】特開平10-194938(JP,A)
【文献】ADARAMOYE, Oluwatosin, A. et al.,Hypotensive and endothelium-independent vasorelaxant effects of methanolic extract from Curcuma longa L. in rats,J Ethnopharm,2009年,Vol.124, No.3,p.457-462
【文献】「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」,[online],2010年04月10日,[2023年9月12日検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20100410211435/http://www.murata-world.co.jp/baika/gajyutu.html>
【文献】「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」,[online],2016年12月03日,[2023年9月12日検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20161203172833/https://www.keimeido.co.jp/health_info/syoyaku.htm>
【文献】LI, Jian et al.,Structure determination of two new bisabolane-type sesquiterpenes from the rhizomes of Curcuma longa by NMR spectroscopy,Magn Reson Chem,Vol.53, No.7,2015年,p.536-538
【文献】ZENG, Yongchi et al.,New sesquiterpenes and calebin derivatives from Curcuma longa,Chem Pharm Bull,2007年,Vol.55, No.6,p.940-943
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A61K 31/00-31/80
A23L 33/00-33/29
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ーメロノールA、ターメロノールB及びビサクロン含有する、によるウコン(Curcuma longa)の根茎の抽出物を有効成分として含有する末梢血管の血流改善用組成物。
【請求項2】
1日の摂取量当たり合計で20μg以上のターメロノールA及びターメロノールBを含有する、請求項に記載の末梢血管の血流改善用組成物。
【請求項3】
1日の摂取量当たり17μg以上のターメロノールAを含有する、請求項1又は2に記載の末梢血管の血流改善用組成物。
【請求項4】
1日の摂取量当たり5μg以上のターメロノールBを含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の末梢血管の血流改善用組成物。
【請求項5】
1日の摂取量当たり80μg以上のビサクロンを含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の末梢血管の血流改善用組成物。
【請求項6】
1日の摂取量当たりのクルクミンの含有量が30mg未満である、請求項1~のいずれか1項に記載の末梢血管の血流改善用組成物。
【請求項7】
末梢血管の血流改善が、手足の末梢血管の血流改善である、請求項1~のいずれか1項に記載の末梢血管の血流改善用組成物。
【請求項8】
手足の冷えを抑制するための、請求項1~のいずれか1項に記載の末梢血管の血流改善用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内皮細胞は、血管内腔を覆う細胞であり、血管の収縮・拡張、血液凝固、炎症、血管新生などを調節する役割を担っている。偏った食生活(高脂肪食、喫煙、運動不足など)、肥満、高血圧、高脂血症、高血糖などは、内皮細胞を障害し、血管内皮機能を低下させる原因である事が明らかとなっている。また、血管内皮機能の低下は、動脈硬化の進展、不安定プラークの形成、大血管障害を誘発し、さらに進行すると循環器疾患(狭心症、心筋梗塞、脳卒中など)を引き起こす事が知られている。そのため、血管内皮機能の維持や向上は様々な循環器疾患の予防において重要である(非特許文献1、2)。
【0003】
一方、ウコンには、多数の生理活性物質が含まれることが知られている。
【0004】
非特許文献3、4では、秋ウコンエキスのメタノール抽出物を検体として実験に用い、ラットから採取した腸間膜動脈(血管)を緩衝液に入れ、この緩衝液中にウコン検体を添加すると、血管が拡張したことが開示されている。
【0005】
非特許文献5では、秋ウコンとニンニクを配合した飼料を与えたラットは血管拡張能が向上したことが開示されている。
【0006】
非特許文献6では、糖尿病モデルラットにおいて、クルクミンの継続投与により、糖尿病に伴う血管内皮機能の低下を改善したことが開示されている。非特許文献6では、クルクミンを、糖尿病モデルラットに、30mg/kg体重及び300mg/kg体重の用量で毎日経口摂取させたことが記載されている。
【0007】
特許文献1では、クローブ、コリアンダー、クミン、ニンニク、ショウガ、タマネギ、トウガラシ及びウコンを有効成分として含有する、血管内皮機能改善剤が開示されている。
【0008】
また、末梢の血流障害は、動脈硬化などの様々な病態による血管障害によって起こると考えられており、冷え症の原因の1つとしても知られている。3000人以上の女性を対象とした研究において、55歳以上の女性では50%以上に冷え症の自覚が認められたことが報告されている(非特許文献7、8)。冷え症は不眠や肩こり、便秘などの症状なども伴う事が多いため(非特許文献7)、血流を改善することはQOLの改善において重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-044169号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】諸岡 俊文, 野出 孝一. 血管内皮機能研究の進化. 日本内科学会雑誌, Vol.106, No.4, 2017.
【文献】杉山正悟. Reactive hyperemia peripheral arterial tonometry (RH-PAT)による血管内皮機能評価. 心臓, Vol.46, No.10, 2014.
【文献】J Ethnopharmacol. 2009 Jul 30;124(3):457-62.
【文献】J Smooth Muscle Res. 2008 Oct;44(5):151-8.
【文献】Life Sci. 2005 Jul 8;77(8):837-57.
【文献】BMC Complementary and Alternative Medicine 2010, 10:57.
【文献】尾形優、金子健太郎、後藤慶太、河野かおり、山本真千子、後藤慶太(2017).冷え症の生理学的メカニズムについて―循環動態および自律神経活動指標による評価―.Japanese Journal of Nursing Art and Science Vol.15(3),pp 227-234,2017.
【文献】後山尚久、冷え症の病態の臨床的解析と対応-冷え症はいかなる病態か.そして治療できるのか,医学の歩み,215(11),925-929(2005).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、血管内皮機能を改善するために有効な組成物を提供することを目的とする。
本発明はまた、末梢血管の血流を改善するために有効な組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンを含有するウコン抽出物を含む錠剤を毎日12週間摂取したヒトにおいて、血管拡張能が有意に向上すること、並びに、手足の冷えが改善されることを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
(1)ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を有効成分として含有する、血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物。
(2)前記ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有する、水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒によるウコン抽出物を含有する、(1)に記載の血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物。
(3)ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有する水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒によるウコン抽出物を有効成分として含有する、血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物。
(4)1日の摂取量当たり合計で20μg以上のターメロノールA及びターメロノールBを含有する、(1)~(3)のいずれかに記載の血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物。
(5)1日の摂取量当たり17μg以上のターメロノールAを含有する、(1)~(4)のいずれかに記載の血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物。
(6)1日の摂取量当たり5μg以上のターメロノールBを含有する、(1)~(5)のいずれかに記載の血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物。
(7)1日の摂取量当たり80μg以上のビサクロンを含有する、(1)~(6)のいずれかに記載の血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物。
(8)1日の摂取量当たりのクルクミンの含有量が30mg未満である、(1)~(7)のいずれかに記載の血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物。
(9)ウコンを有効成分として含有する、血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物(ただし、クローブ、コリアンダー、クミン、ニンニク、ショウガ、タマネギ及びトウガラシを更に含む場合、並びに、ニンニクを更に含む場合を除く)。
【0013】
(10)ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有する水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒によるウコン抽出物の、血管内皮機能改善用組成物の製造のための使用。
(11)ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有する水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒によるウコン抽出物の、血管内皮機能改善用医薬の製造のための使用。
前記血管内皮機能改善用組成物又は医薬は、好ましくは、1日の摂取量当たり合計で20μg以上のターメロノールA及びターメロノールBを含有する。前記血管内皮機能改善用組成物又は医薬は、好ましくは、1日の摂取量当たり17μg以上のターメロノールAを含有する。前記血管内皮機能改善用組成物又は医薬は、好ましくは、1日の摂取量当たり5μg以上のターメロノールBを含有する。前記血管内皮機能改善用組成物又は医薬は、好ましくは、1日の摂取量当たり80μg以上のビサクロンを含有する。前記血管内皮機能改善用組成物又は医薬において、好ましくは、1日の摂取量当たりのクルクミンの含有量が30mg未満である。
(12)ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有する水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒によるウコン抽出物を、血管内皮機能の改善を必要とする対象に投与すること、及び
前記対象において血管内皮機能を改善すること
を含む、血管内皮機能を改善する方法。
(13)血管内皮機能の改善を必要とする対象において、血管内皮機能を改善するための、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有する水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒によるウコン抽出物。
前記(13)の前記活性化合物又は前記ウコン抽出物は、好ましくは、1日当たり合計で20μg以上のターメロノールA及びターメロノールBを前記対象に投与することで血管内皮機能を改善するためのものである。前記(13)の前記活性化合物又は前記ウコン抽出物は、好ましくは、1日当たり17μg以上のターメロノールAを前記対象に投与することで血管内皮機能を改善するためのものである。前記(13)の前記活性化合物又は前記ウコン抽出物は、好ましくは、1日当たり5μg以上のターメロノールBを前記対象に投与することで血管内皮機能を改善するためのものである。前記(13)の前記活性化合物又は前記ウコン抽出物は、好ましくは、1日当たり80μg以上のビサクロンを前記対象に投与することで血管内皮機能を改善するためのものである。前記(13)の前記活性化合物又は前記ウコン抽出物は、好ましくは、1日当たりのクルクミンの投与量が30mg未満となるように前記対象に投与することで血管内皮機能を改善するためのものである。
【0014】
(14)ウコンの、血管内皮機能改善用組成物の製造のための使用。
(15)ウコンの、血管内皮機能改善用医薬の製造のための使用。
(16)ウコンを、血管内皮機能の改善を必要とする対象に投与すること、及び
前記対象において血管内皮機能を改善すること
を含む、血管内皮機能を改善する方法。
(17)血管内皮機能の改善を必要とする対象において、血管内皮機能を改善するための、ウコン。
前記(14)~(17)において、前記ウコンは、ウコンと、クローブ、コリアンダー、クミン、ニンニク、ショウガ、タマネギ及びトウガラシとの組み合わせではなく、且つ、ウコンとニンニクとの組み合わせではない。
【0015】
(18)ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有する水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒によるウコン抽出物の、末梢血管の血流改善用組成物の製造のための使用。
(19)ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有する水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒によるウコン抽出物の、末梢血管の血流改善用医薬の製造のための使用。
前記末梢血管の血流改善用組成物又は医薬は、好ましくは、1日の摂取量当たり合計で20μg以上のターメロノールA及びターメロノールBを含有する。前記末梢血管の血流改善用組成物又は医薬は、好ましくは、1日の摂取量当たり17μg以上のターメロノールAを含有する。前記末梢血管の血流改善用組成物又は医薬は、好ましくは、1日の摂取量当たり5μg以上のターメロノールBを含有する。前記末梢血管の血流改善用組成物又は医薬は、好ましくは、1日の摂取量当たり80μg以上のビサクロンを含有する。前記末梢血管の血流改善用組成物又は医薬において、好ましくは、1日の摂取量当たりのクルクミンの含有量が30mg未満である。
(20)ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有する水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒によるウコン抽出物を、末梢血管の血流の改善を必要とする対象に投与すること、及び
前記対象において末梢血管の血流を改善すること
を含む、末梢血管の血流を改善する方法。
(21)末梢血管の血流の改善を必要とする対象において、末梢血管の血流を改善するための、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有する水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒によるウコン抽出物。
前記(21)の前記活性化合物又は前記ウコン抽出物は、好ましくは、1日当たり合計で20μg以上のターメロノールA及びターメロノールBを前記対象に投与することで末梢血管の血流を改善するためのものである。前記(21)の前記活性化合物又は前記ウコン抽出物は、好ましくは、1日当たり17μg以上のターメロノールAを前記対象に投与することで末梢血管の血流を改善するためのものである。前記(21)の前記活性化合物又は前記ウコン抽出物は、好ましくは、1日当たり5μg以上のターメロノールBを前記対象に投与することで末梢血管の血流を改善するためのものである。前記(21)の前記活性化合物又は前記ウコン抽出物は、好ましくは、1日当たり80μg以上のビサクロンを前記対象に投与することで末梢血管の血流を改善するためのものである。前記(21)の前記活性化合物又は前記ウコン抽出物は、好ましくは、1日当たりのクルクミンの投与量が30mg未満となるように前記対象に投与することで末梢血管の血流を改善するためのものである。
【0016】
(22)ウコンの、末梢血管の血流改善用組成物の製造のための使用。
(23)ウコンの、末梢血管の血流改善用医薬の製造のための使用。
(24)ウコンを、末梢血管の血流の改善を必要とする対象に投与すること、及び
前記対象において末梢血管の血流を改善すること
を含む、末梢血管の血流を改善する方法。
(25)末梢血管の血流の改善を必要とする対象において、末梢血管の血流を改善するための、ウコン。
前記(22)~(25)において、前記ウコンは、ウコンと、クローブ、コリアンダー、クミン、ニンニク、ショウガ、タマネギ及びトウガラシとの組み合わせではなく、且つ、ウコンとニンニクとの組み合わせではない。
【0017】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2018-125052号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、血管内皮機能改善用組成物、及び、末梢血管の血流改善用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、被験食品(ウコン抽出物群又はプラセボ群)の摂取前から12週間後の血管内皮機能(RHI)の変化量(ΔRHI)を示す。
図2図2は、被験食品(ウコン抽出物群又はプラセボ群)の摂取前から摂取4週間後、8週間後、及び12週間後までの期間での、手足の冷えのVAS法による評価値の変化量(ΔVAS Score)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<ウコン>
本発明においてウコンは、ショウガ科ウコン属の植物を指し、具体的には、Curcuma longa(秋ウコン)、Curcuma aromatica、Curcuma zedoaria、Curcuma phaeocaulis、Curcuma kwangsiensis、Curcuma wenyujin、及び/又は、Curcuma xanthorrhizaが挙げられ、Curcuma longaが特に好ましい。
【0021】
本発明においてウコンとして、根茎を含む部分を用いることが好ましい。
【0022】
本発明で用いるウコンの形態は特に限定されず、ウコンの破砕物、搾汁、抽出物、それらの処理物等であってよく、特に好ましくは、ウコン抽出物である。以下に、ウコン抽出物の好ましい実施形態について説明する。
【0023】
<ウコン抽出物>
本発明においてウコン抽出物とは、ショウガ科ウコン属の植物に由来する植物原料の抽出溶媒による抽出物(ウコンエキス)をいう。ウコン抽出物は、抽出溶媒による抽出により得られた溶媒抽出物に限らず、溶媒抽出物を更に、カラムクロマトグラフィー等で分画精製したものをも包含する。本発明で用いるウコン抽出物は、抽出操作(分画精製を行う場合は分画精製操作も含む)の完了した抽出液、抽出液から溶媒を部分的に除去した濃縮物、或いは、抽出液から溶媒を除去した乾燥物の形態であることができる。抽出物からの溶媒の除去は、加熱及び/又は減圧等により溶媒を揮発することにより行うことができる。これらの加熱、減圧の方法は特に限定されず、例えば従来公知の方法を使用することができる。
【0024】
前記植物原料としては上記で挙げたウコンの根茎等が挙げられ、特に、Curcuma longaの根茎等が好適である。根茎は土中から採取したものを使用してよく、根茎の適当な部位を原型のまま、あるいは適当な寸法又は形状にカットしたもの、あるいは粉砕物の形態にしたものを使用することができる。これらの植物原料は適宜乾燥されたものであってよい。
【0025】
抽出溶媒としては、水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒としては、水、親水性有機溶媒、水と親水性有機溶媒の混合溶媒のいずれであってもよい。親水性有機溶媒は複数種の親水性有機溶媒の混合溶媒であってもよい。「水」とは熱水も包含する。熱水としては例えば95℃以上の熱水が使用できる。親水性有機溶媒としては少なくとも1種のアルコール(複数種のアルコールの混合溶媒であってもよい)が挙げられ、アルコールとしては、特に限定されないが、エタノールが好ましい。抽出溶媒としてアルコールと水との混合溶媒を用いる場合の混合比は特に限定されないが、例えば重量比で10:90~90:10の範囲が好ましく、20:80~50:50の範囲がより好ましい。
【0026】
また、抽出溶媒として、超臨界二酸化炭素を用いることもできる。
【0027】
植物原料からのウコン抽出物の抽出方法は特に限定されない。
【0028】
本発明では、ウコン抽出物として、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有する、前記抽出溶媒によるウコン抽出物を用いることが好ましく、少なくともターメロノールA及びターメロノールBを含有する、前記抽出溶媒によるウコン抽出物を用いることがより好ましく、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンを含有する、前記抽出溶媒によるウコン抽出物を用いることがより好ましい。
ターメロノールA及びターメロノールBは、それぞれ、以下の平面構造を有する化合物である。
【0029】
【化1】
【0030】
【化2】
【0031】
ウコンから分離される天然物においてターメロノールA及びターメロノールBは、2-メチル-2-ヘプテン-4-オンの部分構造における6位炭素の立体配置がS体であるが、本発明においてターメロノールA及びターメロノールBは上記の平面構造を有していればよく、前記立体配置がS体であってもよいし、R体であってもよいし、S体とR体との混合物であってもよい。
【0032】
本発明においてビサクロンとは、以下の平面構造を有する化合物である。ビサクロンは平面構造式中*印で示した位置に不斉炭素を有し、複数の光学異性体を含み得るが、本発明においてビサクロンはいずれの光学異性体であってもよく、2種以上の光学異性体の混合物であってもよい。
【0033】
【化3】
<ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロン>
本発明で用いるターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種(以下「活性化合物」という場合がある)は植物に由来するものであってもよいし、人為的に合成されたものであってもよい。例えば光学活性の(+)-ターメロノールAは、Biosci Biotechnol Biochem. 1993;57(7):1137-40に記載の方法により合成することできる。
【0034】
本発明においてターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンはそれぞれ上記の平面構造を有していればよく、いずれの光学異性体であってもよく、複数の光学異性体の混合物であってもよい。
【0035】
本発明で用いる活性化合物はより好ましくは植物原料に由来するものであり、より好ましくは、ショウガ科ウコン属植物に由来するものである。ショウガ科ウコン属植物及びその部位の具体例は上記の通りである。ショウガ科ウコン属の植物の根茎等の部位から活性化合物を得ることができる。
【0036】
活性化合物は、それを含む植物原料から抽出することができる。抽出方法は既述の通りである。活性化合物は、植物抽出物、特に、水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒によるウコン抽出物の形態であってよい。
【0037】
また、活性化合物を含む植物抽出物から、活性化合物を高純度化した画分を、本発明に使用してもよく、本発明の組成物に配合してもよい。例えば、活性化合物を含む植物抽出物を酢酸エチル/水の液液分配に供し、酢酸エチル画分に活性化合物を高純度化することができる。また、活性化合物を含む植物抽出物又はその画分を、クロマトグラフィによる精製処理に供して、高純度化した活性化合物を得ることもできる。クロマトグラフィとしては、逆相カラムクロマトグラフィ、順相薄層クロマトグラフィ等を使用することができる。
【0038】
活性化合物を含む植物抽出物又はその画分は、常法により、乾燥、粉末化、顆粒化、溶液化等の加工を施したものであってもよい。
【0039】
前記活性化合物は、好ましくは、少なくともターメロノールA及びターメロノールBを含有し、より好ましくは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンを含有する。
【0040】
<血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物>
本発明の血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物は、血管内皮機能を改善する能力を有する。
【0041】
本発明の血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物はまた、手足の冷えの原因となる末梢血管の血流の低下を改善する能力を有する。
【0042】
血管内皮機能とは、一酸化窒素(NO)、内皮由来過分極因子(EDHF)、プロスタグランジンI2といった種々の血管作動性物質を放出することで血管平滑筋緊張を調整するほか、細胞接着や血小板の粘着凝集を抑制するなど血管保護に関わる様々な機能を意味する。血管内皮機能は、指先の容積脈波の増加(=血管拡張)をプローブで検出することによって、駆血前から駆血解放後の血管拡張能(RHI(Reactive Hyperemia Index:反応性充血指数)として算出する)を測定する方法、手又は足の駆血後の血流依存性血管拡張反応(FMD(Flow-Mediated Dilation))による血管径の増大率(FMD値(%))を測定する方法、トレインゲージ・プレチスモグラフィを用いる方法等で評価することができる。RHI及びFMD値は高いほど血管内皮機能が高いことを示す。FMD値の測定は通常のFMD検査装置により行うことができる。
【0043】
血管内皮機能はヒトで測定することが好ましいが、in vivoまたはex vivo動物試験や内皮細胞を用いたNO産生能等のin vitroの指標で確認しても構わない。
【0044】
末梢血管とは、細動脈、毛細血管及び細静脈を含む。手足の冷えは、手又は足の末梢血管の血流が低下することが原因で生じる。手は、典型的には、腕のうち手首から先の部分を指し、特に手の指を指す。足は、典型的には、下肢のうち足首から先の部分を指し、特に足の指を指す。本発明の血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物は、末梢血管、特に手足の末梢血管の血流を改善して、手足の冷えを抑制することができる。
【0045】
末梢血管の血流の改善は次のように評価することができる。手又は足が冷える感覚を、前記感覚が強いほど評価値が高くなるVAS(Visual Analogue Scale)法により評価する。この評価値が低減したときに、末梢血管の血流が改善されたとみなすことができる。
【0046】
本発明の血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物は、動脈硬化症、慢性腎臓病(CKD)、高血圧、脂質代謝異常症、糖尿病、肥満・メタボリック症候群、冠動脈疾患、脳血管疾患、播種性血管内凝固症候群(DIC)、膠原病等の疾患の予防又は治療のために用いることができる。本発明の血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物はまた、手足が冷たいと感じる症状の予防又は治療のために用いることができる。本発明の血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物は、糖尿病患者や、肥満傾向にある対象者だけでなく、健常な対象者に対しても有効である。
【0047】
本発明の血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物の対象は典型的にはヒトであるが、ヒトには限定されず他の非ヒト動物、例えばヒト以外の哺乳類であってもよい。
【0048】
本発明の血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物は、医薬品、飲食品、飼料、食品添加剤、飼料添加剤等の各形態の組成物であってよく、医薬品又は飲食品であることがより好ましい。飲食品は、機能性表示食品、特定保健用食品、栄養補給のためのサプリメント等の形態のものも包含する。
【0049】
本発明の血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物は、好ましくは、経口又は経鼻により摂取又は投与される組成物の形態であり、より好ましくは、経口により摂取又は投与される組成物の形態である。
【0050】
本発明において「1日の摂取量」とは、本発明の組成物の、一日間で摂取又は投与される量の総量を意味し、好ましくは、ヒト一人、特に成人一人により、本発明の組成物が一日間で摂取又は投与される量の総量を意味する。本発明の組成物の「1日の摂取量」の具体例として、経口又は経鼻による、好ましくは経口による、摂取又は投与の場合に、本発明の組成物の量として0.1g~500gが例示できる。本発明の組成物は、継続的に摂取又は投与されてもよいし、必要時に摂取又は投与されてもよい。
【0051】
本発明の組成物の形状は、特に限定されず、例えば、液体状、流動状、ゲル状、半固形状、又は固形状などの何れの形状であってもよい。
【0052】
本発明の組成物は、前記活性化合物、前記ウコン抽出物又はウコンに加えて、少なくとも1種の他の成分を更に含んでいてもよい。本発明の組成物が含み得る、少なくとも1種の他の成分としては、特に限定されないが、好ましくは、医薬品、飲食品、飼料、食品添加剤、飼料添加剤等の最終的な形態において許容される成分であって、経口摂取可能な成分が例示できる。
【0053】
このような他の成分としては例えば、甘味料、酸味料、ビタミン類、ミネラル類、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、水等が挙げられる。また、必要により、色素、香料、保存料、防腐剤、防かび剤、更なる生理活性物質等を添加してもよい。
【0054】
甘味料としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖、パラチノース、トレハロース、キシロース等の単糖や二糖、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、砂糖混合異性化糖等)、糖アルコール(エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、パラチニット、ソルビトール、還元水飴等)、はちみつ、高甘味度甘味料(スクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、ステビア、アスパルテーム等)等が挙げられる。
【0055】
酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リン酸、又はこれらの塩等があり、これらのうちの1種又は2種以上を利用することができる。
【0056】
ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンE、ナイアシン、イノシトール等が挙げられる。
【0057】
ミネラル類としては、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄等が挙げられる。
【0058】
増粘剤としては、カラギーナン、ジェランガム、キサンタンガム、アラビアガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、寒天、ゼラチン、ペクチン、大豆多糖類、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
【0059】
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、植物性ステロール、サポニン等が挙げられる。
【0060】
酸化防止剤としては、ビタミンC、トコフェロール(ビタミンE)、酵素処理ルチン等が挙げられる。
前記他の成分は、それぞれ当業者が飲食品、医薬品等の組成物に通常採用する範囲内の量で適宜配合することができる。
【0061】
本発明の組成物と、少なくとも1種の他の成分とを適当な手段で製剤化した組成物の形態は、粉末、顆粒、カプセル剤、錠剤(糖衣錠等のコーティング錠又は多層錠、口中崩壊剤、チュアブル錠等を含む)等の固形組成物の形態であってもよいし、溶液剤等の液体組成物の形態であってもよい。
【0062】
<ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を有効成分として含有する血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物>
本発明の組成物の第1の態様は、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を有効成分として含有する、血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物である。この組成物を以下の説明で「本発明の第1の態様に係る組成物」と表記する場合がある。
【0063】
本発明の第1の態様に係る組成物における、前記活性化合物又はそれを含む前記ウコン抽出物の含有量は特に限定されず、血管内皮機能改善及び/又は末梢血管の血流の改善のために有効な含有量であればよい。
【0064】
本発明の第1の態様に係る組成物は、1日の摂取量当たり合計で好ましくは20μg以上、より好ましくは37μg以上、特に好ましくは55μg以上、更に好ましくは74μg以上、最も好ましくは100μg以上のターメロノールA及びターメロノールBを含有する。この場合に、本発明の第1の態様に係る組成物は、血管内皮機能を向上又は改善する効果、及び/又は、末梢血管の血流を促進する効果が特に高い。ターメロノールA及びターメロノールBの合計の含有量の上限は特に限定されないが、本発明の第1の態様に係る組成物は、1日の摂取量当たり合計で典型的には1100μg以下、好ましくは550μg以下、より好ましくは330μg以下、特に好ましくは220μg以下、更に好ましくは170μg以下、最も好ましくは125μg以下のターメロノールA及びターメロノールBを含有する。本発明の第1の態様に係る組成物において、ターメロノールA及びターメロノールBの少なくとも1種がそれを含むウコン抽出物の形態である場合、前記組成物は、ターメロノールA及びターメロノールBの合計量が前記範囲となるように、前記ウコン抽出物を含有することが好ましい。
【0065】
本発明の第1の態様に係る組成物は、1日の摂取量当たり好ましくは17μg以上、より好ましくは28μg以上、特に好ましくは43μg以上、更に好ましくは57μg以上、最も好ましくは77μg以上のターメロノールAを含有する。この場合に、本発明の第1の態様に係る組成物は、血管内皮機能を向上又は改善する効果、及び/又は、末梢血管の血流を促進する効果が特に高い。ターメロノールAの含有量の上限は特に限定されないが、本発明の第1の態様に係る組成物は、1日の摂取量当たり、典型的には900μg以下、好ましくは430μg以下、より好ましくは260μg以下、特に好ましくは175μg以下、更に好ましくは130μg以下、最も好ましくは95μg以下のターメロノールAを含有する。本発明の第1の態様に係る組成物において、ターメロノールAがそれを含むウコン抽出物の形態である場合、前記組成物は、ターメロノールAの量が前記範囲となるように、前記ウコン抽出物を含有することが好ましい。
【0066】
本発明の第1の態様に係る組成物は、1日の摂取量当たり好ましくは5μg以上、より好ましくは8μg以上、特に好ましくは12μg以上、更に好ましくは16μg以上、最も好ましくは22μg以上のターメロノールBを含有する。この場合に、本発明の第1の態様に係る組成物は、血管内皮機能を向上又は改善する効果、及び/又は、末梢血管の血流を促進する効果が特に高い。ターメロノールBの含有量の上限は特に限定されないが、本発明の第1の態様に係る組成物は、1日の摂取量当たり典型的には250μg以下、好ましくは123μg以下、より好ましくは74μg以下、特に好ましくは50μg以下、更に好ましくは37μg以下、最も好ましくは27μg以下のターメロノールBを含有する。本発明の第1の態様に係る組成物において、ターメロノールBがそれを含むウコン抽出物の形態である場合、前記組成物は、ターメロノールBの量が前記範囲となるように、前記ウコン抽出物を含有することが好ましい。
【0067】
本発明の第1の態様に係る組成物は、1日の摂取量当たり好ましくは80μg以上、より好ましくは133μg以上、特に好ましくは200μg以上、更に好ましくは267μg以上、最も好ましくは360μg以上のビサクロンを含有する。この場合に、本発明の第1の態様に係る組成物は、血管内皮機能を向上又は改善する効果、及び/又は、末梢血管の血流を促進する効果が特に高い。ビサクロンの含有量の上限は特に限定されないが、本発明の第1の態様に係る組成物は、1日の摂取量当たり典型的には4000μg以下、好ましくは2000μg以下、より好ましくは1200μg以下、特に好ましくは800μg以下、更に好ましくは600μg以下、最も好ましくは440μg以下のビサクロンを含有する。本発明の第1の態様に係る組成物において、ビサクロンがそれを含むウコン抽出物の形態である場合、前記組成物は、ビサクロンの量が前記範囲となるように、前記ウコン抽出物を含有することが好ましい。
【0068】
本発明の第1の態様に係る組成物は、1日の摂取量当たりのクルクミンの含有量が、典型的には30mg未満、好ましくは5mg以下、より好ましくは2.5mg以下、特に好ましくは1.5mg以下、更に好ましくは1mg以下、更に好ましくは700μg以下、最も好ましくは520μg以下である。この場合に、本発明の第1の態様に係る組成物は、血管内皮機能を向上又は改善する効果、及び/又は、末梢血管の血流を促進する効果が特に高い。本発明の第1の態様に係る組成物は、クルクミンを含んでいなくてもよいが、1日の摂取量当たり典型的には94μg以上、好ましくは157μg以上、より好ましくは235μg以上、特に好ましくは314μg以上、最も好ましくは423μg以上のクルクミンを含有する。本発明の第1の態様に係る組成物において、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種がそれを含むウコン抽出物の形態である場合、前記組成物は、クルクミンの量が前記範囲となるように、前記ウコン抽出物を含有することが好ましい。
【0069】
本発明の第1の態様に係る組成物は、継続的に摂取される組成物であることが好ましく、具体的には、1日1回又は2回以上の頻度で、好ましくは4週間以上、より好ましくは8週間以上、最も好ましくは12週間以上にわたり継続して摂取される組成物である。
【0070】
本発明の第1の態様に係る組成物は、前記活性化合物又はそれを含む前記ウコン抽出物自体であってもよいし、前記活性化合物又はそれを含む前記ウコン抽出物と、少なくとも1種の他の成分とを含む組成物であってもよい。本発明の組成物が、前記活性化合物又はそれを含む前記ウコン抽出物と、少なくとも1種の他の成分とを含む場合、前記活性化合物又はそれを含む前記ウコン抽出物と、少なくとも1種の他の成分とを混合した組成物であってもよいし、前記活性化合物又はそれを含む前記ウコン抽出物と、少なくとも1種の他の成分とを適当な手段で製剤化した組成物であってもよいし、前記活性化合物又はそれを含む前記ウコン抽出物と、少なくとも1種の他の成分との製剤化した組成物を、更に他の成分と混合した組成物であってもよい。
【0071】
<ウコンを有効成分として含有する血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物>
本発明の組成物の第2の態様は、ウコンを有効成分として含有する、血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物である。ただし、本発明の第2の態様に係る血管内皮機能改善用又は末梢血管の血流改善用組成物の範囲からは、ウコン以外に、クローブ、コリアンダー、クミン、ニンニク、ショウガ、タマネギ及びトウガラシを更に含む組成物、並びに、ニンニクを更に含む組成物は除外される。この組成物を以下の説明で「本発明の第2の態様に係る組成物」を表記する場合がある。
【0072】
本発明の第2の態様に係る組成物における、ウコンの含有量は特に限定されず、血管内皮機能改善及び/又は末梢血管の血流の改善のために有効な含有量であればよい。
【0073】
本発明の第2の態様に係る組成物は、継続的に摂取される組成物であることが好ましく、具体的には、1日1回又は2回以上の頻度で、好ましくは4週間以上、より好ましくは8週間以上、最も好ましくは12週間以上にわたり継続して摂取される組成物である。
【0074】
本発明の第2の態様に係る組成物は、ウコン自体であってもよいし、ウコンと、少なくとも1種の他の成分とを含む組成物であってもよい。
【0075】
<ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種の投与により血管内皮機能を改善する方法>
本発明の更なる一態様は、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有する水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒によるウコン抽出物を、血管内皮機能の改善を必要とする対象に投与すること、及び
前記対象において血管内皮機能を改善すること
を含む、血管内皮機能を改善する方法に関する。
【0076】
本態様に係る方法に用いる前記活性化合物又は前記ウコン抽出物は、本発明の組成物の上述した形態であることができる。
【0077】
本態様に係る方法での対象としては、典型的にはヒトであるが、ヒト以外の哺乳動物であってもよい。
【0078】
本態様に係る方法において、投与経路としては経口又は経鼻投与が好ましく、経口投与が特に好ましい。
【0079】
本態様に係る方法において、前記活性化合物又は前記ウコン抽出物を、対象に投与する投与量は、血管内皮機能の改善のための有効量であれば良く特に限定されない。例えば、一実施形態では、対象が成人である場合、1日当たり合計で20μg以上のターメロノールA及びターメロノールBを投与するように前記活性化合物又は前記ウコン抽出物を、対象に投与することが好ましい。別の一実施形態では、対象が成人である場合、1日当たり17μg以上のターメロノールAを投与するように前記活性化合物又は前記ウコン抽出物を、対象に投与することが好ましい。別の一実施形態では、対象が成人である場合、1日当たり5μg以上のターメロノールBを投与するように前記活性化合物又は前記ウコン抽出物を、対象に投与することが好ましい。別の一実施形態では、対象が成人である場合、1日当たり80μg以上のビサクロンを投与するように、前記活性化合物又は前記ウコン抽出物を、対象に投与することが好ましい。更に、1日当たりのクルクミンの投与量が30mg未満となるように、前記活性化合物又は前記ウコン抽出物を、対象に投与することが好ましい。更に好ましくは、本発明の第1の態様に係る組成物の1日摂取量当たりの各活性化合物の好ましい量として記載した重量の各活性化合物が1日当たりに投与されるように、前記活性化合物又は前記ウコン抽出物を対象に投与することが好ましい。
【0080】
<ウコンの投与により血管内皮機能を改善する方法>
本発明の更なる一態様は、
ウコンを、血管内皮機能の改善を必要とする対象に投与すること、及び
前記対象において血管内皮機能を改善すること
を含む、血管内皮機能を改善する方法(ただし、前記ウコンは、ウコンと、クローブ、コリアンダー、クミン、ニンニク、ショウガ、タマネギ及びトウガラシとの組み合わせではなく、且つ、ウコンとニンニクとの組み合わせではない)に関する。
【0081】
本態様に係る方法に用いる前記ウコンは、本発明の組成物の上述した形態であることができる。
【0082】
本態様に係る方法での対象としては、典型的にはヒトであるが、ヒト以外の哺乳動物であってもよい。
【0083】
本態様に係る方法において、投与経路としては経口又は経鼻投与が好ましく、経口投与が特に好ましい。
【0084】
<ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種の投与により末梢血管の血流を改善する方法>
本発明の更なる一態様は、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有する水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒によるウコン抽出物を、末梢血管の血流の改善を必要とする対象に投与すること、及び
前記対象において末梢血管の血流を改善すること
を含む、末梢血管の血流を改善する方法に関する。
【0085】
本態様に係る方法に用いる前記活性化合物又は前記ウコン抽出物は、本発明の組成物の上述した形態であることができる。
【0086】
本態様に係る方法での対象としては、典型的にはヒトであるが、ヒト以外の哺乳動物であってもよい。
【0087】
本態様に係る方法において、投与経路としては経口又は経鼻投与が好ましく、経口投与が特に好ましい。
【0088】
本態様に係る方法において、前記活性化合物又は前記ウコン抽出物を、対象に投与する投与量は、末梢血管の血流の改善のための有効量であれば良く特に限定されない。例えば、一実施形態では、対象が成人である場合、1日当たり合計で20μg以上のターメロノールA及びターメロノールBを投与するように前記活性化合物又は前記ウコン抽出物を、対象に投与することが好ましい。別の一実施形態では、対象が成人である場合、1日当たり17μg以上のターメロノールAを投与するように前記活性化合物又は前記ウコン抽出物を、対象に投与することが好ましい。別の一実施形態では、対象が成人である場合、1日当たり5μg以上のターメロノールBを投与するように前記活性化合物又は前記ウコン抽出物を、対象に投与することが好ましい。別の一実施形態では、対象が成人である場合、1日当たり80μg以上のビサクロンを投与するように、前記活性化合物又は前記ウコン抽出物を、対象に投与することが好ましい。更に、1日当たりのクルクミンの投与量が30mg未満となるように、前記活性化合物又は前記ウコン抽出物を、対象に投与することが好ましい。更に好ましくは、本発明の第1の態様に係る組成物の1日摂取量当たりの各活性化合物の好ましい量として記載した重量の各活性化合物が1日当たりに投与されるように、前記活性化合物又は前記ウコン抽出物を対象に投与することが好ましい。
【0089】
<ウコンの投与により末梢血管の血流を改善する方法>
本発明の更なる一態様は、
ウコンを、末梢血管の血流の改善を必要とする対象に投与すること、及び
前記対象において末梢血管の血流を改善すること
を含む、末梢血管の血流を改善する方法(ただし、前記ウコンは、ウコンと、クローブ、コリアンダー、クミン、ニンニク、ショウガ、タマネギ及びトウガラシとの組み合わせではなく、且つ、ウコンとニンニクとの組み合わせではない)に関する。
【0090】
本態様に係る方法に用いる前記ウコンは、本発明の組成物の上述した形態であることができる。
【0091】
本態様に係る方法での対象としては、典型的にはヒトであるが、ヒト以外の哺乳動物であってもよい。
【0092】
本態様に係る方法において、投与経路としては経口又は経鼻投与が好ましく、経口投与が特に好ましい。
【実施例
【0093】
1.ウコン抽出物の作製方法
ウコン抽出物は、ウコン(Curcuma longa)の根茎部分を水にて抽出し、得られた抽出液を減圧加熱乾燥して水分を除去することにより調製した。ウコン抽出物中のターメロノールA(TA)及びターメロノールB(TB)の量は、LC/MSを用いて測定し、ビサクロン及びクルクミンの量は、HPLCを用いて測定した。
【0094】
2.被験食品
被験食品は、3錠当たりウコン抽出物を、TAとして86.5μg、TBとして24.7μg、ビサクロンとして400μg、クルクミンとして471μg含有する錠剤である。被験食品は、ウコン抽出物、賦形剤、光沢剤、着色料及び製造用剤(微粒二酸化ケイ素、ショ糖脂肪酸エステル)を混合した後、打錠して錠剤としたものである。
【0095】
プラセボ食品は、上記被験食品のウコン抽出物を賦形剤に置換して調製された錠剤である。
【0096】
3.血管内皮機能測定法
血管は、駆血して血流を遮断した後、この状態から駆血を解放すると、血流の再開に伴い血管内皮細胞から一酸化窒素(NO)等の血管拡張物質が分泌され、拡張が起こることが知られている。この駆血解放による血管拡張反応が大きい程、血管内皮機能は健全であり、一方で血管内皮機能障害が起きていると血管拡張反応が低下する。
【0097】
RH-PAT(Reactive Hyperemia Peripheral Arterial Tonometry)は、指先の容積脈波の増加(=血管拡張)をプローブで検出することによって、駆血前から駆血解放後の血管拡張能(RHI(Reactive Hyperemia Index:反応性充血指数)として算出する)を調べる方法である。RHIは高いほど血管内皮機能が良好な状態であることを示す。本実施例では、RHIの測定のためにEndo-PAT2000(Etamar Medical社製)を用いた(参考資料:Endo-PAT2000のカタログ「エンドパット2000 - スター・プロダクト」, http://www.starprod.co.jp/products/pdf/firstaid_ward_15.pdf、杉山正悟「Reactive hyperemia peripheral arterial tonometry(RH-PAT)による血管内皮機能評価」,心臓 Vol.46 No.10(2014))。
【0098】
RHIの測定は次の方法で行った。仰臥した被験者の片腕上腕に血管加圧カフを巻き、両手の指先にプローブを装着し、駆血前の容積脈波を2分30秒間測定し、腕に巻いたカフを加圧し、5分間駆血した。その後、カフによる加圧を解放し、駆血解除後の容積脈波の増加(血管拡張)を1分間測定した。駆血前の脈波(ベースライン)と駆血後の脈波の結果から血管内皮機能を示すRHIを算出した。
【0099】
4.血管内皮機能の評価試験
50~69歳の男女で、収縮期血圧が101~119 mmHg(至適収縮期血圧)の21名の被験者を無作為に2群に割り付け(プラセボ群:10名、ウコン抽出物群:11名)、二重盲検下で、ウコン抽出物を含有する被験食品もしくは当該抽出物が不含のプラセボ食品を1日1回、3錠を夕食前に12週間摂取させた。被験食品の摂取前および摂取12週間後に血管内皮機能(RHI)を測定した。被験食品の摂取前から12週間後のRHIの変化量(ΔRHI)の結果を図1に示した。図1に示したように、ウコン抽出物群のRHIの変化量(ΔRHI)はプラセボ群に比べて有意に高値だった。これらの結果から、ウコン抽出物の摂取は血管内皮機能を向上させることが明らかとなった。
【0100】
5.血流(手足の冷え)の評価法
手足の冷えをVAS(Visual Analogue Scale)法により評価した。
【0101】
VAS法は、自覚的症状の程度を数値化して評価する検査である。VAS法では、直線の左端(0点)を当該の気分・感覚について全く感じない状態、右端(100点)を当該の気分・感覚について自分が経験しうる中で最も強く感じる状態として、その線分上に被験者自身の自覚状態の程度を示してもらう方法である。主観的な評価のために臨床医学でも広く用いられており、特に同被験者間の投与前後の状態の比較などに使われる。
【0102】
6.血流(手足の冷え)評価試験
50~69歳の男女87名の被験者を無作為に2群に割り付け(プラセボ群:44名、ウコン抽出物群:43名)、二重盲検下で、ウコン抽出物を含有する被験食品もしくは当該抽出物が不含のプラセボ食品を1日1回、3錠を夕食前に12週間摂取させた。被験食品の摂取前、摂取4週間後、摂取8週間後、摂取12週間後に手足の冷えをVAS法で測定した。
【0103】
被験食品の摂取前から4、8、12週間後の手足の冷えの変化量(ΔVAS Score)の結果を図2に示した。図2に示したように、被験食品の摂取8週間後および摂取12週間後のウコン抽出物群の手足の冷えの変化量がプラセボ群に比べて有意に低値だった。これらの結果から、ウコン抽出物の摂取は血流を向上させ、手足の冷えを抑制することが明らかとなった。
【0104】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
図1
図2