(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】状態監視装置および状態監視方法
(51)【国際特許分類】
G16H 80/00 20180101AFI20240214BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G16H80/00
A61B5/11 110
(21)【出願番号】P 2020550459
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2019038775
(87)【国際公開番号】W WO2020071375
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2018187711
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平尾 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真和
(72)【発明者】
【氏名】楠田 将之
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-210137(JP,A)
【文献】特開2006-149882(JP,A)
【文献】特表2009-532072(JP,A)
【文献】特開2018-011948(JP,A)
【文献】米国特許第07196317(US,B1)
【文献】特開2015-109991(JP,A)
【文献】特開2017-60710(JP,A)
【文献】特開2012-75861(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221752(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/135050(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者にマイクロ波を照射して、前記被検者から反射された反射波を検出する検出部と、
前記検出部で検出した反射波に基づいて前記被検者の呼吸および前記被検者の呼吸以外の体動を検出する解析部と、
前記
解析部の検出結果に基づいて呼吸異常と判定する判定部とを備え
、
前記解析部は、
前記検出部で検出した反射波に基づくスペクトル信号を生成し、
前記スペクトル信号に基づいて前記被検者の呼吸に起因する周波数信号を検出し、
前記周波数信号よりも高い前記被検者の呼吸以外の体動に起因する周波数信号を検出し、
前記判定部は、前記被検者の呼吸に起因する周波数信号に従う呼吸数が所定数以上であり、前記被検者の呼吸以外の体動に起因する周波数信号のパワーの和が所定値未満である場合に呼吸異常と判定する、状態監視装置。
【請求項2】
被検者にマイクロ波を照射して、前記被検者から反射された反射波を検出するステップと、
検出した反射波に基づいて前記被検者の呼吸および前記被検者の呼吸以外の体動を検出するステップと、
前記体動の検出結果に基づいて呼吸異常と判定するステップとを備え、
前記体動を検出するステップは、
検出した反射波に基づくスペクトル信号を生成し、
前記スペクトル信号に基づいて前記被検者の呼吸に起因する周波数信号を検出し、
前記周波数信号よりも高い前記被検者の呼吸以外の体動に起因する周波数信号を検出し、
前記判定するステップは、前記被検者の呼吸に起因する周波数信号に従う呼吸数が所定数以上であり、前記被検者の呼吸以外の体動に起因する周波数信号のパワーの和が所定値未満である場合に呼吸異常と判定する、状態監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、居住者の状態を監視する状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
居住者を見守る技術が知られている。例えば、特開2017-174012号公報(特許文献1)には、IT(Information Technology)を利用して高齢者等の状態を監視する見守りシステムが提案されている。被検者にトラブル等が生じた場合に、速やかに介護士、看護師等が介助等を行うことが可能になる。被検者の状態を画面にリアルタイムで表示し、通常とは異なる事象、すなわちイベントが発生している被検者の状態を表示する情報処理装置が開示されている。
【0003】
また、特許第5682504号公報(特許文献2)においては、被検者の生体情報を収集して被検者の安否を監視する安否監視装置において、被検者にマイクロ波を照射し、そのドップラシフトした反射波から、被検者の体動と呼吸とを検出し、所定時間内の体動数と呼吸数とから被検者の安否を監視する方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-174012号公報
【文献】特許第5682504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献では、被検者の安否を監視する方式において、体動数および呼吸数の組み合わせに基づく安否パターンから被検者の異常状態を判定する場合が示されている。
【0006】
一方で、肺炎や発熱に伴う異常の場合には当該安否パターンに該当しない可能性もある。
【0007】
本開示は上述のような背景に鑑みてなされたものであって、ある局面における目的は、精度の高い被検者の状態の確認が可能な状態監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施の形態に従うと、状態監視装置は、被検者にマイクロ波を照射して、被検者から反射された反射波を検出する検出部と、検出部で検出した反射波に基づいて被検者の呼吸および被検者の呼吸以外の体動を検出する解析部と、検出部の検出結果に基づいて呼吸異常と判定する判定部とを備える。
【0009】
好ましくは、解析部は、検出部で検出した反射波に基づくスペクトル信号を生成し、スペクトル信号に基づいて被検者の呼吸に起因する周波数信号を検出し、周波数信号よりも高い被検者の呼吸以外の体動に起因する周波数信号を検出する。
【0010】
好ましくは、判定部は、被検者の呼吸に起因する周波数信号に従う呼吸数が所定数以上であり、被検者の呼吸以外の体動に起因する周波数信号のパワーが所定値未満である場合に呼吸異常と判定する。
【発明の効果】
【0011】
ある局面において、精度の高い被検者の安否の確認が可能である。
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】見守りシステム100の構成の一例を示す図である。
【
図2】見守りシステム100の構成の概要を示すブロック図である。
【
図3】クラウドサーバー150として機能するコンピューターシステム300のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【
図4】センサーボックス119を用いた見守りシステム100の装置構成の概略の一例を示す図である。
【
図5】実施形態に基づくセンサーボックス119で取得される被検者の正常状態におけるセンサデータについて説明する図である。
【
図6】実施形態に基づくセンサーボックス119で取得される被検者の異常状態におけるセンサデータについて説明する図である。
【
図7】実施形態に基づく被検者の正常状態である場合のセンサデータのスペクトルデータについて説明する図である。
【
図8】実施形態に基づく被検者の異常状態である場合のセンサデータのスペクトルデータについて説明する図である。
【
図9】実施形態に基づくセンサーボックス119で取得される被検者の別の異常状態におけるセンサデータについて説明する図である。
【
図10】実施形態に基づく被検者の別の異常状態である場合のセンサデータのスペクトルデータについて説明する図である。
【
図11】実施形態の変形例に基づく正常状態におけるセンサデータのスペクトルデータについて説明する図である。
【
図12】実施形態の変形例に基づく正常状態における呼吸数を説明する図である。
【
図13】実施形態の変形例に基づく異常状態におけるセンサ-データのスペクトルデータについて説明する図である。
【
図14】実施形態の変形例に基づく異常状態における呼吸数を説明する図である。
【
図15】実施形態の変形例に基づく異常状態の判定について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る技術思想の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0014】
[技術思想]
まず、本明細書に開示にされる技術思想の概要について説明する。ある局面において、施設の入居者等の対象者の生体情報として呼吸信号が測定され、対象者の日頃の状態を正確に把握することができる。測定は、対象者が測定していることを意識していない状態で行なわれる。
【0015】
(実施形態1)
[見守りシステム(状態監視装置)の構成]
図1は、見守りシステム100の構成の一例を示す図である。見守り対象は、例えば、施設の居室領域180に設けられた各居室内の入居者である。
図1の見守りシステム100では、居室領域180に、居室110,120が設けられている。居室110は、入居者111に割り当てられている。居室120は、入居者121に割り当てられている。
図1の例では、見守りシステム100に含まれる居室の数は2であるが、当該数はこれに限定されない。
【0016】
見守りシステム100では、居室110,120にそれぞれ設置されたセンサーボックス119と、管理センター130に設置された管理サーバー200と、アクセスポイント140とが、ネットワーク190を介して接続される。ネットワーク190は、イントラネットおよびインターネットのいずれをも含み得る。
【0017】
見守りシステム100では、介護者141が携帯する携帯端末143、および、介護者142が携帯する携帯端末144は、アクセスポイント140を介してネットワーク190に接続可能である。さらに、センサーボックス119、管理サーバー200、および、アクセスポイント140は、ネットワーク190を介して、クラウドサーバー150と通信可能である。
【0018】
居室110,120は、それぞれ、設備として、タンス112、ベッド113、および、トイレ114を含む。居室110のドアには、当該ドアの開閉を検出するドアセンサー118が設置されている。トイレ114のドアには、トイレ114の開閉を検出するトイレセンサー116が設置されている。ベッド113には、各入居者111,121の臭いを検出する臭いセンサー117が設置されている。居室110,120では、各入居者111,121は、それぞれ、ケアコール子機115を操作することができる。
【0019】
センサーボックス119は、居室110,120内の物体の挙動を検出するためのセンサーを内蔵している。センサーの一例は、物体の動作を検出するためのドップラーセンサーである。他の例は、カメラである。センサーボックス119は、センサーとしてドップラーセンサーとカメラの双方を含んでもよい。
【0020】
図2を参照して、見守りシステム100の構成要素について説明する。
図2は、見守りシステム100の構成の概要を示すブロック図である。
【0021】
[センサーボックス119]
センサーボックス119は、制御装置101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、通信インターフェース104と、カメラ105と、ドップラーセンサー106と、無線通信装置107と、記憶装置108とを備える。
【0022】
制御装置101は、センサーボックス119を制御する。制御装置101は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)その他のプロセッサー、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらの組み合わせなどによって構成される。
【0023】
通信インターフェース104には、アンテナ(図示しない)などが接続される。センサーボックス119は、当該アンテナを介して、外部の通信機器との間でデータをやり取りする。外部の通信機器は、たとえば、管理サーバー200、携帯端末143,144その他の端末、アクセスポイント140、クラウドサーバー150、その他の通信端末などを含む。
【0024】
カメラ105は、一実現例では、近赤外カメラである。近赤外カメラは、近赤外光を投光するIR(Infrared)投光器を含む。近赤外カメラが用いられることにより、夜間でも居室110,120の内部を表わす画像が撮影され得る。他の実現例では、カメラ105は、可視光のみを受光する監視カメラである。さらに他の実現例では、カメラ105として、3Dセンサーやサーモグラフィーカメラが用いられてもよい。センサーボックス119およびカメラ105は、一体として構成されてもよいし、別体で構成されてもよい。
【0025】
ドップラーセンサー106は、たとえばマイクロ波ドップラーセンサーであり、電波を放射及び受信して、居室110,120内の物体の挙動(動作)を検出する。これにより、居室110,120の入居者111,121の生体情報が検出され得る。一例では、ドップラーセンサー106は、24GHz帯のマイクロ波を各居室110,120のベッド113に向けて放射し、入居者111,121で反射した反射波を受信する。反射波は、入居者111,121の動作により、ドップラーシフトしている。ドップラーセンサー106は、当該反射波から、入居者111,121の呼吸状態や心拍数を検出し得る。
【0026】
無線通信装置107は、ケアコール子機240、ドアセンサー118、トイレセンサー116、臭いセンサー117からの信号を受信し、当該信号を制御装置101へ送信する。たとえば、ケアコール子機240は、ケアコールボタン241を備える。当該ボタンが操作されると、ケアコール子機240は、当該操作があったことを示す信号を無線通信装置107へ送信する。ドアセンサー118、トイレセンサー116、臭いセンサー117は、それぞれの検出結果を無線通信装置107へ送信する。
【0027】
記憶装置108は、たとえば、フラッシュメモリーまたはハードディスク等の固定記憶装置、あるいは、外付けの記憶装置などの記録媒体である。記憶装置108は、制御装置101によって実行されるプログラム、および、当該プログラムの実行に利用される各種のデータを格納する。各種のデータは、入居者111,121の行動情報を含んでいてもよい。
【0028】
上記のプログラムおよびデータのうち少なくとも一方は、制御装置101がアクセス可能な記憶装置であれば、記憶装置108以外の記憶装置(たとえば、制御装置101の記憶領域(たとえば、キャッシュメモリーなど)、ROM102、RAM103、外部機器(たとえば、管理サーバー200や携帯端末143,144等)に格納されていてもよい。
【0029】
[携帯端末143,144]
携帯端末143,144は、制御装置221と、ROM222と、RAM223と、通信インターフェース224と、ディスプレイ226と、記憶装置228と、入力デバイス229とを含む。ある局面において、携帯端末143,144は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、腕時計型端末その他のウェアラブル装置等として実現される。
【0030】
制御装置221は、携帯端末143,144を制御する。制御装置221は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのASIC、少なくとも1つのFPGA、またはそれらの組み合わせなどによって構成される。
【0031】
通信インターフェース224には、アンテナ(図示しない)などが接続される。携帯端末143,144は、当該アンテナおよびアクセスポイント140を介して、外部の通信機器との間でデータをやり取りする。外部の通信機器は、たとえば、センサーボックス119、管理サーバー200などを含む。
【0032】
ディスプレイ226は、たとえば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro luminescence)ディスプレイ等によって実現される。入力デバイス229は、たとえばディスプレイ226に設けられたタッチセンサーによって実現される。当該タッチセンサーは、携帯端末143,144に対するタッチ操作を受け付け、当該タッチ操作に応じた信号を制御装置221へ出力する。
【0033】
記憶装置228は、たとえば、フラッシュメモリー、ハードディスクその他の固定記憶装置、あるいは、着脱可能なデータ記録媒体等により実現される。
【0034】
[管理サーバー200]
管理サーバー200は、解析部202および判定部204を含む。
【0035】
解析部202および判定部204は、CPUがメモリに格納されているプログラムを実行することにより実現する。解析部202は、クラウドサーバー150のハードディスク5に格納されているセンサデータを読み出して呼吸信号のスペクトルデータを取得する。
【0036】
判定部204は、呼吸信号のスペクトラムデータに基づいて被検者の状態等を判定する。
【0037】
[クラウドサーバーの構成]
図3を参照して、クラウドサーバー150の構成について説明する。
図3は、クラウドサーバー150として機能するコンピューターシステム300のハードウェア構成を表わすブロック図である。
【0038】
コンピューターシステム300は、主たる構成要素として、プログラムを実行するCPU1と、コンピューターシステム300の使用者による指示の入力を受けるマウス2およびキーボード3と、CPU1によるプログラムの実行により生成されたデータ、又はマウス2若しくはキーボード3を介して入力されたデータを揮発的に格納するRAM4と、データを不揮発的に格納するハードディスク5と、光ディスク駆動装置6と、通信インターフェース(I/F)7と、モニター8とを含む。各構成要素は、相互にデータバスによって接続されている。光ディスク駆動装置6には、CD-ROM9その他の光ディスクが装着される。
【0039】
コンピューターシステム300における処理は、各ハードウェアおよびCPU1により実行されるソフトウェアによって実現される。このようなソフトウェアは、ハードディスク5に予め記憶されている場合がある。また、ソフトウェアは、CD-ROM9その他の記録媒体に格納されて、コンピュータープログラムとして流通している場合もある。あるいは、ソフトウェアは、いわゆるインターネットに接続されている情報提供事業者によってダウンロード可能なアプリケーションプログラムとして提供される場合もある。このようなソフトウェアは、光ディスク駆動装置6その他の読取装置によりその記録媒体から読み取られて、あるいは、通信インターフェース7を介してダウンロードされた後、ハードディスク5に一旦格納される。そのソフトウェアは、CPU1によってハードディスク5から読み出され、RAM4に実行可能なプログラムの形式で格納される。CPU1は、そのプログラムを実行する。
【0040】
図3に示されるコンピューターシステム300を構成する各構成要素は、一般的なものである。したがって、本開示に係る技術思想の本質的な部分の一つは、RAM4、ハードディスク5、CD-ROM9その他の記録媒体に格納されたソフトウェア、あるいはネットワークを介してダウンロード可能なソフトウェアであるともいえる。記録媒体は、一時的でない、コンピューター読取可能なデータ記録媒体を含み得る。なお、コンピューターシステム300の各ハードウェアの動作は周知であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0041】
なお、記録媒体としては、CD-ROM、FD(Flexible Disk)、ハードディスクに限られず、磁気テープ、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、IC(Integrated Circuit)カード(メモリーカードを含む)、光カード、マスクROM、EPROM(Electronically Programmable Read-Only Memory)、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュROMなどの半導体メモリー等の固定的にプログラムを担持する媒体でもよい。
【0042】
ここでいうプログラムとは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム形式のプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
【0043】
[見守りシステム100の装置構成]
図4を参照して、見守りシステム100を用いた見守りについて説明する。
図4は、センサーボックス119を用いた見守りシステム100の装置構成の概略の一例を示す図である。
【0044】
見守りシステム100は、見守り対象者(監視対象者)である入居者111,121その他の入居者を見守るために利用される。
図4に示されるように、居室110の天井には、センサーボックス119が取り付けられている。他の居室にも同様にセンサーボックス119が取り付けられている。
【0045】
範囲410は、センサーボックス119による検出範囲を表わす。センサーボックス119が前述のドップラーセンサーを有する場合、当該ドップラーセンサーは、範囲410内で生じた人の挙動を検出する。センサーボックス119がセンサーとしてカメラを有する場合、当該カメラは、範囲410内の画像を撮影する。
【0046】
センサーボックス119は、たとえば、介護施設、医療施設、宅内などに設置される。
図4の例では、センサーボックス119は、天井に取り付けられており、入居者111およびベッド113を天井から撮影している。センサーボックス119の取り付け場所は天井に限られず、居室110の側壁に取り付けられてもよい。
【0047】
見守りシステム100は、カメラ105から得られた一連の画像(すなわち、映像)に基づいて入居者111に生じている危険を検知する。一例として、検知可能な危険は、入居者111の転倒や、危険個所(たとえば、ベッドの柵など)に入居者111がいる状態などを含む。
【0048】
見守りシステム100は、入居者111に危険が生じていることを検知した場合に、そのことを介護者141,143等に報知する。報知方法の一例として、見守りシステム100は、入居者111の危険を介護者141,142の携帯端末143,144に通知する。携帯端末143,144は、当該通知を受信すると、入居者111の危険をメッセージ、音声、振動等で介護者141,142に報知する。これにより、介護者141,142は、入居者111に危険が生じていることを即座に把握でき、入居者111の元に素早く駆け付けることができる。
【0049】
なお、
図4には、見守りシステム100が1つのセンサーボックス119を備えている例が示されているが、見守りシステム100は、複数のセンサーボックス119を備えてもよい。また、
図4には、見守りシステム100が複数の携帯端末143,144を備えている例が示されているが、見守りシステム100は、一つの携帯端末でも実現され得る。
【0050】
そして、本例におけるセンサーボックス119の通信インターフェース104は、ドップラーセンサー106で取得したセンサデータを随時、クラウドサーバー150に送信する。
【0051】
クラウドサーバー150は、一例としてハードディスク5に格納する。
管理サーバー200は、クラウドサーバー150のハードディスク5に格納されているセンサデータを読み出して所定の処理を実行する。本例においては、被検者の状態を判定する。例えば、被検者の状態として安静状態あるいは覚醒状態を判定する。
【0052】
管理サーバー200は、必要に応じて被検者の状態を介護者に通知する。
[センサデータ]
図5は、実施形態に基づくセンサーボックス119で取得される被検者の正常状態におけるセンサデータについて説明する図である。
【0053】
図5に示されるように、ドップラーセンサーによるマイクロ波の反射波が検出される。通常の健康な肺であれば、呼気と吸気の後に停止があり、呼気へと継続動作を続ける。
【0054】
本例においても、被検者が正常状態である場合には、呼吸動作の後の停止動作が生じている。呼吸数15回/分の場合に、呼吸動作の後に長い停止動作がある場合が示されている。
【0055】
一例として停止動作の停止時間として0.7秒である場合が示されている。
図6は、実施形態に基づくセンサーボックス119で取得される被検者の異常状態におけるセンサデータについて説明する図である。
【0056】
図6に示されるように、ドップラーセンサーによるマイクロ波の反射波が検出される。例えば、被検者が異常状態である場合には、呼吸動作の後の停止動作が短くなる。
【0057】
これは、呼吸数21.4回/分の場合に、呼吸動作の後に短い停止動作がある場合が示されている。
【0058】
一例として停止動作の停止時間として0.5秒である場合が示されている。
図7は、実施形態に基づく被検者の正常状態である場合のセンサデータのスペクトルデータについて説明する図である。
【0059】
図7において、管理サーバー200の解析部202は、クラウドサーバー150のハードディスク5に格納されている上記
図5のセンサデータを読み出して、当該呼吸信号のスペクトルデータを取得する。
【0060】
横軸は呼吸に対応する周波数(回/分)であり、縦軸は、信号の強さの最大値を1に規格化した状態を示している。正常状態である場合には、0.25Hzの位置で呼吸に対応する信号が示されている。呼吸回数は、15回/分である。また、呼吸動作の後の停止成分として1Hzの位置で停止動作に対応する信号が示されている。
【0061】
図8は、実施形態に基づく被検者の異常状態である場合のセンサデータのスペクトルデータについて説明する図である。
【0062】
図8において、管理サーバー200の解析部202は、クラウドサーバー150のハードディスク5に格納されている上記
図6のセンサデータを読み出して、当該呼吸信号のスペクトルデータを取得する。
【0063】
横軸は呼吸に対応する周波数(回/分)であり、縦軸は、信号の強さの最大値を1に規格化した状態を示している。異常状態である場合には、0.356Hzの位置で呼吸に対応する信号が示されている。呼吸回数21.4回/分である。また、呼吸動作の後の停止成分として1.43Hzの位置で停止動作に対応する信号が示されている。
【0064】
それゆえ、異常状態である場合の呼吸動作の周波数の増加が0.1Hzに対して、停止動作の周波数は、0.43Hzも増加することになる。すなわち、早い応答が必要となる。
【0065】
異常状態である場合には、肺の換気量が減るため、肺炎では呼吸回数で換気量を補うようになる。発熱における場合でも同様に発熱させる為に呼吸回数を増加させて酸素をより多くとりこむようになる。すなわち、体は呼吸回数を高くして酸素摂取量を増加させている。
【0066】
この場合、停止時間がなくなり、呼気と吸気の連続となり、体は他の動きを極力しないようになる。
【0067】
図9は、実施形態に基づくセンサーボックス119で取得される被検者の別の異常状態におけるセンサデータについて説明する図である。
【0068】
図9に示されるように、被検者が異常状態である場合には、呼吸動作の後の停止動作がさらに短くなる。こうした短い停止時間は休むことにはならず、実際には連続した波形となる可能性が高い。したがって、高い周波数の成分は異常状態である場合には少なくなる。
【0069】
図10は、実施形態に基づく被検者の別の異常状態である場合のセンサデータのスペクトルデータについて説明する図である。
【0070】
図10において、管理サーバー200の解析部202は、クラウドサーバー150のハードディスク5に格納されている上記
図9のセンサデータを読み出して、当該呼吸信号のスペクトルデータを取得する。
【0071】
横軸は呼吸に対応する周波数(回/分)であり、縦軸は、信号の強さの最大値を1に規格化した状態を示している。異常状態である場合には、0.35Hzの位置で呼吸に対応する信号が示されている。この場合、呼吸動作の後の停止成分がほとんど表れない場合が示されている。
【0072】
したがって、呼吸回数が増加する場合に、呼吸動作に対応する周波数よりも高い停止動作に従う周波数成分が小さい場合には異常状態であると判定することが可能である。
【0073】
一例として、呼吸回数が19回以上である場合に、呼吸動作に対応する周波数よりも高い停止動作に従う周波数成分のパワースペクトルが所定量以下(0に近い)である場合には、異常状態と判定することが可能である。所定量以下は、任意の値に設定することが可能である。なお、本例においては、呼吸回数が19回以上を呼吸回数が増加する場合として説明するが、特にこれに限られず任意の値に設定することが可能である。
【0074】
(変形例)
図11は、実施形態の変形例に基づく正常状態におけるセンサデータのスペクトルデータについて説明する図である。
【0075】
図11に示されるように、管理サーバー200の解析部202は、クラウドサーバー150のハードディスク5に格納されているセンサデータを読み出して、当該呼吸信号のスペクトルデータを取得する。横軸は、呼吸数回/分であり、縦軸は最大値を1に規格化している。
【0076】
図12は、実施形態の変形例に基づく正常状態における呼吸数を説明する図である。
図12に示されるように、本例においては、呼吸数の平均値として17回/分である場合が示されている。
【0077】
そして、
図11のスペクトルデータに関して、呼吸数の平均値から100回/分までのスペクトルデータのパワーの和は、12.1である。
【0078】
図13は、実施形態の変形例に基づく異常状態におけるセンサ-データのスペクトルデータについて説明する図である。
【0079】
図13に示されるように、管理サーバー200の解析部202は、クラウドサーバー150のハードディスク5に格納されているセンサデータを読み出して、当該呼吸信号のスペクトルデータを取得する。横軸は、呼吸数回/分であり、縦軸は最大値を1に規格化している。
【0080】
図14は、実施形態の変形例に基づく異常状態における呼吸数を説明する図である。
図14に示されるように、本例においては、呼吸数の平均値として20回/分である場合が示されている。
【0081】
そして、
図13のスペクトルデータに関して、呼吸数の平均値から100回/分までのスペクトルデータのパワーの和は、3.8である。
【0082】
呼吸回数が増加する場合に、呼吸動作に対応する周波数よりも高い周波数成分のスペクトルデータのパワーの和が所定量よりも小さい場合には異常状態であると判定することが可能である。
【0083】
図15は、実施形態の変形例に基づく異常状態の判定について説明する図である。
図15に示されるように、安静時においては、人の動きは常に一定しているものではないため呼吸動作に対応する周波数よりも高い周波数成分のスペクトルデータのパワーの和は、変動する。例えば、安静時でも静止しているような状態の場合には呼吸数よりも高い周波数の動きがなくなることもある。
【0084】
一方で、異常状態の場合には、定常的に呼吸動作に対応する周波数よりも高い周波数成分のスペクトルデータのパワーの和は定常状態であり、その値は小さい。
【0085】
したがって、一例として呼吸回数が19回以上である場合に、呼吸動作に対応する周波数よりも高い周波数成分のスペクトルデータのパワーの和が所定量(本例では指標値4)よりも小さい場合には異常状態であると判定することが可能である。
【0086】
あるいは、別の判断方式として、例えば、10分間の間の1分毎に評価し、所定量(指標値4未満)となる頻度回数を計測して、当該頻度回数が所定量を超える場合に異常状態と判定するようにしても良い。
【0087】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本技術は、病院、老人ホーム、養護施設その他の施設で取得される情報に適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
100 システム、101,221 制御装置、106 ドップラーセンサー、107 無線通信装置、108 記憶装置、109 ドア、110,120 居室、111,121,910,920,930,950 入居者、112 タンス、113 ベッド、114 トイレ、115 ケアコール子機、116 トイレセンサー、117 センサー、118 ドアセンサー、119 センサーボックス、130 管理センター、140 アクセスポイント、141,142 介護者、143,144 携帯端末、150 クラウドサーバー、190 ネットワーク、200 管理サーバー、226 ディスプレイ、229 入力デバイス、241 ケアコールボタン、290 バイタルセンサー、300 コンピューターシステム。