(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電池セル、セルスタック、及びレドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20240214BHJP
H01M 8/0263 20160101ALI20240214BHJP
H01M 8/026 20160101ALI20240214BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/0263
H01M8/026
(21)【出願番号】P 2020569590
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2020002596
(87)【国際公開番号】W WO2020158624
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2019014461
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勇人
(72)【発明者】
【氏名】桑原 雅裕
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第206758557(CN,U)
【文献】中国実用新案第206163611(CN,U)
【文献】国際公開第2018/069996(WO,A1)
【文献】特開2015-122231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、前記電極に対向して配置される双極板とを備え、
前記電極と前記双極板とが重なる方向から見た平面視において、電解液が供給される供給縁と前記電解液が排出される排出縁とを有する電池セルであって、
前記供給縁から前記排出縁に向かう方向を長さ方向、前記供給縁及び前記排出縁に沿う方向を幅方向とするとき、
前記供給縁に連通する導入口と、前記排出縁に連通する排出口とを有し、前記導入口から前記排出口まで一連に形成され、前記幅方向に並列に配置される複数の蛇行流路を備え、
前記双極板は、
前記蛇行流路と、
前記供給縁および前記排出縁を有する周縁と、を備え、
前記導入口は前記供給縁に設けられ、前記排出口は前記排出縁に設けられ、
前記蛇行流路は、
前記導入口から前記排出縁側に向かって伸び、前記排出縁側に端部を有する導入側区間と、
前記導入側区間における前記排出縁側の端部から前記供給縁側に向けて折り返され、前記供給縁側に端部を有する折返し区間と、
前記折返し区間における前記供給縁側の端部から前記排出縁側に向かって伸び、前記排出口まで至る排出側区間とを有し、
前記導入側区間、前記折返し区間及び前記排出側区間が前記幅方向に並ぶ領域の前記長さ方向の長さが100mm以上2000mm以下である、
電池セル。
【請求項2】
前記導入側区間と前記折返し区間との間、及び前記排出側区間と前記折返し区間との間の前記幅方向の距離がそれぞれ1mm以上36mm以下である請求項1に記載の電池セル。
【請求項3】
前記蛇行流路の断面積が前記導入口から前記排出口までの全長にわたって一様である請求項1又は請求項2に記載の電池セル。
【請求項4】
前記蛇行流路の断面積が0.5mm
2以上16mm
2以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項5】
前記蛇行流路の全長が300mm以上6000mm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項6】
前記蛇行流路は溝を含む請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項7】
前記双極板の周囲に設けられた枠体を有し、
前記枠体は、
前記供給縁に沿って設けられた供給側整流部と、
前記排出縁に沿って設けられた排出側整流部と、を有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項8】
前記電極の透過率が1×10
-13m
2以上1×10
-10m
2以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項9】
前記折返し区間は、
前記導入側区間と前記排出側区間との間に配置される1つの縦区間と、
前記導入側区間と前記縦区間における前記排出縁側の端部同士、及び前記排出側区間と前記縦区間における前記供給縁側の端部同士をそれぞれ接続する2つの横区間と、を有する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電池セルを備える、
セルスタック。
【請求項11】
請求項10に記載のセルスタックを備える、
レドックスフロー電池。
【請求項12】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電池セルを備える、
レドックスフロー電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池セル、セルスタック、及びレドックスフロー電池に関する。
本出願は、2019年1月30日付の日本国出願の特願2019-014461号に基づく優先権を主張し、前記日本国出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
大容量の蓄電池の一つとして、レドックスフロー電池が知られている(特許文献1、2を参照)。以下では、レドックスフロー電池を「RF電池」と呼ぶ場合がある。RF電池は、正極電極と、負極電極と、両電極間に介在される隔膜とを備える電池セルを主な構成要素とする。一般に、RF電池では、セルスタックと呼ばれる複数の電池セルを備える積層体が利用される。セルスタックは、セルフレーム、正極電極、隔膜、負極電極を順に繰り返し積層した構造となっている。セルフレームは、正極電極と負極電極との間に配置される双極板と、双極板の外周に設けられる枠体とを有する。セルスタックでは、隣接するセルフレームの双極板の間に、隔膜を挟んで正負の電極が対向するように配置されて、1つの電池セルが構成される。電池セルには電解液が供給され、電極で電池反応を行い、反応後の電解液が電池セルから排出される。
【0003】
特許文献1、2は、双極板における電極側の面に電解液が流通する流路を備える双極板を開示する。双極板における電極側の面は、電極と対向する面である。特許文献1、2には、電解液が流通する流路として、蛇行形状の流路が記載されている(特許文献1の段落0041、0042及び
図5、特許文献2の段落0061及び
図5を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-122231号公報
【文献】特開2015-138771号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の電池セルは、
電極と、前記電極に対向して配置される双極板とを備え、
前記電極と前記双極板とが重なる方向から見た平面視において、電解液が供給される供給縁と前記電解液が排出される排出縁とを有する電池セルであって、
前記供給縁から前記排出縁に向かう方向を長さ方向、前記供給縁及び前記排出縁に沿う方向を幅方向とするとき、
前記供給縁に連通する導入口と、前記排出縁に連通する排出口とを有し、前記導入口から前記排出口まで一連に形成され、前記幅方向に並列に配置される複数の蛇行流路を備え、
前記蛇行流路は、
前記導入口から前記排出縁側に向かって伸び、前記排出縁側に端部を有する導入側区間と、
前記導入側区間における前記排出縁側の端部から前記供給縁側に向けて折り返され、前記供給縁側に端部を有する折返し区間と、
前記折返し区間における前記供給縁側の端部から前記排出縁側に向かって伸び、前記排出口まで至る排出側区間とを有し、
前記導入側区間、前記折返し区間及び前記排出側区間が前記幅方向に並ぶ領域の前記長さ方向の長さが100mm以上2000mm以下である。
【0006】
本開示のセルスタックは、
本開示の電池セルを備える。
【0007】
本開示のレドックスフロー電池は、
本開示のセルスタックを備える。
【0008】
本開示の別のレドックスフロー電池は、
本開示の電池セルを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るレドックスフロー電池の動作原理を示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るレドックスフロー電池の一例を示す概略構成図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るセルスタックの一例を示す概略構成図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るセルスタックに備えるセルフレームを一面側から見た概略平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る電池セルに備える双極板を一面側から見た概略平面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る電池セルにおける蛇行流路を示す概略拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示が解決しようとする課題]
RF電池の更なる電池性能の向上が望まれており、エネルギー効率を高めることが求められている。特に、電解液の圧力損失を低減できつつ、電極の広範囲に電解液を流通できることが求められている。
【0011】
特許文献1、2は、蛇行形状の流路が形成された双極板を開示する。特許文献1、2に記載された蛇行形状の流路は、双極板の全域にわたって一連に形成されている。この流路により、双極板の全域に均一的に電解液を行き渡らせることができる。一方、流路の全長が長くなり、その分、電解液の流通抵抗が増えるので、電解液を通液した時の圧力損失が増大するおそれがある。電解液の圧力損失が大きいと、電解液を送るポンプの動力を大きくする必要があるため、RF電池のエネルギー効率が低下する場合がある。したがって、従来は、RF電池のポンプ動力を低減することについて、必ずしも十分な検討がなされているとはいえなかった。
【0012】
そこで、本開示は、レドックスフロー電池のポンプ動力を低減することができる電池セルを提供することを目的の一つとする。また、本開示は、レドックスフロー電池の電池性能を向上させることができるセルスタックを提供することを別の目的の一つとする。更に、本開示は、電池性能に優れるレドックスフロー電池を提供することを別の目的の一つとする。
【0013】
[本開示の効果]
本開示の電池セルは、レドックスフロー電池のポンプ動力を低減することができる。また、本開示のセルスタックは、レドックスフロー電池の電池性能を向上させることができる。本開示のレドックスフロー電池は、電池性能に優れる。
【0014】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0015】
(1)本開示の実施形態に係る電池セルは、
電極と、前記電極に対向して配置される双極板とを備え、
前記電極と前記双極板とが重なる方向から見た平面視において、電解液が供給される供給縁と前記電解液が排出される排出縁とを有する電池セルであって、
前記供給縁から前記排出縁に向かう方向を長さ方向、前記供給縁及び前記排出縁に沿う方向を幅方向とするとき、
前記供給縁に連通する導入口と、前記排出縁に連通する排出口とを有し、前記導入口から前記排出口まで一連に形成され、前記幅方向に並列に配置される複数の蛇行流路を備え、
前記蛇行流路は、
前記導入口から前記排出縁側に向かって伸び、前記排出縁側に端部を有する導入側区間と、
前記導入側区間における前記排出縁側の端部から前記供給縁側に向けて折り返され、前記供給縁側に端部を有する折返し区間と、
前記折返し区間における前記供給縁側の端部から前記排出縁側に向かって伸び、前記排出口まで至る排出側区間とを有し、
前記導入側区間、前記折返し区間及び前記排出側区間が前記幅方向に並ぶ領域の前記長さ方向の長さが100mm以上2000mm以下である。
【0016】
本開示の電池セルは、複数の蛇行流路を備えることで、電解液を各蛇行流路に沿って電極の広範囲に流通させることができる。また、本開示の電池セルは、従来のように1つの蛇行流路ではなく、複数の蛇行流路を備えることで、1つの蛇行流路を備える場合に比較して各蛇行流路の全長が短くなる。そのため、本開示の電池セルは、電解液を通液した時の圧力損失を低減できる。したがって、本開示の電池セルは、RF電池のポンプ動力を低減することができる。
【0017】
更に、導入側区間、折返し区間及び排出側区間が幅方向に並ぶ領域の長さが100mm以上であることで、電極の広範囲に電解液を拡散させ易い。以下では、上記の各区間が幅方向に並ぶ領域のことを「並列領域」という場合がある。そのため、上記形態は、電極において電池反応を生じさせ易い。並列領域の長さが2000mm以下であることで、蛇行流路の全長が過度に長くなることを回避できる。そのため、上記形態は、蛇行流路における電解液の流通抵抗を低減できるので、電解液の圧力損失を低減し易い。よって、上記形態はポンプ動力をより低減し易い。
【0018】
(2)上記の電池セルの一形態として、
前記導入側区間と前記折返し区間との間、及び前記排出側区間と前記折返し区間との間の前記幅方向の距離がそれぞれ1mm以上36mm以下であることが挙げられる。
【0019】
導入側区間及び排出側区間の各区間と折返し区間との間の距離がそれぞれ上記範囲内であることで、電極への電解液の拡散性を改善できる。よって、上記形態は、電池反応を効率よく行うことができる。
【0020】
(3)上記の電池セルの一形態として、
前記蛇行流路の断面積が前記導入口から前記排出口までの全長にわたって一様であることが挙げられる。
【0021】
蛇行流路の断面積が全長にわたって一様であることで、蛇行流路の全長にわたって電解液の流量を一定に保ち易い。
【0022】
(4)上記の電池セルの一形態として、
前記蛇行流路の断面積が0.5mm2以上16mm2以下であることが挙げられる。
【0023】
蛇行流路の断面積が上記範囲内であることで、蛇行流路に流れる電解液の流量を十分に確保し易く、電極の広範囲に電解液を行き渡らせ易い。そのため、上記形態は、電極において電池反応を生じさせ易い。また、蛇行流路の断面積が上記範囲内であれば、蛇行流路における電解液の流通抵抗を低減できるので、電解液の圧力損失を低減し易い。よって、上記形態はポンプ動力をより低減し易い。
【0024】
(5)上記の電池セルの一形態として、
前記蛇行流路の全長が300mm以上6000mm以下であることが挙げられる。
【0025】
蛇行流路の全長が300mm以上であることで、電極の広範囲に電解液を拡散させ易い。そのため、上記形態は、電極において電池反応を生じさせ易い。蛇行流路の全長が6000mm以下であることで、蛇行流路における電解液の流通抵抗を十分に低減できるので、電解液の圧力損失を十分に低減し易い。よって、上記形態はポンプ動力を十分に低減し易い。
【0026】
(6)上記の電池セルの一形態として、
前記蛇行流路が前記双極板に設けられていることが挙げられる。
【0027】
蛇行流路は、双極板及び電極の少なくとも一方に設けることが好ましい。双極板に流路を設けることは容易である。そのため、上記形態は蛇行流路を形成し易い。蛇行流路は電極に設けてもよい。
【0028】
(7)上記の電池セルの一形態として、
前記蛇行流路は溝を含むことが挙げられる。
【0029】
蛇行流路が溝を含むことで、蛇行流路に電解液がより流れ易い。そのため、上記形態は電解液の圧力損失をより低減し易い。よって、上記形態はポンプ動力をより低減し易い。電極に蛇行流路を設ける場合、蛇行流路は、溝によって構成する他、電極を構成する多孔体自体の気孔率が局所的に大きい疎な部分によって構成してもよい。溝や多孔体における気孔率が大きい疎な部分は、溝のない箇所や気孔率が小さい密な部分に比べて電解液が流れ易く、流路として機能する。
【0030】
(8)上記の電池セルの一形態として、
前記電極の透過率が1×10-13m2以上1×10-10m2以下であることが挙げられる。
【0031】
電極の透過率とは、電極における電解液の流通のし易さを示す指標である。透過率が高いほど電極に電解液が流れ易いことを示す。透過率が上記範囲内であることで、電極に流れる電解液の圧力損失をより低減できる。また、透過率が上記範囲内であれば、電極に電解液が拡散し易く、電極の広範囲に電解液を行き渡らせ易い。そのため、上記形態は、電極において電池反応が生じ易い。
【0032】
(9)上記の電池セルの一形態として、
前記折返し区間は、
前記導入側区間と前記排出側区間との間に配置される1つの縦区間と、
前記導入側区間と前記縦区間における前記排出縁側の端部同士、及び前記排出側区間と前記縦区間における前記供給縁側の端部同士をそれぞれ接続する2つの横区間と、を有することが挙げられる。
【0033】
上記形態は、蛇行流路を構成することができる。
【0034】
(10)本開示の実施形態に係るセルスタックは、
上記(1)から(9)のいずれか一つに記載の電池セルを備える。
【0035】
本開示のセルスタックは、電解液の圧力損失を低減できつつ、電極の広範囲に電解液を流通させることができる。そのため、本開示のセルスタックは、RF電池のポンプ動力を低減することができる。これは、本開示のセルスタックが上述の本開示の電池セルを備えるからである。よって、本開示のセルスタックは、RF電池の電池性能を向上させることができる。
【0036】
(11)本開示の実施形態に係るレドックスフロー電池は、
上記(10)に記載のセルスタックを備える。
【0037】
(12)本開示の別の実施形態に係るレドックスフロー電池は、
上記(1)から(9)のいずれか一つに記載の電池セルを備える。
【0038】
本開示のRF電池は、上述の本開示の電池セル、又は上述の本開示のセルスタックを備えるため、ポンプ動力を低減することができる。よって、本開示のRF電池は、電池性能に優れる。
【0039】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の電池セル、セルスタック、及びレドックスフロー電池(RF電池)の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一又は相当部分を示す。なお、本願発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0040】
[実施形態]
図1~
図6を参照して、実施形態に係るRF電池1、並びに、RF電池1に備える電池セル10及びセルスタック2の一例を説明する。
【0041】
《RF電池》
図1、
図2に示すRF電池1は、正極電解液及び負極電解液として、酸化還元により価数が変化する金属イオンを活物質として含有する電解液を使用する。RF電池1は、正極電解液に含まれるイオンの酸化還元電位と、負極電解液に含まれるイオンの酸化還元電位との差を利用して充放電を行う。ここでは、RF電池1の一例として、正極電解液及び負極電解液にバナジウム(V)イオンを含有するバナジウム電解液を使用したバナジウム系RF電池を示す。
図1中の電池セル10内の実線矢印は充電反応を、破線矢印は放電反応をそれぞれ示している。RF電池1は、交流/直流変換器80を介して電力系統90に接続されている。RF電池1は、例えば、負荷平準化用途、瞬低補償、非常用電源などの用途、太陽光発電、風力発電といった自然エネルギー発電の出力平滑化用途に利用される。RF電池1は、正極電解液にマンガンイオンを含み、負極電解液にチタンイオンを含むマンガン-チタン系RF電池などでもよい。電解液は公知の組成のものを利用できる。
【0042】
RF電池1は、充放電を行う電池セル10と、電解液を貯留するタンク106、107と、タンク106、107と電池セル10との間で電解液を循環させる循環流路100P、100Nとを備える。
【0043】
《電池セル》
電池セル10は、
図1に示すように、正極電極14と、負極電極15と、両電極間に介在される隔膜11とを備える。電池セル10の構造は、隔膜11を挟んで正極セル12と負極セル13とに分離され、正極セル12に正極電極14、負極セル13に負極電極15が内蔵されている。電池セル10は、
図2に示すように、双極板31の間に、正極電極14と負極電極15とが隔膜11を介して対向するように配置されて構成される(
図3も参照)。
【0044】
本実施形態の電池セル10は、
図5に示すように、電解液が供給される供給縁311と電解液が排出される排出縁312とを有する。電池セル10は、電解液が流通する流路として、複数の蛇行流路4を備える。蛇行流路4は、例えば、正極電極14、負極電極15といった電極と双極板31の少なくとも一方に設けられる。本実施形態では、双極板31に複数の蛇行流路4が設けられている。蛇行流路4は、
図6に示すように、導入側区間41と、折返し区間45と、排出側区間42とを有する。蛇行流路4の特徴の1つは、供給縁311から排出縁312に向かう方向を長さ方向、供給縁311及び排出縁312に沿う方向を幅方向とするとき、導入側区間41、折返し区間45及び排出側区間42が幅方向に並ぶ並列領域4Aの長さ方向の長さが100mm以上2000mm以下である点にある。上記の並列領域4Aの長さは、
図6中、L
4Aで示される寸法のことである。以下では、電池セル10の基本構成を先に説明し、その後、
図5~
図6を参照して、電池セル10に備える蛇行流路4の構成を説明する。
【0045】
(電極)
RF電池1の正極電極14及び負極電極15の各電極には、正極電解液及び負極電解液といった電解液が供給される。各電極は電解液が電池反応を行う反応場として機能する。正極電極14及び負極電極15は、導電性を有する多孔体で形成されている。多孔体で形成された電極は、空孔を有するため、電極内に電解液を流通させることができる。正極電極14及び負極電極15には、例えば、カーボンフェルト、カーボンクロス、カーボンペーパーなどが好適に利用できる。隔膜11は、例えば、水素イオンを透過するイオン交換膜で形成されている。
【0046】
〈電極の透過率〉
正極電極14及び負極電極15の各電極の透過率は、例えば1×10-13m2以上1×10-10m2以下であることが挙げられる。透過率は、電解液の流通のし易さを示す指標である。透過率が高いほど電極に電解液が流れ易いことを示す。透過率が1×10-13m2以上であることで、電極における電解液の流通抵抗が小さくなり、電極に流れる電解液の圧力損失をより低減できる。また、透過率が1×10-13m2以上であれば、電極に電解液が拡散し易く、電極の広範囲に電解液を行き渡らせ易い。透過率が高過ぎると、電池反応せずに未反応のまま電極内を通過する電解液の割合が多くなる。そのため、電極において電池反応が生じ難くなる。透過率が1×10-10m2以下であることで、未反応のまま電極内を通過する電解液を低減できる。よって、電極において電池反応が生じ易い。より好ましい電極の透過率は、2×10-13m2以上、更に5×10-13m2以上5×10-11m2以下である。
【0047】
透過率は、電極の透過抵抗の逆数であり、次式で示されるダルシー・ワイズバッハの式により求められる。
ΔP=(h/K)μ(Q/wd)
Kは透過率(m2)である。ΔPは圧力損失(Pa)、Qは電極に供給される流体の流量(m3/s)、μは流体の粘度(Pa・s)、hは電極の長さ(m)、wは電極の幅(m)、dは電極の厚み(m)をそれぞれ示す。電極の厚みは、電池セル10に電極を組み込んだときにおける圧縮状態での電極の厚みとする。透過率は、流体の種類によらず電極固有の値である。透過率は、粘度が既知である水などの流体を用いて測定することができる定数である。電極の透過率は、特許文献1に記載された測定方法を用いて求めることができる。
【0048】
電池セル10を構成する正極セル12及び負極セル13には、
図1、
図2に示すように、循環流路100P、100Nを通して正極電解液及び負極電解液といった電解液が循環する。正極セル12には、正極電解液を貯留する正極電解液タンク106が正極循環流路100Pを介して接続されている。同様に、負極セル13には、負極電解液を貯留する負極電解液タンク107が負極循環流路100Nを介して接続されている。各循環流路100P、100Nは、各タンク106、107から電池セル10へ電解液を送る往路配管108、109と、電池セル10から各タンク106、107へ電解液を戻す復路配管110、111とを有する。各往路配管108、109には、各タンク106、107に貯留される電解液を圧送するポンプ112、113が設けられている。電解液は、ポンプ112、113により電池セル10に循環される。
【0049】
《セルスタック》
RF電池1は、単数の電池セル10を備える単セル電池であってもよいし、複数の電池セル10を備える多セル電池であってもよい。RF電池1は通常、
図2に示すような、複数の電池セル10が積層されたセルスタック2が利用される。セルスタック2は、
図3に示すように、複数のサブスタック200をその両側から2枚のエンドプレート220で挟み込み、両側のエンドプレート220を締付機構230で締め付けることで構成されている。
図3は、複数のサブスタック200を備えるセルスタック2を示している。サブスタック200は、セルフレーム3、正極電極14、隔膜11、負極電極15の順に繰り返し積層され、その積層体の両端に給排板210が配置された構造である。給排板210には、各循環流路100P、100N(
図1、
図2参照)の往路配管108、109及び復路配管110、111が接続される。
【0050】
《セルフレーム》
セルフレーム3は、
図3に示すように、正極電極14と負極電極15との間に配置される双極板31と、双極板31の周囲に設けられる枠体32とを有する(
図4も参照)。双極板31の一面側には、正極電極14が対向するように配置される。双極板31の他面側には、負極電極15が対向するように配置される。枠体32の内側には、双極板31が設けられ、双極板31と枠体32により凹部32oが形成される。凹部32oは、双極板31の両側にそれぞれ形成され、各凹部32o内に正極電極14及び負極電極15が双極板31を挟んで収納される。
【0051】
双極板31は、例えば導電性プラスチック、代表的にはプラスチックカーボンなどで形成されている。プラスチックカーボンは、導電性カーボンと樹脂との複合材料である。枠体32は、例えば、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素樹脂、エポキシ樹脂などのプラスチックで形成されている。セルフレーム3は、双極板31の周囲に枠体32を射出成型などにより一体化することで製造することが挙げられる。その他、セルフレーム3は、双極板31の外周部と枠体32の内周部との間にシール部材を配置し、双極板31の外周部と枠体32の内周部とを重ね合わせることで製造することもできる。
【0052】
セルスタック2を構成するサブスタック200は、隣接する各セルフレーム3の枠体32の一面側と他面側とが互いに対向して突き合わされ、隣接する各セルフレーム3の双極板31の間にそれぞれ1つの電池セル10が形成される(
図3参照)。換言すれば、隣り合う電池セル10の間に双極板31が介在される。正極電極14及び負極電極15の各電極は、電池セル10を構成したときに枠体32の各凹部32o内に収納される。各セルフレーム3の枠体32の間には、電解液の漏洩を抑制するため、Oリング又は平パッキンなどの環状のシール部材37(
図2、
図3参照)が配置されている。
【0053】
電池セル10への電解液の供給及び排出は、枠体32に貫通して形成された給液マニホールド33、34及び排液マニホールド35、36と、枠体32に形成された給液スリット33s、34s及び排液スリット35s、36sを介して行われる。
図3に示すセルフレーム3の場合、正極電解液は、枠体32の下部に形成された給液マニホールド33から枠体32の一面側に形成された給液スリット33sを介して双極板31の一面側に供給される。供給された正極電解液は、枠体32の上部に形成された排液スリット35sを介して排液マニホールド35に排出される。同様に、負極電解液は、枠体32の下部に形成された給液マニホールド34から枠体32の他面側に形成された給液スリット34sを介して双極板31の他面側に供給される。供給された負極電解液は、枠体32の上部に形成された排液スリット36sを介して排液マニホールド36に排出される。給液マニホールド33、34及び排液マニホールド35、36は、給排板210(
図3参照)を介して各循環流路100P、100N(
図1、
図2参照)の往路配管108、109及び復路配管110、111にそれぞれつながっている。
【0054】
本例の電池セル10は、電解液が下縁側から供給され、上縁側から排出されるように構成されている。つまり、電池セル10における全体的な電解液の流れる方向は、紙面上方向となる。
【0055】
セルフレーム3は、
図4に示すように、供給側整流部330と排出側整流部350とを有する。供給側整流部330は、枠体32の一面側に形成され、枠体32の内周の下縁に沿って伸びる溝である。供給側整流部330に給液スリット33sがつながっている。供給側整流部330は、給液スリット33sから供給された正極電解液を双極板31の下縁部に沿って拡散させる機能を有する。排出側整流部350は、枠体32の一面側に形成され、枠体32の内周の上縁に沿って伸びる溝である。排出側整流部350に排液スリット35sがつながっている。排出側整流部350は、双極板31の上縁部から排出された正極電解液を排液スリット35sに集約する機能を有する。
【0056】
この例では、供給側整流部330及び排出側整流部350を枠体32に設けているが、供給側整流部330及び排出側整流部350は双極板31に設けることも可能である。双極板31に供給側整流部330を設ける場合は双極板31の下縁部に沿って溝を形成すればよい。また、双極板31に排出側整流部350を設ける場合は双極板31の上縁部に沿って溝を形成すればよい。
【0057】
図4では、正極電極14(
図3参照)が配置されるセルフレーム3の正極側である一面側に形成された正極電解液用の供給側整流部330及び排出側整流部350のみを図示している。負極電極15(
図3参照)が配置されるセルフレーム3の負極側である他面側にも、一面側と同様に、負極電解液用の供給側整流部及び排出側整流部が形成されている。セルフレーム3の他面側に形成された負極電解液用の供給側整流部及び排出側整流部の構成は、
図4に示す供給側整流部330及び排出側整流部350と同様であるので、その説明を省略する。
【0058】
(双極板)
双極板31は、
図4、
図5に示すように、正極電極14(
図3参照)及び負極電極15(
図3参照)の各電極と双極板31とが重なる方向から見た平面視において、電解液が供給される供給縁311と、電解液が排出される排出縁312とを有する。本例の場合、双極板31における周縁の下縁が供給縁311である。双極板31における周縁の上縁が排出縁312である。
【0059】
本例の双極板31の平面形状は矩形状である。
図4、
図5における紙面表側から見た双極板31の一面側は、正極電極14(
図3参照)に対向する面である。
図4、
図5における紙面裏側から見た双極板31の他面側は、負極電極15(
図3参照)に対向する面である。
【0060】
(蛇行流路)
本例の電池セル10は、
図5に示すように、複数の蛇行流路4を備える。蛇行流路4は、代表的には、双極板31に設けられる。蛇行流路4は、正極電極14及び負極電極15の少なくとも一方の電極に設けることも可能である。
【0061】
蛇行流路4は、例えば、溝によって形成される。上記溝に多孔体が収納されていてもよい。また、電極に蛇行流路4を設ける場合、蛇行流路4は、電極を構成する多孔体自体の気孔率が局所的に大きい疎な部分によって形成されていてもよい。上記の溝や多孔体における気孔率が大きい疎な部分は、溝のない箇所や気孔率が小さい密な部分に比べて、電解液が流れ易い。
【0062】
本例では、
図5に示すように、双極板31に複数の蛇行流路4が設けられると共に、各蛇行流路4が溝によって形成されている場合を例示する。双極板31に溝を形成することは比較的容易である。そのため、双極板31に溝からなる蛇行流路4を形成し易い。また、蛇行流路4が溝を含む構成とすると、蛇行流路4に電解液がより流れ易いため、電解液の圧力損失を低減し易い。
【0063】
以下、
図5に示す双極板31に設けられた蛇行流路4の構成を説明する。以下の説明において、供給縁311から排出縁312に向かう方向を長さ方向とする。供給縁311及び排出縁312に沿う方向を幅方向とする。つまり、
図4、
図5における紙面上下方向が上記長さ方向である。
図4、
図5における紙面左右方向が上記幅方向である。
図4、
図5では、双極板31の一面側である正極電極14側に設けられた正極電解液が流通する複数の蛇行流路4しか図示していない。双極板31の他面側である負極電極15側にも、一面側と同様に、負極電解液が流通する複数の蛇行流路が設けられている。なお、
図4、
図5では、複数の蛇行流路4のうち、2つの蛇行流路4のみを図示し、その他の蛇行流路は「・・・(ドット)」で省略して示す。
【0064】
蛇行流路4は、
図5に示すように、幅方向に並列に複数配置されている。本例の場合、双極板31の概ね全域にわたって、蛇行流路4が並んで設けられている。蛇行流路4の数は、双極板31の全域に電解液を均一に行き渡らせられるように、双極板31のサイズ、代表的には双極板31の幅方向の長さによって適宜選択することが好ましい。各蛇行流路4は、供給縁311に連通する導入口4iと、排出縁312に連通する排出口4oとを有する。各蛇行流路4は、導入口4iから排出口4oまで一連に形成されている。
【0065】
図6を用いて、蛇行流路4の構成を詳しく説明する。蛇行流路4は、
図6に示すように、導入側区間41と、折返し区間45と、排出側区間42とを有する。導入側区間41は、導入口4iから排出縁312側に向かって伸び、排出縁312側に端部411を有する。導入側区間41における排出縁312側の端部411は、排出縁312まで達しておらず、排出縁312に連通していない。折返し区間45は、導入側区間41における排出縁312側の端部411から供給縁311側に向けて折り返され、供給縁311側に端部451を有する。折返し区間45における供給縁311側の端部451は、供給縁311まで達しておらず、供給縁311に連通していない。折返し区間45における排出縁312側の端部452は、導入側区間41の端部411に接続されている。排出側区間42は、折返し区間45における供給縁311側の端部451から排出縁312側に向かって伸び、排出口4oまで至る。排出側区間42は、供給縁311側に端部421を有する。導入側区間41における排出縁312側の端部411と排出側区間42における供給縁311側の端部421とは、折返し区間45を介して連通している。蛇行流路4は、導入側区間41、折返し区間45及び排出側区間42が幅方向に並ぶ並列領域4Aを有する。並列領域4Aは、導入側区間41、折返し区間45及び排出側区間42を幅方向に見て、導入側区間41、折返し区間45及び排出側区間42が互いに重なり合う領域である。本例の蛇行流路4を構成する導入側区間41、折返し区間45及び排出側区間42は、溝によって形成されている。
【0066】
導入側区間41及び排出側区間42は、長さ方向に沿うように平行に設けられている。導入側区間41と排出側区間42とは、部分的に幅方向に互いに並ぶように形成されている。具体的には、導入側区間41における導入口4i近傍から端部411までの部分と、排出側区間42における排出口4o近傍から端部421までの部分とが、幅方向に並ぶように形成されている。
【0067】
図6に示す折返し区間45は、主として長さ方向に沿うように設けられている。具体的には、折返し区間45が、長さ方向に沿う1つの縦区間52と、幅方向に沿う2つの横区間53とによって構成されている。縦区間52は、導入側区間41及び排出側区間42と平行に設けられ、導入側区間41と排出側区間42との間に配置されている。横区間53は、縦区間52における排出縁312側及び供給縁311側の各端部に設けられている。そして、縦区間52における排出縁312側の端部が、横区間53を介して導入側区間41の端部411と接続されると共に、縦区間52における供給縁311側の端部が、横区間53を介して排出側区間42の端部421と接続されている。
【0068】
(蛇行流路の作用)
蛇行流路4を備える場合の電解液の流れについて説明する。供給縁311から供給された正極電解液といった電解液は、導入口4iから蛇行流路4に導入される。蛇行流路4に導入された電解液は、蛇行流路4に沿って流れ、排出口4oから排出縁312に排出される。
【0069】
蛇行流路4に流れる電解液は、蛇行流路4から蛇行流路4に面する正極電極14といった電極に浸透し、電極の表面から電極内部へ拡散する。この電極への電解液の拡散により、電極内部に電解液の流通を生じさせることができる。電解液が電極に流通することによって、電極において電池反応が生じる。
【0070】
(蛇行流路の断面積)
図6に示す蛇行流路4は、導入口4iから排出口4oまでの全長にわたって断面積が一様である。「蛇行流路4の断面積」とは、蛇行流路4における電解液の流通方向に直交する横断面の断面積である。「断面積が一様」とは、次のことを意味する。蛇行流路4に沿って複数の箇所を選択し、蛇行流路4における複数の箇所の断面積を測定する。具体的には、導入側区間41、折返し区間45及び排出側区間42の各区間における複数の箇所の断面積を測定する。測定する箇所は、例えば各区間において10箇所以上、即ち、合計30箇所以上とし、等間隔に設定するとよい。そして、測定した断面積の平均値を求め、各箇所の断面積が平均値の±30%以内であるとき、断面積が一様であるとみなす。より好ましくは、各箇所の断面積が平均値の±20%以内、更に±10%以内である。
【0071】
蛇行流路4を構成する導入側区間41、折返し区間45及び排出側区間42の断面積は、例えば0.5mm2以上16mm2以下、更に1mm2以上12mm2以下であることが挙げられる。蛇行流路4の断面積が上記範囲内であることで、蛇行流路4に流れる電解液の流量を十分に確保し易い。よって、蛇行流路4の断面積が上記範囲内である場合は、電極の広範囲に電解液を行き渡らせ易いため、電極において電池反応を生じさせ易い。また、蛇行流路4の断面積が上記範囲内であれば、蛇行流路4における電解液の流通抵抗を低減できるため、電解液の圧力損失を低減し易い。
【0072】
この例では、蛇行流路4の断面形状が矩形状である。「蛇行流路4の断面形状」とは、上記横断面での形状である。蛇行流路4の断面形状は、矩形状に限定されるものではなく、例えば、三角形状、台形状、半円形状、半楕円形状などであってもよい。蛇行流路4の幅及び深さが導入口4iから排出口4oまでの全長にわたって一様である。「蛇行流路4の幅」とは、上記横断面での幅である。蛇行流路4の深さとは、上記横断面での深さである。蛇行流路4の幅は、例えば0.5mm以上10mm以下、更に1mm以上5mm以下であることが挙げられる。蛇行流路4の深さは、例えば0.5mm以上6mm以下、更に1mm以上4mm以下であることが挙げられる。
【0073】
(蛇行流路の全長)
蛇行流路4の全長は、例えば300mm以上6000mm以下、更に450mm以上4800mm以下であることが挙げられる。「蛇行流路4の全長」とは、導入口4iから排出口4oまでの中心線に沿った長さを意味する。蛇行流路4の全長が短過ぎると、蛇行流路4から電極への電解液の拡散が生じ難い。その結果、電極に電解液が十分に流通せず、電解液が未反応のまま蛇行流路4を通過してしまうおそれがある。蛇行流路4の全長が300mm以上であることで、蛇行流路4から電極への電解液の拡散が十分に生じ易くなる。そのため、電極内部に電解液の流通を生じさせ易い。よって、蛇行流路4の全長が300mm以上である場合は、電極の広範囲に電解液を拡散させ易いので、電極において電池反応を生じさせ易い。蛇行流路の全長が6000mm以下であることで、蛇行流路4における電解液の流通抵抗が大きくなり過ぎることを回避できる。よって、蛇行流路4の全長が6000mm以下である場合は、蛇行流路4における電解液の流通抵抗を十分に低減できるので、電解液の圧力損失を十分に低減し易い。
【0074】
(並列領域の長さ)
蛇行流路4における並列領域4Aの長さ、即ち、
図6に示される長さL
4Aは、100mm以上2000mm以下、更に150mm以上1600mm以下であることが挙げられる。換言すれば、並列領域4Aの長さは、折返し区間45の長さ方向の長さ、即ち縦区間52の長さに相当するといえる。折返し区間45の上記長さとは、折返し区間45において、排出縁312に最も近い部分と供給縁311に最も近い部分との間の長さ方向の距離をいう。本例の場合、並列領域4Aの長さは、導入側区間41の端部411と排出側区間42の端部421との間の長さ方向の距離に等しい。並列領域4Aの長さが100mm以上であることで、電極の広範囲に電解液を拡散させ易いため、電極において電池反応を生じさせ易い。並列領域4Aの長さが2000mm以下であることで、蛇行流路4の全長が過度に長くなることを回避できる。よって、並列領域4Aの長さが2000mm以下である場合は、蛇行流路における電解液の流通抵抗を低減できるので、電解液の圧力損失を低減し易い。
【0075】
双極板31の長さに対する並列領域4Aの長さの比率は、例えば60%以上、更に70%以上、80%以上であることが挙げられる。双極板31の長さは、供給縁311から排出縁312までの長さ方向の距離である。双極板31の長さに対する並列領域4Aの長さの比率が60%以上であることで、電極の広範囲に電解液を拡散させて、電極の全域で電池反応を生じさせ易い。また、電池セル10(
図3参照)を構成したとき、正極電極14及び負極電極15の少なくとも一方の電極の長さに対する並列領域4Aの長さの比率は、例えば60%以上、更に70%以上、80%以上であることが挙げられる。
【0076】
導入側区間41における排出縁312側の端部411と排出縁312までの距離は、例えば1mm以上150mm以下、更に2mm以上100mm以下、4mm以上80mm以下であることが挙げられる。また、排出側区間42における供給縁311側の端部421と供給縁311までの距離は、例えば1mm以上150mm以下、更に2mm以上100mm以下、4mm以上80mm以下であることが挙げられる。
【0077】
(導入側区間及び排出側区間の各区間と折返し区間との間の距離)
導入側区間41と折返し区間45との間、及び排出側区間42と折返し区間45との間の幅方向の距離はそれぞれ、例えば1mm以上36mm以下、更に2mm以上20mm以下であることが挙げられる。これにより、電極への電解液の拡散性を改善できる。「導入側区間41と折返し区間45との間の距離」とは、導入側区間41の中心線と折返し区間45における縦区間52の中心線との間隔を意味する。「排出側区間42と折返し区間45との間の距離」とは、排出側区間42の中心線と折返し区間45における縦区間52の中心線との間隔を意味する。導入側区間41と折返し区間45との間、及び排出側区間42と折返し区間45との間の距離はそれぞれ、
図6中、P
11及びP
12で示される寸法のことである。「導入側区間41の中心線」は、導入側区間41における幅の中心を通る線である。「折返し区間45における縦区間52の中心線」は、縦区間52における幅の中心を通る線である。「排出側区間42の中心線」は、排出側区間42の幅の中心を通る線である。
図6中、導入側区間41の中心線、折返し区間45における縦区間52の中心線、及び排出側区間42の中心線をそれぞれ一点鎖線で示す。
【0078】
導入側区間41及び排出側区間42の各区間と折返し区間45との間の距離P11及び距離P12がそれぞれ1mm以上であることで、導入側区間41と折返し区間45との間、並びに、排出側区間42と折返し区間45との間に位置する部分(所謂、畝部)の面積が増える。そのため、電極と双極板31との接触面積を確保し易い。よって、各距離P11、P12が1mm以上である場合は、電池反応を効率よく行うことができる。また、各距離P11、P12が36mm以下であることで、蛇行流路4から電極への電解液の拡散が十分となり、電極の全面積にわたって電池反応が十分に生じ易くなる。よって、各距離P11、P12が36mm以下である場合は、電池反応を効率よく行うことができる。
【0079】
[実施形態の効果]
実施形態に係る電池セル10における双極板31は、複数の蛇行流路4を備えることで、電解液を各蛇行流路4に沿って電極の広範囲に流通させることができる。電池セル10は、複数の蛇行流路4を備えることで、電解液の圧力損失を低減できる。したがって、電池セル10は、RF電池1のポンプ動力を低減することができる。
【0080】
更に、蛇行流路4における並列領域4Aの長さが100mm以上2000mm以下であることで、電解液の圧力損失を低減しつつ、電極の広範囲に電解液を拡散させ易い。
【0081】
実施形態に係るセルスタック2は、上記の電池セル10を備えるため、RF電池1のポンプ動力を低減することができる。よって、セルスタック2は、RF電池1の電池性能を向上させることができる。
【0082】
実施形態に係るRF電池1は、上記の電池セル10、又はセルスタック2を備えるため、ポンプ動力が低く、電池性能に優れる。
【0083】
[変形例]
上述した実施形態では、
図6に示すように、導入側区間41、折返し区間45及び排出側区間42の各区間が長さ方向に沿って平行に設けられている構成を説明したが、各区間が長さ方向に対して同じ向きに傾斜する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 レドックスフロー電池(RF電池)
2 セルスタック
10 電池セル
11 隔膜
12 正極セル 13 負極セル
14 正極電極 15 負極電極
3 セルフレーム
31 双極板
311 供給縁 312 排出縁
32 枠体
32o 凹部
33、34 給液マニホールド 35、36 排液マニホールド
33s、34s 給液スリット 35s、36s 排液スリット
37 シール部材
330 供給側整流部 350 排出側整流部
4 蛇行流路
4i 導入口 4o 排出口
4A 並列領域
41 導入側区間 42 排出側区間
411、421 端部
45 折返し区間
451、452 端部
52 縦区間 53 横区間
100P 正極循環流路 100N 負極循環流路
106 正極電解液タンク 107 負極電解液タンク
108、109 往路配管 110、111 復路配管
112、113 ポンプ
200 サブスタック
210 給排板 220 エンドプレート
230 締付機構
80 交流/直流変換器 90 電力系統
L4A 長さ
P11、P12 距離