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特許7435488植物栽培施設の湿度または飽差制御方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】植物栽培施設の湿度または飽差制御方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/24 20060101AFI20240214BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A01G9/24 A
A01G7/00 601Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021009183
(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公開番号】P2022113065
(43)【公開日】2022-08-03
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 義裕
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/256137(WO,A1)
【文献】特開2020-198811(JP,A)
【文献】特開2020-190991(JP,A)
【文献】特開2019-118342(JP,A)
【文献】特開2017-035025(JP,A)
【文献】特開2018-050500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0165812(US,A1)
【文献】特開2018-174804(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051651(WO,A1)
【文献】特開2008-107963(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119283(WO,A1)
【文献】特開2004-219379(JP,A)
【文献】特開2021-056573(JP,A)
【文献】古賀貴士 外2名,IoT システムを導入した植物工場における平面空間分布推定,情報・システムソサイエティ特別企画 学生ポスターセッション予稿集,日本,2019年03月20日,第181,https://www.ieice.org/iss/iss_r/jpn/publications/sogo_taikai/issposter_2019/
【文献】松野智明 外5名,観測データの空間補完を利用した施設園芸環境の可視化・制御システムの提案,マルチメディア、分散、協調とモバイル(DICOMO2012)シンポジウム,日本,2012年07月,第2129-2136頁,http://faculty.washington.edu/mfukuda/papers/dicomo2012.pdf
【文献】川村聡宏 外1名,クリギングを用いた空間温度分布推定手法の提案と検証,空気調和・衛生工学学会大会 学術講演論文集,第3巻 ,日本,2019年,第385-388頁,https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2019.3/0/2019.3_385/_article/-char/ja/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/24
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物栽培施設の湿度制御に際して、
前記植物栽培施設内の湿度および温度を複数のセンサを用いて検出し、
前記植物栽培施設内に配設した前記複数のセンサで検出した湿度および温度を用いて、該検出した湿度および温度を空間統計学の手法を用いて内挿又は外挿することにより、前記植物栽培施設内の湿度の分布および温度の分布を推定し、
該推定した湿度の分布に応じて、センサ数より多い制御単位で湿度の分布を制御し、
更に前記推定した温度の分布に応じて、周囲に比べて温度が高い箇所の加湿を促進して、上昇気流による天窓から施設外への水蒸気の流出による当該箇所の湿度の低下を防ぐことを特徴とする植物栽培施設の湿度制御方法。
【請求項2】
前記湿度の分布および温度の分布に応じて水分の供給量を制御することを特徴とする請求項1に記載の植物栽培施設の湿度制御方法。
【請求項3】
前記制御単位が、推定した湿度が平均より低い箇所では加湿を促進し、推定した湿度が平均より高い箇所では加湿を抑える制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の植物栽培施設の湿度制御方法。
【請求項4】
前記湿度の分布の制御を、局所的な制御が可能な除湿装置を運転して行うことを特徴とする請求項1に記載の植物栽培施設の湿度制御方法。
【請求項5】
前記制御単位が、送風を制御することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の植物栽培施設の湿度制御方法。
【請求項6】
植物栽培施設の飽差制御に際して、
前記植物栽培施設内の湿度と温度を複数のセンサを用いて検出し、
前記植物栽培施設内に配設した前記複数のセンサで検出した湿度および温度を用いて、該検出した湿度および温度を空間統計学の手法を用いて内挿又は外挿することにより、前記植物栽培施設内の湿度の分布および温度の分布を推定し、
該推定した湿度の分布および温度の分布を用いて飽差の分布を推定し、
該推定した飽差の分布に応じて、センサ数より多い制御単位で飽差の分布を制御し、
更に前記推定した温度の分布に応じて、周囲に比べて温度が高い箇所の加湿を促進して、上昇気流による天窓から施設外への水蒸気の流出による当該箇所の湿度の低下を防ぐことを特徴とする植物栽培施設の飽差制御方法。
【請求項7】
前記飽差の分布に応じて水分の供給量を制御することを特徴とする請求項6に記載の植物栽培施設の飽差制御方法。
【請求項8】
前記制御単位が、推定した飽差が平均より大きい箇所では加湿を促進し、推定した飽差が平均より小さい箇所では加湿を抑える制御を行うことを特徴とする請求項に記載の植物栽培施設の飽差制御方法。
【請求項9】
前記飽差の分布の制御を、局所的な制御が可能な除湿装置を運転して行うことを特徴とする請求項6に記載の植物栽培施設の飽差制御方法。
【請求項10】
前記制御単位が、送風を制御することを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の植物栽培施設の飽差制御方法。
【請求項11】
植物栽培施設の湿度制御装置において、
前記植物栽培施設内に配設された複数のセンサと、
前記植物栽培施設内に配設した前記複数のセンサで検出した湿度および温度を用いて、該検出した湿度および温度を空間統計学の手法を用いて内挿又は外挿することにより、前記植物栽培施設内の湿度の分布および温度の分布を推定する手段と、
該推定した湿度の分布に応じて、センサ数より多い制御単位で湿度の分布を制御する手段と、
前記推定した温度の分布に応じて、周囲に比べて温度が高い箇所の加湿を促進して、上昇気流による天窓から施設外への水蒸気の流出による当該箇所の湿度の低下を防ぐ手段と、
を備えたことを特徴とする植物栽培施設の湿度制御装置。
【請求項12】
植物栽培施設の飽差制御装置において、
前記植物栽培施設内に配設された複数のセンサと、
前記植物栽培施設内に配設した前記複数のセンサで検出した湿度および温度を用いて、該検出した湿度および温度を空間統計学の手法を用いて内挿又は外挿することにより、前記植物栽培施設内の湿度の分布および温度の分布を推定する手段と、
該推定した湿度の分布および温度の分布を用いて飽差の分布を推定する手段と、
該推定した飽差の分布に応じて、センサ数より多い制御単位で飽差の分布を制御する手段と、
前記推定した温度の分布に応じて、周囲に比べて温度が高い箇所の加湿を促進して、上昇気流による天窓から施設外への水蒸気の流出による当該箇所の湿度の低下を防ぐ手段と、
を備えたことを特徴とする植物栽培施設の飽差制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培施設の湿度または飽差制御方法及び装置に係り、特に、高価でメンテナンスに手間がかかるセンサの数を少なく抑えつつ、比較的安価な制御手段を多数用いて、湿度や飽差を局所的に調節したり、湿度分布や飽差分布を均一に制御することが可能な、植物栽培施設の湿度または飽差制御方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物は周囲の湿度が低くなりすぎると気孔を閉鎖し、光合成生産が抑制される。そのため栽培温室(単に栽培室とも称する)等の植物栽培施設では微細な水滴を噴霧して、気化熱によって室温を下げるとともに湿度を上昇させる装置が用いられている(特許文献1)。一方で、湿度が高すぎるとカビなどの植物にとっての病原菌が繁茂しやすくなるため、湿度に応じて加湿量を調節する方法や、湿度に影響を及ぼす日射などの要因に対して加湿量を調節する方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/130261号
【文献】国際公開第2018/051651号
【文献】特開2014-198035号公報
【文献】特開2012-115256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、栽培室内の湿度の分布や、ある温度と湿度の空気に後どれだけ水蒸気の入る余地があるかを示す飽差の分布は必ずしも均一ではない。栽培室内の植物は根の働きや日当たりなど様々な要因によって蒸散速度に違いを生じ、植物から周囲への水蒸気の供給速度に差が出るため湿度分布や飽差分布に影響する。栽培室内の気流によっても湿度や飽差には偏りを生じる。従来から気流を発生/制御するファンを用いるなどの方法で加湿時の湿度ばらつきを抑える工夫がされている(特許文献2、3)が、制御に必要な湿度計測は区画内の一点で行われていることが通常である。
【0005】
従来法でも極めて多数の湿度センサを設置すれば、湿度のばらつきに対応できるが、湿度センサの価格が高いことと、湿度センサ間の誤差補正のための校正を含むメンテナンスに多大な手間と費用を要するという問題があった。
【0006】
なお、特許文献4には、温度と湿度を検出するセンサを多数配設することが記載されているが、平均温度を検出するためのものであり、温度分布や湿度分布を検出することは考えられていなかった。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、高価でメンテナンスに手間がかかるセンサの数を少なく抑えつつ、比較的安価な制御手段を多数用いて、湿度や飽差を局所的に調節したり、湿度分布や飽差分布を均一に制御可能とすると共に、上昇気流等による湿度の低下を防ぐことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、植物栽培施設の湿度制御に際して、前記植物栽培施設内の湿度および温度を複数のセンサを用いて検出し、前記植物栽培施設内に配設した前記複数のセンサで検出した湿度および温度を用いて、該検出した湿度および温度を空間統計学の手法を用いて内挿又は外挿することにより、前記植物栽培施設内の湿度の分布および温度の分布を推定し、該推定した湿度の分布に応じて、センサ数より多い制御単位で湿度の分布を制御し、更に前記推定した温度の分布に応じて、周囲に比べて温度が高い箇所の加湿を促進して、上昇気流による天窓から施設外への水蒸気の流出による当該箇所の湿度の低下を防ぐことを特徴とする植物栽培施設の湿度制御方法により、前記課題を解決するものである。
【0009】
ここで、前記湿度の分布および温度の分布に応じて水分の供給量を制御することができる。
また、前記制御単位は、推定した湿度が平均より低い箇所では加湿を促進し、推定した湿度が平均より高い箇所では加湿を抑える制御を行うことができる。
【0010】
また、前記湿度の分布の制御を、局所的な制御が可能な除湿装置を運転して行うことができる。
また、前記制御単位は、送風を制御することができる。
【0012】
本発明は、又、植物栽培施設の飽差制御に際して、前記植物栽培施設内の湿度と温度を複数のセンサを用いて検出し、前記植物栽培施設内に配設した前記複数のセンサで検出した湿度および温度を用いて、該検出した湿度および温度を空間統計学の手法を用いて内挿又は外挿することにより、前記植物栽培施設内の湿度の分布および温度の分布を推定し、該推定した湿度の分布および温度の分布を用いて飽差の分布を推定し、該推定した飽差の分布に応じて、センサ数より多い制御単位で飽差の分布を制御し、更に前記推定した温度の分布に応じて、周囲に比べて温度が高い箇所の加湿を促進して、上昇気流による天窓から施設外への水蒸気の流出による当該箇所の湿度の低下を防ぐことを特徴とする植物栽培施設の飽差制御方法により、同様に前記課題を解決するものである。
【0013】
ここで、前記飽差の分布に応じて水分の供給量を制御することができる。
また、前記制御単位は、推定した飽差が平均より大きい箇所では加湿を促進し、推定した飽差が平均より小さい箇所では加湿を抑える制御を行うことができる。
【0016】
また、前記飽差の分布の制御を、局所的な制御が可能な除湿装置を運転して行うことができる。
また、前記制御単位は、送風を制御することができる
【0017】
本発明は、又、植物栽培施設の湿度制御装置において、前記植物栽培施設内に配設された複数のセンサと、前記植物栽培施設内に配設した前記複数のセンサで検出した湿度および温度を用いて、該検出した湿度および温度を空間統計学の手法を用いて内挿又は外挿することにより、前記植物栽培施設内の湿度の分布および温度の分布を推定する手段と、該推定した湿度の分布に応じて、センサ数より多い制御単位で湿度の分布を制御する手段と、前記推定した温度の分布に応じて、周囲に比べて温度が高い箇所の加湿を促進して、上昇気流による天窓から施設外への水蒸気の流出による当該箇所の湿度の低下を防ぐ手段と、を備えたことを特徴とする植物栽培施設の湿度制御装置により、同様に前記課題を解決するものである。
【0020】
本発明は、又、植物栽培施設の飽差制御装置において、前記植物栽培施設内に配設された複数のセンサと、前記植物栽培施設内に配設した前記複数のセンサで検出した湿度および温度を用いて、該検出した湿度および温度を空間統計学の手法を用いて内挿又は外挿することにより、前記植物栽培施設内の湿度の分布および温度の分布を推定する手段と、該推定した湿度の分布および温度の分布を用いて飽差の分布を推定する手段と、該推定した飽差の分布に応じて、センサ数より多い制御単位で飽差の分布を制御する手段と、前記推定した温度の分布に応じて、周囲に比べて温度が高い箇所の加湿を促進して、上昇気流による天窓から施設外への水蒸気の流出による当該箇所の湿度の低下を防ぐ手段と、を備えたことを特徴とする植物栽培施設の飽差制御装置により、同様に前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高価でメンテナンスに手間がかかるセンサの数を少なく抑えつつ、比較的安価な制御手段を多数用いて、湿度や飽差を局所的に調節したり、湿度分布や飽差分布を均一に制御することが可能となると共に、上昇気流等による湿度の低下を防ぐことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る栽培室の略示平面図
図2】同じく略示立面図
図3】第1実施形態の処理手順を示す流れ図
図4】湿度分布の例を示す平面図
図5】栽培室内に発生する上昇気流の例を示す略示立面図
図6参考形態に係る栽培室の略示平面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した実施形態における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0026】
本発明の第1実施形態は、図1(略示平面図)及び図2(略示立面図)に示す如く、栽培植物14が栽培される栽培ベンチ12を備えた栽培室10への、加湿ノズル17付き加湿チューブ16のような加湿装置による加湿制御装置において、前記栽培室10内の湿度を測定する、栽培室10の複数(実施形態では5個)の湿度センサ20と、該湿度センサ20の出力に基いて栽培室10内の湿度分布を推定する手段であるコンピュータ30と、該コンピュータ30により推定された湿度が平均より低い箇所では水滴の噴霧量を増やし、推定された湿度が平均より高い箇所では水滴の噴霧量を減らすための、各加湿チューブ16の端部(入側又は出側)に配設された、加湿チューブ16ごとに制御可能な多数(実施形態では6個)の電磁弁40とを備えている。図において、18は換気用の天窓である。
【0027】
前記加湿チューブ16の側壁には、水滴放出用の加湿ノズル17が多数形成されており、水滴を均一に噴霧可能とされている。
【0028】
前記湿度センサ20の数は電磁弁40の数より少なくされており、電磁弁40より少ない数の湿度センサ20で各電磁弁40を個別制御するところに特徴がある。
【0029】
以下、図3を参照して作用を説明する。
【0030】
まずステップ100で、栽培室10の加湿チューブ16の電磁弁40の数に比べて少数(図では5個)の湿度センサ20でその部分の湿度を測定する。
【0031】
次いでステップ110で、湿度の空間分布を推定する。推定方法としては、例えば特開2008-107963号公報等に記載されたクリギング法などの空間統計学手法を用いて、湿度センサ20間の濃度の空間分布を内挿及び/又は外挿することができる。
【0032】
湿度分布の例を図4に示す。中央付近の栽培植物14が多い所では、栽培植物14からの蒸散によって湿度が高く、周辺付近の栽培植物14が少ない又は無い所では、逆に湿度が低くなっている。
【0033】
そこで、得られた湿度分布を基に、ステップ120で低湿度の箇所と判定されたときにはステップ130に進み、対応箇所の電磁弁40を開いて水滴の噴霧量を増やして加湿を促進する。一方、ステップ140で高湿度の箇所と判定されたときにはステップ150に進み、対応箇所の電磁弁40を閉じて水滴の噴霧量を減らして加湿を抑制する。なお、循環ファン42等の気流発生装置が設けられている場合には、該循環ファン42を運転させて高湿度の箇所から低湿度の箇所への気流を増やす等の方法により、湿度分布を制御することができる。また、局所的な調節が可能な除湿装置44が設けられている場合は、該除湿装置44を運転して除湿装置44周囲の湿度を低くすることができる。
【0034】
このようにして、施設内の湿度分布を把握することで、局所的な加湿状態の調節が可能になる。
【0035】
本実施形態においては、空間統計学手法で湿度センサ間の湿度を内挿及び/又は外挿することにより湿度の空間分布を推定していたが、推定方法はこれに限定されず、Natural Neighbor内挿法、スプライン法、逆距離加重法などを用いることができる。推定対象も三次元の空間分布に限定されず、二次元の平面分布であってもよい。
【0036】
なお、従来法でも極めて多数の湿度センサを設置すれば同様の効果が得られるが、湿度センサの価格が高く、湿度センサ間の誤差補正に多大な手間と費用を要する。
【0037】
本実施形態のように、加湿チューブ16の末端(入口又は出口)に個別制御可能な電磁弁40を設置すると、列ごとに水滴の供給速度を変化させることができるため、制御を簡略化できる。電磁弁40は加湿ノズル17ごとにつけてもよいし、加湿チューブ16を複数本まとめて制御できるように設置してもよい。
【0038】
本実施形態においては、制御手段として電磁弁を用いているので、制御手段が安価である。なお、制御手段は電磁弁に限定されない。
【0039】
前記実施形態においては湿度を制御していたが、必要に応じて温度検出(計測)を行い、飽差分布を推定して制御することも可能である。
【0040】
また、温度が周囲より高い箇所は、図5に例示する如く、上昇気流の発生個所となる。即ち、栽培室10内で温められて高温となった空気は、栽培室10内を上昇し、天窓18等の換気窓から栽培室10外へ流出する。この上昇気流に乗って水蒸気も流出する。この時、天窓18からの外気流入により栽培室10下部は低温になる。そこで、例えば複数の熱電対やサーモカメラを用いて、類似の方法で温度分布を得て、周囲に比べて温度が高い箇所の水滴の供給速度を大きくすることで、上昇気流等による天窓18から施設(栽培室10)外への水蒸気の流出以上の水蒸気を供給し、当該箇所の湿度の低下を防ぐことができる。なお、図5に示した気流の上下、位置は一例であり、実際には、もっと大きな循環流になることも、小さな循環流になることもある。更に、温度分布を制御して、湿度が高い箇所は温度を上げ、湿度が低い箇所は温度を下げることで、相対湿度の分布を制御したり均一にすることもできる。
【0041】
なお、第1実施形態では、湿度センサ20を用いて湿度を検出していたが、図6に示す参考形態のように、レーザ発信器52とレーザ受信器54を備えたレーザ吸収式水蒸気濃度計のようなレーザ吸収式分析計50を格子状に配置して、コンピュータトモグラフィ(CT)計算によって推定することもできる。図において、56はレーザパスである。
【0042】
この参考形態のようにレーザ吸収式分析計50を用いた場合には、例えば特開昭62-175648号公報、特開平7-43296号公報に記載されているように、複数の波長を用いたり、あるいは、国際公開第2017/119283号に記載されているように、波長を変えることによって、水蒸気濃度と温度を計測でき、湿度だけでなく飽差を求めることもできる。
【0043】
なお、栽培現場では相対湿度だけでなく飽差が用いられることが多いが、上記のようにして、飽差の分布を制御することもできる。
【符号の説明】
【0044】
10…栽培室
12…栽培ベンチ
14…栽培植物
16…加湿チューブ
17…加湿ノズル
18…天窓(換気窓)
20…湿度センサ
30…コンピュータ
40…電磁弁
42…循環ファン
44…除湿装置
50…レーザ吸収式分析計(水蒸気濃度計)
52…レーザ発信器
54…レーザ受信器
56…レーザパス
図1
図2
図3
図4
図5
図6