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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】回転電機のロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
H02K1/28 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021010229
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022114094
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】宮重 敬太
(72)【発明者】
【氏名】浅井 満季
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智則
(72)【発明者】
【氏名】片桐 慶大
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-295214(JP,A)
【文献】特開2020-005448(JP,A)
【文献】特開2006-320083(JP,A)
【文献】特開2019-201502(JP,A)
【文献】特開2016-100944(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012153(WO,A1)
【文献】特開2019-126166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部材と、
前記筒部材内に配置された磁性体と、
前記筒部材内に圧入されるとともに、前記筒部材の軸線方向において前記磁性体と隣り合う軸部材と、を備える回転電機のロータであって、
前記磁性体は、前記軸線方向における端部に磁性体端面を有し、
前記軸部材は、前記軸線方向における端部に前記磁性体端面と隣り合う軸部材端面を有し、
前記ロータは、前記筒部材を貫通する貫通孔を介して前記筒部材の外部と連通するとともに、前記軸線方向において隣り合う前記磁性体端面及び前記軸部材端面の少なくとも一方に位置する通路部を有し、
前記貫通孔は、前記筒部材の軸線に直交する直交方向から見て、前記磁性体端面の縁部及び前記軸部材端面の縁部と重なっており、
前記通路部は、前記貫通孔を介して前記筒部材外から流入した空気を前記貫通孔に向けて流出可能であることを特徴とする回転電機のロータ。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記筒部材の異なる位置に複数配置されている請求項1に記載の回転電機のロータ。
【請求項3】
前記筒部材の軸線を含む位置において前記直交方向に直交する仮想的な平面を仮想平面とするとき、
前記貫通孔は、前記仮想平面を対称面として面対称となるように前記筒部材に配置されている請求項2に記載の回転電機のロータ。
【請求項4】
前記磁性体端面及び前記軸部材端面のうち、前記通路部を有する端面を通路端面とするとき、
前記通路部は、前記通路端面に沿って位置する溝部を含む請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の回転電機のロータ。
【請求項5】
前記溝部は、前記直交方向に延び、
前記直交方向における前記溝部の一端を第1端部とし、前記直交方向における前記溝部の他端を第2端部とするとき、
前記第1端部及び前記第2端部は、前記通路端面の縁部に繋がっており、
前記貫通孔は、前記筒部材の異なる位置に2つ以上配置されており、
2つの前記貫通孔のうち、一方の前記貫通孔は前記第1端部に繋がっているとともに、他方の前記貫通孔は前記第2端部に繋がっている請求項4に記載の回転電機のロータ。
【請求項6】
前記磁性体端面及び前記軸部材端面のうち、前記通路部を有する端面を通路端面とするとき、
前記通路部は、前記通路端面の縁部に沿って位置するとともに前記通路端面から前記軸線方向において離間するほど前記筒部材の内面に接近するテーパ側面を有する請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載の回転電機のロータ。
【請求項7】
前記磁性体は、前記軸線方向に複数隣り合っており、
複数の前記磁性体のうち、1つの前記磁性体を第1磁性体とし、前記第1磁性体と前記軸線方向において隣り合う前記磁性体を第2磁性体とし、前記貫通孔を第1貫通孔とし、前記通路部を第1通路部とするとき、
前記第1磁性体は、前記軸線方向における端部に第1磁性体端面を有し、
前記第2磁性体は、前記軸線方向における端部に前記第1磁性体端面と隣り合う第2磁性体端面を有し、
前記ロータは、前記筒部材を貫通する第2貫通孔を介して前記筒部材の外部と連通するとともに、前記第1磁性体端面及び前記第2磁性体端面の少なくとも一方に位置する第2通路部を有し、
前記第2貫通孔は、前記直交方向から見て、前記第1磁性体端面の縁部及び前記第2磁性体端面の縁部と重なっており、
前記第2通路部は、前記第2貫通孔を介して前記筒部材外から流入した空気を前記第2貫通孔に向けて流出可能である請求項1~請求項6のうちいずれか一項に記載の回転電機のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のロータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された回転電機のロータは、筒部材と、筒部材内に配置された磁性体と、筒部材の軸線方向において磁性体と隣り合う軸部材と、を備えている。軸部材は、例えば、筒部材内に磁性体が配置された状態で、軸線方向における筒部材の端部から軸部材が圧入される。軸部材は、筒部材内に圧入されることにより、筒部材の内面に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-112849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筒部材内への軸部材の圧入に際しては、筒部材内への軸部材の圧入を円滑に行うために、筒部材の内面上への潤滑油の塗布が行われる。筒部材内への軸部材の圧入に伴って、筒部材の軸線方向において、磁性体の端面に軸部材の端面が近接する。この際、筒部材内において、磁性体の端面及び軸部材の端面によって潤滑油が押し出されることにより、磁性体端面の縁部付近や軸部材の端面の縁部付近に潤滑油が残存することがある。筒部材内に多量の潤滑油が残存することは、ロータの回転のアンバランスの要因となるため好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する回転電機のロータは、筒部材と、前記筒部材内に配置された磁性体と、前記筒部材内に圧入されるとともに、前記筒部材の軸線方向において前記磁性体と隣り合う軸部材と、を備える回転電機のロータであって、前記磁性体は、前記軸線方向における端部に磁性体端面を有し、前記軸部材は、前記軸線方向における端部に前記磁性体端面と隣り合う軸部材端面を有し、前記ロータは、前記筒部材を貫通する貫通孔を介して前記筒部材の外部と連通するとともに、前記軸線方向において隣り合う前記磁性体端面及び前記軸部材端面の少なくとも一方に位置する通路部を有し、前記貫通孔は、前記筒部材の軸線に直交する直交方向から見て、前記磁性体端面の縁部及び前記軸部材端面の縁部と重なっており、前記通路部は、前記貫通孔を介して前記筒部材外から流入した空気を前記貫通孔に向けて流出可能であることを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、貫通孔を介して筒部材内へ空気を導入することにより、通路部に空気を導入できる。通路部に導入された空気は、通路部を通った後、貫通孔から排出される。筒部材内に潤滑油が残存していたとしても、通路部を介した空気の流れによって潤滑油が吸引されるため、潤滑油は貫通孔を介して空気と共に筒部材外に排出される。したがって、筒部材内に残存した潤滑油を低減できる。
【0007】
回転電機のロータにおいて、前記貫通孔は、前記筒部材の異なる位置に複数配置されていてもよい。
上記構成によれば、一部の貫通孔を筒部材内へ空気を導入するための空気導入孔として使用するとともに、そのほかの貫通孔を筒部材内から空気を排出するための空気排出孔として使用できる。したがって、1つの貫通孔が空気導入孔及び空気排出孔の両方の機能を担う場合と比較して、通路部を介した筒部材への空気の導入と筒部材からの空気の排出とを円滑に行うことができる。したがって、筒部材内に残存した潤滑油をさらに低減できる。
【0008】
回転電機のロータにおいて、前記筒部材の軸線を含む位置において前記直交方向に直交する仮想的な平面を仮想平面とするとき、前記貫通孔は、前記仮想平面を対称面として面対称となるように前記筒部材に配置されていてもよい。
【0009】
上記構成によれば、筒部材への貫通孔の形成に伴ってロータの回転のアンバランスが生じることを抑制できる。
回転電機のロータにおいて、前記磁性体端面及び前記軸部材端面のうち、前記通路部を有する端面を通路端面とするとき、前記通路部は、前記通路端面に沿って位置する溝部を含んでもよい。
【0010】
回転電機のロータにおいて、前記溝部は、前記直交方向に延び、前記直交方向における前記溝部の一端を第1端部とし、前記直交方向における前記溝部の他端を第2端部とするとき、前記第1端部及び前記第2端部は、前記通路端面の縁部に繋がっており、前記貫通孔は、前記筒部材の異なる位置に2つ以上配置されており、2つの前記貫通孔のうち、一方の前記貫通孔は前記第1端部に繋がっているとともに、他方の前記貫通孔は前記第2端部に繋がっていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、2つの貫通孔のうち、一方の貫通孔を筒部材内へ空気を導入するための空気導入孔として使用するとともに、他方の貫通孔を筒部材内から空気を排出するための空気排出孔として使用できる。2つの貫通孔のうち、一方の貫通孔は第1端部に繋がっているとともに、他方の貫通孔は第2端部に繋がっている。そのため、筒部材外から貫通孔を介して第1端部に空気が導入される。空気は、溝部の第1端部から第2端部へと流れる。溝部を通った空気は、第2端部から貫通孔を介して筒部材外に排出される。したがって、通路部を介した筒部材への空気の導入と筒部材からの空気の排出とを円滑に行うことができるため、筒部材内に残存した潤滑油をさらに低減できる。
【0012】
回転電機のロータにおいて、前記磁性体端面及び前記軸部材端面のうち、前記通路部を有する端面を通路端面とするとき、前記通路部は、前記通路端面の縁部に沿って位置するとともに前記通路端面から前記軸線方向において離間するほど前記筒部材の内面に接近するテーパ側面を有してもよい。
【0013】
回転電機のロータにおいて、前記磁性体は、前記軸線方向に複数隣り合っており、複数の前記磁性体のうち、1つの前記磁性体を第1磁性体とし、前記第1磁性体と前記軸線方向において隣り合う前記磁性体を第2磁性体とし、前記貫通孔を第1貫通孔とし、前記通路部を第1通路部とするとき、前記第1磁性体は、前記軸線方向における端部に第1磁性体端面を有し、前記第2磁性体は、前記軸線方向における端部に前記第1磁性体端面と隣り合う第2磁性体端面を有し、前記ロータは、前記筒部材を貫通する第2貫通孔を介して前記筒部材の外部と連通するとともに、前記第1磁性体端面及び前記第2磁性体端面の少なくとも一方に位置する第2通路部を有し、前記第2貫通孔は、前記直交方向から見て、前記第1磁性体端面の縁部及び前記第2磁性体端面の縁部と重なっており、前記第2通路部は、前記第2貫通孔を介して前記筒部材外から流入した空気を前記第2貫通孔に向けて流出可能であってもよい。
【0014】
第1磁性体及び第2磁性体が筒部材に圧入される際、第1磁性体端面の縁部付近や第2磁性体端面の縁部付近に潤滑油が残存することがある。上記構成によれば、こうした潤滑油が、第2通路部を介した空気の流れによって吸引される。これにより、潤滑油は、第2貫通孔を介して空気と共に筒部材外に排出される。したがって、筒部材内に残存した潤滑油をさらに低減できる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、筒部材内に残存した潤滑油を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】回転電機を示す断面図。
図2】ロータの一部分を拡大して示す断面図。
図3】ロータの分解斜視図。
図4】径方向から見たロータの側面図。
図5】ロータの断面図。
図6】磁性体及び軸部材が筒部材に圧入される様子について説明するための断面。
図7】筒部材から潤滑油を排出する様子について説明するための断面図。
図8】筒部材から潤滑油を排出する様子について説明するための断面図。
図9】変更例において筒部材から潤滑油を排出する様子について説明するための断面図。
図10】変更例において筒部材から潤滑油を排出する様子について説明するための断面図。
図11】変更例において筒部材から潤滑油を排出する様子について説明するための断面図。
図12】変更例において筒部材から潤滑油を排出する様子について説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、回転電機のロータを具体化した実施形態について、図1図8を用いて説明する。以下では、説明の都合上、まず回転電機の構成について説明する。
[回転電機の構成]
図1に示すように、回転電機10は、筒状のハウジング11内に収容されている。ハウジング11は、第1ハウジング構成体12と、板状の第2ハウジング構成体13と、を備えている。第1ハウジング構成体12及び第2ハウジング構成体13は金属製であり、例えば、アルミニウム製である。
【0018】
第1ハウジング構成体12は、板状の底壁12aと、底壁12aの外周端から筒状に延びる周壁12bと、を有している。第2ハウジング構成体13は、周壁12bにおける底壁12aとは反対側の開口を閉塞した状態で、第1ハウジング構成体12に連結されている。
【0019】
第1ハウジング構成体12は円筒状の第1ボス部12cを備えている。第1ボス部12cは、底壁12aの内面から突出している。第2ハウジング構成体13は円筒状の第2ボス部13cを備えている。第2ボス部13cは、第2ハウジング構成体13の内面から突出している。第1ボス部12cの軸線、第2ボス部13cの軸線、及び第1ハウジング構成体12の周壁12bの軸線は、互いに一致している。第1ボス部12cの内周面及び第2ボス部13cの内周面の各々には、軸受14が配置されている。
【0020】
[ステータ及びロータの構成]
回転電機10は、ステータ15と、ロータ19と、を備えている。ステータ15は、円筒状のステータコア15aと、コイル15bと、を有する。ステータコア15aは、周壁12bの内周面に固定されている。コイル15bは、ステータコア15aに巻回されている。ロータ19は、筒部材20と、磁性体30と、軸部材40と、通路部60と、を備えている。
【0021】
[筒部材の構成]
筒部材20は、軸線が直線状に延びる円筒状である。筒部材20は、例えば金属製材料から構成されている。筒部材20の軸線は、第1ボス部12cの軸線及び第2ボス部13cの軸線と一致している。以下では、筒部材20の軸線を軸線Lという。軸線Lが延びる方向を軸線方向Xという。
【0022】
図2及び図3に示すように、軸線方向Xにおける筒部材20の一端の開口を第1開口部21といい、軸線方向Xにおける筒部材20の他端の開口を第2開口部22という。第1開口部21及び第2開口部22はいずれも円状の孔である。筒部材20の内径は、第1開口部21及び第2開口部22を含む軸線方向Xの全体で同じ寸法である。以下では、第1開口部21及び第2開口部22の径が延びる方向を径方向Yという。径方向Yは、筒部材20の軸線Lに直交する直交方向に相当する。
【0023】
筒部材20には貫通孔24が形成されている。貫通孔24は、例えば径方向Yから筒部材20を見て、軸線方向Xに延びる貫通孔24の径が軸線Lに直交する径よりも長い長孔である。
【0024】
貫通孔24は、筒部材20の異なる位置に複数配置されている。2つの貫通孔24は、径方向Yにおいて互いに離間する位置関係にある。以下では、説明の便宜上、この2つの貫通孔24のうち、一方を貫通孔25ともいい、他方を貫通孔26ともいう。この貫通孔25と貫通孔26の組は、軸線方向Xにおける筒部材20の中間位置よりも、一方に偏った位置と、他方に偏った位置と、に1組ずつ位置している。すなわち、本実施形態では、筒部材20に4つの貫通孔24が配置されている。
【0025】
図3に示すように、筒部材20の軸線Lを含む位置において、径方向Yに直交する仮想的な平面を仮想平面Pとする。貫通孔24は、仮想平面Pを対称面として面対称となるように筒部材20に配置されている。詳細には、貫通孔25と貫通孔26とは径方向Yにおいて互いに対向している。すなわち、筒部材20を径方向Yから見たときに、貫通孔25と貫通孔26とは互いに重なって位置する。2つの貫通孔25は、軸線方向Xにおいて互いに対向している。2つの貫通孔26は、軸線方向Xにおいて互いに対向している。すなわち、筒部材20を軸線方向Xから見たときに、貫通孔25同士が互いに重なって位置するとともに、貫通孔26同士が互いに重なって位置する。
【0026】
筒部材20の外周面において、2つの貫通孔25の開口縁同士は軸線方向Xにおいて互いに離間しているとともに、2つの貫通孔26の開口縁同士は軸線方向Xにおいて互いに離間している。こうした軸線方向Xにおける貫通孔25の離間長さのうち、最も短い離間長さを最短離間長さL1といい、最も長い離間長さを最長離間長さL2という。最短離間長さL1は、軸線方向Xにおける2つの貫通孔24間の部分の筒部材20の長さに相当する。最長離間長さL2は、最短離間長さL1に、軸線方向Xにおける2つの貫通孔24の径の長さを足した長さに相当する。
【0027】
[磁性体の構成]
磁性体30は中実円柱状である。本実施形態の磁性体30は永久磁石である。磁性体30は、筒部材20の内部に配置されている。磁性体30の軸線は軸線Lと一致している。磁性体30の外径は筒部材20の内径と同じ寸法である。磁性体30は、筒部材20の内部に圧入されている。磁性体30の外周面30aが筒部材20の内周面20aに密着することにより、磁性体30は筒部材20の内周面20aに固定されている。磁性体30は、磁性体30の径方向に着磁されている。
【0028】
磁性体30は、軸線方向Xにおける両端部に磁性体端面31を有する。磁性体端面31は、軸線Lに対して直交する平坦面である。磁性体30の軸線方向Xにおける一端の磁性体端面31を第1端面32ともいい、磁性体30の軸線方向Xにおける他端の磁性体端面31を第2端面33という。
【0029】
軸線方向Xにおける磁性体30の寸法を磁性体寸法L3という。磁性体寸法L3は、軸線方向Xにおける磁性体30の第1端面32と第2端面33との間の寸法に相当する。磁性体寸法L3は、軸線方向Xにおける貫通孔24同士の最短離間長さL1よりも長く、且つ軸線方向Xにおける貫通孔24同士の最長離間長さL2より短い。
【0030】
図4に示すように、径方向Yからロータ19を見たとき、第1端面32の周縁部である第1周縁部32aが貫通孔25,26と重なっている。径方向Yからロータ19を見たとき、第2端面33の周縁部である第2周縁部33aが貫通孔25,26と重なっている。言い換えると、貫通孔24は、径方向Yから見て、磁性体端面31の周縁部と重なっている。
【0031】
[軸部材の構成]
図1に示すように、ロータ19は軸部材40を2つ備える。一方の軸部材40を第1軸部材41ともいい、他方の軸部材40を第2軸部材51ともいう。第1軸部材41及び第2軸部材51は中実円柱状である。第1軸部材41及び第2軸部材51の外径は、筒部材20の内径と同じ寸法である。第1軸部材41及び第2軸部材51は、例えば金属製材料から構成されている。
【0032】
第1軸部材41及び第2軸部材51は、筒部材20の内部に圧入されている。第1軸部材41は、筒部材20に圧入される第1圧入部43と、筒部材20に圧入されない第1露出部42と、を有する。第2軸部材51は、筒部材20に圧入される第2圧入部53と、筒部材20に圧入されない第2露出部52と、を有する。第1圧入部43は、軸線方向Xにおいて、筒部材20の第1開口部21よりも筒部材20の内部に位置する。第1露出部42は、軸線方向Xにおいて、筒部材20の第1開口部21から筒部材20の外部に露出する。第2圧入部53は、軸線方向Xにおいて、筒部材20の第2開口部22よりも筒部材20の内部に位置する。第2露出部52は、軸線方向Xにおいて、筒部材20の第2開口部22から筒部材20の外部に露出する。
【0033】
第1軸部材41及び第2軸部材51の軸線は、第1ボス部12cの軸線及び第2ボス部13cの軸線と一致している。すなわち、軸部材40の軸線は軸線Lと一致している。第1露出部42の外周面は、第1ボス部12cの内周面に配置された軸受14に支持されている。これにより、第1軸部材41はハウジング11に対して回転可能に支持されている。第2露出部52の外周面は、第2ボス部13cの内周面に配置された軸受14に支持されている。これにより、第2軸部材51はハウジング11に対して回転可能に支持されている。
【0034】
第1圧入部43の外周面である第1外周面43aと、第2圧入部53の外周面である第2外周面53aとは、筒部材20の内周面20aに密着している。これにより、第1軸部材41及び第2軸部材51は筒部材20の内周面20aに固定されている。
【0035】
第1圧入部43及び第2圧入部53は、軸線方向Xにおいて磁性体30と隣り合っている。言い換えると軸部材40は、軸線方向Xにおいて磁性体30と隣り合っている。磁性体30は、軸線方向Xにおいて第1圧入部43及び第2圧入部53によって挟まれている。
【0036】
第1軸部材41及び第2軸部材51が筒部材20に圧入されることにより、第1軸部材41及び第2軸部材51は、筒部材20及び磁性体30と一体回転する。
第2露出部52は、第2ハウジング構成体13を貫通するとともに、ハウジング11内とハウジング11外との間で軸線方向Xに延びている。ハウジング11外に位置する第2露出部52の端部には、第2軸部材51と一体回転する不図示のインペラが配置されている。第2軸部材51の回転が駆動力としてインペラに伝達されることによってインペラが回転駆動する。
【0037】
図2及び図3に示すように、軸部材40は、軸線方向Xにおける端部に軸部材端面45を有する。軸部材端面45は、軸線方向Xにおける第1軸部材41及び第2軸部材51の端部のうち、磁性体端面31と隣り合う端部に位置する。第1軸部材41の軸部材端面45を第1軸部材端面46という。第1軸部材端面46は、第1圧入部43の軸線方向Xにおける端面である。第1軸部材端面46は、磁性体30の第1端面32と隣り合っているとともに第1端面32と面接触している。第2軸部材51の軸部材端面45を第2軸部材端面47という。第2軸部材端面47は、第2圧入部53の軸線方向Xにおける端面である。第2軸部材端面47は、磁性体30の第2端面33と隣り合っているとともに第2端面33と面接触している。
【0038】
図4に示すように、径方向Yからロータ19を見たとき、第1軸部材端面46の周縁部である第3周縁部46aが貫通孔25,26と重なっている。径方向Yからロータ19を見たとき、第2軸部材端面47の周縁部である第4周縁部47aが貫通孔25,26と重なっている。言い換えると、貫通孔24は、径方向Yから見て、軸部材端面45の周縁部と重なっている。
【0039】
[通路部の構成]
図3に示すように、通路部60は、軸線方向Xにおいて隣り合う磁性体端面31及び軸部材端面45の少なくとも一方に位置する。本実施形態の通路部60は、磁性体30の第1端面32、磁性体30の第2端面33、第1軸部材端面46、及び第2軸部材端面47に位置している。以下では、これらの通路部60を有する端面を通路端面61ともいう。言い換えると、本実施形態の通路端面61は、磁性体30の第1端面32、磁性体30の第2端面33、第1軸部材端面46、及び第2軸部材端面47に相当する。通路端面61の周縁部は、第1端面32の第1周縁部32a、第2端面33の第2周縁部33a、第1軸部材端面46の第3周縁部46a、及び第2軸部材端面47の第4周縁部47aに相当する。
【0040】
図3及び図5に示すように、通路部60は、通路端面61の周縁部に沿って位置するテーパ側面62を有する。テーパ側面62は、通路端面61の各々の周縁部の全周にわたって位置している。テーパ側面62は、通路端面61から軸線方向Xにおいて離間するほど筒部材20の内周面20aに接近している。
【0041】
通路部60は、通路端面61に沿って位置する溝部63を含んでいる。溝部63は、通路端面61から凹状に凹んでいる。溝部63は、径方向Yに延びている。径方向Yにおける溝部63の一端を第1端部63aとし、径方向Yにおける溝部63の他端を第2端部63bとする。溝部63は、例えば、通路端面61の中心を通り、且つ通路端面61の周縁部の間で延びている。第1端部63a及び第2端部63bは、通路端面61の周縁部に繋がっている。第1端部63a及び第2端部63bはテーパ側面62に繋がっている。
【0042】
図3に示すように、磁性体30の第1端面32に位置するテーパ側面62は、第1端面32と磁性体30の外周面30aとを繋ぐように延びている。磁性体30の第2端面33に位置するテーパ側面62は、第2端面33と磁性体30の外周面30aとを繋ぐように延びている。第1軸部材端面46に位置するテーパ側面62は、第1軸部材端面46と第1圧入部43の第1外周面43aとを繋ぐように延びている。第2軸部材端面47に位置するテーパ側面62は、第2軸部材端面47と第2圧入部53の第2外周面53aとを繋ぐように延びている。
【0043】
図2に示すように、軸線方向Xにおいて隣り合う通路端面61の通路部60同士は軸線方向Xにおいて隣り合っている。詳細には、磁性体30の第1端面32と第1軸部材端面46とで、テーパ側面62同士が軸線方向Xにおいて隣り合っているとともに、溝部63同士が隣り合っている。磁性体30の第2端面33と第2軸部材端面47とで、テーパ側面62同士が軸線方向Xにおいて隣り合っているとともに、溝部63が隣り合っている。本実施形態では、軸線方向Xにおいて隣り合う通路端面61が面接触している。そのため、軸線方向Xにおいて隣り合うテーパ側面62同士の間と溝部63同士の間とに空間Sが区画形成されている。
【0044】
径方向Yから見て貫通孔24と重なるように磁性体端面31の周縁部及び軸部材端面45の周縁部が位置することにより、通路部60は貫通孔24を介して筒部材20の外部と連通している。詳細には、貫通孔25,26を介して、磁性体30の第1端面32及び第1軸部材端面46に位置する通路部60が筒部材20の外部と連通している。貫通孔25,26を介して、磁性体30の第2端面33及び第2軸部材端面47に位置する通路部60が筒部材20の外部と連通している。
【0045】
図5に示すように、2つの貫通孔24のうち、一方の貫通孔25は溝部63の第1端部63aに繋がっているとともに、他方の貫通孔26は溝部63の第2端部63bに繋がっている。通路部60は、貫通孔25を介して筒部材20外から流入した空気を、空間Sにおいて通過させた後、貫通孔26に向けて流出可能である。
【0046】
[作用]
次に、本実施形態の作用について、筒部材20への磁性体30及び軸部材40の圧入方法と、筒部材20からの潤滑油の排出方法と共に以下に説明する。
【0047】
[筒部材への磁性体及び軸部材の圧入方法]
図6に示すように、磁性体30及び軸部材40は、圧入によって筒部材20の内部に組付けられている。筒部材20内への軸部材40の圧入に際しては、筒部材20内への軸部材40の圧入を円滑に行うために、筒部材20の内周面20a上への潤滑油の塗布が行われる。以下では、第2軸部材51、磁性体30、及び第1軸部材41の順で、これらを筒部材20に圧入する場合を例示して説明する。
【0048】
まず、筒部材20に対して第2軸部材51が圧入される。筒部材20への第2軸部材51の圧入に際しては、第2圧入部53が筒部材20の第2開口部22に挿入される。第2圧入部53は、第2軸部材端面47の第4周縁部47aが径方向Yにおいて筒部材20の貫通孔25,26と対向する位置まで筒部材20の内部に挿入される。
【0049】
次に、筒部材20に対して磁性体30が圧入される。磁性体30は、第1開口部21から筒部材20の内部に挿入される。筒部材20への磁性体30の圧入が完了すると、第2端面33の第2周縁部33a及び第1端面32の第1周縁部32aの各々が、径方向Yにおいて筒部材20の貫通孔25,26と対向した状態になる。
【0050】
続いて、筒部材20に対して第1軸部材41が圧入される。第1軸部材41は、筒部材20の第1開口部21から筒部材20の内部に挿入される。第1軸部材41は、第1軸部材端面46の第3周縁部46aが径方向Yにおいて筒部材20の貫通孔25,26と対向する位置まで挿入される。
【0051】
筒部材20内への磁性体30の圧入に伴って、軸線方向Xにおいて、第2軸部材端面47に磁性体端面31が近接する。この際、筒部材20内において、第2軸部材端面47及び磁性体端面31によって潤滑油が押し出されることにより、第2軸部材端面47の第4周縁部47a付近や磁性体端面31の周縁部付近に潤滑油が残存することがある。なお図6では、筒部材20内への磁性体30の圧入に伴って、第2軸部材端面47及び磁性体端面31によって押し出される潤滑油の流れを二点鎖線の矢印で模式的に示している。
【0052】
筒部材20内への第1軸部材41の圧入の際も、上記と同様に潤滑油の流れが生じる。すなわち、互いに近接する第1軸部材端面46及び磁性体端面31によって潤滑油が押し出されることにより、第1軸部材端面46の第3周縁部46a付近や磁性体端面31の周縁部付近に潤滑油が残存することがある。
【0053】
図7に示すように、筒部材20への磁性体30及び軸部材40の圧入が完了すると、磁性体30の第2端面33と第2軸部材端面47とは面接触した状態となる。第2端面33及び第2軸部材端面47の通路部60は、貫通孔25,26を介して筒部材20の外部と連通した状態となる。第1軸部材端面46と磁性体30の第1端面32とが面接触した状態となる。第1端面32及び第1軸部材端面46の通路部60は、貫通孔25,26を介して筒部材20の外部と連通した状態となる。
【0054】
[筒部材からの潤滑油の排出方法]
図7及び図8に示すように、筒部材20への磁性体30及び軸部材40の圧入完了後、筒部材20から潤滑油を排出させる。潤滑油の排出に際しては、貫通孔25を介して導入ノズル70から筒部材20の内部に空気が導入される。これと同時に、貫通孔26を介して吸引ノズル71によって筒部材20の内部から空気が吸引される。
【0055】
なお、筒部材20の剛性を確保するため、可能な限り小さい寸法の貫通孔25,26を筒部材20に形成することが好ましい。筒部材20における貫通孔25の寸法は、筒部材20の内部への空気の導入が行える最小限の大きさに設定されている。筒部材20における貫通孔26の寸法は、筒部材20の外部への空気の排出が行える最小限の大きさに設定されている。
【0056】
導入ノズル70から空気が導入される貫通孔25は、筒部材20の内部への空気の導入に用いられる空気導入孔として機能する。吸引ノズル71から空気が吸引される貫通孔26は、筒部材20の内部から空気の排出に用いられる空気排出孔として機能する。
【0057】
図7及び図8では、空気の流れを二点鎖線の矢印で示している。図8では、筒部材20の内部に残存している潤滑油を潤滑油Gとして図示している。貫通孔25を介して筒部材20の内部へ導入された空気は、貫通孔25に連通する通路部60に導入される。通路部60に導入された空気は、通路部60を通過する。具体的には、第1軸部材端面46及び磁性体30の第1端面32において、テーパ側面62同士で形成された空間Sと、溝部63同士で形成された空間Sとのそれぞれを空気が通過する。第2軸部材端面47及び磁性体30の第2端面33において、テーパ側面62同士で形成された空間Sと、溝部63同士で形成された空間Sとのそれぞれを空気が通過する。通路部60を通過した空気は、貫通孔26から排出される。
【0058】
テーパ側面62によって形成された空間Sを流れる空気は、軸部材端面45の周縁部及び磁性体端面31の周縁部に沿って流れる。潤滑油Gは、筒部材20の内部において、軸部材端面45の周縁部付近や磁性体端面31の周縁部付近に残存している。そのため、テーパ側面62によって形成された空間Sに空気を流すことにより、潤滑油Gを空気と共に流すことができる。
【0059】
溝部63は、貫通孔25と貫通孔26との間で径方向Yに直線状に延びている。そのため、溝部63は、テーパ側面62よりも短い距離で貫通孔25と貫通孔26とを繋いでいる。貫通孔25から筒部材20内に導入された空気は、溝部63によって形成された空間Sを介して、早期に貫通孔26へと流れる。溝部63は、軸部材端面45の周縁部や磁性体端面31の周縁部に繋がっている。これら周縁部の付近に潤滑油Gが残存しているため、溝部63によって形成された空間Sに空気を流すことにより、潤滑油Gを空気と共に流すことができる。
【0060】
軸部材端面45の周縁部付近や磁性体端面31の周縁部付近に残存していた潤滑油Gは、通路部60を介した空気の流れによって吸引される。これにより、潤滑油は、貫通孔26を介して空気と共に筒部材20外に排出される。
【0061】
導入ノズル70から筒部材20の内部への空気の導入と、吸引ノズル71から筒部材20の外部への空気の吸引とは、所定の時間継続された後に停止される。なお、筒部材20に対して空気の導入及び空気の吸引を行う上記所定の時間は、筒部材20の内部に残存した潤滑油が貫通孔26を介して筒部材20の外部に排出可能な時間に設定されている。
【0062】
上記実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)ロータ19は、筒部材20を貫通する貫通孔25,26を介して筒部材20の外部と連通するとともに、軸線方向Xにおいて隣り合う磁性体端面31及び軸部材端面45に位置する通路部60を有する。そのため、貫通孔25を介して筒部材20内へ空気を導入することにより、通路部60に空気を導入できる。通路部60に導入された空気は、通路部60を通った後、貫通孔26から排出される。筒部材20内に潤滑油が残存していたとしても、通路部60を介した空気の流れによって潤滑油が吸引されるため、潤滑油は貫通孔26を介して空気と共に筒部材20外に排出される。したがって、筒部材20内に残存した潤滑油を低減できる。
【0063】
(2)貫通孔24は、筒部材20の異なる位置に複数配置されている。そのため、貫通孔25を筒部材20内へ空気を導入するための空気導入孔として使用するとともに、貫通孔26を筒部材20内から空気を排出するための空気排出孔として使用できる。したがって、1つの貫通孔24が空気導入孔及び空気排出孔の両方の機能を担う場合と比較して、通路部60を介した筒部材20への空気の導入と筒部材20からの空気の排出とを円滑に行うことができる。したがって、筒部材20内に残存した潤滑油をさらに低減できる。
【0064】
(3)筒部材20の軸線Lを含む位置において径方向Yに直交する仮想的な平面を仮想平面Pとするとき、貫通孔24は、仮想平面Pを対称面として面対称となるように筒部材20に配置されている。そのため、筒部材20への貫通孔24の形成に伴ってロータ19の回転のアンバランスが生じることを抑制できる。
【0065】
(4)貫通孔25を筒部材20内へ空気を導入するための空気導入孔として使用するとともに、貫通孔26を筒部材20内から空気を排出するための空気排出孔として使用できる。貫通孔25は溝部63の第1端部63aに繋がっているとともに、貫通孔26は溝部63の第2端部63bに繋がっている。そのため、筒部材20外から貫通孔25を介して第1端部63aに空気が導入される。空気は、溝部63の第1端部63aから第2端部63bへと流れる。溝部63を通った空気は、第2端部63bから貫通孔26を介して筒部材20外に排出される。したがって、通路部60を介した筒部材20への空気の導入と筒部材20からの空気の排出とを円滑に行うことができるため、筒部材20内に残存した潤滑油をさらに低減できる。
【0066】
(5)磁性体30が筒部材20に挿入される際に、磁性体30の第2端面33から筒部材20内に挿入される。第1軸部材41が筒部材20に挿入される際には、第1軸部材端面46から筒部材20内に挿入される。第2軸部材51が筒部材20に挿入される際には、第2軸部材端面47から筒部材20内に挿入される。上記実施形態によれば、磁性体30及び軸部材40が筒部材20に挿入される際、まず筒部材20に挿入される各端面にテーパ側面62が位置している。そのため、筒部材20への挿入時に磁性体30及び軸部材40が削れることを抑制できる。
【0067】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0068】
○ 溝部63は径方向Yに直線状に延びるものに限らない。例えば、溝部63は通路端面61上を曲線状に延びるものであってもよい。
○ 溝部63の第1端部63a及び第2端部63bのうち、一方又は両方が貫通孔24に繋がっていなくてもよい。この場合、第1端部63a及び第2端部63bの一方又は両方が、テーパ側面62によって形成された空間Sに繋がることにより、この空間Sを介して溝部63が貫通孔24と繋がる。そのため、貫通孔24から溝部63に空気を流すことができる。溝部63から貫通孔24に空気を排出できる。
【0069】
図9及び図10に示すように、通路部60は溝部63を有さなくてもよい。溝部63を有さない通路部60においては、貫通孔25を介して筒部材20外から流入した空気がテーパ側面62上を通過した後、貫通孔26に向けて流出される。なお、図9には、第1軸部材端面46、第2軸部材端面47、磁性体30の第1端面32、及び磁性体30の第2端面33に位置する通路部60の全てが、溝部63を有さない通路部60であるロータ19を例示している。溝部63を有さない通路部60は、第1軸部材端面46、第2軸部材端面47、磁性体30の第1端面32、及び磁性体30の第2端面33に位置する通路部60の一部であってもよい。
【0070】
○ 通路部60は、テーパ側面62を有さなくてもよい。テーパ側面62を有さない通路部60は、第1軸部材端面46、第2軸部材端面47、磁性体30の第1端面32、及び磁性体30の第2端面33に位置する通路部60のうち、一部であってもよいし全てであってもよい。例えば、テーパ側面62を有さない通路部60が磁性体30に位置する場合、径方向Yにおける溝部63の両端は、磁性体30の外周面30aに繋がっている。径方向Yにおける溝部63の一端は貫通孔25と連通している。径方向Yにおける溝部63の他端は貫通孔26と連通している。通路部60においては、貫通孔25を介して筒部材20外から流入した空気が溝部63を通過した後、貫通孔26に向けて流出される。
【0071】
○ 磁性体30の第1端面32及び第1軸部材端面46に位置する通路部60は、3つ以上の貫通孔24を介して筒部材20の外部と連通していてもよい。この場合の3つ以上の貫通孔24は、径方向Yから見て、第1端面32の第1周縁部32a及び第1軸部材端面46の第3周縁部46aと重なっている。磁性体30の第2端面33及び第2軸部材端面47に位置する通路部60は、3つ以上の貫通孔24を介して筒部材20の外部と連通していてもよい。この場合の3つ以上の貫通孔24は、径方向Yから見て、第2端面33の第2周縁部33a及び第2軸部材端面47の第4周縁部47aと重なっている。
【0072】
○ 筒部材20における貫通孔24の配置位置は、仮想平面Pを対称面として面対称となる配置位置に限らない。この場合、貫通孔24の位置に応じて筒部材20の厚みを部分的に小さくする等、筒部材20の形状を調整すれば、筒部材20への貫通孔24の形成に伴ってロータ19の回転のアンバランスが生じることを抑制できる。
【0073】
図11に示すように、磁性体30の第1端面32に位置する通路部60は、1つの貫通孔24のみに連通してもよい。なお、図示は省略しているが、磁性体30の第2端面33、第1軸部材端面46、及び第2軸部材端面47に位置する通路部60のうち、一部の通路部60が1つの貫通孔24のみに連通していてもよいし、全ての通路部60が1つの貫通孔24に連通していてもよい。要するに、貫通孔24は、径方向Yから見て、磁性体端面31の周縁部及び軸部材端面45の周縁部と重なる1か所において筒部材20に形成されていてもよい。通路部60が1つの貫通孔24のみに連通する場合、例えば、貫通孔24から導入ノズル70によって空気を導入するとともに、同じ貫通孔24から空気を排出させるようにすれば、貫通孔24から潤滑油を排出できる。
【0074】
図12に示すように、磁性体30は軸線方向Xに複数隣り合っていてもよい。図12では、磁性体30が軸線方向Xに2つ隣り合うロータ19を例示している。図12に示すロータ19の構成について以下に説明する。
【0075】
図12に示すように、2つの磁性体30のうち、1つの磁性体を第1磁性体130とし、第1磁性体130と軸線方向Xにおいて隣り合う磁性体30を第2磁性体131とする。第1磁性体130及び第2磁性体131は筒部材20に圧入されている。貫通孔25,26は第1貫通孔に相当する。通路部60は第1通路部に相当する。第1磁性体130は、軸線方向Xにおける端部に第1磁性体端面132を有する。第2磁性体131は、軸線方向Xにおける端部に第1磁性体端面132と隣り合う第2磁性体端面133を有する。
【0076】
ロータ19は、第2通路部160を有する。第2通路部160は、筒部材20を貫通する第2貫通孔124を介して筒部材20の外部と連通する。第2通路部160は、第1磁性体端面132及び第2磁性体端面133に位置する。なお、第2通路部160は、第1磁性体端面132及び第2磁性体端面133のいずれか一方に位置してもよい。
【0077】
第2通路部160はテーパ側面62を有する。この形態のテーパ側面62は、第1磁性体端面132の周縁部及び第2磁性体端面133の周縁部に沿って位置している。なお、第2通路部160は、上記実施形態の溝部63と同様の溝部を有してもよい。
【0078】
筒部材20には、第2貫通孔124が2つ配置されている。2つの第2貫通孔124は、径方向Yから見て、第1磁性体端面132の周縁部及び第2磁性体端面133の周縁部と重なっている。
【0079】
一方の第2貫通孔124を第2貫通孔125ともいい、他方の第2貫通孔124を第2貫通孔126ともいう。第2貫通孔125は、導入ノズル70から空気が導入されることにより、筒部材20内に空気を導入可能な空気導入孔として機能する。第2貫通孔126は、吸引ノズル71によって空気が吸引されることにより、空気を排出可能な空気排出孔として機能する。第2通路部160は、第2貫通孔125を介して筒部材20外から流入した空気を第2貫通孔126に向けて流出可能である。
【0080】
上記変更例によれば、上記実施形態の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(6)第1磁性体130及び第2磁性体131が筒部材20に圧入される際、第1磁性体端面132の周縁部付近や第2磁性体端面133の周縁部付近に潤滑油が残存することがある。上記変更例によれば、こうした潤滑油が、第2通路部160を介した空気の流れによって吸引される。これにより、潤滑油は、第2貫通孔126を介して空気と共に筒部材20外に排出される。したがって、筒部材20内に残存した潤滑油をさらに低減できる。
【0081】
○ 第1軸部材端面46と磁性体30の第1端面32とは、面接触せず互いに離間していてもよい。第2軸部材端面47と磁性体30の第2端面33とは、面接触せず互いに離間していてもよい。
【0082】
○ 第1軸部材41及び第2軸部材51よりも先に、磁性体30を筒部材20に圧入させてもよい。
○ 磁性体30の筒部材20への組付け方法は、例えば接着剤による固定等、筒部材20への圧入以外であってもよい。
【0083】
○ 磁性体30は永久磁石に限らない。例えば、磁性体30は、積層コア、アモルファスコア、又は圧粉コア等であってもよい。
○ 回転電機10は、第2軸部材51の端部に加えて、第1軸部材41の端部にインペラが取り付けられた構成であってもよい。この場合、第1軸部材41に取り付けられたインペラは、第1軸部材41と一体回転可能である。インペラは、第1軸部材41の回転が駆動力として伝達されることにより駆動する。
【符号の説明】
【0084】
L…軸線、P…仮想平面、X…軸線方向、Y…径方向、10…回転電機、19…ロータ、20…筒部材、20a…内周面、24,25,26…貫通孔、30…磁性体、31…磁性体端面、32…第1端面、32a…第1周縁部、33…第2端面、33a…第2周縁部、40…軸部材、41…第1軸部材、45…軸部材端面、46…第1軸部材端面、46a…第3周縁部、47…第2軸部材端面、47a…第4周縁部、60…通路部、61…通路端面、62…テーパ側面、63…溝部、63a…第1端部、63b…第2端部、130…第1磁性体、131…第2磁性体、132…第1磁性体端面、133…第2磁性体端面、124,125,126…第2貫通孔、160…第2通路部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12