(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】自律移動体
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240214BHJP
【FI】
G05D1/02 H
(21)【出願番号】P 2021011310
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 公
(72)【発明者】
【氏名】葛西 太郎
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-84135(JP,A)
【文献】特開2018-49438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機台と、
前記機台を走行させる駆動部と、
前記機台の移動量、及び前記機台の回転角度を示す動作情報を生成する動作情報生成部と、
前記機台の周囲に存在する物体を認識する認識部と、
前記駆動部を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
追尾走行モードにおいて前記認識部により認識された追尾対象者を追尾するように前記機台を走行させるべく前記駆動部を制御し、自律走行モードにおいて前記認識部の認識結果と地図情報とに基づいて前記機台を自律走行させるべく前記駆動部を制御し、動作情報走行モードにおいて前記追尾走行モードで走行している間に前記動作情報生成部により生成された前記動作情報に基づいて、前記地図情報に示される範囲以外の範囲において前記機台を自律走行させるべく前記駆動部を制御する走行制御部と、
前記機台の周囲に存在する物体のうち追尾対象者以外の物体を前記認識部が認識した認識結果に基づいて自律走行する範囲の前記地図情報を更新する更新部と、を有する、
ことを特徴とする自律移動体。
【請求項2】
進行方向前方に存在する物体を検出する第1検出部を備え、
前記動作情報生成部は、前記地図情報に示される範囲以外の範囲の走行を開始した開始位置から目的地までの往路において、前記動作情報を生成し、
前記認識部は、前記動作情報走行モードにおいて前記第1検出部が検出した検出結果に基づいて、前記機台の周囲に存在する物体のうち追尾対象者以外の物体を認識する、
請求項1に記載の自律移動体。
【請求項3】
前記往路と、前記目的地から前記開始位置までの復路とを走行した後、前記開始位置に到着したか否かを判定する判定部を更に備え、
前記更新部は、前記判定部の判定結果が前記開始位置に到着したことを示す場合、前記地図情報を更新し、前記判定部の判定結果が前記開始位置に到着したことを示さない場合、前記地図情報を更新しない、
ことを特徴とする請求項2に記載の自律移動体。
【請求項4】
進行方向前方に存在する物体を検出する第1検出部と、
進行方向後方に存在する物体を検出する第2検出部とを備え、
前記認識部は、前記追尾走行モードにおいて前記第2検出部が検出した検出結果に基づいて、前記機台の周囲に存在する物体のうち追尾対象者以外の物体を認識する、
ことを特徴とする請求項1に記載の自律移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の範囲を示す地図情報を用いて、所定の範囲を自律的に移動する自律移動体に係る技術が知られている。特許文献1には、複数の自律移動体を制御し、所定の範囲内をそれぞれ走行させて、所定の範囲を示す地図情報を生成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、所定の範囲の拡張等があった場合、所定の範囲を自律移動体に自律的に移動させるには、地図情報の更新が求められる場合がある。従来の技術において、地図情報を更新するには、所定の範囲内を自律移動体に走行させるアルゴリズムを用意する必要があった。また、従来の技術のようなアルゴリズムを用いない場合、地図情報を更新するには、作業者が、自律移動体を人力によって移動させることにより所定の範囲を検出する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する自律移動体は、機台と、前記機台を走行させる駆動部と、前記機台の移動量、及び前記機台の回転角度を示す動作情報を生成する動作情報生成部と、前記機台の周囲に存在する物体を認識する認識部と、前記駆動部を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、追尾走行モードにおいて前記認識部により認識された追尾対象者を追尾するように前記機台を走行させるべく前記駆動部を制御し、自律走行モードにおいて前記認識部の認識結果と地図情報とに基づいて前記機台を自律走行させるべく前記駆動部を制御し、動作情報走行モードにおいて前記追尾走行モードで走行している間に前記動作情報生成部により生成された前記動作情報に基づいて、前記地図情報に示される範囲以外の範囲において前記機台を自律走行させるべく前記駆動部を制御する走行制御部と、前記機台の周囲に存在する物体のうち追尾対象者以外の物体を前記認識部が認識した認識結果に基づいて自律走行する範囲の前記地図情報を更新する更新部と、を有することを特徴とする。
【0006】
かかる構成によれば、更新部は、認識部により認識された認識結果に基づいて、地図情報を更新する。これにより、自律移動体は、アルゴリズムや人力による自律移動体の移動を必要とせず、追尾走行させることにより、簡便に地図情報を更新することができる。
【0007】
上記自律移動体において、進行方向前方に存在する物体を検出する第1検出部を備え、前記動作情報生成部は、前記地図情報に示される範囲以外の範囲の走行を開始した開始位置から目的地までの往路において、前記動作情報を生成し、前記認識部は、前記動作情報走行モードにおいて前記第1検出部が検出した検出結果に基づいて、前記機台の周囲に存在する物体のうち追尾対象者以外の物体を認識してもよい。
【0008】
かかる構成によれば、動作情報走行モードにおいて、第1検出部の検出範囲に追尾対象者が存在せず、認識部は、追尾対象者以外の物体を精度よく認識することができる。したがって、したがって、更新部は、より精度高く地図情報を更新することができる。
【0009】
上記自律移動体において、前記往路と、前記復路とを走行した後、前記開始位置に到着したか否かを判定する判定部を更に備え、前記更新部は、前記判定部の判定結果が前記開始位置に到着したことを示す場合、前記地図情報を更新し、前記判定部の判定結果が前記開始位置に到着したことを示さない場合、前記地図情報を更新しなくてもよい。
【0010】
かかる構成によれば、判定部は、往路と復路とを走行した後、自律移動体の位置が開始位置であることを判定し、更新部は、判定部の判定結果が開始位置に到着したことを示す場合に、地図情報を更新する。つまり、更新部は、往路において取得された認識結果と、復路において取得された認識結果とが一致、又は略一致である場合に、地図情報を更新する。したがって、自律移動体は、より精度高く地図情報を更新することができる。
【0011】
上記自律移動体において、進行方向前方に存在する物体を検出する第1検出部と、進行方向後方に存在する物体を検出する第2検出部とを備え、前記認識部は、前記追尾走行モードにおいて前記第2検出部が検出した検出結果に基づいて、前記機台の周囲に存在する物体のうち、追尾対象者以外の物体を認識してもよい。
【0012】
かかる構成によれば、更新部は、認識部の認識結果のうち、第2検出部により検出された追尾対象者が影響しない検出結果に基づく認識結果に基づいて、地図情報を更新する。したがって、自律移動体は、往路と復路とを走行した後に地図情報を更新する場合に比して、より短い時間で地図情報を更新することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡便に地図情報を更新することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態における自律移動体の概略平面図。
【
図2】第1実施形態における自律移動体の構成の一例を示す図。
【
図4】第1実施形態における更新処理を説明するための図。
【
図5】更新された地図情報に示される既学習範囲の一例を示す図。
【
図6】第1実施形態における更新処理の一例を示す図。
【
図7】第2実施形態における自律移動体の概略平面図。
【
図8】第2実施形態における更新処理を説明するための図。
【
図9】第2実施形態における更新処理の一例を示す図。
【
図10】変形例1における自律移動体の構成の一例を示す図。
【
図11】変形例1における更新処理の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
<自律移動体10の構成について>
以下、本発明を具体化した第1実施形態を、図面を用いて説明する。
図1に示すように、自律移動体10は、全方向移動車両であって、例えば、「無人搬送車」(AGV:Automatic Guided Vehicle)である。自律移動体10は、例えば、本体に人手または自動で荷物を積み込み、指示された場所まで自律的に走行し、人手または自動で荷卸しをする無軌道車両を意味する。自律移動体10には、例えば、無人牽引車および無人フォークリフトが含まれる。
【0016】
なお、自律移動体10の「自律」とは、車両の操舵に人を必要としないことを意味しており、自律移動体10が「人(たとえば荷物の積み下ろしを行う者)」を搬送することは除外しない。
【0017】
図1に示すように自律移動体10は、円盤状の機台20と4つの車輪30,31,32,33と、測域センサ40と、制御装置100とを備えている。自律移動体10は、制御装置100の制御に基づいて移動する。
【0018】
4つの車輪30,31,32,33は、機台20に設けられている。詳しくは、平面視において機台20の中心に対し90°毎に車輪30,31,32,33が配置されている。各車輪30,31,32,33は、それぞれ全方向車輪であって、具体的にはオムニホイールであり、各車輪30,31,32,33は、全方向に駆動可能に構成された車輪である。即ち、各車輪30,31,32,33において、車輪の円周方向に配置され自由回転するローラ(樽型を有する小輪)が複数設けられ、前後・左右に自由に動くことができる。このように構成された車輪を4つ用いて車軸を変動させないで機台20を全方向に可動できるようになっている。
【0019】
機台20には測域センサ40が装着されている。測域センサ40として、レーザレンジファインダ(Laser Range Finder)を使用しており、測域センサ40は2次元レーザ(2Dレーザ)センサである。測域センサ40は、自律移動体10の周囲に光を照射し、散乱光を測定する。測域センサ40は、発光から受光までの時間に基づいて、物体までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザ光である。本実施形態では、測域センサ40は、機台20の上面に固定されており、センシング範囲As内に存在する物体までの距離を検出する。センシング範囲Asの詳細については、後述する。本実施形態において、測域センサ40は、「第1検出部」の一例である。
【0020】
<制御装置100の構成について>
図2に示す通り、制御装置100には、測域センサ40と、自律移動体10が備える車輪30,31,32,33に対応した駆動部65,66,67,68とが接続される。また、駆動部65,66,67,68には、モータ61,62,63,64が接続される。モータ61の出力軸には、車輪30が駆動連結され、モータ62の出力軸には、車輪31が駆動連結され、モータ63の出力軸には、車輪32が駆動連結され、モータ64の出力軸には、車輪33が駆動連結される。これにより、モータ61,62,63,64は、車輪30,31,32,33を駆動することができる。
【0021】
制御装置100は、測域センサ40の検出結果に基づいて自律移動体10の周囲環境を認識し、車輪30,31,32,33の動作に基づいて、自己位置を特定する。制御装置100は、認識結果、又は自己位置の少なくとも一方に基づいて、駆動部65,66,67,68とを制御することによって、モータ61,62,63,64を回転させ、自律移動体10を走行させる。
【0022】
制御装置100は、例えば、制御部110と、記憶部200とを備える。制御部110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め記憶部200に格納されていてもよい。
【0023】
記憶部200は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの非一過性の記憶媒体により実現される。記憶部200には、例えば、地図情報210が記憶される。地図情報210は、例えば、自律移動体10が走行する範囲のうち、追尾対象者の追尾を必要とせず、自律走行により走行する範囲の構造を幾何学的に表した情報であり、例えば、自律走行により走行する範囲の座標を含む。この座標は、絶対座標であってもよく、自律移動体10が走行する範囲における相対座標であってもよい。
【0024】
以下、自律移動体10が走行する範囲のうち、追尾対象者の追尾を必要とせず、自律走行により走行する範囲を、「既学習範囲AR1」と記載し、自律移動体10が走行する範囲のうち、追尾対象者の追尾を必要とする範囲を、「未学習範囲AR2」と記載する。つまり、地図情報210は、既学習範囲AR1を表した情報である。
【0025】
また、記憶部200には、動作履歴情報212が記憶される。動作履歴情報212の詳細については、後述する。
制御部110は、例えば、認識部60と、動作情報生成部80と、走行制御部120と、更新部130とを備える。走行制御部120は、行動計画生成部122と、駆動制御部124とを備える。
【0026】
認識部60は、測域センサ40による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、及び自律移動体10の速度などを認識する。詳しくは、認識部60は、測域センサ40を介して入力された情報に基づいて、自律移動体10の周囲に存在する物体の位置の状態を認識する。物体の位置は、例えば、自律移動体10の代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。
【0027】
動作情報生成部80は、車輪30,31,32,33の回転数及び回転角度に基づいて、動作情報を生成する。動作情報には、機台20の移動量、及び機台20の回転角度が含まれる。動作情報生成部80は、例えば、モータ61,62,63,64の動作を検出する検出部(不図示)の検出結果に基づいて、機台20の移動量、及び機台20の回転角度を特定し、動作情報を生成する。動作情報生成部80は、動作情報を生成した日時と、生成した動作情報とを対応付けたレコードに基づいて、動作履歴情報212を生成、又は更新し、記憶部200に記憶させる。動作履歴情報212は、動作情報が生成された日時と、動作情報とが対応付けられたレコードを一以上含む情報である。
【0028】
動作情報生成部80は、例えば、既学習範囲AR1以外の未学習範囲AR2を走行する際に、所定の時間間隔毎に動作情報を生成する。この場合、動作情報生成部80は、認識部60の認識結果と、地図情報210とに基づいて、自律移動体10の自己位置が既学習範囲AR1内であるか否かを判定する。動作情報生成部80は、自律移動体10の自己位置が既学習範囲AR1内ではないと判定した場合、動作情報を生成する処理を開始する。
【0029】
走行制御部120は、認識部60の認識結果と、地図情報210とに基づいて、駆動部65,66,67,68を制御し、機台20(自律移動体10)を走行させる。以下、走行制御部120が備える行動計画生成部122について説明し、次に駆動制御部124について説明する。
【0030】
行動計画生成部122は、地図情報210と、認識部60の認識結果とに基づいて、自律移動体10が、周囲に存在する物体をよけつつ将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自律移動体10の到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自律移動体10の到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自律移動体10の到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。行動計画生成部122は、軌道点が、地図情報210に示される既学習範囲AR1内の位置となるように、目標軌道を生成する。
【0031】
ここで、走行制御部120は、追尾走行モード、自律走行モード、又は動作情報走行モードによって、機台20を走行させるべく、駆動部65,66,67,68を制御する。走行制御部120は、例えば、自律移動体10に設けられたタッチパネルやボタン等の操作部(不図示)に対する追尾対象者の指示に基づいて、追尾走行モード、自律走行モード、又は動作情報走行モードの処理を実行する。以下、追尾対象者がピッキング作業を行う作業者M1であるものとする。
【0032】
追尾走行モードとは、認識部60により認識された作業者M1を追尾するように機台20を走行させるべく、目標軌道を生成し、駆動部65,66,67,68を制御するモードである。詳しくは、追尾走行モードにおいて、行動計画生成部122は、センシング範囲As内に作業者M1が存在し続けるように、目標軌道を生成する。
【0033】
自律走行モードとは、認識部60により認識された認識結果と、地図情報210とに基づいて、機台20を自律走行させるべく、目標軌道を生成し、駆動部65,66,67,68を制御するモードである。詳しくは、自律走行モードにおいて、行動計画生成部122は、地図情報210に示される既学習範囲AR1内において目標軌道を生成する。
【0034】
動作情報走行モードとは、追尾走行モードで走行している間に動作情報生成部80により生成された動作情報に基づいて、地図情報210に示される既学習範囲AR1以外の範囲(つまり、未学習範囲AR2)において機台20を自律走行させるべく駆動部65,66,67,68を制御するモードである。
【0035】
ここで、行動計画生成部122は、未学習範囲AR2において追尾対象者を追尾しない場合には、自律移動体10が走行可能な位置を特定できず、目標軌道を生成することができない。一方、自律移動体10が既学習範囲AR1から未学習範囲AR2まで追尾対象者を追尾して走行した場合、動作履歴情報212には、未学習範囲AR2内において自律移動体10が走行した動作情報の履歴が含まれる。自律移動体10は、動作情報走行モードにおいて、未学習範囲AR2内を追尾対象者を追尾せずに走行する場合、動作履歴情報212を参照し、これまでに記憶されたレコードの動作情報に応じた自己位置をさかのぼるように機台20を自律走行させるべく駆動部65,66,67,68を制御する。
【0036】
駆動制御部124は、追尾走行モード、又は自律走行モードにおいて行動計画生成部122によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自律移動体10が通過するように、駆動部65,66,67,68を制御する。駆動制御部124は、行動計画生成部122により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。駆動制御部124は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、駆動部65,66,67,68を制御する。また、駆動制御部124は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、駆動部65,66,67,68を制御する。駆動制御部124による速度、及び操舵の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、駆動制御部124は、自律移動体10の前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0037】
また、駆動制御部124は、動作情報走行モードにおいて、動作情報走行モードが開始されるまでに記憶されたレコードの動作情報に応じた自己位置をさかのぼるように、駆動部65,66,67,68を制御する。詳しくは、駆動制御部124は、動作情報走行モードの開始が指示された場合、駆動部65,66,67,68を制御し、測域センサ40によりこれまで走行してきた経路の検出が可能なように、機台20を180度旋回させる。そして、駆動制御部124は、動作情報走行モードが開始されたタイミングの直前のレコードの動作情報が、右前方に、X[m]移動したことを示す場合、現在の位置から、左後方にX[m]移動するように、駆動部65,66,67,68を制御する。駆動制御部124は、例えば、動作情報走行モードが終了するまでの間、レコードを順にさかのぼって駆動部65,66,67,68を制御する。動作情報走行モードが終了するまでの間とは、例えば、自律移動体10の自己位置が、既学習範囲AR1に到達するまでの間である。
【0038】
更新部130は、自律移動体10の周囲に存在する物体のうち追尾対象者以外の物体を認識部60が認識した認識結果に基づいて、地図情報210を更新する。詳しくは、更新部130は、認識部60の認識結果のうち、未学習範囲AR2のうち、動作情報走行モードによって未学習範囲AR2を走行した際に、認識部60が認識した認識結果に基づく情報を、既学習範囲AR1に追加することによって地図情報210を更新する。更新部130の更新処理の詳細については、後述する。
【0039】
<センシング範囲Asについて>
図3において、直交するX,Y方向は、水平面を規定している。
図3に示す通り、センシング範囲Asは、例えば、自律移動体10の進行方向前方において、水平方向の所定角度の270°となる範囲である。各棚Raは、X方向に延びるように配置され、棚Ra1,Ra2の間には、通路70が区画形成されている。通路70はX方向に延びている。各棚Raには、部品が保管されている。そして、作業者M1は、通路70を歩行しつつ必要な部品を棚Raから取り出す作業を行う。
【0040】
<更新処理について>
図4に示すように、棚Ra1と棚Ra2との間には、通路70が区画形成され、棚Ra2と棚Ra3との間には、通路71が区画形成され、棚Ra4と棚Ra5との間には、通路72が区画形成され、棚Ra5と、棚Ra6との間には、通路73が区画形成される。この一例において、棚Ra1~Ra3及び通路70,71の範囲は、既学習範囲AR1であり、棚Ra4~Ra6及び通路72,73の範囲は、未学習範囲AR2である。
【0041】
図4において、作業者M1は、自律移動体10の払出場ARdから、自律移動体10を追尾走行モードによって走行を開始させ、自律移動体10は、追尾走行モードによって走行し、作業者M1を追尾する。作業者M1及び自律移動体10は、払出場ARdから通路71を移動する経路RT1と、既学習範囲AR1と未学習範囲AR2との境界の位置P1と、通路72と通路73とを移動する経路RT2とを経由して、棚Ra5,Ra6との間の位置P2まで移動する。
【0042】
作業者M1は、位置P2においてピッキング作業を行う。ここで、機台20には、作業者M1のピッキング作業に伴い、部品が積載できなくなる場合がある。この場合、自律移動体10が自律走行モードにより、自律的に払出場ARdまで戻ることが好ましいが、自律移動体10は、未学習範囲AR2を自律走行モードにより走行できない。作業者M1は、その場に残り作業を継続しつつ、自律移動体10を払出場ARdまで戻す場合には、位置P2において自律移動体10に動作情報走行モードの開始を指示する。自律移動体10は、動作情報走行モードによって位置P2から通路73と通路72とを移動する経路RT3を経由して位置P1まで走行する。位置P1(既学習範囲AR1)に到着後、自律移動体10は、自律走行モードにより払出場ARdまで走行する。
【0043】
上述したように、動作情報生成部80は、既学習範囲AR1以外の未学習範囲AR2を走行する際に、所定の時間間隔毎に動作情報を生成する。この場合、動作情報生成部80は、位置P1において、自律移動体10の自己位置が、既学習範囲AR1外の未学習範囲AR2であると判定する。したがって、動作情報生成部80は、経路RT2の走行を開始してから位置P2において、作業者M1が動作情報走行モードの開始を指示するまでの間、動作情報の生成処理を実行する。そして、動作情報生成部80は、動作情報を生成した時刻と、生成した動作情報とを対応付けたレコードに基づいて、動作履歴情報212を生成、又は更新する。
【0044】
この一例において、地図情報210に示される既学習範囲AR1以外の未学習範囲AR2の走行を開始した開始位置とは、位置P1である。また、目的地とは、作業者M1が自律移動体10に動作情報走行モードの開始を指示した位置P2である。また、開始位置から目的地までの往路とは、経路RT2である。
【0045】
自律移動体10は、動作情報走行モードを開始し、これまでに記憶された動作履歴情報212のレコードの動作情報に応じた自己位置をさかのぼるように機台20を自律走行させる。これにより、自律移動体10は、位置P2から通路73と通路72とを移動する経路RT3を経由して、位置P1まで移動する。この一例において、経路RT3は、目的地から開始位置までの復路とは、経路RT3である。
【0046】
なお、動作情報生成部80は、目的地から開始位置までの復路(つまり、経路RT3)を走行している間も、動作情報を生成してもよく、目的地において、動作情報を生成する処理を終了してもよい。以下、動作情報生成部80が、目的地において、動作情報を生成する処理を終了するものとする。
【0047】
上述したように、動作情報走行モードにおいて経路RT3を走行する場合、測域センサ40のセンシング範囲Asには、作業者M1が存在しない。したがって、動作情報走行モードにおいて、作業者M1は、測域センサ40の検出の障害とならない。これにより、認識部60は、自律移動体10の周囲に存在する物体の位置を精度よく認識することができる。更新部130は、動作情報走行モードにおいて自律移動体10が経路RT3を走行した際の認識結果であって、機台20の周囲に存在する物体のうち追尾対象者以外の物体を認識した認識結果に基づいて、地図情報210を更新する。
【0048】
更新部130は、例えば、動作情報走行モードにより経路RT3を走行し終えて、位置P1に到着したタイミングで、自律移動体10が経路RT3を走行した際に認識部60により認識された認識結果に基づいて、地図情報210を更新する。
図4において、自律移動体10が経路RT3を走行した際に認識部60により認識された範囲とは、例えば、通路72と、通路72から通路73までと、通路73のうち位置P2の周囲のまでの範囲AR3である。詳しくは、更新部130は、認識部60により認識された範囲AR3に存在する物体の位置の情報に基づいて、走行する範囲の構造を幾何学的に表した情報を生成する。更新部130は、生成した情報を既に記憶部200に記憶される地図情報210に追加することにより、地図情報210を更新する。
【0049】
なお、更新部130は、動作情報走行モードにより経路RT3を走行し終えることにより、認識部60が機台20の周囲に存在する物体のうち追尾対象者以外の物体を認識した後であれば、地図情報210を更新する処理をいずれのタイミングで行ってもよい。更新部130は、例えば、自律移動体10が動作情報走行モード後に実行される自律走行モードによる走行中、自律走行モードによって払出場ARdまで走行し停止した後、予め定められた地図情報210の更新タイミング等において、地図情報210を更新する処理を行ってもよい。
【0050】
図5に示すように、更新部130の更新処理後の地図情報210には、更新前の既学習範囲AR1に範囲AR3が追加された範囲AR1´が既学習範囲AR1として表される。
<動作フロー>
以下、第1実施形態における更新部130の更新処理の詳細について、フローチャートを用いて説明する。なお、
図6に示すフローチャートの処理とは別途、測域センサ40の検出結果に基づいて、認識部60が自律移動体10の周囲環境を認識する処理と、認識部60の認識結果、又は動作履歴情報212に基づいて、走行制御部120が駆動部65,66,67,68を制御する処理とが実行される。
【0051】
まず、動作情報生成部80は、追尾走行モードによる自律移動体10の走行が開始されたか否かを判定する(ステップS100)。動作情報生成部80は、追尾走行モードによる自律移動体10の走行が開始されるまでの間、待機する。動作情報生成部80は、追尾走行モードによる自律移動体10の走行が開始されたと判定した場合、認識部60の認識結果に基づいて、自律移動体10の自己位置が既学習範囲AR1内であるか否かを判定する(ステップS102)。動作情報生成部80は、自律移動体10が追尾走行モードによる走行中であっても、自律移動体10が既学習範囲AR1内に存在する間、待機する。
【0052】
動作情報生成部80は、追尾走行モードによる自律移動体10の走行が開始され、且つ自律移動体10の自己位置が既学習範囲AR1内ではない(つまり、未学習範囲AR2である)と判定した場合、動作情報生成部80の生成処理を開始する(ステップS104)。動作情報生成部80は、動作情報を生成した時刻と、生成した動作情報とを対応付けたレコードに基づいて、動作履歴情報212を生成、又は更新し、記憶部200に記憶させる。
【0053】
次に、認識部60は、作業者M1の指示に基づいて、動作情報走行モードよる自律移動体10の走行が開始されたか否かを判定する(ステップS106)。認識部60は、動作情報走行モードによる自律移動体10の走行が開始されたと判定した場合、認識結果の記憶を開始する(ステップS108)。認識部60は、認識結果を示す情報を、記憶部200や一時メモリ等のメモリ(不図示)に記憶させる。
【0054】
次に、認識部60は、動作情報走行モードによる自律移動体10の走行が開始された後、地図情報210と、認識結果とに基づいて、自律移動体10の自己位置が既学習範囲AR1内であるか否かを判定する(ステップS110)。認識部60は、自律移動体10の自己位置が既学習範囲AR1内であると判定されるまでの間、ステップS108の処理を繰り返す。更新部130は、認識部60により自律移動体10の自己位置が既学習範囲AR1内であると判定された場合、自律移動体10が開始位置まで到着したものとみなし、メモリに記憶された認識部60の認識結果に基づいて、地図情報210を更新する(ステップS112)。
【0055】
以上詳述した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1-1)自律移動体10は、機台20と、機台20を走行させる駆動部65,66,67,68と、機台20の移動量、及び機台20の回転角度を示す動作情報を生成する動作情報生成部80と、機台20の周囲に存在する物体を認識する認識部60と、駆動部65,66,67,68を制御する制御装置100と、を備える。制御装置100は、走行制御部120と、更新部130とを有する。走行制御部120は、追尾走行モード、自律走行モード、又は動作情報走行モードによって、駆動部65,66,67,68を制御する。走行制御部120は、追尾走行モードにおいて認識部60により認識された追尾対象者を追尾するように機台20を走行させるべく駆動部65,66,67,68を制御する。走行制御部120は、自律走行モードにおいて認識部60の認識結果と地図情報210とに基づいて機台20を自律走行させるべく駆動部65,66,67,68を制御する。走行制御部120は、動作情報走行モードにおいて、追尾走行モードで走行している間に動作情報生成部80により生成された動作情報に基づいて、地図情報210に示される既学習範囲AR1以外の未学習範囲AR2において機台20を自律走行させるべく駆動部65,66,67,68を制御する。更新部130は、機台20の周囲に存在する物体のうち追尾対象者以外の物体を動作情報生成部80が認識した認識結果に基づいて自律走行する範囲の地図情報210を更新する。
【0056】
かかる構成において、認識部60の認識結果は、未学習範囲AR2を走行する追尾走行モードにおいて、自律移動体10の制御に用いられるほか、メモリに記憶される。更新部130は、メモリに記憶された認識部60の認識結果に基づいて、地図情報210を更新する。これにより、作業者M1が未学習範囲AR2の内、既学習範囲AR1として拡張したい範囲を、追尾走行モードにおいて自律移動体10を追尾させながら歩行し、自律移動体10を誘導するだけで、更新部130は、地図情報210を更新することができる。したがって、自律移動体10は、所定の範囲内の走行に用いるアルゴリズムを用意したり、作業者M1による人力の移動を行ったりすることを要せずに、追尾走行させることにより、簡便に地図情報210を更新することができる。
【0057】
(1-2)自律移動体10は、進行方向前方に存在する物体を検出する第1検出部(この一例では、測域センサ40)を備える。動作情報生成部80は、地図情報210に示される既学習範囲AR1以外の未学習範囲AR2の走行を開始した開始位置から目的地までの往路(この一例では、経路RT2)において、動作情報を生成する。認識部60は、動作情報走行モードにおいて測域センサ40が検出した検出結果に基づいて、機台20の周囲に存在する物体のうち追尾対象者以外の物体を認識する。
【0058】
かかる構成において、更新部130は、動作情報走行モードにおいて復路(この一例では、経路RT3)を走行する際の測域センサ40の検出結果に基づく認識結果に基づいて、地図情報210を更新する。上述したように、動作情報走行モードにおいて走行する場合、測域センサ40のセンシング範囲Asには、作業者M1が測域センサ40の検出の障害とならない。したがって、認識部60は、追尾対象者以外の物体を精度よく認識することができる。これにより、更新部130は、より精度高く地図情報210を更新することができる。
【0059】
[第2実施形態]
以下、本発明を具体化した第2実施形態を、図面を用いて説明する。第2実施形態では、自律移動体10が第1測域センサ41と、第2測域センサ42との二つの測域センサ40を備える場合について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
<自律移動体10の構成について>
図7に示すように、本実施形態の自律移動体10は、第1測域センサ41と、第2測域センサ42との二つの測域センサ40を備える。機台20には第1測域センサ41及び第2測域センサ42が装着されている。本実施形態では、第1測域センサ41及び第2測域センサ42は、機台20の上面に固定されており、機台20の平面上における第1測域センサ41と第2測域センサ42との設置位置が、前方及び後方の180°異なる位置である。
【0061】
第1測域センサ41は、第1センシング範囲As1内に存在する物体までの距離を検出し、第2測域センサ42は、第2センシング範囲As2内に存在する物体までの距離を検出する。第1センシング範囲As1は、自律移動体10の進行方向前方において、水平方向の所定角度の270°の範囲であり、第2センシング範囲As2は、自律移動体10の進行方向後方において、水平方向の所定角度の270°の範囲である。本実施形態において、第1測域センサ41は、「第1検出部」の一例であり、第2測域センサ42は、「第2検出部」の一例である。
【0062】
なお、機台20の上面における第1測域センサ41と第2測域センサ42との設置位置は、第1センシング範囲As1と第2センシング範囲As2とを合わせた範囲が、自律移動体10の周囲を漏れなく網羅できていれば、前方及び後方の180°異なる位置以外の位置に固定されていてもよい。
【0063】
本実施形態の認識部60は、第1測域センサ41による検出結果と第2測域センサ42による検出結果とのうち、少なくとも一方に検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、及び自律移動体10の速度などを認識する。
【0064】
詳しくは、認識部60は、追尾走行モードによる走行の制御が実行されている場合、少なくとも第1測域センサ41による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、及び自律移動体10の速度などを認識する。また、認識部60は、追尾走行モードによる走行の制御が実行され、且つ自律移動体10の自己位置が未学習範囲AR2である場合、第1測域センサ41による検出結果と第2測域センサ42による検出結果との両方の検出結果に対してそれぞれセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、及び自律移動体10の速度などを認識する。この場合、第2測域センサ42による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、及び自律移動体10の速度などを認識した認識結果は、「機台20の周囲に存在する物体のうち追尾対象者以外の物体を認識部60が認識した認識結果」である。
【0065】
<更新処理について>
以下、第2実施形態における更新部130の更新処理について説明する。作業者M1は、自律移動体10の払出場ARdから、自律移動体10を追尾走行モードによって走行を開始させ、自律移動体10は、追尾走行モードによって走行し、作業者M1を追尾する。作業者M1及び自律移動体10は、払出場ARdから通路71を移動する経路RT1と、既学習範囲AR1と未学習範囲AR2との境界の位置P1と、通路72と通路73とを移動する経路RT2とを経由して、棚Ra5,Ra6との間の位置P2まで移動する。作業者M1は、位置P2においてピッキング作業を行う。
【0066】
上述したように、追尾走行モードにおいて走行する場合、第1測域センサ41の第1センシング範囲As1には、作業者M1が存在する。したがって、認識部60は、追尾走行モードにおける第1測域センサ41の検出結果において作業者M1が周囲環境の検出の障害となり、自律移動体10の周囲に存在する物体の位置を精度よく認識できない場合がある。これに伴い、更新部130は、開始地点から目的地までの往路(つまり、経路RT2)を走行した際に認識部60により認識された認識結果のうち、第2測域センサ42の検出結果に基づく認識結果に基づいて、地図情報210を更新する処理を行う。つまり、更新部130は、2つの認識結果のうち、作業者M1の影響を受けていない認識結果に基づいて、地図情報210を更新する。
【0067】
更新部130は、例えば、経路RT2を走行し終えて、位置P2に到着したタイミングで、認識部60により認識された認識結果に基づいて、地図情報210を更新する。
図8において、自律移動体10が経路RT2を走行した際に認識部60により認識された範囲とは、
図4において認識された範囲AR3と同様の範囲であるため、説明を省略する。
【0068】
なお、更新部130は、開始地点から目的地までの往路を走行し終えた後であれば、いつのタイミングに地図情報210を更新する処理を行ってもよい。更新部130は、例えば、自律移動体10が往路を走行し終えて払出場ARdまで走行し停止した後や、自律移動体10が復路を走行し終えた後や、復路を走行し終えてから次に停止するまでの間等に、地図情報210を更新する処理を行ってもよい。
【0069】
<動作フロー>
以下、第1実施形態における更新部130の更新処理の詳細について、フローチャートを用いて説明する。なお、
図9に示すフローチャートの処理とは別途、測域センサ40の検出結果に基づいて、認識部60が自律移動体10の周囲環境を認識する処理と、認識部60の認識結果、又は動作履歴情報212に基づいて、走行制御部120が駆動部65,66,67,68を制御する処理とが実行される。
【0070】
まず、認識部60は、行動計画生成部122の制御に基づいて、追尾走行モードによる自律移動体10の走行が開始されたか否かを判定する(ステップS200)。認識部60は、追尾走行モードによる自律移動体10の走行が開始されるまでの間、待機する。認識部60は、追尾走行モードによる自律移動体10の走行が開始された判定した場合、認識部60の認識結果に基づいて、自律移動体10の自己位置が既学習範囲AR1内であるか否かを判定する(ステップS202)。更新部130は、自律移動体10が追尾走行モードによる走行中であっても、自律移動体10が既学習範囲AR1内に存在する間、待機する。
【0071】
動作情報生成部80は、追尾走行モードによる自律移動体10の走行が開始され、且つ自律移動体10の自己位置が既学習範囲AR1内ではない(つまり、未学習範囲AR2である)と判定した場合、動作情報生成部80の生成処理を開始する(ステップS204)。動作情報生成部80は、動作情報を生成した時刻と、生成した動作情報とを対応付けたレコードに基づいて、動作履歴情報212を生成、又は更新し、記憶部200に記憶させる。
【0072】
認識部60は、追尾走行モードによる自律移動体10の走行が開始され、且つ自律移動体10の自己位置が既学習範囲AR1内ではない(つまり、未学習範囲AR2である)と判定した場合、認識結果の記憶を開始する(ステップS206)。認識部60は、例えば、認識結果のうち、第2測域センサ42の検出結果に基づく認識結果を示す情報を、記憶部200や一時メモリ等のメモリ(不図示)に記憶させる。
【0073】
次に、認識部60は、作業者M1の指示に基づいて、動作情報走行モードよる自律移動体10の走行が開始されたか否かを判定する(ステップS208)。動作情報走行モードによる自律移動体10の走行が開始されるまでの間、動作情報生成部80は、ステップS204の処理を繰り返し、認識部60は、ステップS206の処理を繰り返す。
【0074】
認識部60は、動作情報走行モードによる自律移動体10の走行が開始された後、地図情報210と、認識結果とに基づいて、自律移動体10の自己位置が既学習範囲AR1内であるか否かを判定する(ステップS210)。更新部130は、認識部60により自律移動体10の自己位置が既学習範囲AR1内であると判定された場合、自律移動体10が開始位置まで到着したものとみなし、メモリに記憶された認識部60の認識結果に基づいて、地図情報210を更新する(ステップS212)。
【0075】
以上詳述した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
(2-1)自律移動体10は、進行方向前方に存在する物体を検出する第1検出部(この一例では、第1測域センサ41)と、進行方向後方に存在する物体を検出する第2検出部(この一例では、第2測域センサ42)とを備える。認識部60は、追尾走行モードにおいて第2測域センサ42が検出した検出結果に基づいて、機台20の周囲に存在する物体のうち追尾対象者以外の物体を認識する。
【0076】
かかる構成において、更新部130は、第2測域センサ42に基づく認識結果に基づいて、地図情報210を更新する。上述したように、追尾走行モードにおいて走行する場合、第1測域センサ41の第1センシング範囲As1には、作業者M1が存在する。この場合、認識部60は、第1測域センサ41による作業者M1の検出が周囲環境の検出の障害となり、自律移動体10の周囲に存在する物体の位置を精度よく認識できない。一方、進行方向後方を検出する第2測域センサ42の第2センシング範囲As2には、作業者M1が存在しない、又は存在しても周囲環境の検出の障害の程度は少ない。したがって、更新部130によれば、作業者M1による影響がない、又は影響が少ない認識結果に基づいて、地図情報210を更新するため、より精度高く地図情報210を更新することができる。
【0077】
<更新部130の更新処理の別例>
なお、上述では、更新部130は、動作情報走行モードにより復路を走行した後に、地図情報210を更新する場合について説明したが、これに限られない。更新部130は、例えば、追尾走行モードにおいて、第2測域センサ42が検出した検出結果に基づいて、機台20の周囲に存在する物体のうち追尾対象者以外の物体を認識部60が認識した認識結果に基づいて、地図情報210を更新してもよい。この場合、更新部130は、例えば、往路を走行した後に、地図情報210の更新が可能となる。
【0078】
かかる構成によれば、更新部130は、往路と復路とを走行した後に地図情報210の更新を行う場合に比して、より短い時間で地図情報210を更新することができる。この場合、自律移動体10は、目的地の位置P2において更新後の地図情報210を用いることができるため、自律走行モードによって開始位置である位置P1及び位置P1以降の既学習範囲AR1を走行することができる。つまり、自律移動体10は、目的地以降の動作を多様にすることができる。
【0079】
また、認識部60は、ステップS208の処理において、動作情報走行モードよる自律移動体10の走行が開始された場合、認識結果を示す情報を記憶部200や一時メモリ等のメモリ(不図示)に記憶させる処理を終了してもくよく、動作情報走行モードにより復路を走行している間も、記憶させる処理を継続してもよい。復路を走行している間も認識結果を記憶させる処理を継続している場合、更新部130は、往路の認識結果と、復路の認識結果との両方に基づいて、地図情報210を更新してもよい。かかる構成によれば、更新部130は、一方の認識結果に基づいて地図情報210を更新する場合に比して、より精度高く地図情報210を更新することができる。
【0080】
[変形例1]
以下、上述した第1実施形態にかかる変形例1を、図面を用いて説明する。第1実施形態では、自律移動体10の自己位置が既学習範囲AR1内であると判定した場合、自律移動体10が開始位置まで到着したものとみなし、更新部130が地図情報210を更新する場合について説明した。変形例1では、自律移動体10が既学習範囲AR1に戻り、且つ戻り位置が開始位置であると判定した場合に、更新部130が地図情報210を更新する場合について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
<制御装置100の構成について>
図10に示す通り、変形例1の制御装置100は、制御部110に代えて、制御部111を備える。制御部111は、制御部110が備える構成に加えて、判定部140を備える。判定部140は、認識部60の認識結果に基づいて、往路と、復路とを走行した後、自律移動体10が開始位置に到着したか否かを判定する。
【0082】
変形例1の更新部130は、認識部60の認識結果と、地図情報210とに基づいて、認識結果の記憶が開始された位置を、未学習範囲AR2の走行の開始位置としてメモリに記憶させる。また、変形例1の更新部130は、判定部140の判定結果が開始位置に到着したことを示す場合、地図情報210を更新し、判定部140の判定結果が開始位置に到着したことを示さない場合、地図情報210を更新しない。
【0083】
<動作フロー>
以下、変形例1における更新部130の更新処理の詳細について、フローチャートを用いて説明する。なお、
図11に示すフローチャートの処理とは別途、測域センサ40の検出結果に基づいて、認識部60が自律移動体10の周囲環境を認識する処理と、認識部60の認識結果、又は動作履歴情報212に基づいて、走行制御部120が駆動部65,66,67,68を制御する処理とが実行される。また、
図11に示す処理のうち、
図6に示す処理と同様の処理については、同一のステップ符号を付して説明を省略する。
【0084】
変形例1のステップS104において、認識部60は、例えば、認識結果のうち、第2測域センサ42の検出結果に基づく認識結果を示す情報を、記憶部200や一時メモリ等のメモリ(不図示)に記憶する。また、更新部130は、認識部60の認識結果と、地図情報210とに基づいて、認識結果の記憶が開始された位置を、未学習範囲AR2の走行の開始位置としてメモリに記憶させる。
【0085】
判定部140は、ステップS110の処理において、自律移動体10の自己位置が既学習範囲AR1内であると判定された場合、自律移動体10の自己位置がステップS104において記憶された開始位置であるか否かを判定する(ステップS300)。更新部130は、判定部140により自律移動体10の自己位置が開始位置ではないと判定された場合、地図情報210を更新せず、メモリに記憶した認識部60の認識結果を破棄する(ステップS302)。更新部130は、判定部140により自律移動体10の自己位置が開始位置であると判定された場合、メモリに記憶された認識部60の認識結果に基づいて、地図情報210を更新する(ステップS304)。
【0086】
以上詳述した変形例1によれば以下の効果を奏する。
(3-1)変形例1の制御部111は、制御部110の構成に加えて、判定部140を更に備える。判定部140は、認識部60の認識結果に基づいて、往路と、復路とを走行した後、開始位置に到着したか否かを判定する。更新部130は、判定部140の判定結果が開始位置に到着したことを示す場合、地図情報210を更新し、判定部140の判定結果が開始位置に到着したことを示さない場合、地図情報210を更新しない、
かかる構成において、更新部130は、判定部140の判定結果が、未学習範囲AR2から既学習範囲AR1に戻った自律移動体10の自己位置が、未学習範囲AR2の走行を開始した開始位置ではないと判定した場合には、地図情報210を更新しない。
【0087】
ここで、作業者M1は、既学習範囲AR1の開始位置から未学習範囲AR2の目的地までの間を、自律移動体10を追尾走行モードによって往復させる際、往路と復路とで異なる経路を移動する場合がある。この場合、認識部60が往路において認識した認識結果と、復路において認識した認識結果とが異なる経路の認識結果となるため、更新部130が地図情報210を更新することは好ましくない。
【0088】
これに伴い、判定部140は、往路と復路とを走行した後、自律移動体10の自己位置が開始位置であることを判定し、変形例1の更新部130は、判定部140の判定結果が開始位置に到着したことを示す場合に、地図情報210を更新する。つまり、更新部130は、往路において取得された認識結果と、復路において取得された認識結果とが一致、又は略一致である場合に、地図情報210を更新する。したがって、自律移動体10は、より精度高く地図情報210を更新することができる
上記各実施形態は以下のように変更してもよい。なお、上記実施形態及び以下の各別例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせてもよい。
【0089】
〇認識部60や動作情報生成部80は、位置P2において動作情報走行モードの開始が指示されたことに伴い、認識結果の記録や動作情報走行モードの生成を開始する場合について説明したが、これに限られない。認識部60や動作情報生成部80は、目的地としての位置P2に到着したことに伴い、認識結果の記録や動作情報走行モードの生成を開始してもよい。この場合、認識部60や動作情報生成部80は、追尾走行モードによる走行中に、作業者M1がピッキング作業に伴い停止することにより、自律移動体10の停止状態が所定の時間以上継続した場合、作業者M1により、自律移動体10の操作部に対して停止を指示する操作が行われた場合等に、目的地に到着したと判定する。
【0090】
〇認識部60は、測域センサ40の検出結果をそのまま走行制御部120や更新部130に出力してよい。この場合、自律移動体10から認識部60が省略されてもよい。
〇測域センサ40に代えて(或いは、加えて)、カメラやレーダ装置が用いられてもよい。この場合、カメラは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラは、自律移動体10の任意の箇所に取り付けられる。カメラは、例えば、周期的に繰り返し自律移動体10の周囲を撮像する。カメラは、ステレオカメラであってもよい。また、レーダ装置は、自律移動体10の周囲にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置は、自律移動体10の任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0091】
〇認識部60は、動作情報に代えて(或いは、加えて)、測域センサ40による検出結果に基づいて、自律移動体10の自己位置を認識してもよい。
○
図4ではセンシング範囲Asが扇形である場合について説明したが、これに限られない。例えば、測域センサ40のセンシング範囲Asに指向性が存在する場合、センシング範囲Asは、当該指向性の方向に突出した形状であってもよい。
【0092】
○自律移動体10は全方向移動車両の例を示したが、これに限るものではなく、4輪オムニホイール車両以外の4輪車両等の他の車両であってもよい。
【符号の説明】
【0093】
10…自律移動体、20…機台、30、31、32、33…車輪、40…測域センサ、41…第1測域センサ、42…第2測域センサ、60…認識部、61、62、63、64…モータ、65、66、67、68…駆動部、80…動作情報生成部、100…制御装置、110、111…制御部、120…走行制御部、122…行動計画生成部、124…駆動制御部、130…更新部、140…判定部、150…生成部、200…記憶部、210…地図情報、AR1…既学習範囲、AR2…未学習範囲、AR3…範囲、ARd…払出場、As…センシング範囲、As1…第1センシング範囲、As2…第2センシング範囲、M1…作業者、P1、P2…位置、RT1、RT2、RT3…経路。