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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 45/10 20180101AFI20240214BHJP
   F21S 45/30 20180101ALI20240214BHJP
   F21S 41/50 20180101ALI20240214BHJP
   F21S 43/50 20180101ALI20240214BHJP
   F21V 31/03 20060101ALI20240214BHJP
   F21W 102/10 20180101ALN20240214BHJP
   F21W 103/20 20180101ALN20240214BHJP
   F21W 103/45 20180101ALN20240214BHJP
   F21W 102/30 20180101ALN20240214BHJP
【FI】
F21S45/10
F21S45/30
F21S41/50
F21S43/50
F21V31/03 200
F21W102:10
F21W103:20
F21W103:45
F21W102:30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021018277
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2022121109
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 泰佑
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-056909(JP,U)
【文献】特開2003-051212(JP,A)
【文献】特開平03-136938(JP,A)
【文献】特開平09-007404(JP,A)
【文献】特開2010-067524(JP,A)
【文献】特開2017-162737(JP,A)
【文献】特開2020-053114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 45/10
F21S 45/30
F21S 41/50
F21S 43/50
F21V 31/03
F21W 102/10
F21W 103/20
F21W 103/45
F21W 102/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ部とハウジングとを有する筐体内に発光部と反射板が収容されている車両用灯具であって、
前記反射板は、前記発光部の周囲に配置され、
前記レンズ部は、前記発光部と前記反射板からの光の照射方向に配置され、
前記ハウジングは、前記発光部と前記反射板に対して前記レンズ部とは反対側に配置され、前記ハウジングには前記筐体の内部と外部を連通する呼吸穴が設けられており、
前記照射方向から前記車両用灯具を見た場合、前記ハウジングにおける前記筐体内の面であって少なくとも前記発光部と前記反射板に隠れる位置に、水蒸気の透過を防止する非透湿膜が形成されている、
車両用灯具。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用灯具であって、
前記非透湿膜は、所定の金属を蒸着させた金属膜である、
車両用灯具。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用灯具であって、
前記筐体内には、前記筐体内を装飾する部材としてのエクステンションが配置されており、
前記照射方向から前記車両用灯具を見た場合、前記ハウジングにおける前記筐体内の面であって少なくとも前記発光部と前記反射板と前記エクステンションに隠れる位置に、前記金属膜が形成されている、
車両用灯具。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用灯具であって、
前記ハウジングの一部が、前記エクステンションの一部となる形状をなし、当該形状をなした箇所における前記照射方向の側の面に前記金属膜が形成されることで、前記エクステンションの一部とされている、
車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などに設置される車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドライトやテールライト等の車両用灯具に対する曇りを防ぐ技術が知られている。特に、光源の光が透過するレンズ(筐体の一部を形成)の内壁面に曇りが発生するのを防止するため、内壁面に防曇塗装を行うのに加え、筐体に呼吸穴を設けて空気の流れを作り灯具の筐体内に空気が滞らないようにする等している。例えば特許文献1では、筐体内外を連通する呼吸穴の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-103381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の防曇塗装や呼吸穴の設置をもってしても、外気の湿度の影響により、依然としてレンズの内壁面が曇る場合があった。レンズの内壁面に曇りが続き結露にまで及んでしまうと、液だれが起こって見栄えも悪くなるうえ、筐体の内側のためふき取ることも困難である。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、レンズの内壁面の曇りや結露を抑制することができる車両用灯具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の第1の発明は、レンズ部とハウジングとを有する筐体内に発光部と反射板が収容されている車両用灯具であって、前記反射板は、前記発光部の周囲に配置され、前記レンズ部は、前記発光部と前記反射板からの光の照射方向に配置され、前記ハウジングは、前記発光部と前記反射板に対して前記レンズ部とは反対側に配置され、前記ハウジングには前記筐体の内部と外部を連通する呼吸穴が設けられており、前記照射方向から前記車両用灯具を見た場合、前記ハウジングにおける前記筐体内の面であって少なくとも前記発光部と前記反射板に隠れる位置に、水蒸気の透過を防止する非透湿膜が形成されている、車両用灯具である。
【0007】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る車両用灯具であって、前記非透湿膜は、所定の金属を蒸着させた金属膜である、車両用灯具である。
【0008】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係る車両用灯具であって、前記筐体内には、前記筐体内を装飾する部材としてのエクステンションが配置されており、前記照射方向から前記車両用灯具を見た場合、前記ハウジングにおける前記筐体内の面であって少なくとも前記発光部と前記反射板と前記エクステンションに隠れる位置に、前記金属膜が形成されている、車両用灯具である。
【0009】
次に、本発明の第4の発明は、上記第3の発明に係る車両用灯具であって、前記ハウジングの一部が、前記エクステンションの一部となる形状をなし、当該形状をなした箇所における前記照射方向の側の面に前記金属膜が形成されることで、前記エクステンションの一部とされている、車両用灯具である。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、外気の水蒸気がハウジングを透過して筐体内に侵入するのを非透湿膜により防ぎつつ、呼吸穴による筐体内の喚起がなされるため、曇りの原因となる水蒸気が筐体内に滞ることがなくなる結果、レンズ部の内壁面の曇りを抑制することができる。さらに、筐体内に侵入する水蒸気の量が減る分、現状の仕様で必要とされる呼吸穴の数や径について減らすあるいは小さくすることができるため、車両用灯具の設計の自由度を高めることができる。
【0011】
第2の発明によれば、現状の反射板(リフレクタ)に施されている金属膜(例えばアルミや銀等の蒸着によるもの)を非透湿膜として用いればよく、好適である。
【0012】
第3の発明によれば、エクステンションに隠れる位置に金属膜を形成した場合、その光沢感により、照射方向から車両用灯具を見た場合に予定していた意匠を損なうことはない。
【0013】
第4の発明によれば、筐体内部の樹脂部品としてのエクステンションを削減することができるため、水蒸気を吸収した樹脂部品から放出される水蒸気の量が抑えられる結果、よりレンズ部の内壁面の曇りを抑制することができる。また、部品削減によるコスト低減が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係る車両用灯具の断面模式図である。
図2図1において点線Aで囲われた領域の拡大図である。
図3】第2の実施形態に係る車両用灯具の断面模式図である。
図4】第3の実施形態に係る車両用灯具の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〈第1の実施形態〉
以下、本発明の一実施形態に係る車両用灯具10について説明する。図1に示すように、車両用灯具10は、レンズ部2とハウジング1から構成される筐体8内(灯室3)に発光部4aと反射板4bが収容されている。つまり、ハウジング1の前面開口部をレンズ部2で覆っており、その結果、灯室3が形成され、灯室3には、ランプユニット4が収容される。
【0016】
ランプユニット4は、発光部4aと、反射板4bとを備える。反射板4bは、発光部4aの周囲に配置され、発光部4aから照射された光を矢印で示す方向に反射し、これが光の照射方向4Sとなる。なお、発光部4aは、例えば、ハロゲンランプ(電球)、HID、LED等からなり、反射板4bの搭載部に固定される。
【0017】
光の照射方向4Sをもとにレンズ部2とハウジング1の位置関係を説明すると、レンズ部2は、発光部4aと反射板4bからの光の照射方向4Sに配置されている。ハウジング1は、発光部4aと反射板4bに対してレンズ部2とは反対側に配置されている。ハウジング1には筐体8の内部である灯室3と外部を連通する呼吸穴5が設けられている。呼吸穴5は、灯室3と車両用灯具10の外部との空気を流動させ、灯室3に水蒸気を滞らないように調湿を行い、曇りが発生することを防止している。
【0018】
呼吸穴5に加え、車両用灯具10においては、レンズ部2の内壁面2aの曇りを防止するため、防曇塗装もなされている。具体的には、レンズ部2の内壁面2aに防曇塗装を行うことで、仮に内壁面2aに水滴が付着したとしても水膜に変えることで曇りにならない効果を奏している。
【0019】
ただ、このようなレンズ部2の内壁面2aに対する防曇塗装や呼吸穴5の設置をもってしても、外気の湿度の影響により、依然としてレンズ部2の内壁面2aが曇る場合があった。具体的には、ハウジング1は、樹脂で構成されているが、現状一般的に用いられている樹脂の材質によれば、外気の水蒸気がハウジング1を透過して灯室3に入ってくる。その結果、呼吸穴5による調湿が追い付かず、レンズ部2の内壁面2aに曇りが発生していた。
【0020】
そこで、車両用灯具10においては、光の照射方向4Sから車両用灯具10を見た場合、ハウジング1における筐体8内の面であって少なくとも発光部4aと反射板4bに隠れる位置に、水蒸気の透過を防止する金属膜6が形成されている。つまり、ハウジング1における灯室3側の全面にアルミ蒸着による金属膜6を形成している。金属膜6について説明すると、そもそも、反射板4bに対しては、光を反射する特性を持たせるため、その反射面には主としてアルミを蒸着させた金属膜が施されているが(図示せず)、これと同じ処理をハウジング1における灯室3内側の全面に施したものである。
【0021】
これにより、外気の水蒸気がハウジング1を透過することを抑制するため、レンズ部2の内壁面2aの曇りを抑制することができる。具体的には、図2は、図1において点線Aで囲われた領域の拡大図であるが、図2に示すように、外気の水蒸気7は、ハウジング1は透過しても、金属膜6は透過しない。よって、ハウジング1の灯室3側の面に金属膜6を形成しない場合と比較して、灯室3の水蒸気量が減ることになるので、呼吸穴5による換気が十分に行われさえすれば、灯室3に水蒸気が滞ることはない。また、仮に内壁面2aに水滴が付着したとしても、レンズ部2の内壁面2aの防曇塗装により水滴は水膜に変わるため、これらが曇りとして発生することはない。
【0022】
なお、本実施形態では、非透湿膜としてアルミを蒸着させた金属膜を例に挙げたが、非透湿膜であればその他の金属膜、無機膜、有機膜でもよい。また、本実施形態では、ハウジング1における灯室3側の全面に金属膜6を形成したが、発光部4aの光の照射方向4Sから車両用灯具10を見た場合、ハウジング1における筐体8内の面であって発光部4aと反射板4bに隠れる位置に形成してもよい。これにより、車両用灯具10の外観については何ら変化させることなく、レンズ部2の内壁面2aの曇りを抑制することができる。
【0023】
〈第2の実施形態〉
続いて、本発明の第2の実施形態に係る車両用灯具20について説明する。本実施形態に係る車両用灯具20は、実施形態1と異なり、エクステンション21が配置されている点が特徴である。なお、実施形態1にてすでに説明した事項については適宜説明を省略する。
【0024】
車両用灯具20は、第1の実施形態で説明した構成に加え、筐体8内を装飾する部材としてのエクステンション21を備える。エクステンション21は、車両用灯具20の正面からの見栄えを向上させるために用いられる部品であり、ハウジング1自体や、灯室3に設置された基盤などが見えないように、これらを覆い隠すように配置される。なお、エクステンション21は、実際にはハウジング1もしくはレンズ部2に取り付けられる、あるいは、両者の間に挟まれることで固定されるものであるが、図面上では模式的に表している。
【0025】
エクステンション21は、ハウジング1と同様、樹脂で構成されているが、素材の色をそのまま活かすところもあれば、意匠性を高めるため一部または全部にアルミ蒸着による金属膜を設け、金属の光沢感を出すところもある。例えば、上部のエクステンション21aは、車両用灯具を正面から見た場合に、全部がアルミ蒸着による金属膜が設けられている。一方、下部のエクステンション21b、21cは、部分的に金属膜が設けられており、その他の部分については樹脂がむき出しになっており、素材の色がそのまま活かされている。
【0026】
つまり、エクステンション21を有する車両用灯具20の場合、エクステンション21の存在を考慮せずにアルミ蒸着による金属膜6を形成すると、エクステンション21の隙間から予定外の光沢感が見えてしまうことになり、予定された意匠に影響を及ぼし兼ねない。
【0027】
また、灯室3にエクステンション21のような樹脂部品が数多く存在すると、樹脂の吸湿性によりそれだけ灯室3の水蒸気量が多くなり、曇りの原因になり得る。
【0028】
そこで、車両用灯具20においては、発光部4aの光の照射方向4Sから車両用灯具20を見た場合、ハウジング1における灯室3側の面であって少なくとも発光部4aと反射板4bとエクステンションに隠れる位置に、金属膜6を形成している。具体的には、ハウジング1において、エクステンション21aに覆い隠されていない面22については、金属膜6を形成せず、残りの面は金属膜6を形成している。
【0029】
これにより、照射方向4Sから車両用灯具20を見た場合に、金属膜6の光沢感が、エクステンション21により予定していた意匠を損なうことはない。また、外気の水蒸気がハウジング1を透過することを抑制するため、金属膜6を形成しない場合と比較して、エクステンション21に吸収される水蒸気の総量も低減する。その結果、灯室3の水蒸気量が減ることになるので、レンズ部2の内壁面2aの曇りを抑制することができる。
【0030】
〈第3の実施形態〉
続いて、本発明の第3の実施形態に係る車両用灯具30について説明する。本実施形態に係る車両用灯具30は、実施形態2と異なり、ハウジング31の一部がエクステンション21と兼用されている点が特徴である。なお、実施形態1、2にてすでに説明した事項については適宜説明を省略する。
【0031】
本実施形態に係る車両用灯具30においては、ハウジング31の一部が、前記エクステンション21の一部となる形状をなし、当該形状をなした箇所における照射方向4Sの側の面32に金属膜6が形成されることで、エクステンション21dとしても兼用されている。つまり、第2の実施形態に係る車両用灯具20におけるエクステンション21aに、ハウジング31の一部を代用している。
【0032】
エクステンション21とハウジング31に形成された金属膜6は、それぞれ同じアルミ蒸着によるものである。ハウジング31に金属膜6を設けた主目的は、上述したように外気の水蒸気がハウジング31を透過することを抑制することであるが、その金属膜6により生じた光沢感と、エクステンション21で与えられる意匠としての光沢感とは、実質同じものである。そこで、金属膜6が形成されたハウジング31を隠すのではなく、むしろ積極的に見せて、車両用灯具30に係る意匠の一部として構成することとしている。
【0033】
これにより、灯室3のなかの樹脂部品としてのエクステンション21aを削減することができるため、樹脂部品から放出される水蒸気の量が抑えられる結果、よりレンズ部2の内壁面2aの曇りを抑制することができる。また、部品削減によるコスト低減が期待できる。
【0034】
本発明の車両用灯具10、20、30は、本実施の形態で説明した外観、構成、構造等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、非透湿膜としては、金属膜のほか、有機膜、無機膜などを使用できる。
【0035】
また、金属膜としては、アルミのほか、銀等、種々の金属の蒸着によるものを適用できる。さらに、本発明の車両用灯具は、ヘッドライト、テールライト、ウインカー、フォグランプなど、車両の種々の灯具に適用できる。また、灯室3における光の照射方向4Sから見えない位置に乾燥剤を配置してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 ハウジング
2 レンズ部
2a 内壁面
3 灯室
4 ランプユニット
4a 発光部
4b 反射板
5 呼吸穴
6 金属膜
7 水蒸気
8 筐体
10 車両用灯具
20 車両用灯具
21 エクステンション
22 面
30 車両用灯具
31 ハウジング
32 面
図1
図2
図3
図4