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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20240214BHJP
   B60K 35/00 20240101ALI20240214BHJP
【FI】
G09F9/00 346A
B60K35/00 Z
G09F9/00 309A
G09F9/00 350Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021062645
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2022158032
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼西 雄大
【審査官】川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-180052(JP,A)
【文献】国際公開第2014/065064(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0212549(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0015909(KR,A)
【文献】特開2016-024334(JP,A)
【文献】特開2007-058180(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0185102(US,A1)
【文献】特開2021-033056(JP,A)
【文献】特開2012-047838(JP,A)
【文献】特開2000-148031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K35/00-37/06
B60R1/00-1/04
1/08-1/31
G02F1/133-1/1334
1/1339-1/1341
1/1347
G09F9/00
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H05K5/00-5/06
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性の透明カバー(2)と、
各種の映像を表示可能な表示パネル(3)と、
前記透明カバーが取り付けられる筐体(5)と、
前記透明カバーと前記筐体とを接着する接着材(4)と、
前記表示パネルの駆動制御用の回路部を有する回路基板(7)と、
前記表示パネルと前記回路基板とを繋ぐ配線(6)と、
前記回路基板のうち少なくとも前記回路部を覆うガイドケース(8)と、備え、
前記表示パネルは、前記透明カバーと前記筐体との間に配置されており、
前記筐体は、前記回路基板および前記回路基板に取り付けられた前記ガイドケース、または前記回路基板が収納された前記ガイドケースが通過可能な幅とされた開口部(51)を有しており、
前記配線は、前記開口部を通ると共に、前記表示パネルのうち前記映像を表示する側の面を表示面(3a)として、前記表示面の側から見て、前記筐体の外郭内側に配置されている、表示装置。
【請求項2】
前記筐体は、前記表示パネルの側の面である表面(5a)が湾曲形状となっており、
前記透明カバーおよび前記表示パネルは、可撓性を有すると共に、前記表面の湾曲形状に追従した状態で取り付けられており、
前記接着材は、前記表示面から見たときの前記透明カバーの外郭に沿った枠体状である、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記ガイドケースは、前記回路基板の少なくとも一部が挿入されることが可能な収納部(81)を有する、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記ガイドケースは、前記回路基板の全部が前記収納部に挿入されており、
前記配線のうち前記回路基板に接続されている部分は、前記ガイドケースに覆われている、請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記開口部の内郭は、前記ガイドケースを前記収納部の開口部分から見たときの外郭の形状に沿った形状となっている、請求項3または4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記筐体は、前記表示パネルの側の面を表面(5a)とし、前記表面の反対面を裏面(5b)として、前記裏面が湾曲面となっており、
前記ガイドケースは、前記裏面に取り付けられると共に、前記裏面に取り付けられる取付面が前記裏面に追従した湾曲面である、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項7】
前記ガイドケースは、前記筐体に取り付けられた状態において、一部が前記開口部を塞ぐ蓋部(84)となっている、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の表示装置。
【請求項8】
前記ガイドケースは、前記回路基板のうち前記回路部を有する一面に取り付けられ、前記回路部を覆う蓋材である、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項9】
前記ガイドケースは、前記配線のうち前記回路基板に接続されている部分を覆っている、請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記開口部の内郭は、前記ガイドケースが取り付けられた前記回路基板の外郭であって、前記ガイドケースが取り付けられた部分の断面形状に沿った形状となっている、請求項8または9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記ガイドケースは、前記回路基板に接続固定するための爪部(85)を有する、請求項10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記ガイドケースは、導電性を有する金属材料または樹脂材料を含み、全体として導電性を有する構成とされ、ノイズシールド材としても機能する、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス等の透明部材と、透明部材が取り付けられる筐体と、透明部材と筐体との間に配置される表示パネルと、表示パネルの駆動制御用の回路を有する基板とを備える表示装置が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の表示装置は、光透過性の光透過板またはタッチパネルと、液晶パネルと、液晶パネルの駆動制御用の回路を有する回路基板と、筐体とを備える。この表示装置は、筐体内に設けられた空間に回路基板が収納されると共に、筐体の凹部に液晶パネルおよび光透過性の部材が取り付けられ、液晶パネルが光透過性の部材に覆われた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-138257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、近年、この表示装置の分野においては、薄型化や軽量化のニーズがあり、光透過性の部材、表示パネル、筐体などの構成部品の薄肉化や部品点数の削減が検討されている。特許文献1に記載の表示装置は、部品点数が多く、上記のニーズに対応することが難しい上、組み付けが複雑になり、歩留まりが低くなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明者らは、筐体を表示パネルの駆動制御用の回路基板を収納する空間を有しない薄肉構成とし、当該回路基板を筐体の外部に配置した構造の表示装置を考案した。
【0007】
しかしながら、この場合、部品点数を削減でき、全体として薄型化できる一方、表示装置のうち映像が表示される側の面を表示面として、表示面側から見て、表示パネルと回路基板とを繋ぐ配線が筐体の外部にはみ出した状態となり、外観が悪くなってしまう。また、回路基板が筐体の外部に配置されるため、各構成部品の組み付け工程において、回路基板のうち表示パネルの駆動制御用の回路部分に傷が付くおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑み、薄型化および表示面から見たときの外観の良好性を両立しつつも、組み付けにおける回路基板の回路部分に傷が生じることを抑制可能な構造の表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の表示装置は、光透過性の透明カバー(2)と、各種の映像を表示可能な表示パネル(3)と、透明カバーが取り付けられる筐体(5)と、透明カバーと筐体とを接着する接着材(4)と、表示パネルの駆動制御用の回路部を有する回路基板(7)と、表示パネルと回路基板とを繋ぐ配線(6)と、回路基板のうち少なくとも回路部を覆うガイドケース(8)と、備え、表示パネルは、透明カバーと筐体との間に配置されており、筐体は、回路基板および回路基板に取り付けられたガイドケース、または回路基板が収納されたガイドケースが通過可能な幅とされた開口部(51)を有しており、配線は、開口部を通ると共に、表示パネルのうち映像を表示する側の面を表示面(3a)として、表示面の側から見て、筐体の外郭内側に配置されている。
【0010】
これにより、透明カバーと筐体との間に表示パネルが配置され、表示パネルの駆動制御用の回路基板が筐体のうち表示パネルとは反対側の裏面に配置されると共に、筐体の開口部に表示パネルと回路基板とを繋ぐ配線が通された構成の表示装置となる。そのため、筐体には回路基板の収納部分が不要となり、薄肉化されると共に組み付けが容易な構成となる。また、表示パネルと回路基板とを繋ぐ配線が筐体の開口部を通ることで、映像が表示される表示面から見て、配線が筐体の外郭外側にはみ出すことがなくなり、外観が良好となる。さらに、この表示装置は、回路基板のうち駆動制御用の回路部がガイドケースにより覆われているため、組み付けの際に、当該回路部に傷が付くことが抑制され、製造時の歩留まりが向上する構造となっている。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の表示装置を示す断面図である。
図2】第1実施形態の表示装置の構成要素を示す分解斜視図である。
図3】回路基板を収納するガイドケースの一例を示す斜視図である。
図4A】第1実施形態の表示装置の製造方法のうち第1工程を示す図である。
図4B図4Aに続く工程を示す図である。
図4C図4Bに続く工程を示す図である。
図4D図4Cに続く工程を示す図である。
図4E図4Dに続く工程を示す図である。
図5】ガイドケースの外郭とこれに対応する筐体の開口部の一例を示す図である。
図6A】第1実施形態の表示装置に係るガイドケースの他の変形例を示す断面図である。
図6B図6Aのガイドケースを用いた表示装置の変形例を示す断面図である。
図7A】第1実施形態の表示装置に係るガイドケースの他の1つの変形例を示す図である。
図7B図7Aのガイドケースを用いた表示装置の変形例を示す断面図である。
図8】第2実施形態の表示装置を示す断面図である。
図9】第2実施形態の表示装置に係るガイドケースおよび回路基板を示す分解斜視図である。
図10】第2実施形態の表示装置に係るガイドケースの変形例を示す図である。
図11】第3実施形態の表示装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態の表示装置1について、図1図3を参照して説明する。本実施形態の表示装置1は、例えば、自動車等の車両に搭載される車両用表示装置として適用されると好適であるが、勿論、他の用途にも適用されうる。
【0015】
図1では、後述する筐体5の構成を分かり易くするため、図1の別断面に位置する支持部52の外郭を破線で示している。図2では、構成を分かり易くするため、断面を示すものではないが、後述する接着材4にハッチングを施している。図3では、後述するガイドケース8の構成および回路基板7の収納状態を分かり易くするため、ネジ82とこれに対応するネジ穴83、および回路基板7と収納部81を破線で繋ぐと共に、回路基板7の回路部等を省略している。
【0016】
〔基本構成〕
本実施形態の表示装置1は、例えば図1に示すように、透明カバー2と、表示パネル3と、接着材4と、筐体5と、配線6と、回路基板7と、ガイドケース8とを備える。表示装置1は、透明カバー2が接着材4によって筐体5に取り付けられ、表示パネル3が透明カバー2と筐体5との間に配置されている。表示装置1は、本実施形態では、表示パネル3のうち各種映像を表示する側の面である表示面3aが曲面となっている曲面表示装置である。表示装置1は、例えば図2に示すように、筐体5が開口部51を有し、表示パネル3と回路基板7とを接続する配線6が開口部51を通る状態で組み付けられた構成となっている。表示装置1は、回路基板7の一部または全部がガイドケース8に収納されると共に、回路基板7およびガイドケース8が、筐体5のうち表示パネル3側の表面5aとは反対側の裏面5bに配置されている。
【0017】
透明カバー2は、例えば、光透過性および可撓性のある任意の樹脂材料によりなるフィルムまたはガラスにより構成される透明部材である。透明カバー2は、接着材4により筐体5に取り付けられ、表示パネル3を保護している。透明カバー2は、例えば、限定するものではないが、0.7mm以下の薄膜ガラスとされ、筐体5のうち表示パネル3側の面である表面5aに追従した湾曲形状となっている。本実施形態では、透明カバー2が薄膜ガラスである場合を代表例として説明する。
【0018】
透明カバー2は、例えば、図示しないOCA(Optical Clear Adhesiveの略)やOCR(Optical Clear Resinの略)などの光学接着剤により表示パネル3が貼り付けられている。透明カバー2は、例えば、筐体5に取り付けられる前には平板形状をなしており、接着材4により筐体5に取り付けられることで、表示パネル3と共に、筐体5に追従して湾曲した曲面形状のまま保持されている。
【0019】
表示パネル3は、例えば、有機発光ダイオード(OLED)のような自発光素子により個々の画素が構成され、図示しない薄膜トランジスタ(TFT)により各画素の発光制御がなされる自発光型のパネルである。表示パネル3は、本実施形態では、可撓性を有するフレキシブルディスプレイであり、透明カバー2と向き合う面である表示面3aに各種映像を表示可能となっている。表示パネル3は、例えば、フレキシブルな樹脂基板上にOLEDおよびその駆動制御用のTFTが形成されてなるOLEDパネルであり、配線6を介してTFTの駆動制御等が可能な図示しない回路部を有する回路基板7に接続されている。
【0020】
なお、フレキシブルなOLEDパネルについては公知であるため、本明細書では、これらについての詳細な説明を省略する。本実施形態の表示装置1は、「OLED表示装置」や「有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置」などと称され得る。また、表示パネル3と筐体5との間に、熱伝導率が所定以上の図示しない放熱剤が配置されていてもよい。
【0021】
接着材4は、例えば、アクリル系などの任意の接着性樹脂材料によりなり、透明カバー2と筐体5とを接着している。接着材4は、例えば、透明カバー2の外郭に沿った枠体状に配置され、透明カバー2あるいは筐体5にシリンジ等を用いて塗布される。
【0022】
筐体5は、透明カバー2、表示パネル3、回路基板7およびガイドケース8が取り付けられ、これらを支持する支持体であり、例えば、任意の樹脂材料あるいは樹脂材料と金属材料との複合体などで構成される。筐体5は、例えば図1に示すように、表示パネル3の側の面を表面5aとし、その反対面を裏面5bとして、表面5aが湾曲した曲面をなしており、透明カバー2および表示パネル3を湾曲形状のまま保持している。
【0023】
筐体5は、例えば図2に示すように、表面5a側から見て、湾曲した長方形状とされ、長手方向の一辺に沿った開口部51が形成されている。筐体5の開口部51は、表示装置1の製造工程において、ガイドケース8に収納された回路基板7を表面5a側から裏面5b側に通すために設けられた貫通孔である。その結果、筐体5の開口部51は、表示パネル3と回路基板7とを繋ぐ配線6が通された状態となっている。これにより、表示パネル3の表示面3a側から表示装置1を見たとき、筐体5の外郭外側に配線6を含む他の構成部品が配置されず、表示装置1の外観が良好となる。なお、筐体5への透明カバー2および表示パネル3の取り付けについては、後述する。
【0024】
筐体5は、裏面5bに回路基板7を保持したガイドケース8がネジ止め等の任意の方法で取り付けられている。言い換えると、筐体5は、内部に回路基板7を収納するための空間を有しておらず、薄肉化されると共に、部品点数が少ない構成となっている。筐体5は、例えば、裏面5bも表面5aに追従した曲面形状とされると共に、裏面5bから突出する支持部52が設けられている。支持部52は、例えば、透明カバー2および表示パネル3の組み付け工程において筐体5を支えたり、表示装置1を他の部材、装置や車両等に取り付けたりするための部位である。支持部52の数や形状、配置等については適宜変更されてもよい。
【0025】
なお、筐体5は、本実施形態では、少なくとも表面5aが湾曲形状とされ、ガイドケース8が通過可能な開口部51を有する構造であればよく、図1、2に示す例に限定されず、表示装置1の用途等に応じて、裏面5b側の構成等が適宜変更されてもよい。
【0026】
配線6は、例えば、表示パネル3と回路基板7とを電気的に繋ぐ配線であり、FPC(Flexible printed circuitsの略)などの可撓性のある任意の配線材が用いられる。配線6は、筐体5のうち開口部51を通した状態となっている。
【0027】
回路基板7は、例えば、ガラスエポキシ樹脂などによりなる絶縁性基板に、図示しない回路配線、ランドや貫通電極などが形成され、CPUやROM、RAM等の各種電子部品が搭載されてなる電子制御ユニットである。回路基板7は、表示パネル3の駆動制御用の図示しない回路部を備えると共に、少なくとも当該回路部を含む一部の領域がガイドケース8に挿入され、保護された状態となっている。回路基板7は、ガイドケース8と共に、筐体5の裏面5b側に配置されている。なお、回路基板7は、例えば、図示しない外部の各種装置に接続され、各種コンテンツの画面に応じた映像信号が入力されうる。
【0028】
ガイドケース8は、例えば図3に示すように、回路基板7の一部または全部を収納可能な収納部81を有し、回路基板7の図示しない回路部を保護する保護部材である。ガイドケース8は、収納部81が回路基板7の全部を収納する寸法とされる場合には、配線6のうち回路基板7に接続される部分も収納部81で覆う構成となる。ガイドケース8は、例えば、回路基板7の外形寸法に合わせた略長方形の有底筒状ケースとされる。ガイドケース8は、例えば、回路基板7の外郭をなす辺のうち平行するに辺に沿った溝811を有する内部構造とされ、収納された回路基板7を固定するためのネジ82とこれに対応するネジ穴83を複数有した構成とされる。つまり、ガイドケース8は、回路基板7に搭載される図示しない電子部品と接触することなく、回路基板7をスライドさせて収納部81に収納することが可能な、いわばマガジンタイプの構造となっている。
【0029】
ガイドケース8は、例えば、回路基板7が収納部81に収納された状態でネジ82をネジ穴83に挿入し、ネジ締めすることで回路基板7をガイドケース8に固定可能となっている。この場合、回路基板7は、例えば、ネジ82に対応する位置に図示しないネジ穴あるいは貫通孔を有した構成とされる。ガイドケース8は、ネジ止めなどの任意の方法により、回路基板7を保持した状態で筐体5の裏面5bに取り付けられる。
【0030】
ガイドケース8は、任意の材料、例えば、絶縁性の樹脂材料や導電性の金属材料などにより構成されうる。ガイドケース8は、導電性を有する金属材料や樹脂材料等により構成され、全体として導電性を有する場合には、回路基板7の図示しない回路部に対する外部からのノイズ電波を遮蔽するノイズシールド材としても機能する。
【0031】
蓋材9は、例えば、配線6を通す隙間を残しつつ、開口部51を部分的に塞ぐ部材であり、任意の樹脂材料などで構成される。蓋材9は、筐体5やガイドケース8とは独立した別部品であり、図示しないネジや爪などによる任意の方法で開口部51に取り付けられる。
【0032】
以上が、本実施形態の表示装置1の基本的な構成である。表示装置1は、表示パネル3の駆動制御を行う回路基板7を収納するスペースを有しない筐体5を用い、表面5a側に透明カバー2および表示パネル3を、裏面5b側に回路基板7およびガイドケース8を配置されているため、部品点数が少ない構成である。表示装置1は、筐体5が回路基板7をガイドケース8ごと通過させることができる開口部51を有しているため、回路基板7の傷付きを抑制しつつ、次に説明する組み付けが容易な構造となっている。
【0033】
〔製造方法〕
次に、本実施形態の表示装置1の製造方法について、図4A図4Eを参照して説明するが、表示パネル3等の各構成部材自体の製法については公知であるため、ここでは、各構成部材の組み付け工程を主に説明する。
【0034】
図4A図4C図4Eでは、後述する治具100の構成を分かり易くするため、治具100のうち別断面の外郭の一部を破線で示している。
【0035】
まず、例えば図4Aに示すように、開口部51を有し、表面5aおよび裏面5bが湾曲した構成の筐体5、および筐体5の裏面5b側に配置される治具100を用意する。治具100は、開口部51に対応する部分に位置し、ガイドケース8が一時的に収容される収容部101が形成された突出部102を備える。
【0036】
続いて、例えば図4Bに示すように、透明カバー2、表示パネル3、配線6、回路基板7およびガイドケース8を用意する。表示パネル3は、例えば、FPC等の配線6が接合され、回路基板7と電気的に接続された後、図示しない光学接着剤により透明カバー2に貼り付けられる。回路基板7は、例えば、配線6が接続された後、ガイドケース8の収納部81に挿入され、図示しないネジ等によりガイドケース8に固定されている。筐体5には、例えば、シリンジ等により接着材4が枠体状に塗布されている。なお、接着材4は、筐体5に塗布されてもよいし、透明カバー2に塗布されてもよい。
【0037】
次いで、例えば図4Cに示すように、回路基板7およびガイドケース8を治具100の収容部101に収容する。これにより、ガイドケース8を筐体5に接触させずに、開口部51を通過させ、裏面5b側に移動させることとなり、ガイドケース8に収納された回路基板7に傷が付くことを抑制できる。
【0038】
なお、収容部101は、ガイドケース8を一時的に収容できればよく、その内部構造については貫通孔に限られず、有底筒状など、適宜変更されうる。また、治具100は、例えば、収容部101が形成された突出部102と、筐体5を載置する台座部分とが一体となった構造とされるが、これらが別部材とされ、組み立て可能な構造であってもよく、その構造については適宜変更されうる。
【0039】
そして、例えば図4Dに示すように、表示パネル3が貼り付けられた透明カバー2を、筐体5の表面5aに沿って湾曲させつつ、接着材4により筐体5に接着する。このとき、透明カバー2は、冷間曲げで湾曲させた状態で筐体5に保持される。接着材4は、透明カバー2が平板状に戻ろうとする復元力に負けないようにし、透明カバー2を湾曲形状のまま保つため、例えば、ロの字状のように連続した枠体状に配置される。また、この場合、筐体5は、表面5aのうち接着材4に囲まれた領域に、図示しない放熱剤が配置されてもよい。
【0040】
なお、接着材4は、透明カバー2の外郭をなす辺のうち少なくとも筐体5に沿って湾曲した状態となる辺、すなわち湾曲辺の全域に配置されていればよく、上記の配置例に限定されない。例えば、接着材4は、筐体5の表面5aのうち透明カバー2が取り付けられる領域の全域、すなわち全面に塗布されてもよい。この場合、接着材4は、例えば、熱伝導率の高いフィラーを含有し、放熱剤としても機能する構成とされてもよい。
【0041】
その後、例えば図4Eに示すように、図示しない搬送機構等により、透明カバー2および表示パネル3が取り付けられた筐体5を持ち上げ、治具100からガイドケース8を引き抜く。最後に、蓋材9を開口部51に取り付け、ネジ止め等の任意の方法により、筐体5の裏面5bにガイドケース8を固定する。
【0042】
上記のような工程により、本実施形態の表示装置1を製造することができる。この製造方法では、ガイドケース8に回路基板7を挿入して図示しない回路部を保護しつつ、開口部51を介して、ガイドケース8ごと回路基板7を筐体5の表面5a側から裏面5b側に配置することが容易である。そのため、回路基板7の傷付きを抑制しつつも、筐体5への各構成部材の組み付けが容易な構造の表示装置1を製造可能である。
【0043】
本実施形態によれば、筐体5の表面5aに透明カバー2および表示パネル3が、裏面5b側に回路基板7が収納されたガイドケース8が、それぞれ取り付けられ、内部に回路基板7の収納空間を有しないため、部品点数が少なく、薄型化された表示装置1となる。
【0044】
また、表示装置1は、筐体5が開口部51を有し、透明カバー2等を表面5a側に取り付ける際に、回路基板7を収納したガイドケース8を、開口部51を介して裏面5b側に配置可能な構造である。そのため、構成部品の組み付けが容易、かつ回路基板7の回路部に傷が付くことを抑制することができる。さらに、表示パネル3とその駆動制御用の回路基板7とを繋ぐ配線6が筐体5の開口部51を通る状態となるため、表示面3a側から見て、筐体5の外郭外側に配線6等がはみ出すことがなくなり、外観が良好になる。
【0045】
よって、本実施形態の表示装置1は、部品点数が少なく、薄型化および外観の良好さを両立しつつも、組み付けが容易で、回路基板7の図示しない回路部の傷付きを抑制できる構造の曲面ディスプレイとなる。
【0046】
(第1実施形態の変形例)
次に、上記第1実施形態の表示装置1に係る複数の変形例について、図5図7Bを参照して説明する。
【0047】
図5では、筐体5のうち開口部51およびその近傍の一部の領域を示し、筐体5の他の部分については省略している。図6A図7Aでは、図1に相当する断面における配線6の一部、回路基板7およびガイドケース8を示しており、見易くするため、他の構成要素については省略している。図6B図7Bでは、図1と同様に、筐体5のうち別断面に位置する支持部52の外郭を破線で示している。
【0048】
筐体5は、例えば図5に示すように、開口部51の内郭の形状がガイドケース8の外形に沿った形状とされてもよい。具体的には、例えば、ガイドケース8の外形が、収納部81の開口部分の向く方向から見て略十字状である場合、筐体5の開口部51は、略十字状とされうる。この場合、ガイドケース8と筐体5の開口部51とが噛み合い、位置合わせが容易となるため、上記の治具100を用いなくても、組み付けを簡単に行うことが可能な構造となる。
【0049】
ガイドケース8は、例えば図6Aに示すように、一部が開口部51を塞ぐ蓋部84を有する構成であってもよい。この場合、表示装置1は、図6Bに示すように、開口部51がガイドケース8の蓋部84で塞がれた構成となり、別部材の蓋材9が不要となって、部品点数がさらに少なくなる。
【0050】
また、ガイドケース8は、例えば図7Aに示すように、筐体5の裏面5bに追従する湾曲面を有する形状であってもよい。この場合、表示装置1は、図7Bに示すように、ガイドケース8の湾曲面の全域が筐体5の裏面5bに当接した状態で取り付けられ、一体化されるため、ガイドケース8の一部が筐体5の裏面5bから離れた状態とならず、より薄型化された構成となる。ガイドケース8は、図7Aに示すように、全体が湾曲した形状であってもよいし、筐体5と向き合う面である取付面だけが裏面5bに追従した湾曲面とされ、他の部分については任意の形状であってもよく、適宜形状が変更されてもよい。前者の場合、ガイドケース8の収納部81が断面視にて湾曲した内壁面を有する空間となるため、回路基板7は、可撓性を有し、湾曲させることが可能な構成とされる。
【0051】
ガイドケース8は、例えば図4A図4Eでは、回路基板7の一部を収納可能な構成とされたが、これに限定されるものではなく、回路基板7の全部および配線6の一部を収納可能な構成であってもよい。例えば、配線6がFPCとされ、ドライバなどの他の電子部品が搭載された構成である場合には、ガイドケース8は、配線6に搭載された他の電子部品も収納可能な構成であってもよい。
【0052】
上記の変形例によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる表示装置1となる。
【0053】
(第2実施形態)
第2実施形態の表示装置1について、図8図9を参照して説明する。
【0054】
図8では、筐体5の構成を分かり易くするため、図1と同様に、別断面に位置する支持部52の外郭を破線で示している。図9では、回路基板7へのガイドケース8の取り付けを分かり易くするため、回路基板7における回路部71を簡略化しており、回路部71に形成される回路配線やこれに搭載される他の電子部品等については省略している。また、図9では、ガイドケース8のうち図9に示す角度では見えない外郭の一部を破線で示し、回路基板7とガイドケース8との対応位置を示す補助線を二点鎖線で示している。
【0055】
本実施形態の表示装置1は、例えば図8図9に示すように、ガイドケース8が回路基板7の回路部71のみを覆うキャップ部材とされ、回路基板7が筐体5に直接取り付けられている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0056】
回路基板7は、本実施形態では、例えば図8に示すように、筐体5の裏面5bに図示しないネジ等により直接取り付けされている。回路基板7は、本実施形態では、例えば図9に示すように、表示パネル3の駆動制御用の回路部71を含む一部の領域のみが、キャップ部材とされたガイドケース8に覆われた状態となっている。言い換えると、回路基板7は、図示しない回路部が形成された一面の一部以外については、外部に露出している。回路基板7は、例えば、一面7aにのみ配線、回路が形成され、当該一面7a側にのみCPUやROM等の他の図示しない電子部品が搭載された電子制御ユニットとなっている。回路基板7は、筐体5への取り付けにおいては、ガイドケース8が取り付けられた一面7aとは反対側の他面が筐体5と向き合う状態となっている。
【0057】
ガイドケース8は、本実施形態では、例えば図9に示すように、回路基板7の一面7aのうち表示パネル3の駆動制御用の回路部71を含む一部の領域を覆うキャップ部材である。ガイドケース8は、例えば、回路部71を覆う凹部が形成され、当該凹部の開口部の平面サイズが回路部71の平面サイズよりも大きい形状となっている。ガイドケース8は、例えば、ネジ締めや接着剤などの任意の方法により、回路部71とは当接しない状態で回路基板7に固定される。
【0058】
本実施形態の表示装置1は、ガイドケース8の構成および回路基板7への取り付け状態を除き、上記第1実施形態と同じ構成となっており、例えば上記第1実施形態と基本的に同じ方法により製造される。この場合であっても、回路基板7は、表示装置1の製造工程において、回路部71がガイドケース8により保護された状態で筐体5の開口部51を通ることとなるため、当該回路部の傷付きが抑制される。
【0059】
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果が得られる表示装置1となる。また、表示装置1は、回路基板7の一面7aのみがガイドケース8により覆われ、回路基板7の他の部分が露出しているため、その分だけガイドケース8が薄型化され、全体として上記第1実施形態よりも薄型化された構成となっている。
【0060】
(第2実施形態の変形例)
ガイドケース8は、例えば図10に示すように、複数の爪部85を有すると共に、回路基板7のうち図示しない回路部が形成された一面7aの一部または全部を覆いつつ、爪部85により回路基板7への接続固定が可能な構成であってもよい。この場合、表示装置1は、例えば、図示しないネジ等により、回路基板7がガイドケース8ごと共締めされ、筐体5に取り付けられた構成となる。
【0061】
なお、図10では、回路基板7に対するガイドケース8の取り付けを分かり易くするため、複数の爪部85それぞれと回路基板7の対応位置とを繋ぐ補助線を二点鎖線で示している。この場合、配線6は、例えば、回路基板7の一面7aのうち隣接する爪部85の間における任意の位置に接続される。
【0062】
本変形例によっても、上記第2実施形態と同様の効果が得られる。また、ガイドケース8が爪部85を有することで、回路基板7への取り付けが安定するため、開口部51に回路基板7を通す工程がより容易となる効果も得られる。
【0063】
(第3実施形態)
表示装置1は、例えば図11に示すように、透明カバー2および表示パネル3が平板形状の状態で筐体5に取り付けられ、表示面3aが1つの平面をなす平面表示装置であってもよい。この場合であっても、上記第1、第2実施形態と同様に、配線6が筐体5の外郭外側にはみ出すことがなく、回路基板7の図示しない回路部に傷が付くことを抑制でき、製造時の歩留まりを向上できる構造の表示装置1となる。
【0064】
なお、図11では、図1と同様に、筐体5のうち別断面に位置する支持部52の外郭を破線で示している。
【0065】
本実施形態によれば、平面ディスプレイを備え、上記第1実施形態と同様の効果が得られる表示装置1となる。
【0066】
(他の実施形態)
本発明は、実施例に準拠して記述されたが、本発明は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本発明の範疇や思想範囲に入るものである。
【0067】
(1)例えば、表示装置1は、上記第3実施形態と、上記第1、第2実施形態またはこれらの変形例とを組み合わせた構成であってもよい。具体的には、例えば、筐体5は、開口部51の形状が、回路基板7のうちガイドケース8が取り付けられた部分の断面形状に沿った形状とされてもよい。この場合、筐体5の開口部51は、回路基板7およびその一部を覆うガイドケース8を加えた外形に沿った形状とされうる。また、ガイドケース8は、全体的に湾曲した形状とされつつ、蓋部84を有する構成であってもよい。
【0068】
(2)上記第1、第2実施形態では、表示パネル3としてフレキシブルなOLEDパネルを用いた場合を前提として説明したが、これに限定されるものではなく、可撓性のあるディスプレイであればよく、液晶を用いたパネルや他の種のパネルであっても構わない。また、上記第3実施形態のように、平面ディスプレイである場合には、表示パネル3は、可撓性を有しない構成であってもよいし、OLEDパネルのほか、液晶パネル等の他のパネルであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
2・・・透明カバー、3・・・表示パネル、3a・・・表示面、4・・・接着材、
5・・・筐体、5a・・・表面、5b・・・裏面、51・・・開口部、6・・・配線、
7・・・回路基板、8・・・ガイドケース、81・・・収納部、84・・・蓋部、
85・・・爪部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11