(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20240214BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F17/04 A
(21)【出願番号】P 2021064357
(22)【出願日】2021-04-05
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 大輔
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-034176(JP,A)
【文献】特開2000-216514(JP,A)
【文献】特開平06-181122(JP,A)
【文献】特開2018-133397(JP,A)
【文献】特開2020-013952(JP,A)
【文献】特開2016-139786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08、27/28、30/10、37/00
H01F 41/00
H05K 1/11、1/16、3/40-3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、前記素体内に設けられ、軸方向に沿って螺旋状に巻回されたコイルと、を備え、
前記コイルは、前記軸方向に直交する平面に沿って巻回された第1コイル配線と、前記軸方向で前記第1コイル配線と隣り合い、前記軸方向に直交する平面に沿って巻回された第2コイル配線と、前記第1コイル配線と前記第2コイル配線とを接続するビア電極と、
を有し、
前記第1コイル配線は、アスペクト比が1.00を超える第1厚肉部と、前記第1コイル配線の端部であって、平均厚みが前記第1厚肉部の厚みよりも小さい第1薄肉部と、を有し、
前記第2コイル配線は、アスペクト比が1.00を超える第2厚肉部と、前記第2コイル配線の端部であって、平均厚みが前記第2厚肉部の厚みよりも小さい第2薄肉部と、を有し、
前記ビア電極は、
中心軸が前記軸方向に対して傾斜するように前記第1薄肉部と前記第2薄肉部とを接続
し、
前記第1薄肉部における前記ビア電極と接続される部分の厚みは、前記第1コイル配線の延伸する方向であって、前記第1コイル配線の前記端部とは反対側の端部から前記端部に向かう方向に沿って減少する、インダクタ部品。
【請求項2】
前記ビア電極の中心軸は、前記軸方向に平行な方向に延びる部分と、前記軸方向に直交する方向に延びる部分と、を交互に繰り返すことにより、前記軸方向に対して階段状に傾斜している、請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記第1薄肉部
における前記ビア電極と接続される部分の厚みは、連続的に減少する、請求項
1に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記第2薄肉部
における前記ビア電極と接続される部分の厚みは、前記第2コイル配線の延伸する方向であって、前記第2コイル配線の前記端部とは反対側の端部から前記端部に向かう方向に沿って減少する、請求項1から
3の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記第2薄肉部
における前記ビア電極と接続される部分の厚みは、連続的に減少する、請求項
4に記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記素体の表面は、第1端面と、前記第1端面に対向する第2端面と、前記第1端面と前記第2端面の間に接続された底面と、前記底面に対向する天面とを有し、
前記第1端面と前記底面に渡って設けられた第1外部電極と、前記第2端面と前記底面に渡って設けられた第2外部電極と、を更に備え、
前記コイルは、前記軸方向が、前記第1端面、前記第2端面、前記底面および前記天面と平行になるように設けられ、
前記コイルの一端は、前記第1外部電極に接続され、前記コイルの他端は、前記第2外部電極に接続され、
前記ビア電極は、前記底面との距離が、前記底面と前記天面との距離の50%以下となるように配置されている、請求項1から
5の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記第1厚肉部および前記第2厚肉部の少なくとも1つのアスペクト比は、1.08以上2.54以下である、請求項1から
6の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記第1薄肉部および前記第2薄肉部の少なくとも1つのアスペクト比は、1.00以下である、請求項1から
7の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項9】
前記第1薄肉部は、前記第1コイル配線の前記端部側において、前記軸方向から見て、前記第2コイル配線の前記端部側と重なる全領域に相当する部分を少なくとも含み、
前記第2薄肉部は、前記第2コイル配線の前記端部側において、前記軸方向から見て、前記第1コイル配線の前記端部側と重なる全領域に相当する部分を少なくとも含む、請求項1から
8の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項10】
前記第1厚肉部と前記第1薄肉部とは、隣接し且つ一体的に形成されている、請求項1から
9の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項11】
前記第2厚肉部と前記第2薄肉部とは、隣接し且つ一体的に形成されている、請求項1から
10の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項12】
前記ビア電極における前記第1薄肉部および前記第2薄肉部の各々に接続する端面の形状は、円形であり、前記端面の直径は、30μm以上50μm以下である、請求項1から
11の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ部品としては、特開2019-57581号公報(特許文献1)に記載されたものがある。このインダクタ部品は、素体と、素体内に設けられ、軸方向に沿って螺旋状に巻回されたコイルと、を備える。コイルは、軸方向に直交する平面に沿って巻回された複数のコイル配線と、隣り合うコイル配線を接続するビア電極と、を有する。コイル配線のアスペクト比は、1.0以上である。コイル配線のアスペクト比は、(コイル配線の軸方向の厚み)/(コイル配線の幅)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のインダクタ部品では、ビア電極は、隣り合うコイル配線と軸方向に沿って接続されている。コイル配線のアスペクト比が大きいと、軸方向のコイル配線の厚みも大きくなる。ここで、コイル配線は、焼成時に収縮する。そのため、軸方向のコイル配線の厚みが大きい特許文献1のインダクタ部品では、焼成時に、コイル配線の軸方向の収縮量も大きくなり、ビア電極に軸方向の大きな応力が発生し、ビア電極がコイル配線から剥離する虞があった。
【0005】
そこで、本開示は、焼成時に発生するビア電極の応力を低減できるインダクタ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタ部品は、
素体と、前記素体内に設けられ、軸方向に沿って螺旋状に巻回されたコイルと、を備え、
前記コイルは、前記軸方向に直交する平面に沿って巻回された第1コイル配線と、前記軸方向で前記第1コイル配線と隣り合い、前記軸方向に直交する平面に沿って巻回された第2コイル配線と、前記第1コイル配線と前記第2コイル配線とを接続するビア電極と、を有し、
前記第1コイル配線は、アスペクト比が1.00を超える第1厚肉部と、前記第1コイル配線の端部であって、平均厚みが前記第1厚肉部の厚みよりも小さい第1薄肉部と、
を有し、
前記第2コイル配線は、アスペクト比が1.00を超える第2厚肉部と、前記第2コイル配線の端部であって、平均厚みが前記第2厚肉部の厚みよりも小さい第2薄肉部と、を有し、
前記ビア電極は、前記第1薄肉部と前記第2薄肉部とを接続する。
【0007】
ここで、軸方向とは、コイルが巻回された螺旋の中心軸に平行な方向を指す。また、アスペクト比とは、(第1厚肉部の厚み)/(第1厚肉部の幅)である。第1厚肉部の厚みとは、第1厚肉部の延伸する方向に直交する断面におけるコイルの軸方向の厚みを指す。第1厚肉部の幅とは、第1厚肉部の延伸する方向に直交する断面におけるコイルの軸方向と直交する方向の寸法を指す。第2厚肉部のアスペクト比も同様に定義される。
【0008】
また、第1薄肉部の平均厚みとは、(第1薄肉部の断面積)/(第1薄肉部の断面における第1薄肉部の延伸する方向に沿った第1薄肉部の配線長)である。第1薄肉部の断面積とは、コイルの軸方向に平行な断面であって、コイルの軸方向から見てビア電極の中心を含み、且つ第1薄肉部が延伸する方向に平行な断面における面積を指す。第2薄肉部の平均厚みも同様に定義される。
【0009】
前記実施形態によれば、ビア電極が第1薄肉部と第2薄肉部とに接続されている。第1薄肉部および第2薄肉部は、平均厚みが、それぞれ第1厚肉部および第2厚肉部の厚みよりも小さいため、焼成時の軸方向の収縮量が小さくなる。このため、焼成時に発生するビア電極の応力を低減させることができる。
【0010】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記ビア電極の中心軸は、前記軸方向に対して傾斜している。
【0011】
ここで、ビア電極の中心軸とは、ビア電極が第1薄肉部から第2薄肉部に向かって延在する方向であって、ビア電極の中心を通る線を指す。
【0012】
前記実施形態によれば、ビア電極が傾斜しているため、焼成時にビア電極に発生する応力を傾斜方向に分散させることができる。
【0013】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記ビア電極の中心軸は、前記軸方向に平行な方向に延びる部分と、前記軸方向に直交する方向に延びる部分と、を交互に繰り返すことにより、前記軸方向に対して階段状に傾斜している。
【0014】
前記実施形態によれば、傾斜したビア電極を、フォトリソグラフィ工程を用いて容易に製造することができる。また、ビア電極が軸方向に対して傾斜していることにより、焼成時にビア電極に発生する応力を傾斜方向に分散させることができる。
【0015】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第1薄肉部の厚みは、前記第1薄肉部の延伸する方向であって、前記第1コイル配線の前記端部とは反対側の端部から前記端部に向かう方向に沿って減少する。
【0016】
ここで、第1薄肉部の厚みとは、第1薄肉部の延伸する方向に直交する断面におけるコイルの軸方向の厚みを指す。また、第1薄肉部の厚みが減少するとは、第1薄肉部の厚みが段階的または連続的に減少することを指す。
【0017】
前記実施形態によれば、第1薄肉部の厚みが上記方向に沿って減少するため、焼成時にビア電極に発生する応力を分散させることができる。
【0018】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第1薄肉部の厚みは、連続的に減少する。
【0019】
前記実施形態によれば、焼成時にビア電極に発生する応力をより効果的に分散させることができる。
【0020】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第2薄肉部の厚みは、前記第2薄肉部の延伸する方向であって、前記第2コイル配線の前記端部とは反対側の端部から前記端部に向かう方向に沿って減少する。
【0021】
ここで、第2薄肉部の厚みとは、第2薄肉部の延伸する方向に直交する断面におけるコイルの軸方向の厚みを指す。また、第2薄肉部の厚みが減少するとは、第2薄肉部の厚みが段階的または連続的に減少することを指す。
【0022】
前記実施形態によれば、第2薄肉部の厚みが上記方向に沿って減少するため、焼成時にビア電極に発生する応力を分散させることができる。
【0023】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第2薄肉部の厚みは、連続的に減少する。
【0024】
前記実施形態によれば、焼成時にビア電極に発生する応力をより効果的に分散させることができる。
【0025】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記素体の表面は、第1端面と、前記第1端面に対向する第2端面と、前記第1端面と前記第2端面の間に接続された底面と、前記底面に対向する天面とを有し、
前記第1端面と前記底面に渡って設けられた第1外部電極と、前記第2端面と前記底面に渡って設けられた第2外部電極と、を更に備え、
前記コイルは、前記軸方向が、前記第1端面、前記第2端面、前記底面および前記天面と平行になるように設けられ、
前記コイルの一端は、前記第1外部電極に接続され、前記コイルの他端は、前記第2外部電極に接続され、
前記ビア電極は、前記底面との距離が、前記底面と前記天面との距離の50%以下となるように配置されている。
【0026】
前記実施形態によれば、ビア電極が前記底面と前記天面との距離の50%以下となるように配置されているので、平均厚みが相対的に小さい第1薄肉部および第2薄肉部も前記底面と前記天面との距離の50%以下の位置に存在する。これにより、第1外部電極および第2外部電極やインダクタ部品が実装される基板とビア電極との間の浮遊容量の影響を低減できる。これに対して、コイル配線が厚肉部のみから構成されている場合、上記浮遊容量の影響が大きくなる。
【0027】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第1厚肉部および前記第2厚肉部の少なくとも1つのアスペクト比は、1.08以上2.54以下である。
【0028】
前記実施形態によれば、Q値を高くできる。
【0029】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第1薄肉部および前記第2薄肉部の少なくとも1つのアスペクト比は、1.00以下である。
【0030】
ここで、第1薄肉部のアスペクト比とは、(第1薄肉部の平均厚み)/(第1薄肉部の幅)である。第1薄肉部の幅とは、第1薄肉部の延伸する方向に直交する断面におけるコイルの軸方向と直交する方向の寸法を指す。第2薄肉部のアスペクト比も同様に定義される。
【0031】
前記実施形態によれば、焼成時にビア電極に発生する応力をより効果的に低減させることができる。
【0032】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第1薄肉部は、前記第1コイル配線の前記端部側において、前記軸方向から見て、前記第2コイル配線の前記端部側と重なる全領域に相当する部分を少なくとも含み、
前記第2薄肉部は、前記第2コイル配線の前記端部側において、前記軸方向から見て、前記第1コイル配線の前記端部側と重なる全領域に相当する部分を少なくとも含む。
【0033】
前記実施形態によれば、焼成時にビア電極に発生する応力をより効果的に低減させることができる。
【0034】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第1厚肉部と前記第1薄肉部とは、隣接し且つ一体的に形成されている。
【0035】
ここで、「一体的に形成されている」とは、2つの部材が連続的に形成され、且つ、界面が形成されていないことを指す。
【0036】
前記実施形態によれば、第1コイル配線の強度を高くできる。
【0037】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第2厚肉部と前記第2薄肉部とは、隣接し且つ一体的に形成されている。
【0038】
前記実施形態によれば、第2コイル配線の強度を高くできる。
【0039】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記ビア電極における前記第1薄肉部および前記第2薄肉部の各々に接続する端面の形状は、円形であり、前記端面の直径は、30μm以上50μm以下である。
【0040】
前記実施形態によれば、ビア電極と薄肉部との接続面積を確保できるので、接続信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0041】
本開示の一態様であるインダクタ部品によれば、焼成時に発生するビア電極の応力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】インダクタ部品の第1実施形態を示す底面側からみた透視斜視図である。
【
図3】インダクタ部品の第1側面からみた透視側面図である。
【
図4】インダクタ部品の底面側からみた透視底面図である。
【
図5A】
図3のA-A断面であって、コイル配線の厚肉部の断面図である。
【
図5B】
図3のB-B断面であって、コイル配線の薄肉部の断面図である。
【
図6】インダクタ部品の第2実施形態を示す底面側からみた透視底面図である。
【
図7】インダクタ部品の第3実施形態を示す底面側からみた透視底面図である。
【
図8】インダクタ部品の第4実施形態を示す底面側からみた透視底面図である。
【
図9】インダクタ部品の第4実施形態を示す底面側からみた透視底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0044】
(第1実施形態)
図1は、インダクタ部品の第1実施形態を示す底面側からみた透視斜視図である。
図2は、インダクタ部品の分解図である。
図3は、インダクタ部品の第1側面(すなわち、コイルの軸方向)からみた透視側面図である。
図4は、インダクタ部品の底面側からみた透視底面図である。
【0045】
図1~
図4に示すように、インダクタ部品1は、素体10と、素体10内に設けられ、軸方向に沿って螺旋状に巻回されたコイル20と、素体10に設けられコイル20に電気的に接続された第1外部電極30および第2外部電極40とを有する。
図1、
図3および
図4では、素体10は、構造を容易に理解できるよう、透明に描かれているが、半透明や不透明であってもよい。
【0046】
インダクタ部品1は、第1、第2外部電極30,40を介して、図示しない回路基板の配線に電気的に接続される。インダクタ部品1は、例えば、高周波回路のインピーダンス整合用コイル(マッチングコイル)として用いられ、パソコン、DVDプレーヤー、デジカメ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクス、医療用・産業用機械などの電子機器に用いられる。ただし、インダクタ部品1の用途はこれに限られず、例えば、同調回路、フィルタ回路や整流平滑回路などにも用いることもできる。
【0047】
素体10は、略直方体状に形成されている。素体10の表面は、互いに対向する第1端面15および第2端面16と、互いに対向する第1側面13と第2側面14と、第1端面15と第2端面16との間および第1側面13と第2側面14との間に接続された底面17と、底面17と対向する天面18とを含む。なお、図示するように、X方向は、第1端面15および第2端面16に直交する方向であり、Y方向は、第1側面13および第2側面14に直交する方向であり、Z方向は、底面17および天面18に直交する方向であり、X方向およびY方向に直交する方向である。
【0048】
素体10は、複数の絶縁層11を積層して構成される。絶縁層11は、例えば、硼珪酸ガラスを主成分とする材料や、フェライト、樹脂などの材料からなる。絶縁層11の積層方向は、素体10の第1、第2端面15,16および底面17に、平行な方向(Y方向)である。すなわち、絶縁層11は、XZ平面に広がった層状である。本願における「平行」とは、厳密な平行関係に限定されず、現実的なばらつきの範囲を考慮し、実質的な平行関係も含む。なお、素体10は、焼成などによって、複数の絶縁層11同士の界面が明確となっていない場合がある。
【0049】
第1外部電極30および第2外部電極40は、例えば、Ag、Cu、Auやこれらを主成分とする合金などの導電性材料から構成される。第1外部電極30は、第1端面15から底面17にかけて形成されたL字形状である。第1外部電極30は、第1端面15および底面17から露出するように素体10に埋め込まれている。第2外部電極40は、第2端面16から底面17にかけて形成されたL字形状である。第2外部電極40は、第2端面16および底面17から露出するように素体10に埋め込まれている。
【0050】
第1外部電極30および第2外部電極40は、素体10(絶縁層11)に埋め込まれた複数の第1外部電極導体層33および第2外部電極導体層43が積層された構成を有している。第1外部電極導体層33は、第1端面15および底面17に沿って延在しており、第2外部電極導体層43は、第2端面16および底面17に沿って延在している。以上の構成により、第1外部電極30は、第1端面15と底面17に渡って設けられている。また、第2外部電極40は、第2端面16と底面17に渡って設けられている。上述の構成により、素体10内に外部電極30,40を埋め込むことができるため、素体10に外部電極を外付けする構成に比べて、インダクタ部品の小型化を図ることができる。また、コイル20と外部電極30,40を同一工程で形成することができ、コイル20と外部電極30,40との間の位置関係のばらつきを低減することで、インダクタ部品1の電気的特性のばらつきを低減することができる。
【0051】
コイル20は、例えば、第1、第2外部電極30,40と同様の導電性材料から構成される。コイル20は、絶縁層11の積層方向(Y方向)に沿って、螺旋状に巻回されている。コイル20は、軸方向が、第1端面15、第2端面16、底面17および天面18と平行になるように設けられている。コイル20の軸方向とは、コイル20が巻回された螺旋の中心軸に平行な方向を指す。コイル20の一端は、第1外部電極30に接続され、コイル20の他端は、第2外部電極40に接続されている。なお、本実施形態では、コイル20と第1、第2外部電極30,40とは一体化されており、明確な境界は存在しないが、これに限られず、コイルと外部電極とが異種材料や異種工法で形成されることにより、境界が存在していてもよい。
【0052】
コイル20は、軸方向に直交する平面に沿って巻回された第1コイル配線21と、軸方向で第1コイル配線21と隣り合い、軸方向に直交する平面に沿って巻回された第2コイル配線22と、第1コイル配線21と第2コイル配線22とを接続するビア電極26と、を有する。第1コイル配線21および第2コイル配線22は、ビア電極26を介して接続されることにより螺旋を構成している。第1コイル配線21の一方側の端部(ビア電極26が接続されている側とは逆側の端部)は、第2外部電極40に接続している。第2コイル配線22の一方側の端部(ビア電極26が接続されている側とは逆側の端部)は、第1外部電極30に接続している。
【0053】
第1コイル配線21は、軸方向に直交する絶縁層11の主面(XZ平面)上に巻回されて形成される。第1コイル配線21の巻回数は、1周未満であるが、1周以上であってもよい。
図1の仮想線で示したように、第1コイル配線21は、互いに面接触して軸方向に積層された3層のコイル導体層21a,21b,21cから構成されている。これにより、第1コイル配線21のアスペクト比を高くできる。各コイル導体層21a,21b,21cは、軸方向に直交する平面に沿って巻回されている。なお、本実施形態では、コイル導体層21a,21b,21cは一体化されており、明確な境界は存在しないが、これに限られず、各コイル導体層が異種材料や異種工法で形成されることにより、境界が存在していてもよい。また、第1コイル配線21は、1層のコイル導体層から構成されていてもよいし、2層または4層以上のコイル導体層から構成されていてもよい。
【0054】
第1コイル配線21は、アスペクト比が1.00を超える第1厚肉部211と、第1コイル配線21の端部であって、平均厚みが第1厚肉部211の厚みよりも小さい第1薄肉部212と、を有する。
【0055】
第1厚肉部211は、第1コイル配線21のうち、アスペクト比が1.00を超える部分である。具体的に述べると、本実施形態では、
図1に示すように、第1厚肉部211は、コイル導体層21aと、コイル導体層21bと、コイル導体層21cのうち第1薄肉部212となる部分を除いた部分と、が軸方向に積層されて構成されている。第1厚肉部211のアスペクト比とは、(第1厚肉部211の厚み)/(第1厚肉部211の幅)である。
【0056】
図5Aは、
図3のA-A断面であって、第1コイル配線の第1厚肉部の断面図である。
図5Aに示すように、上記「第1厚肉部211の厚み」とは、第1厚肉部211の延伸する方向に直交する断面におけるコイルの軸方向(Y方向)の寸法tを指す。上記「第1厚肉部211の幅」とは、第1厚肉部211の延伸する方向に直交する断面におけるコイルの軸方向と直交する方向の寸法wを指す。第1厚肉部211は、コイル20の軸方向からみて、略円形に形成されているが、この形状に限定されない。第1厚肉部211の形状は、例えば、楕円形、長方形、その他の多角形などであってもよい。
【0057】
図5Aでは、第1厚肉部211の断面は矩形状であるが、実際の第1厚肉部211では矩形状とならない場合がある。この場合であっても、第1厚肉部211のアスペクト比は、第1厚肉部211の断面積と第1厚肉部211の軸方向の最大厚みとから算出することができる。具体的には、上記厚みtは、第1厚肉部211の軸方向の最大厚みとし、上記幅wは、第1厚肉部211の断面積を第1厚肉部211の最大厚みで割った値とすればよい。これにより、第1厚肉部211の内面や外面に凹凸が形成されていても、アスペクト比を容易に求めることができる。このように、第1厚肉部211の断面形状は、矩形に限らず、楕円形や多角形、これらを凹凸させた形状なども含む。後述する第2厚肉部221、第1薄肉部212および第2薄肉部222の各々における延伸する方向に直交する断面においても同様である。
【0058】
第1薄肉部212は、第1コイル配線21のうち、平均厚みが第1厚肉部211の厚みよりも小さい部分である。
図1~
図4に示すように、第1薄肉部212は、軸方向からみて、第1厚肉部211から連続して、第1厚肉部211が延伸する方向に沿って延びている。本実施形態では、第1薄肉部212は、コイル導体層21cのうち、第1コイル配線21の端部(第2外部電極40が接続されている側とは逆側の端部)を占める部分から構成されている。第1薄肉部212の平均厚み(t
ave)とは、(第1薄肉部212の断面積)/(第1薄肉部212の断面における第1薄肉部212の延伸する方向に沿った第1薄肉部212の配線長)である。
【0059】
図5Bは、
図3のB-B断面であって、第1コイル配線の第1薄肉部の断面図である。
図5Bに示すように、上記「第1薄肉部212の断面積」とは、コイルの軸方向(Y方向)に平行な断面であって、コイルの軸方向から見てビア電極の中心を含み、且つ第1薄肉部212が延伸する方向に平行な断面における面積Aを指す。上記「第1薄肉部212の断面における第1薄肉部212の延伸する方向に沿った第1薄肉部212の配線長」とは、
図5Bに示した断面の横幅L3を指す。
【0060】
図1~
図4に示すように、本実施形態では、第1薄肉部212は、軸方向からみて、第1厚肉部211から連続して延びて、先端は円弧状に形成されている。しかし、第1薄肉部212の形状は、これに限定されず、軸方向からみて、円形や矩形などの種々の形状を採用し得る。また、
図4に示すように、第1薄肉部212の形状は、インダクタ部品1の底面側からみて四角形である。また、第1厚肉部211と第1薄肉部212とは、隣接し且つ一体的に形成されている。「一体的に形成されている」とは、2つの部材が連続的に形成され、且つ、界面が形成されていないことを指す。これにより、第1コイル配線21の強度を高くできる。なお、第1厚肉部211と第1薄肉部212とは、別体で形成されてもよい。
【0061】
第2コイル配線22は、第1コイル配線21と同様の構成を有する。すなわち、第2コイル配線22は、アスペクト比が1.00を超える第2厚肉部221と、第2コイル配線22の端部であって、平均厚みが第2厚肉部221の厚みよりも小さい第2薄肉部222と、を有する。また、第2厚肉部221と第2薄肉部222とは、隣接し且つ一体的に形成されている。これにより、第2コイル配線22の強度を高くできる。なお、第2厚肉部221と第2薄肉部222とは、別体で形成されてもよい。第2厚肉部221および第2薄肉部222の構成は、それぞれ第1厚肉部211および第1薄肉部212の構成と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0062】
ビア電極26は、
図4に示すように、軸方向の一端が第1薄肉部212における第2側面14側の面S1に接続し、軸方向の他端が第2薄肉部222における第1側面13側の面S2に接続している。これにより、ビア電極26は、第1薄肉部212と第2薄肉部222とを接続する。本実施形態では、ビア電極26は、円柱状である。しかし、ビア電極26の形状は、これに限定されず、例えば、断面が楕円の柱体や断面が多角形の柱体などの他の形状であってもよい。
【0063】
前記実施形態によれば、第1コイル配線21は、第1厚肉部211および第1薄肉部212を有し、第2コイル配線22は、第2厚肉部221および第2薄肉部222を有する。ビア電極26は、第1薄肉部212および第2薄肉部222のそれぞれに接続されている。第1薄肉部212の軸方向の平均厚みは、第1厚肉部211の軸方向の厚みよりも小さく、第2薄肉部222の軸方向の平均厚みは、第2厚肉部221の軸方向の厚みよりも小さい。そのため、第1薄肉部212および第2薄肉部222は、焼成時の軸方向の収縮量が、第1厚肉部211および第2厚肉部221よりも小さくなり、焼成時に発生するビア電極の応力を低減させることができる。従って、ビア電極26が焼成時に第1コイル配線21および第2コイル配線22から剥離することを抑制できる。
【0064】
好ましくは、ビア電極26は、
図3に示すように、底面17との距離L1が、底面17と天面18との距離L2との距離の50%以下となるように配置される。距離L1は、軸方向からみたときのビア電極26の中心と底面17との距離を指す。
【0065】
上記構成によれば、ビア電極26が底面17と天面18との距離の50%以下となるように配置されているので、平均厚みが相対的に小さい第1薄肉部212および第2薄肉部222も底面17と天面18との距離の50%以下の位置に存在する。すなわち、この場合、ビア電極26と、それに接続される第1薄肉部212および第2薄肉部222は、インダクタ部品1の底面17側に実装される基板(図示省略)と比較的近く、上記基板との浮遊容量が発生しやすい。しかし、第1厚肉部211および第2厚肉部221の厚みより小さい第1薄肉部212および第2薄肉部222によって、上記基板との対向面積が小さくなるため、上記浮遊容量の影響を低減できる。これに対して、第1コイル配線21および第2コイル配線が、それぞれ第1厚肉部211および第2厚肉部221のみから構成されている場合、上記浮遊容量の影響が大きくなる。
【0066】
好ましくは、第1厚肉部211および第2厚肉部221の少なくとも1つのアスペクト比は、1.08以上2.54以下である。
【0067】
上記構成によれば、Q値を高くできる。
【0068】
好ましくは、第1薄肉部212および第2薄肉部222の少なくとも1つのアスペクト比は、1.00以下である。第1薄肉部212のアスペクト比とは、(第1薄肉部212の平均厚み)/(第1薄肉部212の幅)である。第1薄肉部212の幅とは、第1薄肉部212の延伸する方向に直交する断面における軸方向と直交する方向の寸法を指す。なお、上述したように、本実施形態では、第1薄肉部212は、軸方向からみて、延伸する方向の先端が円弧状である。そのため、第1薄肉部212の幅は、第1薄肉部212の延伸する方向において一定ではない。この場合、上記「第1薄肉部212の延伸する方向に直交する断面」は、第1薄肉部212のうち第1厚肉部211と接続される部分における、第1薄肉部212の延伸する方向に直交する断面とすればよい。第2薄肉部222のアスペクト比も同様に定義される。
【0069】
上記構成によれば、焼成時にビア電極26に発生する応力をより効果的に低減させることができる。
【0070】
好ましくは、第1薄肉部212は、第1コイル配線21の端部側において、軸方向から見て、第2コイル配線22の端部側と重なる全領域に相当する部分を少なくとも含み、第2薄肉部222は、第2コイル配線22の端部側において、軸方向から見て、第1コイル配線21の端部側と重なる全領域に相当する部分を少なくとも含む。
図3を参照して具体的に説明すると、第1薄肉部212は、第1コイル配線21の端部側において、第2コイル配線22の端部側と重なる領域である斜線を付した領域の全てを含む。また、第2薄肉部222は、第2コイル配線22の端部側において、第1コイル配線21の端部側と重なる領域である斜線を付した領域の全てを含む。なお、
図3では、説明のため便宜上斜線を付している。
【0071】
上記構成によれば、焼成時にビア電極26に発生する応力をより効果的に低減させることができる。
【0072】
好ましくは、ビア電極26における第1薄肉部212および第2薄肉部222の各々に接続する端面の形状は、円形であり、端面の直径は、30μm以上50μm以下である。
【0073】
上記構成によれば、ビア電極26と第1薄肉部212および第2薄肉部222との接続面積を確保できるので、接続信頼性を向上させることができる。
【0074】
好ましくは、第1厚肉部211の厚みは、第1薄肉部212の平均厚みの2倍以上5倍以下であり、第2厚肉部221の厚みは、第2薄肉部222の平均厚みの2倍以上5倍以下である。
【0075】
上記構成によれば、焼成時に発生するビア電極26の応力をより低減しつつ、第1コイル配線、第2コイル配線の電気抵抗率の低下を抑制できる。
【0076】
(第2実施形態)
図6は、インダクタ部品の第2実施形態を示す底面側からみた透視底面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、ビア電極の形状が異なる。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0077】
図6に示すように、第2実施形態のインダクタ部品1Aのビア電極26Aは、軸方向(Y方向)に直交し且つビア電極26Aの中心軸C1の中点M1を通る方向から見て、中心軸C1が軸方向に対して傾斜している。ビア電極26Aの中心軸C1とは、ビア電極26Aが第1薄肉部212から第2薄肉部222に向かって延在する方向であって、ビア電極26Aの中心を通る線を指す。これに対して、第1実施形態のビア電極26は、軸方向に直交し且つビア電極26の中心軸の中点を通る方向から見て、中心軸が軸方向と平行である。なお、本実施形態では、ビア電極26Aにおいて、軸方向に直交し且つビア電極26Aの中心軸C1の中点M1を通る方向から見て、中心軸C1が軸方向に対して傾斜しているが、中心軸C1が軸方向に対して傾斜していれば、中心軸C1の傾斜方向は特に限定されず、何れかの方向から見て、中心軸C1が軸方向に対して傾斜していればよい。
【0078】
前記実施形態によれば、ビア電極26Aが傾斜しているため、焼成時にビア電極26Aに発生する応力を傾斜方向に分散させることができる。また、ビア電極26Aが傾斜しているため、ビア電極26Aと、第1薄肉部212および第2薄肉部222と、の接続面積を大きくできる。従って、ビア電極26Aが焼成時に第1コイル配線21および第2コイル配線22から剥離することを抑制できる。
【0079】
(第3実施形態)
図7は、インダクタ部品の第3実施形態を示す底面側からみた透視底面図である。第3実施形態は、第1実施形態とは、ビア電極の形状が異なる。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
図7に示すように、第3実施形態のインダクタ部品1Bのビア電極26Bは、軸方向(Y方向)に直交し且つビア電極26Bの中心軸C2の中点M2を通る方向から見て、中心軸C2が、軸方向に平行な方向に延びる部分C2aと、軸方向に直交する方向に延びる部分C2bと、を交互に繰り返すことにより、軸方向に対して階段状に傾斜している。なお、本実施形態では、ビア電極26Bにおいて、軸方向に直交し且つビア電極26Bの中心軸C2の中点M2を通る方向から見て、中心軸C2が軸方向に対して階段状に傾斜しているが、中心軸C2が軸方向に対して階段状に傾斜していれば、中心軸C2の傾斜方向は特に限定されず、何れかの方向から見て、中心軸C2が軸方向に対して階段状に傾斜していればよい。
【0081】
前記実施形態によれば、傾斜したビア電極を、フォトリソグラフィ工程を用いて容易に製造することができる。また、ビア電極26Bが軸方向に対して傾斜するように延在していることにより、焼成時にビア電極26Bに発生する応力を傾斜方向に分散させることができる。これにより、ビア電極26Bが焼成時に第1コイル配線21および第2コイル配線22から剥離することを抑制できる。
【0082】
(第4実施形態)
図8および
図9は、インダクタ部品の第4実施形態を示す底面側からみた透視底面図である。第4実施形態は、第2実施形態とは、第1薄肉部および第2薄肉部の形状が異なる。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第2実施形態と同じ構成であり、第2実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0083】
図8に示すように、第4実施形態のインダクタ部品1Cにおける第1薄肉部212Aの厚みは、第1コイル配線21Aの延伸する方向であって、第2外部電極40が接続されている側の第1コイル配線21Aの端部から、ビア電極26Aが接続している側の端部に向かう方向に沿って減少する。上記「第1薄肉部212Aの厚み」とは、第1薄肉部212Aの延伸する方向に直交する断面におけるコイルの軸方向の厚みを指す。本実施形態では、第1薄肉部212Aの厚みは、連続的に減少する。すなわち、第1薄肉部212Aは、軸方向において、ビア電極26Aが接続されている面とは反対側に位置する面に傾斜面S5を有する。換言すれば、第1薄肉部212Aの形状は、インダクタ部品1Cの底面側からみて三角形である。
【0084】
また、第1薄肉部212Aは、第1厚肉部211の延伸する方向の端面S3の一部に接続している。これにより、第1薄肉部212Aの厚みがより減少し、焼成時の第1薄肉部212Aの収縮量をより低減させることができる。
【0085】
また、
図8に示すように、第4実施形態のインダクタ部品1Cにおける第2薄肉部222Aの厚みは、第2コイル配線22Aの延伸する方向であって、第1外部電極30が接続されている側の第2コイル配線22Aの端部から、ビア電極26Aが接続している側の端部に向かう方向に沿って減少する。上記「第2薄肉部222Aの厚み」とは、第2薄肉部222Aの延伸する方向に直交する断面におけるコイルの軸方向の厚みを指す。本実施形態では、第2薄肉部222Aの厚みは、連続的に減少する。すなわち、第2薄肉部222Aは、軸方向において、ビア電極26Aが接続されている面とは反対側に位置する面に傾斜面S6を有する。換言すれば、第2薄肉部222Aの形状は、インダクタ部品1Cの底面側からみて三角形である。
【0086】
また、第2薄肉部222Aは、第2厚肉部221の延伸する方向の端面S4の一部に接続している。これにより、第2薄肉部222Aの厚みがより減少し、焼成時の第2薄肉部222Aの収縮量をより低減させることができる。
【0087】
前記実施形態によれば、第1薄肉部212Aの厚みが、第1コイル配線21Aの延伸する方向であって、第2外部電極40が接続されている側の第1コイル配線21Aの端部から、ビア電極26Aが接続している側の端部に向かう方向に沿って減少するため、焼成時にビア電極26Aに発生する応力を分散させることができる。特に、第1薄肉部212Aの厚みが連続的に減少することにより、焼成時にビア電極26Aに発生する応力をより効果的に分散させることができる。また、第2薄肉部222Aの厚みが、第2コイル配線22Aの延伸する方向であって、第1外部電極30が接続されている側の第2コイル配線22Aの端部から、ビア電極26Aが接続している側の端部に向かう方向に沿って減少するため、焼成時にビア電極26Aに発生する応力を分散させることができる。特に、第2薄肉部222Aの厚みが連続的に減少することにより、焼成時にビア電極26Aに発生する応力をより効果的に分散させることができる。
【0088】
また、
図9に示すように、第1薄肉部212Aは、第1厚肉部211の延伸する方向の端面S3の全面に接続してもよい。これにより、焼成時に第1厚肉部211と第1薄肉部212Aとの間の応力差が小さくなり、第1厚肉部211と第1薄肉部212Aとの間の割れなどの損傷を抑制できる。同様に、第2薄肉部222Aは、第2厚肉部221の延伸する方向の端面S4の全面に接続してもよい。これにより、焼成時に第2厚肉部221と第2薄肉部222Aとの間の応力差が小さくなり、第2厚肉部221と第2薄肉部222Aとの間の割れなどの損傷を抑制できる。なお、
図9に曲線の仮想線(二点鎖線)で示すように、印刷積層工程において、第1薄肉部212Aの一部および第2薄肉部222Aの一部が、それぞれ第1厚肉部211の一部および第2厚肉部221の一部に重なってもよい。
【0089】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第4実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0090】
前記実施形態では、コイルの軸は、素体の側面に直交しているが、素体の端面に直交してもよく、または、素体の底面に直交してもよい。
【0091】
前記実施形態では、コイルは、第1コイル配線および第2コイル配線の2つのコイル配線を有していたが、コイル配線の個数はこれに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0092】
前記実施形態では、第1、第2外部電極は、L字形状であるが、例えば5面電極であってもよい。つまり、第1外部電極は、第1端面全面と、第1側面、第2側面、底面および天面のそれぞれの一部とに設けられ、第2外部電極は、第2端面全面と、第1側面、第2側面、底面および天面のそれぞれの一部とに設けられてもよい。または、第1外部電極および第2外部電極は、それぞれ、底面の一部に設けられてもよい。
【0093】
前記実施形態では、第1薄肉部は、第1コイル配線の端部側において、軸方向から見て、第2コイル配線の端部側と重なる全領域に相当する部分を少なくとも含み、第2薄肉部は、第2コイル配線の端部側において、軸方向から見て、第1コイル配線の端部側と重なる全領域に相当する部分を少なくとも含む。しかし、第1薄肉部は、第1コイル配線の端部側において、軸方向から見て、第2コイル配線の端部側と重なる領域に相当する部分の一部を含んでもよい。また、第2薄肉部は、第2コイル配線の端部側において、軸方向から見て、第1コイル配線の端部側と重なる領域に相当する部分の一部を含んでもよい。または、第1コイル配線の第1薄肉部は、軸方向からみて、第2コイル配線の第2薄肉部と重ならなくてもよい。
【0094】
前記実施形態では、第1薄肉部および第2薄肉部に接続されたビア電極は、底面と天面との距離の50%以下となるように配置されているが、第1薄肉部および第2薄肉部に接続されていない他のビア電極が存在する場合、他のビア電極は、底面と天面との距離の50%を超えるように配置されてもよい。また、第1薄肉部および第2薄肉部に接続されたビア電極が、底面と天面との距離の50%を超えるように配置されてもよい。これにより、設計自由度が増す。
【0095】
前記第4実施形態では、第1薄肉部212Aおよび第2薄肉部222Aの厚みが、連続的に減少するが、段階的に減少してもよい。また、第1薄肉部212Aおよび第2薄肉部222Aのいずれか一方のみの厚みが減少してもよい。
【0096】
(実施例)
以下、インダクタ部品1の製造方法の実施例を説明する。
【0097】
まず、硼珪酸ガラスを主成分とする絶縁ペーストをスクリーン印刷によりキャリアフィルム等の基材上に塗布することを繰り返して、絶縁層を形成する。この絶縁層は、コイル導体層よりも外側に位置する外層用絶縁層となる。なお、基材は任意の工程にて絶縁層から剥がされ、インダクタ部品の状態では残らない。
【0098】
その後、絶縁層上に感光性導電ペースト層を塗布形成し、フォトリソグラフィ工程により、コイル導体層及び外部電極導体層を形成する。具体的には、絶縁層上にAgを金属主成分とする感光性導電ペーストをスクリーン印刷により塗布して、感光性導電ペースト層を形成する。さらに、感光性導電ペースト層にフォトマスクを介して紫外線等を照射し、アルカリ溶液等で現像する。これによりコイル導体層および外部電極導体層が絶縁層上に形成される。この時、フォトマスクによりコイル導体層および外部電極導体層は所望のパターンに描くことができる。
【0099】
そして、絶縁層上に感光性絶縁ペースト層を塗布形成し、フォトリソグラフィ工程により、開口及びビアホールが設けられた絶縁層を形成する。具体的には、絶縁層上に感光性絶縁ペーストをスクリーン印刷により塗布して感光性絶縁ペースト層を形成する。さらに、感光性絶縁ペースト層にフォトマスクを介して紫外線等を照射し、アルカリ溶液等で現像する。この時、フォトマスクにより外部電極導体層の上方に開口を、コイル導体層の端部にビアホールを、それぞれ設けるよう、感光性絶縁ペースト層をパターニングする。なお、
図6、
図8および
図9に示した傾斜したビア電極26Aを形成する場合、ビアホールは、例えばレーザー加工やドリル加工などを用いて形成すればよい。
【0100】
その後、開口及びビアホールが設けられた絶縁層上に感光性導電ペースト層を塗布形成し、フォトリソグラフィ工程により、コイル導体層及び外部電極導体層を形成する。具体的には、開口及びビアホールを埋めるように絶縁層上にAgを金属主成分とする感光性導電ペーストをスクリーン印刷により塗布して、感光性導電ペースト層を形成する。さらに、感光性導電ペースト層にフォトマスクを介して紫外線等を照射し、アルカリ溶液等で現像する。これにより、開口を介して下層側の外部電極導体層に接続された外部電極導体層と、ビアホールを介して下層側のコイル導体層と接続されたコイル導体層とが絶縁層上に形成される。なお、
図7に示した階段状のビア電極26Bを形成する場合、ビアホールが設けられた絶縁層を形成する工程と、ビアホールを介して下層側のコイル導体層と接続されたコイル導体層を形成する工程と、をコイルの軸方向に直交する方向でビアホールの位置をずらしながら繰り返せばよい。
【0101】
上記のような絶縁層とコイル導体層及び外部電極導体層を形成する工程を繰り返すことにより、複数の絶縁層上に形成されたコイル導体層からなるコイル及び複数の絶縁層上に形成された外部電極導体層からなる外部電極が形成される。さらに、コイル及び外部電極が形成された絶縁層上に、絶縁ペーストをスクリーン印刷により塗布することを繰り返して、絶縁層を形成する。この絶縁層は、コイル導体層よりも外側に位置する外層用絶縁層となる。なお、以上の工程において絶縁層上にコイル及び外部電極の組を行列状に形成すれば、マザー積層体を得ることができる。
【0102】
その後、ダイシング等によりマザー積層体を複数の未焼成の積層体にカットする。マザー積層体のカット工程では、カットにより形成されるカット面において外部電極をマザー積層体から露出させる。この際、一定量以上のカットずれが生じると、上記工程で形成されたコイル導体層の外周縁が端面または底面に出現する。
【0103】
そして、未焼成の積層体を所定条件で焼成しコイルおよび外部電極を含む素体を得る。この素体に対してバレル加工を施して適切な外形サイズに研磨するとともに、外部電極が積層体から露出している部分に、2μm~10μmの厚さを有するNiめっき及び2μm~10μmの厚さを有するSnめっきを施す。以上の工程を経て、0.4mm×0.2mm×0.2mmのインダクタ部品が完成する。
【0104】
なお、導体パターンの形成工法は、上記に限定されるものではなく、例えば、導体パターン形状に開口したスクリーン版による導体ペーストの印刷積層工法でも良いし、スパッタ法や蒸着法、箔の圧着等により形成した導体膜をエッチングによりパターン形成する方法であっても良いし、セミアディティブ法のようにネガパターンを形成してめっき膜により導体パターンを形成した後、不要部を除去する方法であっても良い。さらに、導体パターンを多段形成することにより高アスペクトすることで、高周波での抵抗による損失を低減することができる。より具体的には、上記導体パターンの形成を繰り返すプロセスであっても良いし、セミアディティブプロセスで形成した配線を繰り返し重ねるプロセスであっても良いし、積み重ねの一部をセミアディティブプロセスで形成し、その他はめっき成長させた膜をエッチングで形成するプロセスであっても良いし、セミアディティブプロセスで形成した配線をさらにめっきで成長させ高アスペクト化するプロセスを組み合わせても良い。
【0105】
また、導体材料は上記のようなAgペーストに限定されるものではなく、スパッタ法や蒸着法、箔の圧着、めっき等により形成されるAg,Cu,Auといった良導体のものであれば良い。また、絶縁層ならびに開口、ビアホールの形成方法は上記に限定されるものではなく、絶縁材料シートの圧着やスピンコート、スプレー塗布後、レーザーやドリル加工によって開口される方法でも良い。
【0106】
また、絶縁材料は上記のようなガラス、セラミックス材料に限定されるものではなく、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリマー樹脂のような有機材料でも良いし、ガラスエポキシ樹脂のような複合材料でも良いが、誘電率、誘電損失の小さいものが望ましい。
【0107】
また、インダクタ部品のサイズは上記に限定されるものではない。また、外部電極の形成方法について、カットにより露出させた外部導体にめっき加工を施す方法に限定されるものではなく、カット後にさらに導体ペーストのディップやスパッタ法等によって外部電極を形成し、その上にめっき加工を施す方法でもよい。
【符号の説明】
【0108】
1,1A,1B,1C インダクタ部品
10 素体
11 絶縁層
13 第1側面
14 第2側面
15 第1端面
16 第2端面
17 底面
18 天面
20,20A コイル
21,21A 第1コイル配線
21a,21b,21c コイル導体層
22,22A 第2コイル配線
26,26A,26B ビア電極
30 第1外部電極
33 第1外部電極導体層
40 第2外部電極
43 第2外部電極導体層
211 第1厚肉部
212,212A 第1薄肉部
221 第2厚肉部
222,222A 第2薄肉部
A 第1薄肉部の断面積
L1 ビア電極と底面との距離
L2 底面と天面との距離
L3 第1薄肉部の配線長
C1,C2 ビア電極の中心軸
C2a 中心軸において軸方向に平行な方向に延びる部分
C2b 中心軸において軸方向に直交する方向に延びる部分
M1,M2 中心軸の中点
S1,S2 第1薄肉部の面
S3 第1厚肉部の端面
S4 第2厚肉部の端面
S5 第1薄肉部の傾斜面
S6 第2薄肉部の傾斜面
t 第1厚肉部の厚み
trev 第1薄肉部の平均厚み
w 第1厚肉部の幅