(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
(21)【出願番号】P 2021071791
(22)【出願日】2021-04-21
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青野 慶忠
(72)【発明者】
【氏名】田中 篤
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-240365(JP,A)
【文献】特開2021-042809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ装置であって、
回転力を出力する駆動部(16)と、
流体が流通する流路部(221)を有し、前記駆動部が出力する回転力によって所定軸心を中心に回転することで、前記流路部を流れる前記流体の流量を調整する弁体(20)と、
前記所定軸心周りを囲み、前記弁体を収容する収容空間(12d)を形成する本体側壁部(122)を有するとともに、前記所定軸心の一方側に開口部(120a)が形成されたハウジング本体部(120)と、
前記所定軸心周りを囲むカバー側壁部(124d)を有し、前記ハウジング本体部に締結されることで前記収容空間を閉塞する本体カバー部(124)と、
前記ハウジング本体部と前記本体カバー部との間で弾性変形することで、前記ハウジング本体部と前記本体カバー部との隙間をシールするシール部材(13)とを備え、
前記ハウジング本体部は、前記本体側壁部から前記シール部材よりも前記所定軸心の径方向外側に向かって延びる本体接続部(122k)と、前記本体接続部の前記所定軸心の径方向外側の端部に接続され、前記本体カバー部に当接する締結面(122p)を有する本体締結部(122m)とを含み、
前記本体カバー部は、前記カバー側壁部から前記シール部材よりも前記所定軸心の径方向外側に向かって延びるカバー接続部(124n)と、前記カバー接続部の前記所定軸心の径方向外側の端部に接続されるとともに、前記締結面に当接する当接面(124u)を有するカバー締結部(124p)とを含み、
前記ハウジング本体部および前記本体カバー部は、前記本体接続部の剛性を、本体剛性低減部(125)が設けられない場合に比較して低減させる剛性低減構造および前記カバー接続部の剛性をカバー剛性低減部(126)が設けられない場合に比較して低減させる剛性低減構造のうち、少なくともどちらか一方の剛性低減構造を有し、
前記少なくともどちらか一方の剛性低減構造は、前記本体接続部および前記カバー接続部のうち、少なくとも一方の接続部に当該接続部の剛性を低減させる空間が設けられる構造であ
って、
前記締結面は、前記所定軸心の延びる方向における前記シール部材の設置位置に対してずれて配置されるバルブ装置。
【請求項2】
バルブ装置であって、
回転力を出力する駆動部(16)と、
流体が流通する流路部(221)を有し、前記駆動部が出力する回転力によって所定軸心を中心に回転することで、前記流路部を流れる前記流体の流量を調整する弁体(20)と、
前記所定軸心周りを囲み、前記弁体を収容する収容空間(12d)を形成する本体側壁部(122)を有するとともに、前記所定軸心の一方側に開口部(120a)が形成されたハウジング本体部(120)と、
前記所定軸心周りを囲むカバー側壁部(124d)を有し、前記ハウジング本体部に締結されることで前記収容空間を閉塞する本体カバー部(124)と、
前記ハウジング本体部と前記本体カバー部との間で弾性変形することで、前記ハウジング本体部と前記本体カバー部との隙間をシールするシール部材(13)とを備え、
前記ハウジング本体部は、前記本体側壁部から前記シール部材よりも前記所定軸心の径方向外側に向かって延びる本体接続部(122k)と、前記本体接続部の前記所定軸心の径方向外側の端部に接続され、前記本体カバー部に当接する締結面(122p)を有する本体締結部(122m)とを含み、
前記本体カバー部は、前記カバー側壁部から前記シール部材よりも前記所定軸心の径方向外側に向かって延びるカバー接続部(124n)と、前記カバー接続部の前記所定軸心の径方向外側の端部に接続されるとともに、前記締結面に当接する当接面(124u)を有するカバー締結部(124p)とを含み、
前記ハウジング本体部および前記本体カバー部は、前記本体接続部の剛性を、本体剛性低減部(125)が設けられない場合に比較して低減させる剛性低減構造および前記カバー接続部の剛性をカバー剛性低減部(126)が設けられない場合に比較して低減させる剛性低減構造のうち、少なくともどちらか一方の剛性低減構造を有し、
前記少なくともどちらか一方の剛性低減構造は、前記本体接続部および前記カバー接続部のうち、少なくとも一方の接続部に当該接続部の剛性を低減させる空間が設けられる構造であ
って、
前記締結面は、前記所定軸心の延びる方向における前記本体接続部の設置位置に対してずれて配置されるバルブ装置。
【請求項3】
前記弁体と一体に前記所定軸心を中心に回転するシャフト(18)を備え、
前記本体カバー部は、前記カバー剛性低減部より前記所定軸心の径方向内側に、前記シャフトの前記所定軸心の一方側を前記シャフトが挿通された状態で回転可能に支持するシャフト支持部(124c)と、前記シャフトの外周部と前記シャフト支持部の内周部との隙間をシールするシャフトシール(124h)とを有する請求項1
または2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記流体が流通する流路孔(141、142)が少なくとも1つ形成された固定ディスク(14)を備え、
前記弁体は、前記流路孔と前記所定軸心が延びる方向に重なり合う部位に前記流路部が形成されるとともに、前記シャフトを貫通させるためのシャフト挿通孔(223)を有し、前記シャフトの回転に伴って前記所定軸心を中心に回転して前記流路孔と前記流路部との重なる範囲を変更することで、前記流路孔を流れる前記流体の流量を調整する回転子(22)を含み、
前記シャフト挿通孔の内周部と前記シャフトの外周部との間に所定の隙間が設けられている請求項
3に記載のバルブ装置。
【請求項5】
前記ハウジング本体部および前記本体カバー部は、前記本体締結部および前記カバー締結部にタッピングネジ(TN)が挿入されることによって締結される請求項1ないし
4のいずれか1つに記載のバルブ装置。
【請求項6】
前記ハウジング本体部および前記本体カバー部は、樹脂で構成されており、
前記本体剛性低減部および前記カバー剛性低減部のうち少なくとも一方の剛性低減部は、有底形状であって、一方側が開口し、開口する側とは反対側が閉塞している請求項1ないし
5のいずれか1つに記載のバルブ装置。
【請求項7】
バルブ装置であって、
回転力を出力する駆動部(16)と、
流体が流通する流路部(221)を有し、前記駆動部が出力する回転力によって所定軸心を中心に回転することで、前記流路部を流れる前記流体の流量を調整する弁体(20)と、
前記所定軸心周りを囲み、前記弁体を収容する収容空間(12d)を形成する本体側壁部(122)を有するとともに、前記所定軸心の一方側に開口部(120a)が形成されたハウジング本体部(120)と、
前記所定軸心周りを囲むカバー側壁部(124d)を有し、前記ハウジング本体部に締結されることで前記収容空間を閉塞する本体カバー部(124)と、
前記ハウジング本体部と前記本体カバー部との間で弾性変形することで、前記ハウジング本体部と前記本体カバー部との隙間をシールするシール部材(13)とを備え、
前記ハウジング本体部は、前記本体側壁部から前記シール部材よりも前記所定軸心の径方向外側に向かって延びる本体接続部(122k)と、前記本体接続部の前記所定軸心の径方向外側の端部に接続され、前記本体カバー部に当接する締結面(122p)を有する本体締結部(122m)とを含み、
前記本体カバー部は、前記カバー側壁部から前記シール部材よりも前記所定軸心の径方向外側に向かって延びるカバー接続部(124n)と、前記カバー接続部の前記所定軸心の径方向外側の端部に接続されるとともに、前記締結面に当接する当接面(124u)を有するカバー締結部(124p)とを含み、
前記ハウジング本体部および前記本体カバー部は、前記本体接続部の剛性を、本体剛性低減部(125)が設けられない場合に比較して低減させる剛性低減構造および前記カバー接続部の剛性をカバー剛性低減部(126)が設けられない場合に比較して低減させる剛性低減構造のうち、少なくともどちらか一方の剛性低減構造を有し、
前記少なくともどちらか一方の剛性低減構造は、前記本体接続部および前記カバー接続部のうち、少なくとも一方の接続部に当該接続部の剛性を低減させる空間が設けられる構造であ
って、
前記ハウジング本体部および前記本体カバー部は、樹脂で構成されており、
前記本体剛性低減部および前記カバー剛性低減部のうち少なくとも一方の剛性低減部は、有底形状であって、一方側が開口し、開口する側とは反対側が閉塞しているバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジング本体部および本体カバー部で形成される収容空間の内部に、所定軸心方向に延びるシャフトと、弁体とを備えたバルブ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のバルブ装置は、ハウジング本体部および本体カバー部が複数のねじで締結されている。また、特許文献1に記載のバルブ装置は、ハウジング本体部と本体カバー部との間に配置されたシール部材が所定軸心方向に弾性変形することでハウジング本体部と本体カバー部との隙間をシールして収容空間とバルブ装置の外部との間を閉塞している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のハウジング本体部および本体カバー部のそれぞれは、ねじで締結される部位に、互いに当接する複数の当接面を有する。仮に、これら当接面の平面度が設計精度より低い場合や、複数の当接面それぞれの平面高さにばらつきがある場合、ハウジング本体部と本体カバー部とが、所定軸心方向に対してハウジング本体部および本体カバー部が傾いて締結されることがある。そして、ハウジング本体部および本体カバー部が所定軸心方向に対して傾いた状態でねじによって締め付けられると、ハウジング本体部および本体カバー部それぞれの当接面に過剰な負荷がかかり、ハウジング本体部および本体カバー部が変形する虞がある。
【0005】
発明者らの鋭意検討によれば、ハウジング本体部および本体カバー部が変形していると、変形していない場合に比較して、シール部材を圧縮させる力が変化することで、シール部材の弾性変形量が変化する場合があることが分かった。そして、ハウジング本体部および本体カバー部が変形していない場合に比較してシール部材の弾性変形量が減少する場合においては、ハウジング本体部と本体カバー部との隙間をシール部材によってシールできないことがあることが分かった。これは、収容空間の密閉性を確保できず、流体がバルブ装置の外部に漏れる要因となるため好ましくない。
【0006】
本開示は、収容空間の密閉性を確保可能なバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
バルブ装置であって、
回転力を出力する駆動部(16)と、
流体が流通する流路部(221)を有し、駆動部が出力する回転力によって所定軸心を中心に回転することで、流路部を流れる流体の流量を調整する弁体(20)と、
所定軸心周りを囲み、弁体を収容する収容空間(12d)を形成する本体側壁部(122)を有するとともに、所定軸心の一方側に開口部(120a)が形成されたハウジング本体部(120)と、
所定軸心周りを囲むカバー側壁部(124d)を有し、ハウジング本体部に締結されることで収容空間を閉塞する本体カバー部(124)と、
ハウジング本体部と本体カバー部との間で弾性変形することで、ハウジング本体部と本体カバー部との隙間をシールするシール部材(13)とを備え、
ハウジング本体部は、本体側壁部からシール部材よりも所定軸心の径方向外側に向かって延びる本体接続部(122k)と、本体接続部の所定軸心の径方向外側の端部に接続され、本体カバー部に当接する締結面(122p)を有する本体締結部(122m)とを含み、
本体カバー部は、カバー側壁部からシール部材よりも所定軸心の径方向外側に向かって延びるカバー接続部(124n)と、カバー接続部の所定軸心の径方向外側の端部に接続されるとともに、締結面に当接する当接面(124u)を有するカバー締結部(124p)とを含み、
ハウジング本体部および本体カバー部は、本体接続部の剛性を、本体剛性低減部(125)が設けられない場合に比較して低減させる剛性低減構造およびカバー接続部の剛性をカバー剛性低減部(126)が設けられない場合に比較して低減させる剛性低減構造のうち、少なくともどちらか一方の剛性低減構造を有し、
少なくともどちらか一方の剛性低減構造は、本体接続部およびカバー接続部のうち、少なくとも一方の接続部に当該接続部の剛性を低減させる空間が設けられる構造であって、
締結面は、所定軸心の延びる方向におけるシール部材の設置位置に対してずれて配置される。
また、請求項2に記載の発明は、
バルブ装置であって、
回転力を出力する駆動部(16)と、
流体が流通する流路部(221)を有し、駆動部が出力する回転力によって所定軸心を中心に回転することで、流路部を流れる流体の流量を調整する弁体(20)と、
所定軸心周りを囲み、弁体を収容する収容空間(12d)を形成する本体側壁部(122)を有するとともに、所定軸心の一方側に開口部(120a)が形成されたハウジング本体部(120)と、
所定軸心周りを囲むカバー側壁部(124d)を有し、ハウジング本体部に締結されることで収容空間を閉塞する本体カバー部(124)と、
ハウジング本体部と本体カバー部との間で弾性変形することで、ハウジング本体部と本体カバー部との隙間をシールするシール部材(13)とを備え、
ハウジング本体部は、本体側壁部からシール部材よりも所定軸心の径方向外側に向かって延びる本体接続部(122k)と、本体接続部の所定軸心の径方向外側の端部に接続され、本体カバー部に当接する締結面(122p)を有する本体締結部(122m)とを含み、
本体カバー部は、カバー側壁部からシール部材よりも所定軸心の径方向外側に向かって延びるカバー接続部(124n)と、カバー接続部の所定軸心の径方向外側の端部に接続されるとともに、締結面に当接する当接面(124u)を有するカバー締結部(124p)とを含み、
ハウジング本体部および本体カバー部は、本体接続部の剛性を、本体剛性低減部(125)が設けられない場合に比較して低減させる剛性低減構造およびカバー接続部の剛性をカバー剛性低減部(126)が設けられない場合に比較して低減させる剛性低減構造のうち、少なくともどちらか一方の剛性低減構造を有し、
少なくともどちらか一方の剛性低減構造は、本体接続部およびカバー接続部のうち、少なくとも一方の接続部に当該接続部の剛性を低減させる空間が設けられる構造であって、
締結面は、所定軸心の延びる方向における本体接続部の設置位置に対してずれて配置される。
また、請求項7に記載の発明は、
バルブ装置であって、
回転力を出力する駆動部(16)と、
流体が流通する流路部(221)を有し、駆動部が出力する回転力によって所定軸心を中心に回転することで、流路部を流れる流体の流量を調整する弁体(20)と、
所定軸心周りを囲み、弁体を収容する収容空間(12d)を形成する本体側壁部(122)を有するとともに、所定軸心の一方側に開口部(120a)が形成されたハウジング本体部(120)と、
所定軸心周りを囲むカバー側壁部(124d)を有し、ハウジング本体部に締結されることで収容空間を閉塞する本体カバー部(124)と、
ハウジング本体部と本体カバー部との間で弾性変形することで、ハウジング本体部と本体カバー部との隙間をシールするシール部材(13)とを備え、
ハウジング本体部は、本体側壁部からシール部材よりも所定軸心の径方向外側に向かって延びる本体接続部(122k)と、本体接続部の所定軸心の径方向外側の端部に接続され、本体カバー部に当接する締結面(122p)を有する本体締結部(122m)とを含み、
本体カバー部は、カバー側壁部からシール部材よりも所定軸心の径方向外側に向かって延びるカバー接続部(124n)と、カバー接続部の所定軸心の径方向外側の端部に接続されるとともに、締結面に当接する当接面(124u)を有するカバー締結部(124p)とを含み、
ハウジング本体部および本体カバー部は、本体接続部の剛性を、本体剛性低減部(125)が設けられない場合に比較して低減させる剛性低減構造およびカバー接続部の剛性をカバー剛性低減部(126)が設けられない場合に比較して低減させる剛性低減構造のうち、少なくともどちらか一方の剛性低減構造を有し、
少なくともどちらか一方の剛性低減構造は、本体接続部およびカバー接続部のうち、少なくとも一方の接続部に当該接続部の剛性を低減させる空間が設けられる構造であって、
ハウジング本体部および本体カバー部は、樹脂で構成されており、
本体剛性低減部およびカバー剛性低減部のうち少なくとも一方の剛性低減部は、有底形状であって、一方側が開口し、開口する側とは反対側が閉塞している。
【0008】
これによれば、本体接続部に空間が設けられる場合、締結面および当接面の平面度が比較的低いことでハウジング本体部と本体カバー部とが締結される際に当接面に過剰な負荷がかかっても、本体接続部より内側の部位に比較して本体接続部が変形し易い。また、カバー接続部に空間が設けられる場合、締結面および当接面の平面度が比較的低いことによってハウジング本体部と本体カバー部とが締結される際に当接面に過剰な負荷がかかっても、カバー接続部より内側の部位に比較してカバー接続部が変形し易い。
【0009】
このため、ハウジング本体部および本体カバー部において、本体接続部およびカバー接続部より内側に設けられたシール部材を圧縮する部位が変形することを抑制できる。したがって、ハウジング本体部および本体カバー部との変形に起因するシール部材の弾性変形量の減少を抑制できるので、収容空間の密閉性を確保することができる。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1のIIで示す矢印の方向から見たバルブ装置の側面図である。
【
図5】実施形態に係るバルブ装置の本体部の断面図である。
【
図6】
図5のVIで示す矢印の方向から見た本体部の上面図である。
【
図7】実施形態に係るバルブ装置の本体カバー部の上面図である。
【
図8】実施形態に係るバルブ装置の本体カバー部の底面図である。
【
図9】比較するバルブ装置の内部に亀裂が生じた状態を示す図である。
【
図10】実施形態に係るバルブ装置の内部に亀裂が生じた状態を示す図である。
【
図11】他の実施形態に係るバルブ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の一実施形態について
図1~
図10に基づいて説明する。本実施形態では、本開示のバルブ装置10を、電動車両における車室内空調および電池温調に供される温調機器に適用した例について説明する。電動車両の温調機器に用いるバルブ装置10は、車室内および電池それぞれに応じた温度の微調整が必要であり、内燃機関であるエンジンの冷却水回路に用いるものに比べて、流体の流量を精度よく調整する必要がある。
【0015】
図1に示すバルブ装置10は、車室内および電池の温度を調整するための流体(本例では、冷却水)が循環する流体循環回路に適用される。バルブ装置10は、流体循環回路のうちバルブ装置10を介した流通経路における流体の流量を増減することができるとともに、当該流通経路における流体の流れを遮断することもできる。流体としては、例えばエチレングリコールを含むLLCなどが用いられる。なお、LLCはLong Life Coolant の略称である。
【0016】
図1および
図2に示すように、バルブ装置10は、内部に流体を流通させる流体通路を形成するハウジング12を有する。バルブ装置10は、流体が流入する入口部12a、流体を流出させる第1出口部12b、流体を流出させる第2出口部12cがハウジング12に設けられた三方弁で構成されている。バルブ装置10は、単に流路切替弁としての機能だけでなく、入口部12aから第1出口部12bへ流れる流体と、入口部12aから第2出口部12cへ流れる流体との流量割合を調整する流量調整弁としても機能する。
【0017】
バルブ装置10は、
図3に示すように、後述するシャフト18の軸心CLまわりに円盤状の回転子が回転することで、バルブ開閉動作を行うディスクバルブとして構成されている。なお、本実施形態は、後述するシャフト18の軸心CLに沿う方向を軸心方向DRaとし、当該軸心方向DRaに直交するとともに軸心方向DRaから放射状に拡がる方向を径方向DRrとして各種構成等を説明する。また、本実施形態は、軸心CLまわりの方向を周方向DRcとして各種構成等を説明する。なお、
図3においては、図面を見やすく図示するために、駆動部16を省略している。
【0018】
バルブ装置10は、ハウジング12の内側に固定ディスク14、シャフト18、弁体20、コンプレッションスプリング26、第1トーションスプリング28、第2トーションスプリング30等が収容される。また、バルブ装置10は、ハウジング12の外側に駆動部16等が配置されている。
【0019】
ハウジング12は、回転しない非回転部材である。ハウジング12は、例えば樹脂材料によって形成されている。ハウジング12は、軸心方向DRaに沿って延びる有底筒形状の本体部120と、本体部120の軸心方向DRaの一方側に形成される開口部120aを閉塞する本体カバー部124とを有している。本体部120および本体カバー部124それぞれは、樹脂材料を金型に流し込んで所望の形状に固める射出成型によって成型されている。本体部120はハウジング本体部に相当する。
【0020】
本体部120は、底面を形成する底壁部121および軸心CLまわりを囲む本体側壁部122を有している。本体側壁部122は、本体カバー部124とともに、後述する弁体20を収容する収容空間を形成する。底壁部121および本体側壁部122は一体に成型された一体成型物として構成されている。
【0021】
底壁部121には、後述する固定ディスク14の第1流路孔141および第2流路孔142に合わせて段差が設けられている。これに対して、底壁部121において、後述する固定ディスク14の第3流路孔143に対向する部位には、段差が設けられていない。すなわち、底壁部121は、後述する固定ディスク14の第1流路孔141および第2流路孔142に対向する部位が固定ディスク14の流路孔143に対向する部位に比べて、本体カバー部124との距離が大きくなっている。
【0022】
底壁部121は、固定ディスク14の第1流路孔141および第2流路孔142に対向して段差が設けられた段差部位121aおよび固定ディスク14の流路孔143に対向して段差が設けられていない非段差部位121bを有する。底壁部121は、段差部位121aが固定ディスク14から大きく離れるとともに、非段差部位121bが固定ディスク14に近接している。
【0023】
本体側壁部122には、底壁部121よりも開口部120aに近い位置に入口部12aが形成され、開口部120aよりも底壁部121に近い位置に第1出口部12bおよび第2出口部12cが形成されている。入口部12a、第1出口部12b、および第2出口部12cは、内側に流路が形成された管状の部材で構成されている。
【0024】
本体側壁部122の内側には、入口部12aが形成された部位と各出口部12b、12cが形成された部位との間に、固定ディスク14を載置するための載置部122aが設けられている。また、本体側壁部122は、固定ディスク14と径方向DRrに対向する第1ディスク対向部122cと、駆動ディスク22と径方向DRrに対向する第2ディスク対向部122dとを有する。
【0025】
さらに、本体側壁部122の内側には、第1ディスク対向部122cおよび第2ディスク対向部122dよりも開口部120aに近い位置に後述のシール部材13が配置されるシール設置部122eが設けられている。また、
図6に示すように、本体側壁部122のうち、第1ディスク対向部122cの内側には、後述する固定ディスク14の回り止め突起145を受け入れる受入溝122fが形成されている。
【0026】
そして、本体側壁部122の外側には、本体部120に本体カバー部124を取り付けるための本体取付部122hと、バルブ装置10を電動車両に取り付けるための設置部123が設けられている。設置部123は、バルブ装置10が電動車両に取り付ける際に電動車両に連結される部位であって、電動車両に連結するための連結部材が挿通される挿通穴を有する。
【0027】
載置部122aは、固定ディスク14における開口面140の裏面に当接する部位である。載置部122aは、本体側壁部122において内径が変化する部位に形成されている。具体的には、載置部122aは、径方向DRrに拡がる平坦な部位である。載置部122aには、後述のガスケット15を配置するための収容溝122bが形成されている。
【0028】
第1ディスク対向部122cは、第1ディスク対向部122cのうち受入溝122fを除く部位の内径Dhが、固定ディスク14のうち回り止め突起145を除く部位の外径Ddよりも大きくなっている。これにより、固定ディスク14を載置部122aに設置した状態で、固定ディスク14と本体側壁部122との間に隙間が形成される。換言すれば、固定ディスク14は、本体側壁部122によって位置決めされていない。
【0029】
受入溝122fは、軸心CLから遠ざかるように第1ディスク対向部122cの内側が窪んで形成されている。受入溝122fは、溝の深さに比較して、第1ディスク対向部122cのうち受入溝122fが形成される部位の厚さが充分確保可能な大きさで形成されている。また、受入溝122fは、径方向DRrにおいて、軸心CLと第1出口部12bとの間に介在する部位とは異なる部位であって、且つ、軸心CLと第2出口部12cとの間に介在する部位とは異なる部位に形成されている。
【0030】
第2ディスク対向部122dは、その内径が、第1ディスク対向部122cの内径よりも大きい。また、第2ディスク対向部122dの内径は、駆動ディスク22の外径よりも大きい。これにより、駆動ディスク22と本体側壁部122との間に隙間が形成される。すなわち、駆動ディスク22は、本体側壁部122に接触せず、本体側壁部122によって位置決めされていない。なお、駆動ディスク22の外径は、固定ディスク14の外径Ddと略同等になっている。
【0031】
ハウジング12の内側は、固定ディスク14によって第1流路孔141に連通する入口側空間12dと出口側空間12eとに仕切られている。入口側空間12dは、ハウジング12の内側にて入口部12aに連通する空間であって、弁体20を収容する収容空間でもある。出口側空間12eは、ハウジング12内側にて第1出口部12bおよび第2出口部12cに連通する空間である。
【0032】
図示しないが、本体部120の内側には、出口側空間12eを第1流路孔141に連通する第1出口側空間と第2流路孔142に連通する第2出口側空間とに仕切る板状の仕切部が設定されている。この仕切部は、出口側空間12eを径方向DRrに沿って横断するように設けられている。
【0033】
シール設置部122eは、本体側壁部122の開口部120aが形成されている側の端部の内径を他の部位に比較して大きくすることで、径方向DRrに拡がる平坦な部位で形成される。シール設置部122eは、本体部120と本体カバー部124との隙間を閉塞するシール部材13が配置される部位である。
【0034】
本体取付部122hは、本体側壁部122における開口部120aが形成されている側の端部から径方向DRrの外側に向かって突出する部位である。本体取付部122hは、
図6に示すように、周方向DRcに沿って、所定の間隔を空けて3つ設けられている。
【0035】
3つの本体取付部122hのそれぞれは、本体側壁部122から径方向DRrの外側に向かって延びる本体接続部122kと、本体接続部122kの本体側壁部122に接続される側とは反対側の端部に設けられる本体締結部122mとを有する。本体接続部122kおよび本体締結部122mは、一体に成型された一体成型物として構成されている。3つの本体取付部122hのそれぞれは、
図4~
図6に示すように、基本的な構造が同じであるため、3つの本体取付部122hのうちの1つの本体取付部122hのみについて説明し、その他の本体取付部122hの説明は省略する。なお、
図5においては、本体部120の内部に収容された各種構成機器を省略している。
【0036】
本体接続部122kは、本体側壁部122の外周部と本体締結部122mとを接続する部位であって、本体側壁部122の外周部と本体締結部122mとの距離を確保するための部位である。本体接続部122kは、厚さ方向が軸心方向DRaである板状であって、本体側壁部122からシール部材13より径方向DRrの外側に向かって突出している。また、本体接続部122kは、径方向DRrの内側の端部に本体側壁部122の外周部が連なり、径方向DRrの外側の端部に本体締結部122mが連なっている。
【0037】
本体接続部122kは、径方向DRrの大きさより軸心方向DRaの大きさが大きい。また、本体接続部122kは、径方向DRrの大きさより径方向DRrおよび軸心方向DRaに直交する方向の大きさが大きく形成されている。
【0038】
本体接続部122kには、本体接続部122kの剛性を低減させる本体剛性低減部125を有する剛性低減構造が設けられている。本体剛性低減部125は、本体側壁部122および本体締結部122mに比較して本体接続部122kの剛性を低減させるものである。本体剛性低減部125の詳細な説明は後述する。
【0039】
本体締結部122mは、本体部120と本体カバー部124とを締結させるための締結部材TNが取り付けられる部位である。本体締結部122mは、軸心方向DRaに沿って延びる筒状であって、本体接続部122kよりも径方向DRrの外側に設けられている。本体締結部122mは、軸心方向DRaの大きさが本体接続部122kの軸心方向DRaの大きさよりも大きく、本体接続部122kよりも軸心方向DRaの一方側に突出している。
【0040】
具体的に、本体締結部122mは、軸心方向DRaの一方側の端部が本体接続部122kの軸心方向DRaの一方側の端部より駆動部16に近い位置まで延びている。これに対して、本体締結部122mの軸心方向DRaの他方側の端部の位置は、本体接続部122kの軸心方向DRaの他方側の端部の位置に等しい。
【0041】
本体締結部122mは、本体部120に本体カバー部124を締結するための締結部材TNが挿入される本体挿入穴122nが軸心方向DRaに沿って形成されている。本体挿入穴122nおよび後述するカバー挿入穴124tに締結部材TNが挿入されることによって、本体部120と本体カバー部124とが締結される。本体挿入穴122nは、締結部材TNにおける本体挿入穴122nに挿入される部位の外径より僅かに小さく形成されている。
【0042】
本実施形態では、本体部120に本体カバー部124を締結するための締結部材TNとして、金属材料で構成されたタッピングネジが採用されている。このため、本体部120に本体カバー部124を締結する際に、本体締結部122mに締結部材TNがねじ込まれて締結される。本体締結部122mは、本体部120と本体カバー部124とが締結される際に、本体カバー部124に当接する締結面122pを有する。
【0043】
締結面122pは、本体締結部122mにおける軸心方向DRaの一方側に形成される平面部である。締結面122pは、シール部材13および本体締結部122mそれぞれの設置位置より軸心方向DRaの一方側にずれる位置に形成されている。本実施形態のバルブ装置10は、本体部120に本体カバー部124を締結する際に本体カバー部124に当接する締結面122pを3つ有する。
【0044】
本体カバー部124は、本体部120の開口部120aを覆う蓋部材である。本体カバー部124は
図3、
図7、
図8に示すように、板部124a、リブ部124b、ハウジングボス部124c、カバー側壁部124d、カバー取付部124eを含んで構成されている。板部124a、リブ部124b、ハウジングボス部124c、カバー側壁部124d、カバー取付部124eは、一体に成型された一体成型物として構成されている。
【0045】
板部124aは、径方向DRrに延びる円環形状の部位である。板部124aは、本体カバー部124のうち、本体側壁部122および固定ディスク14とともに、入口側空間12dを形成する。
【0046】
また、板部124aは、軸心方向DRaの他方側から一方側に向かって外径が段階的に大きくなっている。具体的には、板部124aは、軸心方向DRaの他方側に位置するシール支持部124fと、シール支持部124fに連なる蓋部124gとを備える。そして、板部124aは、シール支持部124fの外径に比較して蓋部124gの外径が大きくなっている。
【0047】
シール支持部124fは、シール設置部122eに設置されるシール部材13を挟持するための部位である。シール支持部124fの外径は、開口部120aの内径より僅かに小さく形成されている。このため、開口部120aの内周部とシール支持部124fの外周部との間に隙間が発生する。
【0048】
シール支持部124fは、開口部120aから入口側空間12dに挿入される際に、シール支持部124fの軸心方向DRaの他方側の面とシール設置部122eとの間にシール部材13を挟持する。これにより、開口部120aの内周部とシール支持部124fの外周部との隙間がシール部材13によって閉塞される。
【0049】
蓋部124gは、本体部120と本体カバー部124とが締結される際に、開口部120aを閉塞するための部位である。蓋部124gは、シール支持部124fよりも径方向DRrの外側に位置する。蓋部124gの外径は、本体部120の開口部120aの内径より大きくなっており、開口部120aに挿入不可能になっている。また、蓋部124gの外径は、本体側壁部122の外径と略同等になっている。
【0050】
シール部材13は、弾性体であるウレタンゴムで構成されており、シール支持部124fとシール設置部122eとで挟持された際に、軸心方向DRaに弾性変形可能に構成されている。また、シール部材13は、軸心方向DRaを厚み方向とする環状の部材で構成されている。本実施形態では、シール部材13は、Oリングが採用されている。
【0051】
シール部材13は、外径が開口部120aの内径より僅かに小さく、内径がリブ部124bの外径より僅かに大きく形成されている。換言すれば、シール部材13は、本体部120の開口部120aの内径より僅かに小さい外径を有し、リブ部124bの外径より僅かに大きい内径を有する。
【0052】
シール部材13は、本体部120と本体カバー部124とが締結される際に、シール支持部124fの軸心方向DRaの他方側の面とシール設置部122eとの間に挟持されて軸心方向DRaに圧縮されて所望の形状に弾性変形する。
【0053】
リブ部124bは、本体カバー部124のうち本体部120の開口部120aに嵌め込まれる部位である。リブ部124bは、筒形状であって板部124aの外周側に設けられている。リブ部124bは、板部124aから底壁部121に向かって突き出るように設けられている。
【0054】
ハウジングボス部124cは、内側にシャフト18が挿通される部位である。ハウジングボス部124cは、筒形状であって板部124aの内周側に設けられている。ハウジングボス部124cは、内側にシャフト18との隙間をシールする円環形状のシャフトシール124hが設けられ、外側に駆動部16との隙間をシールするOリング124kが設けられている。また、ハウジングボス部124cの内側には、シャフト18を回転可能に支持する軸受部124mが配置されている。本実施形態では、ハウジングボス部124cがシャフト支持部として機能する。
【0055】
カバー側壁部124dは、内側に駆動部16が挿入される部位であって、軸心CLを囲んでいる。カバー側壁部124dは、筒形状であってハウジングボス部124cの外周側に設けられている。駆動部16は、ハウジングボス部124cの外周部とカバー側壁部124dの内周部との間に挿入される。
【0056】
カバー取付部124eは、カバー側壁部124dの外周部から径方向DRrの外側に向かって突出して形成されている。カバー取付部124eは、
図7に示すように、カバー側壁部124dの外周部において、周方向DRcに沿って、所定の間隔を空けて3つ設けられている。3つのカバー取付部124eそれぞれは、本体取付部122hに対応する位置に設けられている。具体的に、3つのカバー取付部124eそれぞれは、3つの本体取付部122hのいずれか1つと軸心方向DRaに重なる位置に設けられている。
【0057】
3つのカバー取付部124eのそれぞれは、カバー側壁部124dから径方向DRrの外側に向かって延びるカバー接続部124nと、カバー接続部124nのカバー側壁部124dに接続される側とは反対側の端部に設けられるカバー締結部124pとを有する。カバー接続部124nおよびカバー締結部124pは、一体に成型された一体成型物として構成されている。3つのカバー取付部124eのそれぞれは、基本的な構造が同じであるため、3つのカバー取付部124eのうちの1つのカバー取付部124eのみについて説明し、その他のカバー取付部124eの説明は省略する。
【0058】
カバー接続部124nは、カバー側壁部124dの外周部とカバー締結部124pとを接続する部位である。カバー接続部124nは、厚さ方向が軸心方向DRaである板状であって、カバー側壁部124dからシール部材13より径方向DRrの外側に向かって径方向DRrに沿って延びている。また、カバー接続部124nは、径方向DRrの内側の端部にカバー側壁部124dの外周部が連なり、径方向DRrの外側の端部にカバー締結部124pが連なっている。
【0059】
カバー接続部124nは、径方向DRrの内側から外側に向かうにしたがって軸心方向DRaの大きさが小さくなっている。具体的に、カバー接続部124nは、径方向DRrの内側に位置する内側接続部124rと、内側接続部124rに連なる外側接続部124sとを備える。そして、カバー接続部124nは、内側接続部124rの軸心方向DRaの大きさに比較して、外側接続部124sの軸心方向DRaの大きさが小さくなっている。
【0060】
内側接続部124rは、カバー接続部124nのうち、本体側壁部122の外周部より径方向DRrの内側に位置する部位である。これに対して、外側接続部124sは、カバー接続部124nのうち、本体側壁部122の外周部より径方向DRrの外側に位置する部位である。すなわち、外側接続部124sは、本体側壁部122より径方向DRrの外側に突出している。さらに、外側接続部124sは、シール部材13よりも径方向DRrの外側に位置付けられている。
【0061】
外側接続部124sは、軸心方向DRaにおいて、本体接続部122kと対向している。外側接続部124sには、カバー接続部124nの剛性を低減させるカバー剛性低減部126を有する剛性低減構造が設けられている。カバー剛性低減部126の詳細な説明は後述する。
【0062】
カバー締結部124pは、本体部120と本体カバー部124とを締結させるための締結部材TNが取り付けられる部位である。カバー締結部124pは、厚さ方向が軸心方向DRaである円盤状であって、カバー接続部124nよりも径方向DRrの外側に設けられている。カバー締結部124pの軸心方向DRaの大きさは、内側接続部124rの軸心方向DRaの大きさより小さく、外側接続部124sの軸心方向DRaの大きさと略同等である。
【0063】
カバー締結部124pは、本体部120に本体カバー部124を締結するための締結部材TNが挿入されるカバー挿入穴124tと、本体部120に本体カバー部124を締結される際に締結面122pに当接する当接面124uを有する。本実施形態のバルブ装置10は、3つの締結面122pそれぞれに対応する位置に当接面124uを3つ有する。当接面124uは、シール部材13の設置位置より軸心方向DRaの一方側にずれる位置に形成されている。
【0064】
カバー挿入穴124tは、軸心方向DRaに沿ってカバー締結部124pの軸心方向DRaの一方側から他方側まで貫通して形成されている。また、カバー挿入穴124tは、本体挿入穴122nに対応する位置に形成されている。本実施形態では、カバー挿入穴124tの内径は、本体挿入穴122nの内径および締結部材TNにおける本体挿入穴122nに挿入される部位の外径より大きく形成されている。このため、本体カバー部124は、本体部120に締結される際に、締結部材TNがねじ込まれることなく、カバー挿入穴124tに締結部材TNが挿通される。
【0065】
そして、本体挿入穴122nに締結部材TNがねじ込まれて、締結面122pと当接面124uとが当接する位置まで締め付けられることによって、本体部120と本体カバー部124とが締結される。
【0066】
固定ディスク14は、軸心方向DRaを厚み方向とする円盤状の部材で構成されている。固定ディスク14は、駆動ディスク22が摺動する表面としての開口面140を有する。開口面140は、後述する駆動ディスク22の摺動面220に接触する接触面である。
固定ディスク14は、ハウジング12の構成材料に比較して、線膨張係数が小さく、且つ、耐摩耗性に優れた材料で形成されていることが望ましい。固定ディスク14は、ハウジング12よりも硬度が高い高硬度材料で構成されている。具体的には、固定ディスク14はセラミックで構成されている。固定ディスク14は、セラミックの粉末をプレス機によって所望の形状に成型された粉末成型体である。なお、固定ディスク14は、開口面140を形成する部位だけが、ハウジング12の構成材料に比較して、セラミック等の線膨張係数が小さく、且つ、耐摩耗性に優れた材料で形成されていてもよい。
【0067】
また、固定ディスク14は、
図6に示すように、流体が通過する第1流路孔141および第2流路孔142が形成された流路形成部を構成する。したがって、本実施形態のバルブ装置10は、流路形成部である固定ディスク14がハウジング12とは別体の部材として構成されている。
【0068】
また、固定ディスク14には、流体が通過しない第3流路孔143が形成されている。そして、固定ディスク14は、本体側壁部122に対向する固定外周部144と、本体側壁部122に向かって突出して形成された回り止め突起145とを有する。
【0069】
各流路孔141、142、143は、シャフト18の軸心CLと重ならないように、固定ディスク14のうちシャフト18の軸心CLから離れた位置に形成されている。各流路孔141、142、143は、セクタ状(すなわち、扇形状)の貫通孔である。第1流路孔141および第2流路孔142は、入口側空間12dと出口側空間12eとを連通させる連通路として機能する。これに対して、第3流路孔143は、非段差部位121bによって軸心方向DRaの他方側が閉塞されており、入口側空間12dと出口側空間12eとを連通させる連通路として機能しない。なお、各流路孔141、142、143は円形状、楕円形状など他の形状であってもよい。
【0070】
具体的には、第1流路孔141は、第1出口側空間に連通するように、固定ディスク14のうち、第1出口側空間に対応する部位に設けられている。また、第2流路孔142は、第2出口側空間に連通するように、固定ディスク14のうち、第2出口側空間に対応する部位に設けられている。第3流路孔143は、第1出口側空間および第2出口側空間に連通しないように、非段差部位121bに対応する部位に設けられている。
【0071】
固定ディスク14の略中心部分には、固定ディスク孔146が形成されている。固定ディスク孔146は、シャフト18が挿通される固定側挿通孔である。固定ディスク孔146は、シャフト18が摺動しないように、その内径がシャフト18の直径よりも大きくなっている。具体的に、固定ディスク孔146は、シャフト18を挿通させた状態でシャフト18を傾動可能なように、固定ディスク孔146の内周部とシャフト18の外周部との間に所定の隙間が形成される大きさになっている。
【0072】
固定外周部144は、固定ディスク14の外殻を形成する部位である。固定外周部144は、回り止め突起145を形成する部位が受入溝122fに対向している。
【0073】
回り止め突起145は、受入溝122fに嵌められることによって、固定ディスク14が周方向DRcに回転することを抑制する回転抑制部である。回り止め突起145は、固定ディスク14が本体部120の内部に収容された際に、径方向DRrにおいて、受入溝122fに相対する位置に形成されている。回り止め突起145は、固定外周部144の一部が軸心CLから遠ざかるよう、固定外周部144のうち回り止め突起145が形成されていない部位よりも径方向DRrの外側に突出して形成されている。
【0074】
固定ディスク14と載置部122aとの間には、固定ディスク14と載置部122aとの隙間をシールするガスケット15が配置されている。ガスケット15は、ゴム製である。ガスケット15は、載置部122aに形成された収容溝122bに収容される。ガスケット15は、固定ディスク14に対向するシール面に2つ以上の突起が設けられ、載置部122aに対向するシール面に2つ以上の突起が設けられている。具体的には、ガスケット15には、軸心方向DRaに向けて突き出る2つの突起が設けられている。このようなガスケット15は、例えば、平坦なシール面に対して窪みを形成するといった簡易な手法によって得ることができる。
【0075】
駆動部16は、回転力を出力するための機器である。図示しないが、駆動部16は、駆動源としてのモータと、モータの出力をシャフト18に伝達する動力伝達部材としてのギア部とを有している。モータは、例えばサーボモータまたはブラシレスモータが採用される。ギア部は、例えば、ヘリカルギアまたは平歯車を含むギア機構部で構成されている。図示しないが、モータは、モータと電気的に連結したバルブ制御部からの制御信号に従って回転する。バルブ制御部は、非遷移的実体的記憶媒体であるメモリ、およびプロセッサなどを有するコンピュータである。バルブ制御部は、メモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行するとともに、コンピュータプログラムに従って種々の制御処理を実行する。
【0076】
シャフト18は、駆動部16が出力する回転力によって所定の軸心CLを中心に回転する回転軸である。シャフト18は、軸心方向DRaに沿って延びている。シャフト18は、軸心方向DRaの両側がハウジング12に回転可能に支持されている。すなわち、シャフト18は、両端支持構造になっている。シャフト18は、固定ディスク14および駆動ディスク22を貫通してハウジング12に対して回転可能に支持されている。
【0077】
具体的には、シャフト18は、軸心方向DRaの一方側が本体カバー部124の内側においてカバー剛性低減部126より径方向DRrの内側に設けられた軸受部124mによって回転可能に支持されている。また、シャフト18は、軸心方向DRaの他方側が本体部120の底壁部121に形成された軸受孔部121cに支持されている。軸受孔部121cは、滑り軸受で構成されている。なお、軸受孔部121cは、滑り軸受ではなく、玉軸受等で構成されていてもよい。
【0078】
シャフト18は、金属製の軸心部181と、軸心部181に連結される樹脂製のホルダ部182と、を含んでいる。軸心部181およびホルダ部182は、一体に回転可能なように互いに連結されている。軸心部181およびホルダ部182は、インサート成型によって一体に成型されたインサート成型品である。
【0079】
軸心部181は、シャフト18の軸心CLを含むとともに軸心方向DRaに沿って延びている。軸心部181は、弁体20の回転中心となる部位である。軸心部181は、真直度を確保するために、金属製の棒部材で構成されている。
【0080】
ホルダ部182は、軸心部181の軸心方向DRaの一方側に連結されている。ホルダ部182は、有底筒形状である。ホルダ部182は、軸心方向DRaの一方側の先端部の内側に軸心部181が連結されている。また、ホルダ部182は、ハウジング12の外側に突き出た先端部が駆動部16のギア部に連結されている。
【0081】
弁体20は、駆動部16の出力によってシャフト18の軸心CLを中心に回転する。弁体20は、シャフト18の回転に伴って固定ディスク14の各流路孔141、142の開度を増減する。
図3に示すように、弁体20は、回転子としての駆動ディスク22と、シャフト18に駆動ディスク22を連結するレバー24とを有している。
【0082】
駆動ディスク22は、シャフト18の回転に伴って第1流路孔141の開度および第2流路孔142の開度を増減する回転子である。なお、第1流路孔141の開度は、第1流路孔141が開かれている度合いであり、第1流路孔141の全開を100%、全閉を0%として表される。第1流路孔141の全開は、例えば、第1流路孔141が駆動ディスク22に全く塞がれていない状態である。第1流路孔141の全閉は、例えば、第1流路孔141の全体が駆動ディスク22に塞がれている状態である。第2流路孔142の開度は、第1流路孔141の開度と同様である。
【0083】
駆動ディスク22は、軸心方向DRaを厚み方向とする円盤状の部材で構成されている。駆動ディスク22は、軸心方向DRaにおいて固定ディスク14に相対するように入口側空間12dに配置されている。駆動ディスク22は、固定ディスク14の開口面140に相対する摺動面220を有する。摺動面220は、固定ディスク14の開口面140をシールするシール面である。
【0084】
駆動ディスク22は、ハウジング12の構成材料に比較して、線膨張係数が小さく、且つ、耐摩耗性に優れた材料で形成されていることが望ましい。駆動ディスク22は、ハウジング12よりも硬度が高い高硬度材料で構成されている。具体的には、駆動ディスク22はセラミックで構成されている。駆動ディスク22は、セラミックの粉末をプレス機によって所望の形状に成型された粉末成型体である。なお、駆動ディスク22は、摺動面220を形成する部位だけが、ハウジング12の構成材料に比較して、セラミック等の線膨張係数が小さく、且つ、耐摩耗性に優れた材料で形成されていてもよい。
【0085】
ここで、セラミックは、線膨張係数が小さく、且つ、吸水による寸法変化が少ない材料であって、耐摩耗性も優れている。駆動ディスク22をセラミックで構成すれば、駆動ディスク22とシャフト18との相対的な位置関係や駆動ディスク22とハウジング12との相対的な位置関係が安定する。この結果、流体の流量制御の精度を確保したり、意図しない流体漏れを抑えたりすることができる。
【0086】
また、駆動ディスク22には、シャフト18の軸心CLに対して偏心した位置に回転子孔221が形成されている。回転子孔221は、軸心方向DRaに貫通する貫通孔であって、流体が流通する流路部である。回転子孔221は、駆動ディスク22のシャフト18の軸心CLまわりを回転させた際に、駆動ディスク22において第1流路孔141および第2流路孔142と軸心方向DRaに重なり合う部位に形成されている。
【0087】
駆動ディスク22には、略中心部分にシャフト挿通孔223が形成されている。シャフト挿通孔223は、シャフト18が挿通される駆動側挿通孔である。シャフト挿通孔223は、シャフト18が摺動しないように、その内径がシャフト18の直径よりも大きくなっている。具体的に、シャフト挿通孔223は、シャフト18を挿通させた状態でシャフト18を傾動可能なように、シャフト挿通孔223の内周部とシャフト18の外周部との間に所定の隙間が形成される大きさになっている。
【0088】
バルブ装置10は、回転子孔221が第1流路孔141と軸心方向DRaに重なり合うように駆動ディスク22を回転させると、第1流路孔141が開放される。また、バルブ装置10は、回転子孔221が第2流路孔142と軸心方向DRaに重なり合うように駆動ディスク22を回転させると、第2流路孔142が開放される。
【0089】
駆動ディスク22は、第1流路孔141を通過する流体および第2流路孔142を通過する流体の流量割合を調整可能に構成されている。すなわち、駆動ディスク22は、第1流路孔141の開度が大きくなるにともなって第2流路孔142の開度が小さくなるように構成されている。
【0090】
レバー24は、シャフト18に駆動ディスク22を連結する連結部材である。レバー24は、駆動ディスク22に固定されるとともに、駆動ディスク22がシャフト18の軸心方向DRaに変位可能な状態で、駆動ディスク22およびシャフト18を一体に回転可能に連結する。
【0091】
コンプレッションスプリング26は、弁体20を固定ディスク14に付勢する付勢部材である。コンプレッションスプリング26は、シャフト18の軸心方向DRaに弾性変形する。コンプレッションスプリング26は、軸心方向DRaの一方側の端部がシャフト18に接し、軸心方向DRaの他方側の端部が弁体20に接するように、軸心方向DRaに圧縮された状態でハウジング12の内側に配置されている。具体的には、コンプレッションスプリング26は、軸心方向DRaの一方側の端部がホルダ部182の内側に接し、軸心方向DRaの他方側の端部がレバー24に接するように配置されている。コンプレッションスプリング26は、トーションスプリングとして機能しないように、弁体20およびシャフト18の少なくとも一方に対して固定されていない。
【0092】
コンプレッションスプリング26によって弁体20が固定ディスク14に押し付けられることで、固定ディスク14の開口面140と駆動ディスク22の摺動面220との接触状態が維持される。この接触状態は、固定ディスク14の開口面140と駆動ディスク22の摺動面220とが面接触した状態である。すなわち、バルブ装置10は、駆動ディスク22の姿勢を固定ディスク14に接する姿勢に維持することができる。
【0093】
具体的には、コンプレッションスプリング26は、シャフト18の軸心CLを囲むように配置されている。換言すれば、シャフト18は、コンプレッションスプリング26の内側に配置されている。これによると、駆動ディスク22に対するコンプレッションスプリング26の荷重がシャフト18の周方向DRcで偏ることが抑制されるので、摺動面220と開口面140との接触状態が維持され易くなる。
【0094】
第1トーションスプリング28は、シャフト18をハウジング12に対してシャフト18の軸心CLまわりの周方向DRcに付勢するスプリングである。第1トーションスプリング28は、ハウジング12とシャフト18との間に配置されている。
【0095】
第1トーションスプリング28は、基本的に、周方向DRcに捩られて弾性変形した状態で使用される。第1トーションスプリング28の付勢力は、シャフト18が回転している場合にも止まっている場合にもシャフト18に作用する。そして、第1トーションスプリング28の付勢力は、シャフト18を介して駆動部16のギア部からモータに回転力として伝達される。このため、第1トーションスプリング28をハウジング12とシャフト18との間に配置することで、駆動部16とシャフト18との間における周方向DRcのガタツキが抑制される。なお、第1トーションスプリング28は、周方向DRcに捩じられているだけで軸心方向DRaに圧縮されているわけではない。
【0096】
第2トーションスプリング30は、レバー24をシャフト18に対して周方向DRcに付勢するスプリングである。第2トーションスプリング30は、シャフト18とレバー24との間に配置されている。第2トーションスプリング30は、第1トーションスプリング28に比べて軸心方向DRaの寸法および径方向DRrの寸法が小さくなっている。
【0097】
第2トーションスプリング30は、基本的に、周方向DRcに捩られて弾性変形した状態で使用される。第2トーションスプリング30の付勢力は、シャフト18が回転している場合にも止まっている場合にもレバー24に作用する。そして、第2トーションスプリング30の付勢力は、レバー24を介して駆動ディスク22に回転力として伝達される。このため、第2トーションスプリング30をシャフト18とレバー24との間に配置することで、シャフト18とレバー24の間における周方向DRcのガタツキが抑制される。そして、レバー24は、駆動ディスク22に固定されているので、第2トーションスプリング30によってシャフト18から駆動ディスク22までの間における周方向DRcのガタツキが抑制される。なお、第2トーションスプリング30は、周方向DRcに捩じられているだけで軸心方向DRaに圧縮されているわけではない。
【0098】
バルブ装置10は、シャフト18とレバー24との間に第2トーションスプリング30が介在させた状態でシャフト18をレバー24に係合させることで、これら3部品がサブアッシー化されている。
【0099】
次に、本体剛性低減部125およびカバー剛性低減部126の詳細について説明する。本実施形態における本体剛性低減部125は、本体接続部122kに形成される1つの空間によって構成されている。すなわち、本体接続部122kは、本体剛性低減部125が1つ形成されることによって、本体接続部122kの内部に空間が形成されている。
【0100】
本体剛性低減部125によって形成される空間は、空気で満たされる空隙である。これにより、本体接続部122kは、本体剛性低減部125が設けられていない場合に比較して剛性が低減されている。
【0101】
また、本実施形態におけるカバー剛性低減部126は、カバー接続部124nに形成される1つの空間によって構成されている。すなわち、カバー接続部124nは、カバー剛性低減部126が1つ形成されることによって、カバー接続部124nの内部に空間が形成されている。
【0102】
カバー剛性低減部126によって形成される空間は、空気で満たされる空隙である。これにより、カバー接続部124nは、カバー剛性低減部126が設けられていない場合に比較して剛性が低減している。
【0103】
本体剛性低減部125は、本体接続部122kにおける軸心方向DRaの一方側の端部から他方側の端部に向かって、当該他方側の端部まで貫通しないで形成されている。すなわち、本体剛性低減部125は、有底筒形状であって、軸心方向DRaの一方側が開口しており、他方側が閉塞している。
【0104】
また、本体接続部122kの軸心方向DRaに直交する断面形状において、本体剛性低減部125が形成されない部位の面積に比較して、本体剛性低減部125が形成される部位の面積が大きくなっている。すなわち、本体接続部122kの軸心方向DRaに直交する断面形状において、本体剛性低減部125の開口面積は、本体剛性低減部125が形成されない部位の面積に比較して大きい。本体剛性低減部125は、軸心方向DRaの一方側から他方側まで開口面積が一定となるように形成されている。
【0105】
本体剛性低減部125は、本体接続部122kのうち本体剛性低減部125が形成される部位の軸心方向DRaの他方側の部位である接続底部122rの底の厚さよりも大きいことが望ましい。具体的に、本体剛性低減部125の軸心方向DRaの大きさは、接続底部122rの軸心方向DRaの大きさの2倍以上であることが望ましい。本実施形態では、本体剛性低減部125の軸心方向DRaの大きさと接続底部122rの軸心方向DRaの大きさとの比が4倍以上となるように本体剛性低減部125が形成されている。
【0106】
カバー剛性低減部126は、カバー接続部124nにおける軸心方向DRaの一方側の端部から他方側の端部まで貫通して形成されている。具体的に、カバー剛性低減部126は、外側接続部124sにおける軸心方向DRaの一方側の端部から他方側の端部まで貫通して形成されている。すなわち、カバー剛性低減部126は、外側接続部124sを貫通する貫通孔である。
【0107】
カバー剛性低減部126は、軸心方向DRaにおいて、本体剛性低減部125と重なる位置に形成されている。また、カバー剛性低減部126は、軸心方向DRaにおいて、本体剛性低減部125と重なる大きさに形成されている。
【0108】
また、外側接続部124sの軸心方向DRaに直交する断面形状において、カバー剛性低減部126が形成されない部位の面積に比較して、カバー剛性低減部126が形成される部位の面積が大きくなっている。すなわち、外側接続部124sの軸心方向DRaに直交する断面形状において、カバー剛性低減部126の開口面積は、カバー剛性低減部126が形成されない部位の面積に比較して大きい。カバー剛性低減部126は、軸心方向DRaの一方側から他方側まで開口面積が一定となるように形成されている。
【0109】
次に、本実施形態のバルブ装置10の作動について説明する。バルブ装置10は、
図1~
図4に示すように、流体が矢印Fiのように入口部12aから入口側空間12dへ流入する。そして、第1流路孔141が開いている場合には、流体が入口側空間12dから第1流路孔141を介して第1出口側空間へ流れる。第1出口側空間へ流れ込んだ流体は、第1出口側空間から第1出口部12bを介してバルブ装置10の外部へ矢印F1oのように流出する。この場合、第1流路孔141を通過する流体の流量は、第1流路孔141の開度に応じて定まる。すなわち、入口部12aから第1流路孔141を介して第1出口部12bへ流れる流体の流量は、第1流路孔141の開度が大きいほど大きくなる。
【0110】
一方、第2流路孔142が開いている場合には、流体が入口側空間12dから第2流路孔142を介して第2出口側空間へ流入する。第2出口側空間へ流れ込んだ流体は第2出口側空間から第2出口部12cを介してバルブ装置10の外部へ矢印F2oのように流出する。この場合、第2流路孔142を通過する流体の流量は、第2流路孔142の開度に応じて定まる。すなわち、入口部12aから第2流路孔142を介して第2出口部12cへ流れる流体の流量は、第2流路孔142の開度が大きいほど大きくなる。
【0111】
続いて、本体部120と本体カバー部124との締結について説明する。上述のように、本体部120および本体カバー部124は、樹脂材料によって形成されている。これに対して、本体部120に本体カバー部124を締結するための締結部材TNは、金属材料で構成されたタッピングネジが採用されている。そして、3つの本体挿入穴122nそれぞれに締結部材TNがねじ込まれて、それぞれの締結面122pおよび当接面124uが互いに当接する位置まで締め付けられることによって、本体部120と本体カバー部124とが締結される。
【0112】
ここで、仮に、3つの締結面122pおよび3つの当接面124uそれぞれの平面度が設計精度より低い場合や、それぞれの平面高さにばらつきがある場合における、本体部120と本体カバー部124との締結への影響について説明する。
【0113】
締結面122pおよび当接面124uが当接するまで締結部材TNがねじ込まれるところ、平面度が設計精度より低い場合、軸心方向DRaに対して本体部120および本体カバー部124が傾いて組付けられる虞がある。また、3つの締結面122pおよび3つの当接面124uそれぞれの平面高さにばらつきがある場合、平面高さが高い面の位置より平面高さが低い面の位置の方が低くなるように傾いて本体部120および本体カバー部124が組付けられる虞がある。
【0114】
本体部120および本体カバー部124が軸心方向DRaに対して傾いた状態で締結部材TNがねじ込まれると、締結面122pおよび当接面124uに過剰な力がかかり、本体部120および本体カバー部124全体が傾いた方向に沿うように変形する虞がある。本実施形態では、樹脂材料によって形成された本体部120および本体カバー部124を金属材料で構成された締結部材TNによって締結するため、締結部材TNに比較して本体部120および本体カバー部124が変形し易い。
【0115】
そして、本体部120および本体カバー部124が変形し、シール部材13を軸心方向DRaに弾性変形させるシール設置部122eおよびシール支持部124fとの距離が変形前に比較して大きくなると、シール部材13の弾性変形量が減少する。この場合、シール部材13を本体部120および本体カバー部124との隙間を閉塞するための形状に弾性変形できないことで、本体部120および本体カバー部124との隙間をシールできない虞がある。これにより、入口側空間12dとバルブ装置10の外部との間を閉塞できず、入口側空間12dの密閉性を確保することが困難となる。
【0116】
また、本体部120および本体カバー部124が軸心方向DRaに対して傾いた状態でネジによって締め付けられると、樹脂で形成された本体部120および本体カバー部124に亀裂が生じる虞がある。当該亀裂が本体側壁部122の外側から内側に至るまで生じると、入口側空間12dの密閉性を確保することが困難となる。
【0117】
ところで、バルブ装置10は、流体の流量を精度よく調整する必要があるため、入口側空間12dの密閉性を確保する必要がある。しかし、3つの締結面122pおよび3つの当接面124uそれぞれの平面度が設計精度より低い場合や、それぞれの平面高さにばらつきがある場合、上述のように入口側空間12dの密閉性を確保することが難しい。
【0118】
そして、樹脂材料を金型に流し込んで所望の形状に固める射出成型によって成型される本体部120および本体カバー部124は、金属材料を加工成型する場合に比較して、平面度を高精度にしたり、平面高さを均一にしたりすることが難しい。
【0119】
これに対して、本実施形態では、バルブ装置10において、本体接続部122kに本体剛性低減部125が設けられている。さらに、カバー接続部124nにカバー剛性低減部126が設けられている。このため、締結面122pおよび当接面124uの平面度が設計精度より低い場合や、平面高さにばらつきがあることによって本体部120と本体カバー部124とが締結される際に締結面122pに過剰な負荷がかかると本体接続部122kが変形し易い。また、同様に、当接面124uに過剰な負荷がかかるとカバー接続部124nが変形し易い。
【0120】
これに対して、本体部120において、本体接続部122kより径方向DRrの内側に設けられた本体側壁部122が変形し難い。そして、本体カバー部124において、カバー接続部124nより径方向DRrの内側に設けられた板部124aおよびリブ部124bが変形し難い。このため、本体部120と本体カバー部124との変形に起因するシール設置部122eおよびシール支持部124fとの距離の拡張を抑制できる。したがって、本体部120および本体カバー部124との変形に起因するシール部材13の弾性変形量の減少を抑制できるので、入口側空間12dの密閉性を確保することができる。
【0121】
また、本実施形態のバルブ装置10は、例えば、以下の効果を得ることができる。
【0122】
(1)剛性低減構造は、本体接続部122kおよびカバー接続部124nそれぞれに空間である本体剛性低減部125およびカバー剛性低減部126を設けることによって実現されている。これによれば、本体剛性低減部125を本体側壁部122よりも剛性率が小さい部材で構成したり、カバー剛性低減部126をカバー側壁部124dよりも剛性率が小さい部材で構成したりする場合に比較して、容易に剛性低減構造を実現することができる。
【0123】
(2)締結面122pは、シール部材13の設置位置より軸心方向DRaの一方側にずれる位置に形成されている。これによれば、締結面122pが軸心方向DRaにおいてシール部材13の設置位置と同じ位置に配置される場合に比較して、軸心方向DRaにおけるシール部材13と締結面122pとの距離を大きくできる。このため、仮に、締結面122pおよび当接面124uに過剰な負荷がかかることによって本体部120および本体カバー部124が変形した場合でも、シール部材13を変形し難くすることができる。
【0124】
(3)締結面122pは、本体接続部122kの設置位置より軸心方向DRaの一方側にずれる位置に形成されている。これによれば、締結面122pが軸心方向DRaにおいて本体接続部122kの設置位置と同じ位置に配置される場合に比較して、軸心方向DRaにおける本体接続部122kと締結面122pとの距離を大きくできる。
【0125】
このため、締結面122pに過剰な負荷がかかる際に、このような構成になっていない場合に比較して本体接続部122kが変形し易いので、過剰な負荷を本体接続部122kで許容させることができる。したがって、仮に、締結面122pに過剰な負荷がかかる場合であっても、本体部120における本体接続部122kより径方向DRrの内側の部位を変形し難くすることができる。
【0126】
(4)バルブ装置10は、弁体20と一体に回転するシャフト18を備える。また、本体カバー部124は、カバー剛性低減部126より径方向DRrの内側に、シャフト18の軸心方向DRaの一方側をシャフト18が挿通された状態で回転可能に支持するハウジングボス部124cを有する。そして、本体カバー部124は、シャフト18の外周部とハウジングボス部124cの内周部との隙間をシールするシャフトシール124hを有する。
【0127】
仮に、本体カバー部124が軸心方向DRaに対して傾いて締結される場合、シャフトシール124hに対して本体カバー部124に支持されるシャフト18が傾く虞がある。この場合、シャフト18の回転によってシャフトシール124hが偏摩耗する虞がある。しかし、本実施形態では、バルブ装置10において、本体接続部122kに本体剛性低減部125が設けられ、カバー接続部124nにカバー剛性低減部126が設けられている。このため、本体カバー部124が軸心方向DRaに対して傾いて締結される場合、シャフトシール124hに対してシャフト18が傾いて組付けられることが抑制される。このため、シャフト18の回転によってシャフトシール124hが偏摩耗することが抑制される。
【0128】
(5)シャフト挿通孔223は、シャフト18を挿通させた状態でシャフト18を傾動可能なように、シャフト挿通孔223の内周部とシャフト18の外周部との間に所定の隙間が形成される大きさになっている。
【0129】
仮に、本体カバー部124が軸心方向DRaに対して傾いて締結される場合、軸心方向DRaに対して本体カバー部124に支持されるシャフト18が傾く虞がある。そして、シャフト挿通孔223の内周部とシャフト18の外周部との干渉を避けるため、シャフト18の傾きが大きいほど、シャフト挿通孔223の内周部とシャフト18の外周部との間に所定の隙間を大きくする必要がある。
【0130】
しかし、本実施形態では、バルブ装置10において、本体接続部122kに本体剛性低減部125が設けられ、カバー接続部124nにカバー剛性低減部126が設けられている。このため、本体カバー部124が軸心方向DRaに対して傾いて締結される場合、シャフトシール124hに対してシャフト18が傾いて組付けられることが抑制される。
【0131】
このため、シャフト挿通孔223とシャフト18との干渉を避けるために設けられるシャフト挿通孔223の内周部とシャフト18の外周部との間に所定の隙間を、必要以上に大きくする必要がなくなる。
【0132】
したがって、シャフト18とシャフト挿通孔223との隙間を必要以上に大きくする場合に比較して、駆動ディスク22の回転子孔221と固定ディスク14の第1流路孔141および第2流路孔142とのずれを抑制できる。これにより、第1流路孔141および第2流路孔142を流れる流体の流量を精度よく調整できる。
【0133】
(6)本実施形態では、本体部120に本体カバー部124を締結するための締結部材TNとして、金属材料で構成されたタッピングネジが採用されている。これに対して、タッピングネジを本体締結部122mにねじ込むことによって本体部120と本体カバー部124と締結する場合、本体締結部122mに亀裂が生じる虞がある。
【0134】
仮に、本体接続部122kに空間で構成される本体剛性低減部125が設けられていない場合、
図9に示すように、当該亀裂が本体締結部122mから本体接続部122kを介し本体側壁部122に向かって発生したとする。そして、本体側壁部122の外周部から内周部に至るまで亀裂が生じると、入口側空間12dの密閉性を確保することが困難となる。
【0135】
これに対して、本実施形態のバルブ装置10は、本体接続部122kに空間で構成される本体剛性低減部125が設けられている。このため、タッピングネジのねじ込みによって本体締結部122mから本体接続部122kを介し本体側壁部122に向かって発生したとしても、
図10に示すように、当該亀裂が本体剛性低減部125よりも径方向DRrの内側に伝わり難くなる。このため、タッピングネジのねじ込みによる亀裂が本体締結部122mに生じたとしても、当該亀裂を介して流体がバルブ装置10の外部へ漏れることを抑制できる。
【0136】
(7)本体部120および本体カバー部124は、樹脂で構成されている。また、本体剛性低減部125は、軸心方向DRa一方側が開口し、軸心方向DRaの他方側が閉塞する有底筒形状で形成されている。これによれば、本体部120を樹脂成型することによって製造する際に、樹脂成型時の型抜きがし易い。このため、樹脂成型時にバリの発生を抑制することができる。
【0137】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0138】
上述の実施形態では、本体部120および本体カバー部124のいずれもが樹脂で成型されている例について説明したがこれに限定されない。例えば、本体部120および本体カバー部124は、互いに異なる部材で成型されており、どちらか一方が他方に比較して剛性率が小さい部材で構成されていてもよい。具体的には、例えば、
図11に示すように、本体部120が金属で成型されており、本体カバー部124が樹脂より剛性率が小さい樹脂で成型されている構成でもよい。
【0139】
これによれば、本体部120と本体カバー部124とが締結される際に締結面122pおよび当接面124uに過剰な負荷がかかっても、本体部120および本体カバー部124のうち、剛性率が大きい本体部120は剛性率が小さい本体カバー部124に比較して変形し難い。このため、本体部120および本体カバー部124が同等の剛性率を有する部材で構成される場合に比較して、剛性率が大きい側が剛性率が小さい側の変形にしたがって変形することを抑制できるので、収容空間の密閉性を確保し易くなる。
【0140】
上述の実施形態では、剛性低減構造として本体接続部122kに本体剛性低減部125が設けられ、カバー接続部124nにカバー剛性低減部126が設けられている例について説明したがこれに限定されない。例えば、剛性低減構造は、本体接続部122kおよびカバー接続部124nのうち、本体接続部122kにのみ本体剛性低減部125が設けられ、カバー接続部124nにカバー剛性低減部126が設けられない構成であってもよい。また、剛性低減構造は、本体接続部122kおよびカバー接続部124nのうち、本体接続部122kに本体剛性低減部125が設けられず、カバー接続部124nにのみカバー剛性低減部126が設けられる構成であってもよい。
【0141】
上述の実施形態では、本体剛性低減部125およびカバー剛性低減部126が空間を形成し、空間の内部が空隙である例について説明したが、これに限定されない。例えば、本体剛性低減部125は、本体剛性低減部125によって形成される空間の内部に、本体接続部122kよりも剛性率が小さい部材で満たされる構成であってもよい。また、カバー剛性低減部126は、カバー剛性低減部126によって形成される空間の内部が、カバー接続部124nよりも剛性率が小さい部材で満たされる構成であってもよい。
【0142】
上述の実施形態では、本体剛性低減部125は、本体接続部122kに形成された1つの有底筒形状の穴である例について説明したが、これに限定されない。また、カバー剛性低減部126は、カバー接続部124nに形成された1つの貫通孔である例について説明したが、これに限定されない。
【0143】
本体剛性低減部125は、本体接続部122kの剛性を低減させる構成であれば適宜変更可能である。また、カバー剛性低減部126は、カバー接続部124nの剛性を低減させる構成であれば、適宜変更である。
【0144】
例えば、本体剛性低減部125およびカバー剛性低減部126は、複数形成された貫通孔によって構成されていてもよい。また、本体剛性低減部125およびカバー剛性低減部126は、軸心方向DRaの一方側から他方側まで開口面積が一定でない空間で構成されていてもよい。そして、カバー剛性低減部126は、軸心方向DRaの一方側が開口し他方側が閉塞された有底筒形状の穴で構成されていてもよい。
【0145】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0146】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0147】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【符号の説明】
【0148】
13 シール部材
122 本体側壁部
122k 本体接続部
122p 締結面
124 本体カバー部
124d カバー側壁部
124n カバー接続部
124u 当接面
125 本体剛性低減部
126 カバー剛性低減部