(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】内燃機関および内燃機関の制御方法
(51)【国際特許分類】
F02M 26/50 20160101AFI20240214BHJP
F02M 26/24 20160101ALI20240214BHJP
【FI】
F02M26/50
F02M26/24
(21)【出願番号】P 2021073133
(22)【出願日】2021-04-23
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊集院 崇
(72)【発明者】
【氏名】矢島 渉自
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-132852(JP,A)
【文献】特開2004-340099(JP,A)
【文献】特開2011-038440(JP,A)
【文献】特表2010-502870(JP,A)
【文献】特開2014-218955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/50
F02M 26/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気の一部であるEGRガスを吸気通路に還流する排気再循環装置を有する内燃機関であって、
前記EGRガスが流れるEGR通路に設けられ、前記EGRガスを冷却するEGRクーラと、
前記EGRガスの流れる方向を、前記EGRガスが前記EGRクーラを所定方向に流れる第1モードと、前記EGRガスが前記EGRクーラを前記所定方向と逆方向に流れる第2モードとに、切り換える切換部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、デポジット制御部、あるいは、凝縮水制御部の少なくとも一方を備え、
前記デポジット制御部は、
前記内燃機関の燃料噴射量と回転速度をパラメータとして、前記EGRクーラに堆積するデポジットの堆積量を算出するデポジット量算出部と、
前記デポジットの堆積量が第1閾値を超えたとき、前記第1モードと前記第2モードを切り換えるよう指令する第1切換指令部とを含み、
前記凝縮水制御部は、
前記燃料噴射量と前記回転速度をパラメータとして、前記EGRクーラに溜まる凝縮水の貯留量を算出する凝縮水量算出部と、
前記凝縮水の貯留量が第2閾値を超えたとき、前記第1モードと前記第2モードを切り換えるよう指令する第2切換指令部とを備え
、
前記デポジットは、少なくとも前記EGRガスに含まれる煤と前記凝縮水とが結合することによって生成される、内燃機関。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1切換指令部により、前記第1モードと前記第2モードを切り換えるよう指令されたとき、あるいは、前記第2切換指令部により、前記第1モードと前記第2モードを切り換えるよう指令されたとき、前記第1モードと前記第2モードを切り換えるよう前記切換部を制御するよう構成されている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記デポジット量算出部は、前記第1モードのとき、前記デポジットの堆積量を算出するよう構成され、
前記デポジット制御部は、前記第2モードのとき、前記デポジットの堆積量を減算するデポジットリセット値算出部をさらに含み、
前記制御装置は、前記第1切換指令部により、前記第1モードと前記第2モードを切り換えるよう指令されたとき、前記第1モードから前記第2モードに切り換えるよう前記切換部を制御するとともに、前記デポジットリセット値算出部で算出した前記デポジットの堆積量が第1リセット値以下になったとき、前記第2モードから前記第1モードに切り換えるよう前記切換部を制御するよう構成され、
前記凝縮水量算出部は、前記第1モードのとき、前記凝縮水の貯留量を算出するよう構成され、
前記凝縮水制御部は、前記第2モードのとき、前記凝縮水の貯留量を減算する凝縮水リセット値算出部をさらに含み、
前記制御装置は、前記第2切換指令部により、前記第1モードと前記第2モードを切り換えるよう指令されたとき、前記第1モードから前記第2モードに切り換えるよう前記切換部を制御するとともに、前記凝縮水リセット値算出部で算出した前記凝縮水の貯留量が第2リセット値以下になったとき、前記第2モードから前記第1モードに切り換えるよう前記切換部を制御するよう構成されている、請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記制御装置は、診断ツールと通信可能に構成されており、
前記制御装置は、前記診断ツールが、前記第1切換指令部により、前記第1モードと前記第2モードを切り換えるよう指令されたことを検知したとき、あるいは、前記第2切換指令部により、前記第1モードと前記第2モードを切り換えるよう指令されたことを検知したとき、前記第1モードと前記第2モードを切り換えるよう前記切換部を制御するよう構成されている、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記デポジット量算出部は、前記第1モードのとき、前記デポジットの堆積量を算出するよう構成され、
前記デポジット制御部は、前記第2モードのとき、前記デポジットの堆積量を減算するデポジットリセット値算出部をさらに含み、
前記制御装置は、
前記診断ツールが、前記第1切換指令部により、前記第1モードと前記第2モードを切り換えるよう指令されたことを検知したとき、前記第1モードから前記第2モードに切り換えるよう前記切換部を制御するよう構成され、
前記デポジットリセット値算出部で算出した前記デポジットの堆積量が第1リセット値以下になったとき、前記第2モードから前記第1モードに切り換えるよう前記切換部を制御するよう構成され、
前記凝縮水量算出部は、前記第1モードのとき、前記凝縮水の貯留量を算出するよう構成され、
前記凝縮水制御部は、前記第2モードのとき、前記凝縮水の貯留量を減算する凝縮水リセット値算出部をさらに含み、
前記制御装置は、
前記診断ツールが、前記第2切換指令部により、前記第1モードと前記第2モードを切り換えるよう指令されたことを検知したとき、前記第1モードから前記第2モードに切り換えるよう前記切換部を制御するよう構成され、
前記凝縮水リセット値算出部で算出した前記凝縮水の貯留量が第2リセット値以下になったとき、前記第2モードから前記第1モードに切り換えるよう前記切換部を制御するよう構成されている、請求項4に記載の内燃機関。
【請求項6】
排気の一部であるEGRガスを吸気通路に還流する排気再循環装置を有する内燃機関の制御方法であって、
前記内燃機関は、
前記EGRガスが流れるEGR通路に設けられ、前記EGRガスを冷却するEGRクーラと、
前記EGRガスの流れる方向を、前記EGRガスが前記EGRクーラを所定方向に流れる第1モードと、前記EGRガスが前記EGRクーラを前記所定方向と逆方向に流れる第2モードとに切り換える切換部とを、備え、
前記制御方法は、
前記内燃機関の燃料噴射量と回転速度をパラメータとして、前記EGRクーラに堆積するデポジットの堆積量を算出するステップと、
前記デポジットの堆積量が第1閾値を超えたとき、前記第1モードと前記第2モードを切り換えるステップと、を含み、
前記デポジットは、少なくとも前記EGRガスに含まれる煤と前記EGRクーラに溜まる凝縮水とが結合することによって生成される、内燃機関の制御方法。
【請求項7】
排気の一部であるEGRガスを吸気通路に還流する排気再循環装置を有する内燃機関の制御方法であって、
前記内燃機関は、
前記EGRガスが流れるEGR通路に設けられ、前記EGRガスを冷却するEGRクーラと、
前記EGRガスの流れる方向を、前記EGRガスが前記EGRクーラを所定方向に流れる第1モードと、前記EGRガスが前記EGRクーラを前記所定方向と逆方向に流れる第2モードとに切り換える切換部とを、備え、
前記制御方法は、
前記内燃機関の燃料噴射量と回転速度をパラメータとして、前記EGRクーラに溜まる凝縮水の貯留量を算出するステップと、
前記凝縮水の貯留量が第2閾値を超えたとき、前記第1モードと前記第2モードを切り換えるステップと、を含み、
前記EGRクーラに堆積するデポジットは、少なくとも前記EGRガスに含まれる煤と前記凝縮水とが結合することによって生成される、内燃機関の制御方法。
【請求項8】
前記第1モードと前記第2モードを切り換えるステップは、前記内燃機関の状態を診断する診断ツールによって実行される、請求項6あるいは請求項7に記載の内燃機関の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関および内燃機関の制御方法に関し、特に、排気再循環装置を有する内燃機関および内燃機関の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関から排出される排気(排気ガス)に含まれる窒素酸化物(NOx)の低減や、燃費の向上を目的として、排気の一部を吸気系に還流する排気再循環装置(EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置)を備えた内燃機関が知られている。吸気系に還流される排気の一部(以下、EGRガスとも称する)の温度が低いほど、EGRガスの密度が高くなり、NOxの低減効果や燃費効果が良好になる。このため、EGR装置に、EGRガスを冷却するEGRクーラを設けることも知られている。
【0003】
EGRクーラによってEGRガスが冷却されると、EGRガスが熱エネルギーを失うため、運動エネルギーが低下する。また、EGRガスが冷却される際に、EGRガス(排気)に含まれる凝縮水、オイルミストがEGRガス中の煤と結合し異物(デポジット)が生成される。このため、EGRガスの流速が低下するEGRクーラ出口側において、デポジットが堆積する。また、EGRクーラ出口側の温度が低いため、EGRクーラの出口側に溜まった凝縮水は蒸発することなく、滞留する。
【0004】
EGRクーラにデボジットが堆積すると、EGRクーラの詰まりや冷却効率の低下を招く。EGRクーラのデポジットの堆積を解消するため、特開2011-38440号公報(特許文献1)には、EGR配管に第一EGR分岐管と第二EGR分岐管を設けるとともに、第一EGR分岐管と第二EGR分岐管の中間点をEGRクーラに接続したEGR装置が開示されている。
【0005】
この特許文献1に開示されたEGR装置では、EGRクーラの入口温度と出口温度から冷却効率を求め、冷却効率が許容値未満になると、EGRクーラにすす(デボジット)が堆積したと判断し、EGRクーラの入口と出口を切り換えて、デポジットを除去している。また、EGRクーラの圧損から、デポジットの堆積を認識してもよいとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたEGR装置では、デポジットの堆積をEGRクーラの冷却効率を用いて推定している。冷却効率は、たとえば、冷却水等の冷媒の流量によっても影響を受けるので、何らかの原因により冷媒の流量が低下した場合にも、冷却効率が許容値未満になる場合がある。また、EGRクーラの圧損からデポジットの堆積を認識する場合、EGRクーラの入口と出口の差圧から圧損を求めることが考えられるが、EGRバルブの開閉等によってEGRガス流量が変化するとき、差圧が大きく変化して、デポジットの堆積を誤認識する可能性がある。なお、冷却効率や圧損に基づいて、EGRクーラに溜まった(滞留している)凝縮水の量を推定することは、難しい。
【0008】
本開示の目的は、EGRクーラに堆積したデポジットの量、あるいは、EGRクーラに溜まった凝縮水の量を、比較的精度よく推定することにより、デボジット、あるいは、凝縮水を的確に除去することを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の内燃機関は、排気の一部であるEGRガスを吸気通路に還流する排気再循環装置を有する内燃機関である。内燃機関は、EGRガスが流れるEGR通路に設けられ、EGRガスを冷却するEGRクーラと、EGRガスの流れる方向を、EGRガスがEGRクーラを所定方向に流れる第1モードと、EGRガスがEGRクーラを所定方向と逆方向に流れる第2モードとに切り換える切換部と、制御装置とを備える。制御装置は、デポジット制御部、あるいは、凝縮水制御部の少なくとも一方を備える。デポジット制御部は、内燃機関の燃料噴射量と回転速度をパラメータとして、EGRクーラに堆積するデポジットの堆積量を算出するデポジット量算出部と、デポジットの堆積量が第1閾値を超えたとき、第1モードと第2モードを切り換えるよう指令する第1切換指令部とを含む。凝縮水制御部は、内燃機関の燃料噴射量と回転速度をパラメータとして、EGRクーラに溜まる凝縮水の貯留量を算出する凝縮水量算出部と、凝縮水の貯留量が第2閾値を超えたとき、第1モードと第2モードを切り換えるよう指令する第2切換指令部とを含む。
【0010】
この構成によれば、切換部によって、EGRガスがEGRクーラを所定方向に流れる第1モードと、EGRガスがEGRクーラを所定方向と逆方向に流れる第2モードとを切り換えることにより、EGRクーラの入口と出口を切り換えることができる。
【0011】
制御装置は、デポジット制御部、あるいは、凝縮水制御部の少なくとも一方を備える。デポジット制御部は、デポジット量算出部により、内燃機関の燃料噴射量と回転速度をパラメータとして、EGRクーラに堆積するデポジットの堆積量を算出し、第1切換指令部により、デポジットの堆積量が第1閾値を超えたとき、第1モードと第2モードを切り換えるよう指令する。EGRクーラに堆積したデポジットの堆積量が第1閾値を超えたとき、EGRクーラの入口と出口が切り換えられるので、堆積したデポジットを除去することが可能になる。EGRクーラに堆積するデポジットの量は、内燃機関の運転状態、特に、燃料噴射量と回転速度によって変化する。デポジット量算出部は、内燃機関の燃料噴射量と回転速度をパラメータとして、EGRクーラに堆積するデポジットの堆積量を算出するので、比較的精度よく、EGRクーラに堆積したデポジットの量を推定でき、デボジットを的確に除去することが可能になる。
【0012】
凝縮水制御部は、凝縮水量算出部により、内燃機関の燃料噴射量と回転速度をパラメータとして、EGRクーラに溜まる凝縮水の貯留量を算出し、第2切換指令部により、凝縮水の貯留量が第2閾値を超えたとき、第1モードと第2モードを切り換えるよう指令する。EGRクーラに溜まった(滞留した)凝縮水の貯留量が第2閾値を超えたとき、EGRクーラの入口と出口が切り換えられるので、溜まった凝縮水を除去することが可能になる。EGRクーラに滞留する凝縮水の量は、内燃機関の運転状態、特に、燃料噴射量と回転速度によって変化する。凝縮水量算出部は、内燃機関の燃料噴射量と回転速度をパラメータとして、EGRクーラに溜まる凝縮水の貯留量を算出するので、比較的精度よく、EGRクーラに溜まった凝縮水の量を推定でき、凝縮水を的確に除去することが可能になる。
【0013】
好ましくは、制御装置は、第1切換指令部により、第1モードと第2モードを切り換えるよう指令されたとき、あるいは、第2切換指令部により、第1モードと第2モードを切り換えるよう指令されたとき、第1モードと第2モードを切り換えるよう切換部を制御するよう構成されてもよい。
【0014】
この構成によれば、デポジットの堆積量が第1閾値を超えたとき、あるいは、凝縮水の貯留量が第2閾値を超えたとき、制御装置によって、第1モードと第2モードを切り換えるよう切換部を制御するので、内燃機関の作動時に、適切なタイミングで、デポジット、あるいは、凝縮水を除去できる。
【0015】
好ましくは、デポジット量算出部は、第1モードのとき、EGRクーラに堆積するデポジットの堆積量を算出するよう構成され、デポジット制御部は、第2モードのとき、デポジットの堆積量を減算するデポジットリセット値算出部をさらに含み、制御装置は、第1切換指令部により、第1モードと前記第2モードを切り換えるよう指令されたとき、第1モードから第2モードに切り換えるよう前記切換部を制御するとともに、デポジットリセット値算出部で算出したデポジットの堆積量が第1リセット値以下になったとき、第2モードから前記第1モードに切り換えるよう前記切換部を制御するよう構成されてもよい。
【0016】
また、凝縮水量算出部は、第1モードのとき、EGRクーラに溜まる凝縮水の貯留量を算出するよう構成され、凝縮水制御部は、第2モードのとき、凝縮水の貯留量を減算する凝縮水リセット値算出部をさらに含み、制御装置は、第2切換指令部により、第1モードと第2モードを切り換えるよう指令されたとき、第1モードから第2モードに切り換えるよう切換部を制御するとともに、凝縮水リセット値算出部で算出した凝縮水の貯留量が第2リセット値以下になったとき、第2モードから第1モードに切り換えるよう前記切換部を制御するよう構成されてもよい。
【0017】
第1モードと第2モードでは、EGRガスの流れの方向が異なるので、EGRクーラによる冷却効率が変化する可能性がある。この構成によれば、EGRクーラに堆積するデポジットの堆積量が第1閾値を超えるまで、あるいは、EGRクーラに溜まる凝縮水の貯留量が第2閾値を超えるまでは、第1モードで内燃機関が運転される。そして、EGRクーラに堆積するデポジットの堆積量が第1閾値を超えると、あるいは、EGRクーラに溜まる凝縮水の貯留量が第2閾値を超えると、第2モードに切り換えられ、デポジット、あるいは、凝縮水が除去される。デポジット、あるいは、凝縮水の除去は、デポジットの堆積の進行、あるいは、凝縮水の滞留に進行に比較して、極めて短時間に進行するので、第2モードにおいて、デポジットリセット算出部により減算されるデポジットの堆積量は、短時間で第1リセット値以下になり、第2モードから第1モードに切り換わる。また、第2モードにおいて、凝縮水リセット値算出部により減算される凝縮水の貯留量は、短時間で第2リセット値以下になり、第2モードから第1モードに切り換わる。したがって、第1モードから第2モードに切り換わって冷却効率が変化しても、第2モードにおける内燃機関の運転時間は短く、その影響を少なくすることができる。
【0018】
好ましくは、制御装置は、診断ツールと通信可能に構成されており、制御装置は、診断ツールが、第1切換指令部により、第1モードと第2モードを切り換えるよう指令されたことを検知したとき、あるいは、第2切換指令部により、第1モードと第2モードを切り換えるよう指令されたこと検知したとき、第1モードと第2モードを切り換えるよう切換部を制御するよう構成されてもよい。
【0019】
内燃機関の作動時に、EGRクーラの入口と出口を切り換えると、切り換え時にEGR率が大きく変動する可能性がある。この構成によれば、制御装置と通信可能な診断ツールを、制御装置に接続することによって、第1モードと第2モードを切り換えるよう制御できる。診断ツールによって内燃機関を診断する際に、EGRクーラの入口と出口を切り換えることが可能になるので、内燃機関の作動時に、EGR率が大きく変動することを抑制できる。
【0020】
好ましくは、デポジット量算出部は、第1モードのとき、EGRクーラに堆積するデポジットの堆積量を算出するよう構成され、デポジット制御部は、第2モードのとき、デポジットの堆積量を減算するデポジットリセット値算出部をさらに含み、制御装置は、診断ツールが、第1切換指令部により、第1モードと前記第2モードを切り換えるよう指令されたことを検知したとき、第1モードから第2モードに切り換えるよう切換部を制御するよう構成され、デポジットリセット値算出部で算出したデポジットの堆積量が第1リセット値以下になったとき、第2モードから第1モードに切り換えるよう切換部を制御するよう構成されてもよい。
【0021】
また、凝縮水量算出部は、第1モードのとき、EGRクーラに溜まる凝縮水の貯留量を算出するよう構成され、凝縮水制御部は、第2モードのとき、凝縮水の貯留量を減算する凝縮水リセット値算出部をさらに含み、制御装置は、診断ツールが、第2切換指令部により、第1モードと前記第2モードを切り換えるよう指令されたことを検知したとき、第1モードから第2モードに切り換えるよう切換部を制御するよう構成され、凝縮水リセット値算出部で算出した凝縮水の貯留量が第2リセット値以下になったとき、第2モードから第1モードに切り換えるよう切換部を制御するよう構成されてもよい。
【0022】
この構成によれば、第1モードから第2モードに切り換わってEGRクーラの冷却効率が変化しても、第2モードにおける内燃機関の運転時間を短くでき、その影響を少なくすることができる。
【0023】
本開示の内燃機関の制御方法は、排気の一部であるEGRガスを吸気通路に還流する排気再循環装置を有する内燃機関の制御方法である。内燃機関は、EGRガスが流れるEGR通路に設けられ、EGRガスを冷却するEGRクーラと、EGRガスの流れる方向を、EGRガスが前記EGRクーラを所定方向に流れる第1モードと、EGRガスがEGRクーラを所定方向と逆方向に流れる第2モードとに切り換える切換部とを、備える。制御方法は、内燃機関の燃料噴射量と回転速度をパラメータとして、EGRクーラに堆積するデポジット堆積量を算出するステップと、デポジットの堆積量が第1閾値を超えたとき、第1モードと前記第2モードを切り換えるステップと、を含む。
【0024】
この制御方法によれば、デポジットの堆積量が第1閾値を超えたとき、第1モードと第2モードを切り換えるので、EGRクーラの入口と出口が切り換えられ、堆積したデポジットを除去できる。内燃機関の燃料噴射量と回転速度をパラメータとして、EGRクーラに堆積するデポジットの堆積量を算出するので、比較的精度よく、EGRクーラに堆積したデポジットの量を推定でき、デボジットを的確に除去することが可能になる。
【0025】
本開示の内燃機関の制御方法は、排気の一部であるEGRガスを吸気通路に還流する排気再循環装置を有する内燃機関の制御方法である。内燃機関は、EGRガスが流れるEGR通路に設けられ、EGRガスを冷却するEGRクーラと、EGRガスの流れる方向を、EGRガスが前記EGRクーラを所定方向に流れる第1モードと、EGRガスがEGRクーラを所定方向と逆方向に流れる第2モードとに切り換える切換部とを、備える。制御方法は、内燃機関の燃料噴射量と回転速度をパラメータとして、EGRクーラに溜まる凝縮水の貯留量を算出するステップと、凝縮水の貯留量が第2閾値を超えたとき、第1モードと前記第2モードを切り換えるステップと、を含む。
【0026】
この制御方法によれば、凝縮水の貯留量が第2閾値を超えたとき、第1モードと第2モードを切り換えるので、EGRクーラの入口と出口が切り換えられ、凝縮水を除去できる。内燃機関の燃料噴射量と回転速度をパラメータとして、EGRクーラに溜まる凝縮水の貯留量を算出するので、比較的精度よく、EGRクーラに溜まった凝縮水の量を推定でき、凝縮水を的確に除去することが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、EGRクーラに堆積したデポジットの量、あるいは、EGRクーラに溜まった凝縮水の量を、比較的精度よく推定でき、デボジット、あるいは、凝縮水を的確に除去することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施の形態に係る内燃機関の全体構成図である。
【
図3】EGR装置60の第1モードを説明する図である。
【
図4】EGR装置60の第2モードを説明する図である。
【
図5】EGR装置60が第1モードで作動中しているときに、EGRクーラ61をバイパスするバイパスモードを説明する図である。
【
図6】EGR装置60が第2モードで作動しているときに、EGRクーラ61をバイパスするバイパスモードを説明する図である。
【
図7】E/G-ECU100に構成される機能ブロックを示す図である。
【
図8】E/G-ECU100で実行される、デポジット/凝縮水制御の処理を示すフローチャートである。
【
図9】(A)および(B)は、メモリ102に記憶されている、デポジット量Dpマップと凝縮水量Cwマップを示す図である。
【
図10】E/G-ECU100で実行される、モード切換制御の処理を示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態2において、E/G-ECU100に構成される機能ブロックを示す図である。
【
図12】E/G-ECU100で実行される、OBD制御の処理を示すフローチャートである。
【
図13】診断ツール400で実行される、診断・切換処理を示すフローチャートである。
【
図14】実施の形態3において、E/G-ECU100に構成される機能ブロックを示す図である。
【
図15】実施の形態3において、E/G-ECU100で実行される、デポジット/凝縮水制御の処理を示すフローチャートである。
【
図16】実施の形態3における、第1モードと第2モードの時間的推移(デポジットの堆積量ΣDpおよび凝縮水の貯留量ΣCwの時間的推移)を示す図である。
【
図17】実施の形態4において、E/G-ECU100に構成される機能ブロックを示す図である。
【
図18】実施の形態4において、E/G-ECU100で実行される、デポジット/凝縮水制御の処理を示すフローチャートである。
【
図19】実施の形態4において、E/G-ECU100で実行される、診断・切換処理を示すフローチャートである。
【
図20】変形例におけるEGR装置60Aの概略構成を示す図である。
【
図21】(A)および(B)は、EGR装置60Aの第1モードおよび第2モードを説明する図である。
【
図22】(A)および(B)は、EGRクーラ61cをバイパスするバイパスモードを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係る内燃機関の全体構成図である。内燃機関1は、圧縮自己着火式内燃機関(ディーゼルエンジン)であり、内燃機関本体10のシリンダ(気筒)12に形成された燃焼室に、燃料噴射弁(インジェクター)14から燃料を噴射し、圧縮自己着火を行う内燃機関である。内燃機関1の吸気通路20には、エアクリーナ22、インタークーラ24、および吸気絞り弁(電子制御スロットル)26が設けられており、エアクリーナ22で異物が除去された新気(空気)は、ターボ過給機30のコンプレッサ32で過給(圧縮)され、インタークーラ24で冷却されて、吸気マニホールド28に供給され、吸気ポートから各燃焼室に供給される。
【0031】
燃焼室から排出される排気(排気ガス)は、排気マニホールド40に集められ、排気通路42を介して、外気に放出される。また、排気の一部は、排気再循環装置(EGR装置)60によって、吸気マニホールド(吸気通路)28に還流される。EGR装置60の詳細については、後述する。
【0032】
排気通路42には、上流側から、ターボ過給機30のタービン34、酸化触媒70、DPF(Diesel Particulate Filter)72、選択還元触媒74、酸化触媒76が設けられている。酸化触媒70は、排気中の一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO2)に酸化し、排気中の炭化水素(HC)を水(H2O)とCO2に酸化する。また、排気中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO2)に酸化する。これは、窒素酸化物(NOx)の還元反応は、NOとNO2が1:1の比率のとき、反応速度が速いため、ディーゼル内燃機関の排気中にはNOが多く含まれているため、排気中のNOをNO2に酸化して、NOとNO2の比を1:1に近づけるためである。
【0033】
DPF72は、排気中の微粒子を捕集し、捕集した微粒子を適宜燃焼除去することにより、浄化する。選択還元触媒(以下、SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒とも称する)74は、排気中のNOxを還元浄化する。SCR触媒74の詳細は後述する。酸化触媒76は、SCR触媒74から排出された(スリップした)アンモニアを酸化して浄化する。
【0034】
SCR触媒74は、たとえば、セラミック担体に銅(Cu)イオン交換ゼオライトを触媒として担持したものであり、アンモニア(NH3)を還元剤として用いることにより、高い浄化率を示すものである。還元剤として利用するアンモニアは、SCR触媒74の上流の排気通路42に供給した尿素水を加水分解することにより生成する。SCR触媒74の上流の排気通路には、尿素添加弁(尿素水噴射インジェクター)80が設けられ、尿素水タンク82から図示しないポンプによって圧送される尿素水を、尿素添加弁80から、SCR触媒74の上流の排気通路42に噴射する。
【0035】
図2は、EGR装置60の構成を示す図である。EGR装置60は、排気マニホールド40と吸気マニホールド28とを連通するEGR通路50に設けられる。EGR通路50には、排気の一部であるEGRガスが流れる。排気マニホールド40に接続されたEGR通路50の上流には、切換弁62が設けられている。EGR通路50は、切換弁62を分岐部として、第1分岐通路63aおよび第2分岐通路63bに分岐している。切換弁62は、たとえば三方向弁であってよい。第1分岐通路63aの下流は開閉弁64aを介して集合通路65に接続される。第2分岐通路63bの下流は開閉弁64bを介して集合通路65に接続される。集合通路65の下流は、EGRバルブ67を介してEGR通路50に接続され、吸気マニホールド28にEGRガスが還流する。EGRバルブ67の開度を調整することにより、EGR率(EGR量)を制御することができる。
【0036】
第1分岐通路63aの下流は、第1EGRクーラ61aの一方側に接続される。第2分岐通路63bの下流は、第2EGRクーラ61bの一方側に接続される。第1EGRクーラ61aの他方側と第2EGRクーラ61bの他方側は、接続通路66によって接続される。第1EGRクーラ61aと第2EGRクーラ61bは、ほぼ同一の構成であり、たとえば、冷却水が流れる扁平状の冷却水パイプに形成したハニカム構造の冷却フィンの間を、EGRガスが流れることにより、EGRガスと冷却水の間で熱交換を行い、EGRガスが冷却される。本実施の形態では、第1EGRクーラ61aの他方側と第2EGRクーラ61bの他方側が接続通路66によって、接続されることにより、EGRクーラ61が形成される。
【0037】
EGRクーラ61には、冷却水通路90が接続されている。冷却水は、
図2の矢印で示すように、第2EGRクーラ61bの一方側から流入し、第1EGRクーラ61aの一方側から流出する。第1EGRクーラ61aの他方側と第2EGRクーラ61bの他方側には、冷却水接続通路91が設けられており、第2EGRクーラ61bから第1EGRクーラ61aに冷却水が流れるよう構成されている。
【0038】
図3は、EGR装置60の第1モードを説明する図である。第1モードでは、EGR通路50が第1分岐通路63aに連通し、EGR通路50と第2分岐通路63bの連通を遮断するよう切換弁62を切り換える。また、開閉弁64aを閉弁し、開閉弁64bを開弁する。すると、
図3に破線の矢印で示すように、EGRガスは、第1分岐通路63aを流れ、第1EGRクーラ61aの一方側から流入し、第2EGRクーラ61bの一方側から流出して、EGRバルブ67を介して吸気マニホールド28に流入する。第1モードでは、第1EGRクーラ61aの一方側がEGRクーラ61の入口に相当し、第2EGRクーラ61bの一方側がEGRクーラ61の出口に相当する。
【0039】
図4は、EGR装置60の第2モードを説明する図である。第2モードでは、EGR通路50が第2分岐通路63bに連通し、EGR通路50と第1分岐通路63aの連通を遮断するよう切換弁62を切り換える。また、開閉弁64bを閉弁し、開閉弁64aを開弁する。すると、
図4に破線の矢印で示すように、EGRガスは、第2分岐通路63bを流れ、第2EGRクーラ61bの一方側から流入し、第1EGRクーラ61aの一方側から流出して、EGRバルブ67を介して吸気マニホールド28に流入する。第2モードでは、第2EGRクーラ61bの一方側がEGRクーラ61の入口に相当し、第1EGRクーラ61aの一方側がEGRクーラ61の出口に相当する。
【0040】
図5は、EGR装置60が第1モードで作動しているときに、EGRクーラ61をバイパスするバイパスモードを説明する図である。
図3で示した、第1モードの作動中に、開閉弁64bを閉弁し、開閉弁64aを開弁する。すると、
図5の破線の矢印で示すように、EGRガスは、EGRクーラ61に流入することなく、EGRクーラ61をバイパスして、EGRバルブ67を介して吸気マニホールド28に流入する。なお、開閉弁64bは、開弁されていてもよい。
【0041】
図6は、EGR装置60が第2モードで作動しているときに、EGRクーラ61をバイパスするバイパスモードを説明する図である。
図4で示した、第2モードの作動中に、開閉弁64aを閉弁し、開閉弁64bを開弁する。すると、
図6の破線の矢印で示すように、EGRガスは、EGRクーラ61に流入することなく、EGRクーラ61をバイパスして、EGRバルブ67を介して吸気マニホールド28に流入する。なお、開閉弁64aは、開弁されていてもよい。
【0042】
内燃機関1は、制御装置として、E/G-ECU(Electronic Control Unit)100を備える。E/G-ECU100は、CPU(Central Processing Unit)101、処理プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等からなるメモリ102、各種信号を入出力するための入出力ポート(図示せず)等を含み、メモリ102に記憶された情報、各種センサからの情報に基づいて、所定の演算処理を実行する。そして、E/G-ECU100は、演算処理の結果に基づいて、内燃機関1を制御する。たとえば、内燃機関1を車両の動力源として用いる場合には、アクセル開度センサ151で検出したアクセル開度APと車速センサ152で検出した車速SPDとから要求トルクを算出し、要求トルクに見合うトルクが内燃機関1から出力される燃料噴射量Fqと燃料噴射時期を求め、燃料噴射量と燃料噴射時期を制御する。
【0043】
また、E/G-ECU100は、内燃機関1のEGR装置60を制御する。たとえば、燃料噴射量Fqとエンジン回転数センサ153で検出したエンジン回転速度NEとから目標EGR率を算出し、目標EGR率になるようEGRバルブ67の開度を制御する。また、エンジン冷却水温センサ154で検出した冷却水温度THWに基づいて、EGRクーラ61によってEGRガスを冷却するか否かを判定する。たとえば、冷却水温度THWが予め設定した温度より低い場合、EGRガスをEGRクーラ61で冷却することなく、EGRガスを吸気マニホールド28に還流する。この場合、
図5あるいは
図6で示したバイパスモードによって、EGRガスが吸気マニホールド28に流入する。冷却水温度THWが予め設定した温度より高い場合、EGRクーラ61でEGRガスを冷却する。なお、EGRクーラ61で冷却したEGRガスを還流することを、クールEGRとも称する。
【0044】
クールEGRにおいて、EGRガスは、
図3に示す第1モード、あるいは、
図4に示す第2モードによって、吸気マニホールド28に流入する。EGRクーラ61によってEGRガスが冷却されると、EGRガスが熱エネルギーを失ため、運動エネルギーが低下する。また、EGRガスが冷却される際に、EGRガス(排気)に含まれる凝縮水、オイルミストがEGRガス中の煤と結合し異物(デポジット)が生成される。このため、最もERガスの流速が低下するEGRクーラ61の出口近傍においてデポジットが堆積する。第1モードの場合は、第2EGRクーラ61bの一方側にデポジットが堆積し、第2モードの場合は、第1EGRクーラ61aの一方側にデポジットが堆積する。EGRクーラ61に多量のデポジットが堆積すると、EGRクーラ61の詰まりや冷却効率の低下により、所望のNOx低減効果や燃費効果を得られなくなる可能性がある。
【0045】
クールEGRにおいて、EGRクーラ61の出口側の温度が低いため、EGRクーラの出口側に溜まった凝縮水は蒸発することなく滞留する。凝縮水は強い酸性を示すため、滞留した凝縮水によって、EGRクーラ61の腐食を引き起こす懸念がある。
【0046】
本実施の形態では、EGRクーラ61の入口と出口を切り換えることにより、堆積したデポジット、および、溜まった凝縮水を除去する。第1モードから第2モードに切り換える、あるいは、第2モードから第1モードに切り換えることにより、EGRクーラ61の入口と出口を切り換えることができる。デポジットが堆積した出口側、および、凝縮水が滞留している出口側が、EGRクーラ61の入口と出口を切り換えることにより、ERGクーラ61の入口になる。EGRクーラ61の入口側はEGRガスの流速が高いので、堆積していたデポジットが、冷却フィン等から剥がれ落ち除去される。EGRクーラ61の入口側において、EGRガスの温度は高い(高温)ので、堆積していたデポジットの粘度が低下し、デポジットが剥がれ落ちやすくなる。また、EGRクーラ61の入口側において、EGRガスの温度は高い(高温)ので、EGRクーラ61の入口側の温度が高くなり、滞留している凝縮水が加熱され蒸発し除去される。
【0047】
本実施の形態では、内燃機関1の燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEをパラメータとして、EGRクーラ61に堆積するデポジットの堆積量ΣDpを算出する。デポジットの堆積量ΣDpが第1閾値α以上になったとき、EGRクーラ61の入口と出口を切り換える。また、内燃機関1の燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEをパラメータとして、EGRクーラ61に溜まる凝縮水の貯留量ΣCwを算出する。凝縮水の貯留量ΣCwが第2閾値β以上になったとき、EGRクーラ61の入口と出口を切り換える。
【0048】
EGRクーラ61に堆積するデポジットの堆積量ΣDp、および、EGRクーラ61に溜まる凝縮水の貯留量ΣCwは、内燃機関1の運転状態、特に、燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEによって変化する。デポジットの堆積量ΣDpおよび凝縮水の貯留量ΣCwは、燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEをパラメータとして算出されるので、比較的精度よく、EGRクーラ61に堆積したデポジットの堆積量ΣDp、および、EGRクーラ61に溜まった凝縮水の貯留量ΣCwを推定でき、デボジットおよび凝縮水を的確に除去することが可能になる。
【0049】
図7は、E/G-ECU100に構成される機能ブロックを示す図である。デポジット制御部110は、デポジット量算出部111と第1切換指令部112を含む。デポジット量算出部111は、燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEから、デポジットの堆積量ΣDpを算出し、算出したデポジットの堆積量ΣDpを第1切換指令部112へ出力する。なお、デポジットの堆積量ΣDpの算出方法は、後述する。第1切換指令部112は、デポジットの堆積量ΣDpと第1閾値αを比較し、デポジットの堆積量ΣDpが第1閾値α以上であれば、第1モードと第2モードを切り換えて、EGRクーラ61の入口と出口を切り換えるよう、切換制御部130に切換指令を出力する。
【0050】
凝縮水制御部120は、凝縮水量算出部121と第2切換指令部122を含む。凝縮水量算出部121は、燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEから、凝縮水の貯留量ΣCwを算出し、算出した凝縮水の貯留量ΣCwを第2切換指令部122へ出力する。なお、凝縮水の貯留量ΣCwの算出方法は、後述する。第2切換指令部122は、凝縮水の貯留量ΣCwと第2閾値βを比較し、凝縮水の貯留量ΣCwが第2閾値β以上であれば、第1モードと第2モードを切り換えて、EGRクーラ61の入口と出口を切り換えるよう、切換制御部130に切換指令を出力する。
【0051】
切換制御部130は、切換指令を受信すると、切換弁62、開閉弁64a、および開閉弁64bを制御し、第1モードと第2モードを切り換える。
【0052】
図8は、E/G-ECU100で実行される、デポジット/凝縮水制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、内燃機関1の作動中(運転中)、所定期間毎に繰り返し実行される。ステップ(以下、ステップをSと略す)10で、クールEGR中か否かを判定する。EGRクーラ61で冷却したEGRガスを吸気マニホールド28に還流しており、クールEGR中であれば、肯定判定されS11へ進む。バイパスモードによって、EGRガスを冷却することなく、EGRガスを吸気マニホールド28に還流している場合、あるいは、EGRガスの還流を停止している場合には、否定判定され、今回のルーチンを終了する。
【0053】
S11では、フラグFsが変化したか否かを判定する。フラグFsは、後述するモード切換制御によって設定されるフラグである。第1モードのとき、フラグFsは0に設定され、第2モードのとき、フラグFaは1に設定される。前回のルーチンが処理されたあと今回のルーチンが処理されるまでの間に、第1モードと第2モードの切り換えが行われていない場合は、フラグFsが変化しないので、否定判定されS13へ進む。前回のルーチンが処理されたあと今回のルーチンが処理されるまでの間に、モード切換制御で、第1モードと第2モードの切り換えが実行されると、フラグFsが変化するので、肯定判定されS12へ進む。
【0054】
S12では、デポジットの堆積量の前回値ΣDp(n)をリセット値Dpsに設定する(書き換える)とともに、凝縮水の貯留量の前回値ΣCw(n)をリセット値Cwsに設定したあと(書き換えたあと)、S13へ進む。
【0055】
S13では、燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEとに基づいて、EGRクーラ61に堆積するデポジット量Dp、および、EGRクーラ61に溜まる凝縮水量Cwを算出する。
図9は、メモリ102に記憶されている、デポジット量Dpマップと凝縮水量Cwマップを示す図である。
図9(A)は、デポジット量Dpマップであり、
図9(B)は、凝縮水量Cwマップである。
【0056】
図9において、横軸は内燃機関1のエンジン回転速度NEであり、縦軸は内燃機関1の燃料噴射量Fqである。デポジット量Dpマップ(
図9(A))において、「*」は単位時間当たりに堆積するデポジット量を表しており、各々の「*」は異なる数値である。また、「-*」は、堆積したデポジットが除去される量を表している。内燃機関1が高負荷、高回転で運転されるとき、ERGクーラ61を流れるEGRガス量が増大し、堆積したデポジットが除去される運転領域も存在する。凝縮水量Cwマップ(
図9(B))において、「*」は単位時間当たりに溜まる凝縮水量を表しており、各々の「*」は異なる数値である。また、「-*」は、溜まった凝縮水が除去される量を表している。内燃機関1が高負荷、高回転で運転されるとき、ERGクーラ61を流れるEGRガスの温度が上昇し、溜まった凝縮水が除去される運転領域も存在する。
【0057】
予め実験等により、単位時間当たりに堆積するデポジット量、および、単位時間当たりに溜まる凝縮水量、等を求めて、デポジット量Dpマップ、および、凝縮水量Cwマップを作成する。そして、作成したデポジット量Dpマップ、および、凝縮水量Cwマップをメモリ102に格納しておく。
【0058】
S13では、燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEをパラメータとして、デポジット量Dpマップから、単位時間当たりに堆積するデポジット量(*、-*)を求め、本ルーチンの演算周期(所定期間)に相当する値を、デポジット量Dpとして算出する。また、燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEをパラメータとして、凝縮水量Cwマップから、単位時間当たりに溜まる凝縮水量(*、-*)を求め、本ルーチンの演算周期に相当する値を、凝縮水量Cwとして算出する。
【0059】
続く、S14では、デポジットの堆積量の前回値ΣDP(n)をメモリ102から読み出し、前回値ΣDp(n)にデポジット量Dpを加算することにより、デポジットの堆積量ΣDpを算出する(ΣDp=ΣDp(n)+Dp)。そして、算出したデポジットの堆積量ΣDpを、前回値ΣDp(n)として、メモリ102に記憶する(書き換える)。
【0060】
また、S14では、凝縮水の貯留量の前回値ΣDP(n)をメモリ102から読み出し、前回値ΣCw(n)に凝縮水量Cwを加算することにより、凝縮水の貯留量ΣCwを算出する(ΣCw=ΣCw(n)+Cw)。そして、算出した凝縮水の貯留量ΣCwを、前回値ΣCw(n)として、メモリ102に記憶した(書き換えた)あと、S15に進む。
【0061】
S15では、デポジットの堆積量ΣDpが第1閾値α以上であるか否かを判定する。デポジットの堆積量ΣDpが第1閾値αより小さい場合(ΣDp<α)、否定判定されS16へ進む。デポジットの堆積量ΣDpが第1閾値α以上の場合(ΣDp≧α)、肯定判定されS17へ進む。第1閾値αは、たとえば、デポジットがこの値以上にEGRクーラ61に堆積すると、EGRクーラ61の冷却効率が許容値未満になる値であり、予め実験等よって定められる。
【0062】
S16において、凝縮水の貯留量ΣCwが第2閾値β以上であるか否かを判定する。凝縮水の貯留量ΣCwが第2閾値βより小さい場合(ΣCw<β)、否定判定され、今回のルーチンを終了する。凝縮水の貯留量ΣCwが第2閾値β以上の場合(ΣCw≧β)、肯定判定されS17へ進む。第2閾値βは、たとえば、凝縮水がこの値以上にEGRクーラ61に滞留すると、EGRクーラ61の腐食が比較的速く進行する値であり、予め実験等よって定められる。
【0063】
S17では、フラグFcを1に設定したあと、今回のルーチンを終了する。フラグFcは、第1モードと第2モードの切り換えを指令するフラグであり、フラグFcが1に設定されたとき(Fc=1のとき)、切り換えの指令となる。
【0064】
図10は、E/G-ECU100で実行される、モード切換制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、フラグFcが1に設定されたとき、割込処理される。
図8のS17でフラグFcが1に設定され、モード切換制御が割込処理されると、S20において、フラグFsが1であるか否かを判定する。現在のEGR装置60の状態が第1モードである場合には、フラグFsは0であるので、S20で否定判定され、S21へ進む。
【0065】
S21では、EGR通路50が第2分岐通路63bに連通し、EGR通路50と第1分岐通路63aの連通を遮断するよう切換弁62を切り換える。また、開閉弁64bを閉弁し、開閉弁64aを開弁して、EGR装置60を第2モード(
図4参照)に切り換えたあと、S22へ進む。
【0066】
S22おいて、フラグFsを1に設定したあと、S23へ進んで、フラグFcを0に設定し、今回のルーチンを終了する。
【0067】
S20において、現在のEGR装置60の状態が第2モードである場合には、フラグFsは1であるので、肯定判定され、S24へ進む。
【0068】
S24では、EGR通路50が第1分岐通路63aに連通し、EGR通路50と第2分岐通路63bの連通を遮断するよう切換弁62を切り換える。また、開閉弁64aを閉弁し、開閉弁64bを開弁して、EGR装置60を第1モード(
図3参照)に切り換えたあと、S25へ進む。
【0069】
S25おいて、フラグFsを0に設定したあと、S23へ進んで、フラグFcを0に設定し、今回のルーチンを終了する。
【0070】
本実施の形態において、
図8の処理がデポジット制御部110に相当し、S13およびS14の処理がデポジット量算出部111に相当し、S15およびS17の処理が第1切換指令部112に相当する。
図8の処理が凝縮水制御部120に相当し、13およびS14の処理が凝縮水量算出部121に相当し、S15およびS17の処理が第2切換指令部122に相当する。また、
図10の処理が切換制御部130に相当する。
【0071】
本実施の形態によれば、デポジット制御部110は、デポジット量算出部111により、内燃機関の燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEをパラメータとして、EGRクーラに堆積するデポジットの堆積量ΣDpを算出し、第1切換指令部112により、デポジットの堆積量ΣDpが第1閾値αを超えたとき、第1モードと第2モードを切り換えるよう指令する。そして、切換制御部130が、切換部(切換弁62、開閉弁64aおよび開閉弁64b)を制御し、EGRガスがEGRクーラ61を所定方向に流れる第1モードと、EGRガスがEGRクーラ61を所定方向と逆方向に流れる第2モードとを切り換えることにより、EGRクーラ61の入口と出口を切り換える。
【0072】
EGRクーラ61の入口と出口を切り換えることにより、デポジットが堆積した出口側が、ERGクーラ61の入口になる。EGRクーラ61の入口側はEGRガスの流速が高いので、堆積していたデポジットが、冷却フィン等から剥がれ落ち除去される。また、デポジットの堆積量ΣDpは、燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEをパラメータとして算出されるので、比較的精度よく、EGRクーラ61に堆積したデポジットの堆積量ΣDpを推定でき、デボジットを的確に除去することが可能になる。
【0073】
本実施の形態によれば、凝縮水制御部120は、凝縮水量算出部121により、内燃機関の燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEをパラメータとして、EGRクーラ61に溜まる凝縮水の貯留量ΣCwを算出し、第2切換指令部122により、凝縮水の貯留量ΣCwが第2閾値βを超えたとき、第1モードと第2モードを切り換えるよう指令する。そして、切換制御部130が、切換部(切換弁62、開閉弁64aおよび開閉弁64b)を制御し、EGRガスがEGRクーラ61を所定方向に流れる第1モードと、EGRガスがEGRクーラ61を所定方向と逆方向に流れる第2モードとを切り換えることにより、EGRクーラ61の入口と出口を切り換える。
【0074】
EGRクーラ61の入口と出口を切り換えることにより、凝縮水が溜まった出口側が、ERGクーラ61の入口になる。EGRクーラ61の入口側はEGRガスの温度が高いので、滞留していた凝縮水が、蒸発(揮発)して除去される。また、凝縮水の貯留量ΣCwは、燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEをパラメータとして算出されるので、比較的精度よく、EGRクーラ61に溜まる凝縮水の貯留量ΣCwを推定でき、凝縮水を的確に除去することが可能になる。
【0075】
本実施の形態では、E/G-ECU100に、デポジット制御部110および凝縮水制御部120を構成しているが、E/G-ECU100に、デポジット制御部110あるいは凝縮水制御部120の少なくとも一方を構成するようにしてもよい。
【0076】
(実施の形態2)
上記の実施の形態(実施の形態1)では、切換制御部130で、第1モードと第2モードを切り換えていた。しかし、診断ツールを用いて、第1モードと第2モードを切り換えるようにしてもよい。
【0077】
図1において、E/G-ECU100は、診断ツール400と通信可能に構成されている。診断ツール400は、整備工場において、内燃機関1の異常や故障を診断するものである。たとえば、内燃機関1が動力源として車両に搭載されている場合、診断ツール400は、車載式故障診断装置(OBD:On-Board Diagnostics)のスキャンツールであってよい。
【0078】
図11は、実施の形態2において、E/G-ECU100に構成される機能ブロックを示す図である。デポジット量算出部111と第1切換指令部112を含むデポジット制御部110、および、凝縮水量算出部121と第2切換指令部122を含む凝縮水制御部120は、実施の形態1における(
図7参照)デポジット制御部110および凝縮水制御部120と同一の構成である。したがって、実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、
図8に示したデポジット/凝縮水制御の処理が実行される。
【0079】
図11において、OBD制御部140は、第1切換指令部112あるいは第2切換指令部122から切換指令を受信すると、ダイアグコードをメモリ102へ書き込むとともに、図示しない警告灯(MIL:Malfunction Indication Lamp)を点灯する。
【0080】
図12は、E/G-ECU100で実行される、OBD制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、フラグFcが1に設定されたとき、割込処理される。
図8のS17でフラグFcが1に設定され、OBD制御が割込処理されると、S30において、ダイアグコードをメモリ102へ書き込む。このダイアグコードは、デポジットの堆積量ΣDpが第1閾値α以上、あるいは、凝縮水の貯留量ΣCwが第2閾値β以上の状態であることを示すコードであり、たとえば、「P1001」というコードを用いてもよい。なお、S30で書き込むダイアグコードを、EGRコードとも称する。続く、S31では、MILを点灯したあと、今回のルーチンを終了する。
【0081】
MILの点灯により、たとえば、内燃機関1を搭載した車両が整備工場に入庫されると、診断ツール400がE/G-ECU100に接続され、内燃機関1の異常診断が行われる。
図13は、診断ツール400で実行される、診断・切換処理を示すフローチャートである。この処理は、診断ツール400がE/G-ECU100に接続されたときに実行される。まず、S40において、メモリ102に記憶されたダイアグコードを読み出し、読み出したダイアグコードにEGRコードが含まれるか否かを判定する。たとえば、メモリ102から読み出したダイアグコードに、「P1001」のコードが存在したとき、EGRコードがあると判定する(EGRコードを検知する)。メモリ102から読み出したダイアグコードに、「P1001」のコードが存在しない場合、否定判定され今回の処理を終了する。メモリ102から読み出したダイアグコードに、「P1001」のコードが存在し、肯定判定されると、S41へ進む。
【0082】
S41では、メモリ102からフラグFsを読み出し、S20へ進む。S20~S25は、
図10に示したモード切換制御のS20~S25と実質的に同一の処理であり、詳細な説明は省略する。なお、S21における第1モードへの切り換え、および、S24における第2モードへの切り換えは、E/G-ECU100を介して、切換弁62、開閉弁64aおよび開閉弁64bを制御することにより、実行される。
【0083】
S23に続いて処理されるS42では、メモリ102に記憶されていEGRコードを消去(リセット)するとともに、メモリ102にフラグFsおよびフラグFsを書き込む。これにより、メモリ102に記憶されるフラグFcは0に設定される。メモリ102に記憶されるフラグFsは、S25が処理されたときに0に設定され、S21が処理されたときに1に設定される。S42が処理されると、今回の処理を終了する。
【0084】
この実施の形態2では、E/G-ECU100と通信可能な診断ツール400によって、第1モードと第2モードを切り換えるよう切換部(切換弁62、開閉弁64aおよび開閉弁64b)が制御される。上記の実施の形態1では、内燃機関1の運転時(作動時)に、切換制御部130によってEGRクーラ61の入口と出口を切り換えるので、内燃機関1の作動時にEGR率が大きく変動し、ユーザへ違和感を与える可能性がある。この実施の形態2では、デポジットの堆積量ΣDpが第1閾値αを超え、第1切換指令部112から切換指令が出力され、EGRコードが書き込まれたとき、あるいは、凝縮水の貯留量ΣCwが第2閾値βを超え、第2切換指令部122から切換指令が出力され、EGRコードが書き込まれたとき、整備工場において、診断ツール400を用いて内燃機関1の異常診断を行う際に、EGRクーラ61の入口と出口を切り換える。内燃機関1の異常診断は、EGRコードを用いて行われるので、内燃機関1を運転(作動)することなく診断でき、内燃機関1の作動時にEGR率が大きく変動して、ユーザに違和感を与えることを抑制できる。
【0085】
この実施の形態2においても、E/G-ECU100に、デポジット制御部110あるいは凝縮水制御部120の少なくとも一方を構成するようにしてよい。
【0086】
なお、実施の形態2では、診断ツール400が、S21あるいはS24(
図13参照)の処理によって、第1モードと第2モードを切り換えていた。しかし、診断ツール400のディスプレイに、第1モードへの切換指示、および、第2モードへの切換指示が表示され、整備者が、これら指示に従って、診断ツール400を操作することにより、第1モードと第2モードを切り換えるようにしてもよい。
【0087】
(実施の形態3)
第1モードと第2モードでは、EGRガスの流れの方向が異なるので、EGRクーラ61による冷却効率が変化する可能性がある。
図2を参照して、冷却水は、
図2の矢印で示すように、第2EGRクーラ61bの一方側から流入し、第1EGRクーラ61aの他方側から流出する。このため、第1モードでは、EGRガスと冷却水の流れが対向流になり、第2モードでは、EGRガスと冷却水の流れが並行流になるので、第2モードでは、第1モードと比較してEGRクーラ61の冷却効率が低下する可能性がある。
【0088】
実施の形態1および実施の形態2では、EGR装置60の第1モードと第2モードを交互に切り換えるように制御しているので、第1モードと第2モードは、ほぼ同じ期間継続する。実施の形態3では、内燃機関1が第2モードで運転される期間を短くすることにより、第1モードから第2モードに切り換わり冷却効率が変化しても、その影響を少なくする。
【0089】
図14は、実施の形態3において、E/G-ECU100に構成される機能ブロックを示す図である。
図14における機能ブロック図は、実施の形態1の機能ブロック図(
図7参照)に対して、デポジット制御部110へデポジットリセット値算出部113を追加し、凝縮水制御部120に凝縮水リセット値算出部123を追加したものである。
【0090】
デポジットリセット値算出部113は、第2モードのとき、デポジットの堆積量ΣDpを減算する。これに伴い、デポジット量算出部111は、第1モードのとき、デポジットの堆積量ΣDpを算出するように構成される。第1切換指令部112は、デポジットの堆積量ΣDpと第1閾値αを比較し、デポジットの堆積量ΣDpが第1閾値α以上であれば、第1モードから第2モードに切り換えるよう、切換制御部130に切換指令を出力する。また、第1切換指令部112は、デポジットリセット値算出部113で減算されたデポジットの堆積量ΣDpが、第1リセット値Dps以下になったとき、第2モードから第1モードへ切り換えるよう、切換制御部130に切換指令を出力する。
【0091】
凝縮水リセット値算出部123は、第2モードのとき、凝縮水の貯留量ΣCwを減算する。これに伴い、凝縮水量算出部121は、第1モードのとき、凝縮水の貯留量ΣCwを算出するように構成される。第2切換指令部122は、凝縮水の貯留量ΣCwと第2閾値βを比較し、凝縮水の貯留量ΣCwが第2閾β以上であれば、第1モードから第2モードに切り換えるよう、切換制御部130に切換指令を出力する。また、第2切換指令部122は、凝縮水リセット値算出部123で減算された凝縮水の貯留量ΣCwが、第2リセット値Cws以下になったとき、第2モードから第1モードへ切り換えるよう、切換制御部130に切換指令を出力する。
【0092】
図15は、実施の形態3において、E/G-ECU100で実行される、デポジット/凝縮水制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、
図8に示す実施の形態1のフローチャートからS12を削除して、SS50~S56を追加したものであり、S10、S11、およびS13~S17は、
図8と同様であるので、その説明を省略する。S11において、フラグFsが0であり肯定判定されると、S13以降が処理され、燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEをパラメータとして、デポジットの堆積量ΣDpおよび凝縮水の貯留量ΣCwが算出される。S15では、デポジットの堆積量ΣDpが第1閾値α以上の場合(ΣDp≧α)、肯定判定されS17へ進む際に、追加されたS50において、フラグFgを0に設定したあと、S17へ進む。また、S16において、凝縮水の貯留量ΣCwが第2閾値β以上の場合(ΣCw≧β)、肯定判定されS17へ進む際に、追加されたS51でフラグFgを1に設定したあと、S17へ進む。
【0093】
S11で、フラグFsが1であり否定判定されると、S52へ進む。この実施の形態3においても、実施の形態1と同様に、
図10に示すモード切換制御が実行される。フラグFsが0に設定されているときは、第1モードであり、フラグFsが1に設定されているときは、第2モードである。したがって、S11が処理されることにより、第1モードのときに、S13以降が処理され、燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEをパラメータとして、デポジットの堆積量ΣDpおよび凝縮水の貯留量ΣCwが算出され、第2モードのときに、S50へ進む。
【0094】
S52では、エンジン回転速度NEに基づいて、デポジットの除去量Dpdを算出し、また、エンジン回転速度に基づいて、凝縮水の除去量Cwdを算出して、S51へ進む。
【0095】
S53では、デポジットの堆積量の前回値ΣDP(n)をメモリ102から読み出し、前回値ΣDp(n)からデポジットの除去量Dpdを減算することにより、デポジットの堆積量ΣDpを算出する(ΣDp=ΣDp(n)-Dps)。そして、算出したデポジットの堆積量ΣDpを、前回値ΣDp(n)として、メモリ102に記憶する(書き換える)。また、凝縮水の貯留量の前回値ΣDP(n)をメモリ102から読み出し、前回値ΣCw(n)から凝縮水の除去量Cwdを減算することにより、凝縮水の貯留量ΣCwを算出する(ΣCw=ΣCw(n)-Cwd)。そして、算出した凝縮水の貯留量ΣCwを、前回値ΣCw(n)として、メモリ102に記憶したあと、S54に進む。
【0096】
S54では、フラグFgが0であるか否かを判定する。デポジットの堆積量ΣDpが第1閾値α以上になり、第2モードである場合には、フラグFgが0であり、肯定判定されS55へ進む。凝縮水の貯留量ΣCwが第2閾値β以上になり、第2モードである場合には、フラグFgは1であるので、否定判定されS56へ進む。
【0097】
S55では、デポジットの堆積量ΣDpが、第1リセット値Dps以下であるか否かを判定する。デポジットの堆積量ΣDpが第1リセット値Dps以下の場合(ΣDp≦Dps)は、肯定判定されS17へ進み、S17でフラグFcを1に設定したあと、今回のルーチンを終了する。デポジットの堆積量ΣDpが第1リセット値Dpsより大きい場合(ΣDp>Dps)は、否定判定され、今回のルーチンを終了する。なお、第1リセット値Dpsは、
図7のS12で設定されるリセット値Dpsと同じ値である。
【0098】
S56では、凝縮水の貯留量ΣCwが、第2リセット値Cws以下であるか否かを判定する。凝縮水の貯留量ΣCwが第2リセット値Cws以下の場合(ΣCw≦Cws)は、肯定判定されS17へ進み、S17でフラグFcを1に設定したあと、今回のルーチンを終了する。凝縮水の貯留量ΣCwが第2リセット値Cwsより大きい場合(ΣCw>Cws)は、否定判定され、今回のルーチンを終了する。なお、第2リセット値Cwsは、
図7のS12で設定されるリセット値Cwsと同じ値である。
【0099】
S52およびS53の処理は、デポジットリセット値算出部113および凝縮水リセット値算出部123に相当する。S52で算出するデポジットの除去量Dpdは、第1モードから第2モードに切り換えられたあと、堆積していたデポジットが、冷却フィン等から剥がれ落ち、デポジットの堆積量ΣDpが第1閾値αから第1リセット値Dpsに減少するまでの内燃機関1の運転時間を、予め実験等によって求めることにより、設定される。たとえば、内燃機関1が車両に搭載されている場合、第1モードから第2モードに切り換えたあと、WLCT(Worldwide-harmonized Light vehicles Test Cycle)の市街地モードで走行した際に、デポジットの堆積量ΣDpが第1閾値αから第1リセット値Dpsに減少するまでの内燃機関1の運転時間に基づいて、エンジン回転速度NEをパラメータとしたデポジットの除去量Dpdのマップを作成し、このマップからデポジットの除去量Dpdを算出するようにしてよい。デポジットの除去量Dpdのマップは、燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEをパラメータとしたマップであってもよい。また、デポジットの除去量Dpdを、内燃機関1の運転時間(作動時間)から求めるようにしてもよい。
【0100】
EGR装置60が第1モードから第2モードに切り換えらると、堆積していたデポジットは、高速のEGRガスによって、冷却フィン等から剥がれ落ちるため、比較的短時間でデポジットの堆積量ΣDpが第1リセット値Dpsまで減少する。たとえば、第1モードから第2モードに切り換えられたあと、10分以内にデポジットの堆積量ΣDpが第1リセット値Dpsまで減少する。
【0101】
S52で算出する凝縮水の除去量Cwdは、第1モードから第2モードに切り換えられたあと、滞留している凝縮水が蒸発(揮発)して除去され、凝縮水の貯留量ΣCwが第2閾値βから第2リセット値Cwsに減少するまでの内燃機関1の運転時間を、予め実験等によって求めることにより、設定される。たとえば、内燃機関1が車両に搭載されている場合、第1モードから第2モードに切り換えたあと、WLCTの市街地モードで走行した際に、凝縮水の貯留量ΣCwが第2閾値βから第2リセット値Cwsに減少するまでの内燃機関1の運転時間に基づいて、エンジン回転速度NEをパラメータとした凝縮水の除去量Cwdのマップを作成し、このマップから凝縮水の除去量Cwdを算出するようにしてよい。凝縮水の除去量Cwdのマップは、燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEをパラメータとしたマップであってもよい。また、凝縮水の除去量Cwdを、内燃機関1の運転時間(作動時間)から求めるようにしてもよい。
【0102】
EGR装置60が第1モードから第2モードに切り換えらると、EGRクーラ61に溜まっている凝縮水は、高温のEGRガスによって、加熱され蒸発し除去さるため、比較的短時間で凝縮水の除去量Cwdが第2リセット値Cwsまで減少する。たとえば、第1モードから第2モードに切り換えられたあと、10分以内に凝縮水の除去量Cwdが第2リセット値Cwsまで減少する。
【0103】
実施の形態3においても、
図10に示したモード切換制御が実行される。すなわち、S17でフラグFcが1に設定されると、
図10のモード切換制御が割込処理される。これにより、第1モード(フラグFs=0)のとき、デポジットの堆積量ΣDpが第1閾値α以上になり(S15で肯定判定)、あるいは、凝縮水の貯留量ΣCwが第2閾値β以上になり(S16で肯定判定)、フラグFcが1に設定されると、S21(
図10参照)において、第1モードから第2モードに切り換えられる。また、第2モード(フラグFs=1)のとき、デポジットの堆積量ΣDpが第1リセット値Dps以下になり(S55で肯定判定)、あるいは、凝縮水の貯留量ΣCwが第2リセット値Cws以下になり(S56で肯定判定)、フラグFcが1に設定されると、S24(
図10参照)において、第2モードから第1モードに切り換えられる。
【0104】
図16は、実施の形態3における、第1モードと第2モードの時間的推移(デポジットの堆積量ΣDpおよび凝縮水の貯留量ΣCwの時間的推移)を示す図である。この実施の形態3によれば、デポジットの堆積量ΣDpが第1閾値α以上になるまで、あるいは、凝縮水の貯留量ΣCwが第2閾値β以上になるまで、EGRガスと冷却水の流れが対向流である第1モードで、EGR装置60が作動する。そして、デポジットの堆積量ΣDpが第1閾値α以上になると、あるいは、凝縮水の貯留量ΣCwが第2閾値β以上になると、第1モードから第2モードに切り換えられる。EGRクーラ61へのデポジットの堆積、および、EGRクーラ61への凝縮水の貯留は、徐々に進行するので、第1モードによる運転時間(作動時間)は、
図16に示すように、長期間にわたって継続することになる。
【0105】
第2モードに切り換えられると、堆積しているデポジット、および、滞留している凝縮水が除去される。デポジットおよび凝縮水は、上述の通り、比較的短時間で除去されるので、デポジットリセット値算出部113で算出されるデポジットの堆積量ΣDpが、短時間で第1リセット値Dps以下になるとともに、凝縮水リセット値算出部123で算出される凝縮水の貯留量ΣCwが、短時間で第2リセット値Cws以下になる。したがって、短時間で、第2モードから第1モードに切り換えられるので、
図16に示すように、内燃機関1(EGR装置60)が、第2モードで運転される期間を短くすることができる。
【0106】
本実施の形態では、冷却水は、
図2の矢印で示すように、第2EGRクーラ61bの一方側から流入し、第1EGRクーラ61aの他方側から流出し、第1モードでは、EGRガスと冷却水の流れが対向流になり、第2モードでは、EGRガスと冷却水の流れが並行流になるように構成されている。したがって、比較的冷却効率が高い対交流による冷却が実行される第1モードを、長期間にわたって継続でき、また、対向流に対して冷却効率が低い並行流による冷却が実行される第2モードを比較的短時間で終了できるので、全体として、高い冷却効率でEGRガスを冷却することができる。
【0107】
この実施の形態3においても、E/G-ECU100に、デポジット制御部110あるいは凝縮水制御部120の少なくとも一方を構成するようにしてよい。
【0108】
(実施の形態4)
実施の形態2のように、診断ツール400を用いて、第1モードと第2モードを切り換える例において、内燃機関1が第2モードで運転される期間を短くすることにより、第1モードから第2モードに切り換わり冷却効率が変化しても、その影響を少なくするようにしてもよい。
【0109】
図17は、実施の形態4において、E/G-ECU100に構成される機能ブロックを示す図である。
図16における機能ブロック図は、実施の形態3の機能ブロック図(
図14参照)に対して、切換制御部130を、OBD制御部140に置き換えたものである。OBD制御部140は、実施の形態2の機能ブロック図(
図11参照)のOBD制御部140と実質的に同じであり、第1切換指令部112あるいは第2切換指令部122から切換指令(フラグFc=1)を受信すると、ダイアグコードをメモリ102へ書き込むとともに、図示しないMILを点灯する。
【0110】
図17において、デポジットリセット値算出部113および凝縮水リセット値算出部123は、実施の形態3(
図14参照)と同じであるので、その説明を省略する。なお、実施の形態4においては、デポジットリセット値算出部113で減算されたデポジットの堆積量ΣDpが、第1リセット値Dps以下になったとき、第2モードから第1モードへ切り換えるよう、切換部(切換弁62、開閉弁64a、および開閉弁64b)をデポジット制御部110が制御する。また、凝縮水リセット値算出部123で減算された凝縮水の貯留量ΣCwが、第2リセット値Cws以下になったとき、第2モードから第1モードへ切り換えるようm切換部を凝縮水制御部120が制御する。
【0111】
図18は、実施の形態4において、E/G-ECU100で実行される、デポジット/凝縮水制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、
図15に示す実施の形態3のフローチャートに、S57およびS58を追加したものであり、
図15のフローチャートと同一の処理については、その説明を省略する。
【0112】
実施の形態4では、実施の形態2と同様に、
図12に示したODB制御の処理が行われる。すなわち、
図15のS17でフラグFcが1に設定されると、
図12に示したODB制御が割込処理され、ダイアグコード(EGRコード)がメモリ102に書き込まれるともに、MILが点灯する。
【0113】
図19は、実施の形態4において、E/G-ECU100で実行される、診断・切換処理を示すフローチャートである。この処理は、診断ツール400がE/G-ECU100に接続されたときに実行される。
図13に示した、実施の形態2の診断・切換処理のフローチャートから、S41、S20、S24、およびS25を省略したものである。S40において、メモリ102に記憶されたダイアグコードを読み出し、読み出したダイアグコードにEGRコードが含まれるか否かを判定し、EGRコードが含まれない場合、否定判定され今回の処理を終了する。ダイアグコードにEGRコードが含まれる場合、肯定判定され、S21以下の処理を実行する。S21以下の処理は、実施の形態2(
図13)と同じであるので、説明を省略する。
【0114】
したがって、メモリ102にダイアグコード(EGRコード)が書き込まれたあと、E/G-ECU100に診断ツール400が接続され、
図19に示した、診断・切換処理が実行されることにより、EGR装置60が第1モードから第2モードに切り換えられる。
【0115】
診断・切換処理が実行されることにより、EGR装置60が第1モードから第2モードに切り換えられると、フラグFsは1に設定されるので(
図19のS22)、
図18を参照して、S11で否定判定され、S52以降の処理が実行される。デポジットの堆積量ΣDpが第1閾値α以上になり、診断・切換処理によって第2モードに切り換えられた場合には、フラグFgが0であり、S54で肯定判定されS55へ進み、S53で算出した(減算した)デポジットの堆積量ΣDpが第1リセット値Dps以下であれば、S57へ進む。また、凝縮水の貯留量ΣCwが第2閾値β以上になり、診断・切換処理によって第2モードに切り換えられた場合には、フラグFgは1であり、S54で否定判定されS56へ進み、S53で算出した(減算した)凝縮水の貯留量ΣCwが第2リセット値Cws以下であれば、S57へ進む。
【0116】
S57では、切換部(切換弁62、開閉弁64aおよび開閉弁64b)を制御し、EGR装置を第1モード(
図3参照)に切り換えたあと、S58に進んで、フラグFsを0に設定し、今回のルーチンを終了する。
【0117】
この実施形態の4においても、実施の形態3と同様に、内燃機関1(EGR装置60)が、第2モードで運転される期間を短くすることができる。したがって、比較的冷却効率が高い対交流による冷却が実行される第1モードを、長期間にわたって継続でき、また、対向流に対して冷却効率が低い並行流による冷却が実行される第2モードを比較的短時間で終了できるので、全体として、高い冷却効率でEGRガスを冷却することができる。
【0118】
この実施の形態4においても、E/G-ECU100に、デポジット制御部110あるいは凝縮水制御部120の少なくとも一方を構成するようにしてよい。
【0119】
(変形例)
上述の実施の形態では、EGRクーラ61を、第1EGRクーラ61aと第2EGRクーラ61bから構成していた。しかし、EGRクーラの構成はこれに限られない。
図20は、変形例におけるEGR装置60Aの概略構成を示す図である。
図20を参照して、EGR通路50は、切換弁62を分岐部として、第1分岐通路63cおよび第2分岐通路63dに分岐している。切換弁62は、たとえば三方向弁であってよい。第1分岐通路63cの下流は、切換弁64を介してEGRバルブ67に接続される。第2分岐通路63dの下流は、切換弁64を介してEGRバルブ67に接続される。切換弁64は、たとえば三方向弁であってよい。
【0120】
第1分岐通路63cの中間部(中間点)は、EGRクーラ61cの一方側へ接続されており、第2分岐通路63dの中間部(中間点)は、EGRクーラ61cの他方側へ接続されている。これにより、第1分岐通路63cの中間部と第2分岐通路63dの中間部は、EGRクーラ61cを介して連通している。
【0121】
EGRクーラ61には、冷却水通路90が接続されている。冷却水は、
図20の矢印で示すように、EGRクーラ61cの他方側から流入し、EGRクーラ61cの一方側から流出する。
【0122】
図21は、EGR装置60Aの第1モードおよび第2モードを説明する図である。
図21(A)は第1モードであり、
図21(B)は第2モードである。
図21(A)に示すように、第1モードでは、EGR通路50が第1分岐通路63cに連通し、EGR通路50と第2分岐通路63dの連通を遮断するよう切換弁62を切り換える。また、EGRバルブ67と第2分岐通路63dが連通し、EGRバルブ67と第1分岐通路63cの連通が遮断するよう切換弁64を切り換える。すると、
図21(A)に破線の矢印で示すように、EGRガスは、第1分岐通路63cを流れ、EGRクーラ61cの一方側から流入し、EGRクーラ61cの他方側から流出して、EGRバルブ67を介して吸気マニホールド28に流入する。第1モードでは、EGRクーラ61cの一方側が入口に相当し、EGRクーラ61cの他方側が出口に相当する。
【0123】
図21(B)に示すように、第2モードでは、EGR通路50が第2分岐通路63dに連通し、EGR通路50と第1分岐通路63cの連通を遮断するよう切換弁62を切り換える。また、EGRバルブ67と第1分岐通路63cが連通し、EGRバルブ67と第2分岐通路63dの連通が遮断するよう切換弁64を切り換える。すると、
図21(B)に破線の矢印で示すように、EGRガスは、第2分岐通路63dを流れ、EGRクーラ61cの他方側から流入し、EGRクーラ61cの一方側から流出して、EGRバルブ67を介して吸気マニホールド28に流入する。第2モードでは、EGRクーラ61cの他方側が入口に相当し、EGRクーラ61cの一方側が出口に相当する。
【0124】
図22は、EGRクーラ61cをバイパスするバイパスモードを説明する図である。
図22(A)は、ERG装置60Aが第1モードで作動しているときのバイパスモードを説明する図であり、
図22(B)は、EGR装置60Aが第2モードで作動しているときのバイパスモードを説明する図である。
【0125】
図21(A)で説明した第1モードの作動中に、切換弁64を、EGRバルブ67と第1分岐通路63cが連通し、EGRバルブ67と第2分岐通路63dの連通が遮断するように切り換える。すると、
図22(A)の破線の矢印で示すように、GRガスは、EGRクーラ61cに流入することなく、EGRクーラ61cをバイパスして、EGRバルブ67を介して吸気マニホールド28に流入する。
【0126】
図21(B)で説明した第2モードの作動中に、切換弁64を、EGRバルブ67と第2分岐通路63dが連通し、EGRバルブ67と第1分岐通路63cの連通が遮断するように切り換える。すると、
図22(B)の破線の矢印で示すように、GRガスは、EGRクーラ61cに流入することなく、EGRクーラ61cをバイパスして、EGRバルブ67を介して吸気マニホールド28に流入する。
【0127】
この変形例のように、EGR装置60は、入口と出口を切換可能なEGRクーラを備えるのであれば、ひとつのERGクーラを備えるものであってよい。
【0128】
本実施の形態では、内燃機関1としてディーゼルエンジンを説明したが、内燃機関1はガソリン内エンジン(火花点火式内燃機関)であってもよい。
【0129】
本開示における実施態様を例示すると、次のような態様を例示できる。
1)排気の一部であるEGRガスを吸気通路(20、28)に還流する排気再循環装置(60)を有する内燃機関(1)であって、EGRガスが流れるEGR通路(50)に設けられ、EGRガスを冷却するEGRクーラ(61)と、EGRガスの流れる方向を、EGRガスがEGRクーラ(61)を所定方向に流れる第1モードと、EGRガスがEGRクーラ(61)を所定方向と逆方向に流れる第2モードとに、切り換える切換部(62、64、64a、64b)と、制御装置(100)と、を備え、制御装置は、デポジット制御部(110)、あるいは、凝縮水制御部(120)の少なくとも一方を備え、デポジット制御部(110)は、内燃機関の燃料噴射量と回転速度をパラメータとして、EGRクーラ(61)に堆積するデポジットの堆積量を算出するデポジット量算出部(111)と、デポジットの堆積量が第1閾値を超えたとき、第1モードと第2モードを切り換えるよう指令する第1切換指令部(112)とを備え、凝縮水制御部(121)は、燃料噴射量と回転速度をパラメータとして、EGRクーラ(61)に溜まる凝縮水の貯留量を算出する凝縮水量算出部(121)と、凝縮水の貯留量が第2閾値を超えたとき、第1モードと第2モードを切り換えるよう指令する第2切換指令部(122)とを備える。
【0130】
2)1において、デポジット制御部(110)は、デポジットの堆積量が第1閾値を超えたとき、デポジットの堆積量が第1閾値を超えたことを示すダイアグコードをメモリ(120)に書き込み、凝縮水制御部(120)は、凝縮水の貯留量が第2閾値を超えたとき、凝縮水の貯留量が第2閾値を超えたことを示すダイアグコードをメモリ(120)に書き込む。
【0131】
3)2において、制御装置(100)は、診断ツール(400)と通信可能に構成されており、診断ツール(400)がデポジットの堆積量が第1閾値を超えたことを示すダイアグコードを検知したとき、あるいは、診断ツール(400)が凝縮水の貯留量が第2閾値を超えたことを示すダイアグコードとき、診断ツール(400)は、第1モードと第2モードを切り換えるよう、制御装置(100)を介して、切換部を制御する。
【0132】
4)1において、第1モードは、EGRクーラ(61)の一方側からEGRガスが流入し、EGRクーラ(61)の他方側からEGRガスが流出するモードであり、第2モードは、EGRクーラ(61)の他方側からEGRガスが流入し、EGRクーラ(61)の一方側からEGRガスが流出するモードであり、EGRクーラ(61)には、EGRクーラ(61)の他方側から冷却水が流入し、EGRクーラ(61)の一方側か冷却水が流出する冷却水通路が設けられ、第1モードでは、EGRガスと冷却水の流れが対向流になり、第2モードでは、EGRガスと冷却水の流れが並行流になる。
【0133】
5)4において、デポジット量算出部(110)は、第1モードのとき、デポジットの堆積量を算出するよう構成され、デポジット制御部(110)は、第2モードのとき、デポジットの堆積量を減算するデポジットリセット値算出部(113)をさらに備え、デポジット量算出部(110)で算出したデポジットの堆積量が第1閾値を超えたとき、第1モードと第2モードを切り換え、デポジットリセット値算出部(113)で算出したデポジットの堆積量が第1リセット値以下になったとき、第2モードから前記第1モードに切り換え、凝縮水量算出部(121)は、第1モードのとき、凝縮水の貯留量を算出するよう構成され、凝縮水制御部(120)は、第2モードのとき、凝縮水の貯留量を減算する凝縮水リセット値算出部(123)をさらに備え、凝縮水量算出部(121)で算出した凝縮水の貯留量が第2閾値を超えたとき、第1モードから前記第2モードに切り換え、凝縮水リセット値算出(123)部で算出した凝縮水の貯留量が第2リセット値以下になったとき、第2モードから前記第1モードに切り換える。
【0134】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0135】
1 内燃機関、10 内燃機関本体、12 シリンダ(気筒)、14 燃料噴射弁、20 吸気通路、22 エアクリーナ、24 インタークーラ、26 吸気絞り弁、28 給気マニホールド、30 ターボ過給機、32 コンプレッサ、34 タービン、40 排気マニホールド、42 排気通路、50 EGR通路、60,60A EGR装置、61,61c EGRクーラ、61a 第1EGRクーラ、61b 第2EGRクーラ、62 切換弁、63a,63c 第1分岐通路、63b,63d 第2分岐通通路、64 切換弁、64a 開閉弁、64b 開閉弁、65 集合通路、66 接続通路、67 EGRバルブ、70 酸化触媒、72 DPF、74 選択還元触媒(SCR触媒)、76 酸化触媒、80 尿素添加弁、82 尿素水タンク、90 冷却水通路、91 冷却水接続通路、100 E/G-ECU、101 CPU。102 メモリ、110 デポジット制御部、111 デポジット量算出部、112 第1切換指令部、113 デポジットリセット値算出部、120 凝縮水制御部、121 凝縮水量算出部、122 第2切換指令部、123 凝縮水リセット値算出部、130 切換制御部、140 OBD制御部、151 アクセル開度センサ、152 車速センサ、153 エンジン回転速度センサ、154 エンジン冷却水温センサ、400 診断ツール。