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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】バックドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/56 20060101AFI20240214BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B60Q1/56
B60J5/10 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021088581
(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公開番号】P2022181561
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】立松 孝司
(72)【発明者】
【氏名】福井 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】雲 純史
(72)【発明者】
【氏名】長屋 庸平
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-84716(JP,A)
【文献】特開2019-59334(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0180408(US,A1)
【文献】特開2004-207580(JP,A)
【文献】特開2004-193502(JP,A)
【文献】特開2012-169505(JP,A)
【文献】特開2000-120512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/56
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のバックドアのナンバープレートの上方に設置される、前記ナンバープレートを照明するためのライセンスランプと前記バックドアを開錠又は施錠するためのハンドルスイッチを兼ねたバックドアハンドル装置であって、
前記ライセンスランプの光源としての2つの発光素子と、
前記バックドアを開錠又は施錠するための信号を出力するスイッチと、
前記2つの発光素子及び前記スイッチを収容するハウジングと、
前記2つの発光素子から発せられる光を透過する材料からなる透明部を有する、前記ハウジングの外側を覆うアウターカバーと、
を備え、
前記2つの発光素子が、前記バックドアハンドル装置を前記バックドアに設置したときに前記ナンバープレートの幅方向に平行になる方向に沿って、互いのアノード電極又は互いのカソード電極が平面視にて向かい合うように配置され、
前記透明部が、前記2つの発光素子から発せられる光を前記方向に拡げつつ取り出すレンズ部を含む、
バックドアハンドル装置。
【請求項2】
前記透明部が、ボルト固定用の取り付け穴を有し、
前記取り付け穴に、耐薬品性樹脂材を介して金属カラーが嵌め込まれた、
請求項1に記載のバックドアハンドル装置。
【請求項3】
前記耐薬品性樹脂材が、AES樹脂又はPBT樹脂からなる、
請求項2に記載のバックドアハンドル装置。
【請求項4】
前記透明部と前記耐薬品性樹脂材が一体成形品である、
請求項2又は3に記載のバックドアハンドル装置。
【請求項5】
前記アウターカバーが、弾性を有する材料からなり、前記透明部の外側を覆う弾性部を有し、
前記アウターカバーが、前記透明部と、前記弾性部と、前記耐薬品性樹脂材と、前記金属カラーとを含む一体成形品からなる、
請求項2又は3に記載のバックドアハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のバックドアのナンバープレートの上方に設置される、ナンバープレートを照明するためのライセンスランプとバックドアを開錠又は施錠するためのハンドルスイッチを兼ねたバックドアハンドル装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のバックドアハンドル装置は、小型でありながら、内包する発光素子から発せられる光をレンズにより屈折させて車幅方向の出射範囲を拡げることにより、配光法規を満たす明るさでナンバープレートを照明することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-84716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的に、LEDなどの発光素子はアノード電極側とカソード電極側で形状が異なるため、配光が非対称になる。このため、特許文献1に記載のバックドアハンドル装置によれば、ナンバープレート上の配光が車幅方向で非対称になり、均一性が低くなるおそれがある。
【0006】
本発明の目的の1つは、ライセンスランプとハンドルスイッチが一体化されたバックドアハンドル装置であって、ナンバープレート上の配光の均一性に優れるバックドアハンドル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]~[5]のバックドアハンドル装置を提供する。
【0008】
[1]車両のバックドアのナンバープレートの上方に設置される、前記ナンバープレートを照明するためのライセンスランプと前記バックドアを開錠又は施錠するためのハンドルスイッチを兼ねたバックドアハンドル装置であって、前記ライセンスランプの光源としての2つの発光素子と、前記バックドアを開錠又は施錠するための信号を出力するスイッチと、前記2つの発光素子及び前記スイッチを収容するハウジングと、前記2つの発光素子から発せられる光を透過する材料からなる透明部を有する、前記ハウジングの外側を覆うアウターカバーと、を備え、前記2つの発光素子が、前記バックドアハンドル装置を前記バックドアに設置したときに前記ナンバープレートの幅方向に平行になる方向に沿って、互いのアノード電極又は互いのカソード電極が平面視にて向かい合うように配置され、前記透明部が、前記2つの発光素子から発せられる光を前記方向に拡げつつ取り出すレンズ部を含む、バックドアハンドル装置。
[2]前記透明部が、ボルト固定用の取り付け穴を有し、前記取り付け穴に、耐薬品性樹脂材を介して金属カラーが嵌め込まれた、上記[1]に記載のバックドアハンドル装置。
[3]前記耐薬品性樹脂材が、AES樹脂又はPBT樹脂からなる、上記[2]に記載のバックドアハンドル装置。
[4]前記透明部と前記耐薬品性樹脂材が一体成形品である、上記[2]又は[3]に記載のバックドアハンドル装置。
[5]前記アウターカバーが、弾性を有する材料からなり、前記透明部の外側を覆う弾性部を有し、前記アウターカバーが、前記透明部と、前記弾性部と、前記耐薬品性樹脂材と、前記金属カラーとを含む一体成形品からなる、上記[2]又は[3]に記載のバックドアハンドル装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ライセンスランプとハンドルスイッチが一体化されたバックドアハンドル装置であって、ナンバープレート上の配光の均一性に優れるバックドアハンドル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るバックドアハンドル装置が設置されたバックドアの垂直断面図である。
図2図2(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係るバックドアハンドル装置の斜視図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係るバックドアハンドル装置の分解斜視図である。
図4図4(a)、(b)は、バックドアに取り付けられたバックドアハンドル装置の垂直断面図である。
図5図5(a)は、アノード電極同士が平面視にて向かい合うように配置された2つの発光素子の配光を模式的に表す断面図である。図5(b)は、同じ向きに配置された2つの発光素子の配光を模式的に表す断面図である。
図6図6(a)は、2つの発光素子のアノード電極同士が平面視にて向かい合うように配置されたバックドアハンドル装置に照明されたナンバープレート上の輝度分布を示す分布図である。図6(b)は、図6(a)の分布図のA-A’線上の位置と輝度の関係を示す。
図7図7(a)は、2つの発光素子が同じ向きに配置された比較例に係るバックドアハンドル装置に照明されたナンバープレート上の輝度分布を示す分布図である。図7(b)は、図7(a)の分布図のB-B’線上の位置と輝度の関係を示す。
図8図8は、バックドアの板金部分に取り付けられた状態のバックドアハンドル装置の取り付け部の周辺を拡大した断面図である。
図9図9(a)、(b)、(c)は、それぞれ試料A、試料B、試料Cの取り付け穴周辺を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施の形態〕
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。各図に示される方向W、L、Hは、それぞれバックドアハンドル装置1の幅方向、バックドアハンドル装置1の長さ方向、バックドアハンドル装置1の高さ方向を示す。各図のW方向、L方向、H方向の正負は共通している。
【0012】
(バックドアハンドル装置の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態に係るバックドアハンドル装置1が設置されたバックドア50の垂直断面図である。
【0013】
バックドア50は、自動車等の車両の後面に設けられるドアであり、リアハッチ、あるいはテールゲートとも呼称されるものである。バックドア50には、ナンバープレート51が取り付けられている。
【0014】
バックドア50のナンバープレート51の上方にはバックドアガーニッシュ52が取り付けられ、バックドアガーニッシュ52の内側(バックドア50とバックドアガーニッシュ52の間の空間)には、ナンバープレート51に光を照射するためのライセンスランプとバックドア50の開閉用ハンドルスイッチを兼ねたバックドアハンドル装置1が設置されている。
【0015】
図2(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係るバックドアハンドル装置1の斜視図である。図2(a)は、バックドアハンドル装置1を車両の前上方から視た斜視図であり、図2(b)は、バックドアハンドル装置1を車両の後下方から視た斜視図である。
【0016】
図3は、本発明の実施の形態に係るバックドアハンドル装置1の分解斜視図である。
【0017】
バックドアハンドル装置1は、ライセンスランプの光源としての発光素子11a、11bと、バックドア50を開錠するための信号を出力するオープンスイッチ12と、バックドア50を施錠するための信号を出力するロックスイッチ13と、発光素子11a、11b、オープンスイッチ12、及びロックスイッチ13が実装された基板10と、オープンスイッチ12の作動力(スイッチを押し込むための外力に反発する力)を補足するためのオープンスイッチノブ14と、ロックスイッチ13の作動力を補足するためのロックスイッチノブ15と、基板10、発光素子11a、11b、オープンスイッチ12、ロックスイッチ13、オープンスイッチノブ14、及びロックスイッチノブ15を収容するハウジング20と、ハウジング20の外側を覆うアウターカバー30と、を備える。
【0018】
基板10は、発光素子11a、11b、オープンスイッチ12、及びロックスイッチ13の電極に接続される配線を有する配線基板である。発光素子11a、11b、オープンスイッチ12、及びロックスイッチ13は、複数の基板に分けて搭載されてもよいが、バックドアハンドル装置1の小型化や、部品数削減によるコストダウン、組み付け工数の低減のため、同一の基板10上に設置されることが好ましい。
【0019】
発光素子11a、11bは、オープンスイッチ12及びロックスイッチ13よりも車両の後方側に配置されることが好ましい。これにより、バックドアハンドル装置1の光取出し部である、後述するレンズ部310と、バックドア開閉用のハンドルスイッチの操作部である、後述するスイッチカバー部320及びスイッチカバー部321との車幅方向の位置を重ねることができるため、光を目印にハンドルスイッチの操作部の位置を特定しやすくなる。
【0020】
また、発光素子11a、11bが車両の後方側に配置されることにより、バックドアガーニッシュ52内にカメラを設置する場合に、カメラによるバックドアハンドル装置1から発せられる光の遮光範囲を狭めることができるため、カメラをバックドアハンドル装置1により近付けて配置することができる。すなわち、視認性のよいバックドア50の車幅方向の中央により近い位置にカメラを配置することができる。
【0021】
なお、図示していないが、基板10にはコネクタ付きケーブルが接続されており、このコネクタ付きケーブルを介して、発光素子11a、11b、オープンスイッチ12、及びロックスイッチ13と外部装置(電源装置、開錠装置、施錠装置など)とが接続されている。
【0022】
ハウジング20は、発光素子11a、11bから発せられた光を通し、また、外部からオープンスイッチ12及びロックスイッチ13を操作するため、車両下方側に開口部21を有する。そして、基板10、オープンスイッチノブ14、及びロックスイッチノブ15は、ハウジング20の車両上方側の内面に設置される。また、ハウジング20は、基板10に接続されたコネクタ付きケーブルを通すためのケーブル口24を有する。
【0023】
アウターカバー30は、発光素子11a、11bから発せられる光を透過する材料からなる透明部31と、弾性を有する材料からなり、透明部31の外側を覆う弾性部32とを含む、インサート成形などによる一体成形品からなることが好ましい。
【0024】
透明部31は、ポリカーボネート、アクリルなどの発光素子11a、11bから発せられる光を透過する性質を有する材料からなる。特に、熱可塑性エラストマー(TPE)からなる弾性部32との密着性に優れるポリカーボネートを透明部31の材料に用いることが好ましい。透明部31は、アウターカバー30の車両下方側に、発光素子11a、11bから発せられる光を車幅方向の出射範囲を拡げつつ取り出すためのレンズ部310を含む。
【0025】
弾性部32のレンズ部310と重なる部分は、レンズ部310から光を取り出すため、開口している。
【0026】
弾性部32は、例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)などの熱可塑性エラストマーからなる。弾性部32は、アウターカバー30の車両下方側に、スイッチカバー部320及びスイッチカバー部321を有する。スイッチカバー部320は、バックドア50を開錠するとき、すなわちオープンスイッチ12に信号を出力させるときに、操作者が外側から押し込む力を加える部分である。また、スイッチカバー部321は、バックドア50を施錠するとき、すなわちロックスイッチ13に信号を出力させるときに、操作者が外側から押し込む力を加える部分である。
【0027】
透明部31のスイッチカバー部320及びスイッチカバー部321と重なる部分は、スイッチカバー部320とスイッチカバー部321をオープンスイッチ12とロックスイッチ13にそれぞれ接触させるため、開口している。
【0028】
アウターカバー30のバックドア50と接触する面は、弾性部32で構成されている。弾性を有する弾性部32がバックドア50の取り付け面に密着することにより、ハウジング20内への水の浸入を防ぐことができる。
【0029】
また、アウターカバー30の防水性能をより高めるため、弾性部32のバックドア50の取り付け面に接する部分には、ハウジング20のバックドア50と接触する面を囲む環状の突起322が設けられていることが好ましい。この弾性部32の突起は、バックドアハンドル装置1をバックドア50へ取り付けることにより、バックドア50へ押し付けられて潰れ又は撓み、バックドア50へ強く密着する。特に、弾性部32の突起が撓んでその側面がバックドア50の取り付け面へ密着する場合に、より強い防水性が得られる。
【0030】
透明部31は、アウターカバーの樹脂部分とレンズを兼ねており、また、透明部31と弾性部32はインサート成形などにより一体成形できるため、バックドアハンドル装置1の部品点数や製造工程数を減らし、製造コストの低減及び小型化を実現することができる。
【0031】
なお、アウターカバー30は透明部31及び弾性部32と異なる材料からなる部分を含んでもよいが、製造コストを抑えるため、透明部31及び弾性部32を含めて一体に成形できることが好ましい。
【0032】
(バックドア開閉用ハンドルスイッチ機能に係る構成)
図4(a)、(b)は、バックドア50に取り付けられたバックドアハンドル装置1の垂直断面図である。図4(a)の断面図は、オープンスイッチ12及びオープンスイッチノブ14の断面を含み、図4(b)の断面図は、ロックスイッチ13及びロックスイッチノブ15の断面を含む。図4(a)、(b)においては、バックドアガーニッシュ52の図示を省略する。
【0033】
バックドアハンドル装置1は、バックドア開閉用ハンドルスイッチ機能のため、バックドア50を開錠するための信号を外部の開錠装置に出力するオープンスイッチ12と、バックドア50を施錠するための信号を外部の施錠装置に出力するロックスイッチ13と、オープンスイッチ12の作動力を補足するためのオープンスイッチノブ14と、ロックスイッチ13の作動力を補足するためのロックスイッチノブ15と、バックドア50の開錠操作の際に操作者の手60が触れるスイッチカバー部320と、バックドア50の施錠操作の際に操作者の手60が触れるスイッチカバー部321と、を備える。
【0034】
オープンスイッチ12及びロックスイッチ13は、押し込むことにより内部の接点が電気的に接続されたときに接点信号(接点が接続されているか否かの信号)を出力するプッシュスイッチである。オープンスイッチ12から出力された接点信号が開錠装置に入力されることにより、開錠装置が動作し、バックドア50の開錠が行われる。また、オープンスイッチ12から出力された接点信号が施錠装置に入力されることにより、施錠装置が動作し、バックドア50の施錠が行われる。なお、バックドアハンドル装置1においては、プッシュスイッチの代わりに、静電スイッチ等の他の方式のスイッチをオープンスイッチ12及びロックスイッチ13として用いてもよい。
【0035】
オープンスイッチノブ14は、バックドア50の開錠の際の押し込み操作により初期位置からスイッチ位置まで移動する操作部140と、操作部140が初期位置からスイッチ位置へ向けて移動した際に弾性変形し、操作部140を初期位置に戻す方向の弾性力が生じるバネ部141と、基板10、発光素子11a、11b、オープンスイッチ12、ロックスイッチ13、オープンスイッチノブ14、及びオープンスイッチノブ14をハウジング20内に仮固定するための仮固定部142と、を有する。
【0036】
操作者がアウターカバー30のスイッチカバー部320に外側から押し込む力を加え、オープンスイッチノブ14の操作部140が初期位置から移動してスイッチ位置へ達したときに、操作部140によりオープンスイッチ12が押し込まれ、接点信号が出力される。
【0037】
ロックスイッチノブ15は、バックドア50の施錠の際の押し込み操作により初期位置からスイッチ位置まで移動する操作部150と、操作部150が初期位置からスイッチ位置へ向けて移動した際に弾性変形し、操作部150を初期位置に戻す方向の弾性力が生じるバネ部151と、基板10、発光素子11a、11b、オープンスイッチ12、ロックスイッチ13、オープンスイッチノブ14、及びロックスイッチノブ15をハウジング20内に仮固定するための仮固定部152と、を有する。
【0038】
操作者がアウターカバー30のスイッチカバー部321に外側から押し込む力を加え、ロックスイッチノブ15の操作部150が初期位置から移動してスイッチ位置へ達したときに、操作部150によりロックスイッチ13が押し込まれ、接点信号が出力される。
【0039】
(ライセンスランプ機能に係る構成)
バックドアハンドル装置1は、ライセンスランプ機能のため、光を発する発光素子11a、11bと、アウターカバー30の透明部31のレンズ部310とを備える。バックドアハンドル装置1においては、発光素子11a、11bから発せられた光が、レンズ部310を介して取り出され、ナンバープレート51を照明する。
【0040】
発光素子11a、11bとしては、典型的には、LEDが用いられる。LEDは、小型の発光素子であり、また、消費電力、発熱量が小さく、かつ長寿命であるため、発光素子11a、11bとしての使用に適している。
【0041】
レンズ部310は、透明部31の一部であり、前記発光素子から発せられる光を、バックドアハンドル装置1をバックドア50に設置したときにナンバープレート51の幅方向に平行になる方向に沿って拡げつつ取り出すことができる。
【0042】
発光素子11a、11bは、バックドアハンドル装置1をバックドア50に設置したときに、ナンバープレート51の幅方向に平行になる方向に沿って、互いのアノード電極又は互いのカソード電極(発光素子11aのアノード電極と発光素子11bのアノード電極又は発光素子11aのカソード電極と発光素子11bのカソード電極)が平面視にて向かい合うように配置されている。
【0043】
図5(a)は、アノード電極同士が平面視にて向かい合うように配置された発光素子11a、11bの配光を模式的に表す断面図である。図5(b)は、同じ向きに配置された発光素子11a、11bの配光を模式的に表す断面図である。図5(a)、(b)に示される例では、発光素子11a、11bは、それぞれLEDランプ111a、111bに含まれるLEDチップである。LEDランプ111a、111bにおいて、発光素子11a、11bは、基板114上に実装され、リフレクター115に囲まれる。
【0044】
LEDランプ111a、111b中に配置された発光素子11a、11bは、図5(a)、(b)に示されるように、LEDランプ111a、111bの中央から一方(例えばカソード電極側)にずれて配置されることが多い。このため、LEDランプ111a、111bから出る光の配光は、発光素子11a、11bのアノード電極側とカソード電極側で非対称になる。
【0045】
また、LEDチップなどの発光素子11a、11bは、サファイア基板/n層/発光層/p層の積層構造を有し、p層にカソード電極(p側電極)113が接続され、p層と発光層の一部を取り除いて露出したn層にアノード電極(n側電極)112が接続される。このため、発光素子11a、11bの形状がアノード電極112側とカソード電極113側で非対称になる。この発光素子11a、11bの形状の非対称性や、アノード電極112が発光層から出る光を遮ることなどにより、発光素子11a、11bの配光はアノード電極112側とカソード電極113側で非対称になる。このため、発光素子11a、11bがLEDランプ111a、111bの中央に位置していたとしても、LEDランプ111a、111bから出る光の配光は、発光素子11a、11bのアノード電極112側とカソード電極113側で非対称になる。
【0046】
なお、上記の配光の非対称性は、発光素子11a、11bがワイヤボンディングにより基板電極などと接続されるフェースアップ型(p層が上側)の素子である場合に特に顕著に表れるが、発光素子11a、11bがバンプや半田により基板電極などと接続されるフェースダウン型(p層が下側)の素子である場合にも僅かながら表れる。
【0047】
上記の発光素子11a、11bの配光の非対称性により、図5(b)に示されるように発光素子11a、11bが同じ向きに配置された場合には、発光素子11a、11bから出る光の合成光も非対称になる。一方、図5(a)に示されるように発光素子11a、11bがアノード電極同士(又はカソード電極同士)が平面視にて向かい合うように配置された場合には、発光素子11a、11bから出る光の合成光において、発光素子11a、11bのそれぞれの配光の非対称性が相殺される。このため、ナンバープレート51上の配光の車幅方向の均一性が高まる。
【0048】
図6(a)は、発光素子11aのアノード電極と発光素子11bのアノード電極が平面視にて向かい合うように配置されたバックドアハンドル装置1に照明されたナンバープレート上の輝度分布を示す分布図である。図6(b)は、図6(a)の分布図のA-A’線上の位置と輝度の関係を示す。
【0049】
図7(a)は、比較例に係るバックドアハンドル装置に照明されたナンバープレート上の輝度分布を示す分布図である。図7(b)は、図7(a)の分布図のB-B’線上の位置と輝度の関係を示す。この比較例に係るバックドアハンドル装置は、バックドアハンドル装置1の発光素子11aと発光素子11bを同じ向きに(一方のアノード電極と他方のカソード電極が平面視にて向かい合うように)配置したものである。
【0050】
図6(a)、(b)と図7(a)、(b)を比較すると、発光素子11aと発光素子11bが同じ向きに配置された場合に確認される配光の非対称性が、発光素子11aと発光素子11bを互いのアノード電極が向かい合うように配置することにより大きく緩和されていることがわかる。
【0051】
(取り付け部の構成)
アウターカバー30は、バックドアハンドル装置1をバックドア50に取り付けるための取り付け部33を有する。取り付け部33は、アウターカバー30のバックドア50と接触する部分に設けられ、透明部31のハウジング20を覆う本体部分から車幅方向に延在する部分と、その表面を覆うアウターカバー30から構成される。取り付け部33において、透明部31はボルト固定用の取り付け穴311を有する。
【0052】
図2に示されるように、取り付け穴311には、金属カラー35が嵌め込まれていることが好ましい。取り付け部33に金属からなるボルトを直接締め付けると、透明部31の熱クリープによる変形が生じるおそれがある。この場合、バックドア50に取り付けられたバックドアハンドル装置1ががたつくことによる異音が生じたり、アウターカバー30とバックドア50の取り付け面との間に隙間が生じ、上述の突起322による防水性が低下したりする場合がある。金属カラー35を用いて、金属カラー35にボルトを締め付けることにより、取り付け部33の熱クリープを防ぐことができる。
【0053】
さらに、取り付け穴311に、耐薬品性樹脂材34を介して金属カラー35が嵌め込まれることが好ましい。この場合、取り付け穴311の内面が耐薬品性樹脂材34に覆われるため、金属カラー35とボルトの間などから浸入する薬品に触れることによる透明部31のクラック発生を抑えることができる。特に、透明部31が薬品耐性の低いポリカーボネートからなる場合には、この耐薬品性樹脂材34による効果が重要になる。
【0054】
耐薬品性樹脂材34は、例えば、メチルアルコール、ガソリン、灯油などの薬品への耐性に優れるAES(Acrylonitrile-Ethylene-Styrene resin)樹脂又はPBT(Polybutylene terephthalate)樹脂からなることが好ましい。なお、PBT樹脂は、ガラスを含んだものであってもよい。
【0055】
バックドアハンドル装置1の部品点数や製造工程数を減らすため、透明部31と耐薬品性樹脂材34がインサート成型や二色成形などによる一体成形品であることが好ましい。さらに、アウターカバー30が、透明部31と、弾性部32と、耐薬品性樹脂材34と、金属カラー35とを含む、インサート成型などによる一体成形品からなることが、より好ましい。
【0056】
図8は、バックドア50の板金部分に取り付けられた状態のバックドアハンドル装置1の取り付け部33の周辺を拡大した断面図である。図8は、透明部31の取り付け穴311に、耐薬品性樹脂材34を介して金属カラー35が嵌め込まれている場合の取り付け状態の一例を示す。この場合、取り付け穴311に嵌め込まれた金属カラー35とバックドア50とが、段付きナット53とボルト54により固定される。
【0057】
下記の表1に、耐薬品性樹脂材34による効果の実証実験の結果を示す。表中の試料A、試料Bは、取り付け穴311に耐薬品性樹脂材34を用いない透明部31であり、試料Cは、取り付け穴311に耐薬品性樹脂材34を用いた透明部31である。
【0058】
図9(a)、(b)、(c)は、それぞれ試料A、試料B、試料Cの取り付け穴311周辺を拡大した断面図である。試料Aと試料Bは、金属カラー35の抜け止め形状が異なり、また、試料Aの取り付け穴311の内面にはローレット加工が施されている。
【0059】
表1の実証実験では、試料A、試料B、試料Cのそれぞれにメチルアルコール、白ガソリン、白灯油を塗布して、透明部31の取り付け穴311周辺部におけるクラックの発生の有無を確認した。表1の“○”はクラックが発生したことを示し、“×”はクラックが発生しなかったことを示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示される結果によれば、耐薬品性樹脂材34を用いることにより、金属カラー35とボルトの間などからの各種薬品の浸入を効果的に抑え、透明部31のクラックの発生を抑えられることがわかる。
【0062】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態に係るバックドアハンドル装置1によれば、発光素子11aと発光素子11bを互いのアノード電極又はカソード電極が平面視にて向かい合うように配置することにより、ナンバープレート51上の配光の均一性を高めることができる。この方法によれば、配光の非対称性を解消する形状を有するレンズを用いるなどの方法と比較して、低コストで配光の均一性を高めることができる。
【0063】
また、上記実施の形態に係るバックドアハンドル装置1によれば、取り付け部33の取り付け穴311に、耐薬品性樹脂材34を介して金属カラー35を嵌め込むことにより、薬品に触れることによる透明部31のクラック発生を抑えることができる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0065】
1 バックドアハンドル装置
11a、11b 発光素子
12 オープンスイッチ
13 ロックスイッチ
20 ハウジング
30 アウターカバー
31 透明部
310 レンズ部
311 取り付け穴
33 取り付け部
34 耐薬品性樹脂材
35 金属カラー
50 バックドア
51 ナンバープレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9