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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/239 20060101AFI20240214BHJP
   B60R 21/217 20110101ALI20240214BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20240214BHJP
【FI】
B60R21/239
B60R21/217
B60R21/2338
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021091293
(22)【出願日】2021-05-31
(65)【公開番号】P2022183804
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 志幸
(72)【発明者】
【氏名】山下 晃
(72)【発明者】
【氏名】石田 真一
(72)【発明者】
【氏名】大野 芳生
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-293785(JP,A)
【文献】特開2006-312451(JP,A)
【文献】特開2013-049322(JP,A)
【文献】実開平01-081152(JP,U)
【文献】特開2009-298222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に膨張用ガスを流入させて、座席に着座した乗員を保護可能に膨張するエアバッグと、
該エアバッグを折り畳んで収納させる収納部位と、
該収納部位側に取り付けられるとともに、前記エアバッグから延びる連結手段を連結させ、該連結手段との連結状態を維持若しくは解除させることにより、前記エアバッグの膨張形態を制御する構成のアクチュエータと、
を備える構成のエアバッグ装置であって、
前記連結手段が、可撓性を有した紐状体から、構成され、
前記アクチュエータが、
作動時に、内部に収納される火薬の燃焼により発生する燃焼ガスを、噴出口から噴出可能に構成されるガス発生器と、
前記連結手段を巻き掛けて保持可能なホルダ部と、
を備える構成とされ、
前記ホルダ部が、
前記噴出口からの前記燃焼ガスの噴出方向に略沿うように配置されるとともに、外周面側で巻き掛けた前記連結手段を保持可能な保持壁部と、
該保持壁部において、前記ガス発生器から離れた先端側を塞ぐように配置される天井壁部と、
を備えて、前記噴出口から前記天井壁部までの前記保持壁部の領域に、前記燃焼ガスを前記連結手段に接触可能な接触可能領域を配設させて構成され、
前記アクチュエータが、前記接触可能領域において、前記燃焼ガスを前記連結手段と接触させることにより、前記連結手段を切断させて、前記連結手段の前記ホルダ部との保持状態を解除可能に、構成され
前記保持壁部が、前記燃焼ガスの噴出方向を中心として略筒状に形成されるとともに、外周側を覆うように配置される前記連結手段に向かって前記燃焼ガスを流出可能なガス流出穴を、貫通させて配設させる構成とし、
該ガス流出穴が、前記接触可能領域を構成するとともに、車両搭載時に、前記保持壁部の軸直交方向側の断面において、周方向側の前記ガス流出穴の両縁を、前記連結手段と当接させるような領域に、形成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
内部に膨張用ガスを流入させて、座席に着座した乗員を保護可能に膨張するエアバッグと、
該エアバッグを折り畳んで収納させる収納部位と、
該収納部位側に取り付けられるとともに、前記エアバッグから延びる連結手段を連結させ、該連結手段との連結状態を維持若しくは解除させることにより、前記エアバッグの膨張形態を制御する構成のアクチュエータと、
を備える構成のエアバッグ装置であって、
前記連結手段が、可撓性を有した紐状体から、構成され、
前記アクチュエータが、
作動時に、内部に収納される火薬の燃焼により発生する燃焼ガスを、噴出口から噴出可能に構成されるガス発生器と、
前記連結手段を巻き掛けて保持可能なホルダ部と、
を備える構成とされ、
前記ホルダ部が、
前記噴出口からの前記燃焼ガスの噴出方向に略沿うように配置されるとともに、外周面側で巻き掛けた前記連結手段を保持可能な保持壁部と、
該保持壁部において、前記ガス発生器から離れた先端側を塞ぐように配置される天井壁部と、
を備えて、前記噴出口から前記天井壁部までの前記保持壁部の領域に、前記燃焼ガスを前記連結手段に接触可能な接触可能領域を配設させて構成され、
前記アクチュエータが、前記接触可能領域において、前記燃焼ガスを前記連結手段と接触させることにより、前記連結手段を切断させて、前記連結手段の前記ホルダ部との保持状態を解除可能に、構成され
前記保持壁部が、前記燃焼ガスの噴出方向を中心として略筒状に形成されるとともに、前記連結手段を挿通可能な挿通孔を、有して、内周側を、前記接触可能領域として、構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項3】
前記アクチュエータの周囲における前記収納部位の外方側となる位置に、前記収納部位側から延びるようにして、前記アクチュエータの側方を覆うカバー壁が、配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエアバッグ装置。
エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグの膨張状態を制御するためのアクチュエータを有したエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグ装置において、エアバッグの膨張状態を制御するために使用されるアクチュエータとしては、エアバッグから延びる連結手段を貫通させることにより連結手段を連結させる作動ピンを有するアクチュエータ本体と、収納部位から突出して形成されて連結手段を貫通させている作動ピンの先端側を支持可能な支持プレート部と、を備える構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。このアクチュエータでは、アクチュエータ本体は、作動ピンを有したピストンと、作動ピンを突出させつつピストンを保持するシリンダケースと、を有して、エアバッグから延びる連結手段を、シリンダケースから突出している作動ピンに貫通させ、この作動ピンの先端側を、支持プレート部に当接させた状態で、車両に搭載される構成であった。アクチュエータ本体を作動させない状態では、連結手段と作動ピンとの連結状態を維持された状態で、エアバッグが膨張することとなり、アクチュエータ本体を作動させれば、作動ピンがシリンダケース内に引き込まれるように作動されて、連結手段と作動ピンとの連結状態を解除された状態で、エアバッグが膨張することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-293785公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のアクチュエータを使用したエアバッグ装置では、アクチュエータは、作動ピンをシリンダケース内に引き込むように作動させることにより、連結手段との連結状態を解除させる構成であることから、構成が簡便ではなく、簡便な構成として、製造コストを低減させる点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便な構成として、かつ、アクチュエータの作動時に、連結手段との連結状態を円滑に解除可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグ装置は、内部に膨張用ガスを流入させて、座席に着座した乗員を保護可能に膨張するエアバッグと、
エアバッグを折り畳んで収納させる収納部位と、
収納部位側に取り付けられるとともに、エアバッグから延びる連結手段を連結させ、連結手段との連結状態を維持若しくは解除させることにより、エアバッグの膨張状態を制御する構成のアクチュエータと、
を備える構成のエアバッグ装置であって、
連結手段が、可撓性を有した紐状体から、構成され、
アクチュエータが、
作動時に、内部に収納される火薬の燃焼により発生する燃焼ガスを、噴出口から噴出可能に構成されるガス発生器と、
連結手段を巻き掛けて保持可能なホルダ部と、
を備える構成とされ、
ホルダ部が、
噴出口からの燃焼ガスの噴出方向に略沿うように配置されるとともに、外周面側で巻き掛けた連結手段を保持可能な保持壁部と、
保持壁部において、ガス発生器から離れた先端側を塞ぐように配置される天井壁部と、
を備えて、噴出口から天井壁部までの保持壁部の領域に、燃焼ガスを連結手段に接触可能な接触可能領域を配設させて構成され、
アクチュエータが、接触可能領域において、燃焼ガスを連結手段と接触させることにより、連結手段を切断させて、連結手段のホルダ部との保持状態を解除可能に、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のエアバッグ装置では、エアバッグから延びる連結手段は、アクチュエータにおけるホルダ部の保持壁部に巻き掛けて保持されることにより、アクチュエータとの連結状態を維持される構成である。そして、本発明のエアバッグ装置では、作動時には、アクチュエータのガス発生器が、燃焼ガスを噴出させることとなり、この燃焼ガスを、ホルダ部に設けられる接触可能領域において、連結手段と接触させることにより、連結手段が、焼き切られるように、あるいは、溶融されるようにして、切断されて、ホルダ部との連結状態を解除されることとなる。すなわち、本発明のエアバッグ装置では、従来のエアバッグ装置のアクチュエータにおいて使用されていた作動ピン等が不要であり、単に、ガス発生器から噴出される燃焼ガスを、ホルダ部に保持されている連結手段に接触させるだけで、連結手段とホルダ部との連結状態を解除できることから、従来のエアバッグ装置と比較して、構成を簡便にすることができる。また、本発明のエアバッグ装置においても、ホルダ部に設けられる接触可能領域において、燃焼ガスを連結手段に接触させて、連結手段を切断する構成であることから、連結手段とホルダ部との連結状態を、安定して解除させることができる。
【0008】
したがって、本発明のエアバッグ装置では、簡便な構成として、かつ、アクチュエータの作動時に、連結手段との連結状態を円滑に解除することができる。
【0009】
具体的には、本発明のエアバッグ装置において、保持壁部を、燃焼ガスの噴出方向を中心として略筒状に形成するとともに、外周側を覆うように配置される連結手段に向かって燃焼ガスを流出可能なガス流出穴を、貫通させて配設させる構成とし、
ガス流出穴により、接触可能領域を構成することが、好ましい。
【0010】
上記構成のエアバッグ装置では、連結部材の端部側をループ状とし、このループ状の部位にホルダ部の保持壁部を挿通させれば、連結部材をホルダ部に保持させることができ、連結部材をホルダ部に保持させる保持作業が、容易となる。
【0011】
また、上記構成のエアバッグ装置において、ガス流出穴を、車両搭載時に、保持壁部の軸直交方向側の断面において、周方向側のガス流出穴の両縁を、連結手段と当接させるような領域に配設させる構成とすれば、燃焼ガスを、ガス流出穴を経て迅速に連結部材に向かって流出させることができて、連結手段を迅速に切断させることが可能となって、好ましい。
【0012】
さらに、エアバッグ装置としては、保持壁部を、燃焼ガスの噴出方向を中心として略筒状に形成するとともに、連結手段を挿通可能な挿通孔を、有して、内周側を、接触可能領域として、構成してもよい。
【0013】
さらにまた、上記構成のエアバッグ装置において、アクチュエータの周囲における収納部位の外方側となる位置に、収納部位側から延びるようにして、アクチュエータの側方を覆うカバー壁を配設させる構成とすれば、例えば、ガス発生器の作動時に発生する火炎や火花等が、車内側から視認できないように、カバー壁を、アクチュエータの車内側を覆うように配設させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態である助手席用エアバッグ装置を示す概略図である。
図2】実施形態の助手席用エアバッグ装置の縦断面図である。
図3図2のエアバッグ装置において、インフレーターとアクチュエータとを示す部分拡大底面図である。
図4図2のエアバッグ装置において、アクチュエータの部位の縦断面図である。
図5図4におけるV-V部位の断面図である。
図6図4のアクチュエータの概略斜視図である。
図7】実施形態のエアバッグ装置に使用されるエアバッグを単体で膨張させた状態を示す斜視図である。
図8図7のエアバッグにおける排気孔の周囲の領域を示す概略図であり、排気孔の閉塞状態と開口状態とを示す。
図9】実施形態のエアバッグ装置において、アクチュエータの作動前と作動後とを示す概略縦断面図である。
図10】実施形態のエアバッグ装置において、アクチュエータの作動前と作動後とを示す保持壁部の部位の概略横断面図である。
図11】他の実施形態であるアクチュエータを示す縦断面図である。
図12図11のアクチュエータの概略斜視図である。
図13図11のアクチュエータの作動前と作動後とを示す保持壁部の部位の概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、エアバッグ装置Mとして、助手席用エアバッグ装置を例に採り、説明をする。助手席用エアバッグ装置M(以下「エアバッグ装置」と省略する)は、図1に示すように、車両Vにおける助手席PSの前方において、インストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)1の上面2の内部に配置されている。なお、実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両Vの前後・上下・左右の方向と一致するものである。
【0016】
エアバッグ装置Mは、図1,2に示すように、折り畳まれたエアバッグ25と、エアバッグ25に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ25及びインフレーター8を収納して保持する収納部位としてのケース15と、折り畳まれたエアバッグ25を覆うエアバッグカバー6と、エアバッグ25とインフレーター8とをケースに取り付けるためのリテーナ9と、エアバッグ25の膨張形態を制御するアクチュエータ35と、を備えている。実施形態のエアバッグ装置Mでは、インフレーター8とアクチュエータ35における後述するガス発生器37とは、図1に示す制御装置60によって、作動を制御されるように構成されている。
【0017】
制御装置60は、図1に示すように、助手席PSに着座した乗員MPの体格や、インパネ1と乗員MPとの離隔距離を検知可能な位置検知センサ62、乗員MPの重量を検知可能な重量検知センサ63、及び、車両Vの加速度や加速の方向を検知可能な衝突検知センサ64等からの電気信号を入力させて、インフレーター8を作動させるとともに、アクチュエータ35のガス発生器37を作動させる。実施形態の場合、ガス発生器37は、インフレーター8の作動時におけるエアバッグ25の膨張時に、エアバッグ25の内圧上昇を制御するために配設されるもので、具体的には、ガス発生器37は、エアバッグ25内に流入した膨張用ガスIGをエアバッグ25外に排気させて、好適な膨張モードでエアバッグ25を膨張させるように、制御装置60によって作動を制御されている。
【0018】
インフレーター8は、図1,2に示すように、複数のガス吐出口8bを有した略円柱状の本体部8aと、インフレーター8をケース15に取り付けるためのフランジ部8cと、を備えている。フランジ部8cには、リテーナ9の各ボルト9aを貫通させるための図示しない貫通孔が、形成されている。インフレーター8は、制御装置60と電気的に接続されている。
【0019】
収納部位としてのケース15は、板金製として、図1~3に示すように、インフレーター8を下方から挿入させて取り付ける略長方形板状の底壁部16と、底壁部16の外周縁から上方に延びてエアバッグカバー6の連結壁部6cを係止する周壁部17と、を備えている。底壁部16には、図示を省略するが、インフレーター8の本体部8aを挿通させるための開口と、リテーナ9のボルト9aを貫通させるための貫通孔と、が、形成されている。実施形態の場合、エアバッグ25とインフレーター8とは、エアバッグ25内に配置させたリテーナ9のボルト9aを取付手段として、このボルト9aを、エアバッグ25における流入用開口26の周縁に設けられる取付孔27、ケース15の底壁部16、及び、インフレーター8のフランジ部8cを、貫通させて、ナット10止めすることにより、ケース15の底壁部16に取り付けられている。
【0020】
また、底壁部16において、インフレーター8の本体部8aを挿通させるための開口の左方の領域には、図4及び図6の二点鎖線に示すように、エアバッグ25から延びる後述する連結手段としての連結ベルト32を挿通させるための挿通孔16aと、アクチュエータ35の後述するホルダ部45から延びる係止爪部54を周縁で係止させるための係止孔16bと、ホルダ部45を取り付けるための取付孔16cと、が、形成されている。挿通孔16aは、連結ベルト32を挿通可能に、略長方形状に開口している。係止孔16bは、係止爪部54に対応して、左右方向側で2つ並設されており、それぞれ、係止爪部54を挿入可能に、前後方向に略沿ったスリット状として構成されている。取付孔16cは、ホルダ部45に形成される後述する取付片部55を取り付けるためのボルト57を挿通可能に、円形に開口している。実施形態の場合、挿通孔16aは、底壁部16の左端側であって、前後の中央よりやや後方となる位置に、形成され(図2参照)、この挿通孔16aの後側に係止孔16bが形成され、挿通孔16aの前側に取付孔16cが形成されている(図4,6参照)。
【0021】
さらに、底壁部16の下面側には、アクチュエータ35の周囲におけるケース15の外方側となる位置に、底壁部16から下方に延びるようにして、カバー壁19が、配設されている(図2参照)。カバー壁19は、後述するガス発生器37の作動時に発生する火炎や火花等をインパネ1の隙間等から視認不能とするために、アクチュエータ35の側方を広く覆うように配設されるもので、実施形態の場合、アクチュエータ35の左方から後方(助手席PS側)にかけてを覆うように、下方から見て略L字形状に、配設されている(図3参照)。具体的には、カバー壁19は、上下方向側の幅寸法を、アクチュエータ35を上下の全域にわたって広く覆い可能に、アクチュエータ35の下方まで延びるように、設定されている。
【0022】
エアバッグカバー6は、図1,2に示すように、合成樹脂製のインパネ1と一体的に形成されて、エアバッグ25の展開膨張時に、前後二枚の扉部6a,6bを、エアバッグ25に押されて開くように、構成されている。また、エアバッグカバー6における扉部6a,6bの周囲には、ケース15に連結される連結壁部6cが、形成されている。
【0023】
エアバッグ25は、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から構成される袋状として、図1の二点鎖線に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて、助手席PSに着座した乗員MPの前方を広く覆うように膨張する。具体的には、エアバッグ25は、膨張完了時に、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように配置されるもので、膨張完了時の外形形状を、図7に示すように、軸方向を左右方向に略沿わせた略三角柱形状として、構成されている。このエアバッグ25は、図7に示すように、膨張完了時の前端側に、内部に膨張用ガスIGを流入させるための流入用開口26を、有している。この流入用開口26は、インフレーター8の本体部8aを下方から挿入させるためのものであり、流入用開口26の周縁には、リテーナ9のボルト9aを挿通させるための取付孔27が、形成されている。また、エアバッグ25において、膨張完了時に左側に配置される左壁部25aには、円形に開口した排気孔29が、形成され、この排気孔29と流入用開口26との間には、排気孔29の前縁近傍と、流入用開口26の左縁近傍と、の2箇所に、連結手段としての連結ベルト32を挿通可能な挿通孔28A,28Bが、形成されている。各挿通孔28A,28Bは、連結ベルト32を挿通可能に、上下方向に略沿ったスリット状に、形成されている。
【0024】
エアバッグ25の外周側には、図7,8に示すごとく、排気孔29を塞ぐように、フラップ31が、配設されている。フラップ31は、エアバッグ25と同様に、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されるもので、外形形状を、排気孔29を塞ぎ可能な略長方形状として、流入用開口26から離れた側となる一辺(後側の辺)を、排気孔29の後縁側に結合させ、この辺と対向する流入用開口26側となる辺(前側の辺)に、アクチュエータ―35と連結される連結手段としての連結ベルト32の元部32aを、連結させている。
【0025】
連結手段としての連結ベルト32は、可撓性を有した紐状体(実施形態の場合、帯状体)から構成されるもので、アクチュエータ35の作動時において、燃焼ガスBGとの接触により、切断可能な材料から、形成されている。具体的には、連結ベルト32は、実施形態の場合、燃焼ガスBGにより溶融可能なナイロン糸やPET糸等を織成して、形成されている。連結ベルト32の先端32b側は、アクチュエータ35における後述するホルダ部45の保持壁部48に巻き掛けられるようにして、保持壁部48に保持される構成であり、実施形態の場合、端縁32cを中間部位に縫着させることにより、円筒状の保持壁部48を挿入可能なように、ループ状に構成されている。具体的には、連結ベルト32の先端32b側のループ部33は、保持壁部48を挿入可能で、かつ、保持壁部48から大きく突出するように配設されているホルダ部45における後述する取付片部55も、挿通可能な大きさに、設定されている。また、連結ベルト32の長さ寸法は、先端32b側のループ部33とアクチュエータ35との連結状態を維持された状態でも、エアバッグ25を支障なく膨張可能で、かつ、この連結維持時には、フラップ31による排気孔29の閉塞を安定して維持可能な寸法に、設定されている。さらに、実施形態では、連結ベルト32の幅寸法は、ホルダ部45の保持壁部48の長さ寸法よりわずかに小さな寸法として、保持壁部48に形成されるガス流出穴49の長さ寸法と略同等に、設定されている(図4,6参照)。そして、実施形態では、エアバッグ25は、フラップ31によって排気孔29の外周側を覆い、連結ベルト32を、元部32a側と先端32b側とをエアバッグ25の外周側に配置させ、中間部位をエアバッグ25の内周側に配置させるように、エアバッグ25に形成される挿通孔28A,28Bに挿通させた状態で、エアバッグ25とともに折り畳まれて、ケース15内に収納されることとなる。連結ベルト32の先端32bは、後述するごとく、車両搭載時に、ケース15の挿通孔16aから突出されて、ループ部33にアクチュエータ35におけるホルダ部45の保持壁部48を挿通させることにより、アクチュエータ35と連結されている。
【0026】
そして、実施形態では、エアバッグ25は、排気孔29を開口させた開口モードと、排気孔29の閉塞状態を維持した閉塞モードと、の2つの膨張モード(2つの膨張形態)で、膨張することとなる。具体的には、アクチュエータ35が作動せず、連結ベルト32の先端32bのループ部33と、アクチュエータ35(具体的には、ホルダ部45の保持壁部48)と、の連結が維持された状態(図9,10のA参照)では、フラップ31の先端側が、連結ベルト32の元部32aにより押さえられて、図8のAに示すように、フラップ31が排気孔29を塞いだ閉塞モードで、エアバッグ25が膨張することとなる。アクチュエータ35が作動して、連結ベルト32の先端32bのループ部33が燃焼ガスBGと接触して切断され、連結ベルト32の先端32bとアクチュエータ35との連結が解除された状態(図9,10のB参照)では、排気孔29から流出しようとする膨張用ガスIGによってフラップ31が押されて、フラップ31が開き、図8のBに示すように、排気孔29を開口させた開口モードで、エアバッグ25が膨張することとなる。エアバッグ25は、閉塞モードでは内圧を維持され、開口モードでは内圧上昇を抑制された状態で、膨張を完了させることとなる。このアクチュエータ35(詳細には、後述するガス発生器37)の作動は、制御装置60の制御によるものである。実施形態の場合、制御装置60が、位置検知センサ62からの信号により、乗員MPのインパネ1への過度な接近を検知したり、あるいは、重量検知センサ63からの信号により、乗員MPの体格が小柄であることを検知している場合において、インフレーター8の作動と同時、若しくは、若干遅らせて、膨張時のエアバッグ25の内圧を低減させるように、アクチュエータ35におけるガス発生器37を作動させることとなる。
【0027】
アクチュエータ35は、実施形態の場合、図3に示すように、インフレーター8の左方の領域に、配置されている。アクチュエータ35は、図4,5に示すように、ガス発生器37と、ガス発生器37を保持するとともに連結手段としての連結ベルト32を巻きかけて保持可能なホルダ部45と、を備える構成とされている。
【0028】
ガス発生器37は、制御装置60と電気的に接続されるもので、制御装置60からの作動信号の入力時に、作動して、燃焼ガスBGを発生させる構成とされている。具体的には、ガス発生器37としては、作動時に、図示しない所定量の火薬を点火させて、火薬自体の燃焼、あるいは、火薬により着火されるガス発生剤の燃焼により、燃焼ガスBGを発生させるスクイブやマイクロガスジェネレータ等が使用されている。ガス発生器37は、ホルダ部45における後述するガス発生器収納部46に収納保持されるもので、燃焼ガスBGを発生させる本体と、本体を保持するホルダと、を備えて、外形形状を略円柱状とされている。具体的には、ガス発生器37は、図4に示すように、円柱状の本体部38の先端側(車両搭載時における前端側)に、本体部38より小径とされる頭部39を配置させ、この頭部39と本体部38との間に、本体部38の軸回り方向に沿った全域にわたって突出するフランジ部40を、配設させた構成とされている。また、ガス発生器37は、頭部39の先端面(前端面)に、燃焼ガスBGを噴出させる噴出口37aを配置させ、本体部38の元部端側(後端側)にターミナル37bを配置させた構成とされている。このガス発生器37は、ターミナル37bを露出させるようにして、ホルダ部45におけるガス発生器収納部46内に収納されるもので、ターミナル37bに、制御装置60から延びるリード線43を結線させているコネクタ42を接続させることにより、制御装置60と電気的に接続されている。作動時には、ガス発生器37は、制御装置60からの作動信号を入力して点火され、図示しない火薬あるいはガス発生剤を燃焼させて、噴出口37aから燃焼ガスBGを噴出させることとなる。
【0029】
ホルダ部45は、板金製とされて、ガス発生器37を収納させて保持するガス発生器収納部46と、連結ベルト32を保持可能な保持壁部48と、保持壁部48の先端側を塞ぐ天井壁部51と、ホルダ部45をケース15側に係止させるための係止部52と、ホルダ部45をケース15側に取り付ける取付片部55と、を備えている。
【0030】
ガス発生器収納部46は、ガス発生器37の周囲を覆って保持可能に、両端側を開口させた略円筒状とされている。ガス発生器収納部46には、周囲を切り欠きつつ内周面側に切り起こすようにして、ガス発生器37におけるフランジ部40の後面40a側を支持可能な支持突起47が、配設されている(図4,6参照)。この支持突起47は、ガス発生器37の作動時における後退移動を規制するためのもので、実施形態の場合、ホルダ部45の中心軸を中心として対称となる2箇所(左右両側)に、形成されている。
【0031】
ホルダ部45をケース15側に係止させるための係止部52は、ホルダ部45の一端側(後端側)となるガス発生器収納部46の上方において、ガス発生器収納部46から延びるように形成されるもので、ケース15の底壁部16に略沿うように配置される平板状の当接座部53と、当接座部53の左右両縁側から上方に向かって突出するように形成される2つの係止爪部54と、を備えている(図6参照)。当接座部53は、底壁部16の下面側と当接可能に構成されている。各係止爪部54は、当接座部53の左右両縁側から上方に向かって突出しつつ、先端を後方に向けて延ばすように、前後方向に略沿って形成されるもので、ケース15の底壁部16に形成される係止孔16bに挿入されて、先端54a側を、係止孔16bの周縁に係止される構成である(図4参照)。この係止部52では、係止孔16bの周縁に係止される係止爪部54が、ホルダ部45の底壁部16に対する下方への移動を規制し、当接座部53が、底壁部16の下面側に当接されることにより、ホルダ部45の上方への移動を規制している。
【0032】
保持壁部48は、外周面側で、連結ベルト32を巻き掛けることにより、連結ベルト32を保持可能に構成されるもので、実施形態の場合、中心軸を、ガス発生器収納部46の中心軸と略一致させて構成される略円筒状として、ガス発生器収納部46から連なるように、形成されている。詳細には、保持壁部48は、ガス発生器収納部46より小径の略円筒状とされている。すなわち、保持壁部48は、ガス発生器37の噴出口37aから噴出される燃焼ガスBGの噴出方向を中心として略筒状に形成されている。また、保持壁部48は、ガス発生器収納部46から離れた先端側を、天井壁部51によって、閉塞されている。保持壁部48には、外周側を覆うように配置される連結ベルト32のループ部33に向かって燃焼ガスBGを流出可能なガス流出穴49が、貫通して形成されている。このガス流出穴49は、ガス発生器37の作動時に発生する燃焼ガスBGを、外周面側で巻き掛けられている連結ベルト32のループ部33に接触可能な接触可能領域を構成するもので、実施形態の場合、車両搭載時において、保持壁部48の上下の略中央であって、保持壁部48の中心軸の左側と右側となる左右方向側(軸直交方向の両側)で対向する2箇所において、それぞれ、長手方向を、前後方向(保持壁部48の軸方向)に略沿わせた長孔状に、形成されている(図4~6参照)。すなわち、2つのガス流出穴49は、ループ部33によって外周側を覆われる領域に形成されるもので、換言すれば、図5に示すように、車両搭載時における保持壁部48の軸直交方向側の断面において、周方向側での両縁(上縁49aと下縁49b)を、ループ部33(連結ベルト32)と当接させるような領域に、形成されている。実施形態の場合、ガス流出穴49の長さ寸法(保持壁部48の軸方向側の幅寸法)は、保持壁部48の長さ寸法よりわずかに小さな寸法に設定される連結ベルト32の幅寸法と略同一に、設定されている。
【0033】
ホルダ部45をケース15側に取り付ける取付片部55は、ホルダ部45の他端側(前端側)をケース15側に取り付けるもので、天井壁部51から連なるように上方に突出しつつ、ケース15の底壁部16に沿うように前方に延びるように形成されるもので、底壁部16に形成される取付孔16cに対応して、ボルト57を挿通可能な取付孔55aを、有している。この取付片部55は、図4に示すように、ボルト57とナット58とを利用して、底壁部16に取り付けられる構成である。すなわち、実施形態のアクチュエータ35は、ガス発生器収納部46側に配置される係止部52と、保持壁部48の先端側(天井壁部51側)に形成される取付片部55と、を利用して、軸方向の両端側を、ケース15側に取り付けられる構成である。また、これらの係止部52と取付片部55とは、保持壁部48に巻き掛けられた状態の連結ベルト32のループ部33の保持壁部48からの離脱を抑制するストッパとしての役割も備えている。
【0034】
次に、実施形態のエアバッグ装置Mの車両への搭載について説明をする。まず、エアバッグ25を、内部にリテーナ9を配置させた状態で、フラップ31による排気孔29の閉塞状態を維持し、連結ベルト32を挿通孔28A,28Bに挿入させて挿通孔28Bから先端32b側のループ部33を突出させた状態を維持しつつ、ケース15内に収納可能に折り畳む。その後、折り畳んだエアバッグ25をケース15に収納させる。このとき、連結ベルト32の先端32b側のループ部33を、底壁部16の挿通孔16aから突出させる。ホルダ部45にガス発生器37を保持させた状態のアクチュエータ35を、底壁部16の下方から、係止部52における係止爪部54を係止孔16bに挿入させ、同時に、保持壁部48をループ部33に挿入させて、取付片部55を、ボルト57とナット58を利用して底壁部16に取り付ければ、アクチュエータ35をケース15に取り付けることができると同時に、アクチュエータ35と連結ベルト32とを連結させることができる。次いで、インフレーター8の本体部8aを下方から挿入させて、底壁部16から突出させたリテーナ9のボルト9aとナット10とを利用して、インフレーター8とエアバッグ25とをケース15に取り付ける。その後、車両Vに搭載されたインパネ1におけるエアバッグカバー6の連結壁部6cに、ケース15の周壁部17を係止させ、ケース15に設けられた図示しないブラケットを車両Vのボディ側に固定させる。次いで、制御装置60から延びるリード線43を結線させたコネクタ42を、アクチュエータ35のガス発生器37に接続させ、インフレーター8にも、制御装置60から延びる図示しないリード線を結線させれば、エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0035】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、インフレーター8のガス吐出口8bから膨張用ガスIGが吐出されれば、エアバッグ25が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、エアバッグカバー6の扉部6a,6bを押し開かせることとなる。そして、エアバッグ25は、エアバッグカバー6の扉部6a,6bを押し開いて形成される開口を経て、ケース15から上方へ突出するとともに、車両Vの後方側に向かって突出しつつ展開膨張して、図1の二点鎖線に示すように、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように、膨張を完了させることとなる。
【0036】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ25から延びる連結手段としての連結ベルト32は、アクチュエータ35におけるホルダ部45の保持壁部48に巻き掛けて保持されることにより、アクチュエータ35との連結状態を維持される構成である。また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、作動時には、アクチュエータ35のガス発生器37が、燃焼ガスBGを噴出させることとなり、この燃焼ガスBGを、ホルダ部45に設けられる接触可能領域(実施形態では、ガス流出穴49)において、連結ベルト32のループ部33と接触させることにより、連結ベルト32が、焼き切られるように、あるいは、溶融されるようにして、切断されて、ホルダ部45との連結状態を解除されることとなる(図9,10のB参照)。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Mでは、従来のエアバッグ装置のアクチュエータにおいて使用されていた作動ピン等が不要であり、単に、ガス発生器37から噴出される燃焼ガスBGを、ホルダ部45に保持されている連結ベルト32に接触させるだけで、連結ベルト32とホルダ部45との連結状態を解除できることから、従来のエアバッグ装置と比較して、構成を簡便にすることができる。また、実施形態のエアバッグ装置Mにおいても、ホルダ部45に設けられる接触可能領域(ガス流出穴49)において、燃焼ガスBGを連結ベルト32に接触させて、連結ベルト32を切断する構成であることから、連結ベルト32とホルダ部45との連結状態を、安定して解除させることができる。
【0037】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、簡便な構成として、かつ、アクチュエータ35の作動時に、連結ベルト32との連結状態を円滑に解除することができる。
【0038】
具体的には、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ホルダ部45の保持壁部48が、燃焼ガスBGの噴出方向を中心として略筒状に形成されて、外周側を覆うように配置される連結ベルト32のループ部33に向かって燃焼ガスBGを流出可能なガス流出穴49を、貫通させて配設させる構成として、このガス流出穴49により、接触可能領域を構成している。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Mでは、連結ベルト32の端部(先端32b)側をループ状とし、この先端32b側のループ部33に、ホルダ部45の保持壁部48を挿通させれば、連結ベルト32をホルダ部45に保持させることができ、連結ベルト32をホルダ部45に保持させる保持作業が、容易である。
【0039】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、保持壁部48が、円筒状とされており、ガス流出穴49は、車両搭載時において、保持壁部48の上下の略中央であって、中心軸の左側と右側となる左右方向側で対向する位置に形成されている。すなわち、ガス流出穴49は、車両搭載時において連結ベルト32のループ部33に外周側を覆われるように構成されており、換言すれば、ガス流出穴49は、車両搭載時に、保持壁部48の軸直交方向側の断面において、周方向側の両縁(上縁49aと下縁49bと)を、連結ベルト32のループ部33と当接させるような領域に配設される構成である(図5参照)。そのため、燃焼ガスBGを、ガス流出穴49を経て迅速に連結ベルト32のループ部33に向かって流出させることができて、連結ベルト32を、ループ部33の部位で迅速に切断させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、ガス流出穴を、ループ部と当接する位置から、多少ずれた位置(実施形態の場合、多少上方となる位置)に、配置させるように、構成してもよい。
【0040】
なお、実施形態では、ガス流出穴49は、保持壁部48の上下の略中央の左右両側となる2箇所に、配設されているが、ガス流出穴の配置位置及び配置数は、実施形態に限定されるものではなく、例えば、保持壁部の下端側の1箇所のみに配設させる構成としてもよい。また、実施形態では、ガス流出穴49の外形形状は、連結ベルト32の幅寸法と長さ寸法を略同一とした長孔状とされているが、ガス流出穴の外形形状も、実施形態に限定されるものではなく、小径のものを、多数配置させるような構成としてもよい。さらには、実施形態では、保持壁部48は、円筒状とされているが、連結ベルト32のループ部33を保持可能な構成であれば、円筒状ではなくともよく、例えば、上側を切り欠いたような半割円筒状として、先端側を天井壁部によって閉塞するような構成としてもよい。
【0041】
さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Mでは、アクチュエータ35の周囲におけるケース15の外方側となる位置(実施形態の場合、アクチュエータ35の左方と後方となる位置)に、ケース15側から延びるようにして、アクチュエータ35の側方(左方と後方)を覆うカバー壁19が、配設される構成である。そのため、ガス発生器37の作動時に発生する火炎や火花等をインパネ1の隙間等から視認不能とすることができる。
【0042】
また、アクチュエータ35Aとして、図11,12に示すような構成のものを使用してもよい。アクチュエータ35Aでは、ホルダ部45Aにおける保持壁部48A以外は、前述のアクチュエータ35と同一の構成である。保持壁部48Aは、前述のアクチュエータ35における保持壁部48と同様に、外周面側で、連結ベルト32Aを巻き掛けることにより、連結ベルト32Aを保持可能に構成されるもので、中心軸を、ガス発生器収納部46の中心軸と略一致させて構成される略円筒状として、ガス発生器収納部46から連なるように、形成されている。この保持壁部48Aも、保持壁部48と同様に、ガス発生器収納部46より小径の略円筒状とされている。すなわち、保持壁部48Aも、保持壁部48と同様に、ガス発生器37の噴出口37aから噴出される燃焼ガスBGの噴出方向を中心として略筒状に形成されている。保持壁部48Aには、連結ベルト32Aを挿通可能な挿通孔70U,70Dが、上下方向側で2箇所に、それぞれ、貫通して、形成されている。挿通孔70U,70Dは、外形形状を略同一として、それぞれ、長手方向を、前後方向(保持壁部48の軸方向)に略沿わせた長孔状に、形成されている。挿通孔70U,70Dの長さ寸法(保持壁部48の軸方向側の幅寸法)は、保持壁部48の長さ寸法よりわずかに小さな寸法に、設定されている(図11参照)。そして、このアクチュエータ35Aでは、連結ベルト32Aの幅寸法を、挿通孔70U,70Dに挿通可能に、前述の連結ベルト32の幅寸法よりも小さく設定されている。実施形態の場合、連結ベルト32Aは、図11,12,13のAに示すように、先端側部位75を、上側の挿通孔70Uから下方に向かって保持壁部48A内に挿入させ、下側の挿通孔70Dから突出させて、保持壁部48Aの外周側に一周巻き付け、再度下側の挿通孔70Dから上方に向かって保持壁部48A内に挿入させて、上側の挿通孔70Uから突出させた端縁32cを、中間部位に結合(縫着)させるようにして、保持壁部48A(アクチュエータ35A)と連結されることとなる。すなわち、連結ベルト32Aは、図13のAに示すように、2つの挿入領域76A,76Bを、保持壁部48A内に挿入させるようにして、ホルダ部45Aに保持される構成である。このアクチュエータ35Aでは、保持壁部48Aの内周側が、燃焼ガスBGを連結ベルト32A(挿入領域76A,76B)と接触させる接触可能領域を構成することとなる。
【0043】
このような構成のアクチュエータ35Aを使用する場合、単に連結ベルト32の先端32b側に形成したループ部33に保持壁部48を挿入させることによって、連結ベルト32をホルダ部45に保持させる構成である前述のアクチュエータ35と比較して、連結ベルト32Aの保持壁部48Aとの連結作業が若干煩雑であるものの、ガス発生器37の作動時には、燃焼ガスBGを、保持壁部48Aの内周側で、連結ベルト32Aにおける2つの挿入領域76A,76Bに、確実に接触させることができ、この挿入領域76A,76Bの部位で連結ベルト32Aを切断させることにより、連結ベルト32のホルダ部45Aとの保持状態を、確実に解除させることができる(図13のB参照)。なお、実施形態では、連結ベルト32Aの先端側部位75を、保持壁部48Aの外周側を全周にわたって覆うように巻き掛け、2つの挿入領域76A,76Bを、保持壁部48A内に挿入させているが、連結ベルトは、先端側部位を、1つの挿入領域を有するように、保持壁部の左右の片側のみに、巻き掛けるようにして、ホルダ部に連結させる構成としてもよい。しかしながら、アクチュエータとの連結状態を維持した状態で、エアバッグを膨張させる際の連結強度を考慮すれば、実施形態に示すごとく、連結ベルト32Aを、挿入領域を2つ有し、保持壁部48Aの外周側を全周にわたって覆うように巻き掛けるようにして、アクチュエータ35Aに連結させることが、好ましい。
【0044】
実施形態のエアバッグ装置Mでは、アクチュエータ35,35Aにおける筒状の保持壁部48,48Aの外周側に、連結ベルト32,32Aを巻き掛けるようにして、連結ベルト32,32Aを、アクチュエータ35,35Aに連結させている構成であり、この保持壁部48,48Aは、従来のエアバッグ装置において使用されている作動ピンと比較して、大径とすることができることから、従来使用されている作動ピンと比較して、強度を確保することができる。また、連結状態の解除は、ガス発生器37の作動による燃焼ガスBGの接触によって、連結ベルト32,32A自体を切断させることにより、行われる。そのため、従来の作動ピンを備えるタイプのアクチュエータを使用する場合と比較して、高い連結強度を確保でき、また、作動時には、円滑かつ迅速に連結状態を解除できることから、例えば、エアバッグの膨張初期に、連結状態を維持し、その後、所定のタイミングで、連結状態を解除させるような膨張モードにおいても、エアバッグの膨張形態を安定して制御することができる。
【0045】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、アクチュエータ35,35Aは、一本のボルト57のみを利用して、ケース15の底壁部16に取り付けられる構成であることから、底壁部16に簡便に取り付けることができて、取付作業が容易である。
【0046】
なお、実施形態では、エアバッグ装置として、助手席用のエアバッグ装置を例に採り説明したが、本発明を適用可能なエアバッグ装置は、実施形態に限られるものではなく、ステアリングホイール用のエアバッグ装置に、本発明を適用してもよい。また、実施形態では、アクチュエータによってエアバッグの内圧を制御する構成であるが、エアバッグの膨張形態の制御としては、内圧制御に限られるものではなく、アクチュエータによって、膨張完了形状を異ならせるように、エアバッグを構成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
8…インフレーター、15…ケース(収納部位)、25…エアバッグ、32,32A…連結ベルト(連結手段)、33…ループ部、35,35A…アクチュエータ、37…ガス発生器、37a…噴出口、45,45A…ホルダ部、48,48A…保持壁部、49…ガス流出穴、51…天井壁部、60…制御装置、70U,70D…挿通孔、75…先端側部位、BG…燃焼ガス、MP…乗員、PS…助手席、M…助手席用エアバッグ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13