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特許7435557はく離フィルム、セラミック部品シート、及び積層セラミックコンデンサの製造方法
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  • 特許-はく離フィルム、セラミック部品シート、及び積層セラミックコンデンサの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】はく離フィルム、セラミック部品シート、及び積層セラミックコンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/28 20060101AFI20240214BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20240214BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240214BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B32B27/28
B28B1/30 101
B32B27/00 L
B32B27/00 101
B32B27/30 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021118649
(22)【出願日】2021-07-19
(62)【分割の表示】P 2020506379の分割
【原出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021176704
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2018219143
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】丑田 智樹
(72)【発明者】
【氏名】眞下 倍達
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】西沢 明憲
(72)【発明者】
【氏名】飯田 修治
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-105384(JP,A)
【文献】国際公開第2013/129080(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/159247(WO,A1)
【文献】特開2008-133435(JP,A)
【文献】国際公開第2016/060084(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/150255(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
B28B 1/30
C08J 7/04 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に設けられたはく離層と、を有するはく離フィルムであって、
前記はく離層は、反応性官能基を有するシリコーン樹脂とその他の重合性成分とを含有する組成物の硬化物であり、
前記はく離層は、XPSによって測定される前記はく離層の前記基材側とは反対側の表面におけるケイ素のピーク強度をXとし、前記はく離層の前記表面から深さ4.1nmにおけるケイ素のピーク強度をYとしたときに、Xに対するYの比率が34~70%である、はく離フィルム。
【請求項2】
前記Xに対する前記Yの比率が68%以下である、請求項1に記載のはく離フィルム。
【請求項3】
前記はく離層が、反応性官能基を有するシリコーン樹脂、反応性官能基を有する(メタ)アクリレート、及び反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーを含有する組成物の硬化物である、請求項1又は2に記載のはく離フィルム。
【請求項4】
前記組成物における前記アクリルシリコーングラフトポリマーの含有量が、前記(メタ)アクリレートの全量を基準として、10~600質量%である、請求項3に記載のはく離フィルム。
【請求項5】
前記シリコーン樹脂の含有量が、前記組成物の全量を基準として、0.5質量%以上である、請求項3又は4に記載のはく離フィルム。
【請求項6】
前記反応性官能基を有するシリコーン樹脂は、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される変性シリコーンオイルを含む、請求項~5のいずれか一項に記載のはく離フィルム。
【化1】

[一般式(1)中、R及びRは、互いに独立して、単結合又は2価の炭化水素基を示す。mは1以上の整数を示す。]
【化2】

[一般式(2)中、R及びRは、互いに独立して、単結合又は2価の炭化水素基を示す。nは1以上の整数を示す。]
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のはく離フィルムと、
前記はく離層の前記表面上に設けられた、セラミックグリーンシート及び電極グリーンシートからなる群より選択される少なくとも一つのグリーンシートと、を有する、セラミック部品シート。
【請求項8】
積層セラミックコンデンサの製造方法であって、
請求項7に記載のセラミック部品シートを複数準備する工程と、
前記セラミック部品シートから前記はく離フィルムをはく離し、前記グリーンシートを積層して、複数の前記グリーンシートを有する積層体を得る工程と、
前記積層体を焼結して焼結体を得る工程と、
を有する、積層セラミックコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、はく離フィルム、セラミック部品シート、はく離フィルムの製造方法、セラミック部品シートの製造方法、及び積層セラミックコンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサの製造方法として、はく離フィルム上に形成されたセラミックグリーンシートをはく離フィルムからはく離しつつ、同様に得られた複数のセラミックグリーンシートと積層することを含む製造方法が知られている(例えば、特許文献1)。積層セラミックコンデンサの小型化の要求に伴い、セラミックグリーンシートの薄膜化が求められる。これに伴って、セラミックグリーンシートの形成に用いられるはく離フィルムは、凹凸が十分に低減された平滑な表面を有すること、及びはく離性に優れることが求められている。
【0003】
はく離性に優れるはく離フィルムとして、例えば、特許文献2には、基材フィルムと前記基材フィルムの一面上に設けられる重合体層とを備えるはく離フィルムであって、前記重合体層は(メタ)アクリレート成分の硬化物を含む層と、該層の前記基材フィルム側とは反対側の表面の一部を被覆するシリコーン重合体成分を含む膜と、を有し、前記シリコーン重合体成分は、(メタ)アクリロイル基及び/又はビニル基で変性された変性シリコーンオイルの重合体であるはく離フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-203822号公報
【文献】特開2010-105384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の積層セラミックコンデンサの更なる小型化に対応するためには、より薄膜のセラミックグリーンシート等を形成することが求められる。このような薄膜化されたセラミックグリーンシートを製造するためには、はく離フィルムのはく離性を更に向上させることが望まれる。しかし、はく離性を向上させるためにはく離層におけるシリコーン重合体成分の含有量を増加させると、シリコーン重合体成分と他の成分とが相分離し易くなり、例えば、はく離層を設けるためのスラリーの調製が困難になる、調製されたスラリーが基材に塗布し難くなる、及びシリコーン重合体の凝集に伴う欠陥が発生して十分な平滑性を有するはく離層が得られ難くなる等の懸念がある。
【0006】
そこで、本開示は、はく離性に優れると共に、十分な平滑性を有するはく離フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。本開示はまた、上記のようなはく離フィルムを有し、薄膜のグリーンシートを製造できるセラミック部品シート及びその製造方法を提供することを目的とする。本開示は更に、上記のようなはく離フィルムを用いる積層セラミックコンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面は、基材と、上記基材上に設けられたはく離層と、を有するはく離フィルムであって、上記はく離層は、反応性官能基を有するシリコーン樹脂とその他の重合性成分とを含有する組成物の硬化物であり、XPSによって測定される上記はく離層の上記基材側とは反対側の表面におけるケイ素のピーク強度をXとし、上記はく離層の上記表面から深さ4.1nmにおけるケイ素のピーク強度をYとし、ポリジメチルシロキサンを90%以上含有するシリコーン樹脂層を形成した場合に測定されるケイ素のピーク強度をZとしたときに、XがYよりも大きく、Zに対するXの比率が40%以上であり、且つZに対するYの比率が5~50%である、はく離フィルムを提供する。
【0008】
上記はく離フィルムは、XPSによって測定されるケイ素のピーク強度に関して、上記Zに対する上記Xの比率が40%以上であり、且つ上記Y(はく離層の表面から深さ4.1nmにおけるケイ素のピーク強度)が、上記X(はく離層の表面におけるピーク強度)よりも小さい。このため、反応性官能基を有するシリコーン樹脂に由来する樹脂成分がはく離層の表層部分の方に多く、はく離層の表面におけるはく離性に優れる。また、上記Z(上記シリコーン樹脂からなる層を形成した場合にケイ素のピーク強度)に対する上記Yが5~50%であることから、上記剥離層の上記表面から深さ4.1nmにおいて、その他の重合性成分に由来する樹脂成分が適度に存在するため、シリコーン樹脂に由来する樹脂成分の凝集が十分に低減され、はく離層は欠陥等が少なく平滑性に十分に優れる。
【0009】
上記Xに対する上記Yの比率が70%以下であってもよい。
【0010】
上記はく離層が、反応性官能基を有するシリコーン樹脂、反応性官能基を有する(メタ)アクリレート、及び反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーを含有する組成物の硬化物であってよい。はく離層が上記組成物を用いて形成される硬化物である場合、上記組成物中において、反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーが、シリコーン樹脂と(メタ)アクリレート(又はその重合体)との相分離、及びシリコーン樹脂の凝集を抑制するように働くことから、従来のはく離層と比べてシリコーン樹脂をより多く含有させることが可能であり、結果として得られるはく離層のはく離性と平滑性とをより高水準で両立することができる。
【0011】
上記アクリルシリコーングラフトポリマーの含有量が、上記(メタ)アクリレート全量を基準として、10~600質量%であってよい。上記アクリルシリコーングラフトポリマーの含有量が上記範囲内であることによって、シリコーン樹脂と(メタ)アクリレート(又はその重合体)との相分離及びシリコーン樹脂の凝集をより十分に抑制し、はく離層のはく離性と平滑性とをより高水準で両立することができる。
【0012】
上記シリコーン樹脂の含有量が0.5質量%以上であってもよい。上記シリコーン樹脂の含有量を上記範囲内とすることによって、はく離層の表面のシリコーン樹脂の含有量を増大させることが可能であるから、はく離層のはく離性をより向上させることができる。
【0013】
本開示の一側面は、上述のはく離フィルムと、上記はく離層の上記表面上に設けられた、セラミックグリーンシート及び電極グリーンシートからなる群より選択される少なくとも一つのグリーンシートと、を有する、セラミック部品シートを提供する。
【0014】
上記セラミック部品シートは、はく離性に優れると共に、十分な平滑性を有するはく離フィルムを有することから、はく離フィルム上に設けられたグリーンシートにおけるピンホールの発生、及び厚さのばらつきが十分に抑制されている。また、上記セラミック部品シートは、はく離性に優れるはく離フィルムを有することから、薄膜のグリーンシートを製造するためにも有用である。
【0015】
本開示の一側面は、基材と、上記基材上に設けられたはく離層と、を有するはく離フィルムの製造方法であって、反応性官能基を有するシリコーン樹脂、反応性官能基を有する(メタ)アクリレート、及び反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーを含有する組成物と溶剤とを含むスラリーを上記基材上に塗工する工程と、上記スラリー中の上記溶剤の含有量を低減して感光層を設ける工程と、上記感光層を露光させることによって上記組成物の硬化物で構成されるはく離層を形成する工程と、を有するはく離フィルムの製造方法を提供する。
【0016】
上記はく離フィルムの製造方法は、反応性官能基を有するシリコーン樹脂、反応性官能基を有する(メタ)アクリレート、及び反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーを含有する組成物を用いる。上記アクリルシリコーングラフトポリマーは、シリコーン樹脂と(メタ)アクリレート(又は硬化反応中に生成する(メタ)アクリレート重合体)との相分離及びシリコーン樹脂の凝集を抑制するように働き、シリコーン樹脂をより多く含有させることができる。また、溶剤を除去して溶剤の含有量を低減する過程で、各成分の比重、及び表面エネルギー等によって、(メタ)アクリレートが基材側に移動し、シリコーン樹脂が基材とは反対側に移動する。感光層中において上述のような移動が起こった状態で、感光層を露光することによって各成分中の官能基が反応して感光層中における成分の分布状態が固定される。このような作用によって、はく離層の基材側とは反対側の表面(セラミックグリーンシート等が形成される面)のはく離性が優れ、且つシリコーン樹脂の凝集等による欠陥の発生が抑制された平滑性にも優れるはく離フィルムを製造することができる。
【0017】
上記アクリルシリコーングラフトポリマーの含有量が、上記(メタ)アクリレートの全量を基準として、10~600質量%となるように上記組成物を調製する工程を更に有してもよい。上記アクリルシリコーングラフトポリマーの含有量が上記範囲内となるように組成物を調製することによって、シリコーン樹脂と(メタ)アクリレート(又は硬化反応中に生成する(メタ)アクリレート重合体)との相分離及びシリコーン樹脂の凝集をより十分に抑制し、はく離層における欠陥の発生をより低減することができる。結果として、はく離層のはく離性と平滑性とをより高水準で両立されたはく離フィルムを製造することができる。
【0018】
上記シリコーン樹脂の含有量が0.5質量%以上となるように上記組成物を調製する工程を更に有してもよい。上記シリコーン樹脂の含有量を上記範囲内となるように組成物を調製することによって、はく離層のはく離性がより向上されたはく離フィルムを製造することができる。
【0019】
上記反応性官能基が、(メタ)アクリロイル基及びビニル基からなる群より選択される少なくとも一つの官能基であり、上記組成物が光重合開始剤を更に含有してもよい。
【0020】
本開示の一側面はまた、基材と、上記基材上に設けられたはく離層と、上記はく離層の上記基材側とは反対側の表面に設けられた、セラミックグリーンシート及び電極グリーンシートからなる群より選択される少なくとも一つのグリーンシートと、を有する、セラミック部品シートの製造方法であって、反応性官能基を有するシリコーン樹脂、反応性官能基を有する(メタ)アクリレート、及び反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーを含有する組成物と溶剤とを含むスラリーを上記基材上に塗工する工程と、上記スラリー中の上記溶剤の含有量を低減して感光層を設ける工程と、上記感光層を露光させることによって上記組成物の硬化物で構成されるはく離層を形成する工程と、上記はく離層の上記基材側とは反対側の表面に、セラミック粉末及び電極材料からなる群より選択される少なくとも一つを含有するペーストを塗工し、溶剤を除去することによってセラミックグリーンシート及び電極グリーンシートからなる群より選択される少なくとも一つのグリーンシートを形成する工程と、を有する、セラミック部品シートの製造方法を提供する。
【0021】
上記セラミック部品シートの製造方法は、はく離性に優れると共に、十分な平滑性を有するはく離層を調製し用いることから、グリーンシートにおけるピンホールの発生、及び厚さのばらつきが十分に抑制できる。上記セラミック部品シートの製造方法で得られるセラミック部品シートを用いることで、積層セラミックコンデンサ等のセラミック製品の歩留まりを向上させることができる。
【0022】
本開示の一側面は、積層セラミックコンデンサの製造方法であって、上述のセラミック部品シートを複数準備する工程と、上記セラミック部品シートから上記はく離シートをはく離し、上記グリーンシートを積層して複数の上記グリーンシートを有する積層体を得る工程と、上記積層体を焼結して焼結体を得る工程と、を有する、積層セラミックコンデンサの製造方法を提供する。
【0023】
上記積層セラミックコンデンサの製造方法は、上述のセラミック部品シートを用いることから、高い歩留まりでセラミック部品を製造することができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、はく離性に優れると共に、十分な平滑性を有するはく離フィルム及びその製造方法を提供することができる。本開示によればまた、上記のようなはく離フィルムを有し、薄膜のグリーンシートを製造できるセラミック部品シート及びその製造方法を提供することができる。本開示によれば更に、上記のようなはく離フィルムを用いる積層セラミックコンデンサの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、はく離フィルムの一例を示す模式断面図である。
図2図2は、セラミック部品シートの一例を示す模式断面図である。
図3図3は、セラミック部品の一例を示す模式断面図である。
図4図4は、実施例におけるXPS測定によるはく離層の深さ方向解析の結果を示すグラフである。
図5図5は、実施例3及び比較例6で調製したはく離フィルムの外観を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、場合により図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。また説明において、同一の構造又は同一の機能を有する要素には同一の符号を用い、場合によって重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、各要素の寸法比率は図面に図示された比率に限られるものではない。
【0027】
図1は、はく離フィルムの一例を示す模式断面図である。はく離フィルム10は、基材フィルム12と、基材フィルム12上に設けられたはく離層14とを有する。はく離フィルム10は、例えば、積層セラミックコンデンサの製造に使用されるグリーンシートを製造する用途に用いることができる。
【0028】
基材フィルム12は、例えば、合成樹脂フィルム等が用いられる。合成樹脂としては、例えば、ポリエステル;ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ乳酸;ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル;ポリウレタン;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;並びに、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。合成樹脂は、好ましくはポリエステルを含み、より好ましくはポリエチレンテレフタレートを含む。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、比較的安価であり、且つ力学的性質及び透明性に優れる。
【0029】
基材フィルム12はフィラーを含有してもよい。基材フィルム12がフィラーを含有することで、はく離フィルム10の機械的強度を十分に高めることができる。基材フィルム12におけるフィラーの含有量は特に制限されるものではないが、透明性を悪化させない程度であることが好ましい。フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、フュームドシリカ、カオリン、タルク、アルミナ及び有機粒子等が挙げられる。
【0030】
基材フィルム12の厚さsは、好ましくは10~100μmであり、より好ましくは20~50μmである。基材フィルム12の厚さsを10μm以上とすることによって、はく離フィルム10の寸法安定性等の物理特性がより優れる。基材フィルム12の厚さsを100μm以下とすることによって、はく離フィルム10の単位面積当たりの製造コストをより低下させることができる。
【0031】
はく離層14は、反応性官能基を有するシリコーン樹脂とその他の重合性成分とを含有する組成物の硬化物で構成される。はく離層14は、はく離層14の深さ方向に沿ってシリコーン樹脂が特定の分布を有する。当該分布は、XPSによって測定することができる。当該分布は、上記組成物の組成及び配合比等の調整、後述する製造方法の製造条件の調整等によって制御することができる。
【0032】
XPS(X線光電子分光)によるはく離層14の深さ方向に沿ったシリコーン樹脂の分布測定は、XPS測定によるはく離層の表面の組成分析と、アルゴンイオンを用いたスパッタによるはく離層表面のエッチングとを併用することで行うことができる。スパッタによってはく離層を表面から削り、徐々に内部を露出させながら、露出面における組成分析をXPSで行う。スパッタによるエッチング時間と、はく離層の厚さ方向における距離(深さ)との間には相関がある。よって、XPSによる測定結果を、はく離層の表面からの深さに対するシリコーン樹脂の分布としてグラフ化することができる。本明細書においては、エッチング速度は0.05nm/秒として測定を行う。
【0033】
はく離層14は、XPSによって測定される上記はく離層14の上記基材(基材フィルム12)側とは反対側の表面におけるケイ素のピーク強度をXとし、上記はく離層14の前記表面から深さ4.1nmにおけるケイ素のピーク強度をYとし、ポリジメチルシロキサンを90%以上含有するシリコーン樹脂層を形成した場合に測定されるケイ素のピーク強度をZとしたときに、XがYよりも大きく、Zに対するXの比率が40%以上であり、且つZに対するYの比率が5~50%である。
【0034】
上記ピーク強度Zに対する上記ピーク強度Xは、例えば、43%以上、45%以上、又は50%以上であってよく、90%以下であってよい。上記ピーク強度Xが上記範囲内であることによって、はく離層14のはく離性をより高めることができ、はく離層14上にグリーンシートを形成した後にグリーンシートをはく離するために要する負荷を小さくすることができる。上記ピーク強度Zに対する上記ピーク強度Yは、例えば、5~40%、5~30%、10~30%、又は10~25%であってよい。上記ピーク強度Yが上記範囲内であることによって、その他の重合性成分に由来する樹脂成分が適度にシリコーン樹脂に由来する樹脂成分と共存し、シリコーン樹脂の凝集を十分に抑制し、はく離層14の平滑性をより高めることができる。
【0035】
上記ピーク強度Xに対する上記ピーク強度Yの比率は、好ましくは70%以下であり、より好ましくは60%以下であり、更に好ましくは50%以下である。上記ピーク強度Xに対する上記ピーク強度Yの比率が上記範囲内であることによって、基材フィルム12側におけるシリコーン成分を十分に低減することができ、塗膜形成性を向上させることができ、また硬化後に得られるはく離層と基材との界面における破壊をより十分に抑制することができる。
【0036】
はく離層14の厚さtは、好ましくは0.5~3μmであり、より好ましくは1~2μmであり、更に好ましくは1~1.5μmである。はく離層14の厚さtを0.5μm以上とすることによって、基材フィルム12の表面の凹凸による影響をより十分に低減することができ、はく離層14の基材フィルムとは反対側の面(はく離面14a)における平滑性をより十分なものとすることができる。はく離層14の厚さtを3μm以下とすることによって、はく離層形成の際における硬化反応に伴う感光層の収縮によってはく離フィルム10が反ることを抑制することができる。
【0037】
はく離層14の基材フィルム12側とは反対側の表面(はく離面14a)の微小粗さSpは、100nm以下であってよく、50nm以下、40nm以下、35nm以下、又は30nm以下であってよい。はく離面14aの微小粗さSpが上記範囲内であることによって、はく離フィルム10を用いて形成されるセラミックグリーンシート及び電極グリーンシートにおいてピンホール等の発生をより十分に抑制することができ、またセラミックグリーンシート及び電極グリーンシートの厚さのばらつきを十分に低減し、平滑性により優れるものとすることができる。微小粗さSpは、JIS B 0601:2013に記載の方法に準拠して、株式会社菱化システムのMicromap System(光学干渉式三次元非接触表面形状測定システム)を用いて測定できる。
【0038】
上述のはく離フィルム10は、例えば、下記の製造方法によって製造することができる。はく離フィルムの製造方法の一実施形態は、反応性官能基を有するシリコーン樹脂を含有する組成物と溶剤とを含むスラリーを基材上に塗工する工程(塗工工程)と、上記スラリー中の上記溶剤の含有量を低減して感光層を設ける工程(溶剤低減工程)と、上記感光層を露光させることによって上記組成物の硬化物で構成されるはく離層を形成する工程(露光工程)と、を有する。
【0039】
はく離フィルムの製造方法における塗工工程は、スラリーを基材上に塗工して上記組成物を含む塗膜を形成する工程である。塗膜を形成する際の塗工方法は、例えば、バーコート法、マイヤーバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法、及びスプレーコート法等を用いることができる。
【0040】
スラリーに含まれる溶剤は、反応性官能基を有するシリコーン樹脂とその他の成分とを溶解することが可能な溶剤が用いられる。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール(IPA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PEGMA)等が挙げられる。これらの溶剤は一種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
反応性官能基を有するシリコーン樹脂を含有する組成物は、反応性官能基を有するシリコーン樹脂、反応性官能基を有する(メタ)アクリレート、及び反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーを含有してもよい。反応性官能基は、ビニル基及び(メタ)アクリロイル基からなる群より選択される少なくとも一つの官能基を含む。複数存在する反応性官能基は、互いに同一であってもよく、異なってもよい。本明細書において、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及びメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル基」はアクリロイル基及びメタクリロイル基を示す。
【0042】
反応性官能基を有するシリコーン樹脂(以下、(A)成分ともいう)は、例えば、反応性官能基で変性された変性シリコーンオイル等であってよい。変性シリコーンオイルとしては、例えば、片末端(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル、両末端(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル、側鎖(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル、両末端側鎖(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル、片末端ビニル変性シリコーンオイル、両末端ビニル変性シリコーンオイル、側鎖ビニル変性シリコーンオイル、及び両末端側鎖ビニル変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらの変性シリコーンオイルは1種を単独でもちいてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
変性シリコーンオイルとしては、例えば、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表されるものを用いてもよい。
【0044】
【化1】
【0045】
上記一般式(1)中、R及びRは、互いに独立して、単結合又は2価の炭化水素基を示す。mは1以上の整数を示す。R及びRは、好ましくは炭素数1~10程度のポリメチレン基、又は炭素数1~10のアルキレン基である。mは、好ましくは10~1000程度である。
【0046】
【化2】
【0047】
上記一般式(2)中、R及びRは、互いに独立して、単結合又は2価の炭化水素基を示す。nは1以上の整数を示す。R及びRは、好ましくは炭素数1~10程度のポリメチレン基、又は炭素数1~10のアルキレン基である。また、nは、好ましくは10~1000程度である。
【0048】
反応性官能基を有する(メタ)アクリレート(以下、(B)成分ともいう)は、好ましくは2つ以上の反応性官能基を有し、3つ以上の反応性官能基を有していてもよい。反応性官能基を有する(メタ)アクリレートは、例えば、アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
アルキレンジオールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、及びブチルプロパンジオールジアクリレート等が挙げられる。トリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ジペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマー(以下、(C)成分ともいう)は、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーの重合体であるアクリル系ポリマーに対してシリコーンマクロモノマーが導入されたポリマーである。反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーは、好ましくは1つの反応性官能基を有する。グラフト部であるシリコーンは、ポリシロキサン構造を有し、好ましくはポリジメチルシロキサン構造を有する。反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーにおけるポリシロキサン構造は、複数導入されていることが好ましい。ポリシロキサン構造の含有割合は、アクリルシリコーングラフトポリマーの全量を基準として、例えば、3質量%以上であってよい。
【0051】
本明細書における「反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマー」には、比較的分子量の小さなオリゴマーが含まれる。すなわち、「反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマー」には、反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトオリゴマーが含まれる。反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーの主鎖を構成するアクリル系ポリマー部分の重量平均分子量は、例えば、5000~2000000であってよく、30000~1000000であってよく、又は100000~400000であってよい。本明細書において「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される値を意味し、ポリスチレン換算値で表す。
【0052】
反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーは、市販のものを用いてもよく、別途合成したものを用いてもよい。反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーとしては、例えば、信越化学工業株式会社製のKP-500シリーズ、東亜合成株式会社製のサイマックシリーズ(サイマックは登録商標)、及び大成ファインケミカル株式会社製の8SS(UV硬化型シリコーンアクリルポリマー)シリーズ等を用いることができる。
【0053】
反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーは、例えば、以下のような調製方法によって調製することができる。調製方法の一例としては、例えば、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリレート等のモノマーの重合体(直鎖状のアクリル系ポリマー)に対して、高分子反応によってシリコーンマクロモノマーを導入し、その後、アクリル酸に由来するカルボキシル基に対して、グリシジル基を有する(メタ)アクリレートを反応させて、反応性官能基を導入することによって、反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーを調製する方法が挙げられる。
【0054】
反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーの調製方法は、上記の方法の他に、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリレート等のモノマーと、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有するモノマーとを共重合させて得られる直鎖状のアクリル系ポリマーに対して、高分子反応によりシリコーンマクロモノマーを導入し、その後、アクリル系ポリマーに導入されたグリシジル基に対して、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリルアミド、及び水酸基を有する(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等)などを反応させて、反応性官能基(ここでは、(メタ)アクリロイル基)を導入することによって、反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーを調製する方法であってもよい。上述のグリシジル基を有するモノマーを共重合させる方法は、水酸基を有するモノマーを共重合させた後に当該水酸基に対して(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物を反応させる方法、並びにフェノール性水酸基を有するモノマー又はチオール基をするモノマーを共重合させた後に当該フェノール性水酸基又はチオール基に対してグリシジル基を有する(メタ)アクリレートを反応させる方法等であってもよい。
【0055】
反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーは、上記の方法の他、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基を一つ有するポリシロキサンを、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリレート等のモノマー及びグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有するモノマーと共重合させ、シリコーングラフトを有するアクリル系ポリマーに対して、上述のようにして反応性官能基を導入する方法によっても調製することができる。
【0056】
上記(C)成分の含有量が、上記(B)成分全量を基準として、10~600質量%となるように上記組成物を調製する工程を更に有してもよい。(C)成分の含有量は、上記(B)成分全量を基準として、例えば、5~400質量%、12~300質量%、15~100質量%であってよい。(C)成分の含有量が上記範囲内であることによって、スラリーにおける(A)成分の含有量を増加させることが可能であり、はく離層14のはく離性と平滑性とをより高水準で両立することができる。
【0057】
上記(A)成分の含有量が0.5質量%以上となるように上記組成物を調製する工程を更に有してもよい。(A)成分の含有量は、上記組成物全量を基準として、例えば、0.8質量%以上、1.0質量%以上、又は1.2質量%以上であってよい。(A)成分の含有量が上記範囲内であることによって、はく離層のはく離性がより向上されたはく離フィルムを製造することができる。
【0058】
(A)成分及び(B)成分は、互いに相溶性の小さい成分を選択することが好ましい。(A)成分及び(B)成分として、互いに相溶しにくい成分を選択することによって、後述する溶剤除去工程において塗膜から溶剤の含有量が低減される過程で、塗膜内部で適度に相分離が生じ得る。よって、得られる感光層において、その深さ方向に(A)成分と(B)成分との濃度の勾配をより容易に設けることができる。ここで、(C)成分が配合されていることによって、この濃度勾配を調整することができる。本明細書において「互いに相溶しない」及び「互いに相溶しにくい」とは、それぞれの成分を混合したときに相分離が生じたり、白濁したりして、均一な溶液とならないことを意味する。
【0059】
反応性官能基を有するシリコーン樹脂を含有する組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分に加えて、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、光重合開始剤、及びフィラー等が挙げられる。
【0060】
光重合開始剤としては、活性光線の照射によってラジカルを発生する化合物を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、及び2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシアルキルフェノン、並びに2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等のα-アミノアルキルフェノンなどが挙げられる。光重合開始剤は、例えば、IRGACURE184、IRGACURE127、IRGACURE907、IRGACURE379、及びDAROCURE1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名)等を用いることができる。
【0061】
はく離フィルムの製造方法における溶剤低減工程は、上記溶剤の含有量を低減して上記組成物を含有する感光層を設ける工程である。溶剤低減工程は、好ましくは、上記溶剤を除去して上記組成物からなる感光層を設ける工程である。溶剤除去は、例えば、50~150℃の温度で10秒間~10分間かけて加熱乾燥することで行ってもよい。
【0062】
スラリーに含まれる(B)成分の比重は通常0.95~1.5程度であり、(A)成分の比重は通常0.95~1.5程度である。すなわち、(B)成分と(A)成分の比重はほぼ同等か、(A)成分の方が若干軽い傾向がある。また、(B)成分よりも(A)の方が低い表面エネルギーを有する。ここで、複数種類の互いに相溶しない成分を含有するスラリーの場合、エネルギー状態が低くなるように各成分が移動する。本実施形態のスラリーでは、上述のとおり、(A)成分の方が、比重が軽く且つ表面エネルギーが低いため、溶剤除去工程で基材フィルム12上に設けられた塗膜から溶剤が低減される過程で、(A)成分の方が基材フィルム12側とは反対側の表面(はく離面14aとなる面)に移動しやすい。
【0063】
はく離フィルムの製造方法における露光工程は、溶剤の含有量を低減することによって形成される感光層に活性光線を照射することによって(A)成分、(B)成分及び(C)成分の反応性官能基を反応させ組成物を硬化させて、はく離層を形成する工程である。活性光線の照射量は、感光層の厚さ等に応じて調整することができる。露光工程は、窒素雰囲気下で行ってもよい。露光工程を窒素雰囲気下で行うことによって、ラジカル活性種の酸素による失活等を抑制することができ、感光層の硬化が不十分なものとなることをより抑制することができる。活性光線は好ましくは紫外線である。紫外線の光源としては、例えば、水銀ランプ及びメタルハライドランプ等を用いることができる。
【0064】
セラミック部品シートの一実施形態は、基材と、上記基材上に設けられたはく離層と、上記はく離層の上記基材側とは反対側の表面に設けられた、セラミックグリーンシート及び電極グリーンシートからなる群より選択される少なくとも一つのグリーンシートと、を有する。セラミック部品シートは、基材と、上記基材上に設けられたはく離層とを有するはく離フィルムとして、上述のはく離フィルム10を用いてよい。
【0065】
図2は、セラミック部品シートの一例を示す模式断面図である。セラミック部品シート20は、はく離フィルム10と、はく離層14のはく離面14a上にセラミックグリーンシート22と、セラミックグリーンシート22上に形成された電極グリーンシート24とを有する。
【0066】
セラミックグリーンシート22は、例えば、積層セラミックコンデンサを形成するための誘電体グリーンシート等が挙げられる。セラミックグリーンシート22の厚さは、例えば、0.03~5μm、又は0.1~1μmであってよい。セラミックグリーンシート22は、はく離フィルム10からはく離された後、焼成されて、例えば、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム及びチタン酸バリウムからなる群より選択される少なくとも一つを含む誘電体となる。
【0067】
電極グリーンシート24は、はく離フィルム10からはく離された後、焼成されて、例えば、銅、ニッケル及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも一つを含む電極となる。
【0068】
上述のセラミック部品シートは、例えば、下記の製造方法によって製造することができる。セラミック部品シートの製造方法の一実施形態は、反応性官能基を有するシリコーン樹脂、反応性官能基を有する(メタ)アクリレート、及び反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーを含有する組成物と溶剤とを含むスラリーを基材上に塗工する工程(塗工工程)と、上記スラリー中の上記溶剤の含有量を低減して感光層を設ける工程(溶剤低減工程)と、上記感光層を露光させることによって上記組成物の硬化物で構成されるはく離層を形成する工程(露光工程)と、上記はく離層の上記基材側とは反対側の表面に、セラミック粉末及び電極材料からなる群より選択される少なくとも一つを含有するペーストを塗工し、溶剤を除去することによってセラミックグリーンシート及び電極グリーンシートからなる群より選択される少なくとも一つのグリーンシートを形成する工程(シート形成工程)と、を有する。
【0069】
塗工工程、溶剤低減工程及び露光工程は、上述のはく離フィルム10の製造方法と共通しており、上述の説明を適用することができる。セラミック部品シートの製造方法においては、上述のはく離フィルム10を用いることで、塗工工程、溶剤低減工程及び露光工程を省略してもよい。
【0070】
シート形成工程は、はく離フィルム10の基材フィルム12側とは反対側の表面14a上に、セラミック粉末を含有するペースト(セラミックペースト)及び電極材料を含有するペースト(電極ペースト)をそれぞれ塗布する。
【0071】
セラミックペーストは、例えば、誘電体原料(セラミック粉体)と有機ビヒクルとを含有する。誘電体原料としては、焼成によって複合酸化物や酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、及び有機金属化合物などから適宜選択して用いることができる。誘電体原料の平均粒子径は、好ましくは0.4μm以下、より好ましくは0.1~3.0μmである。セラミックペーストは、必要に応じて、分散剤、可塑剤、帯電除剤、誘電体、ガラスフリット、及び絶縁体等を更に含有してもよい。
【0072】
電極ペーストは、例えば、各種導電性金属及び合金等の導電体材料、並びに、各種酸化物、有機金属化合物、及びレジネート等との焼成後に導電体材料となる材料等からなる群より選択される少なくとも一つと、有機ビヒクルとを含有する。導電体材料としては、例えば、ニッケル金属、ニッケル合金、及びこれらの混合物等が挙げられる。電極ペーストは、可塑剤を更に含有してもよい。電極ペーストが可塑剤を含有することによって、電極ペーストのはく離層への濡れ性をより向上させることができる。可塑剤は、例えば、フタル酸ベンジルブチル(BBP)等のフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、並びにグリコール類等が挙げられる。
【0073】
セラミックペースト及び電極ペーストに含有される有機ビヒクルとしては、バインダ樹脂を有機溶剤に溶解したものを用いることができる。バインダ樹脂としては、例えば、エチルセルロース、アクリル樹脂、ブチラール系樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、及びこれらの共重合体等が挙げられる。バインダ樹脂は、好ましくはブチラール系樹脂、具体的にはポリビニルブチラール系樹脂を含む。バインダ樹脂としてブチラール系樹脂を用いることによって、セラミックグリーンシート22及び電極グリーンシート24の機械的強度を高くすることができる。ポリビニルブチラール系樹脂の重合度は、好ましくは1000~1700であり、より好ましくは1400~1700である。また、バインダ樹脂としてブチラール系樹脂を用いる場合、はく離層14の原料としてアルキレンジオールジ(メタ)アクリレートモノマーを用いることによって、セラミックグリーンシート22及び電極グリーンシート24のはく離性を一層優れたものとすることができる。
【0074】
有機ビヒクルに用いられる有機溶剤としては、例えば、テルピネオール、アルコール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、キシレン、及び酢酸ベンジル等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノール等が挙げられる。
【0075】
上述のセラミックペーストを、例えば、ドクターブレード装置等により、はく離フィルム10の表面14a上に塗布する。そして、塗布したセラミックペーストを、市販の乾燥装置内で、例えば50~100℃の温度で1~20分間かけて加熱乾燥させて、セラミックグリーンシート22を形成する。セラミックグリーンシート22は、乾燥前に比較して5~25%収縮する。
【0076】
次に、形成したセラミックグリーンシート22の表面22a上に、例えばスクリーン印刷装置を用いて、所定のパターンとなるように、電極ペーストを印刷する。そして、塗布した電極ペーストを、市販の乾燥装置内で、例えば50~100℃の温度で1~20分間かけて加熱乾燥させて、電極グリーンシート24を形成する。これによって、はく離フィルム10、セラミックグリーンシート22及び電極グリーンシート24が順次積層されたセラミック部品シート20を得ることができる。
【0077】
このセラミック部品シート20は、はく離層14を有するはく離フィルム10を用いて製造されるため、セラミックグリーンシート22及び電極グリーンシート24からなるグリーンシート26のはく離性に十分に優れており、グリーンシート26のはく離残りを十分に低減することができる。このため、グリーンシート26の厚みのばらつきが十分に低減され、ピンホールの発生を十分に抑制することができる。
【0078】
さらに、はく離層14の表面14aに、電極ペーストやセラミックペーストを塗布する際に、はじきの発生が十分に抑制されているため、ピンホールや厚みのばらつきの少ないグリーンシート26を容易に形成することができる。これによって、積層セラミックコンデンサの製造を一層容易に行うことができる。
【0079】
セラミック部品の製造方法の一実施形態である積層セラミックコンデンサの製造方法を以下に説明する。
【0080】
積層セラミックコンデンサの製造方法の一実施形態は、複数のセラミック部品シートを準備する工程(準備工程)と、セラミック部品シートのグリーンシートを複数積層して積層体を得る積層工程と、積層体を焼成して焼結体を得る焼成工程と、該焼結体に端子電極を形成して積層セラミックコンデンサを得る電極形成工程とを有する。
【0081】
準備工程では、上述のセラミック部品シートの製造方法によって製造されたセラミック部品シート20を複数準備する。次に、積層工程では、複数のセラミック部品シート20のグリーンシート26を積層して、複数のグリーンシート26が積層された積層体を得る。
【0082】
積層工程の一例を詳細に説明する。まず、セラミック部品シート20のはく離フィルム10をはく離してグリーンシート26を得る。このグリーンシート26の面22bと別のセラミック部品シート20の電極グリーンシート24とが向き合うようにして、グリーンシート26とセラミック部品シート20とを積層する。その後、積層したセラミック部品シート20からはく離フィルム10をはく離する。このような手順を繰り返し行って、グリーンシート26を積層することによって、積層体を得ることができる。すなわち、この積層工程では、グリーンシート26上にセラミック部品シート20を積層した後に、はく離フィルム10をはく離する手順を複数回繰り返すことによって、積層体を形成している。
【0083】
積層工程の別の例を説明する。グリーンシート26の表面22aと、はく離フィルム10をはく離した別のグリーンシート26の面22bとが向かい合うようにして、グリーンシート26を積層する。このような手順を繰り返し行い、グリーンシート26を順次積層することによって、積層体を得ることができる。すなわち、この積層工程では、はく離フィルム10をはく離したグリーンシート26を積層する手順を複数回繰り返すことによって、積層体を形成している。
【0084】
積層体におけるグリーンシートの積層枚数に特に制限はなく、例えば、数十層から数百層であってもよい。積層体の積層方向に直交する両端面に、電極層が形成されない厚めの外装用グリーンシートを設けてもよい。積層体を形成した後、積層体を切断してグリーンチップとしてもよい。
【0085】
焼成工程では、積層工程で得られた積層体(グリーンチップ)を焼成して焼結体を得る。焼成条件は、1100~1300℃で、加湿した窒素と水素との混合ガス等の雰囲気下で行うとよい。ただし、焼成時の雰囲気中の酸素分圧は、好ましくは10-2Pa以下、より好ましくは10-2~10-8Paとする。なお、焼成前には、積層体の脱バインダ処理を施すことが好ましい。脱バインダ処理は、通常の条件で行うことができる。内部電極層(電極グリーンシート24)の導電体材料として、例えば、ニッケル及びニッケル合金等の卑金属を用いる場合、200~600℃で行うことが好ましい。
【0086】
焼成後、焼結体を構成する誘電体層を再酸化させるために、熱処理を行ってもよい。熱処理における保持温度又は最高温度は、1000~1100℃であることが好ましい。熱処理の際の酸素分圧は、焼成時の還元雰囲気よりも高い酸素分圧であることが好ましく、10-2Pa~1Paであることがより好ましい。このようにして得られた焼結体に、例えば、バレル研磨、及びサンドブラスト等にて端面研磨を施すことが好ましい。
【0087】
電極形成工程では、焼結体の側面上に、端子電極用ペーストを焼きつけて端子電極を形成することにより、積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0088】
本実施形態のセラミック部品の製造方法では、上述のセラミック部品シートを用いているため、得られるセラミック部品、すなわち積層セラミックコンデンサのピンホールの発生を十分に抑制することができる。このため、高い歩留まりで積層セラミックコンデンサを形成することができる。
【0089】
図3は、セラミック部品の一例を示す模式断面図である。図3に示す積層セラミックコンデンサ100は、内装部40と、この内装部40を積層方向に挟む一対の外装部50とを備えている。本実施形態の積層セラミックコンデンサ100は、側面に端子電極60を有している。
【0090】
内装部40は、複数(本実施形態では13層)のセラミック層42と、複数(本実施形態では12層)の内部電極層44とを有している。セラミック層42と内部電極層44とは、交互に積層されている。内部電極層44は、端子電極60と電気的に接続されている。
【0091】
外装部50は、セラミック層により形成されている。このセラミック層は、外装用グリーンシートから形成されるものであり、例えばセラミック層42と同様の成分を含有する。
【0092】
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例
【0093】
以下、実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明する。ただし、本開示は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0094】
(実施例1)
反応容器に、(A)成分として下記一般式(1)において、mが10~100であり、R及びRがプロピル基である、シリコーン樹脂を0.5質量部、(B)成分としてトリメチロールプロパントリアクリレートを85質量部、(C)成分としてアクリロイル基を有するアクリルシリコーングラフトポリマーを15質量部、並びに溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを20質量部、及びメチルエチルケトン(MEK)とイソプロピルアルコール(IPA)の混合溶液(MEKとIPAを体積比で、1対1で混合した溶液)を400質量部測り取り、撹拌混合することによって無色透明の溶液を得た。
【0095】
【化3】
【0096】
上記溶液に、光重合開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンを2.5質量部加えて塗布液(スラリー)を調製した。バーコーターを用いて、調製した塗布液を2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材フィルム、厚み:38μm)に塗工し、加熱温度80℃の熱風で30秒間乾燥することで溶剤を蒸発させ感光層をPETフィルム上に形成した。形成された感光層に対して、酸素濃度100ppmの窒素雰囲気下にて紫外線を照射して、厚さ1016nmのはく離層を有するはく離フィルムを得た。なお、紫外線の照射は、積算光量を250mJ/cmとした。また、はく離層の厚さは分光光度計(日本分光株式会社製、商品名:V-670)を用いて測定した。
【0097】
上述の方法によって得られたはく離フィルムに対して、以下に示す方法に従って、はく離層に対するXPS測定、外観、及びはく離性の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
【0098】
<XPS測定(X線光電子分光法によるはく離層の元素分布測定、深さ方向の解析)>
得られたはく離フィルムのはく離層に対して、XPS測定(深さ方向分析)を行った。より具体的には、XPS測定によるはく離層の表面の組成分析と、アルゴンイオンを用いたスパッタによるはく離層の表面のエッチングとを併用して、はく離層の内部を徐々に露出させながら各表面における組成分析を行った。
【0099】
上述の溶液に代えて、ポリジメチルシロキサンをトルエン、MEK及びIPAの混合溶媒に溶解させた溶液を用いて、実施例1と同様にしてPETフィルム上にはく離層を形成し、XPS測定(深さ方向分析)を行った。ポリジメチルシロキサンのみを用いた例では、深さ方向に依存せず、ケイ素のピーク強度は30000(平均値)であった。
【0100】
図4は、XPS測定によるはく離層の深さ方向解析の結果を示すグラフである。当該グラフにおいて、縦軸はケイ素原子のピーク強度(ポリジメチルシロキサンからなるはく離層における測定値を基準とした値に換算した値)を示し、横軸ははく離層表面からの深さ(エッチング時間をはく離層表面からの深さに換算した値)を示す。すなわち、当該グラフは、はく離層の深さ方向に沿ったケイ素原子の分布を示している。なお、図4において、実施例及び参考例の結果は実線で、比較例の結果は破線で示している。
【0101】
<微小粗さSpの評価>
得られたはく離フィルムにおけるはく離層の微小粗さSpは、はく離層の基材フィルムとは反対側の表面(はく離面となる面)に対して、JIS B 0601:2013に記載の方法に準拠して、株式会社菱化システムのMicromap System(光学干渉式三次元非接触表面形状測定システム)を用いて測定を行い決定した。
【0102】
<外観の評価>
得られたはく離フィルムにおけるはく離層の外観を目視観察し、下記のA~Dの基準で評価した。
A:20cm×20cmの領域中に、欠陥が観測されず、鏡面状となっている。
B:20cm×20cmの領域中に、観測される欠陥の数が5つ以下であり、該欠陥の周囲に干渉縞が生じている(厚さの変動を伴っている)。
C:20cm×20cmの領域中に、観測される欠陥の数が5つ以上ある、又は欠陥の数を数えるのが困難であり且つ光沢が無い。
D:20cm×20cmの領域中に、観測される欠陥の数が10以上であり、且つ観測される欠陥の少なくとも一つの径が1mm以上である。
【0103】
参考として、実施例3及び比較例6で調製したはく離フィルムの外観を撮影した写真を図5に示す。図5の(a)は実施例3で調製したはく離フィルムの外観を示し、図5の(b)は比較例6で調製したはく離フィルムの外観を示している。図5の(a)に示されるとおり、実施例3で調製された剥離フィルムにおいては、蛍光灯の剥離フィルムへの映り込みを観測して、はく離層の表面に欠陥が観測されず、鏡面状となっていることが確認された。一方、比較例6で調製されたはく離フィルムにおいては、図5の(b)に示されるとおり、剥離フィルムに映り込んだ蛍光灯の像が明瞭ではなく、はく離層の表面に無数の欠陥が観測され、外観に劣るものであることが確認された。
【0104】
<はく離性の評価>
得られたはく離フィルムにおけるはく離層のはく離性を、ISO29862:2007(JIS Z 0237:2009)に記載された「はく離ライナーをテープ粘着面に対して引きはがす粘着力試験方法」180°はく離に準拠して下記のとおり測定を行った。測定に際しては、はく離試験機(株式会社島津製作所製、製品名:オートグラフ AG-X(ロードセル SBL-10N、荷重:10N))を用いた。
【0105】
まず、洗浄された板ガラス上に、得られたはく離フィルムを基材フィルムが接するように配置した。次に、1インチ幅の粘着テープ(日東電工株式会社製、商品名:31B)の粘着面が、はく離フィルムのはく離層に接するように、ゴムローラーを用いて空気が入らないようにして接着した。接着した後、はく離フィルムの基材フィルム側を、はく離試験機の試験版に張り付けた。つかみ代として粘着テープを180°折り曲げた状態で、上方に向かってロードセルに接続されたつかみ冶具に接続した。粘着テープをはく離フィルムに接着してから1分間が経過したところで、負荷速度300mm/分で粘着テープを引き上げる際に、ロードセルにて検知される荷重の平均値を得た。得られた平均値を10mm幅の粘着テープを用いた場合に換算することで、はく離フィルムのはく離性とした。
【0106】
(実施例2~4,実施例6~7,実施例12、参考例1~6、比較例1~7)
表1に示すとおりに原料及び仕込み比(質量比)を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、はく離フィルムを得た。得られたはく離フィルムについて、はく離層の厚さ、はく離層に対するXPS測定、外観、及びはく離性の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1中、(A)成分、(B)成分及び(C)成分は以下の化合物を用いた。
(A)成分:反応性官能基を有するシリコーン樹脂
a1:両末端にアクリロイル基を有するジメチルポリシロキサン(式(X)で示す化合物)
a2:側鎖にアクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(ビックケミー・株式会社製、商品名:BYK-3500)
(B)成分:反応性官能基を有する(メタ)アクリレート
b1:トリメチロールプロパントリアクリレート
b2:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(C)成分:反応性官能基を有するアクリルシリコーングラフトポリマー
アクリロイル基を有するアクリルシリコーングラフトポリマー
【産業上の利用可能性】
【0109】
本開示によれば、はく離性に優れると共に、十分な平滑性を有するはく離フィルム及びその製造方法を提供することができる。本開示によればまた、上記のようなはく離フィルムを有し、薄膜のグリーンシートを製造できるセラミック部品シート及びその製造方法を提供することができる。本開示によれば更に、上記のようなはく離フィルムを用いる積層セラミックコンデンサの製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0110】
10…はく離フィルム、12…基材フィルム、14…はく離層、14a…表面(はく離面)、20…セラミック部品シート、22…セラミックグリーンシート、22a…表面、24…電極グリーンシート、26…グリーンシート、40…内装部、42…セラミック層、44…内部電極層、50…外装部、60…端子電極、100…積層セラミックコンデンサ。

図1
図2
図3
図4
図5