(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電子機器、デザイン提示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240214BHJP
A45D 29/00 20060101ALI20240214BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B41J2/175 301
A45D29/00
B41J2/21
(21)【出願番号】P 2021167468
(22)【出願日】2021-10-12
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入江 保
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-189186(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0370244(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0065503(KR,A)
【文献】特開2003-3383(JP,A)
【文献】特開2019-147392(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0020787(US,A1)
【文献】米国特許第6717699(US,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0135746(KR,A)
【文献】特開2015-177855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
A45D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1インク及び前記第1インクとは異なる色の第2インクを印刷する印刷ヘッドにおける前記第1インク及び前記第2インクの残量の割合に関する情報を含むインクに関する情報を取得する情報取得手段と、
前記第1インクまたは前記第2インクが使用される割合を示す配色情報を含んだ複数種類のデザインデータを記憶する記憶手段と、
前記インクに関する情報
と前記配色情報とに基づいて、
前記複数種類のデザインデータの中から選択したデザインデータを提示する提示手段と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記提示手段は、前記インクの残量の割合に関する情報に基づいてデザインに優先的に用いられる色を特定し、特定された色に基づいて
前記デザインデータを提示することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記インクの残量の割合に関して予め閾値が設定され、
前記提示手段は、残量が前記閾値未満のインクがある場合に、当該インク以外の色のインクを前記デザインに優先的に用いられる色と特定することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
情報取得手段と提示手段と
記憶手段とを有する電子機器が実行するデザイン提示方法であって、
前記情報取得手段が、第1インク及び前記第1インクとは異なる色の第2インクを印刷する印刷ヘッドにおける前記第1インク及び前記第2インクの残量の割合に関する情報を含むインクに関する情報を取得し、
前記第1インクまたは前記第2インクが使用される割合を示す配色情報を含んだ複数種類のデザインデータを前記記憶手段から取得し、
取得された前記インクに関する情報
と前記配色情報とに基づいて、前記提示手段が
前記複数種類のデザインデータの中から選択したデザインデータを提示する、
ことを特徴とするデザイン提示方法。
【請求項5】
コンピュータに、
第1インク及び前記第1インクとは異なる色の第2インクを印刷する印刷ヘッドにおける前記第1インク及び前記第2インクの残量の割合に関する情報を含むインクに関する情報を取得する情報取得機能と、
前記第1インクまたは前記第2インクが使用される割合を示す配色情報を含んだ複数種類のデザインデータを記憶する記憶機能と、
取得された前記インクに関する情報
と前記配色情報とに基づいて、
前記複数種類のデザインデータの中から選択したデザインデータを提示する提示機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、デザイン提示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、爪等にデザインの印刷を行う印刷装置(ネイルプリント装置)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような印刷装置では、各色のインクを用いることで、様々なデザインを印刷して楽しむことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、デザインに関するユーザの嗜好によっては、複数の色のインクのうち、特定の色のインクが多く消費される場合等がある。このような場合には、複数の色のインクの間で残量に偏りが生じる。
例えば、1つのカートリッジが各色のインクを貯留する複数のインク貯留部を一体的に含んでいる場合には、複数の色のインクのうち1色でもインクの残量が印刷不可能な水準まで減少すると、他の色のインクの残量が印刷可能な水準であっても、カートリッジ全体が使用不可能となり、交換を余儀なくされることがあった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を鑑みてなされたものであり、カートリッジの使用寿命を延ばすことのできる電子機器、デザイン提示方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の電子機器は、
第1インク及び前記第1インクとは異なる色の第2インクを印刷する印刷ヘッドにおける前記第1インク及び前記第2インクの残量の割合に関する情報を含むインクに関する情報を取得する情報取得手段と、
前記第1インクまたは前記第2インクが使用される割合を示す配色情報を含んだ複数種類のデザインデータを記憶する記憶手段と、
前記インクに関する情報と前記配色情報とに基づいて、前記複数種類のデザインデータの中から選択したデザインデータを提示する提示手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カートリッジの使用寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態において互いに連携する印刷装置、端末装置、データ管理サーバの概略の制御構成を示す要部ブロック図である。
【
図2】実施形態における印刷装置の要部外観構成を示す斜視図である。
【
図3】印刷装置の内部要部構成を示す平面図であり、(a)は、印刷装置の内部を上から見た図であり、(b)は、印刷装置の内部を装置背面側から見た図である。
【
図4】データ管理サーバに送信される印刷関連情報の構成例を示す図である。
【
図5】印刷装置に送信される印刷データの構成例を示す図である。
【
図6】印刷元データのイメージの一例を示す図である。
【
図8】ネイルデザインリストの一例を示す図である。
【
図9】本実施形態において連携する印刷装置、端末装置、データ管理サーバにより実現される印刷制御処理を示すフローチャートである。
【
図10】本実施形態において連携する印刷装置、端末装置、データ管理サーバにより実現されるデザイン提示処理及び印刷制御処理を示すフローチャートである。
【
図11】本実施形態におけるネイルデザインリストの作成処理を示すフローチャートである。
【
図12】印刷回数とインク残量の推移との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から
図12を参照しつつ、本発明に係る電子機器、デザイン提示方法及びプログラムの一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
例えば以下の実施形態では、互いに連携する印刷装置1、端末装置7、データ管理サーバ8のうち、データ管理サーバ8がデザイン提示処理を行う電子機器として機能する場合を例に説明するが、電子機器はデータ管理サーバ8に限定されない。
また以下では、印刷装置1が手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷するネイルプリント装置である場合を例に説明するが、本発明における印刷装置の印刷対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪等を印刷対象としてもよい。また、ネイルチップや各種アクセサリの表面等、爪以外のものを印刷対象としてもよい。
【0010】
[全体構成]
図1は、本実施形態における印刷装置、及びこれと連携する端末装置、データ管理サーバの概略の制御構成を示す要部ブロック図である。
なお
図1では、印刷装置1、端末装置7、データ管理サーバ8がそれぞれ1台ずつあるように図示しているが、複数の印刷装置1,複数の端末装置7が1つのデータ管理サーバ8と接続されてもよい。例えば、1つの店舗内に複数台の印刷装置1があるような場合や複数ある系列の店舗等にそれぞれ印刷装置1があるような場合、全ての印刷装置1が1つのデータ管理サーバ8で管理されていてもよい。
なお、本実施形態の印刷装置1には、それぞれ固有の識別標識である装置IDが付与されている。
【0011】
以下の実施形態における印刷装置1、端末装置7、データ管理サーバ8は、印刷装置1による印刷モードとして、「通常印刷モード」と「エコモード」とを備え、両者を適宜切り替えて実現できるように構成されている。
「通常印刷モード」とは、インク残量等を考慮せずにユーザが所望するネイルデザインの印刷を行うモードである。これに対して「エコモード」とは、エコロジー(ecology)に配慮して、できるだけカートリッジ41内のインクを無駄なく使い切ることを目指すモードであり、後述するように、印刷装置1にセットされているカートリッジ41のインク残量(インク残量の割合)に応じてユーザに提示(提案)するネイルデザインを切り替える。
なお、印刷モードは、「通常印刷モード」、「エコモード」に限定されず、その他のモードが用意されていてもよい。
【0012】
「通常印刷モード」と「エコモード」との切り替えは、例えば印刷装置1や端末装置7等に設けられた後述の操作部22、73等からモード切替指示を入力することで行われる。なお、いずれかのモードがデフォルトで設定されていてもよい。また、インク残量が少なくなっていることを検出すると自動的に「通常印刷モード」から「エコモード」に切り替わり、ユーザに提示(提案)されるネイルデザインが制限を受けるような設定となっていてもよい。
なお、以下の実施形態では、印刷装置1、端末装置7、データ管理サーバ8が連携して動作することにより、「エコモード」によってネイルデザインの印刷を行う場合を中心に説明する。
【0013】
[印刷装置の構成]
図2は、本実施形態における印刷装置(ネイルプリント装置)の要部外観構成を示す斜視図である。なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後は、
図2に示した向きをいうものとする。また、X方向、Y方向、Z方向は、
図2に示した方向をいうものとする。
図3(a)及び
図3(b)は、印刷装置の内部要部構成を示す平面図である。
【0014】
図2に示すように、本実施形態の印刷装置1は、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。
印刷装置1の筐体2の前面側(
図2においてY方向の手前側)であって装置の左右方向(
図2におけるX方向)のほぼ中央部には、開口部21が形成されている。開口部21は、印刷対象となる爪Tに対応する指U(
図3(a)及び
図3(b)参照)を装置内に挿入する指挿入口であり、指Uを出し入れ可能な程度の幅及び高さを有している。
本実施形態では、筐体2の内部であって開口部21の内側に、印刷対象となる爪Tに対応する指Uを配置する指配置部3が設けられている。
【0015】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、指配置部3の下側面は、開口部21から挿入された指Uの腹部分を受ける指受け部31となっている。なお、指受け部31には、例えば樹脂等の柔軟性を有する材料で形成されたクッション部材が設けられていてもよい。
指配置部3の上方(少なくとも
図2におけるY方向の奥側の上方)は開放されており、指配置部3内に挿入された指Uの爪Tの表面が露出するようになっている。
本実施形態では、指配置部3の手前側(
図2におけるY方向の手前側)に指Uの上方を囲うような枠状部32が設けられている。指配置部3に配置された指Uの上側は、この枠状部32の天面に突き当てられるように構成されている。これにより、枠状部32の天面が指Uの上方向の位置を規制する指押えとして機能し、指Uが上方向に押し上げられすぎるのを防ぎ、指Uの高さ方向を位置決めすることができる。
指配置部3の高さや幅、奥行き方向の長さは、指Uを安定して配置できる程度の高さや幅等であればよく、具体的にどの程度とするかは適宜設定される。
なお、指配置部3の少なくとも一部(例えば指Uを受ける指受け部31)は、上下方向に可動するように構成されていてもよい。
【0016】
筐体2の上面(天板)には操作部22が設置されている。
操作部22は、ユーザが各種入力を行うものである。
操作部22は、例えば、印刷装置1の電源をON/OFFする電源スイッチ釦、動作を停止させる停止スイッチ釦、印刷開始を指示する印刷開始釦等、各種の入力を行うための操作釦で構成されている。
また、操作部22は印刷装置1、端末装置7、データ管理サーバ8が連携することによって実現される印刷制御処理の印刷モードを「通常印刷モード」と「エコモード」との間で切り替えられるようになっており、操作部22はモード切替指示を入力する、モード切替手段として機能してもよい。
操作部22が操作されると操作に応じた操作信号が制御装置10の制御部11に出力され、制御部11が操作信号に従った制御を行い、印刷装置1の各部を動作させる。
【0017】
また筐体2の上面には、表示部23が配置されている。
表示部23は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機ELD)、その他のディスプレイ(フラットディスプレイ)を含んでいる。表示部23は、後述の制御部11から入力される表示信号に基づいて、ディスプレイに各種画像や情報を表示させる。
本実施形態の表示部23のディスプレイは、タッチパネルと一体的に構成されていてもよく、この場合にはタッチパネルが、ユーザによるタッチ操作を受け付け、各種入力を行う操作部22としても機能する。
【0018】
また
図1に示すように、印刷装置1は前述の操作部22、表示部23を備える他、印刷機構4、撮影部5、通信部25、及び制御装置10等を備えている。
【0019】
印刷機構4は、カートリッジ41を収容する収容部と、カートリッジ41を移動させる移動手段としてのX方向移動モータ45、Y方向移動モータ47(
図1参照)とを備え、カートリッジ41を用いて印刷を行う印刷手段である。
本実施形態においてカートリッジ41は、図示しないインク貯留部を内蔵するとともに、インク貯留部内のインクを微細な液滴として吐出させ、印刷対象面に印刷を施すインクジェット方式のインク吐出機構(図示せず)を一体的に備えている印刷ヘッドである。
【0020】
カートリッジ41における印刷対象面(本実施形態では、爪Tの表面)に対向する面には、インク吐出面が一体に形成されている。インク吐出面には、それぞれの色のインクを噴射する複数のノズルからなるノズルアレイの吐出口(ノズル口、インク吐出口、図示せず)が列状に形成されている。
カートリッジ41は、印刷制御部として機能する制御部11がインク吐出機構を制御することで、適宜所定のインクをノズル口から吐出させ、印刷を行うようになっている。
なお、印刷ヘッドとしてのカートリッジ41は、ここに例示したような構成のものに限定されない。例えば、カートリッジがインク貯留部のみを有し、印刷に使用される際には、別体として構成されるインク吐出機構と接続されるようになっていてもよい。また、カートリッジ41がインクを吐出させる構成等、印刷を行うための具体的な構成は特に限定されない。
【0021】
印刷ヘッドとしてのカートリッジ41は、第1インク及びこの第1インクとは異なる色の第2インクを吐出させる。印刷機構4が搭載するカートリッジ41における第1インク、第2インクの種類は特に限定されない。インクは2種類に限定されず、3種類以上であってもよい。
本実施形態の印刷機構4に設けられているカートリッジ41は、例えばシアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)の色インクに対応するインク貯留部を有しており、デザイン(ネイルデザイン)をカラー印刷するデザイン印刷用のカートリッジ41である。
【0022】
本実施形態のカートリッジ41は各色のインクを貯留する複数のインク貯留部を一体的に含んでいる。カートリッジ41内のインク残量は、後述するように、データ管理サーバ8において各色のインクごとに把握される。各色のインク残量は、初期状態(すなわち、使用開始前)のカートリッジ41における各色インクのインク貯留量から印刷において出力された各色のドット数分のインク量を差し引くことで求めることができる。この点、本実施形態では、各色の印刷ドット数が、複数種類の色のインク(「第1インク、第2インク…」としてのシアン、マゼンタ、イエローのインク)それぞれのインク残量の割合に関する情報として、端末装置7を介してデータ管理サーバ8に送信される。
そしてデータ管理サーバ8において、複数の色のインクのうち1色でもインクの残量が印刷不可能な水準(後述の「警告レベル」)になったと判断されると、その旨が印刷装置1や端末装置7に通知され、カートリッジ41を交換するよう促す警告表示が表示部23等に表示されるようになっている。
なお、カートリッジ41に貯留されているインクは、各色によって初期状態における貯留量が異なる場合も想定される。このような場合でも、インク残量の「割合」に関する情報を管理することで、各インクの減り具合を相対的に比較することが可能となる。
【0023】
なお、印刷機構4は上記のようなデザイン印刷用のカートリッジ41の他に、例えばデザイン印刷前に爪Tの上に白色等(白色若しくはこれに近いピンクやブルー等)の下地を形成する下地印刷用のカートリッジを備えていてもよい。下地印刷用のカートリッジは内部に下地用インクを貯留するインク貯留部を有している。
指Uの爪Tに印刷を行う場合に、デザイン用の色インクを用いてデザイン(ネイルデザイン)を印刷する前に下地用インクを爪Tに塗布することで、色インクの発色向上等を図ることができ、美しい仕上がりの印刷(ネイルプリント)を行うことができる。
【0024】
本実施形態ではカートリッジ41が装置の左右方向(X方向)及び前後方向(Y方向)に移動可能となっており、X方向移動モータ45はカートリッジ41をX方向に移動させるX方向移動機構450(
図3(a)及び
図3(b)参照)を構成し、Y方向移動モータ47はカートリッジ41をY方向に移動させるY方向移動機構470(
図3(a)参照)を構成する。X方向移動モータ45、Y方向移動モータ47は、例えばステッピングモータである。
また、印刷機構4は、図示しない位置検出センサ(原点センサやエンコーダセンサ等)を有しており、後述の制御部11は、センサからの出力情報に基づいてカートリッジ41の位置を正確に把握しつつ、カートリッジ41を適宜X方向,Y方向に移動させる制御を行う。
【0025】
さらに、本実施形態のカートリッジ41には、それぞれ固有のカートリッジIDが付与されており、印刷装置1におけるカートリッジ41の装着部分等には、カートリッジIDを読み取る読取り部48(
図1参照)を有している。
カートリッジIDは、個々のカートリッジ41を特定するための識別情報であり、例えばカートリッジ41の製造時等に個々のカートリッジ41に付与されたID(identification;識別番号)等である。カートリッジIDは、例えば、数字、アルファベット等の単独又は組み合わせによる記号のデータであり、カートリッジ41内のメモリチップに保存されている。読取り部48は、メモリチップに保存されている、カートリッジIDをエンコード化したデータをデコードして個々のカートリッジ41のカートリッジIDを読み取ることのできる機器等を備える。またカートリッジIDは、バーコードやQRコード(登録商標)等の形式で付与されてもよく、この場合、読取り部48は、これらを読み取ることのできるセンサ等を備える。なお、カートリッジ41に付与されるカートリッジIDはカートリッジ41を特定可能なものであればよく、その形式等は特に限定されない。そして、読取り部48としては、カートリッジ41に付与されるカートリッジIDに応じてこれを読み取ることのできるものが適用される。
【0026】
撮影部5は、カメラ51と、光源52とを備えている。
カメラ51は、指配置部3に配置された指Uの爪Tを撮影して、印刷対象である爪Tの画像を取得するものである。
また、光源52は、例えば白色LED等の照明灯である。
撮影部5のカメラ51は、印刷対象である爪Tや爪Tを含む指Uを撮影して図示しない爪画像を取得する。本実施形態では、カメラ51で取得された爪画像のデータが、例えば後述する外部装置である端末装置7に送られ、端末装置7の制御部71において爪画像から印刷領域である爪領域を画する爪輪郭が検出される。
【0027】
通信部25は、外部装置との間で通信する通信手段である。なお、本実施形態において「外部装置」とは、後述の端末装置7等である。
本実施形態では、撮影部5によって撮影された爪画像を印刷装置1から外部装置である端末装置7に送ったり、爪Tにデザイン(ネイルデザイン)を印刷するための印刷データ等を印刷装置1が端末装置7等から取得するようになっており、通信部25は、端末装置7等との間で情報の送受信を行う。なお外部装置は、端末装置7に限定されず、データ管理サーバ8等の各種装置であってもよい。
【0028】
印刷装置1と端末装置7等との間での通信は、例えば無線LAN等により行われる。なお、印刷装置1と端末装置7等との間での通信はこれに限定されず、いかなる方式によるものでもよい。例えば、インターネット等のネットワーク回線を使うものであってもよいし、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi等の近距離無線通信規格に基づく無線通信を行うものであってもよい。また、この通信は無線接続方式に限定されず、有線接続により両者間で各種データの送受信が可能な構成としてもよい。通信部25は通信することが想定される各種外部装置の通信方式、通信規格に対応するアンテナチップ等を備えている。
【0029】
印刷装置1に搭載される制御装置10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する制御部11と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)を有する記憶部12とを備えるコンピュータである。
記憶部12のROM等には、印刷装置1を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
ROM等に格納された各種プログラムを制御部11がRAMの作業領域に展開して実行することによって、印刷装置1の各部の動作を統合的に制御する。
すなわち、制御部11はプログラム(例えば印刷処理プログラム等)との協働により、印刷装置1が印刷処理等を行うための各種機能を実現する。
本実施形態において制御部11は、主として表示部23の動作を制御する表示制御手段、印刷機構4各部の動作を制御する印刷制御手段、撮影部5各部の動作を制御する撮影制御手段、通信部25の動作を制御する通信制御手段等として機能する。
【0030】
表示制御手段としての制御部11は、表示部23のディスプレイに表示させる表示データを生成し、表示部23に出力する。例えば制御部11は、撮影部5により取得された爪画像を表示させるための画像データや、デザイン(ネイルデザイン)等を表示部23に表示させるための表示データ、各種メッセージ画面、案内画面、エラー表示画面等を表示部23のディスプレイに表示させる表示データ等を生成する。
【0031】
印刷制御手段としての制御部11は、印刷機構4の動作を制御する。具体的には印刷データにしたがってインク吐出機構を制御し、適宜インクを吐出させる。また、印刷制御手段としての制御部11は、位置検出センサからの出力に応じてカートリッジ41の位置を把握し、X方向移動モータ45、Y方向移動モータ47を動作させて適宜カートリッジ41をXY方向に移動させる。
【0032】
撮影制御手段としての制御部11は、撮影部5のカメラ51及び光源52の動作を制御して、光源52によって爪Tやその周辺を照明させ、カメラ51によって爪画像等を取得させる。
【0033】
通信制御手段としての制御部11は、通信部25を制御して端末装置7の通信部75との間で通信を行わせ、装置に装着されたカートリッジ41の識別情報や爪画像のデータ等を端末装置7に対して送信させるとともに、印刷データや各種の動作指示等を端末装置7から受信させる。
また、本実施形態では、印刷開始の指示等、各種の指示を端末装置7側から受信することで印刷装置1が動作するようになっており、印刷装置1の制御部11は、これらの指示を、通信部25を介して受信する。端末装置7等から指示を受信すると、制御部11は、指示にしたがった動作を装置各部に行わせる。
【0034】
なお、デザイン(ネイルデザイン)の選択や、爪画像からの爪輪郭の検出、印刷データの生成等を端末装置7等の外部装置で行った場合には、選択されたデザインのデータや、検出された爪輪郭、生成された印刷データ等を、端末装置7等の外部装置から受信するように制御部11が通信部25を制御する。
なお、本実施形態のネイルデザイン(デザインのデータ)には、配色に関する情報も含まれている。すなわち、同じ模様・柄であっても配色違いのデザインは異なるデザイン(ネイルデザイン)として扱われる。
【0035】
[端末装置の構成]
端末装置7は、例えば、スマートフォン、タブレット型の端末装置(以下「タブレットPC(Personal Computer)」、携帯電話機等の携帯型の端末装置である。なお、端末装置7はこうした携帯型の端末装置に限定されず、例えばノートPC、デスクトップPC等であってもよい。
【0036】
図1に示すように、端末装置7は、制御装置70、操作部73、表示部74、通信部75等を備えている。
【0037】
操作部73は、ユーザの操作に応じて各種の入力・設定等を行うことができるようになっており、例えば後述する表示部74の図示しないディスプレイに一体的に設けられたタッチパネルである。
本実施形態では、印刷装置1、端末装置7、データ管理サーバ8が連携することで実現される印刷制御処理の印刷モードを切り替えるモード切替指示を入力する、モード切替手段として操作部73が機能してもよい。
操作部73が操作されると、当該操作に対応する入力信号が制御部71に送信され、制御部71が操作信号に従った制御を行う。
【0038】
表示部74は、例えば液晶ディスプレイ等のディスプレイ(フラットディスプレイ)を含んでおり、制御部71から入力される表示信号に基づいて、ディスプレイに各種画像や情報、メッセージ画面等を表示させる。
本実施形態の表示部74のディスプレイは、タッチパネルと一体的に構成されており、タッチパネルには、制御部71の制御にしたがって各種の操作画面が表示される。ユーザはタッチパネルへのタッチ操作によって各種の入力・設定等の操作を行うことができ、タッチパネルが、ユーザによるタッチ操作を受け付け、各種入力を行う操作部73として機能する。なお、各種の入力・設定等の操作を行う操作部73はタッチパネルである場合に限定されない。
【0039】
また本実施形態では、端末装置7がネットワークNに接続可能となっており、ネットワーク接続可能な通信部75を有している。
本実施形態において、後述するデータ管理サーバ8に対して「インクに関する情報」を含む印刷関連情報(
図4参照)を送信する。
また本実施形態では、通信部75がデータ管理サーバ8からネイルデザインのリスト(ネイルデザインリスト、
図8参照)の送信を受け付けて、ネイルデザイン(単に「デザイン」ともいう。)の提示を受ける。
【0040】
印刷モードが「通常印刷モード」である場合には、ユーザID等によって特定されるユーザが過去に選択したネイルデザイン等を優先的にリストアップしたネイルデザインリストがデータ管理サーバ8から送信される。
これに対して印刷モードが「エコモード」である場合には、インクの残量等を考慮して推奨されるネイルデザインの一覧データ等がネイルデザインリストとしてデータ管理サーバ8から送信される。
なお、ネイルデザインリストは、複数のネイルデザインを示すものにとどまらず、1つのネイルデザインを提示するものでもよい。
ネイルデザインはデータ管理サーバ82のネイルデザインDB823に記憶されており、端末装置7からデータ管理サーバ8に対して配信要求すると、適宜ネイルデザインのデータ(ネイルデザインの印刷元データPD)が通信部75を介して配信される。
【0041】
さらに端末装置7は、印刷装置1等の外部装置から各種情報を受け付けるとともに、爪Tに印刷するデザイン(ネイルデザイン)のデータ(印刷データ)等を印刷装置1に対して出力するようになっている。印刷装置1等との間では、例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fi等の近距離無線通信規格に基づく無線通信、無線LAN等による通信、有線接続による通信によって、データの送受信を行うようになっており、端末装置7は、こうした通信に対応する通信部75を備えている。
なお、具体的な通信の方式等は特に限定されない。いくつかの通信方式の中から適宜選択できてもよい。
【0042】
制御装置70は、図示しないCPU等のプロセッサを有する制御部71と、ROM及びRAM等(いずれも図示せず)を有する記憶部72等を備えるコンピュータである。記憶部72には、端末装置7の各部を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
【0043】
制御部71は、記憶部72に記憶されているシステムプログラム及びアプリケーションプログラムのうち、指定されたプログラムを読み出して、RAMのワークエリアに展開し、当該プログラムに従って各種処理を実行して、端末装置7の各部を制御する。
特に本実施形態では、記憶部72にネイルプリントアプリケーションプログラム721(以下、「ネイルプリントAP」とする。)が格納されており、制御部71は、こうしたプログラムとの協働により、印刷装置1を用いたネイルプリントに関する各種機能を実現する。
【0044】
具体的には制御部71は、表示部74の動作を制御する表示制御部、通信部75の動作を制御する通信制御部等として機能する。
特に本実施形態では、印刷装置1による印刷が終了すると、通信制御部としての制御部71が、当該印刷についての「印刷関連情報」を端末装置7からデータ管理サーバ8に送信するようになっている。
【0045】
図4は、印刷関連情報の一例を示す図である。
「印刷関連情報」には、例えば
図4に示すように、ユーザ固有の識別標識であるユーザID、装置ID、カートリッジID、デザイン(ネイルデザイン)固有の識別標識であるデザインID及び各デザインを印刷する爪Tの指種類(すなわち、右手、左手の別や、親指、人差し指、中指、薬指、小指の種別)が含まれる。さらに、「印刷関連情報」は、印刷幅、印刷長、シアンの印刷ドット数、マゼンタの印刷ドット数、イエローの印刷ドット数、非印刷ドット数の情報等を含んでいる。なお「印刷関連情報」はここに例示した以外の情報を含んでいてもよいし、これらのうちの一部を含まなくてもよい。
【0046】
なお、ここで「非印刷ドット数」とは、実際には色インクを吐出させない非印刷ドットの総数である。
ネイルデザインのデータ(
図6に示す印刷元データPD、印刷元データPDをユーザの爪Tの形状に合わせ込んで生成される印刷データ)は、印刷幅×印刷長で表現される矩形のデータであり、このうち、爪Tの領域に相当する爪枠内の領域が印刷対象領域ArTであって、爪枠外の領域が非対象領域ArNである。
非対象領域ArNは、ネイルデザインのデータ(印刷元データPD等)に含まれるが、印刷対象とはならない領域であるため、色インクの印刷ドットが割り当てられていない。このような非対象領域ArNには、非印刷ドットが割り当てられる。
【0047】
また印刷対象領域ArT内であっても、ネイルデザインによっては、デザインが印刷されるデザイン領域Ed1、Ed2とデザインが印刷されない非デザイン領域Ndとがある。例えば
図6に示す例のように、爪Tの先端にだけデザインが配置されているフレンチネイルの場合には、爪先以外は非デザイン領域Ndとなる。また爪Tの一部分にワンポイント柄を印刷するようなデザインの場合には、ワンポイント柄以外の部分が非デザイン領域Ndとなる。こうした非デザイン領域Ndにも非印刷ドットが割り当てられる。
さらに、デザイン領域Ed1、Ed2内でも濃淡のある色を表現するために、多くのドットを重ねる部分と、ドット間に敢えて隙間を残す部分とがある場合もある。例えば、ネイルデザインのデータ(印刷元データPD等)について指定されているドット数が1箇所に4ドットずつ重ね打ちする前提である場合、比較的濃い色合いで印刷されるデザイン領域Ed1では、重ね打ちされる4ドットすべてに色インクのドットが割り当てられているが、比較的淡い色合いで印刷されるデザイン領域Ed2では、重ね打ちされる4ドットのうち、1ドットか2ドットには色インクのドットが割り当てられ、残りのドットには実際にはインクを吐出させない非印刷ドットが割り当てられる。
【0048】
また、制御部71は、印刷装置1から送信された爪画像を取得して、この爪画像に基づいて爪Tに関する各種情報を取得する爪情報取得手段として機能する。例えば制御部71は、爪認識(すなわち爪Tの領域の検出)を行う。爪画像から爪Tの領域(爪領域)を認識(検出)する具体的な手法は特に限定されない。例えば制御部71は、爪画像を画像解析することにより、輝度等の違いから爪領域を画する爪輪郭を検出する。また、爪画像から爪Tの曲率レベルや傾斜レベル(爪幅方向の曲がり具合や爪Tの傾き具合)を検出できる場合には、これらについても検出する。
さらに、本実施形態の制御部71は、ネイルデザインの印刷元データPD(
図6参照)を、爪画像から認識されたユーザの爪輪郭に合わせ込んで、印刷装置1において印刷を行うための印刷データを生成する印刷データ生成手段としても機能する。なお、爪画像から爪Tの曲率レベルや傾斜レベルが検出された場合には、印刷データ生成手段としての制御部71は、これらに応じた曲面補正等、必要な補正も行って印刷データを生成する。
【0049】
図5は、端末装置において生成される印刷データの構成例である。
印刷データは、印刷装置1が印刷処理を行うためのデータであり、端末装置7から印刷装置1に対して送信される。印刷装置1に送られる時点において、印刷データは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)各色のインクのドットパターン化されたデータである。
図5に例示したように、印刷データは例えばX方向及びY方向における印刷開始位置となるオフセットの座標値、印刷幅、印刷長、爪Tの横方向(幅方向)の曲面の程度を示す曲率レベル、爪Tの長さ方向に上向きあるいは下向きの傾斜を示す傾斜レベルの情報を含んでいる。印刷データは、さらにシアンの出力(印刷)ドット数、マゼンタの出力(印刷)ドット数、イエローの出力(印刷)ドット数の情報を含む。そして印刷データはCMY印刷データ長、ビットパターン化された印刷されるCMYの出力データ等で構成されている。
なお、印刷データの構成は、図示例に限定されない。
【0050】
[データ管理サーバの構成]
データ管理サーバ8は、ネットワークNに接続されている端末装置7を介して印刷装置1を管理するサーバであり、本実施形態における電子機器である。
印刷モードとして「エコモード」での印刷を実行する場合には、データ管理サーバ8が印刷装置1におけるカートリッジ41のインク残量等の状況を把握し、インク残量(インク残量の割合)に応じたネイルデザインをユーザに提示(提案)する。具体的には、インク残量(インク残量の割合)に応じたネイルデザインをピックアップしたネイルデザインリストを端末装置7等に送信する。端末装置7では、表示部74において送信されたリストに基づく一覧表示等を行うことで、ユーザにネイルデザインの候補を提示する。
データ管理サーバ8がインク残量等の状況を管理する印刷装置1としては、例えば系列又は互いに連携する店舗(系列のネイルサロンや美容サロン等)に設置された印刷装置が想定されるが、これに限定されるものではない。
【0051】
図1に示すように、データ管理サーバ8は、制御装置80、通信部85等を備えている。
制御装置80は、図示しないCPU等のプロセッサを有する制御部81と、ROM及びRAM等(いずれも図示せず)を有する記憶部82等を備えるコンピュータである。
記憶部82には、制御部81がデータ管理処理等を行うための各種プログラムを記憶するプログラム記憶領域821が設けられており、また処理を行うのに必要な各種情報が記憶されている。
また記憶部82は、印刷管理情報データベース(
図1において「印刷管理情報DB822」とする。)、ネイルデザインデータベース(
図1において「ネイルデザインDB823」とする。)を含んでいる。
【0052】
また本実施形態では、印刷装置1と連携する端末装置7からデータ管理サーバ8に対して「印刷関連情報」(
図4参照)が送られるようになっており、データ管理サーバ8では、この「印刷関連情報」の全部又は一部を、カートリッジ41のインク残量等の状況を管理する印刷装置1に関する「印刷管理情報」として印刷管理情報DB822に記憶させる。
ここで「印刷管理情報」とは、例えば、装置IDやカートリッジID、カートリッジIDと対応付けられた「インクに関する情報」等を含む情報である。
「インクに関する情報」は、カートリッジ41に貯留されている複数種類の色のインク(「第1インク、第2インク…」としてのシアン、マゼンタ、イエローのインク)それぞれの、「インク残量の割合に関する情報」を含んでいる。「インク残量の割合に関する情報」はどのようなものでもよく、本実施形態ではインク残量を算出、推定することのできる情報であり、例えば印刷で使用されたシアンの総印刷ドット数、マゼンタの総印刷ドット数、イエローの総印刷ドット数の情報である。なお、カートリッジ41内に貯留されているインクの残量そのものを検出できる場合にはインク残量自体の情報であってもよい。
総印刷ドット数は、例えばカートリッジIDによって特定されるカートリッジ41における各インクの累積の印刷ドット数であり、インクの残量は、例えば初期状態のカートリッジ41におけるインク貯留量から、総印刷ドット数に相当するインク量を減ずることで算出される。
【0053】
データ管理サーバの制御部81は、端末装置7からデータ管理サーバ8に「印刷関連情報」が送信されると、適宜印刷管理情報DB822内の情報を更新する。すなわち、カートリッジ41を用いて新たに実行された印刷処理において、カートリッジ41内の各色のインクの総印刷ドット数(累積された印刷ドット数)が増加した場合には、当該カートリッジ41のカートリッジIDと対応付けられた各色のインクのインク残量を算出し直して最新の情報に書き換える。
【0054】
ネイルデザインDB823には、複数のネイルデザインのデータが記憶されている。ネイルデザインDB823に記憶されているネイルデザインのデータは適宜新たなものと入れ替えられたり追加されてもよい。
データ管理サーバの制御部81は、端末装置7等から配信要求があると、要求されたネイルデザインのデータ(印刷元データPD)をネイルデザインDB823から抽出し、適宜要求先の装置に配信(送信)する。
図7は、ネイルデザインの配信を受けた端末装置の表示部や端末装置と連携する印刷装置の表示部に表示されるネイルデザインの一例を示す図である。
端末装置7の表示部74や印刷装置1の表示部23にネイルデザインを表示させた場合、例えば
図7に示すように、デザインのタイトル名(
図7に示す例では、「TITLE:Spring-001」)、左手用のデザイン5種類、右手用のデザイン5種類が並んで表示される。なお、図示例ではすべて同じデザインとなっているが、各手、各指で異なるデザインとなっていてもよい。
【0055】
印刷元データPDは、標準的な爪枠(例えば縦長の楕円形等)に合わせてデザイン素材(例えば
図6に示すフレンチネイルの例では2本のライン、
図7に示すワンポイント柄の例では花柄)を配置した形で作成されている。
なお、前述のように、本実施形態のネイルデザイン(デザインのデータ)には、配色に関する情報(「配色情報」)も含まれている。すなわち、同じ模様・柄であっても配色違いのデザインは異なるデザイン(ネイルデザイン)とされ、後述のデザイン提示処理においては、インク残量(割合)に応じて、配色のみを変えた色違いのデザインを提示することが可能となっている。
【0056】
ここで「配色情報」は、標準的な爪Tの曲率レベルと傾斜レベルで標準的な爪枠を囲む矩形の印刷元データPDに対して印刷データを形成した場合におけるシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、それぞれの印刷ドット数の割合を示している。なお、「その他」は、各色のインクの印刷ドットが割り当てられない部分に割り当てられている非印刷ドット数の割合である。
図6について前述したように、標準的な爪枠の外の領域(
図6における非対象領域ArN)には、非印刷ドットのみが割り当てられている。また、標準的な爪枠内の領域(
図6における印刷対象領域ArT)でも非デザイン領域Ndには、非印刷ドットのみが割り当てられる。さらに、濃色系の配色のデザイン領域Ed1では非印刷ドットの割合が低く、色インクのドットが多く出力される。これに対して淡色系の配色のデザイン領域Ed2では色インクの印刷ドット数は少なく、非印刷ドットの割合が高くなる。
【0057】
後述のように、データ管理サーバ8の制御部81は、各ネイルデザインのデータ(印刷元データPD)に含まれている「配色情報」に基づいて、「インクに関する情報」としての各インクのインク残量(インク残量の割合)に応じたネイルデザインの提示(本実施形態において具体的にはネイルデザインリストの作成及び当該リストの送信)を行う。
なお、「配色情報」は、上記のように標準的な爪枠等に基づいて設定されているため、実際に印刷を行うユーザの爪Tに合わせて印刷データを生成した段階では、各色の割合に若干のずれを生じる場合も考えられるが、大きな差異は生じないため、ネイルデザインの提示においては特に考慮しないものとする。
【0058】
制御部81は、データ管理サーバ8の各部を制御する。制御部81は、記憶部82に記憶されているプログラムのうち、指定されたプログラムを読み出して、RAMのワークエリアに展開し、当該プログラムに従って各種処理を実行する。
特に本実施形態の制御部81は、プログラムとの協働により、情報取得手段、提示手段等としての機能を実現する。
【0059】
情報取得手段としての制御部81は、印刷装置1の有するカートリッジ41について「インクに関する情報」を取得する。
「インクに関する情報」は前述のように、各色インクの印刷ドット数の情報等、インクの残量の割合に関する情報を含んでいる。
本実施形態では、印刷装置1によるネイルデザインの印刷が終了したのち、印刷装置1と連携する端末装置7からデータ管理サーバ8に対して「インクに関する情報」を含む「印刷関連情報」が送信されるようになっており、これにより制御部81は「インクに関する情報」を取得する。
【0060】
提示手段としての制御部81は、インクの残量の割合に関する情報等の「インクに関する情報」に基づいて、デザイン(ネイルデザイン)を提示する。
具体的には、提示手段としての制御部81は、インクの残量の割合に関する情報に基づいてデザイン(ネイルデザイン)に優先的に用いられる色を特定し、特定された色に基づいてデザイン(ネイルデザイン)を提示する。
デザイン(ネイルデザイン)を提示する手法は特に限定されないが、本実施形態では、特定された色を優先的に用いるデザイン(ネイルデザイン)をネイルデザインDB823から抽出してネイルデザインリスト(例えば
図8参照)を作成し、これを端末装置7等、データ管理サーバ8にアクセスしてきた装置に対して送信する。
ネイルデザインリストの作成においては、カートリッジ41内のインクの残り具合によって制御部81における選定規準が変わり、残っている色のインクを優先的に使用させることができるようなデザインを推奨するリストを作成する。
【0061】
ネイルデザインリストにいくつのデザイン(ネイルデザイン)をリストアップするか、どのような形式で送付するか等は適宜設定される事項である。
ネイルデザインリストは、端末装置7の表示部74等において、例えば
図8に示すように、複数のネイルデザインが縦に並んだ状態で表示させることができるような形式で配付される。ネイルデザインリストは、一覧表示された中から選択できる形式、縦方向や横方向にスクロールして選択できる形式、複数のスライドから選択できる形式等、いずれの形式でも構わない。
端末装置7がデータ管理サーバ8にアクセス際に、ユーザID等を含む情報を送信した場合には、例えば、特定された色を用いるレベルが同程度の場合に、ユーザIDによって特定されるユーザが、過去に選択したデザインやこれに近いデザイン、類似のカテゴリ(例えば「花」「動物」等)に属するデザイン等をリストの上位に優先してリストアップするようにしてもよい。
【0062】
また本実施形態では、インクの残量について、予め閾値が設定されており、提示手段としての制御部81は、残量が閾値未満のインクがある場合に、当該インク以外の色のインクをデザイン(ネイルデザイン)に優先的に用いられる色と特定し、特定された色に基づいてデザイン(ネイルデザイン)を提示する。
閾値の定め方は特に限定されないが、例えば、印刷を推奨しないレベルのインク残量である警告レベルと、できるだけ使用を控えたいレベルのインク残量である監視レベルの2段階の閾値を設定する。それぞれの閾値をどの程度の値とするかは適宜定められる。
【0063】
また制御部81は、端末装置7等から新たに「インクに関する情報」を含む「印刷関連情報」が送信されると、当該情報に基づいて、随時印刷管理情報DB822の内容を更新する。すなわち、印刷が行われることで各色のインクが出力(吐出)され、これが「印刷関連情報」として送信される。制御部81は、例えばこの「印刷関連情報」に基づいて、出力(吐出)されたインク量を各色のインクの残量から差し引いて、各色のインク残量を算出し、「印刷管理情報」として印刷管理情報DB822に記憶させ、印刷管理情報DB822の内容を最新の状態に書き換える。
【0064】
[印刷装置、端末装置及びデータ管理サーバの動作]
続いて、
図9から
図12を参照しつつ、本実施形態における印刷装置1、端末装置7、データ管理サーバ8の動作、データ管理サーバ8の制御部81によるデザイン提示方法について説明する。
【0065】
図9及び
図10は、デザイン提示処理やこれを含む印刷制御処理を示すフローチャートである。
本実施形態の印刷装置1を用いてネイルプリントを行う場合には、ユーザは、印刷装置1の操作部22(操作ボタン)等を操作して電源を入れ起動させるとともに、端末装置7についても電源を入れて端末装置7の操作部73からネイルプリント処理の実行を選択する。これによりネイルプリントAP721が起動する。
【0066】
図9に示すように、端末装置7の制御部71は、印刷装置1に対して接続要求(連携要求)を送信し(ステップS1)、印刷装置1がこれを受信する(ステップS2)。
なお本実施形態では、印刷装置1及び端末装置7が起動すると、ユーザは、端末装置7又は印刷装置1の操作部等から印刷モードを選択、設定する入力操作を行うことができる。
【0067】
印刷モードとして「通常印刷モード」、「エコモード」のいずれが選択された場合でも、印刷装置1の制御部11は、読取り部48によって、現時点で印刷機構4にセットされているカートリッジ41のバーコード等を読み取らせ、カートリッジIDを取得する(ステップS3)。
そして、印刷装置1の制御部11は、自らの装置IDと、読み取られたカートリッジIDとを、接続要求を送信してきた端末装置7に送信する(ステップS4)。
端末装置7は装置IDとカートリッジIDとを受信すると(ステップS5)、制御部71がデータ管理サーバ8に対して、接続要求及び、印刷装置から受信した装置IDとカートリッジIDを送信する(ステップS6)。なお、このとき、端末装置7のユーザID等をともにデータ管理サーバ8に対して送信してもよい。
【0068】
端末装置7からの接続要求を受けると、データ管理サーバ8は、これを受け付けて装置IDとカートリッジIDを受信する(ステップS7)。
そして、印刷モードとして「エコモード」が選択されている場合には、データ管理サーバ8の制御部81は、印刷管理情報DB822に問い合わせ(ステップS8)、送信されたカートリッジIDに対応する印刷管理情報を参照して、ネイルデザインリストを作成する(ステップS9)。
具体的には、印刷管理情報DB822に記憶されている印刷管理情報から、カートリッジ41内のシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、それぞれのインク残量、各インクの残量バランスを推定する。そして推定結果に基づき、推奨するネイルデザインをネイルデザインDB823からリストアップし、ネイルデザインリストを作成して接続要求の送信元である端末装置7に送信する(ステップS10、デザイン提示処理)。
なお、印刷モードとして「通常印刷モード」が選択されている場合には、データ管理サーバ8の制御部81は、印刷管理情報DB822に問い合わせを行わず、例えばユーザIDにより特定されるユーザが過去に選択したネイルデザインやこれに近いデザイン等をネイルデザインDB823から抽出し、リストアップして、作成されたネイルデザインリストを接続要求の送信元である端末装置7に送信する。
【0069】
ここで、「エコモード」が選択されている場合のデザイン提示処理におけるネイルデザインリストの作成について、
図11及び
図12を参照しつつ、詳説する。
デザイン提示処理を行う場合、データ管理サーバ8の制御部81は、印刷管理情報DB822に記憶されている各インクのインク残量の情報から、インクの残量が監視レベル未満の色のインクがあるか否かを判断する(ステップS41)。
図12のグラフに示すように、カートリッジ41内に貯留されているインクの残量は、当該カートリッジ41を用いた印刷の回数が増すごとに少なくなっていく。ここで監視レベルの閾値をどの程度とするかは適宜設定されるが、例えば、
図12に示す例では、インク残量が、初期状態(すなわち印刷回数0回の状態)の50%から30%程度となった場合に、制御部81が監視レベルと判断する。なお、
図11では、インク残量が監視レベル未満であるか否かで判断しているが、例えばインク残量が監視レベルと判断される残量50%丁度である場合には、監視レベルに該当する(すなわち、ステップS41;YES)と扱ってもよいし、監視レベルに該当しない(すなわち、ステップS41;NO)と扱ってもよい。
【0070】
印刷管理情報DB822に問い合わせた結果、インクの残量が監視レベルに該当するインクが1色もない場合(ステップS41;NO)には、制御部81は、提示するネイルデザインについて配色制限を設けないものとする(ステップS42)。この場合には、印刷モードとして「エコモード」が選択されている場合でも、例えばユーザIDにより特定されるユーザが過去に選択したネイルデザインやこれに近いデザイン等を順にリストアップする等、「通常印刷モード」と同様の処理を行ってよい。
【0071】
これに対して、インクの残量が監視レベルに該当するインクがある場合(ステップS41;YES)には、制御部81は、さらに、残量が監視レベル未満であるインクは1色であるか否かを判断する(ステップS43)。
残量が監視レベル未満であるインクが1色のみである場合(ステップS43;YES)には、さらに、残量が監視レベル未満であるインクはシアンであるか否かを判断する(ステップS44)し、シアンのインク残量のみが監視レベル未満である場合(ステップS44;YES)には、制御部81は、配色がマゼンタ(M)とイエロー(Y)であるデザイン(ネイルデザイン)を優先してネイルデザインリストを作成する(ステップS45)。
【0072】
一方、残量が監視レベル未満であるインクがシアンでない場合(ステップS44;NO)には、制御部81は、さらに、残量が監視レベル未満であるインクはマゼンタであるか否かを判断する(ステップS46)。例えば
図12にグラフで示す例では、印刷回数1000回程度の時点でマゼンタ(M)のインク残量のみが監視レベル未満となっている。この場合のように、マゼンタのインク残量のみが監視レベル未満となっている場合(ステップS46;YES)には、制御部81は、配色がシアン(C)とイエロー(Y)であるデザイン(ネイルデザイン)を優先してネイルデザインリストを作成する(ステップS47)。
他方残量が監視レベル未満であるインクはマゼンタでない場合(ステップS46;NO)には、制御部81は、イエローのインク残量のみが監視レベル未満であると判断し(ステップS48)、配色がシアン(C)とマゼンタ(M)であるデザイン(ネイルデザイン)を優先してネイルデザインリストを作成する(ステップS49)。
【0073】
これに対して、残量が監視レベル未満であるインクが1色のみでない場合(ステップS43;NO)には、さらに、制御部81は、残量が監視レベル未満であるインクは3色であるか否かを判断する(ステップS50)。そして、残量が監視レベル未満であるインクが3色でない場合(ステップS50;NO)には、残量が監視レベル以上あるインクの色はシアンであるか否かを判断する(ステップS51)。例えば
図12にグラフで示す例では、印刷回数1500回近くになった時点でシアン(C)以外のインク残量が監視レベル未満となっている。この場合のように、シアンのインク残量のみが監視レベル以上である場合(ステップS51;YES)には、配色がシアン(C)であるデザイン(ネイルデザイン)を優先してネイルデザインリストを作成する(ステップS52)。
【0074】
他方、残量が監視レベル以上あるインクの色はシアンでない場合(ステップS51;NO)には、制御部81は、さらに残量が監視レベル以上あるインクの色はマゼンタであるか否かを判断する(ステップS53)。そしてマゼンタのインク残量のみが監視レベル以上である場合(ステップS53;YES)には、制御部81は、配色がマゼンタ(M)であるデザイン(ネイルデザイン)を優先してネイルデザインリストを作成する(ステップS54)。また、残量が監視レベル以上あるインクの色はマゼンタでもない場合(ステップS53;NO)には、制御部81は、残量が監視レベル以上あるインクの色はイエローであると判断し(ステップS55)、配色がイエロー(Y)であるデザイン(ネイルデザイン)を優先してネイルデザインリストを作成する(ステップS56)。
なおインク残量について判断する色の順序等は、ここに例示したものに限定されない。
【0075】
これらに対して、残量が監視レベル未満であるインクが3色ある場合(ステップS50;YES)には、制御部81は、全ての色について、淡色配色で構成されたデザイン(ネイルデザイン)を優先してネイルデザインリストを作成する(ステップS57)。例えば
図12にグラフで示す例では、印刷回数2000回近くになった時点で全ての色のインク残量が監視レベル未満となっている。このような場合には、淡色配色で構成されたデザイン(ネイルデザイン)が推奨される。
【0076】
なお、ネイルデザインリストに多くのネイルデザインをリストアップする場合、リストの下位の方にはインクの残量状況に照らして必ずしも推奨されないデザインが含まれる場合もあるが、ユーザによってそのようなネイルデザインを選択する入力がされた場合には、当該デザインが印刷するネイルデザインとして選択される。
なお、インク残量が警告レベルの閾値未満の状態となると、安定した印刷結果を維持できないおそれがある。インクを1色ずつ交換することができる場合には、当該色のインクの交換を促せばよいが、本実施形態では前述のように全ての色インクのインク貯留部が1つのカートリッジ41に一体的に設けられている。このため、1色でも警告レベルの閾値を超えるインクがある場合には、印刷装置1の表示部23や端末装置の表示部74等に、カートリッジ41の交換をユーザに促す警告メッセージ等を表示させることが好ましい。警告レベルの閾値をどの程度とするかは適宜設定されるが、例えば、インク残量が、初期状態(すなわち印刷回数0回の状態)の数%程度となった場合に、制御部81が警告レベルと判断する。閾値と等しいインク残量レベルとなった場合の取り扱いは、監視レベルの閾値について説明したものと同様であるため、説明を省略する。
【0077】
以上のようにしてネイルデザインリストがデータ管理サーバ8において作成され(
図9のステップS9)、当該リストが端末装置7に送信されて(
図9のステップS10)、端末装置7が当該リストを受信すると(
図9のステップS11)、印刷装置1の表示部23や端末装置の表示部74等にネイルデザインリストに基づくネイルデザインの一覧等が表示される。ユーザがこのリスト中から所望のネイルデザインを選んで、操作部22,73等から選択指示を入力すると、
図10に示すように、ネイルデザインが選択され、当該ネイルデザインのデータを配信するよう求める配信要求が、端末装置7からデータ管理サーバ8に送信される(ステップS12)。
端末装置7からの配信要求を受信すると(ステップS13)、データ管理サーバ8の制御部81は、要求されたネイルデザインのデータ(
図6に示すような矩形の印刷元データPD)を、端末装置7に対して配信し(ステップS14)、配信されたデータが端末装置7において受信される(ステップS15)。
【0078】
印刷装置1では、印刷対象である爪Tに対応する指Uを装置内の指配置部3にセットし(ステップS16)、撮影部5により爪画像を撮影する(ステップS17)。撮影された爪画像のデータは、端末装置7に送信される(ステップS18)。
印刷装置1から爪画像を取得すると(ステップS19)、端末装置7の制御部71は、爪画像に基づいて爪Tの領域を認識する爪認識処理を行う(ステップS20)。そしてデータ管理サーバ8から配信されたネイルデザインの印刷元データPDを、ユーザの爪Tの領域に合わせ込み、適宜曲面補正等必要な補正を行って印刷データを生成する(ステップS21)。
【0079】
生成された印刷データは、端末装置7から印刷装置1に送信され(ステップS22)、印刷データを受信(ステップS23)した印刷装置1において、印刷データに基づく印刷処理が行われる(ステップS24)。印刷処理が終了すると、印刷が終了した旨が印刷装置1から端末装置7に対して送信される(ステップS25)。印刷装置1から印刷終了を受信すると(ステップS26)、端末装置7の制御部71は、印刷装置1で行われた印刷処理に関する「印刷関連情報」をデータ管理サーバ8に対して送信する(ステップS27)。
【0080】
「印刷関連情報」を受信(ステップS28)したデータ管理サーバ8では、印刷処理における各色のインクの印刷ドット数等、インク残量を算出するために必要な情報を用いて印刷管理情報DB822に記憶されている内容を書き換えて最新の状態に更新し(ステップS29)、更新処理が完了すると、端末装置7に対し処理完了通知を送信する(ステップS30)。端末装置7がデータ管理サーバ8からの処理完了通知を受信すると(ステップS31)、端末装置7の制御部71は、印刷が予定されている全ての指Uの爪Tについて印刷が終了したか否かを判断し、まだ印刷が行われていない爪Tがある場合には、ステップS16に戻って当該爪に対応する指Uをセットさせ、以降の処理を繰り返す。
他方、印刷が予定されている全ての指Uの爪Tについて印刷が終了すると、一連の処理を終了する。
【0081】
以上のように、本実施形態によれば、電子機器であるデータ管理サーバ8の制御部81が、「インクに関する情報」を取得する情報取得手段として機能するとともに、「インクに関する情報」に基づいて、デザインを提示する提示手段として機能する。
これにより、印刷装置1のカートリッジ41内に貯留されているインクの状況に応じてネイルデザインの提示の仕方を変えることができ、カートリッジ41内のインクを有効に使うことができる。
【0082】
そして本実施形態における「インクに関する情報」は、第1インク及び第1インクとは異なる色の第2インクを吐出する印刷ヘッドとしてのカートリッジ41における第1インク及び第2インクの「インク残量の割合に関する情報」を含んでいる。
このように本実施形態では、印刷装置1のカートリッジ41内に貯留されている各色のインクのインク残量(インク残量の割合)に応じてネイルデザインの提示の仕方を変えることができる。これにより、カートリッジ41内の各色のインク残量の偏りを防いで、各色のインクをできるだけバランスよく使用して、なるべく無駄にしないように使い切ることのできるデザインをユーザに提示(提案)することができる。
このため、カートリッジ41の使用寿命を延ばすことができ、カートリッジ41の交換頻度を減らして、廃棄物を減少させることができるとともに、カートリッジ41の交換待ちや交換作業による印刷装置1のメンテナンスの発生頻度を減少させることができる。
【0083】
また本実施形態において、提示手段としての制御部81は、「インクの残量の割合に関する情報」に基づいてデザインに優先的に用いられる色を特定し、特定された色に基づいてデザインを提示する。
このため、インク残量(インク残量の割合)に応じてネイルデザインの提示の仕方を変えることができる。これにより、カートリッジ41内のインク残量の偏りを防いで、各色のインクをできるだけバランスよく使用し、全ての色のインクをできるだけ使い切ることのできるデザインをユーザに提案することができる。
【0084】
また本実施形態では、インクの残量(インク残量の割合)に関して予め閾値が設定され、提示手段としての制御部81は、残量が閾値未満のインクがある場合に、当該インク以外の色のインクをデザインに優先的に用いられる色と特定する。
このように予め閾値を設定するため、どの色のインクを優先的に用いるべきかを明確に判断することができ、カートリッジ41内のインクをなるべく偏りなく使い切ることのできるデザインをユーザに提案することができる。
【0085】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0086】
例えば、上記実施形態では、印刷装置1、端末装置7、データ管理サーバ8が互いに連携する場合を例示したが、印刷装置1と端末装置7とが連携し、データ管理サーバ8を備えない構成としてもよい。この場合には、端末装置7の制御部71が「インクに関する情報」を取得する情報取得手段及びデザインを提示する提示手段として機能し、このような制御部71を備える端末装置7が電子機器として機能する。
また印刷装置1とデータ管理サーバ8とが連携し、端末装置7を備えない構成としてもよい。この場合には、データ管理サーバ8の制御部81が「インクに関する情報」を取得する情報取得手段及びデザインを提示する提示手段として機能し、このような制御部81を備えるデータ管理サーバ8が電子機器として機能する。
さらに、印刷装置1の制御部11が「インクに関する情報」を取得する情報取得手段及びデザインを提示する提示手段として機能し、このような制御部11を備える印刷装置1が単体で電子機器として機能してもよい。なお、この場合には、印刷装置1の制御部11が爪画像に基づいて爪認識を行い、爪画像から認識された爪Tの領域に基づいて印刷データを生成する。
【0087】
また、本実施形態では、端末装置7が、ユーザの有するスマートフォン等の携帯端末である場合を想定したが、端末装置7は、ユーザ自らが有するものに限定されない。また、端末装置7は、印刷装置1と別体の装置でなくてもよく、例えば印刷装置1に付属する操作端末のようなものであってもよい。
【0088】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
第1インク及び前記第1インクとは異なる色の第2インクを印刷する印刷ヘッドにおける前記第1インク及び前記第2インクの残量の割合に関する情報を含むインクに関する情報を取得する情報取得手段と、
前記インクに関する情報に基づいて、デザインを提示する提示手段と、
を備えることを特徴とする電子機器。
<請求項2>
前記提示手段は、前記インクの残量の割合に関する情報に基づいてデザインに優先的に用いられる色を特定し、特定された色に基づいてデザインを提示することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
<請求項3>
前記インクの残量の割合に関して予め閾値が設定され、
前記提示手段は、残量が前記閾値未満のインクがある場合に、当該インク以外の色のインクを前記デザインに優先的に用いられる色と特定することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
<請求項4>
情報取得手段と提示手段とを有する電子機器が実行するデザイン提示方法であって、
前記情報取得手段が、第1インク及び前記第1インクとは異なる色の第2インクを印刷する印刷ヘッドにおける前記第1インク及び前記第2インクの残量の割合に関する情報を含むインクに関する情報を取得し、
取得された前記インクに関する情報に基づいて、前記提示手段がデザインを提示する、
ことを特徴とするデザイン提示方法。
<請求項5>
コンピュータに、
第1インク及び前記第1インクとは異なる色の第2インクを印刷する印刷ヘッドにおける前記第1インク及び前記第2インクの残量の割合に関する情報を含むインクに関する情報を取得する情報取得機能と、
取得された前記インクに関する情報に基づいて、デザインを提示する提示機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0089】
1 印刷装置
11 制御部
12 記憶部
4 印刷機構
41 カートリッジ
7 端末装置
71 制御部
72 記憶部
8 データ管理サーバ
81 制御部
82 記憶部