(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】留置針組立体
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20240214BHJP
A61M 5/158 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61M25/06 500
A61M5/158
(21)【出願番号】P 2021513718
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2020016151
(87)【国際公開番号】W WO2020209368
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2019075905
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】阪本 慎吾
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/080525(WO,A1)
【文献】特開2018-117807(JP,A)
【文献】特開2018-023587(JP,A)
【文献】国際公開第2013/171851(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 5/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、プロテクタを装着した内針が外針に対して引抜可能に挿通されており、該内針の引抜きに伴う針先への移動によって該プロテクタが変形又は変位して該針先を保護する留置針組立体において、
前記内針ユニットが、前記プロテクタを収納する収納ハウジングを備えていると共に、
該収納ハウジングを前記外針ハブへ連結する連結部材が設けられており、
該プロテクタによって該連結部材の移動が阻止されて、該収納ハウジングと該外針ハブが連結状態に保持されると共に、
該内針の引抜きに伴う該プロテクタの変形又は変位によって該連結部材の移動が許容されて、該収納ハウジングの該外針ハブへの連結状態が解除可能とされて
おり、
前記連結部材が前記外針ハブの基端側開口部への係止部を有していると共に、
前記収納ハウジングの先端部分が該外針ハブの基端側開口部から挿し込まれており、
該外針ハブの周壁が該連結部材の係止部と該収納ハウジングの先端部分とにより内外で挟まれている留置針組立体。
【請求項2】
内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、プロテクタを装着した内針が外針に対して引抜可能に挿通されており、該内針の引抜きに伴う針先への移動によって該プロテクタが変形又は変位して該針先を保護する留置針組立体において、
前記内針ユニットが、前記プロテクタを収納する収納ハウジングを備えていると共に、
該収納ハウジングを前記外針ハブへ連結する連結部材が設けられており、
該プロテクタによって該連結部材の移動が阻止されて、該収納ハウジングと該外針ハブが連結状態に保持されると共に、
該内針の引抜きに伴う該プロテクタの変形又は変位によって該連結部材の移動が許容されて、該収納ハウジングの該外針ハブへの連結状態が解除可能とされて
おり、
前記連結部材が前記収納ハウジングの内孔と連通する連通孔を備えており、前記内針が挿通されて弾性変形が阻止された前記プロテクタが該内孔と該連通孔の両方の内面にわたって当接することで該連結部材の該収納ハウジングに対する移動が阻止されている留置針組立体。
【請求項3】
前記内針が挿通されて弾性変形を阻止された前記プロテクタと前記収納ハウジングの内面との当接部分が面当たりである請求項1
又は2に記載の留置針組立体。
【請求項4】
前記収納ハウジングには、先端側に位置する部分において外周面に一対の把持部が設けられている請求項1~
3の何れか1項に記載の留置針組立体。
【請求項5】
前記連結部材と前記外針ハブとの係止部分には傾斜面が設けられており、前記内針を引き抜くことで該連結部材が該傾斜面に沿って移動して該外針ハブとの連結が解除される請求項1~
4の何れか1項に記載の留置針組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液や採血、血液透析等を行う際に穿刺される留置針組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、輸液や採血、血液透析等の処置を行う際の医療用具として、内針ユニットと外針ユニットを備えた留置針組立体が知られている。このような留置針組立体では、穿刺後に引き抜かれた内針による誤穿刺等を防止するために、引き抜かれた内針を保護するプロテクタを採用する場合がある。プロテクタを備えた留置針組立体は、例えば特開2004-24622号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
このような留置針組立体では、外針を内針に貫通させた状態で穿刺した後、外針ユニットを患者へ留置したままで、内針を引き抜いて内針ユニットを離脱させるように操作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来構造の留置針組立体では、施術者の操作性について改善の余地がある。例えば、穿刺後の内針ユニットの離脱時に内針ユニットに引っ張られて外針ユニットが穿刺対象部位から抜けてしまう場合があり、改善の余地があった。例えば特許文献1に記載の留置針組立体では、第2テレスコピックパイプ21の先端部が止血アダプタ11の係合孔11Bに固く嵌合した状態にあるために、内針ユニットに引っ張られて外針ユニットが穿刺対象部位から抜けてしまう場合がある。施術者は一方の手で外針ユニットを固定しつつ他方の手で内針ユニットを引き抜かねばならず、特別な操作が必要とされていた。
【0006】
本発明の解決課題は、施術者の操作性の改善が図られる、新規な構造の留置針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第1の態様は、内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、プロテクタを装着した内針が外針に対して引抜可能に挿通されており、該内針の引抜きに伴う針先への移動によって該プロテクタが変形又は変位して該針先を保護する留置針組立体において、前記内針ユニットが、前記プロテクタを収納する収納ハウジングを備えていると共に、該収納ハウジングを前記外針ハブへ連結する連結部材が設けられており、該プロテクタによって該連結部材の移動が阻止されて、該収納ハウジングと該外針ハブが連結状態に保持されると共に、該内針の引抜きに伴う該プロテクタの変形又は変位によって該連結部材の移動が許容されて、該収納ハウジングの該外針ハブへの連結状態が解除可能とされており、前記連結部材が前記外針ハブの基端側開口部への係止部を有していると共に、前記収納ハウジングの先端部分が該外針ハブの基端側開口部から挿し込まれており、該外針ハブの周壁が該連結部材の係止部と該収納ハウジングの先端部分とにより内外で挟まれているものである。
【0009】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、内針を引き抜くことで弾性変形するプロテクタを巧く利用して、収納ハウジングと外針ハブを連結している連結部材による連結状態が解除可能とされ得る。内針ユニットに対して外針ユニットの全体を軸直角方向へ移動させる必要もなくなり、作業の容易化が実現可能になる。
【0010】
なお、本態様におけるプロテクタとしては、例えば、内挿された内針によって弾性変形を阻止されて連結部材を収納ハウジングと外針ハブの連結状態に保持すると共に、内針の引抜きに伴って弾性変形することで連結部材の移動を許容し得る、弾性変形可能なプロテクタを採用することも可能である。
【0012】
また、本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、内針の引抜前における外針ユニットと内針ユニットとの連結が、より安定して実現され得る。
【0013】
第2の態様は、内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、プロテクタを装着した内針が外針に対して引抜可能に挿通されており、該内針の引抜きに伴う針先への移動によって該プロテクタが変形又は変位して該針先を保護する留置針組立体において、前記内針ユニットが、前記プロテクタを収納する収納ハウジングを備えていると共に、該収納ハウジングを前記外針ハブへ連結する連結部材が設けられており、該プロテクタによって該連結部材の移動が阻止されて、該収納ハウジングと該外針ハブが連結状態に保持されると共に、該内針の引抜きに伴う該プロテクタの変形又は変位によって該連結部材の移動が許容されて、該収納ハウジングの該外針ハブへの連結状態が解除可能とされており、前記連結部材が前記収納ハウジングの内孔と連通する連通孔を備えており、前記内針が挿通されて弾性変形が阻止された前記プロテクタが該内孔と該連通孔の両方の内面にわたって当接することで該連結部材の該収納ハウジングに対する移動が阻止されているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、内針の引抜前においてプロテクタによる連結部材の収納ハウジングに対する位置決めの安定性が向上され得て、例えば連結部材のガタツキを小さく抑えることも可能になる。
【0015】
第3の態様は、前記第1又は2に係る留置針組立体において、前記内針が挿通されて弾性変形を阻止された前記プロテクタと前記収納ハウジングの内面との当接部分が面当たりとされているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、収納ハウジングに対するプロテクタの当接領域が周方向に設定されることで、収納ハウジングに対するプロテクタの位置の安定性が向上され得ることとなり、その結果、プロテクタによって移動が制限される連結部材の収納ハウジングに対する位置安定性の向上も図られ得る。
【0017】
第4の態様は、前記第1~第3の何れかの態様に係る留置針組立体において、前記収納ハウジングには、先端側に位置する部分において外周面に一対の把持部が設けられているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、針先端に近い部位を施術者が把持することが可能になり、穿刺操作が安定して実現される。
【0019】
第5の態様は、前記第1~第4の何れかの態様に係る留置針組立体において、前記連結部材と前記外針ハブとの係止部分には傾斜面が設けられており、前記内針を引き抜くことで該連結部材が該傾斜面に沿って移動して該外針ハブとの連結が解除されるものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、連結部材を変位させるために特別な付勢手段を設ける必要がなく、内針を引き抜く操作のみで連結部材の外針ハブへの係止を解除することも可能になる。
【0021】
また、前記第1~第5の何れかの態様に係る留置針組立体において、前記内針を引き抜くことで、前記連結部材が前記収納ハウジングに対して患者の体表面に沿う方向となる側方へ向けて移動可能とされている態様も、採用され得る。
【0022】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、内針ユニットの離脱に際しての連結部材の移動を、患者の体表面が位置する下方や作業者が操作する上方を避けて、側方へ向けて行うことができる。それ故、施術者の操作に際して連結部材に干渉して操作性が低下されることが防止される。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、外針ユニットからの内針ユニットの離脱を容易に行うことができ、施術者の操作性の改善が図られる等、従来構造の留置針組立体が内在する問題の少なくとも1つを解消することのできる、新規な構造の留置針組立体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第1実施形態としての留置針組立体を示す斜視図
【
図2】
図1に示された留置針組立体を拡大して示す正面図
【
図3】
図1に示された留置針組立体を拡大して示す背面図
【
図6】
図4におけるVI-VI断面を拡大して示す横断面図
【
図7】
図4におけるVII-VII断面を拡大して示す横断面図
【
図8】
図1に示された留置針組立体において外針ユニットから内針ユニットを離脱させた状態を示す斜視図
【
図9】
図8に示された留置針組立体を示す縦断面図であって、
図4に対応する図
【
図10】
図8に示された留置針組立体を示す縦断面図であって、
図5に対応する図
【
図11】
図9におけるXI-XI断面を拡大して示す横断面図
【
図12】本発明の第2実施形態としての留置針組立体の一部を示す断面図
【
図13】
図12に示された留置針組立体において外針ユニットから内針が引き抜かれた後の内針ユニットの一部を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0036】
先ず、
図1~7には、本発明の第1実施形態としての留置針組立体10が示されている。この留置針組立体10は、内針12及び内針ハブ14を含んで構成される内針ユニット16と、外針18及び外針ハブ20を含んで構成される外針ユニット22とを備えている。
図1~7に示される使用前の状態では、内針12は、外針ユニット22に対して基端側から引抜可能に挿通されており、内針ユニット16と外針ユニット22とが相互に連結されている。なお、以下の説明において、軸方向とは、内針12及び外針18の針軸方向となる
図4中の左右方向をいう。また、先端側とは、内針12の針先24側となる
図4中の左側をいうと共に、基端側とは、使用者が把持して操作する側となる
図4中の右側をいう。
【0037】
より詳細には、外針18は、内針12よりも短い長さを有するチューブ形状とされており、可撓性を有している。外針18の先端部分における外周面は、例えば先端側に向かうに従って次第に小径化するテーパ面とされてもよく、これにより生体への穿刺抵抗を軽減することもできる。また、外針18の先端部分における周壁には1個または複数の貫通孔が設けられてもよく、これにより外針18に対する流体の流通効率の向上が図られ得る。
【0038】
外針ハブ20は、全体として軸方向に延びる略筒形状とされており、本実施形態では、略円筒形状の周壁26を備えている。周壁26の先端部分における内周面には、略円筒形状のカシメピン28が固着されており、これら周壁26とカシメピン28との間に外針18の基端部分が挟まれて、必要に応じて接着や溶着されることにより、外針18の基端側に外針ハブ20が固定されている。
【0039】
外針ハブ20の基端側開口部30には、周方向の略全周に亘って外周側に突出するフランジ状部32が設けられており、当該フランジ状部32の外周面にはねじ山が設けられている。これにより、外針ハブ20に対してルアーロック式のシリンジやコネクタ等が接続可能とされている。本実施形態では、フランジ状部32における周上の一部(
図4中の上方)において、軸方向に延びる位置決め溝34が設けられている。
【0040】
本実施形態では、外針ハブ20の内部に、止血弁機構36が収容状態で組み込まれている。止血弁機構36は、ディスク弁38と押し子40と押し子ガイド42とから構成されている。なお、内針12を引き抜いた際に、外針ハブ20における止血弁機構36より先端側の領域に外針18を通じて逆流した血液が収容されることから、外針ハブ20の周壁26における少なくとも止血弁機構36の配設位置より先端側が透明とされることで、外部からフラッシュバックが確認され得る。
【0041】
ディスク弁38は、ゴムやエラストマ等の弾性体から形成されており、中央にスリット44が形成されている。ディスク弁38の基端側に略筒状の押し子40が位置していると共に、当該押し子40の外周側において略筒状の押し子ガイド42が、外針ハブ20の周壁26との間で凹凸嵌合することで周壁26に対して位置決めされている。
【0042】
このような止血弁機構36が設けられた外針ハブ20に対してシリンジ等が接続されることで、シリンジ等の雄ルアーにより先端側に押し込まれた押し子40が、押し子ガイド42の案内作用によって先端側に移動してディスク弁38のスリット44が押し開かれ得る。また、外針ハブ20からシリンジ等を抜去することでディスク弁38が弾性的に復元変形してディスク弁38のスリット44が閉鎖され得る。
【0043】
内針12は、例えばステンレス鋼、アルミニウム、チタン又はそれらの合金等の公知の材料から形成されており、本実施形態では中空針とされている。なお、内針12は中実針であってもよい。内針12の先端は、先鋭状の針先24とされていると共に、内針12の基端は、内針ハブ14に設けられた固定筒部46に挿入や圧入されて、必要に応じて接着や溶着されることにより、内針12の基端側に内針ハブ14が固定されている。
【0044】
内針ハブ14は、全体として軸方向に延びる略筒形状とされており、本実施形態では、内針ハブ14の基端に前述の固定筒部46が設けられている。内針ハブ14において、固定筒部46の形成位置は二重筒構造とされており、固定筒部46の外周側に収容筒部48が設けられている。内針ハブ14は、少なくとも収容筒部48が透明とされることが好適であり、留置針組立体10の穿刺時に内針12を逆流した血液が収容筒部48に収容されることでフラッシュバックが外部から確認され得る。なお、収容筒部48の基端側開口部には通気フィルタ50が設けられており、血液の収容時に収容筒部48内の空気が通気フィルタ50を通じて排出されると共に、収容筒部48からの血液の漏れが通気フィルタ50により防止されている。
【0045】
また、内針ユニット16は、使用後の内針12の針先24を保護するプロテクタ52を備えている。プロテクタ52は、内針12に対して軸方向で移動可能に外挿装着されている。プロテクタの構造は限定されるものではないが、本実施形態のプロテクタ52は、金属素板をプレス加工等することで形成されており、ばね鋼等が採用されることで弾性変形可能とされている。
【0046】
即ち、プロテクタ52は、後壁部54と、当該後壁部54の両側(
図4中の上下方向両側)から先端側に突出する一対の弾性腕部56,56とを備えている。これら弾性腕部56,56は、相互に交差して先端側に延び出しており、先端部分が相互に接近する方向又は離隔する方向に弾性変形可能とされている。なお、これら弾性腕部56,56は軸方向寸法が相互に異ならされており、内針12を引き抜いた際に弾性腕部56,56の先端部分が相互に接近する方向に変位して軸方向で相互に重なるようになっている。
【0047】
このようなプロテクタ52に内針12が挿通されることで弾性腕部56,56の先端部分が相互に離隔する方向に押し広げられている。即ち、弾性腕部56,56の先端部分には、弾性的な復元変形に基づいて相互に接近する方向への付勢力が及ぼされており、内針12に当接することで弾性腕部56,56の先端部分の相互に接近する方向への変形が防止されている。
【0048】
本実施形態では、内針12が挿通されて押し広げられた弾性腕部56,56の先端部分には、軸方向と平行に延びる領域が設けられている。特に、本実施形態では、プロテクタ52が、ある程度の幅方向寸法(
図6中の上下方向寸法)をもって形成されていることから、弾性腕部56,56の先端部分には、略矩形の平板状部58,58が形成されている。
【0049】
ここにおいて、内針ユニット16は、上記のプロテクタ52が収納される略筒状の収納ハウジングを備えており、本実施形態では、当該収納ハウジングが、内針ハブ14により構成されている。特に、本実施形態では、内針ハブ14が、軸方向に延びる複数(3つ)の筒状体が略同心的に内外挿された多重筒構造とされており、最も外周側に位置する第1の筒状体60と、径方向の中間に位置する第2の筒状体62と、最も内周側に位置する第3の筒状体64とを含んで構成されている。これら第1~3の筒状体60,62,64は、軸方向で伸縮可能に内外挿されたテレスコピック構造をもって組み合わされている。以下に説明するとおり、本実施形態では、内針12の基端側が固定された狭義の内針ハブは第1の筒状体60であるが、一体的に連結状態で組み合わされていることから広義の内針ハブは第1~3の筒状体60,62,64によって協働して構成されている。また、狭義には第3の筒状体64の先端側の大径筒部84(後述)がプロテクタ52の収納ハウジング14を構成しており、第1~3の筒状体60,62,64によって、引き抜かれた内針12を収容する保護ハウジングが構成されている。
【0050】
すなわち、第1の筒状体60は、軸方向で形状や径寸法が異ならされており、先端部分が、矩形断面を有する矩形筒部66とされていると共に、軸方向中間部分が、円形断面を有する円筒部68とされている。最も外周側に位置する第1の筒状体60に矩形筒部66が設けられることで、使用者が、矩形筒部66の外周面に手の指先を安定して添えるように載せて把持(例えば親指と中指で両側から挟むように持つ)することができて、後述する内針12の引抜操作や人先指の指先での外針ハブ20の先端側への払い出し操作などを行い易くされている。
【0051】
特に
図1,4等に示されているように、内針ユニット16と外針ユニット22が連結されて内針12の針先24が外針18から突出されることで穿刺可能とされた初期状態において、内針ユニット16の先端側に位置する部分では、第1の筒状体60と第3の筒状体64の各先端部分が外針ハブ20の基端側に連なるように配置されている。そして、第3の筒状体64の先端部に設けられてプロテクタ52を収納する後述の大径筒部84に対して、第1の筒状体60の矩形筒部66が外挿されて外周面を覆っている。
【0052】
なお、第1の筒状体60と第3の筒状体64は、軸直角方向でのがたつきを抑えるように、軸直角方向で直接的に若しくは他部材を介して間接的に当接又は近接する部位が周上複数箇所に設けられることが望ましい。また、第1の筒状体60の矩形筒部66の外周面は、略矩形断面とされ、例えば当該把持部を両側から指先で挟むと共に、別の指先を上方から添えるようにすることで、患者の体表面側に位置する面を除いた3面に対してそれぞれ施術者が指先を添えて安定して把持することが容易となされている。なお、外面形状は特に限定されないが、指先で摘む操作を一層行ない易くするためには外周面に一対の把持部が例えば両側面部等において形成されているのが好ましい。把持部は、把持しやすいように、例えば凹状の湾曲面としたり、細かな凹凸等による滑り止めを付したり、把持する部分であることを示すように、形状やマークを付したりすることも可能である。更に、後述する連結部材94への手指の引っ掛かり等を考慮して、矩形筒部66の外周面や連結部材94の突出先端面の形状や位置を適宜に設計変更して、矩形筒部66の外周面からの連結部材94の突出を抑えたり、連結部材94又は把持部周辺部に壁を設けたり、把持部の形状や位置を適宜に設計変更して、連結部材94への手指の引っ掛かりを防止することもできる。
【0053】
また、第1の筒状体60の基端部分には、前述の収容筒部48及び固定筒部46が一体形成されている。収容筒部48の外径寸法は円筒部68の外径寸法より小さくされており、即ち、円筒部68の基端には基端壁部70が設けられていると共に、当該基端壁部70から、円筒部68よりも小径な収容筒部48が基端側に突出している。そして、固定筒部46に固定された内針12が、第3の筒状体64の内孔72を通じて先端側に延び出している。
【0054】
なお、矩形筒部66の先端において周方向の一部(
図4中の上方)には、後述する連結部材94が嵌め入れられる略矩形の切欠き74が形成されている。更に、矩形筒部66又は円筒部68の内周面には、内周側に突出する第1の係合爪76が設けられている。本実施形態では、一対の第1の係合爪76,76が、それぞれ半周以下の周方向寸法をもって周方向に延びており、
図4中の上下方向両側で相互に対向して形成されている。特に、本実施形態では、基端壁部70において、一対の第1の係合爪76,76と対応する位置には、基端壁部70を内外で貫通する一対の貫通孔78,78が形成されている。これにより、第1の筒状体60を射出成形で形成する場合には、貫通孔78を、第1の係合爪76を形成するための型抜き用の孔として利用することも可能である。
【0055】
第2の筒状体62は、軸方向の略全長に亘って略一定の径寸法を有していると共に、第1の筒状体60よりも短い軸方向寸法を有しており、本実施形態では、第1の筒状体60における円筒部68と略等しい軸方向寸法とされている。そして、第2の筒状体62における基端には、外周側に突出する第2の基端側係合爪80が設けられていると共に、第2の筒状体62における先端には、内周側に突出する第2の先端側係合爪82が設けられている。本実施形態では、これら第2の基端側及び先端側係合爪80,82が、周方向の全周に亘って環状に形成されている。
【0056】
第3の筒状体64は、全体として軸方向で径寸法が異ならされた略段付きの円筒形状とされている。即ち、第3の筒状体64の先端部分は、ある程度の軸方向寸法を有してプロテクタ52の収納ハウジングを構成する大径筒部84とされていると共に、軸直角方向に広がる環状壁部86を介して、大径筒部84よりも基端側に小径筒部88が形成されている。これにより、第3の筒状体64における内孔72の内径寸法も軸方向で異ならされており、小径筒部88の内径寸法に比べて、大径筒部84の内径寸法が大きくされている。本実施形態では、大径筒部84の内周形状が略矩形とされていると共に、小径筒部88の内周形状が円形とされている。
【0057】
大径筒部84の外径寸法は、第2の筒状体62の外径寸法よりも大きくされていると共に、第1の筒状体60の内径寸法よりも小さくされている。また、小径筒部88の外径寸法は、第2の筒状体62の内径寸法よりも小さくされている。これにより、小径筒部88の形成位置において、第1,第2,第3の筒状体60,62,64が相互に内外挿されていると共に、大径筒部84が、第2の筒状体62よりも先端側において第1の筒状体60における矩形筒部66の内周側に収容されている。
【0058】
なお、小径筒部88の軸方向寸法は、第2の筒状体62の軸方向寸法と略等しくされていると共に、大径筒部84の軸方向寸法は、第1の筒状体60における矩形筒部66よりも大きな軸方向寸法を有している。これにより、第1,第2,第3の筒状体60,62,64が相互に内外挿された状態において、第3の筒状体64の先端が、第1の筒状体60の先端よりも先端側に突出している。
【0059】
また、小径筒部88の基端には、外周側に突出する第3の係合爪90が設けられており、本実施形態では、第3の係合爪90が、周方向の全周に亘って環状に形成されている。
【0060】
そして、第3の筒状体64の内孔72において内径寸法が大きくされた大径筒部84の内周側に対して、プロテクタ52が先端側から挿入されて収納されている。本実施形態では、大径筒部84の最も奥方までプロテクタ52が挿入されており、即ちプロテクタ52の後壁部54と第3の筒状体64における環状壁部86とが相互に当接して、例えば凹凸嵌合や係止構造など、従来公知の固定手段によりプロテクタ52が第3の筒状体64に対して固定されている。尤も、後壁部54と環状壁部86とは相互に当接する必要はなく、両壁部54,86が相互に離隔した状態で、プロテクタ52が第3の筒状体64に対して固定されてもよい。特に、本実施形態では、大径筒部84にプロテクタ52が収納されることで、大径筒部84の内面とプロテクタ52の平板状部58,58とが相互に当接している。
【0061】
ここにおいて、第3の筒状体64における大径筒部84の軸方向中間部分には、
図4中の上下方向で貫通する挿通孔92が形成されている。挿通孔92は、ある程度の軸方向寸法と幅方向寸法(
図6中の上下方向寸法)を有する矩形孔として形成されている。
【0062】
そして、この挿通孔92には、内針ユニット16と外針ユニット22とを連結する連結部材94が嵌め入れられて組み付けられている。この連結部材94は、保護ハウジングとは別体として構成され、挿通孔92に嵌め入れられる挿通部96と、留置針組立体10の外部において内針ユニット16と外針ユニット22とを連結する連結部98とを備えており、挿通部96における一方の端部(
図4中の上端)に対して連結部98が連続して設けられている。なお、連結部材94は、挿通孔92に嵌め入れられて組み付けられることから、内針ユニット16の一部として把握することも可能である。
【0063】
挿通部96は、略矩形板形状とされており、挿通孔92と略等しい軸方向寸法及び幅方向寸法を有している。この挿通部96の略中央部分には、板厚方向(軸方向)で貫通する略矩形の連通孔100が形成されている。連通孔100の内周形状は、大径筒部84の内周形状と対応する略矩形状とされており、連結部材94が挿通孔92に嵌め入れられた状態(使用前の状態)において、大径筒部84の内孔と連通孔100とが相互に連通している。なお、挿通部96において連結部98が設けられる側と反対側の端部において、幅方向両側には、挿通孔92の開口周縁部よりも幅方向外方に突出する抜止突部102,102が形成されている。
【0064】
また、連結部98は、挿通部96よりも幅寸法が小さくされており、第1の筒状体60における切欠き74を通じて外部に突出していると共に、矩形筒部66よりも先端側にまで延び出している。この連結部98の先端には、内周側に突出する係止部104が設けられている。係止部104は略三角形の断面を有する爪状とされており、係止部104の先端側端面106と基端側端面108とが、それぞれ内周側に向かって相互に接近する方向に傾斜する傾斜面とされている。本実施形態では、連結部98の内周面において、係止部104よりも基端側には、幅方向中央を軸方向に延びる位置決め突部110が設けられている。
【0065】
このような構造とされた連結部材94が挿通孔92に嵌め入れられて、且つ大径筒部84の先端側からプロテクタ52が挿入されることで、プロテクタ52が、連通孔100にも挿通されている。これにより、プロテクタ52の平板状部58,58が、大径筒部84の内面だけでなく、連通孔100の内面にも当接している。これにより、挿通孔92からの連結部材94の脱落が防止され得る。
【0066】
以上の如き構造とされた内針ユニット16と外針ユニット22とが相互に組み付けられて連結されている。即ち、内針ハブ14からプロテクタ52を貫通して先端側に延びる内針12が外針ハブ20の基端側開口部30から挿入されて、止血弁機構36及び外針18に挿通されて、外針18よりも先端側まで突出している。
【0067】
これにより、第1の筒状体60よりも先端側に突出する係止部104が、外針ハブ20のフランジ状部32に外側から係止されていると共に、矩形筒部66よりも先端側に突出する第3の筒状体64における大径筒部84の先端部分が、外針ハブ20の基端側開口部30から外針ハブ20の内部に挿入されている。この大径筒部84の先端部分において外針ハブ20の内部に挿入されている部分が挿入部112とされており、外針ハブ20の周壁26が、係止部104と挿入部112とで内外から挟まれている。
【0068】
特に、本実施形態では、フランジ状部32における位置決め溝34と連結部98における位置決め突部110とが周方向で位置決めされており、位置決め溝34に位置決め突部110が入り込んでいる。これにより、内針ユニット16と外針ユニット22との相対回転が防止されている。
【0069】
以上の如き留置針組立体10の使用方法を、
図8~11を示して説明する。先ず、内針12と外針18とが重ね合わされた状態で、留置針組立体10を患者の血管に穿刺する。収容筒部48や外針ハブ20の先端部分でフラッシュバックを確認した後、例えば内針ハブ14における矩形筒部66の両側面(
図2中の左右方向両側面)を手指で把持して内針12を基端側に引き抜く。これにより、内針ハブ14の最も外周側に位置する第1の筒状体60が基端側に移動する。
【0070】
そして、第1の筒状体60がある程度基端側に移動すると、第1の係合爪76と第2の基端側係合爪80とが係合して、これらの係合後は、第1の筒状体60と共に第2の筒状体62が基端側に移動する。更に、第2の筒状体62がある程度基端側に移動すると、第2の先端側係合爪82と第3の係合爪90とが係合する。即ち、内針12を基端側に引き抜くことで、第1及び第2の筒状体60,62が順次基端側に引き出されるようになっている。なお、この時点では、第3の筒状体64に装着された連結部材94の係止部104が、外針ハブ20のフランジ状部32に係止されていることから、第3の筒状体64は基端側に移動しない。第1の筒状体60と第2の筒状体62と第3の筒状体64は、相対的に回転可能であってもよいし、例えば長さ方向に延びる凹凸等で引出方向の相対的な移動を許容しつつ周方向で相互に係合されることにより相対回転不能とされていてもよい。
【0071】
ここで、
図9に示されるように、第1及び第2の筒状体60,62を最も基端側まで引き出して内針12を最も基端側まで移動させた状態では、内針12の針先24は、プロテクタ52の内部に位置しており、且つ弾性腕部56,56の先端部分との当接位置よりも基端側に位置している。即ち、内針12が基端側に引き抜かれることで、内針12と弾性腕部56,56の先端部分との当接が解除されて、弾性腕部56,56の先端部分が付勢力に従って相互に接近する方向に変形する。これにより、内針12の針先24よりも先端側が弾性腕部56,56の先端部分に覆われて、内針12の針先24が保護されると共に、内針12に対して先端側へ移動する方向の外力が及ぼされた場合にも、針先24が弾性腕部56,56の先端部分に当接して、内針12の針先24の再露出が防止され得る。本実施形態では、引き抜いた内針12が全長に亘って第1,第2,第3の筒状体60,62,64及びプロテクタ52で覆われることから、フルカバータイプのプロテクタが構成されている。
【0072】
要するに、本実施形態ではフルカバータイプのプロテクタとされて、引き抜かれた内針12が、針先24までも含めて全長が第1,第2,第3の筒状体60,62,64で覆われている。また、プロテクタ52は、第3の筒状体64に対して軸方向で位置決めされていることから、内針12が引き抜かれて針先24がプロテクタ52で覆われた状態において、万一、第1,第2,第3の筒状体60,62,64を縮める方向の外力が及ぼされた場合でも、内針12の針先24がプロテクタ52に当たることで、第1,第2,第3の筒状体60,62,64が縮むことが防止され、内針12の再露出が防止され得る。
【0073】
また、本実施形態では、上述のように内針12の基端に固定された第1の筒状体60を引抜方向へ操作するだけで、第2及び第3の筒状体62,64が連動して引き延ばされ、外針ユニット22から引き出された内針12を引出しと同時に覆うようになっており、更に、第3の筒状体64に装着されたプロテクタ52が、内針12の針先24の引出しと同時に覆うようになっている。それ故、内針12によって第1~3の筒状体60,62,64やプロテクタ52を係止して引抜方向に連動させる必要がなく、内針12の外周面において部分的な突起や大径部などを設ける必要がない。このため、大径部などがプロテクタ52に干渉して内針12の引き抜き時にプロテクタ52が意図せぬ動作をしてしまう事態が防止されることに加え、引抜方向の連動部材数を少なくすることができ、作動安定性の向上も図られ得る。
【0074】
そして、弾性腕部56,56が相互に接近する方向へ弾性変形することで、平板状部58,58と大径筒部84及び連通孔100の内面との当接が解除されて、挿通孔92に嵌まり込んで位置決めされていた連結部材94が、挿通孔92から離脱する方向に変位可能とされる。
【0075】
ここで、更に内針12を引き抜くことでフランジ状部32に係止された係止部104の基端側端面108がフランジ状部32に当接する。これにより、連結部材94が挿通孔92から離脱する方向に変位可能とされていることから、内針12を引き抜くことで連結部材94が傾斜面である係止部104の基端側端面に沿って外方(留置針組立体10の側方であり、
図2中の左方)に移動して、係止部104のフランジ状部32への係止が解除される。
【0076】
そして、更に内針12を基端側に引き抜くことで第3の筒状体64において外針ハブ20に挿入されていた挿入部112も外針ハブ20から引き抜かれて、外針ユニット22から内針ユニット16が離脱され得る。その後、例えば外針ハブ20を患者の血管側に押し込んで(払い出し操作)、患者の血管に外針18の先端を十分に挿入することで外針ユニット22が留置されて、外針ハブ20にシリンジ等を接続することで患者にシリンジ内の薬液等を注入したりすることが可能となる。
【0077】
特に、本実施形態では、連結部材94の挿通部96において連結部材94の変位方向と反対側の端部には、挿通孔92の開口周縁部よりも幅方向外方に突出する抜止突部102,102が設けられている。これにより、
図11にも示されているように、抜止突部102,102が挿通孔92の開口周縁部に当接することで挿通孔92に対して変位可能とされた連結部材94の挿通孔92からの脱落が防止され得る。尤も、挿通部96における連通孔100内にプロテクタ52が挿通されていることによっても、連結部材94の挿通孔92からの脱落が防止され得る。
【0078】
以上の如き構造とされた本実施形態の留置針組立体10では、内針12を引き抜くことで、係止部104と外針ハブ20のフランジ状部32との係止が解除されて、内針ユニット16が外針ユニット22から離脱され得る。特に、連結部材94が、傾斜面である係止部104の基端側端面108に沿って移動することで、従来構造の留置針組立体のように、内針の引抜後に内針ユニットと外針ユニットを相互に反対方向に移動させるという面倒な操作が回避され得る。
【0079】
また、内針12を引き抜く前の初期状態では、外針ハブ20の周壁26が、係止部104と第3の筒状体64の先端における挿入部112とにより内外から挟まれていることから、内針ユニット16と外針ユニット22との連結状態が安定して維持され得る。
【0080】
更に、内針12を引き抜く前の初期状態では、プロテクタ52の平板状部58,58が、大径筒部84の内面及び連通孔100の内面の両方に対して面当たりで当接していることから、挿通孔92からの連結部材94の抜けがより確実に防止されると共に、第3の筒状体64内でのプロテクタ52の位置ずれも効果的に防止され得る。
【0081】
更にまた、連結部材94が、留置針組立体10から側方に突出するように変位することから、使用者が外針ハブ20の天面(
図2中の上面)側に指を置いても、連結部材94の移動の邪魔になりにくく、使用者が指によって外針ハブ20を先端側に押し出す操作を行いやすい。即ち、連結部材94が外針ハブ20の払い出し操作の邪魔になったり患者の皮膚に押し付けられたりすることなく、連結部材94の変位が安定して実現されて、ひいては内針ユニット16と外針ユニット22との連結解除もより確実に達成され得る。
【0082】
また、本実施形態では、内針ハブ14が多重筒構造とされており、複数の筒状体(実施形態では第1及び第2の筒状体60,62)を順次引き出すことで、内針12が内針ハブ14に収納されるようになっている。このような構造を採用することで、内針ハブ14の軸方向長さを小さくすることができて、留置針組立体10の小型化が図られる。特に、第3の筒状体64におけるプロテクタ52の装着位置(大径筒部84)よりも基端側で第1,第2,第3の筒状体60,62,64が相互に内外挿されていることから、例えばプロテクタの装着位置の外周側で複数の筒状体が内外挿される場合に比べて、内針ハブ14の大径化も回避され得る。
【0083】
更に、内針ハブ14において最も基端側に位置する第1の筒状体60の基端壁部70に内外に貫通する貫通孔78が形成されていることから、第1及び第2の筒状体60,62の引出しに際して内針ハブ14の内部が大きな陰圧となることがなく、第1及び第2の筒状体60,62の引出操作がスムーズに行われ得る。特に多重に内外挿された複数の筒状体のテレスコピック構造であっても、基端壁部70において外部連通されることから、内方の筒状体の内部にまで速やかに外気を導入することが可能となる。
【0084】
図12には、本発明の第2実施形態としての留置針組立体120の一部が示されている。留置針組立体120は、収納ハウジングを構成する内針ハブ14の大径筒部84に阻止部材としてのプロテクタ122が収容された構造を有している。
【0085】
プロテクタ122は、第1実施形態のプロテクタ52と同様に、例えばばね鋼のプレス加工品によって構成されており、弾性変形が許容されている。プロテクタ122は、後壁部54と、後壁部54の両端部(
図12中の上下方向の両端部)から先端側へ向けて突出する一対の弾性腕部124,124とを備えている。弾性腕部124,124は、それぞれ略平板形状とされており、板厚方向の曲げ弾性変形によって先端部分が相互に接近方向又は離隔方向に相対移動可能とされている。弾性腕部124,124は、相互に交差することなく延びており、先端が相互に離隔している。弾性腕部124,124は、前記第1実施形態の弾性腕部56,56と同様に、軸方向寸法が相互に異なっている。
【0086】
後壁部54の外面には凸部(図示せず)が形成されており、大径筒部84の内面には凹部(図示せず)が形成されており、後壁部54の凸部に大径筒部84の凹部が係合している。このため、弾性腕部124,124の変位前後によらずプロテクタ122が大径筒部84に係止されて、プロテクタ122が大径筒部84の開口側(図中の左側)への抜け出しを防止されている。また、内針12に直交する断面における大径筒部84の内周形状及び後壁部54の外周形状は略対応する矩形状とされ、プロテクタ122が大径筒部84に対して所定の軸回り位置になるように形成されている。なお、内針12に後壁部54の孔を通過できない凸部を設け、内針12に対するプロテクタ122の移動を規制してもよい。また、大径筒部84の内面やプロテクタ122の外面に凹凸等による係合部分を設けて、プロテクタ122が大径筒部84に対して軸回りに回転しないようにしてもよく、軸方向に延びるガイド凸やガイド凹を形成して大径筒部84に対するプロテクタ122の回転を規制してもよい。
【0087】
各弾性腕部124の先端には、弾性腕部124に対して傾斜して広がる針先保護部126が設けられている。針先保護部126は、弾性腕部124,124の対向方向(
図12中の上下方向)の内側へ向けて突出している。針先保護部126の端部は、弾性腕部124と略平行に対向するように曲げられた摺接部128とされており、針先保護部126が内針12の外周面に接する際の引っ掛かり等が防止されている。
【0088】
一対の針先保護部126,126の間に内針12が挿通されており、針先保護部126,126が内針12によって離隔する方向へ押し広げられることにより、弾性腕部124,124が
図12に示す弾性変形状態とされる。弾性変形状態とされた弾性腕部124,124が内針ハブ14の大径筒部84及び連結部材94の内周面に押し当てられることにより、連結部材94と大径筒部84が軸直角方向において相互に位置決めされている。本実施形態では、弾性腕部124,124の略全体が大径筒部84と連結部材94の内周面に当接しているが、例えば、弾性腕部124の先端部分だけが大径筒部84と連結部材94の内周面に当接するようにしてもよい。
【0089】
プロテクタ122は、案内部130を備えている。案内部130は、後壁部54の外周端部において弾性腕部124,124を外れた部分から先端側へ向けて突出している。案内部130は、軸方向に延びる支持部132と、支持部132の先端において内針12が位置する方向へ突出する針挿通部134とを有している。針挿通部134は、例えば軸直角方向に広がる板状とされており、軸方向に貫通するガイド孔136を有している。ガイド孔136は、プロテクタ122が内針ハブ14に装着された状態において、プロテクタ122に挿通された内針12の針軸上に位置しており、内針12を挿通することが可能とされている。ガイド孔136は、本実施形態に示す貫通孔の他、周上の一部が開放された切欠孔などであってもよい。なお、ガイド孔136として切欠孔を採用する場合には、内針12を一対の弾性腕部124,124の対向方向と直交する方向において位置決めするために、ガイド孔136は弾性腕部124,124の対向方向において開放されていることが望ましい。また、切欠孔を備える案内部130が相互に対向して2つ設けられて、それら案内部130の各切欠孔に内針12が挿通されるようにしてもよい。
【0090】
かくの如きプロテクタ122を備えた留置針組立体120において、穿刺後に内針12が図示しない外針ユニットから引き抜かれて、内針12がプロテクタ122の針先保護部126,126の間よりも基端まで移動すると、内針12によって押し広げられていた弾性腕部124,124が元の形状に復元する。即ち、
図13に示すように、弾性腕部124,124は先端側が相互に接近するように傾斜し、弾性腕部124,124の先端に設けられた針先保護部126,126が、相互に接近して、内針12の針軸の延長上において先端側へ移動する。これにより、内針12の針先24よりも先端側が針先保護部126,126によって覆われて、内針12の再突出がプロテクタ122によって阻止され、内針12の誤穿刺等が防止される。
【0091】
プロテクタ122は、案内部130を備えており、案内部130のガイド孔136に内針12が挿通されている。これにより、内針12のプロテクタ122に対する相対傾動が制限されており、特に、針先24のプロテクタ122に対する側方(
図13中の紙面直交方向)への移動が防止されている。それゆえ、針先24がプロテクタ122から側方へ露出するのを防ぐことができ、針先24がプロテクタ122によって効果的に保護される。案内部130は、内針12が貫通する後壁部54に対して先端側へ離れた位置に配されていることから、案内部130と後壁部54によって内針12が針軸方向に離れた2か所においてプロテクタ122と位置決めされており、内針12のプロテクタ122に対する傾動がより効果的に防止されている。
【0092】
もっとも、本実施形態において、針挿通部134を設けなくてもよいし、案内部130自体も必須ではない。針挿通部134を設けない場合には、支持部132が内針12の側方に位置することによって、内針12の側方への傾動が制限される。また、弾性腕部124,124の側部から内側へ向かって延びる板状部を設けることによって、内針12の引抜き時又はプロテクタ122の作動後において、内針12が弾性腕部124,124と当該板状部とによって囲まれるようにされて、内針12が弾性腕部124,124の対向位置に保持され易いようにしてもよい。かくの如き板状部を設ける場合等においては、案内部130を設けずとも、内針12の保持が実現され得る。また、弾性腕部124,124の摺接部128における内針12の当接部分に溝や切欠きを設けて、内針12が摺接部128に対してズレにくいようにしてもよい。
【0093】
前記第1実施形態では弾性腕部56,56が相互に交差して延びる構造のプロテクタ52を例示したが、本実施形態に示すような弾性腕部124,124が相互に交差しない構造のプロテクタ122を採用することもできる。なお、本実施形態に係る留置針組立体120においても、前記第1実施形態に係る留置針組立体10と同様の効果が発揮される。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0095】
例えば、前記実施形態では、プロテクタ52が収納される収納ハウジングが内針ハブ14により構成されていたが、この態様に限定されるものではない。即ち、内針を支持する固定筒部(及び収容筒部)を第1の筒状体とは別体構造として、内針が第1の筒状体の基端壁部の中央に設けられた中央孔を通じて先端側に延び出していると共に、内針に大径部を設けて、内針の引抜時に内針の大径部と中央孔の開口周縁部とが当接することで、内針の引抜きと同時に第1の筒状体が引き出される。これにより、内針が、前記実施形態と同様に第1,第2,第3の筒状体及びプロテクタによって保護される。即ち、収納ハウジングは内針ハブとしての機能を有している必要はない。
【0096】
また、前記実施形態では、係止部104と外針ハブ20の周壁26を挟み込む挿入部112が、大径筒部84の先端部分により構成されていたが、挿入部は、半割の筒状体や周方向で部分的に設けられた突片状であってもよい。尤も、挿入部は必須なものではない。例えば、外針ハブ20の基端面と第3の筒状体64の大径筒部84の先端面との突き合わされる周壁端面において互いに軸方向に内外挿される孔と突起を形成したり、第1の筒状体60の先端部において外針ハブ20への挿入部を設けても良く、或いは、プロテクタ52を外針ハブ20内へ突出させて内挿させても良い。
【0097】
更に、プロテクタの構造は限定されるものではなく、例えば弾性腕部は交差していなくてもよく、外針ハブ内に延在するようであってもよい。尤も、プロテクタは必須なものではなく、例えば引き出した複数の筒状体において引出方向と反対方向への移動を阻止する係止機構を設けることで、内針の針先の再露出を防止することも可能である。なお、内針の針先が保護されることは必須ではない。また、前記実施形態のプロテクタ52は、複数の筒状体において縮み方向への移動を阻止する機能、針先24を覆うプロテクタ機能、内針12の引抜きに伴って連結部材94の移動阻止を解除する機能を有するが、引き出した複数の筒状体において縮み方向への移動を阻止する係止機構を採用したり、プロテクタ52より基端側に筒状体の先端を塞ぐ部材を別に設けたりすれば、内針12の引抜きに伴って連結部材94の移動阻止を解除する機能だけをもたせる(プロテクタ機能がない)ことも可能になる。
【0098】
更にまた、前記実施形態では、内針ハブ14が複数の筒状体(第1,第2,第3の筒状体60,62,64)が相互に内外挿されることで構成されていたが、例えば蛇腹構造の筒状体等のように内針の全長と略等しい長さとされた1つの筒状体により構成されてもよく、また、実施形態の如きフルカバータイプのものに限定されることなく内針の一部だけを覆う部分カバータイプの筒状体も採用可能であって、当該筒状体にプロテクタが収納されると共に、連結部材が組み付けられるようになっていてもよい。
【0099】
また、前記実施形態では、プロテクタ52への内針12の挿通時に、弾性腕部56,56と内針12とが直接当接していたが、内針にスリーブを外挿して当該スリーブと弾性腕部が当接することで弾性腕部の弾性変形が阻止されるようになっていてもよい。この場合、例えば内針にスリーブと係合する大径部を設けて、内針の引抜きと共にスリーブが基端側に移動することで弾性腕部との当接が解除されるようになっていてもよい。これにより、内針の引抜時における摺動抵抗の低減が図られ得る。尤も、このようなスリーブに限定されず、本発明では、内針の引抜きに伴って連動する部材を採用し、当該連動部材によって阻止部材の移動や変形を許容する機構を採用し得る。また、内針の引抜きに伴って連動する部材と、変位によって阻止部材の移動や変形を許容する部材とを別部材とし、前者によって後者を変位させるようにしても良い。なお、スリーブ等を設ける場合、引き抜き方向の連動部材が多くなるため、安定した挙動の実現の困難化、構成複雑化、保護ハウジングの大型化といったデメリットが生じ、結果として、施術者の操作性が低減してしまう可能性がある。
【0100】
また、前記実施形態では、内針12の引抜きに伴い弾性変形によって針先を保護するプロテクタ52が採用されていたが、例えばWO(国際公開)2013/027355号公報に記載されているように、磁力を利用して、内針の引抜きに伴って変位が許容されるプロテクタ等を採用することも可能である。
【0101】
また、前記実施形態では、内針12と連結部材94との間に設けられて連結部材94の移動を阻止することで収納ハウジング14と外針ハブ20を連結状態に保持する阻止部材が、内針12の針先24を保護するプロテクタ52によって構成されていたが、針先保護のプロテクタとは別部材によってかかる阻止部材を構成することも可能である。具体的には、例えば、前記実施形態において、収納ハウジングを構成する第3の筒状体64の大径筒部84の基端側に、上記WO2013/027355号公報等に記載の如き内針の引抜きに伴って磁力で変位することで針先を保護する針先プロテクタを配することにより、内針の引抜きに伴う針先保護の機能を備えないで、連結部材94による連結状態の保持と解除の機能を発揮する阻止部材を当該針先プロテクタとは別に設けることも可能である。
【0102】
また、阻止部材も、例示の如き内針の引抜きに伴う弾性変形によって連結部材94による連結状態を解除するものに限定されない。例えば、上記の針先プロテクタと同様に、内針の引抜きに伴って磁力で変位することで連結部材による連結状態を解除するものや、内針の引抜きに伴って別途設けたスプリングを利用して変位することで連結部材による連結状態を解除するもの、内針の引抜きに伴って自重で重力を利用して変位することで連結部材による連結状態を解除するものなども採用可能である。
【0103】
また、前記実施形態では、外針ハブ20に対して直接に係止される連結部材94が採用されていたが、内針ユニット側に設けられる収納ハウジングを外針ユニットに対して連結し得るものであれば良い。例えば、外針ハブに対して着脱可能な別部材が装着されるような場合、内針ハブの引抜きに至るまで当該別部材が外針ハブから離脱されなければ、当該部材を含んで外針ユニットを構成するものと考えられるし、或いは、当該部材を介して外針ハブに連結されるものと考えられる。例えば、内針ハブとの接続前に外針ハブ基端を覆って露出を防ぐための部材や止血部材等を外針ハブに連結して外針ハブユニットとしても良い。例えば、外針ハブが複数の筒状部材を固定することによって構成されていても良い。それ故、本発明における連結部材は、そのような外針ハブとは別部材に対して係止されるものであっても良い。また、前記実施形態では、連結部材は外針ハブ外面と係合する部材であったが、外針ハブ内面と係合する部材であってもよい。例えば、挿入部112の先端に開口して軸方向へ延びる切欠きを周方向の2か所に形成し、それら切欠きの周方向間において撓み変形によって内針12の軸直方向に移動可能な連結部材としてのアームを形成し、当該アームの内側にプロテクタ122を位置させることで、外針ハブ20との連結を実現してもよい。また、例えば、押し子40の内面に環状の凹部又は凸部を形成するなどして、プロテクタ122を押し子40の内面と係合させることにより、プロテクタ122自体に外針ハブ20との連結機能を持たせてもよい。これら何れの場合でも、内針の引抜きに伴うプロテクタの変形又は変位によって、連結部材を構成するアーム又はプロテクタの移動が許容されて、収納ハウジングの外針ハブへの連結状態が解除される。
また、本発明は、もともと以下(i)~(ix)に記載の各発明を何れも含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
本発明は、
(i) 内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、プロテクタを装着した内針が外針に対して引抜可能に挿通されており、該内針の引抜きに伴う針先への移動によって該プロテクタが変形又は変位して該針先を保護する留置針組立体において、前記内針ユニットが、前記プロテクタを収納する収納ハウジングを備えていると共に、該収納ハウジングを前記外針ハブへ連結する連結部材が設けられており、該プロテクタによって該連結部材の移動が阻止されて、該収納ハウジングと該外針ハブが連結状態に保持されると共に、該内針の引抜きに伴う該プロテクタの変形又は変位によって該連結部材の移動が許容されて、該収納ハウジングの該外針ハブへの連結状態が解除可能とされている留置針組立体、
(ii) 前記連結部材が前記外針ハブの基端側開口部への係止部を有していると共に、前記収納ハウジングの先端部分が該外針ハブの基端側開口部から挿し込まれており、該外針ハブの周壁が該連結部材の係止部と該収納ハウジングの先端部分とにより内外で挟まれている(i)に記載の留置針組立体、
(iii) 前記連結部材が前記収納ハウジングの内孔と連通する連通孔を備えており、前記内針が挿通されて弾性変形が阻止された前記プロテクタが該内孔と該連通孔の両方の内面にわたって当接することで該連結部材の該収納ハウジングに対する移動が阻止されている(i)又は(ii)に記載の留置針組立体、
(iv) 前記内針が挿通されて弾性変形を阻止された前記プロテクタと前記収納ハウジングの内面との当接部分が面当たりである(i)~(iii)の何れか1項に記載の留置針組立体、
(v) 前記収納ハウジングには、先端側に位置する部分において外周面に一対の把持部が設けられている(i)~(iv)の何れか1項に記載の留置針組立体、
(vi) 前記連結部材と前記外針ハブとの係止部分には傾斜面が設けられており、前記内針を引き抜くことで該連結部材が該傾斜面に沿って移動して該外針ハブとの連結が解除される(i)~(v)の何れか1項に記載の留置針組立体、
(vii) 内針ハブを含む内針ユニットと外針ハブを含む外針ユニットが離脱可能に連結されて、内針が外針に対して引抜可能に挿通されており、該内針の引抜きに伴って該内針を収納する収納ハウジングを備えていると共に、該収納ハウジングを前記外針ユニットへ連結する連結部材が設けられており、前記内針と該連結部材との間に阻止部材が設けられて、該阻止部材によって該連結部材の移動が阻止されることで該収納ハウジングと該外針ユニットが該連結部材によって連結状態に維持されると共に、該内針の引抜きに伴って該阻止部材が変位することによって該連結部材の移動が許容されて、該収納ハウジングの該外針ユニットへの連結状態が解除可能とされている留置針組立体、
(viii) 引抜可能とされた内針と、引き抜かれた該内針が収容される保護ハウジングを備えていると共に、該保護ハウジングの先端部分に前記内針の引抜きに伴って変位する変位部材が収容されており、該保護ハウジングが複数の筒状体からなる多重筒構造とされて、該保護ハウジングにおける該変位部材の装着位置よりも基端側に外れた位置で該複数の筒状体が内外挿されており、該内針が引き抜かれることで該複数の筒状体が順次引き出されて該内針が該保護ハウジングに収容される留置針組立体、
(ix) 外針から引抜可能に挿通される内針を備えた留置針組立体において、
引き抜かれた前記内針が収容される保護ハウジングを備えていると共に、該保護ハウジングが、複数の筒状体が内外挿された多重筒構造とされており、該内針が引き抜かれることで該複数の筒状体が順次引き出されて、順次引き出された該複数の筒状体のうち、最も基端側の筒状体の基端には、内外で貫通する貫通孔を備えた基端壁部が設けられている留置針組立体、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、内針を引き抜くことで弾性変形するプロテクタを巧く利用して、収納ハウジングと外針ハブを連結している連結部材による連結状態が解除可能とされ得る。内針ユニットに対して外針ユニットの全体を軸直角方向へ移動させる必要もなくなり、作業の容易化が実現可能になる。なお、本態様におけるプロテクタとしては、例えば、内挿された内針によって弾性変形を阻止されて連結部材を収納ハウジングと外針ハブの連結状態に保持すると共に、内針の引抜きに伴って弾性変形することで連結部材の移動を許容し得る、弾性変形可能なプロテクタを採用することも可能である。
上記(ii)に記載の発明では、内針の引抜前における外針ユニットと内針ユニットとの連結が、より安定して実現され得る。
上記(iii)に記載の発明では、内針の引抜前においてプロテクタによる連結部材の収納ハウジングに対する位置決めの安定性が向上され得て、例えば連結部材のガタツキを小さく抑えることも可能になる。
上記(iv)に記載の発明では、収納ハウジングに対するプロテクタの当接領域が周方向に設定されることで、収納ハウジングに対するプロテクタの位置の安定性が向上され得ることとなり、その結果、プロテクタによって移動が制限される連結部材の収納ハウジングに対する位置安定性の向上も図られ得る。
上記(v)に記載の発明では、針先端に近い部位を施術者が把持することが可能になり、穿刺操作が安定して実現される。
上記(vi)に記載の発明では、連結部材を変位させるために特別な付勢手段を設ける必要がなく、内針を引き抜く操作のみで連結部材の外針ハブへの係止を解除することも可能になる。
また、上記(i)~(vi)の何れかの態様に係る留置針組立体において、前記内針を引き抜くことで、前記連結部材が前記収納ハウジングに対して患者の体表面に沿う方向となる側方へ向けて移動可能とされている態様も、採用され得る。
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、内針ユニットの離脱に際しての連結部材の移動を、患者の体表面が位置する下方や作業者が操作する上方を避けて、側方へ向けて行うことができる。それ故、施術者の操作に際して連結部材に干渉して操作性が低下されることが防止される。
上記(vii)に記載の発明では、収納ハウジングと外針ユニットを連結する連結部材の移動を阻止する阻止部材が設けられると共に、内針の引抜きに伴って阻止部材が変位することで、連結部材による収容ハウジングと外針ユニットの連結状態の解除が可能になる。それ故、例えば収納ハウジングと外針ユニットとの連結状態の安定性と、連結状態解除の操作性とを、両立して向上させることも可能になる。
上記(viii)に記載の発明では、保護ハウジングが複数の筒状体の内外挿構造とされることで、保護ハウジング、ひいては留置針組立体の長さ方向の小型化が図られる。特に、複数の筒状体がプロテクタの装着位置よりも基端側で内外挿されることで、例えばプロテクタの外周側で内外挿される場合に比べて、径方向での小型化も図られる。さらに、本態様に係る留置針組立体では、変位部材が存在することで、保護ハウジングを有する留置針組立体において、保護ハウジングに持たせていた機能を変位部材に持たせることができ、作動安定性の向上が図られる。例えば、変位部材を針先を覆うプロテクタとすることで、内針先端の露出を更に効果的に防止することができる。例えば、変位部材を保護ハウジングから分離しないようにすることで、変位部材によって、保護ハウジングが内針を収容した状態から初期状態に戻ることを防ぐことができ、保護ハウジングを構成する筒状体自体に係止機構を設ける必要がなくなるため、筒状体同士を係止させる際の抵抗により、内針ユニットが外針ユニットから分離してしまう事態を防止することが可能になる。例えば、変位部材を連結部材の移動を阻止する部材とすることで、内針の引き抜き動作と連結部材の連結解除とを連動させることができる。このように機能を分けることで、作動安定性を向上させつつ小型を維持することも可能になって、施術者の操作性の改善も図られ得る。なお、本態様に係る留置針組立体では、上記(i)~(vii)の何れかの態様に係る留置針組立体を併せて適用することも可能であり、その際、上記(i)~(vii)の何れかの態様に係る留置針組立体においてプロテクタを収納する収納ハウジングを、本態様における保護ハウジングを用いて構成することも可能である。
上記(ix)に記載の発明では、収納ハウジングが複数の筒状体の内外挿構造とされることで、収納ハウジング、ひいては留置針組立体の長さ方向の小型化が図られる。このような収納ハウジングでは、ハウジングを内外で貫通する貫通孔を設けることで、速やかな引抜操作等に際してもハウジング内部の陰圧が軽減され得て、筒状体の引出操作をより迅速に行うこともできる。なお、本態様に係る留置針組立体では、上記(i)~(viii)の何れかの態様に係る留置針組立体を併せて適用することも可能であり、その際、上記(i)~(vii)の何れかの態様に係る留置針組立体においてプロテクタを収納する収納ハウジングや上記(viii)の態様に係る留置針組立体における保護ハウジングを、本態様における保護ハウジングを用いて構成することも可能である。
【符号の説明】
【0104】
10,120:留置針組立体、12:内針、14:内針ハブ(収納ハウジング、保護ハウジング)、16:内針ユニット、18:外針、20:外針ハブ、22:外針ユニット、24:針先、26:周壁、28:カシメピン、30:基端側開口部、32:フランジ状部、34:位置決め溝、36:止血弁機構、38:ディスク弁、40:押し子、42:押し子ガイド、44:スリット、46:固定筒部、48:収容筒部、50:通気フィルタ、52,122:プロテクタ(阻止部材)、54:後壁部、56,124:弾性腕部、58:平板状部、60:第1の筒状体、62:第2の筒状体、64:第3の筒状体、66:矩形筒部、68:円筒部、70:基端壁部、72:内孔、74:切欠き、76:第1の係合爪、78:貫通孔、80:第2の基端側係合爪、82:第2の先端側係合爪、84:大径筒部、86:環状壁部、88:小径筒部、90:第3の係合爪、92:挿通孔、94:連結部材、96:挿通部、98:連結部、100:連通孔、102:抜止突部、104:係止部、106:先端側端面、108:基端側端面、110:位置決め突部、112:挿入部、126:針先保護部、128:摺接部、130:案内部、132:支持部、134:針挿通部、136:ガイド孔