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特許7435610二次電池、電池パック、電子機器、電動工具及び電動車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】二次電池、電池パック、電子機器、電動工具及び電動車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/586 20210101AFI20240214BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20240214BHJP
   H01M 50/593 20210101ALI20240214BHJP
   H01M 50/578 20210101ALI20240214BHJP
   H01M 50/538 20210101ALI20240214BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20240214BHJP
【FI】
H01M50/586
H01M10/0587
H01M50/593
H01M50/578
H01M50/538
H01M50/342 101
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021539818
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2020018689
(87)【国際公開番号】W WO2021029115
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019148788
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】袖山 国雄
(72)【発明者】
【氏名】國分 範昭
(72)【発明者】
【氏名】梅川 雅文
(72)【発明者】
【氏名】長沼 脩
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】孫 銘
【審査官】村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-243684(JP,A)
【文献】特開2017-103029(JP,A)
【文献】特開2000-011981(JP,A)
【文献】特開2008-192323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0587
H01M 50/30-50/392
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して帯状の正極と帯状の負極とが積層され、巻回された構造を有する電極巻回体と、電解液と、前記正極に接続された正極タブが外装缶に収容され、
前記外装缶は開放端部を有し、前記開放端部には電池蓋が設けられており、前記電池蓋と前記正極タブの間に安全弁機構を有し、前記正極タブの一端は前記正極に接続され、他端は前記安全弁機構に接続されている二次電池において、
前記電極巻回体のうち、前記正極タブ側の端部の近傍に絶縁体が配置され、
前記電極巻回体及び前記絶縁体は、それぞれの中央部に中心孔を有し、
前記絶縁体の中心孔の形状が円形状、多角形状、又は、円形と多角形を組み合わせた形状とされ、
前記電極巻回体の中心孔の位置と前記絶縁体の中心孔の位置が同軸上に並ぶように、前記絶縁体が配置され、
前記正極タブが前記安全機構と前記絶縁体の中心孔の間に配置され、
前記絶縁体の中心孔の直径又はサイズは、前記電極巻回体の中心孔の直径よりも大きく、かつ、正極タブの幅の1.1倍よりも小さい、二次電池。
【請求項2】
前記安全弁機構と前記正極タブの間には安全弁サブディスクが設けられており、
前記絶縁体の中心孔の直径又はサイズは、前記安全弁サブディスクの直径の1.03倍よりも大きい、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記絶縁体の中心孔と前記電極巻回体の中心孔にそれぞれ重なるように、両者の間に不織布が設けられている、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記絶縁体はPET、PP又はベークライトを含む、請求項1からの何れかに記載の二次電池。
【請求項5】
前記絶縁体の中心孔と前記絶縁体の外周部の間に、一又は複数の第2の孔が設けられている、請求項1からの何れかに記載の二次電池。
【請求項6】
前記第2の孔は、前記電解液、又は、前記電極巻回体の内部で発生したガスを通すための孔である、請求項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記絶縁体の中心孔と前記絶縁体の外周部の間に、第3の孔が設けられており、
前記第3の孔を介して、前記正極タブが前記電極巻回体側から外側に延出されている、請求項1からの何れかに記載の二次電池。
【請求項8】
前記第3の孔は扇形を有している、請求項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記外装缶の底側に負極タブを有し、
前記負極タブの一端は前記負極に接続されており、他端は前記外装缶に接続されている、請求項1からの何れかに記載の二次電池。
【請求項10】
請求項1からの何れかに記載の二次電池と、
前記二次電池を制御する制御部と、
前記二次電池を内包する外装体と
を有する電池パック。
【請求項11】
請求項1からの何れかに記載の二次電池、又は、請求項1に記載の電池パックを有する電子機器。
【請求項12】
請求項1に記載の電池パックを有し、前記電池パックを電源として使用する電動工具。
【請求項13】
請求項1からの何れかに記載の二次電池を有し、
前記二次電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置を有する電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池、電池パック、電子機器、電動工具及び電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は自動車や機械工具などに用途が拡大されている。自動車や機械工具は、外部から衝撃が加わって、電池が破損することがあるため、電池の耐衝撃性が重要な要因の一つとなっていて、様々な開発研究が行われている。
【0003】
特許文献1では、中心孔と円周方向に7個以上の開口部を持った絶縁板を開示している。このような絶縁板では、急激な温度上昇による電池内でのガス発生時に、発生したガスを絶縁板の孔と開口部から逃すことで、電池の破裂を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2014-503978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法だと、耐衝撃性が低い虞があった。巻回装置で作製した電池素子(電極巻回体)では、僅かな巻ずれにより貫通孔付近で電極巻回体のトップ側に隆起部が発生することがあった。電池への衝撃で電極巻回体が外装缶内で動いたとき、隆起部がトップ側の絶縁板に衝突をして、安全弁機構にダメージを与えてしまい、安全弁機構が誤作動してしまうことがあった。
【0006】
従って、本発明は、外部からの衝撃に強い電池を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、セパレータを介して帯状の正極と帯状の負極とが積層され、巻回された構造を有する電極巻回体と、電解液と、正極に接続された正極タブが外装缶に収容され、
外装缶は開放端部を有し、開放端部には電池蓋が設けられており、電池蓋と正極タブの間に安全弁機構を有し、正極タブの一端は正極に接続され、他端は安全弁機構に接続されている二次電池において、
電極巻回体のうち、正極タブ側の端部の近傍に絶縁体が配置され、
電極巻回体及び絶縁体は、それぞれの中央部に中心孔を有し、
絶縁体の中心孔の形状が円形状、多角形状、又は、円形と多角形を組み合わせた形状とされ、
電極巻回体の中心孔の位置と絶縁体の中心孔の位置が同軸上に並ぶように、絶縁体が配置され、
正極タブが安全機構と絶縁体の中心孔の間に配置され、
絶縁体の中心孔の直径又はサイズは、電極巻回体の中心孔の直径よりも大きく、かつ、正極タブの幅の1.1倍よりも小さい、二次電池である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の少なくとも実施の形態によれば、自動車や機械工具などに都合の良い耐衝撃性の高い電池を実現することができる。なお、本明細書で例示された効果により本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施の形態に係る電池の概略断面図である。
図2図2は、一実施の形態に係る絶縁体の平面図である。
図3図3は、一実施の形態に係る電池のトップ側の断面図である。
図4図4は、衝撃試験と過負荷試験の合格率のグラフである。
図5図5Aから図5Cは、絶縁体、中心孔のない不織布とそれらの一体物の平面図である。
図6図6Aは、中心孔のある不織布の平面図であり、図6Bは、絶縁体と図6Aの不織布を貼り合せた一体物の平面図である。
図7図7はOCV不良率のグラフである。
図8図8A及び図8Bは、絶縁体の変形例を示す平面図である。
図9図9は、本発明の応用例としての電池パックの説明に使用する接続図である。
図10図10は、本発明の応用例としての電動工具の説明に使用する接続図である。
図11図11は、本発明の応用例としての無人航空機の説明に使用する接続図である。
図12図12は、本発明の応用例としての電動車両の説明に使用する接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態等について図面を参照しながら説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
<1.一実施の形態>
<2.変形例>
<3.応用例>
以下に説明する実施の形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施の形態等に限定されるものではない。
【0011】
本発明の実施の形態では、二次電池として、円筒形状のリチウムイオン電池を例にして説明する。勿論、リチウムイオン電池以外の他の電池や円筒形状以外の電池が用いられても良い。
【0012】
<1.一実施の形態>
まず、リチウムイオン電池の全体構成に関して説明する。図1は、リチウムイオン電池1の概略断面図である。リチウムイオン電池1は、図1に示すように、電池缶11(外装缶)の内部に電極巻回体20が収納されている円筒型のリチウムイオン電池1である。
【0013】
具体的には、リチウムイオン電池1は、円筒状の電池缶11の内部に、一対の絶縁体12,13と、電極巻回体20とを備えている。リチウムイオン電池1は、例えば、さらに、電池缶11の内部に、熱感抵抗(PTC)素子及び補強部材などのうちのいずれか1種類又は2種類以上を備えていてもよい。
【0014】
[電池缶]
電池缶11は、主に、電極巻回体20を収納する部材である。この電池缶11は、一端部が開放されると共に他端部が閉塞された円筒状の容器である。すなわち、電池缶11は、開放された一端部(開放端部11N)を有している。この電池缶11は、鉄、アルミニウム及びそれらの合金などの金属材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。ただし、電池缶11の表面において、ニッケルなどの金属材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上がめっき処理されていてもよい。
【0015】
[絶縁体]
絶縁体12,13は、電極巻回体20の巻回軸方向(図1の鉛直方向)に対して略垂直な面を有するシート状の部材である。絶縁体12,13は、互いに電極巻回体20を挟むように電極巻回体20の端部に隣接して配置されている。絶縁体12,13の材質としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ベークライトなどが用いられる。ベークライトには、フェノール樹脂を紙又は布に塗布した後に加熱して作製される、紙ベークライトや布ベークライトがある。
【0016】
トップ側(例えば、電池缶11の開放端部11N側)の絶縁体12は図2に示されるような形状をしている。絶縁体12の中心孔41(第1の孔)と円周方向(絶縁体12の中心孔41と外周部の間)に孔42(第2の孔)があり、これらは電解液注入時に電解液を通すためやガス発生時に気体を通すための孔である。円周方向(絶縁体の中心孔と外周部の間)には、さらに、扇形の孔43(第3の孔)が空いていて、これは正極タブ25を電極巻回体20側から安全弁機構30側(外側)へと延出させるための孔である。安全弁機構30の下側に正極タブ25、トップ側の絶縁体12の中心孔41と電極巻回体20の中心孔20Cが配置され、トップ側の絶縁体12の中心孔41と電極巻回体20の中心孔20Cは同軸上に配置されている。
【0017】
[かしめ構造]
電池缶11の開放端部11Nには、電池蓋14及び安全弁機構30がガスケット15を介して、かしめられており、かしめ構造11R(クリンプ構造)が形成されている。これにより、電池缶11の内部に電極巻回体20などが収納された状態において、その電池缶11は密閉されている。
【0018】
[電池蓋]
電池蓋14は、電池缶11の内部に電極巻回体20などが収納された状態において、その電池缶11の開放端部11Nを閉塞する部材である。この電池蓋14は、電池缶11の形成材料と同様の材料を含んでいる。電池蓋14のうち中央領域は、図1の鉛直方向に突出している。これにより、電池蓋14のうちの中央領域以外の領域(周辺領域)は、PTC素子を介して安全弁機構30に接触している。
【0019】
[ガスケット]
ガスケット15は、主に、電池缶11(折り曲げ部11P)と電池蓋14との間に介在することにより、その折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間を封止する部材である。ただし、ガスケット15の表面には、例えば、アスファルトなどが塗布されていてもよい。
【0020】
ガスケット15は、絶縁性材料を含んでいる。絶縁性材料の種類は特に限定されないが、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリプ口ピレン(PP)などの高分子材料である。電池缶11と電池蓋14とを互いに電気的に分離しながら、折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間が十分に封止されるからである。
【0021】
[安全弁機構]
安全弁機構30は、電池蓋14と正極タブ25の間に配置され、主に、電池缶11の内部の圧力(内圧)が上昇した際に、必要に応じて電池缶11の密閉状態を解除することにより、その内圧を開放する。電池缶11の内圧が上昇する原因は、例えば、充放電時において電解液の分解反応に起因して発生するガスなどである。
【0022】
[電極巻回体]
円筒形状のリチウムイオン電池では、帯状の正極21と帯状の負極22がセパレータ23を挟んで渦巻き状に巻回されて、電解液に含浸された状態で、電池缶11に収納されている。図示しないが、正極21、負極22はそれぞれ、正極集電体、負極集電体の片面又は両面に正極活物質層、負極活物質層を形成したものである。正極集電体の材料は、アルミニウムやアルミニウム合金を含む金属箔である。負極集電体の材料は、ニッケル、ニッケル合金、銅や銅合金を含む金属箔である。セパレータ23は多孔質で絶縁性のあるフィルムであり、正極21と負極22とを電気的に絶縁しながら、リチウムイオンの移動を可能にしている。
【0023】
電極巻回体20の中心には、正極21、負極22及びセパレータ23を巻回させる際に生じた空間(中心孔20C)が設けられており、中心孔20Cには、センターピン24が挿入されている(図1)。ただし、センターピン24は省略可能である。
【0024】
正極21には、例えば、正極タブ25の一端が接続されていると共に、負極22には、例えば、負極タブ26の一端が接続されている。正極タブ25は、例えば、電極巻回体20のトップ側に設けられており、アルミニウムなどの導電性材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。この正極タブ25の他端は、例えば、安全弁機構30に接続されているため、電池蓋14と電気的に接続されている。
【0025】
負極タブ26は、例えば、電極巻回体20のボトム側(電池缶11の底側)に設けられており、ニッケルなどの導電性材料を含んでいる。この負極タブ26の他端は、例えば、電池缶11に接続されているため、その電池缶11と電気的に接続されている。
【0026】
電極巻回体20に含まれる正極21、負極22、セパレータ23及び電解液のそれぞれの詳細な構成、材質に関しては、後述する。
【0027】
[正極]
正極活物質層は、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である正極材料(正極活物質)を少なくとも含み、さらに、正極結着剤及び正極導電剤などを含んでいてもよい。正極材料は、リチウム含有化合物(例えば、リチウム含有複合酸化物及びリチウム含有リン酸化合物)が好ましい。
【0028】
リチウム含有複合酸化物は、例えば、層状岩塩型又はスピネル型の結晶構造を有している。リチウム含有リン酸化合物は、例えば、オリビン型の結晶構造を有している。
【0029】
正極結着剤は、合成ゴム又は高分子化合物を含んでいる。合成ゴムは、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム及びエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及びポリイミドなどである。
【0030】
正極導電剤は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック又はケッチェンブラックなどの炭素材料である。ただし、正極導電剤は、金属材料及び導電性高分子でもよい。
【0031】
[負極]
負極集電体の表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体に対する負極活物質層の密着性が向上するからである。粗面化の方法は、例えば、電解法を利用して微粒子を形成し、負極集電体の表面に凹凸を設ける手法がある。電解法により作製された銅箔は、一般的に電解銅箔と呼ばれている。
【0032】
負極活物質層は、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である負極材料(負極活物質)を少なくとも含み、さらに、負極結着剤及び負極導電剤などを含んでいてもよい。
【0033】
負極材料は、例えば、炭素材料を含む。リチウムの吸蔵放出時における結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度が安定して得られるからである。また、炭素材料は負極導電剤としても機能するため、負極活物質層の導電性が向上する。
【0034】
炭素材料は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、黒鉛、低結晶性炭素、又は非晶質炭素である。炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状又は鱗片状を有している。
【0035】
また、負極材料は、例えば金属系材料を含む。金属系材料の例としては、Li(リチウム)、Si(ケイ素)、Sn(スズ)、Al(アルミニウム)、Zr(亜鉛)、Ti(チタン)が挙げられる。金属系元素は、他の元素と化合物、混合物又は合金を形成しており、その例としては、酸化ケイ素(SiOx(0<x≦2))、炭化ケイ素(SiC)又は炭素とケイ素の合金、チタン酸リチウム(LTO)が挙げられる。
【0036】
リチウムイオン電池1では、完全充電時の開回路電圧(すなわち電池電圧)が4.25V以上であると、その完全充電時の開回路電圧が低い場合と比較して、同じ正極活物質を用いても単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなる。これにより、高いエネルギー密度が得られる。
【0037】
[セパレータ]
セパレータ23は、樹脂を含む多孔質膜であり、2種類以上の多孔質膜の積層膜でもよい。樹脂は、ポリプロピレン及びポリエチレンなどである。
【0038】
セパレータ23は、多孔質膜を基材層として、その片面又は両面に樹脂層を含んでいてもよい。正極21及び負極22のそれぞれに対するセパレータ23の密着性が向上するため、電極巻回体20の歪みが抑制されるからである。
【0039】
樹脂層は、PVdFなどの樹脂を含んでいる。この樹脂層を形成する場合には、有機溶剤に樹脂が溶解された溶液を基材層に塗布したのち、その基材層を乾燥させる。なお、溶液中に基材層を浸漬させたのち、その基材層を乾燥させてもよい。樹脂層には、無機粒子又は有機粒子を含んでいることが、耐熱性、電池の安全性向上の観点で好ましい。無機粒子の種類は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、タルク、シリカ、雲母などである。また、樹脂層に代えて、スパッタ法、ALD(原子層堆積)法などで形成された、無機粒子を主成分とする表面層を用いてもよい。
【0040】
[電解液]
電解液は、溶媒及び電解質塩を含み、必要に応じてさらに添加剤などを含んでいてもよい。溶媒は、有機溶媒などの非水溶媒、又は水である。非水溶媒を含む電解液を非水電解液という。非水溶媒は、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ラクトン、鎖状カルボン酸エステル又はニトリル(モノニトリル)などである。
【0041】
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの塩のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。ただし、電解質塩は、例えば、リチウム塩以外の塩を含んでいてもよい。このリチウム以外の塩は、例えば、リチウム以外の軽金属の塩などである。
【0042】
電解質塩の代表例はリチウム塩であるが、リチウム塩以外の塩を含んでいてもよい。リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2SF6)などである。これらの塩を混合して用いることもでき、中でも、LiPF6、LiBF4を混合して用いることが、電池特性向上の観点で好ましい。電解質塩の含有量は特に限定されないが、溶媒に対して0.3mol/kgから3mol/kgであることが好ましい。
【0043】
[リチウムイオン電池の作製方法]
続いて、二次電池の製造方法に関して説明する。まず、正極21を作製する場合には、正極活物質、正極結着剤及び正極導電剤を混合することにより正極合剤を作製する。続いて、有機溶剤に正極合剤を分散させることにより、ペース卜状の正極合剤スラリーを作製する。続いて、正極集電体の両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、乾燥させることにより、正極活物質層を形成する。続いて、正極活物質層を加熱しながら、ロールプレス機を用いて正極活物質層を圧縮成型し、正極21が得られる。
【0044】
負極22を作製する場合にも、上記した正極21と同様の手順により行う。
【0045】
次に、溶接法を用いて正極集電体、負極集電体に、それぞれ正極タブ25、負極タブ26を接続する。続いて、セパレータ23を介して正極21及び負極22を積層したのち、それらを巻回し、セパレータ23の最外周面に固定テープ31を貼付することにより、電極巻回体20を形成する。続いて、電極巻回体20の中心孔20Cにセンターピン24を挿入する。
【0046】
続いて、一対の絶縁体で電極巻回体20を挟みながら、電極巻回体20を電池缶11の内部に収納する。次に、溶接法を用いて正極タブ25の一端を安全弁機構30に接続すると共に、負極タブ26の一端を電池缶11に接続する。
【0047】
続いて、ビーディング加工機(溝付け加工機)を用いて電池缶11を加工することにより、電池缶11に窪みを形成する。続いて、電池缶11の内部に電解液を注入し、電極巻回体20に含浸させる。続いて、電池缶11の内部にガスケット15と共に電池蓋14及び安全弁機構30を収納する。
【0048】
次に図1に示したように、電池缶11の開放端部11Nにおいてガスケット15を介して電池蓋14及び安全弁機構30をかしめることにより、かしめ構造11Rを形成する。最後に、プレス機を用いて、電池缶11を電池蓋14により閉塞することによって、二次電池が完成する。
【実施例
【0049】
以下、上記のようにして作製したリチウムイオン電池1を用いて、トップ側の絶縁体12について試験した実施例に基づいて、又は、不織布46を貼り付けたトップ側の絶縁体12について試験を行った実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0050】
図3のように、電極巻回体20の上にトップ側の絶縁体12を配置し、絶縁体12の扇形の孔43から突出した正極タブ25を絶縁体12の上に配置し、正極タブ25を安全弁機構30に接続した。安全弁機構30と正極タブ25との間には、安全弁サブディスク45が配置され、電極巻回体の中心孔20Cと略同軸上に配置されている。安全弁サブディスク45に直接、物理的衝撃が加わると安全弁機構30が誤作動する。電極巻回体20の中心孔20Cの直径を3(mm)とし、安全弁サブディスク45の直径を5.35(mm)とし、正極タブ25の幅を6.4(mm)とした。絶縁体12の素材はPET樹脂とした。絶縁体12の中心孔41の形状を円形状とした。
【0051】
中心孔の直径が2(mm)から9(mm)までのトップ側の絶縁体12を配置した電池1を用意し、衝撃試験と過負荷試験を行った。衝撃試験はUN38.3規格に基づくもので、回転ドラム型試験機を用いた。安全弁機構30が作動しなかった電池1を合格とした。過負荷試験は、電池1に40(A)から50(A)の電流値にて充放電を行い、電池1が電気的に短絡(ショート)しなかった場合を合格とし、合格率を求めた。試験に使用した電池1の数は各試験に対して20個ずつである。
【0052】
図4に衝撃試験と過負荷試験の結果を示す。両方の試験の合格率が高い範囲は、試験したうちの一部の中心孔41の直径に限られることが分かる。図4の、両試験の合格率が90%以上である範囲を実施例とし、90%未満である範囲を比較例とすると、絶縁体12の中心孔41の直径は3(mm)から7(mm)であることが好ましい。3(mm)は電極巻回体20の中心孔20Cの直径に等しく、7(mm)は正極タブ25の幅を1.1倍にした大きさである。したがって、電池1が外部からの衝撃に強くあるためには、絶縁体12の中心孔41の直径は、電極巻回体20の中心孔20Cの直径より大きく、正極タブ25の幅を1.1倍にした大きさより小さいことが好ましいと言える。
【0053】
図4のように、絶縁体12の中心孔の直径が3(mm)より大きいとき、衝撃試験の合格率が高かった。これは、絶縁体12の中心孔の直径が電極巻回体20の中心孔の直径より大きいと、衝撃試験時(又は、外部から電池1に衝撃が加わったとき)に電極巻回体20の中心孔付近にある隆起部が絶縁体12と衝突を避けることができ、安全弁サブディスク45に衝突することを防ぎ、安全弁機構30が誤作動しにくいからと考えられる。また、絶縁体12の中心孔の直径が7(mm)より小さいとき、過負荷試験の合格率が高かった。これは、絶縁体12の中心孔41の直径が正極タブ25の幅の1.1倍の大きさより小さいと、過負荷試験時(又は、電池1に比較的大きな電流が流れたとき)に、絶縁体12で、過負荷試験時の電流で発生した正極タブ25の熱が電極巻回体20に伝わることを防ぐことができ、セパレータ23の熱融断によるショートを起こしにくいからと考えられる。
【0054】
図4の両試験の合格率が100%である範囲を実施例としてより好適な範囲であるとすると、絶縁体12の中心孔41の直径は5(mm)から7(mm)であることがより好ましい。これは、絶縁体12の中心孔41の直径が安全弁サブディスク45の直径と同じくらいかそれよりも大きいことから、衝撃試験時に絶縁体12が安全弁サブディスク45と衝突しなかったことが原因と考えられる。安全弁サブディスク45の直径が5.35(mm)であるから、絶縁体12と安全弁サブディスク45が衝突しないようにするために、絶縁体12の中心孔41の直径は、安全弁サブディスク45の直径より大きく、正極タブ25の幅を1.1倍にした大きさより小さいことがより好ましいと言える。絶縁体12と安全弁サブディスク45との多少の配置ズレを考慮すると、絶縁体12の中心孔41の直径は、安全弁サブディスクの直径の1.03倍の大きさ(例えば5.5(mm))より大きいことがより好ましいと言える。
【0055】
次に、図5Aのようなトップ側の絶縁体12と同じ大きさの不織布46(図5B)を用意し、絶縁体12の扇形の孔43と不織布46の扇形の孔51が同じ位置に重なるように、絶縁体12と不織布46を貼り合せ、図5Cのように一体物47とした。不織布46には中心孔はないものとした。一体物47の不織布側が電極巻回体20側に向くように、一体物47を図4に示される電池1の絶縁体12と同じ位置に配置した。不織布46は絶縁体12と電極巻回体20の間に位置することになる。一体物47の比較対象として、図6Aのような中心孔52がある不織布48と絶縁体12とからなる一体物49(図6B)を用意し、一体物47を使用した電池1と一体物49を使用した電池1について、OCV不良率の試験をした。OCV不良率の試験では、正常な電池1よりも開放端電圧が1%以上低下しているものをOCV不良とし、OCV不良を起こした割合を求めた。試験に使用した電池の数を500個ずつ(合計1000個)とした。
【0056】
図7に、OCV不良率の試験結果を示す。OCV不良率は、中心孔がない不織布46を使用した場合(図7のA,一体物47)で0.2%であり、中心孔52がある不織布48を使用した場合(図7のB,一体物49)で5%であった。図7の結果より、図7のAの方が好ましい。言い換えれば、絶縁体12と電極巻回体20のトップ側の端部との間に不織布46が配置されるとき、不織布46は絶縁体12の中心孔41と電極巻回体20の中心孔20Cとを被覆することが好ましいと言える。
【0057】
中心孔がない不織布46の場合、不織布46で電解液の注液時に金属片などによるコンタミネーションを防ぐことができたので、OCV不良率が比較的低かったと考えられる。
【0058】
<2.変形例>
以上、本発明の一実施の形態について具体的に説明したが、本発明の内容は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0059】
トップ側の絶縁体12の中心孔の形状を円形としていたが、図8Aのように、多角形状の孔61であってもよいし、図8Bのように、円形と多角形を組み合わせた形状の孔62であってもよいし、その他の形状であってもよい。図8Aのような、多角形の孔61のサイズは、向かい合う頂点間の距離であり、図8Bのような、円形と多角形を組み合わせた形状の孔62のサイズは、例えば、半円の直径である。
リチウムイオン電池1のサイズを21700としていたが、例えば18650のような他のサイズであってもよい。
【0060】
<3.応用例>
(1)電池パック
図9は、本発明の実施の形態又は実施例に係る二次電池を電池パック330に適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パック300は、組電池301、充電制御スイッチ302aと、放電制御スイッチ303a、を備えるスイッチ部304、電流検出抵抗307、温度検出素子308、制御部310を備えている。制御部310は各デバイスの制御を行い、さらに異常発熱時に充放電制御を行ったり、電池パック300の残容量の算出や補正を行ったりすることが可能である。
【0061】
電池パック300の充電時には正極端子321及び負極端子322がそれぞれ充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。また、電池パック300に接続された電子機器の使用時には、正極端子321及び負極端子322がそれぞれ電子機器の正極端子、負極端子に接続され、放電が行われる。
【0062】
組電池301は、複数の二次電池301aを直列及び/又は並列に接続してなる。図9では、6つの二次電池301aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されているが、どのような接続方法でもよい。
【0063】
温度検出部318は、温度検出素子308(例えばサーミスタ)と接続されており、組電池301又は電池パック300の温度を測定して、測定温度を制御部310に供給する。電圧検出部311は、組電池301及びそれを構成する各二次電池301aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部310に供給する。電流測定部313は、電流検出抵抗307を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部310に供給する。
【0064】
スイッチ制御部314は、電圧検出部311及び電流測定部313から入力された電圧及び電流をもとに、スイッチ部304の充電制御スイッチ302a及び放電制御スイッチ303aを制御する。スイッチ制御部314は、二次電池301aのいずれかの電圧が過充電検出電圧若しくは過放電検出電圧以下になったとき、また、大電流が急激に流れたときに、スイッチ部304にOFFの制御信号を送ることにより、過充電及び過放電、過電流充放電を防止する。
ここで、二次電池がリチウムイオン二次電池の場合、過充電検出電圧は例えば4.20V±0.05Vと定められ、過放電検出電圧は例えば2.4V±0.1Vと定められる。
【0065】
充電制御スイッチ302a又は放電制御スイッチ303aがOFFした後は、ダイオード302b又はダイオード303bを介することによってのみ、充電又は放電が可能となる。これらの充放電スイッチは、MOSFETなどの半導体スイッチを使用することができる。この場合、MOSFETの寄生ダイオードがダイオード302b及び303bとして機能する。なお、図9では+側にスイッチ部304を設けているが、-側に設けても良い。
【0066】
メモリ317は、RAMやROMからなり、例えば不揮発性メモリであるEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)などを含む。メモリ317には、制御部310で演算された数値や、製造工程の段階で測定された各二次電池301aの初期状態における電池特性やなどが予め記憶され、また適宜、書き換えも可能である。また、二次電池301aの満充電容量を記憶させておくことで、制御部310と協働して残容量を算出することができる。
【0067】
(2)電子機器
上述した本発明の実施の形態又は実施例に係る二次電池は、電子機器や電動輸送機器、蓄電装置などの機器に搭載され、電力を供給するために使用することができる。
【0068】
電子機器としては、例えばノート型パソコン、スマートフォン、タブレット端末、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、ウェアラブル端末、ビデオムービー、デジタルスチルカメラ、電子書籍、音楽プレイヤー、ヘッドホン、ゲーム機、ペースメーカー、補聴器、電動工具、テレビ、照明機器、玩具、医療機器、ロボットが挙げられる。また、後述する電動輸送機器、蓄電装置、電動工具、電動式無人航空機も、広義では電子機器に含まれ得る。
【0069】
電動輸送機器としては電気自動車(ハイブリッド自動車を含む。)、電動バイク、電動アシスト自転車、電動バス、電動カート、無人搬送車(AGV)、鉄道車両などが挙げられる。また、電動旅客航空機や輸送用の電動式無人航空機も含まれる。本発明に係る二次電池は、これらの駆動用電源のみならず、補助用電源、エネルギー回生用電源などとしても用いられる。
【0070】
蓄電装置としては、商業用又は家庭用の蓄電モジュールや、住宅、ビル、オフィスなどの建築物用又は発電設備用の電力貯蔵用電源などが挙げられる。
【0071】
(3)電動工具
図10を参照して、本発明が適用可能な電動工具として電動ドライバの例について概略的に説明する。電動ドライバ431には、シャフト434に回転動力を伝達するモータ433と、ユーザが操作するトリガースイッチ432が設けられている。トリガースイッチ432の操作により、シャフト434によって被対象物にねじなどが打ち込まれる。
【0072】
電動ドライバ431の把手の下部筐体内に、電池パック430及びモータ制御部435が収納されている。電池パック430としては、上述した電池パック300を使用することができる。
電池パック430は、電動ドライバ431に対して内蔵されているか、又は着脱自在とされている。電池パック430は、電動ドライバ431に内蔵された状態、又は外された状態で、充電装置に装着可能である。
【0073】
電池パック430及びモータ制御部435のそれぞれには、マイクロコンピュータが備えられている。電池パック430からモータ制御部435に対して電源が供給されると共に、両者のマイクロコンピュータ間で電池パック430の充放電情報が通信される。モータ制御部435は、モータ433の回転/停止、並びに回転方向を制御し、さらに、過放電時に負荷(モータ433など)への電源供給を遮断することができる。
【0074】
(4)電動式無人航空機
本発明を電動式無人航空機440(以下、単に「ドローン440」という。)用の電源に適用した例について、図11を参照して説明する。図11のドローン440は、円筒状又は角筒状の胴体部441と、胴体部の上部に固定された支持軸442a~442fと、胴体部の下側に配置されたバッテリ部(図示せず)から機体が構成される。一例として、胴体部が6角筒状とされ、胴体部の中心から6本の支持軸442a~442fが等角間隔で放射状に延びている。
【0075】
支持軸442a~442fの先端部には、回転翼444a~444fの動力源としてのモータ443a~443fがそれぞれ取り付けられている。各モータを制御する制御回路ユニット445は、胴体部441の上部に取り付けられている。バッテリ部としては、本発明に係る二次電池又は電池パック300を使用することができる。二次電池や電池パックの数に制限はないが、対を構成する回転翼の数(図11では3つ)と電池パックの数を等しくするのが好ましい。また、図示しないが、ドローン440にはカメラが搭載されていたり、少量の貨物を運搬可能な荷台が備えられていてもよい。
【0076】
(5)電動車両用蓄電システム
本発明を電動車両用の蓄電システムに適用した例として、図12に、シリーズハイブリッドシステムを採用したハイブリッド車両(HV)の構成例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンを動力とする発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0077】
このハイブリッド車両600には、エンジン601、発電機602、電力駆動力変換装置603(直流モータ又は交流モータ。以下単に「モータ603」という。)、駆動輪604a、駆動輪604b、車輪605a、車輪605b、バッテリ608、車両制御装置609、各種センサ610、充電口611が搭載されている。バッテリ608に対して、上述した本発明の電池パック300、又は本発明の二次電池を複数搭載した蓄電モジュールが適用され得る。二次電池の形状としては、円筒型、角型又はラミネート型である。
【0078】
バッテリ608の電力によってモータ603が作動し、モータ603の回転力が駆動輪604a、604bに伝達される。エンジン601の回転力は発電機602に伝えられ、その回転力によって発電機602により生成された電力をバッテリ608に蓄積することが可能である。各種センサ610は、車両制御装置609を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度を制御したりする。各種センサ610には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどが含まれる。
【0079】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両600が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ603に回転力として加わり、この回転力によって生成された回生電力がバッテリ608に蓄積される。また、図示しないが、二次電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置(例えば、電池の残量表示装置)を備えていても良い。バッテリ608は、ハイブリッド車両600の充電口611を介して外部の電源に接続されることで電力供給を受け、蓄電することが可能である。このようなHV車両を、プラグインハイブリッド車(PHV又はPHEV)という。
【0080】
以上では、シリーズハイブリッド車を例として説明したが、エンジンとモータを併用するパラレル方式、又は、シリーズ方式とパラレル方式を組み合わせたハイブリッド車に対しても本発明は適用可能である。さらに、エンジンを用いない駆動モータのみで走行する電気自動車(EV又はBEV)や、燃料電池車(FCV)に対しても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1・・・リチウムイオン電池,11・・・電池缶,12,13・・・絶縁体,20・・・電極巻回体,21・・・正極,21A・・・正極集電体,21B・・・正極活物質層,22・・・負極,22A・・・負極集電体,22B・・・負極活物質層,23・・・セパレータ,24・・・センターピン,25・・・正極タブ,26・・・負極タブ,41・・・絶縁体の中心孔,42・・・円周方向の孔,43・・・扇形の孔,44・・・電極巻回体の中心孔,45・・・安全弁サブディスク,46・・・不織布
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12