(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】シリンジポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/145 20060101AFI20240214BHJP
A61M 39/28 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61M5/145 508
A61M39/28 120
(21)【出願番号】P 2021548921
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 JP2020035741
(87)【国際公開番号】W WO2021060258
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2019176984
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】羽畑 元晴
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181810(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0234144(US,A1)
【文献】特開2019-010502(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0020978(US,A1)
【文献】特開2019-022609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/145
A61M 39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジを駆動する駆動部を有するポンプ本体と、
前記シリンジに接続されたチューブ内の流路の開閉を切り替えるクランプであって、前記チューブを保持するベースと、前記ベースに接続されており、前記チューブ内の前記流路が閉塞されるように前記ベースとともに前記チューブを挟持する挟持姿勢と前記流路を開放させる開放姿勢との間で変位可能な挟持片と、を有する前記クランプを保持するクランプ保持部と、を備え、
前記クランプ保持部は、
前記クランプを収容可能で、かつ、前記ベースに保持された前記チューブの延びる方向と直交する直交方向の一方側に開口する形状を有するクランプ収容部と、
前記クランプに保持された前記チューブを収容可能で、かつ、前記クランプ収容部の開口を通じて前記クランプを前記クランプ収容部へ組み付ける組付方向に沿って前記クランプに保持された前記チューブが通過するのを許容するように前記クランプ収容部と同じ側に開口する形状を有するチューブ収容部と、
前記組付方向に前記クランプ収容部の一部と重なる重なり部と、を有し、
前記重なり部は、前記挟持片が前記挟持姿勢であるときに、前記組付方向に沿った前記クランプ収容部への前記クランプの通過を許容し、かつ、前記挟持片が前記開放姿勢であるときに、前記組付方向に前記クランプの一部と重なることで前記クランプの前記クランプ収容部への組み付けを規制する、シリンジポンプ。
【請求項2】
前記クランプ保持部は、
前記クランプ収容部を有するケースと、
前記重なり部を含み、前記ケースに対して着脱可能なカバーと、を有し、
前記ケースは、前記クランプ収容部に収容された前記クランプに保持された前記チューブを受ける受け溝を有し、
前記カバーは、前記組付方向に沿って前記チューブが通過するのを許容するとともに、前記受け溝とともに前記チューブ収容部を構成するスリットを有する、請求項1に記載のシリンジポンプ。
【請求項3】
前記クランプ保持部は、
前記クランプを受けるクランプ受け部を有するケースと、
前記重なり部と前記チューブ収容部とを含み、前記ケースに対して着脱可能なカバーと、を有し、
前記カバーは、前記クランプ受け部に受けられた前記クランプの位置を保持する保持壁であって、前記クランプ受け部とともに前記クランプ収容部を構成する前記保持壁を有する、請求項1に記載のシリンジポンプ。
【請求項4】
前記クランプ保持部は、前記挟持姿勢である前記クランプを医療従事者が前記組付方向に沿って前記クランプ収容部に組み付ける際に前記医療従事者の指を回避する指回避部をさらに有する、請求項1から3のいずれかに記載のシリンジポンプ。
【請求項5】
前記シリンジは、
薬液を収容可能なバレルと、
前記バレル内から前記薬液を押し出すことが可能なプランジャと、を有し、
前記ポンプ本体は、
前記バレルを受けるバレル受け部と、
前記プランジャを受けるプランジャ受け部と、
前記クランプを前記挟持姿勢と前記開放姿勢とに切り替え可能な切り替え機構と、
制御部と、をさらに有し、
前記バレル受け部は、前記バレルを検出可能に構成されており、
前記プランジャ受け部は、前記プランジャを検出可能に構成されており、
前記制御部は、前記バレル受け部による前記バレルの検出及び前記プランジャ受け部による前記プランジャの検出がなされているときに、前記クランプが前記開放姿勢となるように切り替え機構を駆動する、請求項1から4のいずれかに記載のシリンジポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリンジポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2019-10502号公報(以下、「特許文献1」という。)には、シリンジを駆動する駆動部を有するポンプ本体と、シリンジに接続されたチューブの流路の開閉を切り替える開閉ユニットと、を備えるシリンジポンプが開示されている。開閉ユニットは、チューブクリップと、ベースと、カバーと、を有している。
【0003】
チューブクリップは、主としてサイフォニングを防止するための部材である。チューブクリップは、当該チューブクリップにチューブを挿通させた状態でチューブを保持することが可能である。チューブクリップは、チューブの流路を閉塞する姿勢と開放する姿勢とに切り替え可能である。ベースは、ポンプ本体に接続されている。ベースは、チューブが配置される溝部と、チューブクリップが配置される凹部と、チューブクリップの脱落防止用の壁部と、を有している。カバーは、ベースに対して回動可能に設けられている。カバーは、閉じた状態において、ベースとともにチューブクリップを収容している。カバーが閉じた状態において、ベースとカバーとの間には、チューブが位置する空間が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、チューブ及びクランプは、チューブの流路がクランプによって閉塞された状態が継続することに起因するチューブの塑性変形を防止するため、チューブの流路を開放する姿勢に保持されたクランプにチューブが挿通された状態で包装されることが多い。
【0006】
このため、特許文献1に記載されるシリンジポンプでは、医療従事者が、チューブ及びチューブクリップを包装容器から取り出した状態(チューブクリップによってチューブの流路が閉塞されていない状態)でチューブ及びチューブクリップをベースの凹部に装着した場合、サイフォニングが生じる懸念がある。
【0007】
本発明の目的は、クランプを収容するクランプ収容部に対し、チューブの流路が開放された状態でチューブ及びクランプが組み付けられるのを抑制可能なシリンジポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一局面に従ったシリンジポンプは、シリンジを駆動する駆動部を有するポンプ本体と、前記シリンジに接続されたチューブ内の流路の開閉を切り替えるクランプであって、前記チューブを保持するベースと、前記ベースに接続されており、前記チューブ内の前記流路が閉塞されるように前記ベースとともに前記チューブを挟持する挟持姿勢と前記流路を開放させる開放姿勢との間で変位可能な挟持片と、を有する前記クランプを保持するクランプ保持部と、を備え、前記クランプ保持部は、前記クランプを収容可能で、かつ、前記ベースに保持された前記チューブの延びる方向と直交する直交方向の一方側に開口する形状を有するクランプ収容部と、前記クランプに保持された前記チューブを収容可能で、かつ、前記クランプ収容部の開口を通じて前記クランプを前記クランプ収容部へ組み付ける組付方向に沿って前記クランプに保持された前記チューブが通過するのを許容するように前記クランプ収容部と同じ側に開口する形状を有するチューブ収容部と、前記組付方向に前記クランプ収容部の一部と重なる重なり部と、を有し、前記重なり部は、前記挟持片が前記挟持姿勢であるときに、前記組付方向に沿った前記クランプ収容部への前記クランプの通過を許容し、かつ、前記挟持片が前記開放姿勢であるときに、前記組付方向に前記クランプの一部と重なることで前記クランプの前記クランプ収容部への組み付けを規制する。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、クランプを保持するクランプ保持部に対し、チューブの流路が開放された状態でチューブ及びクランプが組み付けられるのを抑制可能なシリンジポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態のシリンジポンプの全体構成とシリンジポンプに装着されるシリンジとを概略的に示す斜視図である。
【
図4】クランプ保持部及びクランプ保持部に保持されたクランプの斜視図である。
【
図5】
図4に示されるクランプ保持部からカバーが取り外された状態を示す斜視図である。
【
図6】開放姿勢であるクランプがクランプ収容部に組み付けられようとした場合におけるクランプと重なり部との位置関係を示す平面図である。
【
図7】挟持姿勢であるクランプがクランプ収容部に組み付けられようとした場合におけるクランプと重なり部との位置関係を示す平面図である。
【
図8】カムがクランプから離間した状態を示す図である。
【
図10】カムが係止部を押圧した状態を示す図である。
【
図11】本発明の第2実施形態のシリンジポンプにおけるポンプ保持部の斜視図である。
【
図12】
図11に示されるクランプ保持部からカバーが取り外された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態のシリンジポンプの全体構成とシリンジポンプに装着されるシリンジとを概略的に示す斜視図である。
【0013】
シリンジ10は、薬液を収容可能なバレル12と、バレル12内から薬液を押し出すことが可能なプランジャ14と、を有している。バレル12の先端部には、チューブ20が接続されている。プランジャ14の後端部には、被押圧部15が形成されている。
【0014】
図1に示されるように、本実施形態のシリンジポンプ40は、ポンプ本体100と、クランプ保持部200と、を有している。
【0015】
ポンプ本体100は、シリンジ10からチューブ20に少量の薬液を正確に投与可能な機器である。ポンプ本体100は、バレル受け部110と、プランジャ受け部120と、駆動部130と、切り替え機構140と、制御部150と、を有している。
【0016】
バレル受け部110は、バレル12を受ける部位である。バレル受け部110は、バレル12を検出可能に構成されている。例えば、バレル受け部110は、バレル12によって押圧されたことを検出するセンサによってバレル12を検出していてもよい。
【0017】
プランジャ受け部120は、プランジャ14を受ける部位である。プランジャ受け部120は、プランジャ14を検出可能に構成されている。例えば、プランジャ受け部120は、プランジャ14の被押圧部15によって押圧されたことを検出するセンサによってプランジャ14を検出していてもよい。
【0018】
駆動部130は、シリンジ10を駆動する。駆動部130は、バレル12がバレル受け部110に受けられ、プランジャ14がプランジャ受け部120に受けられた状態において、バレル12に対してプランジャ14を押し込む。
【0019】
制御部150は、切り替え機構140を制御する。切り替え機構140及び制御部150については、後述する。
【0020】
クランプ保持部200は、クランプ30を保持する部位である。まず、
図2及び
図3を参照しながら、クランプ30について説明する。
【0021】
クランプ30は、チューブ20内の流路の開閉を切り替える部材である。クランプ30は、ベース31と、挟持片36と、を有している。
【0022】
ベース31は、チューブ20を保持する部位である。ベース31は、第1基部32と、第1挟持突起33と、を有している。
【0023】
第1基部32は、板状に形成されており、湾曲する形状を有している。第1基部32には、チューブ20を挿通させる挿通孔32hが形成されている。第1基部32は、挿通孔32hにチューブ20を挿通させた状態でチューブ20を保持する。第1基部32の先端部は、係止部32aを構成している。
【0024】
第1挟持突起33は、チューブ20を挟持する部位である。第1挟持突起33は、第1基部32の内側面に接続されている。
【0025】
挟持片36は、ベース31に接続されている。挟持片36は、チューブ20内の流路が閉塞されるようにベース31とともにチューブ20を挟持する挟持姿勢と、チューブ20内の流路を開放させる開放姿勢(
図2に示される姿勢)と、の間で変位可能である。挟持片36は、第2基部37と、第2挟持突起38と、を有している。
【0026】
第2基部37は、第1基部32の一端部(係止部32aと反対側の端部)に接続されている。第2基部37の先端部は、係止部32aに係合する被係止部37aを構成している。
【0027】
第2挟持突起38は、第2基部37の内側面に接続されている。第2挟持突起38は、第1挟持突起33とともにチューブ20を挟持する部位である。具体的に、被係止部37aが係止部32aに係合することにより、挟持片36は、挟持姿勢となる。これにより、第1挟持突起33及び第2挟持突起38は、チューブ20内の流路を閉塞させる。一方、被係止部37aが係止部32aから離脱することにより、挟持片36は、開放姿勢となる。これにより、第1挟持突起33及び第2挟持突起38は、チューブ20内の流路を開放させる。
【0028】
次に、
図4~
図7を参照しながら、クランプ保持部200について説明する。クランプ保持部200は、ポンプ本体100に接続されている。クランプ保持部200は、挟持片36が挟持姿勢である状態のクランプ30の当該クランプ保持部200への組み付けを許容する一方、挟持片36が開放姿勢である状態のクランプ30の当該クランプ保持部200への組み付けを規制する。クランプ保持部200は、クランプ収容部202と、チューブ収容部204と、重なり部221と、指回避部206と、を有している。
【0029】
クランプ収容部202は、クランプ30を収容する部位である。クランプ収容部202は、ベース31に保持されたチューブ20の延びる方向と直交する直交方向(
図4における上下方向)の一方側(
図4における上側)に開口する形状を有している。
【0030】
チューブ収容部204は、クランプ30に保持されたチューブ20を収容する部位である。チューブ収容部204は、クランプ収容部202の開口を通じてクランプ30をクランプ収容部202へ組み付ける組付方向(
図4における下向き)に沿ってクランプ30に保持されたチューブ20が通過するのを許容するようにクランプ収容部202と同じ側に開口する形状を有している。チューブ収容部204は、クランプ収容部202につながっている。チューブ収容部204は、クランプ収容部202に収容されたクランプ30に保持されたチューブ20の延びる方向(以下、第1方向と表記する。)におけるクランプ収容部202の両側に設けられている。
【0031】
重なり部221は、組付方向(
図6における紙面奥行き方向)にクランプ収容部202の一部と重なっている。
図6に示されるように、重なり部221は、挟持片36が開放姿勢であるときに、組付方向にクランプ30の一部(挟持片36)と重なることでクランプ30のクランプ収容部202への組み付けを規制する。一方、
図7に示されるように、重なり部221は、挟持片36が挟持姿勢であるときに、組付方向に沿ったクランプ収容部202へのクランプ30の通過を許容する。
図6に示されるように、重なり部221は、第1方向に沿ってチューブ収容部204を延長した経路上から、組付方向及び第1方向の双方に直交する第2方向(
図6における上下方向)に退避している。
【0032】
指回避部206は、挟持姿勢であるクランプ30を医療従事者が組付方向に沿ってクランプ収容部202に組み付ける際に医療従事者の指を回避する部位である。指回避部206は、第2方向にクランプ収容部202を挟む位置に設けられている。第2方向におけるクランプ収容部202の一方側(
図6における上側)に設けられた指回避部206は、第1方向に重なり部221に隣接している。
【0033】
本実施形態では、クランプ保持部200は、ケース210と、カバー220と、を有している。
【0034】
図4及び
図5に示されるように、ケース210は、前記クランプ収容部202と、受け溝214と、指逃げ部216と、を有している。
【0035】
受け溝214は、クランプ収容部202に収容されたクランプ30に保持されたチューブ20を受ける部位である。
【0036】
指逃げ部216は、医療従事者の指を受け入れる形状を有している。指逃げ部216は、第2方向にクランプ収容部202を挟む位置に設けられている。
【0037】
カバー220は、ケース210に対して着脱可能である。カバー220は、前記重なり部221と、スリット224と、指逃げ部226と、を有している。
【0038】
スリット224は、組付方向に沿ってチューブ20が通過するのを許容する。スリット224は、組付方向に受け溝214と重なる位置に設けられている。スリット224は、受け溝214とともに前記チューブ収容部204を構成している。カバー220は、スリット224により、重なり部221を含む部材と重なり部221を含まない部材とに分割されている。
【0039】
指逃げ部226は、組付方向に指逃げ部216と重なる位置に設けられており、医療従事者の指を受け入れる形状を有している。指逃げ部226は、指逃げ部216とともに前記指回避部206を構成している。
【0040】
カバー220のうち重なり部221を含む部材には、組付方向への係止部32aの通過を許容する切り欠き228が設けられている。切り欠き228は、第1方向において重なり部221を基準として指逃げ部226が設けられた側とは反対側に設けられている。
【0041】
ここで、
図8~
図10を参照しながら、切り替え機構140及び制御部150について説明する。
【0042】
切り替え機構140は、クランプ30を挟持姿勢と開放姿勢とに切り替え可能である。切り替え機構140は、カム142と、モータ144(
図1及び
図5を参照)と、を有している。カム142及びモータ144の構成は、特開2019-10502号公報に記載される構成と同様であるため、これらの説明を簡略化する。すなわち、カム142は、
図8に示される状態から組付方向(
図8における紙面奥行き方向)と平行な軸まわりに回転することにより、
図9に示されるように、被係止部37aが係止部32aに係合するように挟持片36を押圧する。カム142は、
図9に示される状態からさらに前記軸まわりに回転することにより、被係止部37aが係止部32aから離脱するように係止部32aを押圧する。モータ144は、カム142が前記軸まわりに回転するようにカム142を駆動する。
【0043】
制御部150は、バレル受け部110によるバレル12の検出及びプランジャ受け部120によるプランジャ14の検出がなされているときに、クランプ30が開放姿勢となるように切り替え機構140を駆動する。具体的に、制御部150は、バレル12が設置されていることを示す信号をバレル受け部110から受信し、かつ、プランジャ14が設置されていることを示す信号をプランジャ受け部120から受信すると、カム142によって係止部32aが押されるようにモータ144を駆動する。これにより、クランプ30は、
図8に示されるように開放姿勢となる。
【0044】
以上に説明したように、本実施形態のシリンジポンプ40では、クランプ30が挟持姿勢であるときには、クランプ30のクランプ収容部202への組み付けが許容される一方、クランプ30が開放姿勢であるときには、クランプ30の一部が重なり部221に干渉することによって当該クランプ30のクランプ収容部202への組み付けが規制される。このため、チューブ20の流路が開放された状態(クランプ30が開放姿勢である状態)でチューブ20及びクランプ30がクランプ保持部200に組み付けられることが抑制される。よって、サイフォニングの発生がより確実に抑制される。
【0045】
また、クランプ保持部200は、指回避部206を有しているため、医療従事者が容易にクランプ収容部202にクランプ30を組付けることが可能となる。
【0046】
また、シリンジポンプ40は、切り替え機構140及び制御部150を有しているため、バレル12及びプランジャ14がポンプ本体100に装着されたことが検出されたときに、クランプ30が自動的に開放姿勢に切り替えられる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、
図10及び
図11を参照しながら、本発明の第2実施形態のクランプ保持部200について説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は繰り返さない。
【0048】
本実施形態では、ケース210は、クランプ30を受けるクランプ受け部212を有している。
【0049】
カバー220は、前記重なり部221と、前記チューブ収容部204と、前記指回避部206と、保持壁222と、を有する。保持壁222は、クランプ受け部212に受けられたクランプ30の位置を保持する部位である。保持壁222は、クランプ30の周囲に設けられている。保持壁222は、クランプ受け部212とともに前記クランプ収容部202を構成している。
【0050】
この実施形態のカバー220は、重なり部221を有する部位と重なり部221を有しない部位とが連結されている。このため、カバー220の取り扱いが容易になる。
【0051】
上記各実施形態において、クランプ保持部200は、ポンプ本体100に接続されておらず、ポンプ本体100から独立していてもよい。
【0052】
ここで、上記実施形態について概説する。
【0053】
上記実施形態のシリンジポンプは、シリンジを駆動する駆動部を有するポンプ本体と、前記シリンジに接続されたチューブ内の流路の開閉を切り替えるクランプであって、前記チューブを保持するベースと、前記ベースに接続されており、前記チューブ内の前記流路が閉塞されるように前記ベースとともに前記チューブを挟持する挟持姿勢と前記流路を開放させる開放姿勢との間で変位可能な挟持片と、を有する前記クランプを保持するクランプ保持部と、を備え、前記クランプ保持部は、前記クランプを収容可能で、かつ、前記ベースに保持された前記チューブの延びる方向と直交する直交方向の一方側に開口する形状を有するクランプ収容部と、前記クランプに保持された前記チューブを収容可能で、かつ、前記クランプ収容部の開口を通じて前記クランプを前記クランプ収容部へ組み付ける組付方向に沿って前記クランプに保持された前記チューブが通過するのを許容するように前記クランプ収容部と同じ側に開口する形状を有するチューブ収容部と、前記組付方向に前記クランプ収容部の一部と重なる重なり部と、を有し、前記重なり部は、前記挟持片が前記挟持姿勢であるときに、前記組付方向に沿った前記クランプ収容部への前記クランプの通過を許容し、かつ、前記挟持片が前記開放姿勢であるときに、前記組付方向に前記クランプの一部と重なることで前記クランプの前記クランプ収容部への組み付けを規制する。
【0054】
このシリンジポンプでは、クランプが挟持姿勢であるときには、クランプのクランプ収容部への組み付けが許容される一方、クランプが開放姿勢であるときには、クランプの一部が重なり部に干渉することによって当該クランプのクランプ収容部への組み付けが規制されるため、チューブの流路が開放された状態(クランプが開放姿勢である状態)でチューブ及びクランプがクランプ保持部に組み付けられることが抑制される。
【0055】
また、前記クランプ保持部は、前記クランプ収容部を有するケースと、前記重なり部を含み、前記ケースに対して着脱可能なカバーと、を有し、前記ケースは、前記クランプ収容部に収容された前記クランプに保持された前記チューブを受ける受け溝を有し、前記カバーは、前記組付方向に沿って前記チューブが通過するのを許容するとともに、前記受け溝とともに前記チューブ収容部を構成するスリットを有していてもよい。
【0056】
この態様では、上記の効果が有効に得られる。
【0057】
あるいは、前記クランプ保持部は、前記クランプを受けるクランプ受け部を有するケースと、前記重なり部と前記チューブ収容部とを含み、前記ケースに対して着脱可能なカバーと、を有し、前記カバーは、前記クランプ受け部に受けられた前記クランプの位置を保持する保持壁であって、前記クランプ受け部とともに前記クランプ収容部を構成する前記保持壁を有していてもよい。
【0058】
この態様においても、上記の効果が有効に得られる。
【0059】
また、前記クランプ保持部は、前記挟持姿勢である前記クランプを医療従事者が前記組付方向に沿って前記クランプ収容部に組み付ける際に前記医療従事者の指を回避する指回避部をさらに有することが好ましい。
【0060】
このようにすれば、医療従事者が容易にクランプ収容部にクランプを組付けることが可能となる。
【0061】
また、前記シリンジは、フランジを有するバレルと、前記バレル内から薬液を押し出すことが可能なプランジャと、を有し、前記ポンプ本体は、前記バレルを受けるバレル受け部と、前記プランジャを受けるプランジャ受け部と、前記クランプを前記挟持姿勢と前記開放姿勢とに切り替え可能な切り替え機構と、制御部と、をさらに有し、前記バレル受け部は、前記バレルを検出可能に構成されており、前記プランジャ受け部は、前記プランジャを検出可能に構成されており、前記制御部は、前記バレル受け部による前記バレルの検出及び前記プランジャ受け部による前記プランジャの検出がなされているときに、前記クランプが前記開放姿勢となるように切り替え機構を駆動することが好ましい。
【0062】
このようにすれば、バレル及びプランジャがポンプ本体に装着されたことが検出されたときに、クランプが自動的に開放姿勢に切り替えられる。
【0063】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0064】
10 シリンジ、12 バレル、14 プランジャ、20 チューブ、30 クランプ、31 ベース、32 第1基部、32a 係止部、32h 挿通孔、33 第1挟持突起、36 挟持片、37 第2基部、37a 被係止部、38 第2挟持突起、40 シリンジポンプ、100 ポンプ本体、110 バレル受け部、120 プランジャ受け部、130 駆動部、140 切り替え機構、142 カム、144 モータ、150 制御部、200 クランプ保持部、202 クランプ収容部、204 チューブ収容部、206 指回避部、210 ケース、212 クランプ受け部、214 受け溝、216 指逃げ部、220 カバー、221 重なり部、222 保持壁、224 スリット、226 指逃げ部、228 切り欠き。