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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240214BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240214BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20240214BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20240214BHJP
   B65G 35/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G05D1/02 P
G08G1/00 X
G01C21/34
B65G1/00 501H
B65G35/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022021510
(22)【出願日】2022-02-15
(62)【分割の表示】P 2019201546の分割
【原出願日】2019-11-06
(65)【公開番号】P2022069460
(43)【公開日】2022-05-11
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】河野 誠
(72)【発明者】
【氏名】武野 敬輔
(72)【発明者】
【氏名】岩満 和哲
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-020773(JP,A)
【文献】特開2006-023176(JP,A)
【文献】特開2018-169717(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111224(WO,A1)
【文献】特開2019-075066(JP,A)
【文献】特開2016-133843(JP,A)
【文献】特開2019-080411(JP,A)
【文献】特開昭63-255711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
G08G 1/00
G01C 21/34
B65G 1/00
B65G 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備であって、
前記走行可能経路は、経路が分岐又は合流する箇所であるノードと、一対の前記ノードを接続する経路部分であるリンクと、をそれぞれ複数備え、
前記制御装置は、前記物品搬送車を現在位置から前記走行可能経路上の目的地に走行させるための経路である設定経路を、前記リンクのそれぞれに設定されたリンクコストに基づいて設定する経路設定制御を実行し、
前記リンクコストには、基準コストと、変動コストと、が含まれ、
前記リンクコストの設定のために前記リンクを通過する前記物品搬送車を対象車とし、前記対象車が通過する前記リンクを対象リンクとし、前記対象車以外の前記物品搬送車を他車とし、前記経路設定制御により前記設定経路を設定する前記物品搬送車を設定車として、
前記基準コストは、前記対象リンクに前記他車が存在しない状態で、前記対象車が前記対象リンクを通過するのに要する時間である基準通過時間に基づいて設定される値であり、
前記変動コストは、前記対象リンクに前記他車が存在する状態で前記対象車が前記対象リンクを走行する実走行状態において、前記対象車が前記対象リンクを通過するのに要する時間である実通過時間が、前記基準通過時間に対して、前記対象リンクに存在する前記他車の台数に応じて増加する時間である、台数起因増加時間に基づいて設定される値であり、
前記制御装置は
物品の搬送を開始する前である運用開始前に、前記走行可能経路に属する全ての前記リンクのそれぞれに対して初期の前記台数起因増加時間を設定し、物品の搬送を開始した後である運用開始後にも、前記走行可能経路に属する前記リンクのそれぞれにおける前記台数起因増加時間を求めて、前記台数起因増加時間を随時更新し、
前記経路設定制御において、前記対象リンクに存在するとみなす前記他車の台数である台数値を決定し、当該台数値に応じた前記変動コストと前記基準コストとに基づいて、前記設定車の現在位置から前記目的地までの前記設定経路の候補となる候補経路における前記リンクのそれぞれの前記リンクコストを決定し、当該リンクコストに基づいて前記候補経路のコストである経路コストを求め、前記候補経路のぞれぞれの前記経路コストに基づいて前記設定経路を設定する、物品搬送設備。
【請求項2】
前記制御装置は、前記対象リンクを前記対象車が通過する毎に前記台数起因増加時間を求め、当該台数起因増加時間と過去に求めた前記台数起因増加時間とに基づいて、前記台数起因増加時間を更新する、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記制御装置は、前記対象リンクに前記他車が存在する状態で前記対象車に前記対象リンクを複数回走行させ、各回の走行において、前記対象リンクに存在していた前記他車の台数を示す台数情報と前記実通過時間とを取得し、前記基準通過時間に対する前記実通過時間の増加量と前記台数情報との相関に基づいて前記台数起因増加時間を求める、請求項1又は2に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記制御装置は、前記基準通過時間に対する前記実通過時間の増加量を、前記台数情報に示される台数で除算して求められる、前記他車1台あたりの前記実通過時間の増加量を前記台数起因増加時間とする、請求項3に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品搬送設備として、例えば、特開2019-080411号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。以下、背景技術の説明において、かっこ書きの符号又は名称は、先行技術文献における符号又は名称とする。この特許文献1に記載の物品搬送設備の制御装置は、物品搬送車を現在位置から走行可能経路上の目的地に走行させるための経路である設定経路を設定する設定制御を実行する。例えば、物品を搬送元から搬送先に搬送する場合において、物品搬送車が搬送元に対応する位置に存在している場合は、制御装置は、設定制御において、搬送元に対応する位置を現在位置とし、搬送先に対応する位置を目的地とした設定経路を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-080411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような物品搬送設備では、上述のように設定制御において設定経路を設定するにあたり、物品搬送車の現在位置から目的地までの設定経路の候補となる候補経路が複数ある場合も有り得る。このような場合に、制御装置は、設定制御において、例えば、複数の候補経路のうちの経路の長さが最も短い候補経路を設定経路として設定することが考えられる。しかし、このように設定経路を設定した場合であっても、設定経路に他の物品搬送車が多数存在するために、設定経路として設定しなかった他の候補経路の方が、設定経路に比べて、目的地に到達するまでの時間が短くなることが考えられる。このように、画一的な設定基準で設定経路を設定すると、複数の候補経路のうちから目的地に到達するまでの時間が短い経路を設定経路として設定できない場合が生じ得る。
【0005】
そこで、複数の候補経路のうちから目的地に到達するまでの時間が短い経路を設定経路として設定できる可能性を高め易い物品搬送設備の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた、物品搬送設備の特徴構成は、規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備え、
前記走行可能経路は、経路が分岐又は合流する箇所であるノードと、一対の前記ノードを接続する経路部分であるリンクと、をそれぞれ複数備え、前記制御装置は、前記物品搬送車を現在位置から前記走行可能経路上の目的地に走行させるための経路である設定経路を、前記リンクのそれぞれに設定されたリンクコストに基づいて設定する経路設定制御を実行し、前記リンクコストには、基準コストと、変動コストと、が含まれ、前記リンクコストの設定のために前記リンクを通過する前記物品搬送車を対象車とし、前記対象車が通過する前記リンクを対象リンクとし、前記対象車以外の前記物品搬送車を他車とし、前記経路設定制御により前記設定経路を設定する前記物品搬送車を設定車として、前記基準コストは、前記対象リンクに前記他車が存在しない状態で、前記対象車が前記対象リンクを通過するのに要する時間である基準通過時間に基づいて設定される値であり、前記変動コストは、前記対象リンクに前記他車が存在する状態で前記対象車が前記対象リンクを走行する実走行状態において、前記対象車が前記対象リンクを通過するのに要する時間である実通過時間が、前記基準通過時間に対して、前記対象リンクに存在する前記他車の台数に応じて増加する時間である、台数起因増加時間に基づいて設定される値であり、前記制御装置は、物品の搬送を開始する前である運用開始前に、前記走行可能経路に属する全ての前記リンクのそれぞれに対して初期の前記台数起因増加時間を設定し、物品の搬送を開始した後である運用開始後にも、前記走行可能経路に属する前記リンクのそれぞれにおける前記台数起因増加時間を求めて、前記台数起因増加時間を随時更新し、前記経路設定制御において、前記対象リンクに存在するとみなす前記他車の台数である台数値を決定し、当該台数値に応じた前記変動コストと前記基準コストとに基づいて、前記設定車の現在位置から前記目的地までの前記設定経路の候補となる候補経路における前記リンクのそれぞれの前記リンクコストを決定し、当該リンクコストに基づいて前記候補経路のコストである経路コストを求め、前記候補経路のぞれぞれの前記経路コストに基づいて前記設定経路を設定する点にある。
【0007】
この特徴構成によれば、制御装置が経路設定制御によって設定経路を設定する場合、設定車の現在位置から目的地までの設定経路の候補となる候補経路におけるリンクのそれぞれのリンクコストを決定する。このリンクコストには、基準コストと変動コストとが含まれている。ここで、変動コストは、他車の台数に応じて増加する時間である、台数起因増加時間に基づいて設定される値であり、経路設定制御においては、候補経路におけるリンクのそれぞれに存在するとみなす他車の台数値に応じた変動コストを用いる。そして、このように決定したリンクコストに基づいて候補経路のコストである経路コストを求め、候補経路のぞれぞれの経路コストに基づいて設定経路を設定する。そのため、本構成によれば、他車の影響を受けない状態での経路の走行時間と、他車の影響を受ける場合における他車の台数に応じた経路の走行時間とを考慮して、適切に設定経路の設定を行うことが可能となる。従って、目的地に到達するまでの時間が短い経路を設定経路として設定できる可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】物品搬送設備の平面図
図2】走行可能経路のノードとリンクとを示す図
図3】物品搬送車の側面図
図4】物品搬送車の正面図
図5】制御ブロック図
図6】搬送制御のフローチャート
図7】空走行状態における対象車が対象リンクに進入する状態を示す図
図8】空走行状態における対象車が対象リンクから退出する状態を示す図
図9】実走行状態における対象車が対象リンクに進入する状態を示す図
図10】実走行状態における対象車が対象リンクから退出する状態を示す図
図11】経路設定制御のフローチャート
図12】対象リンクに存在するとみなす他車を示す図
図13】対象リンクの上流側部分と下流側部分とを示す図
図14】物品搬送車の設定経路及び候補経路の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.実施形態
物品搬送設備の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、物品搬送設備は、規定の走行可能経路1に沿って走行して物品Wを搬送する物品搬送車3と、物品搬送車3を制御する制御装置H(図5参照)と、を備えている。本実施形態では、規定の走行可能経路1に沿って走行レール2(図2及び図3参照)が設置され、物品搬送車3が複数備えられており、複数の物品搬送車3のそれぞれは、走行レール2上を走行可能経路1に沿って一方向に走行する。図4に示すように、走行レール2は、左右一対のレール部2Aによって構成されている。尚、本実施形態では、物品搬送車3は、半導体基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)を物品Wと
して搬送する。
【0010】
図1に示すように、走行可能経路1は、2つの主経路4と、複数の物品処理装置Pを経由する複数の副経路5と、を備えている。2つの主経路4及び複数の副経路5のそれぞれは、環状に形成されている。2つの主経路4は、2重の環状となる状態で設けられている。これら2つの環状の主経路4は、物品搬送車3が同じ方向周り(反時計回り)で走行する経路である。尚、図1においては、物品搬送車3の走行方向を、矢印にて示している。
【0011】
2つの主経路4のうち、内側の主経路4を第1主経路4Aとし、外側の主経路4を第2主経路4Bとする。第1主経路4Aは、複数の保管部Rを経由するように設定されている。第1主経路4Aは、保管部Rとの間で物品Wを移載するために物品搬送車3を停止させる物品移載用の経路として用いられる。一方、第2主経路4Bは、物品搬送車3を連続して走行させる連続走行用の経路として用いられる。
【0012】
走行可能経路1には、短絡経路6、分岐経路7、合流経路8、及び、乗継経路9が備えられている。短絡経路6は、第1主経路4Aにおける互いに平行で且つ直線状に延びる一対の部分のそれぞれに接続されている。この短絡経路6は、第1主経路4Aにおける直線状に延びる一対の部分の一方から他方又は他方から一方に物品搬送車3を走行させるための経路である。分岐経路7は、第2主経路4Bと副経路5とに接続されており、第2主経路4Bから副経路5に物品搬送車3を走行させるための経路である。合流経路8は、副経路5と第2主経路4Bとに接続されており、副経路5から第2主経路4Bに物品搬送車3を走行させるための経路である。乗継経路9は、第1主経路4Aと第2主経路4Bとに接続されており、第1主経路4Aから第2主経路4B又は第2主経路4Bから第1主経路4Aに物品搬送車3を走行させるための経路である。
【0013】
図2に示すように、走行可能経路1は、経路が分岐又は合流するノードNと、一対のノードNを接続する経路部分であるリンクLと、をそれぞれ複数備えている。本実施形態では、ノードNは、2つの経路が分岐又は合流する接続点Cから上流側及び下流側に規定の範囲の経路部分としている。図2に示した第2主経路4Bの一部を例に説明すると、第2主経路4Bに対して乗継経路9が分岐又は合流する点を接続点Cとして、第2主経路4B及び乗継経路9における接続点Cから規定の範囲をノードNとしている。また、第2主経路4Bから分岐経路7が分岐する点を接続点Cとして、第2主経路4B及び分岐経路7における接続点Cから規定の範囲をノードNとしている。また、第2主経路4Bに合流経路8が合流する点を接続点Cとして、第2主経路4B及び合流経路8における接続点Cから規定の範囲をノードNとしている。そして、第2主経路4Bにおける一対のノードNの間にあり、これら一対のノードNに接続されている経路部分をリンクLとしている。本実施形態では、接続点Cから規定の範囲は、後述するように、走行可能経路1に沿って複数設置された被検出体Tの位置を基準として設定されている。言い換えると、ノードNとリンクLとの境界となる位置に被検出体Tが設置されている。
【0014】
図3及び図4に示すように、物品搬送車3は、天井から吊り下げ支持された走行レール2上をその走行レール2に沿って走行する走行部11と、走行レール2の下方に位置して走行部11に吊り下げ支持された本体部12と、を備えている。本体部12には、物品Wを吊り下げ状態で支持する支持機構13と、支持機構13を本体部12に対して上下方向に沿って移動させる昇降機構14と、が備えられている。そして、物品搬送車3は、物品処理装置Pや保管部Rを移載対象場所15(図1参照)として、搬送元の移載対象場所15に対応する位置まで走行した後、搬送元の移載対象場所15にある物品Wを支持して移載対象場所15から本体部12内に移載する。その後、搬送先の移載対象場所15に対応する位置まで走行し、支持機構13が支持している物品Wを本体部12内から移載対象場所15に移載する。これにより、搬送元の移載対象場所15から搬送先の移載対象場所15に物品Wを搬送する。この際、本実施形態では、物品搬送車3は、直線状の経路を走行
する場合は第1速度で走行し、曲線状の経路を走行する場合は第1速度より低速の第2速度で走行する。
【0015】
図5に示すように、物品搬送車3は、検出装置16と送受信装置17と制御部18とを備えている。検出装置16は、走行可能経路1に沿って複数設置された被検出体T(図2及び図4参照)を検出する。被検出体Tには、当該被検出体Tが設置されている位置を示す位置情報が保持されており、検出装置16は、被検出体Tに保持されている位置情報を読み取るように構成されている。被検出体Tは、走行可能経路1に沿って複数設置されており、ノードNとリンクLとの接続箇所や、移載対象場所15に対応する位置等に設置されている。送受信装置17は、検出装置16によって被検出体Tの位置情報を読み取り、その読み取った位置情報Sを随時、制御装置Hの送受信部21に送信する。つまり、物品搬送車3は、リンクLに進入する際、リンクLから退出する際、及び、移載対象場所15に対応する位置に到達した際に、位置情報Sを制御装置Hに送信する。この物品搬送車3が制御装置Hに送信する位置情報Sが、自車の位置を示す位置情報Sに相当する。そして、複数の物品搬送車3のそれぞれが、自車の位置を示す位置情報Sを制御装置Hに送信する。また、送受信装置17は、制御装置Hの送受信部21から送信された情報を受信する。
【0016】
制御装置Hは、複数の物品搬送車3のそれぞれから受信した位置情報Sを時刻Dに関連付けて記憶部22に記憶する。本実施形態では、制御装置Hは、物品搬送車3の送受信装置17から位置情報Sを受信した時刻Dを、当該位置情報Sに関連付けて記憶する。なお、物品搬送車3が被検出体Tの位置情報Sを読み取った時刻Dを示す時刻情報を、位置情報Sと共に制御装置Hへ送信する構成である場合には、制御装置Hは、当該時刻情報に示された時刻Dと位置情報Sとを関連付けて記憶部22に記憶してもよい。そして、制御装置Hは、記憶部22に記憶された情報から求められる、物品搬送車3のそれぞれの各時点での位置に基づいて、台数情報を取得する。制御装置Hは、複数の物品搬送車3のそれぞれから受信した位置情報Sに基づいて、複数の物品搬送車3のそれぞれの走行可能経路1の位置を取得することができる。例えば、制御装置Hは、物品搬送車3がリンクLに進入した場合に送信される位置情報Sを受信してから、当該リンクLを退出する場合に送信される位置情報Sを受信するまでは、受信した位置情報Sを入口とするリンクLに物品搬送車3が存在していると判断できる。また、リンクL内に移載対象場所15が存在する場合に、当該リンクL内に存在していると判断している物品搬送車3から移載対象場所15に到達した場合に送信される位置情報Sを受信していない場合は、物品搬送車3はリンクL内おける移載対象場所15より上流側に存在していると判断でき、この位置情報Sを受信した場合は、物品搬送車3はリンクL内における移載対象場所15又はそれより下流側に存在していると判断できる。このように、制御装置Hは、複数の物品搬送車3のそれぞれの各時点での位置に基づいて、複数のリンクLのそれぞれに位置している物品搬送車3の台数を取得する。またこの際、移載対象場所15が存在するリンクLについては、リンクLにおける移載対象場所15の上流側に位置している物品搬送車3の台数と、リンクLにおける移載対象場所15の下流側に位置している物品搬送車3の台数と、をそれぞれ取得する。
【0017】
制御装置Hは、マップ情報を記憶部22に記憶している。マップ情報は、走行可能経路1における複数のリンクL及び複数のノードNの位置及び接続関係を示す情報、複数のリンクL及び複数のノードNのそれぞれの属性を示す属性情報、並びに、複数のリンクLのそれぞれの形状及び複数のノードNのそれぞれの形状を示す情報を含む、基本マップ情報を含んでいる。また、マップ情報は、基本マップ情報に、走行可能経路1の複数地点のそれぞれの位置情報S等、物品搬送車3の走行に必要な各種情報を関連付けた走行制御用情報も含んでいる。制御装置Hは、搬送元から搬送先に物品Wを搬送する場合、図6の搬送制御のフローチャートに示すように、基本マップ情報に基づいて現在位置から搬送元の移
載対象場所15に対応する位置(目的地)に物品搬送車3を走行させるための第1設定経路を設定する第1経路設定制御(S1)、第1設定経路に沿って物品搬送車3を走行させて物品搬送車3を搬送元の移載対象場所15に対応する位置まで走行させる第1走行制御(S2)、搬送元の移載対象場所15にある物品Wを本体部12内に移載する第1移載制御(S3)、基本マップ情報に基づいて現在位置から搬送先の移載対象場所15に対応する位置(目的地)に物品搬送車3を走行させるための第2設定経路を設定する第2経路設定制御(S4)、第2設定経路に沿って物品搬送車3を走行させて物品搬送車3を搬送先の移載対象場所15に対応する位置まで走行させる第2走行制御(S5)、本体部12内の物品Wを搬送先の移載対象場所15に移載する第2移載制御(S6)、を記載順に実行する。
【0018】
制御装置Hは、物品搬送車3を現在位置から走行可能経路1上の目的地に走行させるための経路である設定経路1A(例えば、図14に破線で示した経路)を、リンクLのそれぞれに設定されたリンクコストに基づいて設定する経路設定制御を実行する。リンクコストには、基準コストと、変動コストと、が含まれている。なお、設定経路1Aには、上述した第1設定経路及び第2設定経路が含まれる。また、経路設定制御には、上述した第1経路設定制御及び第2経路設定制御が含まれる。
【0019】
次に、リンクコストについて説明するが、この説明においては、リンクコストの設定のためにリンクLを通過する物品搬送車3を対象車3Aとし、対象車3Aが通過するリンクLを対象リンクLAとし、対象車3A以外の物品搬送車3を他車3Bとし、経路設定制御により設定経路1Aを設定する物品搬送車3を設定車3Cとして説明する。本実施形態では、複数の物品搬送車3が、走行可能経路1に沿って同時に走行している。そこで、リンクコストの設定のためにリンクLを通過する複数の物品搬送車3のうち、説明の対象となっている物品搬送車3を対象車3Aとし、対象車3A以外の全ての物品搬送車3を他車3Bとする。そして、当該対象車3Aが通過する複数のリンクLのうち、説明の対象となっているリンクLを対象リンクLAとする。一方、走行可能経路1に存在する複数の物品搬送車3のうち、経路設定制御を行う対象となっている物品搬送車3を設定車3Cとする。
【0020】
基準コストは、対象リンクLAに他車3Bが存在しない状態で、対象車3Aが対象リンクLAを通過するのに要する時間である基準通過時間に基づいて設定される値である。本実施形態では、制御装置Hは、図7に示すように、対象リンクLAに他車3Bが存在しない空走行状態において、対象リンクLAに進入する対象車3Aから送信された位置情報Sを受信した場合に、対象リンクLAに進入する対象車3Aから送信された位置情報Sを受信した時刻Dと、図8に示すように、対象リンクLAから退出する対象車3Aから送信された位置情報Sを受信した時刻Dとの差、から基準通過時間を算出する。そして、制御装置Hは、この基準通過時間に基づいて基準コストを設定する。本実施形態では、基準コストは、基準通過時間の秒数としている。
【0021】
ここでは、基準コストの指標としての精度を高めるため、制御装置Hは、対象リンクLAに他車3Bが存在しない状態で対象車3Aに対象リンクLAを複数回走行させ、各回の走行において基準通過時間を取得し、取得した複数の基準通過時間に基づいて基準コストを設定する。本実施形態では、制御装置Hは、各回の走行における基準通過時間の合計を走行の回数で除算して基準コストを設定する。例えば、2回走行させて基準コストを設定する場合において基準通過時間が5秒と8秒であった場合は、5秒と8秒との合計である13秒を走行の回数である2で除算した秒数である6.5を基準コストとする。本実施形態では、基準コストの設定は、物品搬送設備において物品Wを搬送する運用開始前に、走行可能経路1の全体に亘って対象車3Aを複数回走行させることで、走行可能経路1に属する全てのリンクLのそれぞれに対して予め行っている。つまり、制御装置Hが最初の経路設定制御を実行する前(ここでは運用開始前)に、走行可能経路1に属する全てのリン
クLのそれぞれに対して基準コストが設定される。
【0022】
また、走行可能経路1に属する全てのノードNに対して、経路設定制御を実行する前(本実施形態では運用開始前)に、ノードコストが設定される。このノードコストは、ノードNのそれぞれに対して設定されるコストである。本実施形態では、制御装置Hは、ノードNの区間内に物品搬送車3が1台しか進入できないように制御するため、物品搬送車3がノードNの区間を通過する通過時間はほぼ一定となる。そこで、本例では、ノードコストは、変動成分を有しない固定値とされている。ここでは、ノードコストは、ノードNのそれぞれの形状に応じた値に設定されている。なお、これに限らず、ノードコストを、上述した基準コストと同様に、他車3Bが存在しない状態で対象車3Aが対象のノードNを通過するのに要する時間である基準通過時間に基づいて設定される値としても好適である。或いは、ノードコストを、その形状等に関わらず、全てのノードNについて一律の値としてもよい。
【0023】
変動コストは、対象リンクLAに他車3Bが存在する状態で対象車3Aが対象リンクLAを走行する実走行状態において、対象車3Aが対象リンクLAを通過するのに要する時間である実通過時間が、基準通過時間に対して、対象リンクLAに存在する他車3Bの台数に応じて増加する時間である、台数起因増加時間に基づいて設定される値である。
【0024】
ここでは、変動コストの指標としての精度を高めるため、制御装置Hは、対象リンクLAに他車3Bが存在する状態で対象車3Aに対象リンクLAを複数回走行させ、各回の走行において、対象リンクLAに存在していた他車3Bの台数を示す台数情報と実通過時間とを取得し、基準通過時間に対する実通過時間の増加量と台数情報との相関に基づいて台数起因増加時間を求める。具体的には、制御装置Hは、基準通過時間に対する実通過時間の増加量を、台数情報に示される台数で除算して求められる、他車1台あたりの実通過時間の増加量を台数起因増加時間としている。そして、対象車3Aに対象リンクLAを複数回走行させて得られた台数起因増加時間の平均値を、最終的な台数起因増加時間としている。
【0025】
本実施形態では、制御装置Hは、図9に示すように、対象リンクLAに他車3Bが存在する実走行状態において、対象リンクLAに進入する対象車3Aから送信された位置情報Sを受信した場合に、対象リンクLAに進入する対象車3Aから送信された位置情報Sを受信した時刻Dと、図10に示すように、対象リンクLAから退出する対象車3Aから送信された位置情報Sを受信した時刻Dとの差、から実通過時間を算出する。そして、制御装置Hは、基準通過時間(例えば5秒)に対する実通過時間(例えば15秒)の増加量(例えば10秒)を、台数情報に示される台数(図9においては2台)で除算することで、台数起因増加時間(例えば5秒)を求める。
【0026】
本実施形態では、このような台数起因増加時間の算出は、物品搬送設備において物品Wの搬送を開始する前である運用開始前と、運用開始後との双方で行う。すなわち、制御装置Hは、まず運用開始前に、走行可能経路1の全体に亘って対象車3A及び他車3Bとなる複数の物品搬送車3を走行させることで、走行可能経路1に属する全てのリンクLのそれぞれにおける台数起因増加時間を求める。つまり、制御装置Hは、最初の経路設定制御を実行する前(ここでは運用開始前)に、走行可能経路1に属する全てのリンクLのそれぞれに対して初期の台数起因増加時間を設定する。また、制御装置Hは、物品搬送設備において物品Wの搬送を開始した後である運用開始後にも、走行可能経路1を走行する複数の物品搬送車3のそれぞれを対象車3A及び他車3Bとして、走行可能経路1に属するリンクLのそれぞれにおける台数起因増加時間を求め、それに基づいて台数起因増加時間を随時更新する。この際、制御装置Hは、それぞれの対象リンクLAを対象車3Aが通過する毎に台数起因増加時間を求め、求めた台数起因増加時間と過去に求めた台数起因増加時
間とに基づいて、台数起因増加時間を更新する。このような台数起因増加時間の更新は、物品搬送設備の運用中、継続的に行われると好適である。そして、経路設定制御に用いる変動コストは、最新の台数起因増加時間を用いて設定されると好適である。
【0027】
制御装置Hは、経路設定制御において、対象リンクLAに存在するとみなす他車3Bの台数である台数値を決定し、当該台数値に応じて対象リンクLAの変動コストを設定する。本実施形態では、制御装置Hは、上記のようにして求めた対象リンクLAの台数起因増加時間(他車1台あたりの実通過時間の増加量)に、対象リンクLAの台数値を乗算した値を変動コストとして設定する。つまり、変動コストは、台数起因増加時間に台数値を乗算して得られる秒数として設定される。例えば、対象リンクLAの台数値が4、台数起因増加時間が5秒である場合は、変動コストとして20が設定される。このように、変動コストは、対象リンクLAに存在するとみなされる他車3Bの台数の増加に伴って増加すると予想される、対象リンクLAの実通過時間の増加量を表す指標となっている。そして、制御装置Hは、経路設定制御を実行する場合に、設定車3Cの現在位置から目的地までの設定経路1A(例えば、図14に破線で示す経路)の候補となる候補経路1B(例えば、図14に示す破線又は一点鎖線で示す経路)に属する全てのリンクLのそれぞれに対して変動コストを設定する。
【0028】
制御装置Hは、このように設定される変動コストと基準コストとに基づいて、設定車3Cの現在位置から目的地までの設定経路1Aの候補となる候補経路1BにおけるリンクLのそれぞれのリンクコストを決定する。そして、当該リンクコストに基づいて候補経路1Bの全体のコストである経路コストを求め、候補経路1Bのれぞれの経路コストに基づいて設定経路1Aを設定する。
【0029】
本実施形態では、図11の経路設定制御のフローチャートに示すように、制御装置Hは、設定車3Cの現在位置の情報と目的地の情報とマップ情報とに基づいて、現在位置から目的地まで走行可能な経路を候補経路1Bとして、1以上の候補経路1Bを設定する(S11)。そして、制御装置Hは、候補経路1Bを2以上設定した場合(S12:Yes)は、候補経路1Bに属する全てのリンクLのそれぞれについて台数値を決定する(S1)。この台数値の決定方法については後述する。次に、制御装置Hは、候補経路1Bに属する全てのリンクLのそれぞれについて、台数値に応じた変動コストと基準コストとに基づいてリンクコストを決定する(S1)。そして、制御装置Hは、候補経路1Bに属するリンクLのそれぞれのリンクコストに基づいて、候補経路1Bの全体のコストである経路コストを求め(S1)、ぞれぞれの候補経路1Bの経路コストに基づいて、2以上の候補経路1Bから1つの設定経路1Aを設定する(S1)。なお、制御装置Hは、候補経路1Bを1つのみ設定した場合(S12:No)は、その候補経路1Bを設定経路1Aとして設定する(S1)。
【0030】
ここで、台数値の決定方法について説明する。制御装置Hは、対象リンクLAに実際に存在していると判断している他車3Bを、対象リンクLAに存在するとみなして、台数値を決定する。更に、本実施形態では、制御装置Hは、対象リンクLAを通過する設定経路1Aが既に設定されている他車3Bを、当該他車3Bの現在位置に関わらず対象リンクLAに存在するとみなして、台数値を決定する。尚、対象リンクLAを通過する設定経路1Aが既に設定されている他車3Bには、対象リンクLA内を目的地とする設定経路1Aが既に設定されている他車3Bも含まれる。つまり、本実施形態では、制御装置Hは、設定車3Cの経路設定制御を実行する時点で、対象リンクLAに存在していると判断している他車3B(図12に示す例では2台)に加えて、経路設定制御を実行する時点で、対象リンクLAに存在していないと判断している他車3Bであっても、対象リンクLAの全体又は一部を設定経路1Aとして既に設定されている他車3B(図12に示す例では2台)を、対象リンクLAに存在するとみなして台数値(図12に示す例では4)を決定する。制
御装置Hは、このようにして複数の候補経路1Bのそれぞれに属するリンクLを対象リンクLAとし、複数の対象リンクLAのそれぞれについての台数値を決定する。
【0031】
このように台数値を決定することで、設定車3Cの経路設定制御を行う時点での対象リンクLAの実際の混雑度(図12に示す例では他車3Bが2台)だけでなく、将来における対象リンクLAの混雑度も考慮して対象リンクLAのリンクコストを決定することができる。具体的には、経路設定制御を行う時点で対象リンクLAに存在しない他車3Bであっても、対象リンクLAを通過する予定となっている場合には、設定車3Cが対象リンクLAを通過する前後で対象リンクLAに存在する可能性があるため、対象リンクLAの混雑度を高める可能性がある。また、設定車3Cが対象リンクLAを通過する前後で対象リンクLAに存在しない他車3Bであっても、対象リンクLAを通過する予定となっている他車3Bが多い場合には、対象リンクLAの将来的な混雑度は高くなる可能性が高い。本実施形態の構成によれば、このような対象リンクLAの将来の混雑度も考慮して対象リンクLAのリンクコストを決定することができるため、設定車3Cの設定経路1Aを適切に設定し易くなっている。
【0032】
そして、制御装置Hは、候補経路1Bを構成する複数の対象リンクLAのそれぞれについてのリンクコストを決定する。リンクコストは、基準コストと台数値に応じた変動コストとに基づいて決定される。本実施形態では、基準コストに変動コストを加えた値がリンクコストとして決定される。上記のとおり、基準コストは、基準通過時間に基づいて設定される値であり、本実施形態では基準通過時間の秒数である。よって、例えば基準通過時間が10秒である場合は、基準コストは「10」とされる。また、変動コストは、台数起因増加時間に基づいて設定される値であり、本実施形態では、台数値に他車1台あたりの増加時間を示す台数起因増加時間を乗算した値に基づいて設定される秒数である。よって、例えば台数値が4、台数起因増加時間が5秒である場合は、変動コストは「20」とされる。これらの例のように基準コスト及び変動コストが設定されている場合、基準コスト「10」に変動コスト「20」を加えた「30」が対象リンクLAのリンクコストとして決定される。制御装置Hは、このようなリンクコストの決定を、候補経路1Bを構成する複数の対象リンクLAのそれぞれについて行う。
【0033】
また、本実施形態では、制御装置Hは、リンクコストを密度値によって補正する。ここで、密度値は、台数値を、対象リンクLA内に存在し得る物品搬送車3の台数の最大値で除算した値である。すなわち、密度値は、対象リンクLAの経路長を考慮した当該対象リンクLAの混雑度を表す値となっている。例えば、対象リンクLAに存在し得る物品搬送車3の台数の最大値が5台であり、上記のとおり決定された台数値が6台である場合は、密度値は1.2となる。また例えば、対象リンクLAに存在し得る物品搬送車3の台数の最大値が10台であり、上記のとおり決定された台数値が7台である場合は、密度値は0.7となる。そして、本実施形態では、制御装置Hは、基準コスト(例えば10)に変動コスト(例えば20)を加えた値に、密度値(例えば1.2)を乗算して補正した値(例えば36)をリンクコストとする。このように、本実施形態では、制御装置Hは、密度値を用いて、経路設定制御において、密度値が高くなるに従ってリンクコストが高くなるようにリンクコストを補正する。制御装置Hは、このような密度値によるリンクコストの補正を、候補経路1Bを構成する複数の対象リンクLAのそれぞれについて行う。
【0034】
このようなリンクコストの補正を行うことにより、対象リンクLA内に存在し得る物品搬送車3の台数の最大値(対象リンクLAの経路長)に応じた対象リンクLAの混雑度をリンクコストに反映させることができる。そして、密度値が高くなるに従ってリンクコストが高くなるように補正することにより、密度値が高いリンクLが含まれる候補経路1Bが設定経路1Aとして設定され難くなる。そのため、各リンクLに存在する物品搬送車3の密度の平均化を図り易くすることができ、特定のリンクLにおいて頻繁に渋滞が発生す
る可能性を低減することができる。
【0035】
また、本実施形態では、候補経路1Bに属するリンクLにおける現在位置のリンクL及び目的地のリンクLのリンクコストを補正している。図13に示すように、現在位置のリンクLについては、リンクLにおける目的地より下流側の領域LLの割合から、基準通過時間及び実通過時間を補正する。つまり、基準通過時間が5秒、実通過時間が20秒、流側の領域Lが40%の場合は、基準通過時間を2秒、実通過時間を8秒と補正し、物品搬送車3は対象リンクLA内おける現在位置より下流側に存在するとみなした他車3Bのみを対象リンクLAに存在するとみなして台数値を補正している。また、目的地のリンクLについては、リンクLにおける目的地より上流側の領域LUの割合から、基準通過時間及び実通過時間を補正する。つまり、基準通過時間が5秒、実通過時間が20秒、上流側の領域LUが60%の場合は、基準通過時間を3秒、実通過時間を12秒と補正し、物品搬送車3は対象リンクLA内おける現在位置より上流側に存在するとみなした他車3Bのみを対象リンクLAに存在するとみなして台数値を補正している。このように、現在位置のリンクL及び目的地のリンクLについては、補正した基準通過時間、実通過時間、及び台数値を補正してリンクコストを補正している。
【0036】
以上のように決定したリンクコストに基づいて、制御装置Hは、複数の候補経路1Bのそれぞれの経路コストを決定する。経路コストは、設定車3Cが候補経路1Bを走行するのに要する時間の推定値を表すコストである。本実施形態では、制御装置Hは、候補経路1Bに属する全てのリンクLのそれぞれについてのリンクコストと、候補経路1Bに属する全てのノードNのそれぞれについてのノードコストと、加算することで候補経路1Bの経路コストを決定する。そして、制御装置Hは、複数の候補経路1Bの夫々に対して決定した経路コストを比較して、複数の候補経路1Bのうちの経路コストが最も低い候補経路1Bを設定経路1Aとして設定する。これにより、走行可能経路1に存在する他車3Bの影響を適切に考慮して、実際の走行状況において、目的地に到達するまでの時間が最も短い経路を設定経路1Aとして設定できる可能性を高めることができる。
【0037】
2.その他の実施形態
次に、物品搬送設備のその他の実施形態について説明する。
【0038】
(1)上記の実施形態では、対象リンクLAに他車3Bが存在しない状態で、対象車3Aが実際に対象リンクLAを走行した場合の通過時間に基づいて、基準コストを設定する構成を例として説明した。しかし、このような構成には限定されない。例えば、対象リンクLAの経路長及び形状に基づいて、実際に対象車3Aを走行させることなく基準コストを設定する構成としてもよい。具体的には、対象リンクLAの形状に基づいて物品搬送車3の各位置での理想的な走行速度を求め、当該各位置での走行速度と対象リンクLAの経路長とに基づいて、物品搬送車3による対象リンクLAの基準通過時間を求め、当該基準通過時間に基づいて基準コストを設定することができる。
【0039】
(2)上記の実施形態では、制御装置Hが最初の経路設定制御を実行する前に走行可能経路1に属する全てのリンクLのそれぞれに対して基準コストを設定する構成を例として説明した。しかし、このような構成には限定されない。例えば、物品搬送設備において物品Wの搬送を開始した後(運用開始後)にも、他車3Bが存在しない状態で物品搬送車3が対象リンクLAを走行した場合には、当該走行による対象リンクLAの通過時間を基準通過時間として取得し、基準コストを随時更新する構成としても好適である。
【0040】
(3)上記の実施形態では、対象リンクLAに他車3Bが存在する場合に、基準通過時間に対する実通過時間の増加量を台数情報に示される台数で除算して求められる、他車3Bの1台あたりの実通過時間の増加量を台数起因増加時間とする構成を例として説明した。
しかし、このような構成には限定されない。例えば、対象リンクLAに他車3Bが存在しない場合にも同様に台数起因増加時間を求める構成とし、台数情報に示される台数が1以上の場合は、台数情報に示される台数で増加量を除算して台数起因増加時間を求め、台数情報に示される台数が0の場合は、分母が0となることを避けるために台数情報に示される台数を1として台数起因増加時間を求める構成としてもよい。或いは、台数情報に示される台数に1を加えた台数を常に用い、当該台数で増加量を除算して台数起因増加時間を求める構成としてもよい。
【0041】
(4)上記の実施形態では、基準通過時間に対する他車3Bの1台あたりの実通過時間の増加量を台数起因増加時間とする構成を例として説明した。しかし、このような構成には限定されない。例えば、台数起因増加時間を、基準通過時間に対する実通過時間の増加量と台数情報との相関マップ又は相関式として表す構成としても好適である。具体例として、横軸を他車3Bの台数、縦軸を基準通過時間に対する実通過時間の増加量とし、これらの相関関係を線形又は非線形のグラフや数値テーブルとして表した相関マップ、或いはそのような関係を数式で表した相関式も、台数起因増加時間とし得る。これらの構成とした場合、例えば、台数情報に示される台数が1台の場合3秒、2台の場合8秒、3台の場合15秒とする等、台数の増加に伴って実通過時間の増加割合が次第に大きくなるような非線形の相関を表すように台数起因増加時間を設定することが可能となる。
【0042】
(5)上記の実施形態では、対象リンクLAに実際に存在していると判断している他車3Bに加えて、対象リンクLAを通過する設定経路1Aが既に設定されている他車3Bも対象リンクLAに存在するとみなして台数値を決定する構成を例示した。しかし、このような構成には限定されない。例えば、経路設定制御を行う際に、対象リンクLAに実際に存在していると判断した他車3Bのみに基づいて台数値を決定する構成としてもよい。
【0043】
(6)上記の実施形態では、リンクコストを密度値よって補正する構成を例として説明した。しかし、このような構成には限定されない。例えば、密度値よるリンクコストの補正を行わない構成としてもよい。また、例えば、対象リンクLAの経路長を表す値によってリンクコストを補正する構成としてもよい。この場合、例えば、対象リンクLAの経路長が長くなるに従ってリンクコストが低くなるようにリンクコストを補正する構成としてもよい。或いは、これら以外の指標値によってリンクコストを補正する構成としてもよい。
【0044】
(7)上記の実施形態では、候補経路1Bの経路コストを決定する場合に、候補経路1Bに属するリンクLのリンクコストに、候補経路1Bに属するノードNのノードコストを加算する構成を例として説明した。しかし、このような構成には限定されない。例えば、候補経路1Bの経路コストを決定する場合に、ノードコストを考慮しない構成としてもよい。この場合、ノードNが経路長を有しない接続点Cのみであり、隣り合う一対の接続点Cの間を繋ぐ経路部分の全体がリンクLである構成としても好適である。
【0045】
(8)上記の実施形態では、制御装置Hが、候補経路1Bに属する全てのリンクLのリンクコストを用いて候補経路1Bの経路コストを決定する構成を例として説明した。しかし、このような構成には限定されない。例えば、設定車3Cの現在位置があるリンクLのリンクコストと目的地があるリンクLのリンクコストとを経路コストに含めない等、候補経路1Bに属するリンクLの一部のリンクコストに基づいて経路コストを求める構成としてもよい。
【0046】
(9)上記の実施形態では、候補経路1Bに属する全てのリンクLのそれぞれに対して、リンクコストを決定する構成を例として説明した。しかし、このような構成には限定されない。例えば、制御装置Hが、経路コストを決定するために候補経路1Bに属するリンクLのそれぞれのリンクコストを決定しつつ、候補経路1Bに沿って当該リンクコストを積
算していく構成であってもよい。その場合、リンクコストの積算の途中において積算値が規定のしきい値以上となった場合には、その候補経路1Bは設定経路1Aの候補ではなくなったと判定し、その後のリンクコストの演算を中止する構成であってもよい。なお、規定のしきい値としては、現在位置から目的地までの距離に応じて設定されていると好適である。
【0047】
(10)上記の実施形態では、複数の候補経路1Bがある場合に全ての候補経路1Bについて経路コストを求める構成を例として説明した。しかし、このような構成には限定されない。例えば、複数の候補経路1Bの中に、当該候補経路1Bの全体の経路長が、最短の候補経路1Bに対して規定の倍数以上の距離がある候補経路1Bについては、設定経路1Aの候補ではないとして経路コストを求めないようにしてもよい。
【0048】
(11)上記の実施形態では、物品搬送車3の位置情報Sが、被検出体Tから読み取った位置情報Sである構成を例として説明した。しかし、このような構成には限定されない。物品搬送車3の位置情報Sが、被検出体T読み取った位置の情報に加えて、当該位置からの物品搬送車3の走行距離の情報も含む構成であっても良い。この構成では、制御装置Hは、物品搬送車3の詳細な位置を取得することができる。また、物品搬送車3が、例えばGPS(グローバル・ポジショニング・システム)等の他の位置検出装置を備えている場合には、当該位置検出装置により取得した位置情報Sを制御装置Hに送信する構成とされていてもよい。
【0049】
(12)上記の実施形態では、天井から吊り下げ支持された走行レール2上を物品搬送車3が走行する構成を例として説明した。しかし、このような構成には限定されない。例えば、床面上等の天井からの吊り下げ支持以外の状態で設置された走行レール2上を物品搬送車3が走行する構成としてもよい。また、走行レール2上ではなく、床面上を直接走行する等の無軌道の状態で物品搬送車3が走行する構成としてもよい。
【0050】
(13)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0051】
3.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した物品搬送設備の概要について説明する。
【0052】
物品搬送設備は、規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備え、
前記走行可能経路は、経路が分岐又は合流する箇所であるノードと、一対の前記ノードを接続する経路部分であるリンクと、をそれぞれ複数備え、前記制御装置は、前記物品搬送車を現在位置から前記走行可能経路上の目的地に走行させるための経路である設定経路を、前記リンクのそれぞれに設定されたリンクコストに基づいて設定する経路設定制御を実行し、前記リンクコストには、基準コストと、変動コストと、が含まれ、前記リンクコストの設定のために前記リンクを通過する前記物品搬送車を対象車とし、前記対象車が通過する前記リンクを対象リンクとし、前記対象車以外の前記物品搬送車を他車とし、前記経路設定制御により前記設定経路を設定する前記物品搬送車を設定車として、前記基準コストは、前記対象リンクに前記他車が存在しない状態で、前記対象車が前記対象リンクを通過するのに要する時間である基準通過時間に基づいて設定される値であり、前記変動コストは、前記対象リンクに前記他車が存在する状態で前記対象車が前記対象リンクを走行する実走行状態において、前記対象車が前記対象リンクを通過するのに要する時間である実通過時間が、前記基準通過時間に対して、前記対象リンクに存在する前記他車の台数に応じて増加する時間である、台数起因増加時間に基づいて設定される値であり、前記制御装置は、前記経路設定制御において、前記対象リンクに存在するとみなす前記他車の台数である台数値を決定し、当該台数値に応じた前記変動コストと前記基準コストとに基づいて、前記設定車の現在位置から前記目的地までの前記設定経路の候補となる候補経路における前記リンクのそれぞれの前記リンクコストを決定し、当該リンクコストに基づいて前記候補経路のコストである経路コストを求め、前記候補経路のれぞれの前記経路コストに基づいて前記設定経路を設定する。
【0053】
本構成によれば、制御装置が経路設定制御によって設定経路を設定する場合、設定車の現在位置から目的地までの設定経路の候補となる候補経路におけるリンクのそれぞれのリンクコストを決定する。このリンクコストには、基準コストと変動コストとが含まれている。ここで、変動コストは、他車の台数に応じて増加する時間である、台数起因増加時間に基づいて設定される値であり、経路設定制御においては、候補経路におけるリンクのそれぞれに存在するとみなす他車の台数値に応じた変動コストを用いる。そして、このように決定したリンクコストに基づいて候補経路のコストである経路コストを求め、候補経路のれぞれの経路コストに基づいて設定経路を設定する。そのため、本構成によれば、他車の影響を受けない状態での経路の走行時間と、他車の影響を受ける場合における他車の台数に応じた経路の走行時間とを考慮して、適切に設定経路の設定を行うことが可能となる。従って、目的地に到達するまでの時間が短い経路を設定経路として設定できる可能性を高めることができる。
【0054】
ここで、前記制御装置は、前記対象リンクに前記他車が存在する状態で前記対象車に前記対象リンクを複数回走行させ、各回の走行において、前記対象リンクに存在していた前記他車の台数を示す台数情報と前記実通過時間とを取得し、前記基準通過時間に対する前記実通過時間の増加量と前記台数情報との相関に基づいて前記台数起因増加時間を求めると好適である。
【0055】
対象車が対象リンクを通過するのに要する実際の時間は、対象車の対象リンクでの走行速度や加減速、他車のそれぞれの対象リンクでの走行速度や加減速、他車の台数や車間距離等に応じて、様々に異なる。本構成によれば、対象リンクに前記他車が存在する状態で前記対象車に前記対象リンクを複数回走行させて各回の台数情報と実通過時間とを取得することで、様々な状況での台数情報と実通過時間との関係を示す情報を取得することができる。そして、このような情報から取得される、基準通過時間に対する実通過時間の増加量と台数情報との相関に基づいて台数起因増加時間を求めることで、様々な状況が考慮された台数起因増加時間を求めることができる。
【0056】
また、前記制御装置は、前記基準通過時間に対する前記実通過時間の増加量を、前記台数情報に示される台数で除算して求められる、前記他車1台あたりの前記実通過時間の増加量を前記台数起因増加時間とすると好適である。
【0057】
本構成によれば、台数起因増加時間が他車1台あたりの実通過時間の増加量を示す値となるため、台数起因増加時間と台数値とを乗算した値に基づいて変動コストを求めることができる。従って、変動コストの演算を容易に行うことができる。
【0058】
また、複数の前記物品搬送車のそれぞれは、自車の位置を示す位置情報を前記制御装置に送信し、前記制御装置は、複数の前記物品搬送車のそれぞれから受信した前記位置情報を時刻に関連付けて記憶部に記憶すると共に、前記記憶部に記憶された情報から求められる、前記物品搬送車のそれぞれの各時点での位置に基づいて、前記台数情報と前記実通過時間とを取得すると好適である。
【0059】
物品搬送車は、位置情報を制御装置に送信する機能を備えている場合が多く、また、制御装置は、時刻を管理する機能や情報を記憶する記憶部を備えている場合が多い。本構成によれば、このような物品搬送車の位置情報を制御装置に送信する機能や、制御装置の時刻を管理する機能及び記憶部を利用することで、物品搬送車や制御装置に新たな機能を備えることなく、台数情報と実通過時間とを取得することが可能となる。
【0060】
また、前記制御装置は、前記対象リンクを通過する前記設定経路が既に設定されている前記他車を、当該他車の現在位置に関わらず前記対象リンクに存在するとみなして、前記台数値を決定すると好適である。
【0061】
設定車の経路設定制御を行う時点で、候補経路を構成する対象リンクに存在しない他車であっても、当該他車に対して対象リンクを通過する設定経路が設定されている場合には、設定車が対象リンクを走行する時点では、当該他車が対象リンクに存在している可能性がある。本構成によれば、このような他車も経路設定制御を行う時点での他車の位置に関わらず対象リンクに存在するとみなして台数値を決定する。そのため、設定車の経路設定制御を行う時点での対象リンクの混雑度だけでなく、将来における対象リンクの混雑度も考慮して対象リンクのリンクコストを決定することができる。従って、本構成によれば、将来の各リンクの混雑度を考慮して適切な設定経路を設定し易くなる。
【0062】
また、前記制御装置は、前記台数値を、前記対象リンク内に存在し得る前記物品搬送車の台数の最大値で除算した値を密度値とし、前記経路設定制御において、前記密度値が高くなるに従って前記リンクコストが高くなるように前記リンクコストを補正すると好適である。
【0063】
本構成によれば、対象リンク内に存在し得る物品搬送車の台数の最大値に応じた対象リンクの混雑度をリンクコストに反映させることができる。また、密度値が高くなるに従ってリンクコストが高くなるようにリンクコストを補正することができるため、密度値が高いリンクが含まれる候補経路が設定経路として設定され難くなる。これにより、各リンクに存在する物品搬送車の密度の平均化を図り易くすることができ、特定のリンクにおいて頻繁に渋滞が発生する可能性を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本開示に係る技術は、規定の走行可能経路に沿って走行して物品を搬送する物品搬送車と、前記物品搬送車を制御する制御装置と、を備えた物品搬送設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1:走行可能経路
1A:設定経路
1B:候補経路
3:物品搬送車
3A:対象車
3B:他車
3C:設定車
22:記憶部
D:時刻
H:制御装置
L:リンク
LA:対象リンク
N:ノード
S:位置情報
W:物品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14