(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】リレー制御装置
(51)【国際特許分類】
H01H 47/00 20060101AFI20240214BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20240214BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240214BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01H47/00 C
H01H9/54 A
H02J7/00 S
H02J7/00 302A
H02J1/00 309R
(21)【出願番号】P 2022023043
(22)【出願日】2022-02-17
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2021073527
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片上 太輔
(72)【発明者】
【氏名】永井 康博
(72)【発明者】
【氏名】田中 智明
(72)【発明者】
【氏名】栗田 真吾
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0173292(US,A1)
【文献】国際公開第2014/041970(WO,A1)
【文献】特開2014-232640(JP,A)
【文献】特開2017-91963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 47/00 - 47/36
H01H 9/54
H02J 1/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ(4)を備えたバッテリパック(3)のケース(31)内に密閉的に収容され前記バッテリと電気負荷(2)との間に設けられるリレー回路(5)の動作を制御する、リレー制御装置(6)であって、
前記リレー回路は、前記バッテリにおける一対の端子である第一端子(41)と第二端子(42)とのうちの前記第一端子に接続された通電経路である第一通電経路(501)に設けられた第一メインリレー(511)と、前記第二端子に接続された通電経路である第二通電経路(502)に設けられた第二メインリレー(512)と、前記第二メインリレーと並列に前記第二通電経路に接続されたプリチャージリレー(513)と、を備え、
前記プリチャージリレー、前記第一メインリレー、前記第二メインリレーの順にオンし、
その後、前記プリチャージリレー、前記第一メインリレー、前記第二メインリレーの順にオフする、第一の動作シーケンスと、
前記第一メインリレー、前記プリチャージリレー、前記第二メインリレーの順にオンし、その後、前記プリチャージリレー、前記第一メインリレー、前記第二メインリレーの順にオフする
、第二の動作シーケンスと、
を、任意の頻度で入れ替える、
リレー制御装置。
【請求項2】
前記第一メインリレー、前記第二メインリレー、および前記プリチャージリレーのうちの、少なくともいずれか1つは、開放型リレーである、
請求項
1に記載のリレー制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のリレーを備えたリレー回路の動作を制御する、リレー制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された車両は、電動モータと、バッテリパックと、インバータとを備えている。バッテリパックは、バッテリコントローラと、バッテリセルと、ポジティブ側のメインリレーと、ネガティブ側のメインリレーと、プリチャージリレーとを備えている。ポジティブ側のメインリレーは、バッテリパックの外装ケースに準備されているポジティブ側出力端子とバッテリセルのプラス側との間に介在して、出力回路の導通と遮断とを切り換える。ネガティブ側のメインリレーは、バッテリパックの外装ケースのネガティブ側出力端子とバッテリセルのマイナス側との間に介在して、出力回路の導通と遮断とを切り換える。プリチャージ抵抗およびプリチャージリレーは、ポジティブ側出力端子とバッテリセルのプラス側との間で、ポジティブ側のメインリレーと並列に接続されて迂回回路を形成している。
【0003】
バッテリコントローラは、起動時にはポジティブ側のメインリレーを遮断、ネガティブ側のメインリレーを導通、プリチャージリレーを導通として、迂回回路を形成する。これにより、バッテリコントローラは、電力供給の開始時の回路途中にプリチャージ抵抗を介在させてインバータ等の下流側に過大な突入電流が流れないように供給電流を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リレー接点不良の原因の1つとして、シロキサン由来の絶縁物の接点への付着が挙げられる。具体的には、密閉空間を構成する装置内にて、シリコーン含有素材が接着剤あるいは放熱材として用いられている場合がある。この場合、装置内の電子部品の動作熱により、シリコーン含有素材に含まれる低分子シロキサンが揮発して、シロキサンガスが発生する。このシロキサンガスがリレー内部に侵入した状態で接点開閉すると、アークによる熱エネルギーでシロキサンが酸化分解して二酸化ケイ素が発生する。そして、発生した二酸化ケイ素による絶縁物が接点表面に付着する。このような、シロキサンガスのリレー内部への侵入、および、これに起因するリレー接点不良は、開放型リレーにおいて顕著に発生する。但し、密閉型リレーにおいても、使用環境において、シロキサンガスのリレー内部への侵入、および、これに起因するリレー接点不良が発生する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、例えば、シロキサン由来の絶縁物の接点への付着によるリレー接点不良の発生を効果的に抑えることを可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
リレー制御装置(6)は、リレー回路(5)の動作を制御するように構成されている。前記リレー回路は、バッテリ(4)を備えたバッテリパック(3)のケース(31)内に密閉的に収容されている。また、前記リレー回路は、前記バッテリと電気負荷(2)との間に設けられる。
前記リレー回路は、前記バッテリにおける一対の端子である第一端子(41)と第二端子(42)とのうちの前記第一端子に接続された通電経路である第一通電経路(501)に設けられた第一メインリレー(511)と、前記第二端子に接続された通電経路である第二通電経路(502)に設けられた第二メインリレー(512)と、前記第二メインリレーと並列に前記第二通電経路に接続されたプリチャージリレー(513)と、を備えている。
請求項1に記載のリレー制御装置は、
前記プリチャージリレー、前記第一メインリレー、前記第二メインリレーの順にオンし、その後、前記プリチャージリレー、前記第一メインリレー、前記第二メインリレーの順にオフする、第一の動作シーケンスと、
前記第一メインリレー、前記プリチャージリレー、前記第二メインリレーの順にオンし、その後、前記プリチャージリレー、前記第一メインリレー、前記第二メインリレーの順にオフする、第二の動作シーケンスと、
を、任意の頻度で入れ替える。
【0008】
かかる構成においては、最初に、オフ状態の前記第二メインリレーと並列接続された前記プリチャージリレーがオンされ、次に前記第一メインリレーがオンされる。この第一メインリレーがオンされた時点で、前記バッテリと前記電気負荷との通電が開始する。その後、前記第二メインリレーがオンされる。
【0009】
その後、オン状態の前記第二メインリレーと並列接続された前記プリチャージリレーがオフされ、次に前記第一メインリレーがオフされる。この第一メインリレーがオフされた時点で、前記バッテリと前記電気負荷との通電が遮断される。その後、前記第二メインリレーがオフされる。
【0010】
このように、かかる構成においては、通電の開始および遮断が、前記第一メインリレーのオンオフ時に発生する。このため、前記第一メインリレーのオンオフにより、シロキサン由来の絶縁物が発生し得る。一方、前記第二メインリレーおよび前記プリチャージリレーのオンオフ時には、前記バッテリと前記電気負荷との通電の開始あるいは遮断に伴うアークが発生しないので、シロキサン由来の絶縁物は発生しない。
【0011】
シロキサン由来の絶縁物は、前記第一メインリレーのオフ時に、遮断アークに起因する熱により発生して、当該第一メインリレーの接点に付着する。もっとも、かかる接点に付着した絶縁物は、オン時の高電圧印加の際に発生するアークにより破壊される。これにより、接点から絶縁物が良好に除去され、接点の導通が確保される。したがって、かかる構成によれば、シロキサン由来の絶縁物の接点への付着によるリレー接点不良の発生を効果的に抑えることが可能なリレー制御装置を提供することが可能となる。
ここで、前記第一メインリレーがオンオフするたびに接点間アークが発生する。このため、前記第一メインリレーにおいて、接点間アークによる接点へのダメージにより接点消耗が促進されるという懸念がある。そこで、請求項1に記載のリレー制御装置は、第一の動作シーケンスと第二の動作シーケンスとを任意の頻度で入れ替える。第一の動作シーケンスは、前記プリチャージリレー、前記第一メインリレー、前記第二メインリレーの順にオンし、その後、前記プリチャージリレー、前記第一メインリレー、前記第二メインリレーの順にオフする動作シーケンスである。第二の動作シーケンスは、前記第一メインリレー、前記プリチャージリレー、前記第二メインリレーの順にオンし、その後、前記プリチャージリレー、前記第一メインリレー、前記第二メインリレーの順にオフする動作シーケンスである。これにより、前記第一メインリレーがオンする際のアーク発生回数が削減され、以て接点消耗が良好に抑制され得る。なお、第二の動作シーケンスにおいて、前記プリチャージリレーにアークが発生するが、かかるアークの発生は、シロキサン由来の絶縁物の付着堆積をもたらすオフ時のものではなく、むしろ、これを破壊除去する効果があるオン時のものである。このため、第二の動作シーケンスを用いても、前記プリチャージリレーにおけるシロキサン由来の絶縁物の接点への付着によるリレー接点不良の発生は効果的に回避され得る。
【0012】
なお、出願書類中の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付されている場合がある。この場合、参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的構成との対応関係の単なる一例を示すものである。よって、本発明は、参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係るリレー制御装置を備えたバッテリパックの内部の概略的な回路構成図である。
【
図2】
図1に示されたリレー制御装置によるリレー回路の動作制御の概要を示すタイムチャートである。
【
図3】比較例におけるリレー回路の動作制御の概要を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると、当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中には挿入せず、その後にまとめて説明する。
【0015】
(構成)
図1を参照すると、本実施形態においては、車載システム1は、いわゆるハイブリッド自動車を含む電動自動車に搭載されている。車載システム1は、電気負荷2とバッテリパック3とを備えている。電気負荷2は、インバータを備えている。インバータは、車両走行のための駆動力発生用とバッテリパック3に備えられたバッテリ4を充電するための充電電力発生用とを兼ねるモータジェネレータに接続されている。
【0016】
バッテリパック3は、バッテリ4と、リレー回路5と、リレー制御装置6とを備えている。本実施形態においては、バッテリ4、リレー回路5、およびリレー制御装置6は、バッテリパック3のケース31内に密閉的に収容されている。
【0017】
バッテリ4は、充放電可能な二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)によって構成されている。バッテリ4は、一対の端子である第一端子41と第二端子42とを備えている。本実施形態においては、第一端子41は、いわゆるプラス極端子である。また、第二端子42は、いわゆるマイナス極端子である。
【0018】
リレー回路5は、電気負荷2とバッテリ4との間に設けられている。すなわち、リレー回路5は、バッテリ4における第一端子41に接続された通電経路である第一通電経路501、および、バッテリ4における第二端子42に接続された通電経路である第二通電経路502に介装されている。
【0019】
リレー回路5は、複数のリレーを備えていて、これらのリレーのオンオフにより電気負荷2とバッテリ4との通電と通電遮断とを切り替えるように構成されている。具体的には、リレー回路5は、第一メインリレー511と、第二メインリレー512と、プリチャージリレー513と、プリチャージ抵抗514とを備えている。
【0020】
第一メインリレー511は、第一通電経路501における通電と通電遮断とを切り替え可能に、第一通電経路501に設けられている。本実施形態においては、第一メインリレー511は、開放型の電磁リレーであって、リレー制御装置6によって開閉すなわちオンオフが制御されるようになっている。
【0021】
第二メインリレー512は、第二通電経路502に設けられている。本実施形態においては、第二メインリレー512は、開放型の電磁リレーであって、リレー制御装置6によって開閉すなわちオンオフが制御されるようになっている。
【0022】
プリチャージリレー513は、第二メインリレー512と並列に、第二通電経路502に接続されている。すなわち、第二メインリレー512およびプリチャージリレー513は、いずれか一方がオンされることで第二通電経路502における通電を可能とする一方、双方がオフされることで第二通電経路502における通電を遮断するように設けられている。本実施形態においては、プリチャージリレー513は、開放型の電磁リレーであって、リレー制御装置6によって開閉すなわちオンオフが制御されるようになっている。
【0023】
プリチャージ抵抗514は、プリチャージリレー513に直列接続されている。すなわち、プリチャージ抵抗514は、プリチャージリレー513とともに、第二通電経路502にて第二メインリレー512と並列に設けられた迂回通電経路に設けられている。
【0024】
リレー制御装置6は、リレー回路5の動作を制御するように構成されている。すなわち、リレー制御装置6は、第一メインリレー511、第二メインリレー512、およびプリチャージリレー513における開閉状態を制御することで、電気負荷2とバッテリ4との通電状態を制御するように設けられている。具体的には、リレー制御装置6は、所定の作動シーケンスで第一メインリレー511、第二メインリレー512、およびプリチャージリレー513における開閉状態を制御可能な、マイクロコンピュータあるいはASICとしての構成を有している。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。
【0025】
具体的には、リレー制御装置6は、プリチャージリレー513、第一メインリレー511、第二メインリレー512の順にオンするようになっている。また、リレー制御装置6は、その後、プリチャージリレー513、第一メインリレー511、第二メインリレー512の順にオフするようになっている。
【0026】
(効果)
以下、本実施形態に係るリレー制御装置6の動作の概要について、同構成により奏される効果とともに、各図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図2は、本実施形態における、第一メインリレー511、第二メインリレー512、およびプリチャージリレー513の開閉タイミングを示すタイムチャートである。図中、横軸Tは時間経過を示す。また、「M1」、「M2」、および「P」は、それぞれ、第一メインリレー511、第二メインリレー512、およびプリチャージリレー513を示す。また、以下の説明において、第一メインリレー511、第二メインリレー512、およびプリチャージリレー513を総称して単に「リレー」と称することがある。
【0028】
図1および
図2を参照すると、リレーのオンシーケンスにおいては、最初に、オフ状態の第二メインリレー512と並列接続されたプリチャージリレー513が時刻TP1にてオンされ、次に、第一メインリレー511が時刻T11にてオンされる。この第一メインリレー511がオンされた時刻T11にて、電気負荷2とバッテリ4との通電が開始する。その後、時刻T21にて、第二メインリレー512がオンされる。すなわち、第一メインリレー511がオンされる時刻T11と、第二メインリレー512がオンされる時刻T21と、プリチャージリレー513がオンされる時刻TP1とは、TP1→T11→T21の順となる。
【0029】
一方、リレーのオフシーケンスにおいては、最初に、オン状態の第二メインリレー512と並列接続されたプリチャージリレー513が時刻TP2にてオフされ、次に第一メインリレー511が時刻T12にてオフされる。この第一メインリレー511がオフされた時刻T12にて、電気負荷2とバッテリ4との通電が遮断される。その後、時刻T22にて、第二メインリレー512がオフされる。すなわち、第一メインリレー511がオフされる時刻T12と、第二メインリレー512がオフされる時刻T22と、プリチャージリレー513がオフされる時刻TP2とは、TP2→T12→T22の順となる。
【0030】
図2において、電気負荷2とバッテリ4との通電の開始時刻と遮断時刻とを、破線で囲って示している。このように、かかる構成においては、通電の開始と遮断とが、ともに、第一メインリレー511のオンオフ時に発生する。
【0031】
ここで、本実施形態においては、第一メインリレー511、第二メインリレー512、およびプリチャージリレー513は、バッテリパック3のケース31内の密閉空間内に配置されている。また、第一メインリレー511、第二メインリレー512、およびプリチャージリレー513は、ともに開放型リレーである。
【0032】
密閉空間を構成する、バッテリパック3のケース31内にて、シリコーン含有素材が接着剤あるいは放熱材として用いられている場合があり得る。この場合、内部の電子部品の動作熱により、シリコーン含有素材に含まれる低分子シロキサンが揮発して、シロキサンガスが発生する。すなわち、リレー回路5を収容するケース31内には、シロキサン雰囲気の密閉空間が形成される。シロキサンガスがリレー内部に侵入した状態で接点開閉すると、アークによる熱エネルギーでシロキサンが酸化分解して二酸化ケイ素が発生する。そして、発生した二酸化ケイ素による絶縁物が接点表面に付着する。このような、シロキサンガスのリレー内部への侵入は、開放型リレーにおいて顕著に発生する。
【0033】
本実施形態においては、上述のように、電気負荷2とバッテリ4との通電の開始と遮断とが、ともに、第一メインリレー511のオンオフ時に発生する。このため、第一メインリレー511のオンオフにより、シロキサン由来の絶縁物が発生し得る。一方、第二メインリレー512およびプリチャージリレー513のオンオフ時には、電気負荷2とバッテリ4との通電の開始あるいは遮断に伴うアークが発生しないので、シロキサン由来の絶縁物は発生しない。
【0034】
シロキサン由来の絶縁物は、第一メインリレー511のオフ時に、遮断アークに起因する熱により、第一メインリレー511の接点に付着および堆積する。もっとも、かかる接点に付着および堆積した絶縁物は、オン時の高電圧印加に発生するアークにより破壊される。これにより、接点から絶縁物が良好に除去され、接点の導通が確保される。したがって、かかる構成によれば、シロキサン由来の絶縁物の接点への付着によるリレー接点不良の発生を効果的に抑えることが可能なリレー制御装置6を提供することが可能となる。
【0035】
これに対し、
図3に、比較例として、T11→TP1→T21およびTP2→T22→T12の例を示す。図中、横軸Tは時間経過を示す。また、「M1」、「M2」、および「P」は、それぞれ、第一メインリレー511、第二メインリレー512、およびプリチャージリレー513を示す。
【0036】
図3に示した比較例においては、プリチャージリレー513がオンされる時刻TP1にて電気負荷2とバッテリ4との通電が開始し、第二メインリレー512がオフされる時刻T22にて電気負荷2とバッテリ4との通電が遮断される。このため、第二メインリレー512およびプリチャージリレー513における接点付近にて、シロキサン由来の絶縁物が発生し得る。この点、プリチャージリレー513においては、オン前に接点上に絶縁物が付着あるいは堆積していたとしても、かかる絶縁物がオン時の高電圧印加により破壊されることで、接点の導通が確保される。しかしながら、第二メインリレー512においては、遮断アークに起因する熱により絶縁物が接点に付着あるいは堆積しても、これを破壊および除去するようなオン時の高電圧印加は行われない。したがって、比較例によれば、第二メインリレー512にて、接点上に絶縁物が付着あるいは堆積することで接点不良が発生するおそれがある。
【0037】
このような、リレー接点上の絶縁物の付着あるいは堆積による接点不良の問題に対し、例えば、密閉型リレーを用いるという解決策が考えられる。しかしながら、密閉型リレーは、開放型リレーに比して、密閉構造を実現するための部品点数および加工工数の増加によるコストアップのため、高価となる。このため、密閉型リレーを用いると、バッテリパック3あるいは車載システム1における装置全体のコストアップが生じる。また、密閉型リレーにおいても、使用環境において、シロキサンガスのリレー内部への侵入が発生する可能性がある。よって、密閉型リレーを用いたとしても、このような接点不良の問題を完全に解決することができるとは限らない。
【0038】
この点、本実施形態においては、高電圧の印加および遮断が生じるリレーを1つ(すなわち上記の例では第一メインリレー511)のみとすることで、接点表面に付着あるいは堆積した絶縁物を、接点オンの際の高電圧印加により破壊して除去することができる。したがって、本実施形態によれば、オンオフのシーケンスを適切に設定することで、密閉型リレーを用いなくても、接点不良の問題が良好に解決され得る。
【0039】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0040】
本発明は、上記実施形態に示された具体的な装置構成に限定されない。例えば、第一端子41と第二端子42とにおけるプラスマイナスの関係は、上記実施形態とは逆であってもよい。すなわち、第一端子41がいわゆるマイナス極端子であり、第二端子42がいわゆるプラス極端子であってもよい。
【0041】
上記実施形態においては、第一メインリレー511、第二メインリレー512、およびプリチャージリレー513のうちのすべてが、開放型リレーであった。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、第一メインリレー511、第二メインリレー512、およびプリチャージリレー513のうちの、少なくともいずれか1つは、密閉型リレーであってもよい。
【0042】
上記実施形態においては、第一メインリレー511がオンオフするたびに接点間アークが発生する。このため、第一メインリレー511において、接点間アークによる接点へのダメージにより接点消耗が促進されるという懸念がある。そこで、T11とTP1との順序を、任意の頻度で入れ替えてもよい。すなわち、リレー制御装置6は、第一の動作シーケンスと第二の動作シーケンスとを任意の頻度で入れ替えるように構成されていてもよい。第一の動作シーケンスは、上記実施形態と同様の、プリチャージリレー513、第一メインリレー511、第二メインリレー512の順にオンし、その後、プリチャージリレー513、第一メインリレー511、第二メインリレー512の順にオフする動作シーケンスである。第二の動作シーケンスは、T11とTP1との順序を上記実施形態から入れ替えた、第一メインリレー511、プリチャージリレー513、第二メインリレー512の順にオンし、その後、プリチャージリレー513、第一メインリレー511、第二メインリレー512の順にオフする動作シーケンスである。これにより、第一メインリレー511がオンする際のアーク発生回数が削減され、以て接点消耗が良好に抑制され得る。なお、第二の動作シーケンスにおいて、プリチャージリレー513にアークが発生するが、かかるアークの発生は、シロキサン由来の絶縁物の付着堆積をもたらすオフ時のものではなく、むしろ、これを破壊除去する効果があるオン時のものである。このため、第二の動作シーケンスを用いても、プリチャージリレー513におけるシロキサン由来の絶縁物の接点への付着によるリレー接点不良の発生は効果的に回避され得る。なお、入れ替えの頻度は、ランダムであってもよいし、カウンタやタイマ等を用いて所定回数毎としてもよいし、通電状態のモニタリング結果(すなわち例えば電流あるいは電圧の検出値と所定の閾値との対比)を用いたものであってもよい。
【0043】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数値に限定される場合等を除き、その特定の数値に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
【0044】
変形例も、上記の例示に限定されない。すなわち、例えば、上記に例示した以外で、複数の変形例が、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。
【0045】
リレー制御装置6における上述の動作は、マイクロコンピュータとしての構成を有するリレー制御装置6に備えられたコンピュータ読み取り可能な非遷移的実体的記憶媒体に格納された、コンピュータプログラムとして実現され得る。すなわち、本発明は、かかるプログラム、あるいはこれを記憶した非遷移的実体的記憶媒体としても表現可能である。また、リレー制御装置6において、マイクロコンピュータ部分とASIC部分とが設けられていてもよい。すなわち、リレー制御装置6は、一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと、一つ以上の論理回路によって構成されたハードウエアとの組み合わせにより構成された、一つ以上の専用処理装置により実現されてもよい。
【0046】
本発明によれば、開放型リレーを用いてもリレー接点不良の発生の懸念が良好に解消された、密閉型のバッテリパック3を提供することができる。すなわち、本明細書は、以下の構成を有するバッテリパック3を開示する。
一対の端子である第一端子(41)と第二端子(42)とを備えたバッテリ(4)と、
前記バッテリと電気負荷(2)との間に設けられるリレー回路(5)と、
前記リレー回路を密閉的に収容するケース(31)と、
前記リレー回路の動作を制御するリレー制御装置(6)と、
を備えたバッテリパック(3)であって、
前記リレー回路は、前記第一端子に接続された通電経路である第一通電経路(501)に設けられた第一メインリレー(511)と、前記第二端子に接続された通電経路である第二通電経路(502)に設けられた第二メインリレー(512)と、前記第二メインリレーと並列に前記第二通電経路に接続されたプリチャージリレー(513)と、を備え、
前記リレー制御装置は、
前記プリチャージリレー、前記第一メインリレー、前記第二メインリレーの順にオンし、
その後、前記プリチャージリレー、前記第一メインリレー、前記第二メインリレーの順にオフする、
バッテリパック。
【符号の説明】
【0047】
3 バッテリパック
31 ケース
4 バッテリ
41 第一端子
42 第二端子
5 リレー回路
511 第一メインリレー
512 第二メインリレー
513 プリチャージリレー
6 リレー制御装置