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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】後処理促進装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20240214BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240214BHJP
   F01N 3/22 20060101ALI20240214BHJP
   F01N 3/021 20060101ALI20240214BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20240214BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
F01N3/20 K
F01N3/08 B
F01N3/22 301A
F01N3/021
F02D43/00 301P
F02D43/00 301Z
F02D45/00 360A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022050120
(22)【出願日】2022-03-25
(65)【公開番号】P2023142965
(43)【公開日】2023-10-06
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】藤井 謙治
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0292964(US,A1)
【文献】特開2008-195315(JP,A)
【文献】特開昭59-173515(JP,A)
【文献】特開2013-124609(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第04435213(DE,A1)
【文献】英国特許出願公開第02254014(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0340895(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0198821(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/20
F01N 3/08
F01N 3/22
F01N 3/021
F02D 43/00
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出された排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元するための第1後処理装置と、
前記第1後処理装置の後段に配置され、粒子状物質を捕集し、且つ、前記窒素酸化物を還元するための第2後処理装置と、
前記第2後処理装置の温度を測定する温度センサと、
前記第1後処理装置を通過する空気を加熱するヒータと、
前記ヒータにより加熱される前記空気を循環させるための送風装置と、
前記第1後処理装置を通過した空気を前記第1後処理装置の後段と前記第1後処理装置の前段との間で循環させるための配管へ前記第2後処理装置を通過することなく案内する状態と、前記第1後処理装置を通過した空気を、前記第2後処理装置を通過して外部へ排出する状態とを切り替えるための第1切替部と、
前記エンジンの始動後、前記排気ガスが前記第1後処理装置を通過することなく前記第2後処理装置を通過して外部へ排出される状態と、前記排気ガスが前記第1後処理装置及び前記第2後処理装置を通過して、外部へ排出される状態とを切り替える第2切替部と、
前記エンジンが停止している状態で、前記エンジンが過去に始動された複数の始動時刻の履歴に基づいて特定された前記エンジンを始動させる予定時刻、又は予め設定された予定時刻よりも、前記第1後処理装置内の触媒が目標温度に達するのに要する暖機必要時間以上前に、前記ヒータに前記空気の加熱を開始させ、且つ、前記送風装置に前記空気の循環を開始させ、前記予定時刻よりも前記暖機必要時間以上前に、前記配管へ前記空気を案内する状態へ前記第1切替部を切り替え、前記温度センサにより測定した前記温度が閾値以上であることを条件として、前記排気ガスが前記第1後処理装置を通過することなく前記第2後処理装置を通過して前記外部へ排出される状態に前記第2切替部を切り替える制御部と、
を備える後処理促進装置。
【請求項2】
曜日に関連付けて前記予定時刻を記憶する記憶部をさらに有し、
前記制御部は、前記エンジンが停止している曜日に関連付けて前記記憶部に記憶された前記予定時刻よりも前記暖機必要時間以上前に、前記ヒータに前記空気の加熱を開始させ、且つ、前記送風装置に前記空気の循環を開始させる、
請求項1に記載の後処理促進装置。
【請求項3】
前記第1後処理装置の温度を測定する温度センサを備え、
前記制御部は、当該温度センサにより測定された前記第1後処理装置の温度と、前記目標温度との差分に基づいて、前記暖機必要時間を算出する、
請求項1又は2に記載の後処理促進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出ガス中の窒素化合物を還元する後処理装置を昇温させる後処理促進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排出ガス中の窒素化合物を還元する選択還元触媒等を含む装置を車両に搭載することが広く行われている。例えば、特許文献1には、車両の走行前に、選択還元触媒をヒータで加熱することにより昇温させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-177106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、ユーザが車両を使用する時点で選択還元触媒の昇温が完了していないことがあるという問題があった。
【0005】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、ユーザが車両を使用するまでに触媒の昇温を完了することができる後処理促進装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の後処理促進装置は、エンジンから排出された排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元するための後処理装置と、前記後処理装置を通過する空気を加熱するヒータと、前記ヒータにより加熱される前記空気を循環させるための送風装置と、前記エンジンが停止している状態で、前記エンジンが過去に始動された複数の始動時刻の履歴に基づいて特定された前記エンジンを始動させる予定時刻、又は予め設定された予定時刻よりも、前記後処理装置内の触媒が目標温度に達するのに要する暖機必要時間以上前に、前記ヒータに前記空気の加熱を開始させ、且つ、前記送風装置に前記空気の循環を開始させる制御部と、を備える。
【0007】
前記後処理促進装置は、曜日に関連付けて前記予定時刻を記憶する記憶部をさらに有し、前記制御部は、前記エンジンが停止している曜日に関連付けて前記記憶部に記憶された前記予定時刻よりも前記暖機必要時間以上前に、前記ヒータに前記空気の加熱を開始させ、且つ、前記送風装置に前記空気の循環を開始させてもよい。前記後処理促進装置は、前記後処理装置を通過した空気を前記後処理装置の後段と前記後処理装置の前段との間で循環させるための配管へ案内する状態と、当該空気を外部へ排出する状態とを切り替えるための第1切替部をさらに備え、前記制御部は、前記予定時刻よりも前記暖機必要時間以上前に、前記配管へ前記空気を案内する状態へ前記第1切替部を切り替えてもよい。
【0008】
前記後処理促進装置は、前記窒素酸化物を還元するための第1後処理装置と、当該第1後処理装置の後段に配置され、粒子状物質を捕集し、且つ、前記窒素酸化物を還元するための第2後処理装置を備え、前記第1切替部は、前記第1後処理装置を通過した空気を、前記第2後処理装置を通過することなく前記配管へ案内する状態と、前記第1後処理装置を通過した空気を前記第2後処理装置を通過して前記外部へ排出する状態とを切り替えてもよい。
【0009】
前記後処理促進装置は、前記第2後処理装置の温度を測定する温度センサと、前記エンジンの始動後、前記排気ガスが前記第1後処理装置を通過することなく前記第2後処理装置を通過して外部へ排出される状態と、前記排気ガスが前記第1後処理装置及び前記第2後処理装置を通過して、外部へ排出される状態とを切り替える第2切替部と、をさらに備え、前記制御部は、前記温度センサにより測定した前記温度が閾値以上であることを条件として、前記排気ガスが前記第1後処理装置を通過することなく前記第2後処理装置を通過して前記外部へ排出される状態に前記第2切替部を切り替えてもよい。
【0010】
前記後処理促進装置は、前記第1後処理装置の温度を測定する温度センサを備え、前記制御部は、当該温度センサにより測定された前記第1後処理装置の温度と、前記目標温度との差分に基づいて、前記暖機必要時間を算出してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザが車両を使用するまでに触媒の昇温を完了するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の後処理促進装置の構成を示す。
図2】実施形態の後処理促進装置の構成を示す。
図3】エンジン11を始動させる予定時刻の決定方法を説明するための図である。
図4】エンジン11を始動させる予定時刻の決定方法を説明するための図である。
図5】第1後処理装置による窒素酸化物の除去を行わない場合の例を示す。
図6】制御部が窒素酸化物を除去するための第1後処理装置を昇温させる処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[後処理促進装置1の構成]
図1及び図2は、本実施形態の後処理促進装置1の構成を示す。後処理促進装置1では、エンジン11の排気ガスから窒素酸化物を除去するための触媒をエンジン始動前に触媒を昇温させることにより、排気ガスからの窒素酸化物の除去の効率を向上させる。後処理促進装置1は、エンジン11、送風装置12、ヒータ13、第1後処理装置14、第2後処理装置15、第1切替部16、第2切替部17、記憶部18及び制御部19を備える。
【0014】
エンジン11は、トラック等の車両に搭載される。エンジン11は、例えば、ディーゼルエンジンである。
【0015】
送風装置12は、例えば、ブロワである。送風装置12は、ヒータ13により加熱される空気を循環させる。図1の例では、送風装置12は、第1切替部16側から到達した空気をヒータ13側へ吹き付けることにより空気の流れを発生させる。また、送風装置12は、尿素水用のミキサと一体化されていてもよい。
【0016】
ヒータ13は、第1後処理装置14を通過する空気を加熱する。第1後処理装置14は、例えば、CC―SCR(Closed Coupled- Selective Catalytic Reduction、近接化選択触媒還元)である。また、第1後処理装置14は、SCR-F(Selective Catalytic Reduction-Filter)等であってもよい。第1後処理装置14は、エンジン11から排出された排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元する。
【0017】
第1後処理装置14は、UF―SCR(Under Floor-Selective Catalytic Reduction、床下選択触媒還元)であってもよい。第1後処理装置14は、粒子状物質(Particulate matter、PM)を捕集するためのフィルタを有していてもよい。
【0018】
第2後処理装置15は、第1後処理装置14の後段に配置される。第2後処理装置15は、例えば、UF―SCRである。第2後処理装置15は、第1後処理装置14と同様に、排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元する。第2後処理装置15は、粒子状物質を捕集するためのフィルタを有している。
【0019】
第1切替部16及び第2切替部17は、例えば、空気が通過する経路を切り替えるためのバルブである。第1切替部16は、第1後処理装置14と第2後処理装置15との間に設けられており、第1後処理装置14を通過した空気を配管Aへ案内するループ状態と、当該空気を外部へ排出する開放状態とを切り替える。この配管Aは、第1後処理装置14を通過した空気を第1後処理装置14の後段と第1後処理装置14の前段との間で循環させるためのものである。ループ状態では、図1中の複数の太矢印で示すように、第1後処理装置14を通過した後に第1切替部16から配管Aへ案内された空気は、第2後処理装置15を通過することなく第1後処理装置14の前段に戻る。ループ状態において空気が流れる向きは、図1中に示す向きと逆方法であってもよい。
【0020】
第1切替部16は、制御部19から入力される信号に基づいて、エンジン始動時に開放状態に移行するように切り替える。図2は、開放状態における空気の流れを示す。図2には、エンジン11の始動後の開放状態の例を示す。開放状態では、図2中の複数の太矢印で示すように、送風装置12を通過した排気ガスは、ヒータ13及び第1後処理装置14の順を通過する。開放状態では、第1後処理装置14を通過した空気は、第2後処理装置15を通過して外部へ排出される。
【0021】
第2切替部17は、エンジン11と第1後処理装置14との間に設けられている。ループ状態でない状態において、第2切替部17は、制御部19から入力される信号に基づいて、空気を流す経路を切り替える。第2切替部17は、エンジン11からの排気ガスを第1後処理装置14に通す状態と、エンジン11からの排気ガスを配管A側に案内する状態と、配管Aを介して送られてきた第1後処理装置14を通過した空気を第1後処理装置14が設けられている経路に案内する状態とを切り替える。制御部19により第1切替部16及び第2切替部17の制御方法の詳細については後述する。
【0022】
記憶部18は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等により構成される。記憶部18は、制御部19を機能させるための各種プログラムや各種データを記憶する。
【0023】
制御部19は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)である。制御部19は、エンジン11が停止している状態において、後述する方法で設定された予定時刻よりも暖機必要時間以上前に、ヒータ13に空気の加熱を開始させる。暖機必要時間は、ヒータ13の加熱によって第1後処理装置14内の触媒が目標温度に達するのに要する時間である。目標温度は、例えば、第1後処理装置14内の触媒が窒素酸化物を還元するのに適した温度であり、例えば200~250℃である。
【0024】
制御部19は、暖機必要時間を算出するために、第1後処理装置14の温度を測定する温度センサ(不図示)の測定結果を取得する。制御部19は、第1後処理装置14を昇温させる目標温度と、取得した第1後処理装置14の温度との差分を特定する。
【0025】
制御部19は、特定した温度の差分だけ第1後処理装置14を昇温させるのに要する暖機必要時間を算出する。制御部19は、循環する空気の体積と、ヒータ13の出力とに基づいて、暖機必要時間を算出する。制御部19は、例えば、空気の体積と、触媒自体の熱容量と、配管Aの熱容量と、ヒータ13の熱容量と、ヒータ13の出力の大きさと、当該体積の空気の上昇温度と、当該上昇温度まで空気を加熱するために要する時間と、が関連付けられたデータテーブルを参照することにより、特定した温度の差分と、循環する空気の体積と、触媒自体の熱容量と、配管Aの熱容量と、ヒータ13の熱容量と、ヒータ13の出力とに対応する暖機必要時間を算出する。
【0026】
制御部19は、温度の差分を特定することなく、空気の体積と、触媒自体の熱容量と、配管Aの熱容量と、ヒータ13の熱容量と、ヒータ13の出力の大きさと、当該体積の空気の加熱前の温度と、加熱後の温度と、加熱後の温度まで空気を加熱するために要する時間と、が関連付けられたデータテーブルを参照することにより、第1後処理装置14の測定温度と、目標温度と、循環する空気の体積と、触媒自体の熱容量と、配管Aの熱容量と、ヒータ13の熱容量と、ヒータ13の出力とに対応する暖機必要時間を算出してもよい。
【0027】
制御部19は、予定時刻よりも暖機必要時間以上前に、送風装置12に空気の循環を開始させる。制御部19は、予定時刻よりも暖機必要時間以上前に、ループ状態へ移行させるように第1切替部16を切り替え、第1切替部16に到達した空気を配管A側へ案内させる。このようにして、制御部19は、ループ状態においてヒータ13により加熱された空気を外部へ放出することなく循環させる。このため、制御部19は、ヒータ13による第1後処理装置14の昇温の効率を向上させることができる。
【0028】
また、制御部19は、ループ状態へ移行するように第1切替部16を切り替えるタイミングを、送風装置12による空気の循環開始と同時、又は、ヒータ13による加熱開始と同時にしてもよいが、これに限定されない。例えば、制御部19は、エンジン11が停止した直後に、ループ状態へ移行するように第1切替部16を切り替えてもよい。
【0029】
このようにして、制御部19は、エンジン11が始動される予定の予定時刻よりも暖機必要時間以上前に第1後処理装置14に含まれる触媒の昇温を開始するので、予定時刻までに第1後処理装置14に含まれる触媒の昇温を完了させることができる。このため、制御部19は、排気ガスからの窒素酸化物の第1後処理装置14による除去の精度がエンジン始動直後に低下することを抑制することができる。
【0030】
図1に示すように、ヒータ13により加熱された空気は、ループ状態において第2後処理装置15を通過しないため、第2後処理装置15は、エンジンが停止している間のループ状態においてほぼ昇温しない。このため、エンジン始動直後においては第2後処理装置15による窒素酸化物の除去作用は比較的小さく、排気ガスに含まれる窒素酸化物は、主に第1後処理装置14により除去される。なお、第2後処理装置15による粒子状物質の捕集作用は、第2後処理装置15の温度の影響をほぼ受けない。このため、第2後処理装置15は、エンジン始動直後においても排気ガスに含まれる粒子状物質を除去することができる。
【0031】
[始動予定時間の決定方法]
図3及び図4は、エンジン11を始動させる予定時刻の決定方法を説明するための図である。図3は、図1の後処理促進装置1が搭載された車両100を含む後処理促進システムSの構成を示す。後処理促進システムSは、車両100及び管理装置200を備える。管理装置200は、例えば、サーバである。管理装置200は、ネットワークを介して、車両100と通信する。管理装置200は、車両100のエンジン11が始動される度に、エンジン11が始動された始動日時と、車両100の車両IDとを取得する(図3中の(1))。管理装置200は、取得した車両IDと、始動日時とを関連付けた始動履歴情報を記憶部(不図示)に記憶させる。
【0032】
管理装置200は、車両100は、エンジン11が過去に始動された複数の始動時刻の履歴を示す始動履歴情報に基づいて、予定時刻を推定する(図3中の(2))。管理装置200は、曜日に関連付けて予定時刻を推定してもよい。図4は、管理装置200が記憶している始動履歴情報の例を示す。図4の始動履歴情報では、曜日と、時間帯と、この時間帯にエンジン11が始動された始動回数とが関連付けられている。
【0033】
図4の例では、管理装置200は、エンジン11が始動された始動回数が最も多い時間帯を予定時刻として推定する。例えば、管理装置200は、図4に示す始動履歴情報を参照して、月曜日の時間帯「AM6:00~7:00」にエンジン11が始動された始動回数は50回であり、この時間帯「AM6:00~7:00」が月曜日において始動回数が最も高い時間帯であることを特定する。このとき、管理装置200は、始動回数が最も多い時間帯「AM6:00~7:00」の開始時刻であるAM6:00を月曜日の予定時刻として推定する。
【0034】
また、管理装置200は、エンジン11が始動された最も早い時間帯を予定時刻として推定してもよい。例えば、管理装置200は、図4に示す始動履歴情報を参照して、火曜日の時間帯「AM4:00~5:00」の始動回数が3回であり、この時間帯「AM4:00~5:00」が火曜日においてエンジン11を1回以上始動した最も早い時間帯であることを特定する。このとき、管理装置200は、エンジン11が始動された最も早い時間帯「AM4:00~5:00」の開始時刻であるAM4:00を火曜日の予定時刻として推定してもよい。
【0035】
管理装置200は、取得した車両IDに対応する車両100に対し、推定した予定時刻と、予定時刻に対応する曜日とを関連付けて送信する(図3中の(3))。車両100の制御部19は、管理装置200が推定した予定時刻と、この予定時刻に対応する曜日とを取得する。制御部19は、取得した予定時刻と曜日とを関連付けた予定時刻参照情報を記憶部18に記憶させる。なお、予定時刻の決定方法は、エンジン11が過去に始動された複数の始動時刻の履歴を示す始動履歴情報に基づいて、管理装置200により推定される例に限定されない。例えば、予定時刻は、車両100のユーザ又は車両100の運行を管理する事業者等により予め設定されていてもよい。
【0036】
制御部19は、エンジン11が停止している場合に、記憶部18に記憶されている予定時刻参照情報を読み出す。制御部19は、読み出した予定時刻参照情報を参照して、エンジン11が停止している曜日に関連付けて記憶部18に記憶された予定時刻を特定する。制御部19は、特定した予定時刻より暖機必要時間以上前に、ヒータ13に空気の加熱を開始させ、且つ、送風装置12に空気の循環を開始させる。
【0037】
制御部19は、エンジン11が停止している曜日に対応する予定時刻より暖機必要時間以上前に第1後処理装置14の昇温を開始する。このため、制御部19は、休日であるか平日であるかによってエンジン11を始動する時刻が異なる場合に、休日又は平日に対応する予定時刻までに第1後処理装置14の昇温をそれぞれ完了することができる。
【0038】
[バイパス状態への切替]
第1後処理装置14は、第2後処理装置15に比べてエンジン11に近い位置に配置されているため、エンジン11の高回転時には、エンジン11が発する高熱により徐々に劣化したりアンモニアスリップが発生したりする。制御部19は、エンジン11の高回転時には、第2後処理装置15による窒素酸化物の除去を優先することにより、第1後処理装置14の劣化及びアンモニアスリップの発生を抑制する。
【0039】
本明細書の例では、制御部19は、第1後処理装置14による窒素酸化物の除去を行うか否かを第2切替部17により切り替える。図5は、第1後処理装置14による窒素酸化物の除去を行わない場合の例を示す。第1後処理装置14による窒素酸化物の除去を行わないバイパス状態では、図5中の複数の太矢印に示すように、エンジン11から排出された排気ガスが第1後処理装置14を通過することなく第2後処理装置15を通過して外部へ排出される。
【0040】
制御部19は、エンジン11の始動後、バイパス状態と、開放状態(図2参照)とを第2切替部17により切り替える。例えば、制御部19は、第2後処理装置15の温度を測定する温度センサ(不図示)の測定結果を取得し、取得した第2後処理装置15の温度が閾値以上であることを条件として、バイパス状態へ移行するように第2切替部17を切り替える。バイパス状態では、エンジン11からの空気は、ヒータ13の方に流れず、配管Aを流れるようになる。閾値は、例えば、車両100が排出する排気ガスに含まれる窒素酸化物の濃度に要求される環境基準と、第1後処理装置14に要求される耐用年数とを満たすように定められた値である。
【0041】
また、制御部19は、第2後処理装置15の温度が閾値以上であることに加えて、窒素酸化物の浄化率が基準値以上であることを条件として、バイパス状態へ移行するように第2切替部17を切り替えてもよい。基準値は、例えば、車両100が排出する排気ガスに含まれる窒素酸化物の濃度に要求される環境基準を満たすように定められる。一方、制御部19は、第2後処理装置15の温度が閾値未満である場合、窒素酸化物の浄化率が基準値未満である場合、あるいは、第2後処理装置15の温度が閾値未満であることと窒素酸化物の浄化率が基準値未満であることとの両方の条件を満たす場合に、開放状態に移行するように第2切替部17を切り替えてもよい。
【0042】
また、制御部19は、第2後処理装置15の温度が閾値以上であることに加えて、窒素酸化物の量が所定値未満であることを条件として、又バイパス状態へ移行するように第2切替部17を切り替えてもよい。所定値は、例えば、車両100が排出する排気ガスに含まれる窒素酸化物の濃度に要求される環境基準を満たすように定められる。一方、制御部19は、第2後処理装置15の温度が閾値未満である場合、窒素酸化物の量が所定値以上である場合、あるいは、第2後処理装置15の温度が閾値未満であることと窒素酸化物の量が所定値以上であることとの両方の条件を満たす場合に、開放状態に移行するように第2切替部17を切り替えてもよい。
【0043】
また、制御部19は、エンジン11の回転数、トルク又は燃料噴射量に基づいて、バイパス状態へ移行するように第2切替部17を切り替えてもよい。例えば、制御部19は、エンジン11の回転数、トルク又は燃料噴射量が対応する所定値以上であることを条件として、バイパス状態へ移行するように第2切替部17を切り替えてもよい。所定値は、例えば、第1後処理装置14に要求される耐用年数を満たすようにそれぞれ定められたエンジン11の回転数、トルク又は燃料噴射量の値である。制御部19は、エンジン11の回転数、トルク又は燃料噴射量が対応する所定値未満である場合に、開放状態に移行するように第2切替部17を切り替えてもよい。このようにして、制御部19は、エンジン11の高回転時には、エンジン11からの排気ガスが第1後処理装置14を通過しないようにするので、第1後処理装置14の劣化及びアンモニアスリップの発生を抑制することができる。
【0044】
[第1後処理装置14の昇温の処理手順]
図6は、制御部19が窒素酸化物を除去するための第1後処理装置14を昇温させる処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、例えば、車両100の停止中に開始される。まず、制御部19は、エンジン11が停止中であるか否かを判定する(S101)。制御部19は、エンジン11が停止中であると判定した場合に(S101のYES)、第1後処理装置14を昇温させる目標温度と、取得した第1後処理装置14の温度との差分だけ第1後処理装置14を昇温させるのに要す暖機必要時間を算出する(S102)。
【0045】
制御部19は、暖機割当時間を算出する。暖機割当時間は、例えば、暖機必要時間に外気温の変化等を考慮した所定のマージンを加えた時間であるが、暖機必要時間と同じであってもよい。制御部19は、第1後処理装置14付近に配置した温度センサ(不図示)により検出した第1後処理装置14の温度(図6中の第1後処理温度)が第1閾値以下であるか否かを判定する(S103)。第1閾値は、例えば、第1後処理装置14による窒素酸化物の除去に適した温度よりも低い温度である。
【0046】
制御部19は、第1後処理温度が第1閾値以下である場合に(S103のYES)、現在時刻から始動予定時刻までの時間が暖機割当時間以下であるか否かを判定する(S104)。
【0047】
制御部19は、現在時刻から始動予定時刻までの時間が暖機割当時間以下である場合に(S104のYES)、送風装置12及びヒータ13をオン状態に切り替え(S105)、第1後処理装置14を通過するように空気を送風装置12により循環させ、第1後処理装置14を通過する空気をヒータ13により加熱する。制御部19は、第1後処理装置14を通過した空気を配管Aへ案内するループ状態に移行するように第1切替部16を切り替える(S106)。制御部19は、第1後処理温度が第2閾値以上であるか否かを判定する(S107)。第2閾値は、例えば、第1後処理装置14による窒素酸化物の除去に適した温度である。制御部19は、第1後処理温度が第2閾値以上である場合に(S107のYES)、送風装置12及びヒータ13をオフ状態に切り替え(S108)、送風装置12による空気の循環とヒータ13による加熱とを停止させ、処理を終了する。
【0048】
制御部19は、S101の判定においてエンジン11が動作中であると判定した場合に(S101のNO)、処理を終了する。制御部19は、S103の判定において第1後処理温度が第1閾値より高いと判定した場合に(S103のNO)、処理を終了する。制御部19は、S104の判定において現在時刻から予定時刻までの時間が暖機割当時間よりも長い場合に(S104のNO)、S101の処理に戻る。制御部19は、S107の判定において第1後処理温度が第2閾値未満である場合に(S107のNO)、S107の判定を繰り返す。
【0049】
本実施形態では、送風装置12は、第2切替部17とヒータ13との間に配置される例について説明したが、本発明は、これに限定されない。送風装置12は、ヒータ13及び第1後処理装置14を経由して空気が循環するように送風できる位置であれば、どの位置に設けられていてもよい。
【0050】
[本実施形態の後処理促進装置1による効果]
制御部19は、エンジン11が始動される予定の予定時刻よりも暖機必要時間以上前に第1後処理装置14の昇温を開始するので、予定時刻までに第1後処理装置14に含まれる触媒の昇温を完了させることができる。このため、制御部19は、第1後処理装置14による排気ガスからの窒素酸化物の除去の効率がエンジン始動直後に低下することを抑制することができる。
【0051】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0052】
1 後処理促進装置
11 エンジン
12 送風装置
13 ヒータ
14 第1後処理装置
15 第2後処理装置
16 第1切替部
17 第2切替部
18 記憶部
19 制御部
100 車両
200 管理装置
S 後処理促進システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6