(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】乗客コンベアの自動発停止運転方法
(51)【国際特許分類】
B66B 25/00 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B66B25/00 B
(21)【出願番号】P 2022067940
(22)【出願日】2022-04-15
【審査請求日】2022-04-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 悠児
(72)【発明者】
【氏名】金子 元樹
(72)【発明者】
【氏名】玉置 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功一
(72)【発明者】
【氏名】物部 愛
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-175983(JP,A)
【文献】特開2021-138468(JP,A)
【文献】特開2019-210114(JP,A)
【文献】特開2008-273728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00 - 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏み段とハンドレールを循環駆動させるモーターと、
乗り口の左右に設置され、前記乗り口を含む検知エリアにおける人の位置を検知する2つのセンサーと、を具え、
前記モーターを定格速度で運転する定格運転モードと、前記モーターを停止又は低速運転する省エネ運転モードとを切り替えて運転する乗客コンベアの自動発停止運転方法であって、
前記2つのセンサーにより、前記検知エリアの所定高さを所定時間毎に平面スキャンし、前記乗り口に存する個々の人を検知する検知ステップと、
前記検知エリアで検知された人の内、
前記2つのセンサーの中間点に向かう人が検知されると、前記乗客コンベアを前記定格運転モードへ移行又は継続する運転モード制御ステップと、を含み、
前記検知ステップは、前記2つのセンサーにより取得された前記検知エリアの距離データを連続的に逐次取得するデータ取得ステップ、逐次取得された前記距離データに基づいて、前記検知エリア内で塊として検知される距離データを1人の人とみなし、個々の人の重心位置を時系列順に算出する特定ステップ、前記個々の人の前記重心位置の移動方向を算出する重心移動算出ステップと、を含み、
前記運転モード制御ステップは、前記個々の人の移動方向のうち、前記移動方向が、前記
中間点に向かう方向の人を乗車意思有利用者とし、前記乗車意思有利用者が存在する場合に前記定格運転モードへ移行又は継続し、
前記重心移動算出ステップは、前記乗車意思有利用者の移動速度を算出し、
前記運転モード制御ステップは、前記乗車意思有利用者の前記移動速度が、所定値以上の場合、前記モーターの加速度を大きくし、
前記検知エリアは、幅方向は、前記乗客コンベアの前記ハンドレールの外法の3倍、長さ方向は、前記ハンドレールの周回先端から1400mm以上に設定される、
乗客コンベアの自動発停止運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り口にセンサーを配置し、センサーの検知結果に基づいて自動発停運転を行なう乗客コンベアの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレーターや動く歩道のような乗客コンベアでは、乗り口に利用者を検知するセンサーを具え、自動発停止するものが知られている(たとえば特許文献1参照)。自動発停止運転では、乗り口の利用者を検知して、踏み段とハンドレールを自動的に起動又は加速して定格速度で運転する定格運転モードと、最後の利用者が検知されてから所定条件を満たすと停止或いは低速運転させる省エネ運転モードを切り替えて実行する。自動運転機能を具えることで、利用者がいない間の消費電力を抑え、乗客コンベアの省エネを図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗り口におけるセンサーの検知エリアは、ポールレス式の場合、幅が乗客コンベアの幅程度、長さはハンドレールの周回端より約600mm~800mm程度と狭い範囲である。乗客コンベアは、検知エリアに利用者が侵入したことを検知してから、停止又は低速運転状態から起動又は加速するため、検知エリアが狭いと、歩行速度が速い利用者では、十分に加速しないまま踏み段に乗車することになる。
【0005】
また、乗車しようと近づいたタイミングで、たまたま省エネ運転モードに切り替わった場合、再度定格運転モードに移行するが、このように、省エネ運転モードと定格運転モードの切り替え間隔が短いと、起動電力或いは加速時の消費電力が大きくなって、省エネ効果も低下してしまう。
【0006】
そこで、検知エリアを拡大することが考えられるが、センサーが検知エリアに侵入した乗客コンベアへの乗車意思のある利用者(乗車意思有利用者)だけでなく、乗客コンベアへの乗車意思のない単なる通行者(乗車意思無通行者)も検知してしまい、無駄に定格運転モードに移行して省エネ効果が低下する。
【0007】
本発明の目的は、検知エリアに侵入した人のうち、乗車意思有利用者を識別し、自動発停止運転を行なうことができる乗客コンベアの制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の乗客コンベアの自動発停止運転方法は、
踏み段とハンドレールを循環駆動させるモーターと、
乗り口に設置され、前記乗り口を含む検知エリアにおける人の位置を検知するセンサーと、を具え、
前記モーターを定格速度で運転する定格運転モードと、前記モーターを停止又は低速運転する省エネ運転モードとを切り替えて運転する乗客コンベアの自動発停止運転方法であって、
前記センサーにより、前記検知エリアの所定高さを平面スキャンし、前記乗り口に存する個々の人を検知する検知ステップと、
前記検知エリアで検知された人の内、乗客コンベアに向かう人が検知されると、前記乗客コンベアを前記定格運転モードへ移行又は継続する運転モード制御ステップ、
を含む。
【0009】
前記検知ステップは、
前記検知エリアに存在する個々の人の距離データを連続的に逐次取得するデータ取得ステップ、
逐次取得された前記個々の人の前記距離データの重心位置を時系列順に算出する特定ステップ、
前記個々の人の前記重心位置の移動方向を算出する重心移動算出ステップと、
を含み、
前記運転モード制御ステップは、前記個々の人の移動方向のうち、前記移動方向が、前記乗客コンベアに向かう方向の人を乗車意思有利用者とし、前記乗車意思有利用者が存在する場合に前記定格運転モードへ移行又は継続することができる。
【0010】
前記重心移動算出ステップは、前記乗車意思有利用者の移動速度を算出し、
前記運転モード制御ステップは、前記乗車意思有利用者の前記移動速度が、所定値以上の場合、前記モーターの加速度を大きくすることが望ましい。
【0011】
前記検知エリアは、幅方向は、前記乗客コンベアの幅よりも長く、長さ方向は、前記ハンドレールの周回先端から1400mm以上とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の乗客コンベアの自動発停止運転方法によれば、検知エリアに侵入する人のうち、乗車意思有利用者、すなわち、乗客コンベアに向かって移動する利用者を検知して、定格運転モードへの移行又は継続を行なうことで、運転モードの切り替えから、検知エリアに侵入した乗車意思無通行者を排除できる。これにより、乗車意思無通行者によって、定格運転モードに移行又は継続することを防止でき、省エネを達成できる。
【0013】
乗車意思無通行者を排除できることから、検知エリアを拡大することができる。また、検知エリアを拡大することで、乗車意思有利用者を早期に検知できるから、定格運転モードへの移行を早めることができ、省エネ運転モードと定格運転モードの切り替え回数を減らして、省エネを達成できる。
【0014】
歩行速度が速い利用者であっても、早期に定格運転モードに移行することで、十分に加速した状態の踏み段に乗車させることができる。また、乗車意思有利用者の歩行速度が、所定値以上の場合、モーターの加速度を大きくすることで、十分加速した状態の踏み段に乗車させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明を適用できるエスカレーターの概略構成図である。
【
図4】
図4は、本発明のエスカレーターの制御システムの一実施形態を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明のエスカレーターの自動発停止運転の一実施形態の制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、乗客コンベアとしてエスカレーター10を例に挙げるが、乗客コンベアは、所謂動く歩道などであっても構わない。
【0017】
本発明の一実施形態に係るエスカレーター10は、
図1に示すように、昇降口となる下階側階床20と上階側階床21の間で踏み段11をハンドレール12と共に循環させて構成される。
【0018】
エスカレーター10の骨組みを形成するトラス13には、上下にスプロケット14,15を具え、これらスプロケット14,15間に踏み段11を多数連結して循環させるステップチェーン16が掛けられている。一方のスプロケット14は、モーター17に減速機18を介して動力伝達可能に連繋されている。また、トラス13には、図示しないレールが上下の階床間に配設されており、踏み段11は、ステップチェーン16に牽引されて図示しないレール上を走行する。
【0019】
本実施形態では、エスカレーター10は上り運転するものとし、乗り口20aを下階側階床20、降り口21aを上階側階床21として説明するが、下り運転であってもよく、この場合、下階側階床20が降り口になる。
【0020】
図1乃至
図3に示すように、本発明の一実施形態に係るエスカレーター10は、乗り口20aの近傍にセンサー40を配備している。センサー40として、ToF(Time of Flight)センサーの如きエリア型センサーを例示できる。ToFセンサーは、レーザー光の投光部と受光部を回転させながら、投光部から発せられたレーザー光が物体(人50)に反射して受光部に戻ってくるまでの時間を計測し、回転角度毎に人50までの距離データを出力するセンサーである。なお、センサー40は、ToFセンサーに限定されるものではない。
【0021】
本実施形態では、
図2に示すように、内デッキボード19の端縁を通常よりも長く形成し、突出した内デッキボード19の下面にセンサー40を配置している。これにより、センサー40は、利用者の足元近傍の高さを平面スキャンすることができる。なお、センサー40の設置位置は、これに限定されるものではなく、スカートガードやニューエルカバーに設置、或いは、別途ポールを乗り口20aに立設してセンサー40を装着することもできる。望ましくは、センサーは、
図3に符号40R,40Lで示すように、乗り口20aの左右に配置する。
【0022】
図3は、乗り口20aを上方向から見た模式図である。乗り口20aには、エスカレーター10の手前方向(紙面上方向)から踏み段11に向かう人の乗車方向を矢印方向で示すY軸とし、Y軸と平面内で直交する水平方向をX軸とする検知エリアαが形成される。検知エリアαは、たとえば、センサー40R,40Lの中間をゼロ点(0,0)としている。検知エリアαは、左右に配置されたセンサー40R,40Lによって平面スキャンされ、夫々が取得した距離データを制御装置31に出力する。たとえば、センサー40R,40Lは、所定時間毎(たとえば25msec毎)に乗り口20aを平面スキャンし、検知エリアα内の人50の距離データを連続的に逐次検知し続ける構成とすることができる。
【0023】
検知エリアαの幅は、
図3に示すように、エスカレーター10の幅、具体的には、ハンドレール12,12の外法よりも広く採ることができる。たとえば、検知エリアαの幅は、ハンドレール12,12の外法の3倍、たとえば、一人乗り用の場合、約2400mm、二人乗り用の場合、約3000mmとすることができる。また、検知エリアαの長さは、ハンドレール12,12の周回先端(反転位置)から1400mm以上に設定できる。検知エリアαを広くすることで、早期に利用者を検知することができる。
【0024】
エスカレーター10は、制御装置31によって制御される。
図4は、本発明に係る制御に関連する要部構成を示すエスカレーター10の制御システム30のブロック図である。制御システム30は、制御装置31を具え、センサー40R,40Lから受信するデータに基づいて、エスカレーター10の運転モードを定格運転モードと省エネ運転モードで切り替え、モーター17を駆動させる。
【0025】
ここで、省エネ運転モードとは、センサー40R,40Lが、最後の利用者を検知してから所定条件を満たしたときに、モーター17を停止又は低速運転することで、消費電力を低減する運転モードである。所定条件として、最後の利用者を検知してから踏み段11が1周半循環に要する時間(たとえば90秒)が経過することを例示できる。
【0026】
定格運転モードは、センサー40R,40Lが利用者(本発明では乗車意思のある利用者50A)を検知したときに、定格速度でモーター17を駆動する運転モードである。
【0027】
本発明では、制御装置31は、検知エリアαに侵入する人50のうち、エスカレーター10に乗車する意思のある利用者(乗車意思有利用者)50Aを識別する。乗車意思有利用者50Aとは、検知エリアα内で、エスカレーター10に向かう利用者である。そして、乗車意思有利用者50Aが存在する場合に、エスカレーター10の運転モードを定格運転モードに移行、或いは、定格運転モードに滞在している場合では定格運転モードを継続する。
【0028】
一方、検知エリアαに人50が存在していても、乗車意思有利用者50Aでない、すなわち、検知エリアαを通過するに過ぎない利用者は、乗車意思のない通行者(乗車意思無通行者)50Bとして識別する。そして、乗車意思無通行者50Bを運転モードの制御から排除することで、無駄に運転モードが変更されることを防止する。
【0029】
上記制御を行なうために、制御装置31は、センサー40R,40Lから検知結果を受信し、検知エリアαに存在する人50が、
図3に示すように、乗車意思有利用者50Aであるか、乗車意思無通行者50Bであるかを判定する判定手段32を具える。また、
図4に示すように、制御装置31には、判定手段32で判定された利用者情報に基づいて、エスカレーター10の運転モードを切り替えて、モーター17の速度指令を発する運転モード切替手段33と、当該速度指令に基づいてモーター17をインバーター制御するインバーター制御手段34を具える構成とすることができる。なお、モーター17の速度制御は、インバーター制御に限るものではない。
【0030】
判定手段32は、
図4に示すように、データ取得部32a、特定部32b、重心移動算出部32c、判定部32dを具える。
【0031】
データ取得部32aは、センサー40R,40Lから距離データを取得する。
【0032】
特定部32bは、データ取得部32aから距離データを得て、検知エリアα内で塊となって検出される距離データを一人の人50とみなし、個々の人50の重心位置(座標)を算出する。
図3は、検知エリアαで検知された人50とその重心位置51を示す。図を参照すると、検知エリアαには、3人の人50が検知されていることがわかる。
【0033】
重心移動算出部32cは、個々の人50の重心位置の移動方向を算出する。具体的には、算出された人50の重心位置と、所定時間t後の重心位置の差分から、移動方向を算出できる。なお、重心移動算出部32cは、重心位置の移動速度を算出し、移動速度から移動方向を抽出してもよい。
図3は、検知エリアαで検知された人50の重心位置の移動方向と移動速度をベクトル(矢印v1、v2,v3)で示している。なお、測定誤差等の影響を抑えるために、重心位置の移動方向や移動速度は、たとえば、移動平均とすることで算出データの微小変化を平滑化することができる。
【0034】
判定部32dは、算出された個々の人50の重心位置51の移動方向のうち、エスカレーター10に向かう方向の人の有無を判定し、エスカレーター10に向かう人を乗車意思有利用者50A、それ以外を乗車意思無通行者50Bと判定する。たとえば、エスカレーター10に向かうとは、
図3の検知エリアαの座標系におけるゼロ点に向かうと見なすことができる。
図3を参照すると、検知エリアαで観測された3人利用者50のうち、符号50Aで示す人は移動方向がエスカレーター10に向かう乗車意思有利用者、符号50Bの2人は、エスカレーター10以外の方向に移動する乗車意思無通行者(単なる通過者)である。判定部32dは、乗車意思有利用者の有無を運転モード切替手段33に送信する。
【0035】
運転モード切替手段33は、判定部32dから乗車意思有利用者50Aがありとの情報を受信すると、モーター17を定格速度で駆動させるべく、モーター17への回転速度の指令値を生成する。そして、運転モード切替手段33により生成された速度指令に基づいて、省エネ運転モードから、インバーター制御手段34がモーター17を加速し、定格運転の回転速度となるように制御する。すでに定格運転モードに滞在している場合には、定格速度を維持する。これにより、乗車意思有利用者50Aが乗り口20aに到着したときに、定格速度で走行している踏み段11に乗車できる。なお、運転モード切替手段33は、判定部32dから乗車意思有利用者ありの情報を受信してから所定条件(たとえば、最後の利用者を検知してから踏み段11が1周半循環に要する時間(たとえば90秒)が経過)を満たしたときに、省エネ運転モードに移行するよう制御すればよい。
【0036】
本発明によれば、検知エリアαに侵入した人50のうち、エスカレーター10への乗車意思有利用者50Aのみに基づいて、エスカレーター10の自動発停止を行なうことができる。すなわち、検知エリアαを単に通過するに過ぎない乗車意思無通行者50Bは排除でき、乗車意思無通行者50Bによりエスカレーター10が定格運転モードに切り替わることはないから、省エネを達成できる。
【0037】
また、乗車意思無通行者50Bを排除できるから、検知エリアαを広く採ることができ、早期に乗車意思有利用者50Aを検知して、エスカレーター10を定格運転モードに切り替えることができる。さらに、乗車意思有利用者50Aを早期に検知できるから、定格運転モードへの移行も早めることができ、省エネ運転モードと定格運転モードの切り替え回数を減らして、省エネを達成できる。
【0038】
加えて、歩行速度が速い乗車意思有利用者50Aであっても、早期に定格運転モードに移行することで、十分に加速した状態の踏み段11に乗車させることができる。
【0039】
なお、上記説明では、人の移動方向のみに基づいて、運転モードの切替えを行なっているが、さらに、省エネ運転モードから定格運転モードへ移行する際のモーター17の加速度を、乗車意思有利用者50Aの移動速度(歩行速度)に応じて変更するようにしてもい。乗車意思有利用者50Aの歩行速度が所定値以上の場合、モーター17の加速度を大きくして、歩行速度が速い乗車意思有利用者50Aが十分加速した状態の踏み段11に乗車できるようにすればよい。
【0040】
また、変形例として、歩行速度が遅い乗車意思有利用者50Aの場合、モーター17の回転速度を遅くして、歩行速度が遅い乗車意思有利用者50Aが無理なく踏み段11に乗車できるようにしてもよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の自動発停運転を行なうエスカレーター10の具体的な動作フローについてフローチャート
図5を参照しながら説明する。
【0042】
まず、制御装置31は、センサー40R,40Lの検知エリアαを初期設定する(ステップS1)。たとえば、
図3に符号αで示す乗り口20aを含む領域が検知エリアとなる。続いて、センサー40R,40Lを作動させる(ステップS2)。なお、この状態では、省エネ運転モードにあり、モーター17は停止(或いは定速運転)している。
【0043】
ステップS3にて、サブルーチン
図6に移行する。サブルーチン
図6では、センサー40R,40Lで検知された検知エリアαの距離データをデータ取得部32aが逐次取得する(ステップSR1)。特定部32bは、距離データに基づいて、検知エリアα内で塊となって検出される距離データを1人の人50とみなし、個々の人50の重心位置51(座標)を時系列順に算出する(ステップSR2)。そして、重心移動算出部32cは、
図3に示すように、個々の人50の重心位置51の移動方向を算出する(ステップSR3)。次に、判定部32dは、算出された個々の人50の重心位置51の移動方向のうち、エスカレーター10(たとえば、
図3のゼロ点)に向かう方向の人の有無を判定し、エスカレーター10に向かう人50を乗車意思有利用者50A、それ以外を乗車意思無通行者50Bと判定し(ステップSR4)、フローチャート
図5に戻る。
【0044】
ステップS4では、サブルーチンのステップSR4で、乗車意思有利用者50Aがあった場合には(ステップS4のYES)、続くステップS5に移動する。これは、判定部32dで乗車意思有利用者50Aありと判断された場合であるから、運転モード切替手段33は、モーター17を定格速度で駆動させるべく、モーター17への回転速度の指令値を生成する。そして、運転モード切替手段33により生成された速度指令に基づいて、省エネ運転モードから定格運転モードに移行する(ステップS5)。具体的には、インバーター制御手段34がモーター17を加速し、定格運転の回転速度となるように制御する。なお、すでにモーター17が定格速度で駆動している場合にはスキップしてもよい。そして、ステップS6に示すように、自動停止までのタイマー時間Tをセットし、カウントダウンを開始させる(ステップS6)。なお、タイマー時間Tは、最後の利用者を検知してから踏み段11が1周半循環に要する時間(たとえば90秒)とすることができる。
【0045】
ステップS4で、乗車意思有利用者50Aがない場合、つまり、検知エリアαに人50がいない場合や乗車意思無利用者Bのみの場合には(ステップS4のNO)、タイマーが作動しており、タイマー時間T=0でない場合にはステップS3のサブルーチン
図6に戻る(ステップS7のNO)。T=0の場合(ステップS7のYES)、運転モード切替手段33は、モーター17が定格速度で駆動している場合には省エネ運転モードに移行し、モーター17を停止又は低速運転させる(ステップS8)。すでにモーター17が停止又は低速運転している場合にはスキップする。
【0046】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
10 エスカレーター
17 モーター
21a 乗り口
30 速度制御システム
31 制御装置
32 判定手段
32a データ取得部
32b 特定部
32c 重心移動算出部
33 運転モード切替手段
40(40R,40L) センサー
50 人
50A 乗車意思有利用者
50B 乗車意思無通行者