(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】建設機械のキャブ
(51)【国際特許分類】
E02F 9/16 20060101AFI20240214BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20240214BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240214BHJP
【FI】
E02F9/16 B
A47C7/62 A
B60N2/90
(21)【出願番号】P 2022147082
(22)【出願日】2022-09-15
(62)【分割の表示】P 2018140832の分割
【原出願日】2018-07-27
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】足立 薫
(72)【発明者】
【氏名】境谷 正則
(72)【発明者】
【氏名】木村 真雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭司
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-086684(JP,A)
【文献】特開2009-013780(JP,A)
【文献】特開2012-214087(JP,A)
【文献】特開2015-164847(JP,A)
【文献】特開2003-312375(JP,A)
【文献】特開2018-075875(JP,A)
【文献】特開2005-035438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
A47C 7/62
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のキャブであって、
フロアプレートと、
当該フロアプレートに対して前後方向に位置調整可能となるように当該フロアプレート上に配置される運転席と、
当該運転席の側方に配置されるコントロールボックスと、を備え、
前記コントロールボックスは、前記運転席の側方において前後方向に延びるボックス本体と、当該ボックス本体の前部の上面から上向きに突出し、前記運転席に着座する作業者による操作を受ける操作レバーと、を有し、
前記ボックス本体は、携帯通信端末の挿入を受け入れる携帯通信端末保持部を含み、
前記ボックス本体に、前記携帯通信端末保持部に保持された携帯通信端末にケーブルを介して接続される携帯通信端末接続端子が設けられている、建設機械のキャブ。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械のキャブであって、前記携帯通信端末保持部の底壁に、前記ケーブルの導出を許容する開放窓が設けられている、建設機械のキャブ。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械のキャブであって、前記携帯通信端末保持部の壁に、
前記ケーブルを通過させることのできるスリットが設けられている、建設機械のキャブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に装備されるキャブに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械は、一般に、ベースマシンと、建設作業のための動作を行うことが可能な作業装置と、前記ベースマシンに搭載されるキャブと、を備える。当該キャブには、作業者が着座するための運転席や、操作レバーを含むコントロールボックスが装備される。
【0003】
このような建設機械において、近年、携帯通信端末を用いた通信の需要が高まっている。当該携帯通信端末は、例えば、複数の建設機械と管理事務所との間での情報の交換や、建設機械と土砂搬送用のトラック等との間の連絡、複数の建設機械同士の連携、に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記携帯通信端末は、通常、作業者が着用する衣服のポケット等に収容されるため、建設機械の作業中、当該作業者は当該携帯通信端末の作動(例えば着信音の出力や画像表示)を確認することが難しい。特に、建設機械は大きな音や振動が発生する環境下にあるため、前記携帯通信端末の着信動作(例えば着信音や着信表示)に気づかないことが多く、また、着信に気づいてもすぐに当該携帯通信端末を取り出して操作することは必ずしも容易でない。
【0006】
前記特許文献1には運転室の前方に携帯情報載置台を設置してこれに携帯情報端末を載置することが記載されているが(段落0049)、作業者が着座するための運転席は一般にキャブに対して比較的大きな範囲で前後方向に位置調整可能となるように当該キャブに配置されているため、そのような位置調整によって前記携帯情報載置台と前記運転席に着座する作業者との相対位置関係が大きく変動することにより、作業者による携帯通信端末の視認や操作が却って困難となるおそれがある。
【0007】
一方、建設機械のキャブでは、運転席前方の良好な視界を確保することが望まれる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、運転席の位置調整にかかわらず、また運転席前方の良好な視界を妨げることなく、当該運転席に着座する作業者が携帯通信端末の視認や操作を容易に行うことを可能にする建設機械のキャブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
提供されるのは、建設機械のキャブであって、フロアプレートと、当該フロアプレートに対して前後方向に位置調整可能となるように当該フロアプレート上に配置される運転席と、当該運転席の側方に配置されるコントロールボックスと、を備える。前記コントロールボックスは、前記運転席の側方において前後方向に延びるボックス本体と、当該ボックス本体の前部の上面から上向きに突出し、前記運転席に着座する作業者による操作を受ける操作レバーと、を有する。前記ボックス本体は、携帯通信端末の挿入を受け入れる携帯通信端末保持部を含む。前記ボックス本体には携帯通信端末接続端子が設けられ、当該携帯通信端末接続端子は、前記携帯通信端末保持部に保持された携帯通信端末にケーブルを介して接続される。
【0010】
このキャブでは、前記操作レバーを含む前記コントロールボックスに前記携帯通信端末保持部が設けられているので、運転席の位置にかかわらず、前記操作レバーに対する前記携帯通信端末保持部の相対位置を一定に保持することができる。従って、作業者は、従来と同様に前記操作レバーの位置を基準として前記フロアプレートに対する前記運転席の前後方向についての位置調整を行っても、前記コントロールボックスの前記携帯通信端末保持部に保持された携帯通信端末の視認や操作を容易に行うことが可能である。また、前記コントロールボックスは前記運転席の側方に配置されるので、当該コントロールボックスの前記携帯通信端末保持部に保持される携帯通信端末が運転席の前方の視界を著しく妨げることはない。
【0011】
前記携帯通信端末保持部の底壁には、前記ケーブルの導出を許容する開放窓が設けられていることが、好ましい。
【0012】
前記携帯通信端末保持部の壁には、スリットが設けられていることが、好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、運転席の位置調整にかかわらず、また運転席前方の視界を妨げることなく、当該運転席に着座する作業者が携帯通信端末の視認や操作を容易に行うことを可能にする建設機械のキャブが、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係るキャブが搭載される建設機械である油圧ショベルの全体側面図である。
【
図2】前記キャブの内部における各構成要素の配置を示す斜視図である。
【
図3】前記キャブにおける左右のコントロールボックス及び運転席の配置を示す平面図である。
【
図4】前記左右のコントロールボックス及び前記運転席を前後方向にスライド可能に支持するための構造を概略的に示した正面図である。
【
図5】前記左右のコントロールボックス及び運転席の配置の背面図である。
【
図6】
図5において前記左右のコントロールボックスのうちの右コントロールボックスの前側部分を拡大して示した図である。
【
図8】前記前側部分に含まれる携帯通信端末保持部のばね片を含む縦断面を示す側面図である。
【
図9】前記携帯通信端末保持部に携帯通信端末が保持されかつ当該携帯通信端末と携帯通信端末接続端子とがケーブルを介して接続された状態にある前記右コントロールボックスの正面図である。
【
図10】
図9に示される状態における前記携帯通信端末保持部においてスリットを通る縦断面を示す側面図である。
【
図11】
図9に示される状態における前記携帯通信端末保持部を運転席側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明に係るキャブが搭載される建設機械の一例である油圧ショベルを示す。当該油圧ショベルは、クローラ式の下部走行体1と、その上に旋回可能に搭載される上部旋回体2と、当該上部旋回体2に搭載される作業装置6と、を備える。前記上部旋回体2は、前記下部走行体1に連結される旋回フレーム2aと、当該旋回フレーム2a上に搭載されるキャブ7と、を有する。前記作業装置6は、前記旋回フレーム2aの前端部(
図1に示される例では右側前端部)に起伏可能に連結されるブーム3と、当該ブーム3の先端部に回動可能に連結されるアーム4と、当該アーム4の先端部に回動可能に連結されるバケット5と、を含む。
【0017】
前記キャブ7は、前記旋回フレーム2aの前部であって当該旋回フレーム2aの幅方向について前記ブーム3と隣接する部位(
図1に示される例では左側前部)に搭載され、前記油圧ショベルの操縦を行うための運転室を構成する。すなわち、当該キャブ7内において、前記下部走行体1の走行、前記上部旋回体2の旋回、及び前記作業装置3の作業動作、を行わせるための操作が行われる。
【0018】
図2~
図5に示すように、前記キャブ7は、フロアプレート10と、キャブ外壁12と、シートスタンド14と、中間プレート16と、運転席18と、左右のアームレスト19A,19Bと、左右のコントロールボックス20A,20Bと、を有する。
【0019】
前記フロアプレート10は、前記キャブ7の床部を構成する水平方向のプレートであり、当該フロアプレート10の前端部分には作業者による踏込み操作を受ける左右一対の操作ペダル8が配置されている。前記キャブ外壁12は前記フロアプレート10の上方に運転室空間を画定するように当該フロアプレート10を覆う。前記シートスタンド14は前記フロアプレート10の上面から上向きに突出するように当該フロアプレート10上に固定される。前記中間プレート16は前記シートスタンド14に対して前後方向にスライド可能となるように当該シートスタンド14上に
図4に示すような左右一対の第1スライド
レール15を介して配置される。
【0020】
前記運転席18は、その上に作業者が着座するための座席である。当該運転席18は平面視において前記キャブ7の略中央に配置される。前記キャブ外壁12の少なくとも前側には窓が設けられ、この窓を通じて、前記運転席18に着座する作業者の前方の視界が確保されている。
【0021】
前記左右のコントロールボックス20A,20Bは、前記運転席18の左側方及び右側方にそれぞれ配置される。当該左右のコントロールボックス20A,20Bのそれぞれは、操作レバー22と、ボックス本体24と、を有する。
【0022】
前記操作レバー22は、前記運転席18に着座する作業者による操作を受けて前後左右に回動する。当該操作は、前記上部旋回体2を旋回させるための操作や前記作業装置6を作動させるための操作である。
【0023】
前記ボックス本体24は、前記運転席18の側方において前後方向に延びるように配置されている。前記ボックス本体24は、
図4に破線で示される金属製のフレーム25と、樹脂材料により成形されたカバー26と、を有する。前記フレーム25は、前記操作レバー22やこれに連動して開閉する図略のパイロット弁等を支持する。前記カバー26は、前記フレーム25、前記パイロット弁、図略の油圧配管及び電気配線その他を覆うように当該フレーム25に装着される。前記操作レバー22は、前記ボックス本体24の前部において前記カバー26を貫通して当該カバー26の上面から上方に突出するように前記フレーム25に支持されている。
【0024】
前記左右のアームレスト19A,19Bはそれぞれ前記左右のコントロールボックス20A,20Bによって支持される。当該左右のアームレスト19A,19Bは、左右の操作レバー22を把持する作業者の左右の腕をそれぞれ下から支えるように前記左右のコントロールボックス20A,20Bの上方にそれぞれ配置される。
【0025】
前記左右のコントロールボックス20A,20Bは、前記中間プレート16と一体にスライドするように当該中間プレート16の左右側端部にそれぞれ固定され、前記運転席18は、前記中間プレート16に対して前後方向にスライド可能となるように当該中間プレート16上に
図4に示すような左右一対の第2スライドレール17を介して配置されている。従って、前記第1及び第2スライドレール15,17のスライド動作により、前記フロアプレート10及び前記キャブ外壁12を含むキャブ本体と、前記運転席18と、前記左右のコントロールボックス20A,20Bの三者の相互の前後方向についての相対位置関係が調整されることが可能である。具体的には、前記前後方向について、前記シートスタンド14に対する前記中間プレート16のスライドにより、前記キャブ本体に対する前記運転席18及び前記左右コントロールボックス20A,20Bの相対位置を調整することが可能であり、さらに、前記中間プレート16に対する前記運転席18のスライドにより、前記左右コントロールボックス20A,20Bに対する前記運転席18の相対位置を調整することが可能である。
【0026】
この実施の形態において、前記右コントロールボックス20B、つまり、左右のコントロールボックス20A,20Bのうち前記作業装置6に近い側であってキャブ7の乗降口と反対の側に位置するコントロールボックス、が本発明に係る「コントロールボックス」に該当する。すなわち、当該右コントロールボックス20Bに、携帯通信端末保持部30が設けられている。
【0027】
前記携帯通信端末保持部30は、
図9及び
図10に示される携帯通信端末40であって
前記運転席18に着座する作業者が所有する携帯通信端末40を着脱可能に保持する部位である。ここにいう「携帯通信端末」とは、通信機能を有しかつ携帯可能な形状をもつ種々のモバイル機器を広く含む概念であり、スマートフォン、携帯電話、PHS等が含まれる。
【0028】
この実施の形態では、前記右コントロールボックス20Bが、前記操作レバー22よりも前側かつキャブ7の幅方向の外側に突出する(運転席18から見て右斜め前方に突出する)突出部分27を含み、当該突出部分27の少なくとも前端部が前記携帯通信端末保持部30を構成している。この実施の形態では、前記突出部分27の所定部位の上面に操作用のダイヤル23が設けられ、さらにその前方に位置する、前記突出部分27の前端部が、前記携帯通信端末保持部30を構成している。従って、当該携帯通信端末保持部30は、前記操作レバー22を基準としてその前側でかつキャブ7の幅方向の外側の位置に前記携帯通信端末40を保持するように配設されている。
【0029】
前記携帯通信端末保持部30は、上方に開放された挿入空間32を囲む形状を有し、当該挿入空間32内への前記携帯通信端末40の上からの挿入を受け入れるとともに、
図5,
図9~
図11に示されるように、その挿入された携帯通信端末40の上半部であって表示画面42の少なくとも一部を含む部分が前記突出部分27における前記カバー26の上方に露出し、かつ前記表示画面42が後方の運転席18を向く状態で当該携帯通信端末40を保持するように構成されている。前記挿入空間32は、前記携帯通信端末30を受け入れることが可能な断面形状(この実施の形態では横長の略矩形状)を有し、当該挿入空間32内に隙間をもって当該携帯通信端末40が挿入されることを許容する。
【0030】
前記携帯通信端末保持部30は、
図8及び
図10に示すように、前記挿入空間32を囲む内壁面33と、前記携帯通信端末40を保持するための左右一対のばね片34と、を有する。前記一対のばね片34のそれぞれは、樹脂等のように弾性変形可能な材料により形成され、前記内壁面33の特定部位(この実施の形態では前側面33a)に固定される基端部34aと、その反対側の先端部34bと、を有する。当該ばね片34は、前記特定部位(前側面33a)から携帯通信端末保持部の内側(この実施の形態では後ろ側)に膨出するとともに、前記先端部34bが外向き(この実施の形態では前向き)に弾性的に撓み変位することが可能な形状を有する。当該ばね片34は、前記先端部34aの外向きの撓み変形により
図10に示すように前記挿入空間32内への前記携帯通信端末40の挿入を許容するとともに、当該ばね片34の弾発力により前記携帯通信端末40を前記内壁面33のうち前記ばね片34と対向する面、この実施の形態では後側面33b、に押付けることにより、当該後側面33bと協働して前記携帯通信端末40を前後方向に挟持する。
【0031】
前記右コントロールボックス20Bには携帯通信端末接続端子36が設けられている。この携帯通信端末接続端子36は、図略の電線を介してバッテリーに接続され、前記携帯通信端末40にケーブル44を介して接続されることにより、当該携帯通信端末40への電力の供給による当該携帯通信端末40の充電、他の機器等との無線や有線での通信、キャブ7内のスピーカーを用いたハンズフリー通話など、を可能にする。前記携帯通信端末40がスマートフォンの場合、前記携帯通信端末接続端子36はUSB端子であり、前記ケーブル44はUSBケーブルである。
【0032】
この実施の形態において、前記携帯通信端末接続端子36は、前記ボックス本体24の前端面、この実施の形態では前記カバー26のうち前記突出部分27よりも下方に位置する部位の前端面29に配置されている。従って、当該携帯通信端末接続端子36は前側に開放され、前側からの前記ケーブル44の接続を受け入れることが可能である。このことは、前記ケーブル44が前記右コントロールボックス20Bの前側に配線されることを可能にし、これにより、当該ケーブル44が作業者の着座や作業の邪魔になることを防ぐ。
【0033】
前記携帯通信端末40は、前記ケーブル44が接続されるケーブル接続部46を有する。当該ケーブル接続部46は、その長手方向両端部のうちの一方の端部、具体的には前記挿入空間32への挿入に際して先頭となる端部、換言すれば、挿入空間32に挿入される姿勢における下端部、に設けられている。従って、当該携帯通信端末40が当該挿入空間32に挿入された状態で当該携帯通信端末40の下端部から下方にケーブル44が延びることとなる。
【0034】
これに対して前記携帯通信端末保持部30は、前記ケーブル接続部46を含む前記携帯通信端末40の下端部を下方に開放して当該携帯通信端末保持部30から下方への前記ケーブル44の導出を許容する形状を有する。ここで「下端部を下方に開放」する態様は、当該下端部そのものを携帯通信端末保持部30の外部に露出させる態様であってもよいし、
図9に示すように、当該下端部自体は挿入空間32内に格納するが当該下端部から外部へのケーブル44の導出を許容するように当該下端部よりも下方の位置で開口する態様も含まれる。つまりは、当該携帯通信端末保持部30の形状は、前記携帯通信端末保持部30に保持される携帯通信端末40からケーブル44が(上方に迂回することなく)直接的に下方に導出されることを許容する形状であればよい。
【0035】
この実施の形態において、前記携帯通信端末保持部30は、前記携帯通信端末40の下端部を支える底壁31を有するとともに、当該底壁31よりも下方の位置で前側に開口する開放窓35を有する。当該開放窓35は、前記ケーブル44が前記携帯通信端末保持部30の内部から当該開放窓35を通じて下方に導出されることを許容し、これにより、例えば前記ケーブルが上方に迂回しながら携帯通信端末接続端子に接続されなければならないものと比べ、前記携帯通信端末保持部から前記携帯通信端末接続端子に至るまでのケーブルの配索経路を短くすることを可能にする。
【0036】
さらに、この実施の形態では、前記携帯通信端末保持部30にスリット38が形成されている。当該スリット38は、当該携帯通信端末保持部30において前記挿入空間32の前側に位置する壁(つまり前記前側面33aを有する壁)37に形成され、前記携帯通信端末保持部30の上端から前記開放窓35に至るまで上下方向に連続して延びる。この実施の形態では、当該スリット38は前記挿入空間32の幅方向の中央の位置に形成され、当該スリット38を挟んでその左右にそれぞれ前記一対のばね片34が配置されている。
【0037】
前記スリット38は、前記ケーブル44が前記携帯通信端末40の下端部の前記ケーブル接続部46から下方に延びる姿勢で当該ケーブル44が前側から当該スリット38を通じて前記挿入空間32内に進入することを許容する形状を有する。これにより、当該スリット38は、当該携帯通信端末保持部30への当該携帯通信端末40の挿入作業を容易にすることができる。具体的に、作業者は、前記ケーブル接続部46に接続された前記ケーブル44を前記スリット38を通じて前側から前記挿入空間32内に進入させることにより、当該ケーブル44が前記携帯通信端末40に接続されたままの状態で当該携帯通信端末40を前記挿入空間32内に上から挿入することができる。このことは、前記携帯通信端末40を前記挿入空間32内に前記ケーブル44を一旦前記携帯通信端末40から外す手間を無くすことを可能にする。
【0038】
以上説明したキャブ7によれば、操作レバー22を含む右コントロールボックス20Bに携帯通信端末保持部30が設けられているので、運転席18の位置にかかわらず、前記操作レバー22に対する前記携帯通信端末保持部30の相対位置を一定に保持することができる。従って、作業者は、従来と同様に前記操作レバー22の位置を基準としてフロアプレート10やキャブ外壁12、コントロールボックス20A,20Bに対する前記運転席18の前後方向についての位置調整を行っても、前記右コントロールボックス20Bに
おいて前記操作レバー22の前側に保持された携帯通信端末40における表示画像の視認や操作を容易に行うことが可能である。特に、前記右コントロールボックス20Bのようにその上にアームレスト19Bが配置されるものでは、作業者が操作レバー22を把持する際に当該アームレスト19Bの上に腕を載せるために当該作業者の姿勢がより安定するので、前記操作レバー22を基準とした前記携帯通信端末保持部30の位置の設定はより効果的となる。
【0039】
また、前記右コントロールボックス20Bは前記運転席18の側方に配置されているので、例えば運転席18の前方のキャブ本体に携帯通信端末保持部が設けられる場合と異なり、前記右コントロールボックス20Bの前記携帯通信端末保持部30に保持される前記携帯通信端末40が運転席の前方の視界を妨げることを有効に抑止することができる。
【0040】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を包含する。
【0041】
(A)携帯通信端末保持部の位置について
本発明において、携帯通信端末保持部は左右コントロールボックスのうちのいずれのコントロールボックスに設けられてもよい。あるいは左右コントロールボックスの双方に設けられてもよい。また、コントロールボックスが左右のいずれかにのみ設けられているキャブではそのコントロールボックスに携帯通信端末保持部が設けられればよい。
【0042】
コントロールボックスにおける携帯通信端末保持部のキャブ幅方向についての位置も必ずしも限定されず、操作レバーの直前方あるいは操作レバーよりもやや内側に位置してもよい。このような配置でも、当該携帯通信端末保持部は、運転席の側方に配置されるコントロールボックスに含まれることにより、運転席前方の視界を妨げることなく携帯通信端末を保持することが可能である。ただし、前記実施形態に係る携帯通信端末保持部30のように操作レバーの外側の位置で携帯通信端末を保持するものは、作業者の視界をより広く確保することを可能にする。特に、前記右コントロールボックス20Bのように作業装置6(のブーム3)に近い側に配置されるコントロールボックスが携帯通信端末保持部を含む場合、当該携帯通信端末保持部が操作レバーよりもキャブ幅方向の外側に位置することは、作業装置側の視界を広く確保することを可能にし、これにより、作業者が作業装置6による作業状況をより良好に視認することを可能にする。
【0043】
(B)携帯通信端末保持部の形状について
携帯通信端末保持部の形状は、少なくとも携帯通信端末の一部をボックス本体の上方に露出させた状態で当該携帯通信端末を保持するものであればよく、この条件を満たす範囲で、携帯通信端末の形状や構造に応じて適宜変更されることが可能である。例えば、携帯通信端末がその挿入姿勢における下端部ではなく側部にケーブル接続部を有するものである場合、当該ケーブル接続部またはこれに接続されるケーブルの上からの挿入を許容するようなスリットが携帯通信端末保持部に形成され、当該スリットを通じて配線が行われるように構成されてもよい。
【0044】
また、前記携帯通信端末保持部は、必ずしも前記のように携帯通信端末40の上からの挿入を受け入れる挿入空間32を画定するものに限定されない。本発明に係る携帯通信端末保持部は、例えば、コントロールボックスの前方に比較的大きな空間が確保されている場合、当該コントロールの前側からの携帯通信端末の装着を受け入れるものであってもよい。この場合でも、当該携帯通信端末保持部は、携帯通信端末の少なくとも一部がボックス本体の上方で露出するように当該携帯通信端末を保持することにより、作業者による携帯通信端末の視認を容易にすることが可能である。
【0045】
(C)携帯通信端末の保持のための構造について
本発明において、ばね片の個数は限定されない。本発明に係る携帯通信端末保持部は、単数あるいは3以上のばね片を含んでもよい。さらに、携帯通信端末保持部が携帯通信端末を保持するための構造は、前記のようなばね片34と内壁面33との組み合わせに限定されない。当該構造は、例えば、携帯通信端末の適当な部位と係合することにより当該携帯通信端末を係止するラッチ片を有するものや、単なる嵌入状態のまま携帯通信端末を下から支持するだけのものであってもよい。しかし、前記ばね片34と前記内壁面33との組み合わせは、前記携帯通信端末40の寸法(特に前記ばね片34の撓み変形方向の寸法;前記実施の形態では携帯通信端末40の厚み方向であってキャブ7の前後方向)のばらつきにかかわらず、当該携帯通信端末40の挿入を許容しかつ当該携帯通信端末40を安定して保持することが、可能である。
【符号の説明】
【0046】
7 キャブ
8 操作ペダル
10 フロアプレート
18 運転席
19B 右アームレスト
20B 右コントロールボックス
22 操作レバー
24 ボックス本体
27 突出部分
29 前端面
30 携帯通信端末保持部
31 底壁
32 挿入空間
33 内壁面
33a 前側面
33b 後側面
34 ばね片
35 開放窓
36 携帯通信端末接続端子
38 スリット
40 携帯通信端末
42 携帯通信端末の表示画面
44 ケーブル
46 ケーブル接続部