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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電子機器、車両、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240214BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G08G1/09 D
G01C21/26 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022149911
(22)【出願日】2022-09-21
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】河野 崇
(72)【発明者】
【氏名】竹田 愛
(72)【発明者】
【氏名】関 正寛
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-138132(JP,A)
【文献】特開2018-116553(JP,A)
【文献】特開2018-063658(JP,A)
【文献】特開2016-224478(JP,A)
【文献】特開2020-052849(JP,A)
【文献】特開2021-056575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の総重量を記憶する記憶部と、
前記車両が走行中の道路における同じ位置に設置された複数の制限速度標識であって、それぞれが車両の種別に対応する前記複数の制限速度標識において速度を示す文字を認識した場合に、前記車両の種別を示す文字が記載された補助標識の文字を認識することなく、車両の種別によって異なる複数の制限速度を特定する特定部と、
前記記憶部に記憶された前記総重量が閾値以上である場合に、前記複数の制限速度のうち第1の制限速度を使用制限速度として出力し、前記総重量が前記閾値以上でない場合に、前記複数の制限速度のうち前記第1の制限速度よりも高い第2の制限速度を前記使用制限速度として出力する出力部と、
を有する電子機器。
【請求項2】
前記第1の制限速度は、前記複数の制限速度のうち最小の制限速度である、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記複数の制限速度が前記走行中の道路における最低制限速度を含む場合、
前記第1の制限速度は、前記最低制限速度を除く前記複数の制限速度のうち最小の制限速度である、
請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第2の制限速度は、前記複数の制限速度のうち最大の制限速度である、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記出力部は、前記使用制限速度を前記車両が有する表示装置に対して出力することで、前記表示装置に前記使用制限速度を表示させる、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記出力部は、前記車両の速度を制御する速度制御装置に前記使用制限速度を出力する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記出力部は、前記使用制限速度を前記車両が有する表示装置に表示させた後に前記車両の運転手からの承諾を受けた場合に、前記使用制限速度に基づいて前記車両の速度を制御するように前記速度制御装置に通知する、
請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記特定部は、前記車両が走行中に生成した撮像画像データに基づいて認識した前記複数の制限速度標識が示す複数の実際制限速度を前記複数の制限速度として特定する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
車両の乗車定員を記憶する記憶部と、
前記車両が走行中の道路における同じ位置に設置された複数の制限速度標識であって、それぞれが車両の種別に対応する前記複数の制限速度標識において速度を示す文字を認識した場合に、前記車両の種別を示す文字が記載された補助標識の文字を認識することなく、車両の種別によって異なる複数の制限速度を特定する特定部と、
前記記憶部に記憶された前記乗車定員が閾値以上である場合に、前記複数の制限速度のうち第1の制限速度を使用制限速度として出力し、前記乗車定員が前記閾値以上でない場合に、前記複数の制限速度のうち前記第1の制限速度よりも高い第2の制限速度を前記使用制限速度として出力する出力部と、
を有する電子機器。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電子機器を含む車両。
【請求項11】
コンピュータを、
車両が走行中の道路における同じ位置に設置された複数の制限速度標識であって、それぞれが車両の種別に対応する前記複数の制限速度標識において速度を示す文字を認識した場合に、前記車両の種別を示す文字が記載された補助標識の文字を認識することなく、車両の種別によって異なる複数の制限速度を特定する特定部と、
記憶部に記憶された総重量が閾値以上である場合に、前記複数の制限速度のうち第1の制限速度を使用制限速度として出力し、前記総重量が前記閾値以上でない場合に、前記複数の制限速度のうち前記第1の制限速度よりも高い第2の制限速度を前記使用制限速度として出力する出力部と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行する道路の制限速度を特定するための電子機器、当該電子機器を含む車両、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路標識には、制限速度が記載された本標識と、本標識に記載された制限速度が適用される対象となる車両の種別が記載された補助標識とが含まれる場合がある。特許文献1には、本標識と補助標識の画像を解析して補助標識の部分に存在する単語を推定した結果に基づいて、車両が、本標識の種別の対象であるか否かを判断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-116553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術により補助標識の内容を認識するためには高精度の文字認識処理が必要になる。文字認識処理において文字が誤認識されてしまうと、制限速度が正しく認識されないという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、車両が走行中の道路の制限速度を認識する精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の電子機器は、車両の総重量を記憶する記憶部と、前記車両が走行中の道路における複数の制限速度を特定する特定部と、前記記憶部に記憶された前記総重量が閾値以上である場合に、前記複数の制限速度のうち第1の制限速度を使用制限速度として出力し、前記総重量が前記閾値以上でない場合に、前記複数の制限速度のうち前記第1の制限速度よりも高い第2の制限速度を前記使用制限速度として出力する出力部と、を有する。
【0007】
前記第1の制限速度は、例えば、前記複数の制限速度のうち最小の制限速度である。前記複数の制限速度が前記走行中の道路における最低制限速度を含む場合、前記第1の制限速度は、前記最低制限速度を除く前記複数の制限速度のうち最小の制限速度であってもよい。前記第2の制限速度は、前記複数の制限速度のうち最大の制限速度であってもよい。
【0008】
前記出力部は、前記使用制限速度を前記車両が有する表示装置に対して出力することで、前記表示装置に前記使用制限速度を表示させてもよい。
【0009】
前記出力部は、前記車両の速度を制御する速度制御装置に前記使用制限速度を出力してもよい。
【0010】
前記出力部は、前記使用制限速度を前記車両が有する表示装置に表示させた後に前記車両の運転手からの承諾を受けた場合に、前記使用制限速度に基づいて前記車両の速度を制御するように前記速度制御装置に通知してもよい。
【0011】
前記特定部は、前記車両が走行している道路の地図データが示す複数の地図制限速度、又は前記車両が走行中に生成した撮像画像データに基づいて認識した複数の制限速度標識が示す複数の実際制限速度の少なくともいずれかを前記複数の制限速度として特定してもよい。
【0012】
前記出力部は、前記複数の地図制限速度に基づく前記使用制限速度と、複数の前記実際制限速度に基づく前記使用制限速度と、のうち低い方の前記使用制限速度を出力してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様の電子機器は、車両の乗車定員を記憶する記憶部と、前記車両が走行中の道路における複数の制限速度を特定する特定部と、前記記憶部に記憶された前記乗車定員が閾値以上である場合に、前記複数の制限速度のうち第1の制限速度を使用制限速度として出力し、前記乗車定員が前記閾値以上でない場合に、前記複数の制限速度のうち前記第1の制限速度よりも高い第2の制限速度を前記使用制限速度として出力する出力部と、を有する。
【0014】
本発明の第3の態様の車両は、上記の電子機器を含む。
【0015】
本発明の第4の態様のプログラムは、コンピュータを、車両が走行中の道路における複数の制限速度を特定する特定部と、記憶部に記憶された総重量が閾値以上である場合に、前記複数の制限速度のうち第1の制限速度を使用制限速度として出力し、前記総重量が前記閾値以上でない場合に、前記複数の制限速度のうち前記第1の制限速度よりも高い第2の制限速度を前記使用制限速度として出力する出力部と、として機能させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両が走行中の道路の制限速度を認識する精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】車両Vの概要を説明するための図である。
図2】車両Vの種別によって異なる制限速度が指定された複数の標識Sの例を示す図である。
図3】車両Vの構成を示す図である。
図4】制限速度とコード情報との関係の一例を示す図である。
図5】電子機器1における処理の流れを示すフローチャートである。
図6】第1変形例に係る車両Vの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[車両Vの概要]
図1は、本実施形態に係る車両Vの概要を説明するための図である。車両Vは、車両Vが位置する道路Rの制限速度を認識する。また、車両Vは、速度、燃料の残量、時刻又は温度等を表示するディスプレイ2に、車両Vが走行中の道路Rの制限速度を表示する機能を有する。図1に示す例においては、制限速度が60km/hであることを示すアイコン画像Gが表示されている。ディスプレイ2は、例えば、車両Vのインストルメンタルパネルに設けられているが、運転手が使用する情報端末に設けられていてもよい。
【0019】
車両Vは、ディスプレイ2に制限速度を表示させる処理を実行する電子機器1を備える。電子機器1の形態は任意であり、電子部品を含む筐体を有していてもよく、電子部品が実装されたプリント基板であってもよい。
【0020】
電子機器1は、例えば撮像装置で撮影した標識Sの撮像画像データに基づいて制限速度を特定する。電子機器1は、特定した制限速度を示す情報をディスプレイ2に出力することにより、ディスプレイ2に制限速度を表示させる。
【0021】
道路Rには、車両Vの種別によって異なる制限速度が指定されている場合がある。具体的には、車両Vの種別に対応する複数の標識Sが、ほぼ同じ位置に設置されている場合がある。この場合、複数の標識Sには、対象となる車両の種別が記載された補助標識が設けられている。
【0022】
車両Vの種別は、例えば車両総重量、乗車定員又は牽引の有無等に対応している。一例として、車両Vの車両総重量が11t以上のトラックの場合、車両Vの種別は大型貨物車両であり、車両Vの車両総重量が11t未満のトラックの場合、車両Vの種別は非大型貨物車両である。車両総重量は、車両重量に最大乗車定員人数分の重量と最大積載量とを加えた重量である。なお、以下の説明においては、「車両総重量」を「総重量」という。
【0023】
図2は、車両Vの種別によって異なる制限速度が指定された複数の標識Sの例を示す図である。図2(a)に示す2つの標識S1には、大型貨物車両、三輪車両及び牽引車両の制限速度が80km/hであることが示す補助標識が設けられている。また、標識S2には、大型貨物車両、三輪車両及び牽引車両以外の車両の制限速度が110km/hであることを示す補助標識が設けられている。図2(b)に示す3つの標識には、図2(a)に示した2つの標識に加えて、最低制限速度が50km/hであることを示す標識S3が含まれている。
【0024】
補助標識に記載されている文字は小さいため、このように複数の標識Sが設置されている場合に、撮像装置で撮影した画像に基づいて車両Vが補助標識の内容を認識することは容易ではない。また、標識の経年劣化によって、補助標識に記載されている文字が制限速度を示す数字よりも早く欠けてしまったり、汚染されてしまい容易に読み取りが可能でない場合もある。そこで、本実施形態に係る車両Vは、車両Vの総重量又は乗車定員等の車両Vの種別によって、複数の標識Sのうち制限速度が相対的に高い標識Sに対応する制限速度に従うか、制限速度が相対的に低い標識Sに対応する制限速度に従うかを判定することを特徴としている。
【0025】
車両Vがこのように構成されていることで、車両Vが高性能な文字認識機能を有していない場合であっても、車両Vに対応する制限速度を運転手に通知したり、車両Vに対応する制限速度で走行するように自動制御したりすることができる。
以下、車両Vの構成及び動作を詳細に説明する。
【0026】
図3は、車両Vの構成を示す図である。車両Vは、電子機器1と、ディスプレイ2と、スピーカ3と、カメラ4と、地図ユニット5と、GPSユニット6と、を有する。電子機器1は、記憶部11とCPU(Central Processing Unit)12とを有する。CPU12は、特定部121と、出力部122と、を有する。
【0027】
ディスプレイ2は、上述のとおり各種の情報を表示する表示装置として機能する。スピーカ3は、音を発生する音発生装置として機能する。スピーカ3は、運転手に聞こえるように音を発する。スピーカ3は、例えば、警告音を発したり、制限速度を示す音声を発したりする。
【0028】
カメラ4は、車両Vの前方を撮影することにより撮像画像データを作成する。カメラ4は、作成した撮像画像データを特定部121に提供する。
【0029】
地図ユニット5は通信ネットワークを介して外部のサーバとの間でデータを送受信する。地図ユニット5は、地図データを提供する外部のサーバから地図データを受信し、受信した地図データを記憶する。地図ユニット5は、地図データが更新されたという通知を外部のサーバから受信すると、更新後の地図データを取得する。地図ユニット5は、特定部121からの要求に応じて、車両Vが走行している位置の周辺の地図データを特定部121に提供する。
【0030】
地図データには、緯度・経度に関連付けて制限速度を示すデータが含まれている。制限速度はコード情報により表されており、地図データにおいては、緯度・経度とコード情報とが関連付けられている。図4は、制限速度とコード情報との関係の一例を示す図である。
【0031】
GPSユニット6は、GPS衛星が送信する電波を受信し、受信した電波に含まれている情報に基づいて緯度・経度を算出する。GPSユニット6は、算出した緯度・経度を車両Vの位置情報として特定部121に提供する。
【0032】
記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部11は、CPU12が実行するプログラムを記憶する。
【0033】
また、記憶部11は、CPU12が制限速度をディスプレイ2に表示する処理を実行するために使用する各種のデータを記憶する。記憶部11は、例えば、標識に記載された制限速度をCPU12が認識するために用いられる、複数の制限速度それぞれに対応する複数の見本画像データを記憶する。
【0034】
記憶部11は、車両Vの総重量、最大積載量又は乗車定員のように、車両Vの大きさに対応する種別に関連する情報をさらに記憶する。また、記憶部11は、複数の制限速度標識のうち、どの制限速度標識が車両Vに対応するかを出力部122が判定するために用いられる閾値を記憶する。記憶部11は、図4に示したコード情報と制限速度情報とが関連付けられた制限速度データテーブルを記憶してもよい。
【0035】
特定部121は、車両Vが走行中の道路における複数の制限速度を特定する。特定部121は、例えば車両Vが走行中にカメラ4が生成した撮像画像データに基づいて制限速度標識を認識することにより、車両Vが走行する道路の制限速度を特定する。特定部121は、例えば、撮像画像データにおいて、予め記憶部11に記憶された見本画像データとの類似度が閾値以上の領域を検索し、検出した領域の画像データに類似する見本画像データに対応する制限速度を特定する。特定部121は、制限速度標識の画像の特徴を有する領域を検索し、検出した制限速度標識の領域において文字認識処理をすることにより制限速度を特定してもよい。特定部121は、特定した制限速度を示す情報を出力部122に入力する。
【0036】
特定部121は、撮像画像データにおいて複数の制限速度標識を認識した場合に、複数の制限速度標識それぞれに記載されている数値を、複数の制限速度として特定する。この場合、特定部121は、複数の制限速度を示す複数の情報を出力部122に入力する。特定部121は、制限速度を示す数字に下線が付されている場合、最低制限速度であることを示す情報とともに、最低制限速度を示すテキスト情報を出力部122に入力してもよい。
【0037】
出力部122は、ディスプレイ2が表示するテキスト又は画像に対応する情報をディスプレイ2に対して出力する。出力部122は、スピーカ3が発する音に対応する情報をスピーカ3に対して出力してもよい。具体的には、出力部122は、特定部121から入力された制限速度を、使用制限速度として、ディスプレイ2又はスピーカ3の少なくともいずれかに対して出力する。使用制限速度は、ディスプレイ2に表示される制限速度、又はスピーカ3から音声により発せられる制限速度である。出力部122は、使用制限速度を示す情報を車両Vが有する表示装置に対して出力することで、表示装置に使用制限速度を表示させる。
【0038】
出力部122は、特定部121から複数の制限速度に対応する複数の情報が入力された場合、いずれか1つの情報に対応する制限速度を選択する。具体的には、出力部122は、記憶部11に記憶された車両Vの総重量が重量閾値以上である場合に、複数の制限速度のうち第1の制限速度を使用制限速度として出力する。出力部122は、総重量が重量閾値以上でない場合に、複数の制限速度のうち第1の制限速度よりも高い第2の制限速度を使用制限速度として出力する。重量閾値は、大型貨物車両と判断される総重量の最小値であり、例えば11tである。
【0039】
第1の制限速度は、例えば、複数の標識に対応する複数の制限速度のうち最小の制限速度である。図2(a)に示す例の場合、出力部122は、車両Vの総重量が例えば重量閾値以上であるときには、標識S1及び標識S2のうち、制限速度が低い方の標識S1が車両Vに対応する標識であると判定し、80km/hを使用制限速度として出力する。一方、出力部122は、車両Vの総重量が例えば重量閾値未満であるときには、標識S1及び標識S2のうち、制限速度が高い方の標識S2が車両Vに対応する標識であると判定し、110km/hを使用制限速度として出力する。
【0040】
複数の標識に対応する複数の制限速度が、車両Vが走行中の道路における最低制限速度を含む場合、第1の制限速度は、例えば最低制限速度を除く複数の制限速度のうち最小の制限速度である。また、複数の標識に対応する複数の制限速度が、車両Vが走行中の道路における最低制限速度を含む場合、第2の制限速度は、例えば最低制限速度を除く複数の制限速度のうち最大の制限速度である。
【0041】
図2(b)に示す例の場合、出力部122は、車両Vの総重量が例えば重量閾値以上であるときには、最低制限速度である50km/hに対応する標識S3を除く標識S1及び標識S2のうち最小の制限速度に対応する標識S1が車両Vに対応する標識であると判定し、80km/hを使用制限速度として出力する。一方、出力部122は、車両Vの総重量が例えば重量閾値未満であるときには、標識S3を除く標識S1及び標識S2のうち最大の制限速度に対応する標識S2が車両Vに対応する標識であると判定し、110km/hを使用制限速度として出力する。
【0042】
最低制限速度に対応する標識を除く標識が3つ以上あり、かつ車両Vの総重量が重量閾値未満である場合、出力部122は、最低制限速度に対応する標識を除く複数の標識のうち、最大の制限速度ではなく低い方から2番目の制限速度を出力してもよい。出力部122がこのように動作することで、車両Vに対応する制限速度よりも高い速度を使用制限速度として出力してしまうことを防げる。
【0043】
また、重量閾値が複数あり、出力部122は、複数の重量閾値に基づいて、車両Vに対応する使用制限速度を出力してもよい。具体的には、第1重量閾値と、第1重量閾値よりも小さい第2重量閾値とが記憶部11に記憶されており、かつ最低制限速度に対応する標識を除く標識が3つある場合、出力部122は、車両Vの総重量が第1重量閾値以上であるときに、3つの標識に対応する3つの制限速度のうち最も低い制限速度を使用制限速度として出力する。出力部122は、車両Vの総重量が第2重量閾値以上、第1重量閾値未満であるときに、3つの制限速度のうち低い方から2番目の制限速度を使用制限速度として出力する。出力部122は、車両Vの総重量が第2重量閾値未満であるときに、3つの制限速度のうち最も高い制限速度を使用制限速度として出力する。
【0044】
出力部122は、複数の重量閾値により定められる重量の範囲と、複数の標識のうち一以上の標識とが関連付けられて記憶部11に記憶されたデータを参照することにより、車両Vの重量が属する重量の範囲に対応する標識が示す制限速度を使用制限速度として出力してもよい。出力部122がこのように動作することで、予め定められた重量閾値の数と、特定部121が特定した標識の数とが一致していない場合であっても、出力部122は、車両Vの重量に対応する標識が示す制限速度を使用制限速度として出力することができる。
【0045】
出力部122は、複数の標識から選択した1つの標識に対応する制限速度を使用制限速度として出力した場合に、スピーカ3に所定の音を発するように音データを出力してもよい。スピーカ3が音を発することで、複数の標識のうち1つの標識が示す制限速度が表示されたということを運転手が把握できるので、選択された標識が適切であるかどうかを運転手が目視により確認できる。
【0046】
[電子機器1における処理の流れ]
図5は、電子機器1における処理の流れを示すフローチャートである。図5に示すフローチャートは、車両Vの電源が投入(イグニッションオン)された時点から開始している。
【0047】
出力部122は、初期画面を表示させるための情報をディスプレイ2に出力し、ディスプレイ2に初期画面を表示させる(S11)。初期画面においては、制限速度が表示されない。
【0048】
続いて、特定部121は、標識の認識を開始する(S12)。特定部121は、制限速度標識を認識した場合(S12においてYES)、複数の制限速度標識が設置されているか否かを判定する(S13)。特定部121は、複数の制限速度標識が設置されていないと判定した場合(S13においてNO)、認識した標識が示す制限速度を出力部122に通知する。特定部121は、複数の制限速度標識が設置されていると判定した場合(S13においてYES)、認識した複数の標識が示す複数の制限速度を出力部122に通知する。
【0049】
特定部121が複数の制限速度標識が設置されていると判定した場合(S13においてYES)、出力部122は、総重量が重量閾値以上であるか否かを判定する(S14)。出力部122は、総重量が重量閾値以上であると判定した場合(S14においてYES)、第1の制限速度を選択する(S15)。出力部122は、総重量が重量閾値未満であると判定した場合(S14においてNO)、第1の制限速度よりも高い第2の制限速度を選択する(S16)。
【0050】
続いて、出力部122は、選択した制限速度を使用制限速度としてディスプレイ2に表示させる(S17)。特定部121が複数の制限速度標識が設置されていないと判定した場合(S13においてNO)、出力部122は、特定部121から通知された制限速度を使用制限速度としてディスプレイ2に表示させる。
【0051】
CPU12は、車両Vの電源を停止する指示(イグニッションオフ)が入力されたか否かを監視し(S18)、電源を停止する指示が入力されない場合は(S18においてNO)、S12からS17までの処理を繰り返す。CPU12は、電源を停止する指示が入力された場合(S18においてYES)、使用制限速度をディスプレイ2に表示させる処理を終了する。
【0052】
[第1変形例]
図6は、第1変形例に係る車両Vの構成を示す図である。図6に示す車両Vは、速度制御装置7をさらに有しており、出力部122が制限速度を示す情報を速度制御装置7に出力するという点で、図3に示した車両Vと異なり、他の点では同じである。
【0053】
速度制御装置7は、エンジン又はモータを制御することにより車両Vの走行速度を制御する装置である。速度制御装置7は、出力部122から入力された情報に対応する制限速度を超えないように車両Vの速度を制御する。
【0054】
出力部122は、使用制限速度をディスプレイ2に表示させた後に車両Vの運転手からの承諾を受けた場合に、使用制限速度に基づいて車両Vの速度を制御するように速度制御装置7に通知する。出力部122がこのように動作することで、速度制御装置7が運転手の意に反した速度で車両Vを走行させることを防げる。
【0055】
[第2変形例]
以上の説明においては、特定部121が撮像画像データに基づいて制限速度を特定する場合を例示したが、これに限らない。特定部121は、車両Vが走行している道路の地図データが示す複数の地図制限速度、又は車両Vが走行中に生成した撮像画像データに基づいて認識した複数の制限速度標識が示す複数の実際制限速度の少なくともいずれかを複数の制限速度として特定してもよい。
【0056】
特定部121は、図4に示した制限速度データテーブルを参照することにより、地図データにおいて車両Vの位置に関連付けられたコード情報に対応する制限速度を地図制限速度として特定する。特定部121は、車両Vの位置に複数のコード情報が関連付けられている場合に、複数のコード情報に対応する複数の制限速度を複数の地図制限速度として特定する。
【0057】
出力部122は、車両Vの種別(例えば総重量)に基づいて、複数の地図制限速度のうち1つの地図制限速度を選択する。出力部122が1つの地図制限速度を選択する処理は、撮像画像データに基づいて1つの制限速度(すなわち実際制限速度)を選択する処理と同様である。
【0058】
出力部122は、特定部121が複数の実際制限速度を特定できなかった場合に、複数の地図制限速度から選択した1つの地図制限速度を使用制限速度として出力する。出力部122がこのように動作することで、カメラ4が撮像画像データを生成できなかった場合にも、ディスプレイ2が制限速度を表示できる。
【0059】
出力部122は、特定部121が複数の実際制限速度を特定した場合に、地図制限速度ではなく、複数の実際制限速度から選択した1つ実際制限速度を使用制限速度として出力してもよい。出力部122がこのように動作することで、天候又は工事等の影響で一時的に制限速度が低く設定されている場合に、ディスプレイ2が正しい制限速度を表示できる。
【0060】
出力部122は、複数の地図制限速度に基づく使用制限速度と、複数の実際制限速度に基づく使用制限速度とが一致している場合、一致している制限速度を使用制限速度として出力する。出力部122は、複数の地図制限速度に基づく使用制限速度と、複数の実際制限速度に基づく使用制限速度とが一致していない場合、複数の地図制限速度に基づく使用制限速度と、複数の実際制限速度に基づく使用制限速度と、のうち低い方の使用制限速度を出力する。出力部122がこのように動作することで、運転手又は速度制御装置7が制限速度を実際の制限速度よりも高く誤認識することを防げる。
【0061】
[第3変形例]
以上の説明においては、出力部122が車両Vの総重量を重量閾値と比較することにより、複数の制限速度から1つの制限速度を選択したが、出力部122は、車両Vの種別に対応する他の要素を用いて1つの制限速度を選択してもよい。一例として、出力部122は、記憶部11に記憶された乗車定員が定員閾値以上である場合に、複数の制限速度のうち第1の制限速度を使用制限速度として出力し、乗車定員が定員閾値以上でない場合に、複数の制限速度のうち第1の制限速度よりも高い第2の制限速度を使用制限速度として出力してもよい。
【0062】
[電子機器1による効果]
以上説明したように、本実施形態に係る電子機器1の出力部122は、記憶部11に記憶された総重量又は乗車定員が閾値以上である場合に、特定部121が特定した複数の制限速度のうち第1の制限速度を使用制限速度として出力する。一方、総重量又は乗車定員が閾値以上でない場合に、出力部122は、複数の制限速度のうち第1の制限速度よりも高い第2の制限速度を使用制限速度として出力する。電子機器1がこのように構成されていることで、補助標識の文字を正しく認識できない場合であっても、車両Vに対応する制限速度を特定することができるので、車両Vが走行中の道路の制限速度を認識する精度が向上する。
【0063】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0064】
1 電子機器
2 ディスプレイ
3 スピーカ
4 カメラ
5 地図ユニット
6 GPSユニット
7 速度制御装置
11 記憶部
121 特定部
122 出力部
【要約】
【課題】車両が走行中の道路の制限速度を認識する精度を向上させる。
【解決手段】電子機器1は、車両Vの総重量を記憶する記憶部11と、車両Vが走行中の道路における複数の制限速度を特定する特定部121と、記憶部11に記憶された総重量が閾値以上である場合に、複数の制限速度のうち第1の制限速度を使用制限速度として出力し、総重量が閾値以上でない場合に、複数の制限速度のうち第1の制限速度よりも高い第2の制限速度を使用制限速度として出力する出力部122と、を有する。
【選択図】図3

図1
図2
図3
図4
図5
図6