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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/33 20160101AFI20240214BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20240214BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240214BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240214BHJP
【FI】
H02K11/33
B60L9/18 J
B60L15/20 J
H02M7/48 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022503633
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2021006788
(87)【国際公開番号】W WO2021172328
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2020033937
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】長谷 将洋
(72)【発明者】
【氏名】高橋 望
(72)【発明者】
【氏名】井上 亮平
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 武史
(72)【発明者】
【氏名】山岡 大祐
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄秋
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宗裕
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-118808(JP,A)
【文献】特開2012-060785(JP,A)
【文献】特開2016-116294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/33
B60L 9/18
B60L 15/20
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸上に配置された回転電機と、
前記回転電機からの駆動力が伝達される伝達機構と、
前記第1軸と互いに平行な別軸である第2軸上に配置され、前記伝達機構を介した前記回転電機からの駆動力を車輪に分配する差動歯車機構と、
前記第2軸上に配置され、前記差動歯車機構と前記車輪とを駆動連結する出力部材と、
前記回転電機を駆動制御するインバータ装置と、
前記回転電機のステータコイルに接続される回転電機側バスバーと前記インバータ装置に接続されるインバータ側バスバーとを電気的に接続する端子台と、
前記回転電機を収容する第1収容室と前記インバータ装置を収容する第2収容室とを内部に有して一体形成されたケースと、を備え、
一体形成された前記ケースは、前記第1収容室と前記第2収容室とを区画する隔壁を備え、
前記端子台は、前記第1軸に沿った方向である軸方向の配置領域が前記回転電機と重複し、且つ、前記隔壁を、前記出力部材の径方向に貫通して配置され、
前記隔壁及び前記端子台の上下方向の配置位置は、前記インバータ装置と前記第2軸との前記上下方向の間であり、
前記端子台は、前記上下方向視で前記第2軸と重複している、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記出力部材は、前記第1収容室に配置されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記端子台は、前記軸方向及び前記上下方向の双方に直交する方向である前後方向における配置領域が、前記第2軸と重複する位置に配置されている、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記端子台の少なくとも一部と、前記回転電機側バスバーの少なくとも一部とが、前記第2軸と前記インバータ装置とに挟まれた領域に配置されている、請求項1から3の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記回転電機側バスバーと前記インバータ側バスバーとを締結する締結部が前記第1収容室に配置されている、請求項1から4の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記第1軸と前記第2軸とを含む面に沿う方向において、前記端子台における前記回転電機側バスバーとの接続端子部の少なくとも一部が、前記第2軸よりも前記回転電機から遠い側に配置されている、請求項1から5の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
前記回転電機側バスバーを複数本備え、複数本の前記回転電機側バスバーの一部が前記軸方向に沿った軸方向視で重複している、請求項1から6の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項8】
前記第2収容室は、前記上下方向における配置領域が前記回転電機と重複する位置に配置されている、請求項1から7の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項9】
前記第2収容室は、前記軸方向に沿った軸方向視で前記差動歯車機構と重複する位置に配置されている、請求項1から8の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機とその回転電機を駆動制御するインバータ装置とを備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2019/154685号には、回転電機と、車輪に駆動連結される出力部材と、インバータ装置とを備えた車両用駆動装置が開示されている。回転電機の軸心と出力部材の軸心とは互いに平行な別軸に配置されており、インバータ装置は、回転電機の軸心と出力部材の軸心とを結ぶ線に交差する方向において、出力部材と対向するように配置されている。インバータ装置と回転電機とを電気的に接続する接続部材は、出力部材及び回転電機の軸方向端部よりも外側(いわゆる側方)を通って配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/154685号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、電気的な接続部材が回転電機の側方に配置される場合、車両用駆動装置が軸方向に大きくなり、小型化が妨げられる可能性がある。
【0005】
そこで、回転電機とインバータ装置との電気的接続を適切に行いつつ、より小型化が可能な車両用駆動装置の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた車両用駆動装置は、第1軸上に配置された回転電機と、前記回転電機からの駆動力が伝達される伝達機構と、前記第1軸と互いに平行な別軸である第2軸上に配置され、前記伝達機構を介した前記回転電機からの駆動力を車輪に分配する差動歯車機構と、前記第2軸上に配置され、前記差動歯車機構と前記車輪とを駆動連結する出力部材と、
前記回転電機を駆動制御するインバータ装置と、前記回転電機のステータコイルに接続される回転電機側バスバーと前記インバータ装置に接続されるインバータ側バスバーとを電気的に接続する端子台と、前記回転電機を収容する第1収容室と前記インバータ装置を収容する第2収容室とを内部に有して一体形成されたケースと、を備え、一体形成された前記ケースは、前記第1収容室と前記第2収容室とを区画する隔壁を備え、前記端子台は、前記第1軸に沿った方向である軸方向の配置領域が前記回転電機と重複し、且つ、前記隔壁を、前記出力部材の径方向に貫通して配置されている。
【0007】
この構成によれば、第2収容室と第1収容室とを区画する隔壁を径方向に貫通する端子台を介して、インバータ側バスバーと回転電機側バスバーとが電気的に接続される。インバータ側バスバーと回転電機側バスバーとを電気的に接続する部材が、軸方向に張り出して設けられないため、ケースが軸方向に拡大されることが抑制され、車両用駆動装置が軸方向に大型化することが抑制される。即ち、本構成によれば、回転電機とインバータ装置との電気的接続を適切に行いつつ、より小型化が可能な車両用駆動装置を提供することができる。
【0008】
車両用駆動装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両用駆動装置の一例を示す斜視図
図2】車両用駆動装置の一例を示す軸方向視の平面図
図3図2のIII-III断面の拡大断面図
図4】車両用駆動装置のスケルトン図
図5】回転電機を駆動する電気系統の模式的回路ブロック図
図6】車両用駆動装置の軸方向断面図
図7】車両用駆動装置の軸直交断面図
図8】車両用駆動装置の上下方向第1側からの平面図
図9】他の構造の車両用駆動装置の軸方向断面図
図10】他の構造の車両用駆動装置の軸直交断面図
図11】他の構造の車両用駆動装置の上下方向第1側からの平面図
図12】他の構造の車両用駆動装置のスケルトン図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ここでは、図4のスケルトン図に示すように、車両用駆動装置100が、一対の車輪Wの駆動力源となる回転電機MGと、カウンタギヤ機構CGと、回転電機MGから伝達される駆動力を一対の出力部材OUTを介して一対の車輪Wに分配する差動歯車機構DF(出力用差動歯車装置)とを備えている形態を例示する。つまり、本実施形態では、駆動力源としての回転電機MGと車輪Wに駆動連結された出力部材OUTとを結ぶ動力伝達経路に、回転電機MGの側から順に、伝達機構TMとして、カウンタギヤ機構CG、差動歯車機構DFが設けられている形態を例示する。しかし、車両用駆動装置100は、カウンタギヤ機構CGや差動歯車機構DFを備えなくてもよく、回転電機MGと、少なくとも1つの車輪Wに駆動連結される出力部材OUTと、回転電機MGと出力部材OUTとの間で駆動力を伝達する伝達機構TM(ベルトやチェーンなどの伝導部材なども含む)とを備えて構成されていればよい。本実施形態では、図4に示すように、回転電機MGの軸心(第1軸A1)と、出力部材OUTの軸心(第2軸A2)とは、互いに平行な別軸である。尚、差動歯車機構DFの軸心も出力部材OUTと同じく第2軸A2であり、カウンタギヤ機構CGの軸心は、第1軸A1及び第2軸A2と互いに平行な別軸である第3軸A3である。第1軸A1、第2軸A2、及び第3軸A3は、互いに異なる仮想軸であり、互いに平行に配置されている。
【0011】
以下の説明では、第1軸A1、第2軸A2及び第3軸A3に平行な方向を、車両用駆動装置100の「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を軸方向第1側L1、他方側を軸方向第2側L2とする。図4に示す例では、回転電機MGに対して軸方向第2側L2に伝達機構TMが配置されている。また、上記の第1軸A1、第2軸A2、及び第3軸A3のそれぞれに直交する方向を、各軸を基準とした「径方向R」とする。なお、どの軸を基準とするかを区別する必要がない場合やどの軸を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。また、車両用駆動装置100が車両に取り付けられた状態で鉛直方向に沿う方向を「上下方向V」とする。また、本実施形態では、上下方向Vの一方側である上下方向第1側V1が上方であり、他方側である上下方向第2側V2が下方である。水平面に平行な状態で車両用駆動装置100が車両に取り付けられる場合には、径方向Rの1方向と上下方向Vとが一致する。また、軸方向L及び上下方向Vに直交する方向を「前後方向H」と称する。また、前後方向Hの一方側を前後方向第1側H1、他方側を前後方向第2側H2と称する。上下方向Vと同様に、径方向Rの1方向と前後方向Hとも一致する。尚、以下の説明では、各部材についての方向や位置等に関する用語は、製造上許容され得る誤差による差異を有する状態をも含む概念である。また、各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置100に組み付けられた状態での方向を表す。
【0012】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、回転電機MG、当該回転電機MGを駆動制御するインバータ装置INV、出力部材OUT、及び伝達機構TMが収容されたケース1を備えている。尚、出力部材OUTは、ケース1の外部に備えられていてもよい。例えば、差動歯車機構DFと出力部材OUTとを連結する連結部材がケース1に備えられ、ケース1の外部に出力部材OUTが備えられていてもよい。また、このような連結部材は、出力部材OUTと一体的に回転するため、出力部材OUTの一部を構成していると考えることもできる。例えば、出力部材OUTを含め、出力部材OUTと一体的に回転する部材(上述した連結部材や差動歯車機構DFの出力ギヤ等)の内、ケース1内に収容される部分を出力部材OUTの対象部分と称してもよい。
【0013】
ケース1には、回転電機MG、出力部材OUT、伝達機構TMを含む駆動機構を収容する第1収容室20、及びインバータ装置INVを収容する第2収容室30が形成されている。以下では、ケース1において第1収容室20を形成する部分を第1収容部2と称し、ケース1において第2収容室30を形成する部分を第2収容部3と称する。本実施形態では、第1収容部2及び第2収容部3を備えたケース1は、1つの部材で構成されている。このようなケース1は、好適には、第1収容室20を囲む周壁部23を備えた第1収容部2と、第2収容室30を囲む側壁部33を備えた第2収容部3とが一体的に形成された鋳造体である。
【0014】
第1収容部2は、軸方向Lに開口した筒状に形成されている。図1図3では省略しているが、図1におけるケース1(第1収容室20)の軸方向第1側L1の端部には第1カバー10aが取り付けられ、ケース1(第1収容室20)の軸方向第2側L2の端部には第2カバー10bが取り付けられる(例えば図6参照)。第1カバー10aは、ケース1における第1収容部2の軸方向第1側L1の端部に形成された開口を塞ぐカバー部材である。第2カバー10bは、ケース1における第1収容部2の軸方向第2側L2の端部に形成された開口を塞ぐカバー部材である。第1収容部2の軸方向Lの両方の端部に形成された開口は、何れも第1収容室20に連通している。第1収容室20は、周壁部23と、第1カバー10aと、第2カバー10bと、後述する隔壁11とによって囲まれた空間として形成されている。
【0015】
第2収容部3は、径方向において第1収容部2に隣室して配置されている。第2収容部3において第1収容部2に隣室する側には、第1収容部2の周壁部23から径方向に延びるように側壁部33が形成されている。第2収容部3において第1収容部2に隣室する側とは反対側には、開口が形成されており、当該開口を塞ぐように第3カバー31が取り付けられている。また、第2収容部3において第1収容部2に隣室する側には、後述する隔壁11が位置している。第2収容室30は、側壁部33と、第3カバー31と、隔壁11とによって囲まれた空間として形成されている。
【0016】
尚、これらの他に、ケース1に対して、当該ケース1とは別体の補助的なケース部材が取り付けられていても良い。そして、補助的なケース部材により、回転電機MG及びインバータ装置INV以外の構成要素が収容される収容室が形成されていても良い。このような収容室に収容される構成要素としては、例えば、上述したような伝達機構TMの他、オイルポンプ、補器類等、車両用駆動装置100の各種構成要素が対象となり得る。
【0017】
上述したように、ケース1は、第1収容室20を形成する第1収容部2と、第2収容室30を形成する第2収容部3とを備えている。また、本実施形態では、ケース1は、1つの部材で構成されている。第2収容室30と第1収容室20とは、それぞれ独立した空間として形成されており、ケース1は、第2収容室30と第1収容室20とを区画する隔壁11を備えている。
【0018】
回転電機MGは、複数相の交流(例えば3相交流)により動作する回転電機(Motor/Generator)であり、電動機としても発電機としても機能することができる。回転電機MGは、図5を参照して後述するように、高圧バッテリBH(高圧直流電源)から電力の供給を受けて力行し、又は、車両の慣性力により発電した電力を高圧バッテリBHに供給する(回生する)。高圧バッテリBHは、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池(バッテリ)や、電気二重層キャパシタなどにより構成されている。回転電機MGが、車両の駆動力源の場合、高圧バッテリBHは、大電圧大容量の直流電源であり、定格の電源電圧は、例えば200~400[V]である。尚、図5に示す低圧バッテリBL(低圧直流電源)は、高圧バッテリBHよりも低電圧(例えば12~24[V])の電源である。
【0019】
図1に示すように、回転電機MGは、ケース1などに固定されたステータSTと、当該ステータSTの径方向内側に回転自在に支持されたロータRTとを有する。ステータSTは、ステータコアとステータコアに巻き回されたステータコイル81とを含み、ロータRTは、ロータコアとロータコアに配置された永久磁石とを含む。回転電機MGのロータRTは、入力ギヤG1(図4参照)に駆動連結されている。
【0020】
入力ギヤG1は、カウンタギヤ機構CGに駆動連結されている。本実施形態では、カウンタギヤ機構CGは、軸部材によって連結された2つのギヤ(カウンタドリブンギヤG2,カウンタドライブギヤG3)を有する。カウンタドリブンギヤG2は入力ギヤG1に噛み合い、カウンタドライブギヤG3は、差動歯車機構DFの差動入力ギヤG4に噛み合っている。差動歯車機構DFは、出力部材OUTを介して車輪Wに駆動連結されている。差動歯車機構DFは、互いに噛合する複数の傘歯車を含んで構成され、差動入力ギヤG4に入力される回転及びトルクを、左右2つの出力部材OUT(即ち、左右2つの車輪W)に分配して伝達する。これにより、車両用駆動装置100は、回転電機MGのトルクを車輪Wに伝達して車両を走行させることができる。
【0021】
図5に示すように、回転電機MGは、インバータ装置INVにより駆動制御される。本実施形態では、このインバータ装置INVもケース1内の第2収容部3に収容されている(図1図3参照)。インバータ装置INVは、直流電力と複数相の交流電力との間で電力を変換するインバータ回路60を備えている。本実施形態では、交流の回転電機MG及び高圧バッテリBHに接続されて、複数相(ここではU相、V相、W相の3相)の交流と直流との間で電力を変換するインバータ回路60を例示する。インバータ回路60は、複数のスイッチング素子を有して構成され、高圧バッテリBHに接続されると共に、交流の回転電機MGに接続されて直流と複数相の交流(ここでは3相交流)との間で電力を変換する。インバータ側バスバー7と回転電機側バスバー8とは、端子台50を介して接続されている。この端子台50は、図1図3に示すように、第2収容室30と第1収容室20とを区画する隔壁11を、出力部材OUTの径方向R(図2参照)に貫通して配置されている。
【0022】
本実施形態では3相交流に対応して、図2等に示すように、インバータ側バスバー7は、第1インバータ側バスバー7a、第2インバータ側バスバー7b、第3インバータ側バスバー7cの3本備えられている。同様に、回転電機側バスバー8も、第1回転電機側バスバー8a、第2回転電機側バスバー8b、第3回転電機側バスバー8cの3本備えられている。第2収容室30には、端子台50において、インバータ側バスバー7が接続される第2収容室側接続部53(図1図5等参照)が位置し、第1収容室20には、端子台50において、回転電機側バスバー8が接続される第1収容室側接続部51(図2図5等参照)が位置している。第2収容室側接続部53と第1収容室側接続部51とは、端子台内バスバー52によって電気的に接続されている(図2図5参照)。尚、当然ながら、端子台内バスバー52の両端部に、第2収容室側接続部53と第1収容室側接続部51とが形成されていてもよい。
【0023】
尚、以下の説明において、単に接続端子部5と称する場合には、第1収容室側接続部51を指す。また、複数の接続端子部5(第1収容室側接続部51)のそれぞれを区別する場合には、第1回転電機側バスバー8aが接続される接続端子部5を第1接続端子部5aと称し、第2回転電機側バスバー8bが接続される接続端子部5を第2接続端子部5bと称し、第3回転電機側バスバー8cが接続される接続端子部5を第3接続端子部5cと称する。
【0024】
インバータ回路60は、上段側スイッチング素子と下段側スイッチング素子との直列回路により構成された交流1相分のアームを複数本(ここでは3本)備えている。スイッチング素子には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やSiC-MOSFET(Silicon Carbide - Metal Oxide Semiconductor FET)やSiC-SIT(SiC - Static Induction Transistor)、GaN-MOSFET(Gallium Nitride - MOSFET)などの高周波での動作が可能なパワー半導体素子を適用すると好適である。図5に示すように、本実施形態では、スイッチング素子としてIGBTが用いられる形態を例示している。本実施形態では、フリーホイールダイオードも含め、インバータ回路60が1つのパワーモジュール(半導体モジュール)に一体化されてスイッチング素子モジュールが構成されている。
【0025】
インバータ回路60の直流側には、直流リンク電圧(インバータ回路60の直流側の正極電源ラインPと負極電源ラインNとの間の電圧)を平滑する直流リンクコンデンサ64(平滑コンデンサ)が備えられている。直流リンクコンデンサ64は、回転電機MGの消費電力の変動に応じて変動する直流電圧(直流リンク電圧)を安定化させる。
【0026】
図5に示すように、インバータ回路60は、インバータ制御装置65(M-CTRL)により制御される。インバータ制御装置65は、マイクロコンピュータ等の論理回路を中核部材として構築されている。インバータ制御装置65は、回転電機MGの目標トルクに基づいて、ベクトル制御法を用いた電流フィードバック制御を行って、インバータ回路60を介して回転電機MGを制御する。回転電機MGの目標トルクは、例えば、車両内の上位の制御装置の1つである車両制御装置91(VCL-CTRL)等の他の制御装置等から要求信号として提供される。回転電機MGの各相のステータコイル81を流れる実電流は電流センサ84により検出される。また、回転電機MGのロータRTの各時点での磁極位置は、例えばレゾルバなどの回転センサ83により検出される。インバータ装置INVには、センサコネクタ54を介して、電流センサ84及び回転センサ83による検出結果が伝達される。
【0027】
インバータ制御装置65は、電流センサ84及び回転センサ83の検出結果を用いて、電流フィードバック制御を実行する。インバータ制御装置65は、電流フィードバック制御のために種々の機能部を有して構成されており、各機能部は、マイクロコンピュータ等のハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働により実現される。電流フィードバック制御については、公知であるのでここでは詳細な説明は省略する。
【0028】
動作電圧が例えば5[V]や3.3[V]のマイクロコンピュータ等を中核として構成された車両制御装置91やインバータ制御装置65は、低圧バッテリBLから電力を供給されて動作する低圧系回路である。このため、インバータ制御装置65には、各スイッチング素子に対するスイッチング制御信号(IGBTの場合、ゲート駆動信号)の駆動能力(例えば電圧振幅や出力電流など、後段の回路を動作させる能力)をそれぞれ高めて中継する駆動回路が備えられている。つまり、インバータ回路60を構成する各スイッチング素子の制御端子(例えばIGBTのゲート端子)は、駆動回路を介してインバータ制御装置65の中核となるマイクロコンピュータ等に接続されており、それぞれ個別にスイッチング制御される。インバータ制御装置65は、単数又は複数の配線基板を備えて構成されている。
【0029】
インバータ装置INVは、上述したようなインバータ制御装置65、直流リンクコンデンサ64、インバータ回路60(パワーモジュール)を含んで構成されている。上記のとおり、本実施形態では、インバータ回路60は、当該インバータ回路60を構成する複数のスイッチング素子とそれらを接続する配線を備えたスイッチング素子モジュールにより構成されている。また、図5には、インバータ装置INVと回転電機MGとを接続する回転電機側バスバー8を流れる電流を、電流センサ84が検出する形態を例示しており、電流センサ84はインバータ装置INVとは別に配置されている。しかし、電流センサ84がインバータ装置INVの内部に配置され、インバータ側バスバー7を流れる電流を検出する形態であってもよい。また、電流センサ84は、インバータ側バスバー7と回転電機側バスバー8とを接続する端子台50に配置されて、交流電流を検出する形態であってもよい。
【0030】
上述したように、インバータ側バスバー7と回転電機側バスバー8とを電気的に接続する端子台50は、第2収容室30と第1収容室20とを区画する隔壁11を、出力部材OUTの径方向Rに貫通して配置されている。インバータ側バスバー7と回転電機側バスバー8とを電気的に接続する部材が、軸方向に張り出して設けられないため、ケース1が軸方向Lに拡大されることが抑制され、車両用駆動装置100が大型化することが抑制される。
【0031】
図1及び図2に示すように、本実施形態では、端子台50の少なくとも一部と、回転電機側バスバー8の少なくとも一部とが、出力部材OUTとインバータ装置INVとに挟まれた対象領域Eに配置されている。つまり、出力部材OUTとインバータ装置INVとに挟まれた領域(対象領域E)を有効に活用して端子台50及び回転電機側バスバー8を配置することができるので、車両用駆動装置100を小型に構成することができる。
【0032】
また、本実施形態では、図2等に示すように、端子台50における回転電機側バスバー8との接続端子部5の少なくとも一部が、出力部材OUTの軸心である第2軸A2を基準として回転電機MGから遠い側である第2方向X2の側に位置している。ここで、回転電機MGの軸心である第1軸A1と出力部材OUTの軸心である第2軸A2とを含む面(図2参照)を基準面Qとし、基準面Qに沿った方向において第2軸A2から回転電機MGの側(回転電機MGに近い側)への方向を第1方向X1、回転電機MGとは反対の側(回転電機MGから遠い側)への方向を第2方向X2とする。本実施形態では、端子台50における回転電機側バスバー8との接続端子部5の少なくとも一部、具体的には第2接続端子部5b及び第3接続端子部5c(図1参照)が、第2軸A2よりも回転電機MGから遠い側である第2方向X2の側に配置されている。本実施形態の構成では、第1軸A1と第2軸A2との距離が近いため、このような端子台50の配置となっている。このように、本実施形態の構成によれば、出力部材OUTと回転電機MGとを接近させて配置することができるので、車両用駆動装置100を径方向(ここでは、概ね基準面Qに沿った方向)において小型化することができる。
【0033】
また、本実施形態のように、回転電機MGが複数相の交流により駆動される場合、回転電機側バスバー8も、複数相の交流に応じて複数本備えられる。本実施形態では、図2に示すように、複数本の回転電機側バスバー8の内の一部である第2回転電機側バスバー8bと第3回転電機側バスバー8cとが軸方向L視で重複している。より具体的には、第2回転電機側バスバー8bの一部と第3回転電機側バスバー8cの一部とが軸方向L視で重複している。これにより、全ての回転電機側バスバー8を、軸方向L視で重複しないように配置した場合に比べて、出力部材OUTとインバータ装置INVとの間の長さを短くすることができるので、車両用駆動装置100を小型に構成することができる。また、図3に示すように、軸方向L視で重複する第2回転電機側バスバー8bと第3回転電機側バスバー8cとは、軸方向Lにおいて適切に離間して配置することができるので、絶縁距離も確保することができる。
【0034】
以下、より具体的な構造を例示して説明する。以下の説明においても、上記と同一の部位については、同一の参照符号を用いる。図6は、車両用駆動装置100の軸方向断面図であり、図7は、車両用駆動装置100の軸直交断面図であり、図8は、車両用駆動装置100の上下方向第1側V1からの平面図である。
【0035】
図1等を参照して上述したように、車両用駆動装置100は、第1軸A1上に配置された回転電機MGと、回転電機MGからの駆動力が伝達される伝達機構TMと、第2軸A2上に配置される差動歯車機構DFと、第2軸A2上に配置される出力部材OUTと、インバータ装置INVと、端子台50と、ケース1とを備えている。ケース1は、回転電機MGを収容する第1収容室20とインバータ装置INVを収容する第2収容室30とを内部に有して一体形成されている。一体形成されたケース1は、第1収容室20と第2収容室30とを区画する隔壁11を備え、端子台50は、軸方向Lの配置領域が回転電機MGと重複し、且つ、隔壁11を、出力部材OUTの径方向Rに貫通して配置されている(図7参照)。
【0036】
このように、ケース1が、第1収容室20と第2収容室30とを内部に有して一体形成されていると、別体で形成された第1収容室20と第2収容室30とが組み付けられてケース1が構成される場合に比べて、ケース1に高い剛性を持たせることができる。また、2つの収容室が別体で形成される場合に比べて、第1収容室20と第2収容室30とを区画する隔壁11が共通化できるため、ケース1を軽量化することができる。また、本実施形態では、第1収容室20に車輪Wの駆動力源の回転電機MGと、車輪Wに駆動連結される出力部材OUTとが共に収容されるため、第1軸A1と第2軸A2とを近づけて配置することも容易となる。
【0037】
本実施形態では、図7に示すように、隔壁11と、出力部材OUTとの間に、回転電機MGとインバータ装置INVとを接続する端子台50やバスバー(インバータ側バスバー7、回転電機側バスバー8)が配置されている。一体化されたケース1内に形成された第1収容室20に、回転電機MGと出力部材OUTとが収容されているため、第1収容室20内において空きスペースを設け易い。そのような空きスペースに端子台50やバスバーが配置されることで、配線スペースを確保しつつ、車両用駆動装置100の大型化が抑制される。また、回転電機MGが収容される第1収容室20と、インバータ装置INVが収容される第2収容室30とは、隔壁11によって区画されている。換言すれば、第1収容室20と第2収容室30とは、共通する1枚の隔壁11を介して隣接している。また、インバータ装置INVと出力部材OUT(第2軸A2)とは、上下方向視で重複しているため、隔壁11と出力部材OUT(第2軸A2)との間に端子台50やバスバーを配置することによって、短い距離で適切に回転電機MGとインバータ装置INVとをバスバーを介して電気的に接続することができる。
【0038】
第1収容室20と第2収容室30とを区画する隔壁11、及び端子台50は、図7に示すように、インバータ装置INVと出力部材OUT(第2軸A2)との間に配置されている。第1収容室20に収容される出力部材OUTと、第2収容室30に収容されるインバータ装置INVとは、上下方向視で重複している。このため、第1収容室20と第2収容室30とを内部に有して一体形成されたケース1の上下方向Vにおける寸法の拡大を抑制することができる。また、第2軸A2とインバータ装置INVとに挟まれた対象領域Eを有効に活用して端子台50を配置することができる。本実施形態では、出力部材OUTが、第1収容室20に配置されており、出力部材OUTとインバータ装置INVとに挟まれた対象領域Eを有効に活用して隔壁11及び端子台50を配置することができる。
【0039】
また、図7及び図8に示すように、端子台50は、軸方向L及び上下方向Vの双方に直交する方向である前後方向Hにおける配置領域が、第2軸A2と重複する位置に配置されている。ケース1内の収容空間を効率良く利用して、端子台50を配置することができ、車両用駆動装置100の大型化を抑制することができる。
【0040】
上述したように、伝達機構TMは、回転電機MGから伝達される駆動力を一対の車輪Wに分配する差動歯車機構DFを備えている。出力部材OUTは、一対の車輪Wのそれぞれに、差動歯車機構DFから分配される駆動力を伝達する。ここで、軸方向第1側L1に配置された出力部材OUTを第1出力部材OUT1、軸方向第2側L2に配置された出力部材OUTを第2出力部材OUT2とする(図6参照)。また、第1出力部材OUT1は、連結軸JTを介して差動歯車機構DFに連結されている。連結軸JTも出力部材OUTに含まれる。即ち、出力部材OUTは、第1出力部材OUT1、第2出力部材OUT2、連結軸JTを含む。図6に示すように、出力部材OUTは、ケース1の外部に延びている。出力部材OUTの内、回転電機MGと軸方向Lに重複する部分(ここでは第1出力部材OUT1と連結軸JTの一部)が少なくとも第1収容室20に収容されている。尚、図6に例示する形態では、第2出力部材OUT2の一部も第1収容室20に収容されている。
【0041】
車両用駆動装置100は、第1収容室20を閉塞する本体カバー10(第1カバー10a、第2カバー10b)と、第2収容室30を閉塞する第3カバー31とを備えている。ケース1の第1収容部2の軸方向第1側L1の開口部(第1開口部21)を塞ぐ第1カバー10aと、第1収容部2の軸方向第2側L2の開口部(第2開口部22)を塞ぐ第2カバー10bと、第2収容部3を塞ぐ第3カバー31とにより、回転電機MG、伝達機構TM、インバータ装置INVを内包するケース1が形成されている。
【0042】
本体カバー10は、回転電機MGを収容する第1収容室20を閉塞するため、本体カバー10をケース1に取り付けていない状態では、ケース1の外部から回転電機MGに容易に触れることができる。従って、インバータ側バスバー7と回転電機側バスバー8とをケース1の外部から容易に接続することができる。また、第3カバー31は、インバータ装置INVを収容する第2収容室30を閉塞するため、第3カバー31をケース1に取り付けていない状態では、ケース1の外部からインバータ装置INVに容易に触れることができる。従って、ケース1の外部からインバータ側バスバー7とインバータ装置INVとを容易に接続することができる。即ち、インバータ装置INVと回転電機MGとの電気的接続を容易に行うことができ、生産性が向上する。
【0043】
インバータ装置INVと回転電機MGとの電気的接続に際しては、例えばサービスホールやメンテナンスホールなどと称される作業用の開口がケース1に形成される場合がある。しかし、本実施形態では、本体カバー10の側、及び第3カバー31の側の双方からバスバーを接続することができるため、そのような開口をケース1に設ける必要がない。このため、ケース1の製造コストを低減できると共に、開口によるケース1の剛性の低下も抑制することができる。
【0044】
図1図7等に示すように、回転電機側バスバー8とインバータ側バスバー7とを締結する締結部9は、第1収容室20に配置されており、第1収容室20において回転電機側バスバー8とインバータ側バスバー7とを締結することができる。本実施形態のように、第1収容室20が、回転電機MGなどの機器が通過可能な開口部を備えて構成され、当該開口部がカバー部材(第1カバー10a、第2カバー10b)によって蓋をされるような構造の場合、当該カバー部材を取り付ける前に、第1収容室20内においてバスバー同士を締結することができる。即ち、第1収容室20に別途、バスバー同士を締結するための開口、例えばサービスホールを設ける必要がなく、ケース1の構造を簡素化することができる。
【0045】
また、図2図6図7に示すように、第2収容室30は、上下方向Vにおける配置領域が回転電機MGと重複する位置に配置されている。このため、一体形成されたケース1へのインバータ装置INVの配置領域を上下方向Vに確保しつつ、ケース1が上下方向Vへ拡大することが抑制される。従って、車両用駆動装置100を小型に構成し易い。
【0046】
また、図7に示すように、第2収容室30は、軸方向視で差動歯車機構DFと重複する位置に配置されている。このため、ケース1内の収容空間を効率良く利用して、端子台50を配置することができ、車両用駆動装置100の大型化を抑制することができる。
【0047】
以上、図1図5に対応する形態について、図6図8を参照して、より具体的な構造を例示して説明した。以下、図9図12を参照して、異なる構造の車両用駆動装置100について説明する。以下、適宜、図1図8に例示する形態を第1実施形態、図9図12に例示する形態を第2実施形態と称して説明する。また、以下の説明においても、上記と同一の部位については、同一の参照符号を用いる。図9は、上記とは異なる形態の車両用駆動装置100の軸方向断面図であり、図10は、その車両用駆動装置100の軸直交断面図であり、図11は、その車両用駆動装置100の上下方向第1側V1からの平面図であり、図12は、その車両用駆動装置100のスケルトン図である。
【0048】
第1実施形態と同様に、第2実施形態の車両用駆動装置100(適宜、第2車両用駆動装置100Bと称す)も、第1軸A1上に配置された回転電機MGと、回転電機MGからの駆動力が伝達される伝達機構TMと、第2軸A2上に配置され、伝達機構TMを介した回転電機MGからの駆動力を車輪Wに分配する差動歯車機構DFと、第2軸A2上に配置され、差動歯車機構DFと車輪Wとを駆動連結する出力部材OUTと、端子台50と、ケース1とを備えている。ケース1は、回転電機MGを収容する第1収容室20とインバータ装置INVを収容する第2収容室30とを内部に有して一体形成されている。第2車両用駆動装置100Bにおいても、一体形成されたケース1は、第1収容室20と第2収容室30とを区画する隔壁11を備えている。そして、端子台50は、軸方向Lの配置領域が回転電機MGと重複し、且つ、隔壁11を、出力部材OUTの径方向Rに貫通して配置されている。
【0049】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、2つの収容室が別体で形成される場合に比べて、第1収容室20と第2収容室30とを区画する隔壁11が共通化できるため、ケース1を軽量化することができる。また、第2実施形態においても、第1収容室20に車輪Wの駆動力源の回転電機MGと、車輪Wに駆動連結される出力部材OUTとが共に収容されることで、第1軸A1と第2軸A2とを近づけて配置することも容易となる。従って、車両用駆動装置100を小型化することも可能となる。また、第2実施形態においても、第1収容室20に車輪Wの駆動力源の回転電機MGと、車輪Wに駆動連結される出力部材OUTとが共に収容されるため、第1軸A1と第2軸A2とを近づけて配置することも容易となる。
【0050】
第2実施形態においても、図10に示すように、隔壁11と、出力部材OUTとの間に、回転電機MGとインバータ装置INVとを接続する端子台50やバスバー(インバータ側バスバー7、回転電機側バスバー8)が配置されている。一体化されたケース1内に形成された第1収容室20に、回転電機MGと出力部材OUTとが収容されているため、第1収容室20内において空きスペースを設け易い。そのような空きスペースに端子台50やバスバーが配置されることで、配線スペースを確保しつつ、車両用駆動装置100の大型化が抑制される。また、回転電機MGが収容される第1収容室20と、インバータ装置INVが収容される第2収容室30とは、隔壁11によって区画されている。換言すれば、第1収容室20と第2収容室30とは、共通する1枚の隔壁11を介して隣接している。また、インバータ装置INVと出力部材OUT(第2軸A2)とは、上下方向視で重複しているため、隔壁11と出力部材OUT(第2軸A2)との間に端子台50やバスバーを配置することによって、短い距離で適切に回転電機MGとインバータ装置INVとをバスバーを介して電気的に接続することができる。
【0051】
第1収容室20と第2収容室30とを区画する隔壁11、及び端子台50は、図10に示すように、インバータ装置INVと出力部材OUT(第2軸A2)との間に配置されている。第1収容室20に収容される出力部材OUTと、第2収容室30に収容されるインバータ装置INVとは、上下方向視で重複している。このため、第1収容室20と第2収容室30とを内部に有して一体形成されたケース1の上下方向Vにおける寸法の拡大を抑制することができる。また、第2軸A2とインバータ装置INVとに挟まれた対象領域Eを有効に活用して端子台50を配置することができる。第2実施形態においても、出力部材OUTが、第1収容室20に配置されており、出力部材OUTとインバータ装置INVとに挟まれた対象領域Eを有効に活用して隔壁11及び端子台50を配置することができる。
【0052】
また、図10及び図11に示すように、端子台50は、軸方向L及び上下方向Vの双方に直交する方向である前後方向Hにおける配置領域が、第2軸A2と重複する位置に配置されている。ケース1内の収容空間を効率良く利用して、端子台50を配置することができ、車両用駆動装置100の大型化を抑制することができる。
【0053】
第2車両用駆動装置100Bも、第1収容室20を閉塞する本体カバー10(第1カバー10a、第2カバー10b)と、第2収容室30を閉塞する第3カバー31とを備えている。ケース1の第1収容部2の軸方向第1側L1の第1開口部21を塞ぐ第1カバー10aと、第1収容部2の軸方向第2側L2の第2開口部22を塞ぐ第2カバー10bと、第2収容部3を塞ぐ第3カバー31とにより、回転電機MG、伝達機構TM、インバータ装置INVを内包するケース1が形成されている。
【0054】
本体カバー10は、回転電機MGを収容する第1収容室20を閉塞するため、本体カバー10をケース1に取り付けていない状態では、ケース1の外部から回転電機MGに容易に触れることができる。従って、インバータ側バスバー7と回転電機側バスバー8とをケース1の外部から容易に接続することができる。また、第3カバー31は、インバータ装置INVを収容する第2収容室30を閉塞するため、第3カバー31をケース1に取り付けていない状態では、ケース1の外部からインバータ装置INVに容易に触れることができる。従って、ケース1の外部からインバータ側バスバー7とインバータ装置INVとを容易に接続することができる。即ち、インバータ装置INVと回転電機MGとの電気的接続を容易に行うことができ、生産性が向上する。
【0055】
このように、第2実施形態においても、本体カバー10の側、及び第3カバー31の側の双方からバスバーを接続することができるため、サービスホールやメンテナンスホールと称される開口をケース1に設ける必要がない。このため、ケース1の製造コストを低減できると共に、開口によるケース1の剛性の低下も抑制することができる。
【0056】
図10に示すように、第2実施形態においても、回転電機側バスバー8とインバータ側バスバー7とを締結する締結部9は、第1収容室20に配置されている。このため、第1収容室20において回転電機側バスバー8とインバータ側バスバー7とを締結することができる。
【0057】
また、図9に示すように、第2実施形態においても、第2収容室30は、軸方向Lにおける配置領域が差動歯車機構DFと重複する位置に配置されている。このため、ケース1内の収容空間を効率良く利用して、端子台50を配置することができ、車両用駆動装置100の大型化を抑制することができる。
【0058】
〔その他の実施形態〕
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0059】
(1)上記においては、端子台50の少なくとも一部と、回転電機側バスバー8の少なくとも一部とが、出力部材OUTとインバータ装置INVとに挟まれた対象領域Eに配置されている形態を例示した。しかし、隔壁11を、出力部材OUTの径方向Rに貫通して配置されている端子台50の少なくとも一部が対象領域Eに配置され、端子台50が回転電機MGの側に延伸するように構成されている場合などでは、回転電機側バスバー8の全てが対象領域Eに配置されていなくてもよい。
【0060】
(2)上記においては、端子台50における回転電機側バスバー8との接続端子部5の少なくとも一部が、基準面Qに沿う方向において第2軸A2よりも第2方向X2の側に配置されている形態を例示した。しかし、接続端子部5の全てが、基準面Qに沿う方向において第2軸A2よりも第1方向X1の側に配置されていてもよい。
【0061】
(3)上記においては、第2回転電機側バスバー8bと第3回転電機側バスバー8cとが軸方向L視で重複している形態を例示した。つまり、複数本の回転電機側バスバー8の内の一部が軸方向L視で重複している形態を例示した。しかし、出力部材OUTの径方向、例えば、出力部材OUTとインバータ装置INVとの間の領域(例えば対象領域E)が十分に大きく確保できるような場合などには、複数本の回転電機側バスバー8の全てが、軸方向L視で重複していない形態であってもよい。或いは、出力部材OUTの径方向、例えば、出力部材OUTとインバータ装置INVとの間の領域(例えば対象領域E)が小さい場合などには、複数本の回転電機側バスバー8の全てが、軸方向L視で重複する形態(一部ずつが重複する形態を含む)であってもよい。
【0062】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した車両用駆動装置(100)の概要について簡単に説明する。
【0063】
1つの態様として、車両用駆動装置(100)は、第1軸(A1)上に配置された回転電機(MG)と、前記回転電機(MG)からの駆動力が伝達される伝達機構(TM)と、前記第1軸(A1)と互いに平行な別軸である第2軸(A2)上に配置され、前記伝達機構(TM)を介した前記回転電機(MG)からの駆動力を車輪(W)に分配する差動歯車機構(DF)と、前記第2軸(A2)上に配置され、前記差動歯車機構(DF)と前記車輪(W)とを駆動連結する出力部材(OUT)と、前記回転電機(MG)を駆動制御するインバータ装置(INV)と、前記回転電機(MG)のステータコイル(81)に接続される回転電機側バスバー(8)と前記インバータ装置(INV)に接続されるインバータ側バスバー(7)とを電気的に接続する端子台(50)と、前記回転電機(MG)を収容する第1収容室(20)と前記インバータ装置(INV)を収容する第2収容室(30)とを内部に有して一体形成されたケース(1)と、を備え、一体形成された前記ケース(1)は、前記第1収容室(20)と前記第2収容室(30)とを区画する隔壁(11)を備え、前記端子台(50)は、前記第1軸(A1)に沿った方向である軸方向(L)の配置領域が前記回転電機(MG)と重複し、且つ、前記隔壁(11)を、前記出力部材(OUT)の径方向(R)に貫通して配置されている。
【0064】
この構成によれば、第2収容室(30)と第1収容室(20)とを区画する隔壁(11)を径方向に貫通する端子台(50)を介して、インバータ側バスバー(7)と回転電機側バスバー(8)とが電気的に接続される。インバータ側バスバー(7)と回転電機側バスバー(8)とを電気的に接続する部材が、軸方向に張り出して設けられないため、ケース(1)が軸方向(L)に拡大されることが抑制され、車両用駆動装置(100)が軸方向に大型化することが抑制される。即ち、本構成によれば、回転電機(MG)とインバータ装置(INV)との電気的接続を適切に行いつつ、より小型化が可能な車両用駆動装置(100)を提供することができる。
【0065】
また、車両用駆動装置(100)は、前記出力部材(OUT)が、前記第1収容室(20)に配置されていると好適である。
【0066】
この構成によれば、出力部材(OUT)をケース(1)内に収容して適切に車両用駆動装置(100)を構成することができる。
【0067】
また、車両用駆動装置(100)は、前記隔壁(11)及び前記端子台(50)が、上下方向(V)において前記インバータ装置(INV)と前記第2軸(A2)との間に配置されていると好適である。
【0068】
この構成によれば、第2軸(A2)とインバータ装置(INV)とに挟まれた領域(E)を有効に活用して隔壁(11)及び端子台(50)を配置することができる。その結果、車両用駆動装置(100)を小型化することができる。例えば、出力部材(OUT)が、第1収容室(20)に配置されている場合には、出力部材(OUT)とインバータ装置(INV)とに挟まれた領域(E)を有効に活用して隔壁(11)及び端子台(50)を配置することができる。
【0069】
また、車両用駆動装置(100)は、前記端子台(50)が、前記軸方向(L)及び上下方向(V)の双方に直交する方向である前後方向(H)における配置領域が、前記第2軸(A2)と重複する位置に配置されていると好適である。
【0070】
この構成によれば、ケース(1)内の収容空間を効率良く利用して、端子台(50)を配置することができ、車両用駆動装置(100)の大型化を抑制することができる。
【0071】
また、車両用駆動装置(100)は、前記端子台(50)の少なくとも一部と、前記回転電機側バスバー(8)の少なくとも一部とが、前記第2軸(A2)と前記インバータ装置(INV)とに挟まれた領域(E)に配置されていると好適である。
【0072】
この構成によれば、第2軸(A2)とインバータ装置(INV)とに挟まれた領域(E)を有効に活用して端子台(50)及び回転電機側バスバー(8)を配置することができる。その結果、車両用駆動装置(100)を小型化することができる。例えば、出力部材(OUT)が、第1収容室(20)に配置されている場合には、出力部材(OUT)とインバータ装置(INV)とに挟まれた領域(E)を有効に活用して端子台(50)及び回転電機側バスバー(8)を配置することができる。
【0073】
また、車両用駆動装置(100)は、前記回転電機側バスバー(8)と前記インバータ側バスバー(7)とを締結する締結部(9)が前記第1収容室(20)に配置されていると好適である。
【0074】
この構成によれば、第1収容室(20)において回転電機側バスバー(8)とインバータ側バスバー(7)とを締結することができる。例えば、第1収容室(20)が、回転電機(MG)などの機器が通過可能な開口部を備えて構成され、当該開口部がカバー部材によって蓋をされるような構造の場合、当該カバー部材を取り付ける前に、第1収容室(20)内においてバスバー同士を締結することができる。即ち、第1収容室(20)に別途、バスバー同士を締結するための開口、例えばサービスホールを設ける必要がなく、ケース(1)の構造を簡素化することができる。
【0075】
また、車両用駆動装置(100)は、前記第1軸(A1)と前記第2軸(A2)とを含む面(Q)に沿う方向において、前記端子台(50)における前記回転電機側バスバー(8)との接続端子部(5)の少なくとも一部が、前記第2軸(A2)よりも前記回転電機(MG)から遠い側(X2)に配置されていると好適である。
【0076】
この構成によれば、第2軸(A2)と回転電機(MG)とを接近させて配置することができるので、車両用駆動装置(100)を径方向に小型化することができる。
【0077】
また、車両用駆動装置(100)は、前記回転電機側バスバー(8(8a,8b,8c))を複数本備え、複数本の前記回転電機側バスバー(8(8a,8b,8c))の一部が前記軸方向に沿った軸方向(L)視で重複していると好適である。
【0078】
この構成によれば、複数本の回転電機側バスバー(8)の一部が軸方向(L)視で重複することで、複数本の回転電機側バスバー(8)の相互の間の絶縁距離を確保しつつ、回転電機側バスバー(8(8a,8b,8c))が径方向に沿って並ぶ幅を狭くすることができる。即ち、出力部材(OUT)とインバータ装置(INV)との間の長さを短くすることができるので、車両用駆動装置(100)を小型化することができる。
【0079】
また、車両用駆動装置(100)は、前記第2収容室(30)が、上下方向(V)における配置領域が前記回転電機(MG)と重複する位置に配置されていると好適である。
【0080】
この構成によれば、一体形成されたケース(1)へのインバータ装置(INV)の配置領域を上下方向(V)に確保しつつ、ケース(1)が上下方向(V)へ拡大することが抑制される。従って、車両用駆動装置(100)を小型に構成し易い。
【0081】
また、車両用駆動装置(100)は、前記第2収容室(30)が、前記軸方向(L)に沿った軸方向視で前記差動歯車機構(DF)と重複する位置に配置されていると好適である。
【0082】
この構成によれば、ケース(1)内の収容空間を効率良く利用して、端子台(50)を配置することができ、車両用駆動装置(100)の大型化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0083】
1:ケース、5:接続端子部、7:インバータ側バスバー、8:回転電機側バスバー、9:締結部、11:隔壁、20:第1収容室、30:第2収容室、50:端子台、51:第1収容室側接続部(接続端子部)、81:ステータコイル、100:車両用駆動装置、100B:第2車両用駆動装置(車両用駆動装置)、A1:第1軸、A2:第2軸、DF:差動歯車機構、INV:インバータ装置、L:軸方向、MG:回転電機、OUT:出力部材、Q:基準面(回転電機の軸心と出力部材の軸心とを含む面)、R:径方向、TM:伝達機構、V:上下方向、W:車輪、X2:第2方向(回転電機から遠い側)
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