IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧

特許7435736移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体
<>
  • 特許-移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体 図1
  • 特許-移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体 図2
  • 特許-移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体 図3
  • 特許-移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体 図4
  • 特許-移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体 図5
  • 特許-移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体 図6
  • 特許-移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体 図7
  • 特許-移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体 図8
  • 特許-移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体 図9
  • 特許-移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体 図10
  • 特許-移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体 図11
  • 特許-移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240214BHJP
   H04W 16/18 20090101ALI20240214BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G05D1/02 P
H04W16/18 110
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022508252
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2021009475
(87)【国際公開番号】W WO2021187264
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2020046675
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】関本 崇人
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-167625(JP,A)
【文献】特開2020-030104(JP,A)
【文献】特開2004-048490(JP,A)
【文献】特開2006-93778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
H04W 16/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信網が形成された所定領域内を移動可能な移動体と、
前記無線通信網を介して前記移動体を制御する制御装置と、
前記所定領域内に設置され、前記無線通信網の通信品質を測定し、当該通信品質を前記制御装置へ送信する測定装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記測定装置から受信した前記通信品質に基づいて、前記所定領域内において前記通信品質が所望品質に満たない低品質領域を避けた第1経路を、前記移動体の目標移動経路として生成する生成手段と、
前記目標移動経路に沿って前記移動体が移動するように前記移動体を制御する制御手段と
を備える移動体制御システム。
【請求項2】
前記移動体を複数備え、
前記生成手段は、各移動体の前記目標移動経路として、前記低品質領域と前記複数の移動体のうちの各移動体とは異なる他の移動体とを避ける前記第1経路を生成し、
前記制御手段は、各移動体の前記目標移動経路に沿って各移動体が移動するように前記複数の移動体を制御する
請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項3】
前記生成手段は、前記移動体が前記低品質領域に到達する前に、前記第1経路を前記目標移動経路として予め生成する
請求項1又は2に記載の移動体制御システム。
【請求項4】
前記移動体は、前記無線通信網が形成するように前記所定領域に配置された無線アクセスポイントを介して前記制御装置と通信可能であり、
前記生成手段は、前記第1経路を生成することができない場合には、前記低品質領域を経由する第2経路を前記目標移動経路として生成し、
前記制御手段は、前記第2経路が前記目標移動経路として生成された場合には、前記低品質領域を通過する前記移動体に対してビームフォーミングを行うように前記無線アクセスポイントを制御する
請求項1から3のいずれか一項に記載の移動体制御システム。
【請求項5】
前記移動体を複数備え、
前記生成手段は、前記複数の移動体のうちの一の移動体の前記目標移動経路としての前記第1経路を生成することができない場合には、前記低品質領域を経由し且つ前記複数の移動体のうちの他の移動体を避ける前記第2経路を、前記一の移動体の前記目標移動経路として生成し、
前記制御手段は、前記第2経路が前記目標移動経路として生成された場合には、前記低品質領域を通過する前記一の移動体に対してビームフォーミングを行うように前記無線アクセスポイントを制御する
請求項4に記載の移動体制御システム。
【請求項6】
前記測定装置による新たな測定結果を受信し、かつ前記目標移動経路上に前記低品質領域が存在した場合、前記生成手段は、前記移動体の目標移動経路を再生成する
請求項1から5の何れか1項に記載の移動体制御システム。
【請求項7】
無線通信網が形成された所定領域内を移動可能な移動体を、前記無線通信網を介して制御する制御装置であって、
前記所定領域内に設置され、前記無線通信網の通信品質を測定し、前記制御装置へ送信する測定装置から受信した前記通信品質に基づいて、前記所定領域内において前記通信品質が所望品質に満たない低品質領域を避ける第1経路を、前記移動体の目標移動経路として生成する生成手段と、
前記目標移動経路に沿って前記移動体が移動するように前記移動体を制御する制御手段と
を備える制御装置。
【請求項8】
無線通信網が形成された所定領域内を移動可能な移動体を、前記無線通信網を介して制御する制御方法であって、
前記所定領域内に設置され、前記無線通信網の通信品質を測定する測定装置から受信した前記通信品質に基づいて、前記所定領域内において前記通信品質が所望品質に満たない低品質領域を避ける第1経路を、前記移動体の目標移動経路として生成し、
前記目標移動経路に沿って前記移動体が移動するように前記移動体を制御する
制御方法。
【請求項9】
コンピュータに制御方法を実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記制御方法は、
無線通信網が形成された所定領域内を移動可能な移動体を、前記無線通信網を介して制御する制御方法であって、
前記所定領域内に設置され、前記無線通信網の通信品質を測定する測定装置から受信した前記通信品質に基づいて、前記所定領域内において前記通信品質が所望品質に満たない低品質領域を避ける第1経路を、前記移動体の目標移動経路として生成し、
前記目標移動経路に沿って前記移動体が移動するように前記移動体を制御する
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体を制御可能な移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の施設内を自律的に移動可能な移動体を制御するための制御装置が知られている。例えば、特許文献1には、移動体の一例である移動台車が走行中にある地点において受信強度が一定値以下になった場合には、当該地点において移動台車が仮想障害物に接近或いは接触したものとして、仮想障害物を回避しつつ目標点に接近するように移動台車の軌道を修正する制御装置が記載されている。
【0003】
その他、本願発明に関連する先行技術文献として、特許文献2から特許文献5があげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-005833号公報
【文献】特開2018-197731号公報
【文献】特開2017-103586号公報
【文献】特開2012-137909号公報
【文献】特開2011-166671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された制御装置は、移動台車等の移動体が実際に位置している地点での受信強度が一定値以下になった場合に、初めて移動体の軌道が修正される。つまり、移動体の通信が不安定になった後に移動体の軌道が修正される。このため、特許文献1に記載された制御装置には、移動体の移動経路の生成において改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上述した技術的問題を解決可能な移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体を提供することを課題とする。一例として、本発明は、移動体の移動経路を適切に生成可能な移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
移動体制御システムの一態様は、無線通信網が形成された所定領域内を移動可能な移動体と、前記無線通信網を介して前記移動体を制御する制御装置と、前記所定領域内での前記無線通信網の通信品質を測定可能な測定装置とを備え、前記制御装置は、前記測定装置の測定結果に基づいて、前記所定領域内において前記通信品質が所望品質に満たない低品質領域を避けた第1経路を、前記移動体の目標移動経路として生成する生成手段と、前記目標移動経路に沿って前記移動体が移動するように前記移動体を制御する制御手段とを備える。
【0008】
制御装置の一態様は、無線通信網が形成された所定領域内を移動可能な移動体を、前記無線通信網を介して制御する制御装置であって、前記所定領域内での前記無線通信網の通信品質の測定結果に基づいて、前記所定領域内において前記通信品質が所望品質に満たない低品質領域を避ける第1経路を、前記移動体の目標移動経路として生成する生成手段と、前記目標移動経路に沿って前記移動体が移動するように前記移動体を制御する制御手段とを備える。
【0009】
制御方法の一態様は、無線通信網が形成された所定領域内を移動可能な移動体を、前記無線通信網を介して制御する制御方法であって、前記所定領域内での前記無線通信網の通信品質の測定結果に基づいて、前記所定領域内において前記通信品質が所望品質に満たない低品質領域を避ける第1経路を、前記移動体の目標移動経路として生成し、前記目標移動経路に沿って前記移動体が移動するように前記移動体を制御する。
【0010】
記録媒体の一態様は、コンピュータに制御方法を実行させるためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体であって、前記制御方法は、無線通信網が形成された所定領域内を移動可能な移動体を、前記無線通信網を介して制御する制御方法であって、前記所定領域内での前記無線通信網の通信品質の測定結果に基づいて、前記所定領域内において前記通信品質が所望品質に満たない低品質領域を避ける第1経路を、前記移動体の目標移動経路として生成し、前記目標移動経路に沿って前記移動体が移動するように前記移動体を制御する。
【発明の効果】
【0011】
上述した移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体によれば、移動体の移動経路を適切に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態の移動体制御システムの全体構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態の移動体制御システムが適用されている搬送エリアを模式的に示す平面図である。
図3図3は、本実施形態の移動体の構成を示すブロック図である。
図4図4は、本実施形態の制御サーバの構成を示すブロック図である。
図5図5は、各移動体が搬送エリア内で移動開始するタイミングで行われる第1の移動体制御動作の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、電波強度がマッピングされた移動マップの一例を示す平面図である。
図7図7は、電波強度条件を満たす目標移動経路の一例を示す平面図である。
図8図8は、各移動体が搬送エリア内で移動開始した後に行われる第2の移動体制御動作の流れを示すフローチャートである。
図9図9(a)は、移動マップが更新される前に生成された目標移動経路を、更新前の移動マップ上で示す平面図であり、図9(b)は、移動マップが更新される前に生成された目標移動経路を、更新後の移動マップ上で示す平面図であり、図9(c)は、移動マップが更新された後に再生成された目標移動経路を、更新後の移動マップ上で示す平面図である。
図10図10(a)は、移動マップが更新される前に生成された目標移動経路を、更新前の移動マップ上で示す平面図であり、図10(b)は、移動マップが更新される前に生成された目標移動経路を、更新後の移動マップ上で示す平面図であり、図10(c)は、ビームフォーミングを行う無線アクセスポイントを、更新後の移動マップで模式的に示す平面図である。
図11図11は、変形例の移動体制御システムの全体構成を示すブロック図である。
図12図12は、変形例の制御サーバの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体の実施形態について説明する。以下では、倉庫内の搬送エリアTA内を移動可能な複数の移動体1の移動を制御可能な移動体制御システムSYSを用いて、移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体の実施形態について説明する。
【0014】
但し、移動体制御システムSYSは、任意のエリア内を移動可能な任意の移動体1の移動を制御可能であってもよい。例えば、移動体制御システムSYSは、工場、病院、駅、空港及びショッピングモールのうちの少なくとも一つ内の任意のエリア内を移動可能な任意の移動体1の移動を制御可能であってもよい。
【0015】
(1)移動体制御システムSYSの構成
(1-1)移動体制御システムSYSの全体構成
はじめに、図1から図2を参照しながら、本実施形態の移動体制御システムSYSの全体構成について説明する。図1は、本実施形態の移動体制御システムSYSの全体構成を示すブロック図である。図2は、移動体制御システムSYSが適用されている搬送エリアTAを模式的に示す平面図である。
【0016】
図1に示すように、移動体制御システムSYSは、複数の移動体1と、複数の無線アクセスポイント2と、夫々が「測定装置」の一具体例である複数の電波強度測定装置3と、複数の検出装置4と、「制御装置」の一具体例である業務サーバ5と、「制御装置」の一具体例である制御サーバ6とを備えている。但し、移動体制御システムSYSは、単一の移動体1を備えていてもよい。移動体制御システムSYSは、単一の無線アクセスポイント2を備えていてもよい。移動体制御システムSYSは、単一の電波強度測定装置3を備えていてもよい。移動体制御システムSYSは、単一の検出装置4を備えていてもよい。
【0017】
図2に示すように、複数の移動体1、複数の無線アクセスポイント2、複数の電波強度測定装置3及び複数の検出装置4は、「所定領域」の一具体例である搬送エリアTAに配置されている。一方で、業務サーバ5及び制御サーバ6は、搬送エリアTAに配置されていなくてもよい。例えば、業務サーバ5及び制御サーバ6は、倉庫の内部に又は倉庫の外部に設けられた管理室又はサーバ室に配置されていてもよい。
【0018】
各移動体1は、制御サーバ6の制御下で、搬送エリアTA内を自律的に移動可能である。具体的には、各移動体1は、制御サーバ6が生成した目標移動経路TGTに沿って搬送エリアTA内を自律的に移動可能である。移動体1の一例として、無人搬送車(Automated Guided Vehicle)があげられる。この場合、移動体1は、搬送エリアTA内で物品を運搬するように移動してもよい。
【0019】
各移動体1は、移動体1の構成を示すブロック図である図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)11と、記憶装置12と、検出装置13と、通信装置14とを備えている。但し、各移動体1は、検出装置13を備えていなくてもよい。CPU11と、記憶装置12と、検出装置13と、通信装置14とは、データバス15を介して接続されている。
【0020】
CPU11は、コンピュータプログラムを読み込む。例えば、CPU11は、記憶装置12が記憶しているコンピュータプログラムを読み込んでもよい。例えば、CPU11は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体が記憶しているコンピュータプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。CPU11は、通信装置14を介して、移動体1の外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを取得してもよい(つまり、ダウンロードしてもよい又は読み込んでもよい)。CPU11は、読み込んだコンピュータプログラムを実行する。その結果、CPU11内には、制御サーバ6の制御下で自律的に移動するための論理的な機能ブロックが実現される。つまり、CPU11は、制御サーバ6の制御下で自律的に移動するための論理的な機能ブロックを実現するためのコントローラとして機能可能である。
【0021】
記憶装置12は、所望のデータを記憶可能である。例えば、記憶装置12は、CPU11が実行するコンピュータプログラムを一時的に記憶していてもよい。記憶装置12は、CPU11がコンピュータプログラムを実行している際にCPU11が一時的に使用するデータを一時的に記憶してもよい。記憶装置12は、移動体1が長期的に保存するデータを記憶してもよい。記憶装置12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)及びディスクアレイ装置のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0022】
検出装置13は、移動体1の周囲の物体を検出する。検出装置13の一例として、カメラ、レーダ及び赤外線センサのうちの少なくとも一つがあげられる。移動体1の周囲の物体の一例として、人、障害物及び他の移動体1のうちの少なくとも一つがあげられる。検出装置13の検出結果(つまり、物体の検出結果)は、移動体1と検出装置13が検出した物体との接触を回避するように移動体1が自律的に移動するために、CPU11によって参照されてもよい。
【0023】
通信装置14は、複数の無線アクセスポイント2が形成する無線通信網NWを介して、制御サーバ6と通信可能である。本実施形態では特に、通信装置14は、無線通信網NWを介して、検出装置13の検出結果を制御サーバ6に送信してもよい。この場合、検出装置13の検出結果は、移動体1の目標移動経路TGTを決定するために制御サーバ6によって参照されてもよい。更に、通信装置14は、無線通信網NWを介して、制御サーバ6からの制御情報(具体的には、制御サーバ6が移動体1を制御するために移動体1に送信する指令信号)を受信する。CPU11は、受信した制御情報に基づいて移動体1が自律的に移動するように、移動体1の駆動部(例えば、モータ)、制動部及び操舵部の少なくとも一つを制御してもよい。
【0024】
再び図1から図2において、各無線アクセスポイント2は、搬送エリアTAに無線通信網NWを形成する。各無線アクセスポイント2は、各無線アクセスポイント2の通信セル内に位置する移動体1と無線通信可能である。移動体1は、複数の無線アクセスポイント2が形成した無線通信網NWを介して、制御サーバ6と通信可能である。移動体1は、複数の無線アクセスポイント2のうちの少なくとも一つを含む通信網Nを介して、制御サーバ6と通信可能である。このため、各無線アクセスポイント2は、有線通信網及び無線通信網の少なくとも一つを介して制御サーバ6と通信可能に接続されている。搬送エリアTA内を複数の移動体1が移動するため、複数の無線アクセスポイント2は、搬送エリアTA内に散り散りに配置されることが好ましい。
【0025】
各無線アクセスポイント2は、ビームフォーミングを行う(つまり、ビームフォーミング機能を有する)ことが可能に構成されていることが好ましい。つまり、各無線アクセスポイント2は、各無線アクセスポイント2が発する無線電波の指向性を制御することで、特定の方向に向かう無線電波の指向性を高めることが可能であることが好ましい。但し、各無線アクセスポイント2は、ビームフォーミングを行うことが可能でなくてもよい。
【0026】
各電波強度測定装置3は、搬送エリアTA内での電波強度(つまり、複数の無線アクセスポイント2が形成する無線通信網NWで用いられる無線電波の強度)を測定する。具体的には、各電波強度測定装置3は、各電波強度測定装置3が配置された地点(或いは、当該地点の周辺)における電波強度を測定する。後述するように、各電波強度測定装置3の電波強度の測定結果は、搬送エリアTAを示す地図上にマッピングされる。このため、複数の電波強度測定装置3は、搬送エリアTA内に散り散りに配置されることが好ましい。電波強度が強くなるほど、複数の無線アクセスポイント2が形成する無線通信網NWの通信品質が良くなる。このため、搬送エリアTA内での電波強度を測定する動作は、搬送エリアTA内での無線通信網NWの通信品質を測定する動作の一具体例であるとも言える。尚、各電波強度測定装置3は、既存の電波強度の測定方法(例えば、特許文献4等に記載の測定方法)を用いて、搬送エリアTA内での電波強度を測定してもよい。各電波強度測定装置3は、各電波強度測定装置3の測定結果(つまり、電波強度の測定結果)を、複数の無線アクセスポイント2が形成した無線通信網NW(或いは、その他の通信網)を介して、制御サーバ6に送信する。各電波強度測定装置3の測定結果は、移動体1の目標移動経路TGTを決定するために制御サーバ6によって参照されてもよい。
【0027】
各検出装置4は、搬送エリアTA内の物体を検出する。検出装置4の一例として、カメラ、レーダ及び赤外線センサのうちの少なくとも一つがあげられる。搬送エリアTA内の物体の一例として、人、障害物及び移動体1のうちの少なくとも一つがあげられる。複数の検出装置4は、搬送エリアTA内に散り散りに配置されることが好ましい。各検出装置4は、各検出装置4の検出結果(つまり、物体の検出結果)を、複数の無線アクセスポイント2が形成した無線通信網NW(或いは、その他の通信網)を介して、制御サーバ6に送信する。検出装置4の検出結果は、移動体1の目標移動経路TGTを決定するために制御サーバ6によって参照されてもよい。
【0028】
業務サーバ5は、搬送エリアTA内で行う必要がある業務に関する業務データに基づいて、搬送エリアTA内で行うべき業務に関する業務指示情報を、制御サーバ6に送信する。
【0029】
制御サーバ6は、搬送エリアTA内で各移動体1が自律的に移動するように各移動体1を制御するための移動体制御動作を行う。制御サーバ6は、制御サーバ6の構成を示すブロック図である図4に示すように、CPU61と、記憶装置62と、通信装置63とを備えている。CPU61と、記憶装置62と、通信装置63とは、データバス64を介して接続されている。
【0030】
CPU61は、コンピュータプログラムを読み込む。例えば、CPU61は、記憶装置62が記憶しているコンピュータプログラムを読み込んでもよい。例えば、CPU61は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体が記憶しているコンピュータプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。CPU61は、通信装置63を介して、制御サーバ6の外部に配置される不図示の装置からコンピュータプログラムを取得してもよい(つまり、ダウンロードしてもよい又は読み込んでもよい)。CPU61は、読み込んだコンピュータプログラムを実行する。その結果、CPU61内には、制御サーバ6が行うべき移動体制御動作を行うための論理的な機能ブロックが実現される。つまり、CPU61は、移動体制御動作を行うための論理的な機能ブロックを実現するためのコントローラとして機能可能である。
【0031】
移動体制御動作を行うために、CPU61内には、業務管理部611と、地図管理部612と、「生成手段」の一具体例である経路生成部613と、「制御手段」の一具体例である移動体制御部614とが実現される。尚、業務管理部611、地図管理部612、経路生成部613及び移動体制御部614の夫々が行う動作については、図5から図10等を参照しながら後に詳述するが、その概要についてここで簡単に説明する。業務管理部611は、業務サーバ5から送信される業務指示情報に基づいて、業務指示情報が示す業務を行う移動体1を決定する。地図管理部612は、複数の電波強度測定装置3の測定結果を、移動体1が移動する搬送エリアTAのレイアウトを示す地図(以降、“移動マップMP”と称する)上にマッピングする。つまり、地図管理部612は、複数の電波強度測定装置3の測定結果に基づいて、搬送エリアTA内の各領域(言い換えれば、各地点又は各位置)における電波強度の強弱を、移動マップMP上にマッピングする。経路生成部613は、電波強度がマッピングされた移動マップMPと、複数の移動体1が夫々備える複数の検出装置13の検出結果と、複数の検出装置4の検出結果とに基づいて、搬送エリアTA内での各移動体1の目標移動経路TGTを生成する。移動体制御部614は、生成した目標移動経路TGTに沿って各移動体1が移動するように、無線通信網NWを介して各移動体1を制御する。
【0032】
記憶装置62は、所望のデータを記憶可能である。例えば、記憶装置62は、CPU61が実行するコンピュータプログラムを一時的に記憶していてもよい。記憶装置62は、CPU61がコンピュータプログラムを実行している際にCPU61が一時的に使用するデータを一時的に記憶してもよい。記憶装置62は、制御サーバ6が長期的に保存するデータを記憶してもよい。記憶装置62は、RAM、ROM、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD及びディスクアレイ装置のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0033】
通信装置63は、無線通信網NWを介して、複数の移動体1の夫々と通信可能である。本実施形態では特に、通信装置63は、移動体1を制御するための制御情報(具体的には、制御サーバ6が移動体1を制御するために移動体1に送信する指令信号)を送信する。各移動体1は、制御サーバ6から送信された制御情報に基づいて、自律的に移動する。
【0034】
更に、通信装置63は、無線通信網NW(或いは、その他の通信網)を介して、複数の電波強度測定装置3、複数の検出装置4及び業務サーバ5の夫々と通信可能である。例えば、通信装置63は、各電波強度測定装置3から、各電波強度測定装置3の測定結果を受信してもよい。例えば、通信装置63は、各検出装置4から、各検出装置4の検出結果を受信してもよい。例えば、通信装置63は、業務サーバ5から、業務指示情報を受信してもよい。
【0035】
(2)制御サーバ6の動作
続いて、制御サーバ6が行う移動体制御動作について説明する。本実施形態では、制御サーバ6は、各移動体1が搬送エリアTA内で移動開始するタイミングで移動体制御動作を行ってもよい。更に、制御サーバ6は、各移動体1が搬送エリアTA内で移動開始した後に移動体制御動作を行ってもよい。つまり、制御サーバ6は、各移動体1が搬送エリアTA内で移動している期間中に移動体制御動作を行ってもよい。このため、以下では、各移動体1が搬送エリアTA内で移動開始するタイミングで行われる第1の移動体制御動作と、各移動体1が搬送エリアTA内で移動開始した後に行われる第2の移動体制御動作とについて順に説明する。
【0036】
(2-1)第1の移動体制御動作(移動体1の移動開始時)
はじめに、図5を参照しながら各移動体1が搬送エリアTA内で移動開始するタイミングで行われる第1の移動体制御動作について説明する。図5は、各移動体1が搬送エリアTA内で移動開始するタイミングで行われる第1の移動体制御動作の流れを示すフローチャートである。尚、制御サーバ6は、複数の移動体1の夫々に対して、第1の移動体制御動作を個別に(言い換えれば、並行して)行う。
【0037】
図5に示すように、業務管理部611は、通信装置63を介して、業務サーバ5から、業務指示情報を受信(つまり、取得)する(ステップS11)。その後、業務管理部611は、ステップS11で受信した業務指示情報に基づいて、複数の移動体1の中から、業務指示情報が示す業務を行う移動体1を決定する(ステップS12)。具体的には、業務管理部611は、複数の移動体1の中から、業務指示情報が示す業務に関するタスクを割り当てる移動体1を決定する。業務指示情報が複数の業務を示している場合には、業務管理部611は、業務指示情報が示す複数の業務に関する複数のタスクを夫々割り当てる複数の移動体1を決定する。
【0038】
その後、地図管理部612は、複数の移動体1が移動する搬送エリアTAの地図を示す移動マップMP上に、複数の電波強度測定装置3が測定した電波強度をマッピングする(ステップS13)。電波強度がマッピングされた移動マップMPの一例が図6に示されている。図6に示すように、電波強度は、移動マップMPを細分化することで得られる複数の単位領域DAの単位で、移動マップMPにマッピングされる。このため、移動マップMPは、複数の単位領域DAの夫々における電波強度を示す。移動マップMPは、搬送エリアTA内の複数の地点の夫々における電波強度を示す。図6に示す例では、「強」、「中」及び「弱」という3段階の強度レベルの電波強度がマッピングされている。但し、マッピングされる電波強度のレベルは、2段階以下であってもよいし、4段階以上であってもよい。また、図6に示す例では、移動マップMPは、マトリクス状に分布する複数の単位領域DAに細分化されているが、移動マップMPは、その他の態様で分布する複数の単位領域DAに細分化されていてもよい。
【0039】
移動マップMPは、搬送エリアTAに関する静的情報を含んでいてもよい。静的情報は、刻一刻と変わる可能性がない又は低い情報である。静的情報の一例として、搬送エリアTA内で移動体1が移動する際に順守するべきルールに関する情報があげられる。ルールに関する情報の一例として、移動体1が一時停止するべき地点に関する情報、移動体1の進行方向の制限(例えば、一方通行の制限)に関する情報及び移動体1が侵入するべきでない地点に関する情報のうちの少なくとも一つがあげられる。
【0040】
移動マップMPは、搬送エリアTAに関する動的情報を含んでいてもよい。動的情報は、刻一刻と変わる可能性がある又は高い情報である。動的情報の一例として、搬送エリアTA内に存在する人の位置に関する情報、搬送エリアTA内に存在する障害物の位置に関する情報及び搬送エリアTA内に存在する移動体1の位置に関する情報があげられる。尚、移動マップMPにマッピングされる電波強度に関する情報は、動的情報の一例であるとも言える。
【0041】
このような移動マップMPにより、搬送エリアTA内でのリアルタイムの電波強度が可視化される。つまり、このような移動マップMPにより、搬送エリアTAに形成される無線通信網NWのリアルタイムの通信品質が可視化される。
【0042】
その後、経路生成部613は、ステップS13で電波強度がマッピングされた移動マップMPに基づいて、搬送エリアTA内での各移動体1の目標移動経路TGTを生成する(ステップS14)。具体的には、経路生成部613は、搬送エリアTA内において、電波強度が所望強度未満となる単位領域DA(以降、“低強度領域DA1”と称する)を避けるように移動体1が移動可能になるという電波強度条件を満たす目標移動経路TGTを生成する。つまり、経路生成部613は、搬送エリアTA内において、低強度領域DA1を避けた目標移動経路TGTを生成する。言い換えれば、経路生成部613は、搬送エリアTA内において、電波強度が所望強度以上になる単位領域DA(以降、“高強度領域DA2”と称する)を通過するように移動体1が移動可能になるという電波強度条件を満たす目標移動経路TGTを生成する。つまり、経路生成部613は、搬送エリアTA内において、高強度領域DA2を通過する目標移動経路TGTを生成する。所望強度は、移動体1と制御サーバ6との間の通信が安定している状況下での電波強度と、移動体1と制御サーバ6との間の通信が不安定な状況下での電波強度とを区別可能な閾値に相当する。尚、低強度領域DA1は、「低品質領域」の一具体例である。
【0043】
経路生成部613は、既存の経路生成方法を用いて、目標移動経路TGTを生成してもよい。例えば、経路生成部613は、A*(A star)アルゴリズムに準拠した既存の経路生成方法を用いて、目標移動経路TGTを生成してもよい。この際、低強度領域DA1を避けた目標移動経路TGTを生成するために、経路生成部613は、低強度領域DA1のコストを高強度領域DA2のコストよりも高くし、且つ、目標移動経路TGTが通過する単位領域DAのコストの総和が小さくなるように(典型的には、最小になるように)、目標移動経路TGTを生成してもよい。
【0044】
電波強度条件を満たす目標移動経路TGTの一例が図7に示されている。図7は、経路生成部613は、座標(B、5)の単位領域DAに位置する移動体1が、座標(G、2)の単位領域DAに設定されている目的地に向かって移動開始するタイミングで生成される目標移動経路TGTを示している。尚、本実施形態では、説明の便宜上、紙面横方向の座標をアルファベットで表記し且つ紙面縦方向の座標を数字で表記する座標を用いて、単位領域DAの座標を示す。図7に示す例では、経路生成部613は、電波強度が「中レベル」又は「弱レベル」となる単位領域DAを避けながら移動体1が移動可能となる目標移動経路TGTを生成している。経路生成部613は、電波強度が「強レベル」となる単位領域DAを通過しながら移動体1が移動可能となる目標移動経路TGTを生成している。具体的には、経路生成部613は、座標(B、5)の単位領域DAから、座標(C、5)の単位領域DA、座標(D、5)の単位領域DA、座標(D、4)の単位領域DA、座標(D、3)の単位領域DA、座標(D、2)の単位領域DA、座標(E、2)の単位領域DA及び座標(F、2)の単位領域DAをこの順に経由して座標(G、2)の単位領域DAに到達する目標移動経路TGTを設定している。従って、この場合には、電波強度条件は、電波強度が「中レベル」又は「弱レベル」となる単位領域DAを避けて移動体1が移動可能になるという条件を含む。電波強度条件は、電波強度が「強レベル」となる単位領域DAを通過して移動体1が移動可能になるという条件を含む。つまり、この場合には、電波強度が「中レベル」又は「弱レベル」となる単位領域DAが低強度領域DA1となり、電波強度が「強レベル」となる単位領域DAが高強度領域DA2となる。
【0045】
尚、経路生成部613は、電波強度条件を自由に設定可能であってもよい。但し、経路生成部613は、移動体1と制御サーバ6とが適切に通信しながら移動体1が移動可能になる状態を実現するように、電波強度条件を設定することが好ましい。
【0046】
電波強度が強くなるほど、複数の無線アクセスポイント2が形成する無線通信網NWの通信品質が良くなることは上述した通りである。このため、低強度領域DA1を避けるように移動体1が移動可能になるという電波強度条件は、実質的には、通信品質が所望品質に満たない単位領域DAを避けるように移動体1が移動可能になるという条件と等価であるとみなしてもよい。
【0047】
目標移動経路TGTを生成する際に、経路生成部613は、複数の移動体1が夫々備える複数の検出装置13の検出結果と、複数の検出装置4の検出結果との少なくとも一つを参照してもよい。具体的には、複数の検出装置13及び複数の検出装置4の夫々の検出結果は、搬送エリアTA内の物体に関する情報を含んでいる。経路生成部613は、上述した電波強度条件に加えて、搬送エリアTA内において、複数の検出装置13及び複数の検出装置4の少なくとも一つによって検出された物体を避けるように移動体1が移動可能になるという衝突回避条件を満たす目標移動経路TGTを生成してもよい。
【0048】
衝突回避条件を満たす目標移動経路TGTを生成する際には、経路生成部613は、複数の移動体1を対象に夫々生成される複数の目標移動経路TGTを参照してもよい。具体的には、経路生成部613は、複数の移動体1の目標移動経路TGTが搬送エリアTA内で交差しないように、目標移動経路TGTを生成してもよい。なぜならば、複数の移動体1の目標移動経路TGTが搬送エリアTA内で交差しなければ、複数の移動体1のうちの少なくとも二つが衝突することがないからである。或いは、経路生成部613は、複数の移動体1のうちの少なくとも二つの移動体1が、同じ時刻に同じ単位領域DA(つまり、同じ地点)に存在しないように、目標移動経路TGTを生成してもよい。この場合も、複数の移動体1のうちの少なくとも二つが衝突することがなくなる。
【0049】
その後、経路生成部613は、電波強度条件(更には、必要に応じて、衝突回避条件)を満たす目標移動経路TGTを生成することができたか否かを判定する(ステップS15)。
【0050】
ステップS15における判定の結果、電波強度条件を満たす目標移動経路TGTを生成することができたと判定された場合には(ステップS15:Yes)、移動体制御部614は、ステップS14で生成した目標移動経路TGTに沿って移動体1が移動するように、無線通信網NWを介して移動体1を制御する(ステップS16)。その結果、移動体1が移動開始する。
【0051】
他方で、ステップS15における判定の結果、電波強度条件を満たす目標移動経路TGTを生成することができなかったと判定された場合には(ステップS15:No)、移動体1が移動を開始した後に、低強度領域DA1を移動体1が通過する可能性がある。従って、移動体1と制御サーバ6との間の通信が不安定になる可能性がある。この場合には、制御サーバ6は、ステップS13以降の動作を繰り返すことで、電波強度条件を満たす目標移動経路TGTを生成する。
【0052】
(2-2)第2の移動体制御動作(移動体1の移動開始後)
続いて、図8を参照しながら各移動体1が搬送エリアTA内で移動開始した後に行われる第2の移動体制御動作について説明する。図8は、各移動体1が搬送エリアTA内で移動開始した後に行われる第2の移動体制御動作の流れを示すフローチャートである。尚、制御サーバ6は、複数の移動体1の夫々に対して、第2の移動体制御動作を個別に(言い換えれば、並行して)行う。
【0053】
図8に示すように、地図管理部612は、各電波強度測定装置3から、各電波強度測定装置3による電波強度の新たな測定結果を受信したか否かを判定する(ステップS21)。
【0054】
ステップS21における判定の結果、各電波強度測定装置3による電波強度の新たな測定結果を受信していないと判定された場合には(ステップS21:No)、移動体制御部614は、生成済みの目標移動経路TGTに沿って移動体1が移動するように、無線通信網NWを介して移動体1を制御する(ステップS28)。
【0055】
他方で、ステップS21における判定の結果、各電波強度測定装置3による電波強度の新たな測定結果を受信したと判定された場合には(ステップS21:Yes)、地図管理部612は、移動マップMP上に、各電波強度測定装置3が新たに測定した電波強度をマッピングする(ステップS22)。つまり、地図管理部612は、各電波強度測定装置3による電波強度の新たな測定結果を用いて、移動マップMPを更新する。従って、本実施形態では、移動マップMPには、最新の電波強度がリアルタイムに反映されると言える。
【0056】
移動マップMPが更新されると、生成済みの目標移動経路TGTに沿って移動している移動体1が低強度領域DA1を通過する可能性が出てきてしまう。なぜならば、移動マップMPを更新する前は電波強度が所望強度以上となる単位領域DAが、移動マップMPの更新に起因して、電波強度が所望強度未満となる単位領域DAに変わる可能性があるからである。そこで、経路生成部613は、生成済みの目標移動経路TGT(つまり、移動体1が現在移動している目標移動経路TGT)上に低強度領域DA1が存在するか否かを判定する(ステップS23)。
【0057】
ステップS23における判定の結果、生成済みの目標移動経路TGT上に低強度領域DA1が存在しないと判定された場合には(ステップS23:No)、生成済みの目標移動経路TGTに沿って移動している移動体1が低強度領域DA1を通過することはない。このため、この場合には、移動体制御部614は、生成済みの目標移動経路TGTに沿って移動体1が移動するように、無線通信網NWを介して移動体1を制御する(ステップS28)。
【0058】
他方で、ステップS23における判定の結果、生成済みの目標移動経路TGT上に低強度領域DA1が存在すると判定された場合には(ステップS24)、経路生成部613は、ステップS22で更新された移動マップMPに基づいて、目標移動経路TGTを再生成する(ステップS24)。尚、ステップS24の動作は、ステップS14の動作と同一であってもよい。つまり、経路生成部613は、低強度領域DA1を避けるように移動体1が移動可能になるという電波強度条件を満たす目標移動経路TGTを再生成する。更に、経路生成部613は、衝突回避条件を満たす目標移動経路TGTを再生成してもよい。
【0059】
ステップS24において再生成される目標移動経路TGTの一例が図9(a)から図9(c)に示されている。図9(a)は、移動マップMPが更新される前に生成された目標移動経路TGTを、更新前の移動マップMP上で示している。図9(b)は、移動マップMPが更新される前に生成された目標移動経路TGTを、更新後の移動マップMP上で示している。図9(a)及び図9(b)に示すように、移動マップMPの更新に起因して、移動マップMPが更新される前に生成された目標移動経路TGTが通過する座標(F、5)の単位領域DA、座標(G、5)の単位領域DA及び座標(G、4)の単位領域DAの夫々が、低強度領域DA1に変わってしまっている。この場合、経路生成部613は、図9(c)に示すように、座標(F、5)の単位領域DA、座標(G、5)の単位領域DA及び座標(G、4)の単位領域DAを避けた新たな目標移動経路TGTを生成する。
【0060】
その後、経路生成部613は、ステップS24において電波強度条件(更には、必要に応じて、衝突回避条件)を満たす目標移動経路TGTを生成することができたか否かを判定する(ステップS25)。
【0061】
ステップS25における判定の結果、電波強度条件を満たす目標移動経路TGTを生成することができたと判定された場合には(ステップS25:Yes)、移動体制御部614は、ステップS24で再生成した目標移動経路TGTに沿って移動体1が移動するように、無線通信網NWを介して移動体1を制御する(ステップS28)。
【0062】
他方で、ステップS25における判定の結果、電波強度条件を満たす目標移動経路TGTを生成することができなかったと判定された場合には(ステップS25:No)、続いて、経路生成部613は、複数の無線アクセスポイント2のうちの少なくとも一つが、移動体1との間でビームフォーミングを行うことができるか否かを判定する(ステップS26)。特に、経路生成部613は、目標移動経路TGT上に存在する低強度領域DA1が通信セル内に位置している少なくとも一つ無線アクセスポイント2が、低強度領域DA1を通過する移動体1との間でビームフォーミングを行うことができるか否かを判定する。
【0063】
ステップS26における判定の結果、少なくとも一つの無線アクセスポイント2が移動体1との間でビームフォーミングを行うことができると判定された場合には(ステップS26:Yes)、経路生成部613は、電波強度条件を満たさない目標移動経路TGT(つまり、低強度領域DA1を通過する目標移動経路TGT)を生成する(ステップS27)。この際、移動体制御部614は更に、目標移動経路TGT上に存在する低強度領域DA1が通信セル内に位置している少なくとも一つ無線アクセスポイント2が、低強度領域DA1を通過する移動体1との間でビームフォーミングを行うように、当該無線アクセスポイント2を制御する(ステップS27)。その後、移動体制御部614は、ステップS27で生成した目標移動経路TGTに沿って移動体1が移動するように、無線通信網NWを介して移動体1を制御する(ステップS28)。その結果、仮に低強度領域DA1を移動体1が通過したとしても、無線通信網NWを介した移動体1と制御サーバ6との間の通信は、ビームフォーミングによって確保される。つまり、仮に低強度領域DA1を移動体1が通過したとしても、移動体1と制御サーバ6との間の通信が不安定になる可能性は相対的に低い。
【0064】
ビームフォーミングを行う無線アクセスポイント2の一例が図10(a)から図10(c)に示されている。図10(a)は、移動マップMPが更新される前に生成された目標移動経路TGTを、更新前の移動マップMP上で示している。図10(b)は、移動マップMPが更新される前に生成された目標移動経路TGTを、更新後の移動マップMP上で示している。図10(a)及び図10(b)に示すように、移動マップMPの更新に起因して、移動マップMPが更新される前に生成された目標移動経路TGTが通過する座標(F、5)の単位領域DA、座標(G、5)の単位領域DA及び座標(G、4)の単位領域DAの夫々が、低強度領域DA1に変わってしまっている。更に、図10(b)に示すように、移動マップMPが更新された後には、低強度領域DA1を避け且つ他の移動体1を避ける目標移動経路TGTを生成することができない。そこで、この場合には、図10(c)に示すように、移動体制御部614は、座標(F、5)の低強度領域DA1、座標(G、5)の低強度領域DA1及び座標(G、4)の低強度領域DA1を移動体1が通過することを許容する。更に、図10(c)に示すように、移動体制御部614は、座標(F、5)の低強度領域DA1、座標(G、5)の低強度領域DA1及び座標(G、4)の低強度領域DA1が通信セル内に位置している無線アクセスポイント2に、座標(F、5)の低強度領域DA1、座標(G、5)の低強度領域DA1及び座標(G、4)の低強度領域DA1を通過する移動体1との間でビームフォーミングを行わせる。
【0065】
他方で、ステップS26における判定の結果、少なくとも一つの無線アクセスポイント2が移動体1との間でビームフォーミングを行うことができないと判定された場合には(ステップS26:No)、低強度領域DA1を移動体1が通過した時点で、移動体1と制御サーバ6との間の通信が不安定になる可能性がある。この場合には、制御サーバ6は、ステップS23以降の動作を繰り返すことで、電波強度条件を満たす目標移動経路TGTを生成する。
【0066】
以上の動作が、移動体1が目的地に到着するまで繰り返される(ステップS29)。
【0067】
(3)移動体制御システムSYSの技術的効果
以上説明したように、本実施形態の移動体制御システムSYS(特に、制御サーバ6)は、リアルタイムに更新される電波強度がマッピングされた移動マップMPに基づいて、低強度領域DA1を避けた目標移動経路TGTを生成することができる。このため、移動体1が移動開始した後に、移動体1が低強度領域DA1を通過する可能性は相対的に低い。従って、移動体1と制御サーバ6との間の通信が不安定になる可能性は相対的に低い。このため、移動体1は、制御サーバ6の制御下で、搬送エリアTA内を適切に移動することができる。
【0068】
制御サーバ6は、低強度領域DA1に移動体1が到達する前に、低強度領域DA1を避けながら移動体1が移動可能となる目標移動経路TGTを生成することができる。この場合、移動体1が移動開始した後に、移動体1が低強度領域DA1を通過する可能性はより低くなる。従って、移動体1と制御サーバ6との間の通信が不安定になる可能性はより低くなる。このため、移動体1は、制御サーバ6の制御下で、搬送エリアTA内をより適切に移動することができる。
【0069】
制御サーバ6は、低強度領域DA1を避けた目標移動経路TGTを生成することができない場合には、低強度領域DA1を通過する目標移動経路TGTに沿って移動体1が移動することを許容しながら、無線アクセスポイント2によるビームフォーミングを用いて移動体1と制御サーバ6との間の通信が不安定になることを抑制している。このため、移動体1と制御サーバ6との間の通信が不安定になることを抑制しつつ、移動体1が搬送エリアTAを移動する機会を最大限確保することができる。尚、上述した説明では、第2の移動体制御動作において低強度領域DA1を避けた目標移動経路TGTを生成することができないと判定された場合に、ビームフォーミングが行われる。しかしながら、第1の移動体制御動作において低強度領域DA1を避けた目標移動経路TGTを生成することができないと判定された場合においても、ビームフォーミングが行われてもよい。
【0070】
制御サーバ6は、複数の移動体1の夫々に対して、移動体制御動作を個別に(言い換えれば、並行して)行うことができる。従って、移動体制御システムSYSが複数の移動体1を備えている場合であっても、複数の移動体1が適切に移動することができる。
【0071】
(4)変形例
上述した説明では、移動体制御システムSYSは、複数の電波強度測定装置3を備えている。しかしながら、移動体制御システムSYSは、複数の電波強度測定装置3の少なくとも一つに加えて又は代えて、搬送エリアTA内で複数の無線アクセスポイント2が形成する無線通信網NWの通信品質を測定可能な少なくとも一つの通信品質測定装置を備えていてもよい。通信品質測定装置は、例えば、無線信号のS/N比を測定可能であってもよい。この場合、制御サーバ6は、電波強度測定装置3の測定結果に加えて又は代えて、通信品質測定装置の測定結果を用いて上述した移動体制御動作を行ってもよい。
【0072】
上述した説明では、移動体制御システムSYSは、複数の検出装置4を備えている。しかしながら、変形例における移動体制御システムSYSaの構成を示す図11に示すように、移動体制御システムSYSaは、検出装置4を備えていなくてもよい。また、上述した説明では、移動体制御システムSYSは、業務サーバ5を備えている。しかしながら、変形例における移動体制御システムSYSaの構成を示す図11に示すように、移動体制御システムSYSaは、業務サーバ5を備えていなくてもよい。この場合、業務サーバ5が行う動作は、制御サーバ6によって行われてもよい。
【0073】
上述した説明では、制御サーバ6は、業務管理部611と、地図管理部612と、経路生成部613と、移動体制御部614とを備えている、しかしながら、変形例における制御サーバ6aの構成を示す図12に示すように、制御サーバ6aは、業務管理部611及び地図管理部612の少なくとも一方を備えていなくてもよい。この場合、業務管理部611及び地図管理部612の少なくとも一方が行う動作は、経路生成部613によって代替されてもよい。或いは、経路生成部613は、電波強度がマッピングされた移動マップMPに加えて又は代えて、複数の電波強度測定装置3の測定結果に基づいて、目標移動経路TGTを生成してもよい。
【0074】
(5)付記
上述した実施形態に加えて、以下の付記を記載する。
[付記1]
無線通信網が形成された所定領域内を移動可能な移動体と、
前記無線通信網を介して前記移動体を制御する制御装置と、
前記所定領域内での前記無線通信網の通信品質を測定可能な測定装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記測定装置の測定結果に基づいて、前記所定領域内において前記通信品質が所望品質に満たない低品質領域を避けた第1経路を、前記移動体の目標移動経路として生成する生成手段と、
前記目標移動経路に沿って前記移動体が移動するように前記移動体を制御する制御手段と
を備える移動体制御システム。
[付記2]
前記移動体を複数備え、
前記生成手段は、各移動体の前記目標移動経路として、前記低品質領域と前記複数の移動体のうちの各移動体とは異なる他の移動体とを避ける前記第1経路を生成し、
前記制御手段は、各移動体の前記目標移動経路に沿って各移動体が移動するように前記複数の移動体を制御する
付記1に記載の移動体制御システム。
[付記3]
前記生成手段は、前記移動体が前記低品質領域に到達する前に、前記第1経路を前記目標移動経路として予め生成する
付記1又は2に記載の移動体制御システム。
[付記4]
前記移動体は、前記無線通信網が形成するように前記所定領域に配置された無線アクセスポイントを介して前記制御装置と通信可能であり、
前記生成手段は、前記第1経路を生成することができない場合には、前記低品質領域を経由する第2経路を前記目標移動経路として生成し、
前記制御手段は、前記第2経路が前記目標移動経路として生成された場合には、前記低品質領域を通過する前記移動体に対してビームフォーミングを行うように前記無線アクセスポイントを制御する
付記1から3のいずれか一項に記載の移動体制御システム。
[付記5]
前記移動体を複数備え、
前記生成手段は、前記複数の移動体のうちの一の移動体の前記目標移動経路としての前記第1経路を生成することができない場合には、前記低品質領域を経由し且つ前記複数の移動体のうちの他の移動体を避ける前記第2経路を、前記一の移動体の前記目標移動経路として生成し、
前記制御手段は、前記第2経路が前記目標移動経路として生成された場合には、前記低品質領域を通過する前記一の移動体に対してビームフォーミングを行うように前記無線アクセスポイントを制御する
付記4に記載の移動体制御システム。
[付記6]
無線通信網が形成された所定領域内を移動可能な移動体を、前記無線通信網を介して制御する制御装置であって、
前記所定領域内での前記無線通信網の通信品質の測定結果に基づいて、前記所定領域内において前記通信品質が所望品質に満たない低品質領域を避ける第1経路を、前記移動体の目標移動経路として生成する生成手段と、
前記目標移動経路に沿って前記移動体が移動するように前記移動体を制御する制御手段と
を備える制御装置。
[付記7]
無線通信網が形成された所定領域内を移動可能な移動体を、前記無線通信網を介して制御する制御方法であって、
前記所定領域内での前記無線通信網の通信品質の測定結果に基づいて、前記所定領域内において前記通信品質が所望品質に満たない低品質領域を避ける第1経路を、前記移動体の目標移動経路として生成し、
前記目標移動経路に沿って前記移動体が移動するように前記移動体を制御する
制御方法。
[付記8]
コンピュータに制御方法を実行させるためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体であって、
前記制御方法は、
無線通信網が形成された所定領域内を移動可能な移動体を、前記無線通信網を介して制御する制御方法であって、
前記所定領域内での前記無線通信網の通信品質の測定結果に基づいて、前記所定領域内において前記通信品質が所望品質に満たない低品質領域を避ける第1経路を、前記移動体の目標移動経路として生成し、
前記目標移動経路に沿って前記移動体が移動するように前記移動体を制御する
記録媒体。
[付記8]
コンピュータに制御方法を実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記制御方法は、
無線通信網が形成された所定領域内を移動可能な移動体を、前記無線通信網を介して制御する制御方法であって、
前記所定領域内での前記無線通信網の通信品質の測定結果に基づいて、前記所定領域内において前記通信品質が所望品質に満たない低品質領域を避ける第1経路を、前記移動体の目標移動経路として生成し、
前記目標移動経路に沿って前記移動体が移動するように前記移動体を制御する
コンピュータプログラム。
【0075】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う移動体制御システム、制御装置、制御方法及び記録媒体もまた本発明の技術思想に含まれる。
【0076】
法令で許容される限りにおいて、この出願は、2020年3月17日に出願された日本出願特願2020-046675を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。また、法令で許容される限りにおいて、本願明細書に記載された全ての公開公報及び論文をここに取り込む。
【符号の説明】
【0077】
SYS 移動体制御システム
1 移動体
2 無線アクセスポイント
3 電波強度測定装置
4 検出装置
5 業務サーバ
6 制御サーバ
61 CPU
611 業務管理部
612 地図管理部
613 経路生成部
614 移動体制御部
MP 移動マップ
DA 単位領域
DA1 低強度領域
DA2 高強度領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12