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特許7435746匂い検出システム、匂い検出方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】匂い検出システム、匂い検出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/02 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G01N5/02 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022511702
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2021008470
(87)【国際公開番号】W WO2021199893
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020067098
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健治
(72)【発明者】
【氏名】和田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】武田 聖平
(72)【発明者】
【氏名】潮 昇平
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-048930(JP,A)
【文献】特開2007-309752(JP,A)
【文献】特開2005-241642(JP,A)
【文献】特開2006-317254(JP,A)
【文献】特開2003-315298(JP,A)
【文献】特開2005-291715(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109975488(CN,A)
【文献】特開2009-204584(JP,A)
【文献】国際公開第2002/023134(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3540420(EP,A1)
【文献】V. V. Krylov,Odor Space Navigation Using Multisensory E-Nose,Automation and Remote Control,2018年,Vol.79, No.1,pp.167-179,DOI: 10.1134/S0005117918010149
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の匂いを構成する物質に反応する感応膜を前記物質毎に有し、前記感応膜の反応値を検出する物質センサと、
前記物質センサで検出された前記感応膜の反応値の組み合わせで構成される反応値のパターンと、匂いに対応する物質の反応値の組み合わせで構成される参照用パターンとを比較して、前記気体の匂いを特定する匂い特定部と、
前記物質センサで検出された前記感応膜の反応値に基づいて、前記匂い特定部で特定された前記匂い毎の反応値を算出する反応値算出部と、
前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値の合計に対する、前記匂い特定部で特定された前記匂い毎の反応値の割合を算出する割合算出部と、
前記割合算出部で算出された前記匂い毎の反応値の割合を、前記匂い特定部で特定された前記匂いの間で比較可能に表示する表示部と、
を備える匂い検出システム。
【請求項2】
前記表示部は、
前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値を、前記匂い特定部で特定された前記匂いの間で比較可能に表示する、
請求項1に記載の匂い検出システム。
【請求項3】
前記表示部は、
前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値と、前記割合算出部で算出された前記匂い毎の反応値の割合とを、比較可能に表示する、
請求項1又は2に記載の匂い検出システム。
【請求項4】
前記物質センサで検出された前記感応膜の反応値を、検出時に対応させて記憶する記憶部を備え、
前記表示部は、
前記記憶部に記憶された前記感応膜の反応値に基づいて、前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値と、前記割合算出部で算出された前記匂い毎の反応値の割合との少なくとも1つを、異なる検出時点の間で比較可能に表示する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の匂い検出システム。
【請求項5】
記感応膜の周囲の環境条件に応じて定められた前記感応膜毎の係数で、前記物質センサで検出された前記感応膜の反応値を前記感応膜毎に補正する係数補正部と、
前記係数補正部で補正された前記感応膜の反応値に基づいて、前記気体の匂いを特定する匂い特定部と、
を備える
請求項1に記載の匂い検出システム。
【請求項6】
前記係数補正部で補正された前記感応膜の反応値に基づいて、前記匂い特定部で特定された前記匂い毎の反応値を算出する反応値算出部を備え、
前記表示部は、
前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値を、前記匂い特定部で特定された前記匂いの間で比較可能に表示する、
求項5に記載の匂い検出システム。
【請求項7】
前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値の合計に対する、前記匂い特定部で特定された前記匂い毎の反応値の割合を算出する割合算出部を備え、
前記表示部は、
前記割合算出部で算出された前記匂い毎の反応値の割合を、前記匂い特定部で特定された前記匂いの間で比較可能に表示する、
請求項6に記載の匂い検出システム。
【請求項8】
前記表示部は、
前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値と、前記割合算出部で算出された前記匂い毎の反応値の割合とを、比較可能に表示する、
請求項7に記載の匂い検出システム。
【請求項9】
前記物質センサで検出された前記感応膜の反応値を、検出時に対応させて記憶する記憶部を備え、
前記表示部は、
前記記憶部に記憶された前記感応膜の反応値に基づいて、前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値と、前記割合算出部で算出された前記匂い毎の反応値の割合との少なくとも1つを、異なる検出時点の間で比較可能に表示する、
請求項7又は8に記載の匂い検出システム。
【請求項10】
前記環境条件を検出する環境センサを備え、
前記係数補正部は、
前記環境センサで検出された前記環境条件に応じて定められた前記感応膜毎の係数で、前記物質センサで検出された前記感応膜の反応値を前記感応膜毎に補正する、
請求項5から9のいずれか一項に記載の匂い検出システム。
【請求項11】
前記環境条件には、湿度、温度、気圧のうちの、少なくとも1つが含まれる、
請求項5から10のいずれか一項に記載の匂い検出システム。
【請求項12】
気体の匂いを検出する匂い検出システムによって実行される匂い検出方法であって、
前記気体の匂いを構成する物質に反応する感応膜を前記物質毎に有する物質センサで検出された前記感応膜の反応値の組み合わせで構成される反応値のパターンと、匂いに対応する物質の反応値の組み合わせで構成される参照用パターンとを比較して、前記気体の匂いを特定する匂い特定ステップと、
前記物質センサで検出された前記感応膜の反応値に基づいて、前記匂い特定ステップで特定された前記匂い毎の反応値を算出する反応値算出ステップと、
前記反応値算出ステップで算出された前記匂い毎の反応値の合計に対する、前記匂い特定ステップで特定された前記匂い毎の反応値の割合を算出する割合算出ステップと、
前記割合算出ステップで算出された前記匂い毎の反応値の割合を、前記匂い特定ステップで特定された前記匂いの間で比較可能に表示する表示ステップと、
を含む匂い検出方法。
【請求項13】
記気体の匂いを構成する物質に反応する感応膜を前記物質毎に有する物質センサで検出された前記感応膜の反応値を、前記感応膜の周囲の環境条件に応じて定められた前記感応膜毎の係数で、前記感応膜毎に補正する係数補正ステップと、
前記係数補正ステップで補正された前記感応膜の反応値に基づいて、前記気体の匂いを特定する匂い特定ステップと、
前記係数補正ステップで補正された前記感応膜の反応値に基づいて、前記匂い特定ステップで特定された前記匂い毎の反応値を算出する反応値算出ステップと、を含み、
前記表示ステップでは、前記反応値算出ステップで算出された前記匂い毎の反応値を、前記匂い特定ステップで特定された前記匂いの間で比較可能に表示する、
請求項12に記載の匂い検出方法。
【請求項14】
コンピュータを、
気体の匂いを構成する物質に反応する感応膜を前記物質毎に有する物質センサで検出された前記感応膜の反応値に基づいて、前記気体の匂いを特定する匂い特定部、
前記物質センサで検出された前記感応膜の反応値の組み合わせで構成される反応値のパターンと、匂いに対応する物質の反応値の組み合わせで構成される参照用パターンとを比較して、前記匂い特定部で特定された前記匂い毎の反応値を算出する反応値算出部、
前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値の合計に対する、前記匂い特定部で特定された前記匂い毎の反応値の割合を算出する割合算出部、
前記割合算出部で算出された前記匂い毎の反応値の割合を、前記匂い特定部で特定された前記匂いの間で比較可能に表示する表示部、
として機能させるプログラム。
【請求項15】
体の匂いを構成する物質に反応する感応膜を前記物質毎に有する物質センサで検出された前記感応膜の反応値を、前記感応膜の周囲の環境条件に応じて定められた前記感応膜毎の係数で、前記感応膜毎に補正する係数補正部、
前記係数補正部で補正された前記感応膜の反応値に基づいて、前記気体の匂いを特定する匂い特定部、
前記係数補正部で補正された前記感応膜の反応値に基づいて、前記匂い特定部で特定された前記匂い毎の反応値を算出する反応値算出部、として機能させ、
前記表示部は、
前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値を、前記匂い特定部で特定された前記匂いの間で比較可能に表示する、
請求項14に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、匂い検出システム、匂い検出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、感応膜に対して物質が吸着又は脱離した時に生じる共振周波数の変化量に基づいて、物質を検出する化学センサデバイスが開示されている。この化学センサデバイスは、それぞれが異なる物質に対して脱吸着特性を示す感応膜が設けられた複数の振動子を備えている。各振動子は、圧電基板を備えており、交流電圧が印加されて圧電基板が変形することで加振される。感応膜に対して物質が吸着又は脱離すれば、各振動子の共振周波数が変化する。これにより、物質の検出が可能になる。
【0003】
この化学センサデバイスによれば、複数の物質から構成される匂いを検出することが可能である。各感応膜の反応値のパターン、すなわち匂いを構成する複数の物質の構成比に基づいて、気体の匂いが特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-204584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の化学センサデバイスは、検出時の状況の違いにより、物質の構成比が同じである気体であっても、匂いの検出結果にばらつきが生じるという不都合があった。これは、例えば、測定回数又は湿度等の環境条件に応じて感応膜の感度が変化するためである。
【0006】
本発明は、上記実情の下になされたものであり、匂いの検出結果のばらつきを低減することができる匂い検出システム、匂い検出方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る匂い検出システムは、
気体の匂いを構成する物質に反応する感応膜を前記物質毎に有し、前記感応膜の反応値を検出する物質センサと、
前記物質センサで検出された前記感応膜の反応値の組み合わせで構成される反応値のパターンと、匂いに対応する物質の反応値の組み合わせで構成される参照用パターンとを比較して、前記気体の匂いを特定する匂い特定部と、
前記物質センサで検出された前記感応膜の反応値に基づいて、前記匂い特定部で特定された前記匂い毎の反応値を算出する反応値算出部と、
前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値の合計に対する、前記匂い特定部で特定された前記匂い毎の反応値の割合を算出する割合算出部と、
前記割合算出部で算出された前記匂い毎の反応値の割合を、前記匂い特定部で特定された前記匂いの間で比較可能に表示する表示部と、
を備える。
【0008】
この場合、前記表示部は、
前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値を、前記匂い特定部で特定された前記匂いの間で比較可能に表示する、
こととしてもよい。
【0009】
前記表示部は、
前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値と、前記割合算出部で算出された前記匂い毎の反応値の割合とを、比較可能に表示する、
こととしてもよい。
【0010】
前記物質センサで検出された前記感応膜の反応値を、検出時に対応させて記憶する記憶部を備え、
前記表示部は、
前記記憶部に記憶された前記感応膜の反応値に基づいて、前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値と、前記割合算出部で算出された前記匂い毎の反応値の割合との少なくとも1つを、異なる検出時点の間で比較可能に表示する、
こととしてもよい。
【0011】
記感応膜の周囲の環境条件に応じて定められた前記感応膜毎の係数で、前記物質センサで検出された前記感応膜の反応値を前記感応膜毎に補正する係数補正部と、
前記係数補正部で補正された前記感応膜の反応値に基づいて、前記気体の匂いを特定する匂い特定部と、
を備える
こととしてもよい。
【0012】
記係数補正部で補正された前記感応膜の反応値に基づいて、前記匂い特定部で特定された前記匂い毎の反応値を算出する反応値算出部を備え、
前記表示部は、
前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値を、前記匂い特定部で特定された前記匂いの間で比較可能に表示する、
こととしてもよい。
【0013】
また、前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値の合計に対する、前記匂い特定部で特定された前記匂い毎の反応値の割合を算出する割合算出部を備え、
前記表示部は、
前記割合算出部で算出された前記匂い毎の反応値の割合を、前記匂い特定部で特定された前記匂いの間で比較可能に表示する、
こととしてもよい。
【0014】
前記表示部は、
前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値と、前記割合算出部で算出された前記匂い毎の反応値の割合とを、比較可能に表示する、
こととしてもよい。
【0015】
前記物質センサで検出された前記感応膜の反応値を、検出時に対応させて記憶する記憶部を備え、
前記表示部は、
前記記憶部に記憶された前記感応膜の反応値に基づいて、前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値と、前記割合算出部で算出された前記匂い毎の反応値の割合との少なくとも1つを、異なる検出時点の間で比較可能に表示する、
こととしてもよい。
【0016】
前記環境条件を検出する環境センサを備え、
前記係数補正部は、
前記環境センサで検出された前記環境条件に応じて定められた前記感応膜毎の係数で、前記物質センサで検出された前記感応膜の反応値を前記感応膜毎に補正する、
こととしてもよい。
【0017】
前記環境条件には、湿度、温度、気圧のうちの、少なくとも1つが含まれる、
こととしてもよい。
【0018】
本発明の第の観点に係る匂い検出方法は、
気体の匂いを検出する匂い検出システムによって実行される匂い検出方法であって、
前記気体の匂いを構成する物質に反応する感応膜を前記物質毎に有する物質センサで検出された前記感応膜の反応値の組み合わせで構成される反応値のパターンと、匂いに対応する物質の反応値の組み合わせで構成される参照用パターンとを比較して、前記気体の匂いを特定する匂い特定ステップと、
前記物質センサで検出された前記感応膜の反応値に基づいて、前記匂い特定ステップで特定された前記匂い毎の反応値を算出する反応値算出ステップと、
前記反応値算出ステップで算出された前記匂い毎の反応値の合計に対する、前記匂い特定ステップで特定された前記匂い毎の反応値の割合を算出する割合算出ステップと、
前記割合算出ステップで算出された前記匂い毎の反応値の割合を、前記匂い特定ステップで特定された前記匂いの間で比較可能に表示する表示ステップと、
を含む。
【0019】
記気体の匂いを構成する物質に反応する感応膜を前記物質毎に有する物質センサで検出された前記感応膜の反応値を、前記感応膜の周囲の環境条件に応じて定められた前記感応膜毎の係数で、前記感応膜毎に補正する係数補正ステップと、
前記係数補正ステップで補正された前記感応膜の反応値に基づいて、前記気体の匂いを特定する匂い特定ステップと、
前記係数補正ステップで補正された前記感応膜の反応値に基づいて、前記匂い特定ステップで特定された前記匂い毎の反応値を算出する反応値算出ステップと、を含み、
前記表示ステップでは、前記反応値算出ステップで算出された前記匂い毎の反応値を、前記匂い特定ステップで特定された前記匂いの間で比較可能に表示する、
こととしてもよい。
【0020】
本発明の第の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
気体の匂いを構成する物質に反応する感応膜を前記物質毎に有する物質センサで検出された前記感応膜の反応値に基づいて、前記気体の匂いを特定する匂い特定部、
前記物質センサで検出された前記感応膜の反応値の組み合わせで構成される反応値のパターンと、匂いに対応する物質の反応値の組み合わせで構成される参照用パターンとを比較して、前記匂い特定部で特定された前記匂い毎の反応値を算出する反応値算出部、
前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値の合計に対する、前記匂い特定部で特定された前記匂い毎の反応値の割合を算出する割合算出部、
前記割合算出部で算出された前記匂い毎の反応値の割合を、前記匂い特定部で特定された前記匂いの間で比較可能に表示する表示部、
として機能させる。
【0021】
体の匂いを構成する物質に反応する感応膜を前記物質毎に有する物質センサで検出された前記感応膜の反応値を、前記感応膜の周囲の環境条件に応じて定められた前記感応膜毎の係数で、前記感応膜毎に補正する係数補正部、
前記係数補正部で補正された前記感応膜の反応値に基づいて、前記気体の匂いを特定する匂い特定部、
前記係数補正部で補正された前記感応膜の反応値に基づいて、前記匂い特定部で特定された前記匂い毎の反応値を算出する反応値算出部、として機能させ、
前記表示部は、
前記反応値算出部で算出された前記匂い毎の反応値を、前記匂い特定部で特定された前記匂いの間で比較可能に表示する、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、測定回数又は環境条件に関わらず、匂いの検出結果のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態1に係る匂い検出システムの構成を示すブロック図である。
図2図1の匂い検出システムを構成する物質センサで検出された感応膜の反応値のパターンの一例を示す図である。
図3】感応膜の反応値を匂い毎にまとめて表示する棒グラフの一例を示す図である。
図4】特定された匂い毎の反応値を匂い間で比較して表示する棒グラフの一例を示す図である。
図5】特定された匂いの反応値の割合を匂い間で比較して表示する棒グラフの一例を示す図である。
図6A】1回目の測定結果と2回目の測定結果とを絶対量で比較して表示する棒グラフの一例を示す図である。
図6B】1回目の測定結果と2回目の測定結果とを百分率で比較して表示する棒グラフの一例を示す図である。
図7図1の匂い検出システムを構成する情報処理装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
図8図1の匂い検出システムにおける検出処理を示すフローチャートである。
図9図1の匂い検出システムにおける解析表示処理を示すフローチャートである。
図10A】解析可能なデータの一例を示すグラフである。
図10B】解析可能なデータの一例を示すグラフである。
図11A】解析可能なデータの他の例を示すグラフである。
図11B】解析可能なデータの他の例を示すグラフである。
図12】本発明の実施の形態2に係る匂い検出システムの構成を示すブロック図である。
図13】湿度が異なる場合の匂い毎の反応値と、補正前後の反応値とを比較して示す図である。
図14】湿度と感応膜の係数との関係を示すグラフである。
図15図12の匂い検出システムにおける検出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0025】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1について説明する。図1に示すように、匂い検出システム1は、物質センサ10と、情報処理装置20と、を備える。この匂い検出システム1は、気体の匂いを構成する複数の物質a~jを検出する。
【0026】
物質センサ10は、それぞれが物質a~jに反応する感応膜11を物質a~j毎に有する。以下では、各感応膜11を、それぞれが反応する物質a~jに対応させて感応膜a~jとも呼ぶ。物質センサ10は、感応膜a~jの反応値を検出し、検出した反応値を示す信号を出力する。
【0027】
情報処理装置20は、気体の匂いを検出するための情報処理を行う。情報処理装置20は、記憶部21と、匂い特定部22と、反応値算出部23と、割合算出部24と、表示部25と、を備える。
【0028】
記憶部21は、物質センサ10で検出された感応膜a~jの反応値を、検出される度に検出時に対応させて記憶する。記憶部21は、例えば、物質センサ10から出力された物質a~jに反応する感応膜a~jの反応値を検出された時刻(検出時点)と関連付けて記憶する。ここで、物質a~jに反応する感応膜11の反応値は、例えば図2に示すようなパターンとなる。なお、図2の縦軸の反応値は、物質センサ10における感応膜11の物質との反応によって変化する物質センサ10の検出信号の信号レベルを示している。
【0029】
図1に戻り、匂い特定部22は、物質センサ10で検出されて記憶部21に記憶された感応膜a~jの反応値に基づいて、気体に含まれる匂いを特定する。ここで、例えば、匂いAが、物質a、b、cから成り、匂いBが物質d,eから成り、匂いCが、物質f,g,hから成るものとする。そして、匂い特定部22は、匂いAの物質a,b,cの反応値の参照用パターンを記憶し、匂いBの物質d,eの反応値の参照用パターンを記憶し、匂いCの物質f,g,hの反応値の参照用パターンを記憶しているものとする。
【0030】
匂い特定部22は、記憶部21に記憶された感応膜a~jの反応値に基づいて、図2に示す検出された物質の反応値のパターンが、匂いAのパターンに該当するか、匂いBのパターンに該当するか、匂いCのパターンに該当するか否かを判別することにより、気体に含まれる匂いを特定する。具体的には、匂い特定部22は、匂いAに関連する感応膜a,b,cの反応値の割合と、匂いAの感応膜a,b,cの反応値の割合の参照用パターンとを比較して、気体に匂いAが含まれているか否かを判定する。また、匂い特定部22は、匂いBに関連する感応膜d,eの反応値の割合と、匂いBの感応膜d,eの反応値の割合の参照用パターンとを比較して、気体に匂いBが含まれているか否かを判定する。また、匂い特定部22は、匂いCに関連する感応膜f,g,hの反応値の割合と、匂いCの感応膜f,g,hの反応値の割合の参照用パターンとを比較して、気体に匂いCが含まれているか否かを判定する。ここでは、図2に示す反応値のパターンが、匂いA,B,Cのパターンに該当するものとし、匂いA,B,Cが特定されたものとして話を進める。
【0031】
図1に戻り、反応値算出部23は、物質センサ10で検出された感応膜a~jの反応値に基づいて、匂い特定部22で特定された匂い毎の反応値を算出する。具体的には、反応値算出部23は、感応膜a~jの反応値を匂い毎に合算した値を、匂い毎の反応値として算出する。例えば、図3に示すように、反応値算出部23は、匂いAに関連する物質a,b,cの反応値を加算してその合算値を算出し、匂いBに関連する物質d,eの反応値を加算してその合算値を算出し、匂いCに関連する物質f,g,hの反応値を加算してその合算値を算出する。図4では、その合算値が匂い毎の反応値としてまとめられて表示されている。
【0032】
なお、匂い毎の反応値は、感応膜11の反応値の合算値には限られない。感応膜11の反応値の平均値であってもよい。匂い毎の反応値は、その匂いを構成する物質が反応する感応膜11の反応値のレベルを表す代表値であればよい。
【0033】
図1に戻り、割合算出部24は、反応値算出部23で算出された匂い毎の反応値の合計に対する、匂い特定部22で特定された匂い毎の反応値の割合を算出する。例えば、割合算出部24は、図4に示す匂いA,B,Cの反応値を、図5に示す全体の反応値の合計に対する匂いA,B,Cの反応値の割合に変換する。
【0034】
図1に戻り、表示部25は、割合算出部24で算出された匂い毎の反応値の割合を、匂い特定部22で特定された匂いの間で比較可能に表示する。例えば、表示部25は、図5に示すような棒グラフを表示する。この棒グラフによれば、全体に対する気体の匂いA,B,Cの割合を比較することが可能になる。
【0035】
また、表示部25は、他の内容を表示することも可能である。例えば、表示部25は、反応値算出部23で算出された匂い毎の反応値を、匂い特定部22で特定された匂いの間で比較可能に表示することが可能である。例えば、表示部25は、図4に示すような棒グラフを表示する。この棒グラフによれば、気体の匂いA,B,Cの反応値を、匂いA,B,Cの間で比較することが可能となる。
【0036】
さらに、表示部25は、反応値算出部23で算出された匂い毎の反応値と、割合算出部24で算出された匂い毎の反応値の割合とを、比較可能に表示することが可能である。表示部25は、例えば、図4に示す匂いA,B,C毎の反応値を示す棒グラフと、図5に示す匂いA,B,C毎の反応値の割合を示す棒グラフとを比較可能に表示する。
【0037】
さらに、表示部25は、記憶部21に記憶された感応膜a~jの反応値に基づいて、反応値算出部23で算出された匂い毎の反応値と、割合算出部24で算出された匂い毎の反応値の割合との少なくとも1つを、異なる検出時点の間で比較可能に表示することができる。例えば、表示部25は、図6Aに示すように、成分が同じ気体に対する1回目の測定と2回目の測定における匂いA,B,C毎の反応値の比較表示が可能である。また、表示部25は、図6Bに示すように、成分が同じ気体に対する1回目の測定と2回目の測定における匂いA,B,C毎の反応値の割合の比較表示が可能である。さらには、表示部25は、図6Aに示す比較表示と、図6Bに示す比較表示とを、同時に表示することが可能である。
【0038】
このような表示を行うことにより、2回目の測定では、1回目の測定に対して感応膜11の感度が下がって、匂いA,B,C毎の反応値が小さくなっているものの、匂い毎の反応値の割合に変換した場合には、1回目の測定と、2回目の測定とを比較した場合に、匂いA,B,Cの割合が同じであったことを把握することができる。
【0039】
なお、異なる検出時点の比較は、2つに止まらない。3つ以上の検出時点での比較も可能である。
【0040】
上述の匂い検出システム1の情報処理装置20の機能は、図7に示すハードウエア構成で実現されている。図7に示すように、匂い検出システム1は、制御部31、メモリ32、外部記憶装置33、操作部34、ディスプレイ35及び入出力部36をハードウエア構成として備えている。メモリ32、外部記憶装置33、操作部34、ディスプレイ35及び入出力部36はいずれも内部バス30を介して制御部31に接続されている。
【0041】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)を備えている。このCPUが、外部記憶装置33に記憶されているプログラム39に従って処理を実行することにより、図1に示す匂い検出システム1の各構成要素が実現される。
【0042】
メモリ32は、RAM(Random-Access Memory)を備えている。メモリ32のRAMには、外部記憶装置33に記憶されているプログラム39がロードされる。CPUは、RAMにロードされたプログラム39を実行する。この他、メモリ32は、制御部31の作業領域(データの一時記憶領域)として用いられる。
【0043】
外部記憶装置33は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD-RAM(Digital Versatile Disc Random-Access Memory)、DVD-RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリを備える。外部記憶装置33の不揮発性メモリには、制御部31に実行させるためのプログラム39があらかじめ記憶されており、このプログラム39が、メモリ32に読み込まれる。また、外部記憶装置33は、制御部31の指示に従って、このプログラム39の実行の際に用いられるデータを制御部31に供給し、制御部31から供給されたデータを記憶する。
【0044】
本実施の形態では、匂い検出システム1の記憶部21、匂い特定部22、反応値算出部23、割合算出部24は、制御部31、メモリ32及び外部記憶装置33に対応している。
【0045】
操作部34は、操作者によって操作されるマンマシンインターフェイスである。操作部34は、キーボード及びマウスなどのポインティングデバイスと、キーボードとを備える。操作部34への操作入力は、制御部31に送られる。制御部31は、操作入力の内容に従ってプログラム39を実行する。
【0046】
ディスプレイ35は、画像を表示するマンマシンインターフェイスである。ディスプレイ35は、CRT(Cathode Ray Tube)またはLCD(Liquid Crystal Display)を備える。ディスプレイ35には、検出された匂いの反応値及び匂いの反応値の割合の少なくとも一方が表示される。このディスプレイ35が、表示部25に対応する。なお、操作部34及びディスプレイ35はタッチパネルとして1つにまとめられていてもよい。
【0047】
入出力部36は、物質センサ10に対する情報の入出力が可能なインターフェイスである。入出力部36を介して、物質センサ10への検出命令が出力され、物質センサ10からの感応膜11の反応値を示す信号が入力される。
【0048】
なお、外部記憶装置33は、一時的でない記録媒体37と接続することが可能である。記録媒体37にはプログラム39が記憶されている。プログラム39は、記録媒体37から外部記憶装置33へ転送され、書き込まれるようにしてもよい。
【0049】
次に、本発明の実施の形態1に係る匂い検出システム1の処理すなわち、気体の匂いを検出する匂い検出システム1によって実行される匂い検出方法について説明する。この処理は、物質センサ10による検出を行って、感応膜a~jの反応値を検出する検出処理と、物質センサ10によって検出された感応膜a~jの反応値に基づく、匂いの解析表示処理とに大別される。
【0050】
(検出処理)
まず、検出処理について説明する。図8に示すように、情報処理装置20は、操作入力による検出指令を入力するまで待つ(ステップS1;No)。具体的には、図7に示すように、制御部31は、操作部34の操作入力による検出指令を待っている。
【0051】
操作入力により、検出指令が入力されると(ステップS1;Yes)、情報処理装置20は、物質センサ10に対して検出指令を出力する(ステップS2)。具体的には、図7に示すように、操作部34の操作入力が検出指令であった場合、制御部31は、入出力部36を介して、検出指令を、物質センサ10に出力する。物質センサ10は、気体に含まれる物質a~jの検出を行って、各感応膜a~jの反応値を示す信号を、入出力部36に出力する。入出力部36は、これらの信号を反応値のデータに変換して、制御部31に送る。このように、本実施の形態では、ステップS1,S2が検出ステップに対応する。
【0052】
この間、情報処理装置20は、反応値を受信するまで待っている(ステップS3;No)。反応値を受信すると(ステップS3;Yes)、記憶部21は、反応値を記憶する(ステップS4)。具体的には、図7に示すように、制御部31は、検出時刻に関連付けて、外部記憶装置33に反応値を記憶する。
【0053】
ステップS4終了後、情報処理装置20は、ステップS1に戻る。以降、ステップS1~S4が繰り返される度に、物質センサ10で感応膜a~jの反応値が検出され、記憶部21が、検出時刻に関連付けられた感応膜a~jの反応値を記憶する。検出処理は、このようにして行われる。
【0054】
(解析表示処理)
次に、解析表示処理について説明する。図9に示すように、まず、情報処理装置20は、表示指令が入力されるまで待つ(ステップS11;No)。ここで、図7に示すように、制御部31は、操作部34の操作入力による表示指令を待っている。なお、この表示指令には、検出時刻が指定されている。指定されていない場合には、最新の感応膜a~jの反応値が解析対象となる。
【0055】
操作部34の操作入力により、表示指令を入力すると(ステップS11;Yes)、匂い特定部22は、その表示指令において指定された検出時刻の反応値を記憶部21から読み出す(ステップS12)。ここで、具体的には、図7に示すように、制御部31は、指定された検出時刻の感応膜a~jの反応値を外部記憶装置33からメモリ32に読み出す。また、制御部31は、匂いA,B,C,・・・の反応値の参照用のパターンを、外部記憶装置33からメモリ32に読み出す。
【0056】
続いて、匂い特定部22は、読み出した検出時刻の感応膜a~jの反応値に基づいて、気体の匂いを特定する(ステップS13;匂い特定ステップ)。ここで、具体的には、図7に示すように、制御部31は、メモリ32に読み出した感応膜a~jの反応値のパターンと、匂い毎の反応値の参照用パターンとを比較し、気体に含まれる匂いを特定する。ここで、例えば、図3に示すように、物質a,b,cの反応値のパターンに基づいて匂いAが特定され、物質d,eの反応値のパターンに基づいて匂いBが特定され、物質f,g,hの反応値のパターンに基づいて匂いCが特定される。
【0057】
続いて、反応値算出部23は、感応膜a~jの反応値に基づいて、ステップS13で特定された匂い毎の反応値を算出する(ステップS14;反応値算出ステップ)。ここで、具体的には、図7に示すように、制御部31は、メモリ32に格納された感応膜a~jの反応値を匂い毎にまとめてその合算値を算出し、その合算値を匂い毎の反応値として、メモリ32に格納する。例えば、図3に示すように、匂いAについて、物質a,b,cの反応値が合算されて匂いAの反応値が算出され、匂いBについて、物質d,eの反応値が合算されて匂いBの反応値が算出され、匂いCについて、物質f,g,hの反応値が合算されて匂いCの反応値が算出される。
【0058】
さらに、割合算出部24は、匂い毎の反応値の割合を表示するか否かを判定する(ステップS15)。匂い毎の反応値の割合を表示する場合(ステップS15;Yes)、割合算出部24は、ステップS14で算出された匂い毎の反応値の合計に対する、ステップS13で特定された匂い毎の反応値の割合を算出する(ステップS16;割合算出ステップ)。ここで、具体的には、図7に示すように、制御部31は、メモリ32から読み出された匂い毎の反応値をメモリ32に読み出して反応値の合計を算出し、その合計に対する匂い毎の反応値の割合を算出して、メモリ32に格納する。ここでは、例えば、図5に示すように、匂いAの割合、匂いBの割合、匂いCの割合が、算出される。
【0059】
その後、表示部25は、表示を行う(ステップS17;表示ステップ)。ここで、具体的には、図7に示すように、制御部31は、上述の表示指令で、指定された内容に従って、メモリ32に算出された匂い毎の反応値又はその割合に基づいて、ディスプレイ35に、図2図3図4図5図6A又は図6Bに示す棒グラフを表示する。これにより、匂い毎の反応値の割合の匂いの間での比較表示などが可能になる。
【0060】
ステップS17終了後、情報処理装置20の処理は、ステップS11に戻る。このようにして、解析表示処理が実行される。
【0061】
この匂い検出システム1によれば、気体に含まれる匂いを様々な観点から解析することが可能となる。例えば、口臭の匂いを検出し、匂いA(例えばニンニク)、匂いB(例えばアルコール)及び匂いC(例えばタバコ)が検出された場合に、新たに匂いD(例えばミント)を加えたとき、図10Aに示す反応値の表示では、単に匂いDが加えられただけにしか見えないので、匂いDの効果を把握しにくくなっている。これに対して、図10Bに示すように、匂い毎の反応値の割合に変換し、匂い毎の反応値の割合を表示した結果、口臭に匂いDが含まれることで、他の匂いA,B,Cの反応値の割合が低下することがわかるので、不快な臭みを軽減できることを、この表示から把握することができる。
【0062】
また、口臭の匂いを検出し、匂いA(例えばニンニク)、匂いB(例えばアルコール)及び匂いC(例えばタバコ)の匂いが検出された場合、新たに匂いD(例えばミント)を加えた場合に、図11Aの反応値の表示でも、図11Bの反応値の割合の表示でも、匂いCが減少しているのが認められる。ただし、図11A図11Bとを比較すると、図11Bに示す匂い毎の反応値の割合の表示の方が、匂いDの追加により、匂いCの割合が大幅に減っていることを確認しやすくなる。
【0063】
本実施の形態では、検出処理と、解析表示処理とがイベントドリブン方式の処理となっており、検出と、解析表示とを別々に行うことができるようになっている。しかしながら、検出処理と解析表示処理は、一連の処理であってもよい。
【0064】
このように、情報処理装置20の機能は、図8に示す検出処理プログラムと、図9に示す解析表示処理プログラムとが、図7に示すハードウエア資源によって実行されることにより、実現されている。
【0065】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、測定回数に応じた感応膜11の感度の変化に関わらず、気体に含まれる匂いの正確な割合を求めることができるので、匂いA,B,C,・・・の検出結果のばらつきを低減することができる。匂いA,B,C,・・・の検出結果のばらつきを低減することができれば、新たな匂いの追加又は減少による匂いの割合の変化(図10A及び図10B)、新たな匂いの追加又は減少による他の匂いへの影響(図11A及び図11B)を分析することが可能となる。
【0066】
なお、本実施の形態に係る匂い検出システム1は、匂い毎の反応値を表示せず、匂い毎の反応値の割合のみを表示するようにしてもよい。この場合、ステップS15の判定は行われない。
【0067】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図12に示すように、本実施の形態に係る匂い検出システム1は、情報処理装置20が係数補正部27を備える点と、環境センサ50を備える点が、上記実施の形態1に係る匂い検出システム1と異なっている。環境センサ50は、図7に示すように、入出力部36を介して、情報処理装置20に接続されている。
【0068】
本実施の形態では、匂い検出システム1は、気体の環境条件を検出する環境センサ50を備えている。本実施の形態では、環境センサ50によって検出される環境条件は、湿度である。湿度には様々な基準のものがあるが、絶対湿度又は相対湿度など、どのような基準のものを用いてもよい。
【0069】
係数補正部27は、環境センサ50で検出される感応膜a~jの周囲の環境条件に応じて定められた感応膜a~j毎の係数で、物質センサ10で検出された感応膜a~jの反応値を感応膜a~j毎に補正する。例えば、図13に示すように、感応膜a~jの反応値は、気体に含まれる物質a~jの量が同じであっても、湿度によって感応膜a~jの反応値が異なる。そこで、係数補正部27は、図14に示すように、湿度によって変化する係数を感応膜a~j毎に有しておき、感応膜a~jの反応値、そのときに検出された湿度に対応する係数を乗算して反応値を補正する。これにより、例えば、湿度70%における感応膜a~j毎の反応値は、図13に示す「補正後」の棒グラフのようになる。この棒グラフによれば、湿度70%における感応膜a~jの反応値は、湿度20%における感応膜a~jの反応値と同じになる。
【0070】
逆に言えば、同じ成分の気体について、湿度を変えながら、感応膜a~jの反応値を検出し、各湿度での反応値を比較することにより、係数を求めることができる。すなわち、このようにしてキャリブレーションが可能となる。この場合、例えば、湿度20%と湿度70%で係数検出を行い、他の湿度では、その検出結果で補間して、それぞれの係数を求めるようにしてもよい。
【0071】
なお、図14に示す係数は、湿度20%のときの感応膜a~jの反応値を1としたときのものとなっている、しかしながら、本発明はこれには限られない。例えば、感応膜aの反応値を常に1としたときの、他の感応膜b~jについての係数を用いるようにしてもよい。このような係数を用いても、感応膜a~jの反応値の割合を適切に補正して、延いては、匂い毎の反応値の割合を正確に表示することが可能となる。
【0072】
また、図14では、湿度に対する係数の特性は、線形のように示されているが、本発明はこれには限られない。湿度に対する係数の特性は、非線形であってもよい。
【0073】
図12に示すように、記憶部21は、物質センサ10で検出された感応膜a~jの反応値を、検出される度に検出時に対応させて記憶する。匂い特定部22は、係数補正部27で補正された感応膜a~jの反応値に基づいて、気体の匂いを特定する。反応値算出部23は、係数補正部27で補正された感応膜a~jの反応値に基づいて、匂い特定部22で特定された匂い毎の反応値を算出する。表示部25は、反応値算出部23で算出された匂い毎の反応値を、匂い特定部22で特定された匂いの間で比較可能に表示する。
【0074】
次に、本実施の形態に係る匂い検出システム1の処理について説明する。この匂い検出システム1では、検出処理が、上記実施の形態1に係る匂い検出システム1と異なる。
【0075】
図15に示すように、情報処理装置20は、操作入力による検出指令を入力するまで待つ(ステップS1;No)。具体的には、図7に示すように、制御部31は、操作部34の操作入力による検出指令を待っている。
【0076】
操作入力により、検出指令が入力されると(ステップS1;Yes)、情報処理装置20は、物質センサ10に対して検出指令を出力する(ステップS2)。具体的には、図7に示すように、操作部34の操作入力が検出指令であった場合、制御部31は、入出力部36を介して、検出指令を、物質センサ10に出力する。物質センサ10は、気体に含まれる物質a~jの検出を行って、各感応膜a~jの反応値を示す信号を、入出力部36に出力する。入出力部36は、これらの信号を感応膜a~jの反応値のデータに変換して、制御部31に送る。
【0077】
この間、情報処理装置20は、反応値を受信するまで待っている(ステップS3;No)。反応値を受信すると(ステップS3;Yes)、情報処理装置20は、環境センサ50から環境条件を取得する(ステップS21)。具体的には、図7に示すように、制御部31は、入出力部36を介して、環境センサ50から、湿度データを取得する。
【0078】
続いて、係数補正部27は、取得した環境情報に基づいて、係数を決定する(ステップS22)。例えば、係数補正部27は、図14に示すグラフで示される係数の算出式に、環境センサ50で検出された湿度を代入して、その湿度に対応する係数を決定する。
【0079】
続いて、係数補正部27は、環境条件に応じて定められた感応膜a~j毎の係数で、物質センサ10で検出された感応膜a~jの反応値を感応膜a~j毎に補正する(ステップS23;係数補正ステップ)。
【0080】
続いて、記憶部21は、係数で補正された反応値を記憶する(ステップS4)。具体的には、図7に示すように、制御部31は、検出時刻に関連付けて、係数で補正された反応値を、外部記憶装置33に記憶する。
【0081】
ステップS4終了後、情報処理装置20は、ステップS1に戻る。ステップS1~S3、S21,S22,S23,S4が繰り返される度に、記憶部21、すなわち、外部記憶装置33に、検出時刻に関連付けられ補正された反応値が記憶される。検出処理は、このようにして行われる。
【0082】
本実施の形態に係る匂い検出システム1においても、上記実施の形態1に係る匂い検出システム1と同様に、図9に示すように、匂い特定部22による匂いの特定(ステップS13)、反応値算出部23による匂い毎の反応値の算出(ステップS14)、割合算出部24による割合の算出(ステップS16)及び表示部25による表示(ステップS17)などが行われる。
【0083】
この解析表示処理において、表示部25は、反応値算出部23で算出された反応値を、特定された匂いの間で比較可能に表示することができる。また、表示部25は、匂い毎の反応値の割合を、特定された匂いの間で比較可能に表示する。さらに、表示部25は、匂い毎の反応値の割合と、匂い毎の反応値とを、比較可能に表示する。さらに、表示部25は、匂い毎の反応値の割合と、匂い毎の反応値との少なくとも1つを、異なる検出時点の間で比較可能に表示する。
【0084】
本実施の形態では、湿度に基づいて、感応膜の反応値を補正している。しかしながら、本発明はこれには限られない。環境条件には、湿度、温度、気圧のうちの、少なくとも1つが含まれる。この場合、湿度、温度、気圧毎に係数を有するようにしてもよいし、湿度及び温度等の環境条件の組み合わせで係数を有するようにしてもよい。
【0085】
また、本実施の形態では、環境センサ50で検出される感応膜11の周囲の環境条件に基づいて係数を決定しているが、本発明はこれには限られない。例えば、操作部34に入力された環境条件又は通信ネットワークを介して提供される環境条件に基づいて、係数を決定するようにしてもよい。
【0086】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、環境条件に応じた感応膜a~jの感度の変化に関わらず、匂いの検出結果の精度のばらつきを低減することができる。
【0087】
上記実施の形態に係る匂い検出システム1では、匂い毎の反応値を、様々な形で表示することが可能である。これにより、匂い検出システム1が検出した匂いに関する様々な解析をサポートすることができる。例えば、匂い毎の反応値の表示は、感応膜a~jの感度検査を可能にする。
【0088】
なお、上記各実施の形態では、匂い毎の反応値及びその割合を棒グラフで表示しているが、本発明はこれには限られない。例えば、円グラフ、折れ線グラフ等の他の表示方法で、匂い毎のデータを表示するようにしてもよい。
【0089】
匂いが1種類の物質で構成されている場合には、反応値算出部23は不要であり、感応膜a~jの反応値がそのまま対応する匂いの反応値となる。
【0090】
その他、匂い検出システム1の情報処理装置20のハードウエア構成やソフトウエア構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0091】
制御部31、メモリ32、外部記憶装置33、操作部34、ディスプレイ35及び入出力部36、内部バス30などから構成される匂い検出システム1の処理を行う中心となる部分は、上述のように、専用のシステムとして構築されるようにしてもよいし、通常のコンピュータシステムを用いて実現されるようにしてもよい。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な一時的でない記録媒体(フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する匂い検出システム1を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで匂い検出システム1を構成してもよい。
【0092】
コンピュータの機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラムの部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0093】
搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)にコンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介してコンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0094】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0095】
なお、本願については、2020年4月2日に出願された日本国特許出願2020-67098号を基礎とする優先権を主張し、本明細書中に日本国特許出願2020-67098号の明細書、請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、複数の物質で構成される匂いの検出に適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 匂い検出システム、10 物質センサ、11(a~j) 感応膜、20 情報処理装置、21 記憶部、22 匂い特定部、23 反応値算出部、24 割合算出部、25 表示部、27 係数補正部、30 内部バス、31 制御部、32 メモリ、33 外部記憶装置、34 操作部、35 ディスプレイ、36 入出力部、37 記録媒体、39 プログラム、50 環境センサ、a~j 物質
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15